東京大学大学院 受験番号 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 問題冊子にも受験番号を書きなさい 平成26年度大学院入学試験問題 修士課程 専門基礎科目 平成z5年8月20日(火) 13:30~16:00(lSO分) 注意事項 1.試験開始の合図があるまで,この冊子を開いてはいけません. 2.本冊子の総ページ数は16ページです.落丁,乱丁,印刷不鮮明な箇所など があった場合には申し出ること. 3.解答には,必ず黒色鉛筆(または黒色シャープペンシル)を使用しなさい. 4.問題は,必修問題1問,選択問題として数学3問,物理学3問,化学2問, 合計9問出題されます.必修問題1問(第1間)と,選択問題(第2~9問) から2問を選択して,合計3問を解答しなさい.解答する選択問題2問は, 1科目の中から選択しても,複数科目から選択してもよい. 5.解答用紙は計3枚配られます.各問題ごとに必ず1枚の解答用紙を使用し なさい.解答用紙に書ききれない場合は,裏面にわたってもよい 6.解答は日本語または英語で記入しなさい. 7.解答用紙上方の指定された箇所に,受験番号およびその用紙で解答する問題 番号を忘れずに記入しなさい.問題冊子にも受験番号を記入しなさい. 8.草稿用紙は本冊子から切り離さないこと. 9.解答に関係ない記号,符号などを記入した答案は無効とする. 10.解答用紙・問題冊子は持ち帰ってはいけません. -1- (草稿用紙) -2- (草稿用紙) -3- (草稿用紙) -4- 第1間(必修問題) 以下の問に答えよ. (問1)実関数fCM/)のzに関する偏微分を九(z,z/)で表す.つまり,九(z,z/) とする.また,9(、)とG(z)を次式で定義する. ■ 91(z)= a加,z/) all ノビル…αz) ノrル`)dⅡ ただし,加,Z/)とMM)は,{(z,Z/):α≦z二6,c≦Z/三.}上で連続な関数と する. このとき…≦`を満たす任意の邇に対してノ(霞`(`昨G(型)-Gい)が成り 立つことを示せ. (問2)(問1)の結果を用いて,α<z<6に対して 念が似ルルミッ)d〃 が成り立つことを示せ. (問3)実数α>0,企0と自然数nに対して,Hh(αβ)を次式で定義する. 』w1-ノゲ(…"+航騒d` H1(αβ)を求めよ. (問4)(問21の関係を利用し℃ノ(謡(…三二巻M,魁dtをH血β)を用いて表せ さらに(問3)の結果を代入してこの積分を求めよ. (問司(剛と同様にしてノ(巖(…鵲、,t),d:を求めH血β)を求めよ (問6)一般の自然数、=2に対して,Hh(αβ)をHh-,(αβ)を用いて表わせ. ‐5- 第2間(数学) 行列Aを,実数p’9を用いて次のように定義する. 1 1|p ’9| P p+1 91 1P 1’’ A( 鼻三J このとき,以下の問に答えよ.ただし,実数の集合をRと書くことにする. (問1)Aが固有値p,9,p+9-1をもつことを示せ. (問2)(問1)で示された3つの固有値が相異なるとき,それぞれの固有値に対する固有ベク トルを求めよ. (問3)A2⑰=,,を満たす⑰(≠O)ER3が存在するとする.このとき,P,9が満たすべき条 件を示せ. (問4)集合{AUla0eR3}が,R3内の平面になるとする;このとき,p’9が満たすべき条 件と,対応する平面の式を示せ. -6- 第3間(数学) 関数八m)のフーリエ変換F(ん)は,z,kを実数として以下のように定義される. 〃ルノニル)層-,陰⑪ ここでiは虚数単位であり,eは自然対数の底である.またZ,tの関数9(z,t)に対し, その2次元フーリエ変換は Q(ん,Lu) -/(二仁 9(z,t)e-i(ん…t)dzdt であるいま化)は下図のような実数関数 八勾一作乏|:'二{ であるとして,以下の問に答えよ.いずれの問においても,最終的な答は積分記号を用 いずに表すことただし ,(俳圭/(罵州 で与えられるデルタ関数J(z)は用いてよい (問1)加)のフーリエ変換F(ん)を求めよ. (問2)”)のフーリエ変換G(ん)は,G(ノヤ)=′(A)を満たすものとする.このときの 9(z)を求めよ. (問3M(z)=eiaz/(z)のフーリエ変換を求めよ (問4)α’6を定数として,9(z,t)=COS(αz+6t)のとぎ,その2次元フーリエ変換QUW) を求めよ. (問5)ある関数岬,t)は9(z’0)=八m)を満たしており,その2次元フーリエ変換 Q(ノ16,LJ)は,しJ≠c/cを満たす全ての点(AMJ)において0である.ただしcは定数 とするこのときの9(z,t)を求めよ. -7‐ 第4間(数学) 正の実数αに対して,実数値を取る確率変数Xの確率密度関数が, ノ(Z)=max((,(l-lZl),0) で与えられているとする.ただし,max関数は,以下で与えられろ. max(,W) このとき,以下の問に答えよ. (;|:三;艫I (問1)αの値を定めよ. (問2)Xの平均およびXの分散を求めよ. (問3)非負整数nに対して,Xのn次モーメント 川-/〔二麺w、'此 の値を求めよ. (問4)Xの累積分布関数 を求めよ. (問5)Xのモーメント母関数 刑-ノ(二八重)⑩ M(ガーノ(二層楡八⑪ を求めよ.ただし,eは自然対数の底である. (問6)M'(t),M"(t)を, で定義する.このとき, M【t)=半,M腓響 慨M(t),四M'(t),四M"(t) の値を求めよ. ‐8‐ 第5間(物理学) 図lに示すように,鉛直上向きのz軸上にある回転軸RがモータMに結合している. さらに長さノの針金で回転軸R上の支点Aからつるされた質量腕のおもりが,モータM により回され,針金と鉛直方向との角度をBに保ちながら,〃平面内で等速円運動を している.おもりは速度に比例する空気抵抗力を受けるものとし,その比例係数を6と する.また,重力加速度をgとする.回転軸および針金は十分に固く,その太さと質量 は無視できるものとする. (問1)等速円運動をしているときの,針金の張力S,円運動の周期T,モータのトル ク(原点oのまわりの力のモーメントの大きさ)「を求めよ. (問2)ある時亥リノ,において,おもりが)c軸を通過した.時刻′=/1における支点Aのま わりでのおもりの角運動量Z(/)の(x,y,z)成分を求めよ. (問3)時刻/=/lにおける角運動量の時間的変動。Z(〔)/d'の(x,)ノ,Z)成分を求めよ. 次に,モータのトルクをゆっくりと増加させると,eがゆっくり増加した.針金の張力 が2mg以上になると針金からおもりが外れるものとする. (問4)おもりが外れる瞬間の角度acを求めよ. (問5)おもりが外れた瞬間のおもりの座標は(xJノ,z)=(x0,0,zO),時刻はr0であった. おもりが外れた後も速度に比例する空気抵抗力を受けることに注意をして,時 刻/(/〉'0)におけるおもりの位置を(x,y,z)座標で求めよ. ↑Z -¥-し - ▲/ × / / / 臣 図1 -9- Jノ 第6間(物理学) 図1のように,半径Rの円形の導線に一定の電流Iが流れている.円の中心を原点とし, z軸は円の中心を通って円を含む面に垂直な方向である.この円電流が,デーは,)ノ,z)の 点に作る磁束密度B(7)について,以下の設問に答えよ▽=(a/aWa)Waz)とする. (問1)角を空間の透磁率として,電流密度ノ(7),磁束密度B(デ)の間に成立する マクスウェルの方程式を書け. (問2)B(ア)はベクトルポテンシャノM(7)を用いてB(7)=▽M(7)と表現される. 』(7)がクーロンゲージ7A(デ)=0を満たす場合,(問1)の電流密度ノ(7) とA(7)はポアソン方程式一▽2Z(7)=ハブ(7)を満たすことを示せ. 一 - (問3)A(x,)ノ,z)= 川 W〃が,(問2)の ポアソン方程式を満たすことを示せ.ここで,積分範囲は全空間である. (問4)図1の円電流の場合,’(問3)で示した式で(x',y',z')=(Rcose,Rsme,0)と 変換することにより, Acw)=r露玩 4は,)ノ,z)のx成分を下式から計算できる -aoIRsme ユノ① (X-Rcose)2+()ノーRsme)2+z2 ae 一 lxl>>R,|)l>>R,lzl>>Rとして,』(x,)′,z)の各成分を計算せよ → _ (問5)(問4)で求めたベクトルポテンシヤノM(デ)から磁束密度B(デ)を計算せよ. (問6)図2のように,(問5)のB(7)中に(α,0,6)を中心として半径Rの円電流Iを 置く(円を含む面はz軸に垂直である)」α|>>R’'61>>Rとして,この円電 流が(問5)のB(7)から受ける(α,0,6)のまわりの力のモーメントを求めよ. Z Z ケトーモ、 半径尺 工 Z 半径尺 図1 元 図2 -10‐ 第7間(物理学) ポテンシャル障壁がある場合の粒子の1次元運動を考える.粒子の運動エネルギーE (>O)がポテンシャル障壁の高さよりも低い場合でも,粒子はある確率で障壁を透過で きる.これをトンネル効果と言う.以下の問に答えよ. (問1) 質量腕,運動エネルギーEの粒子が図1に示す1次元のポテンシャル脈)中 を左から右へ運動し,高さJ′b(几>の,幅αのポテンシャル障壁を透過する 確率を以下の手順に従って求めよ. 粒子の波動関数をv(x)とした時,定常状態のシュレーデインガー方程式は (xくい〉α) 差響+EvcM 釜響+(EJm)vは)-,(0<…) と書ける.ただし,方はブランク定数を2兀で害'1つたものである.この時,リ(x) の解は り(x)=Alexp(i、)M2exp(-噸)(jr<0) v(x)=Blexp(&)+B2exp(-&)(O<x<α) いくx) v(x)=Cexp(伽) と書ける.ただし,α=、/而了/M=、/三777「夛戸万1//'である. (1)jc=0’x=αでソCOの満たすべき境界条件 からA1,A2,B1,B2,Cの関係式を導け. (2)B1,B2をC,αβαを用いて表せ. 0 (3)』,をCハノaqを用いて表せ. DCI (4)ここでポテンシャル障壁が十分広いとして eXp(/β`J)〉〉eXp(~/aCZ)と仮定し,粒子の透過率 |C/Al'2をαβαを用いて表せ. 図1 (問2)一般的なポテンシャル障壁J'100の透過率はガモフ因子 …,(-1二、/三両;、x)にほぼ比例するただし積分区間はルM の範囲である.ここで,図2に示すポテンシャルPCOを考えるJ′100は,jc〉α (>o)の領域ではFは)=蒜と表さ川く。の領域…-0であるt ‐11- だし’91,92(91,92>0)は電荷,Ebは真空の誘電率である.質量川運動エネル ギーEの粒子が,図2のポテンシャル障壁に右側から入射する時のガモフ因子 を以下の手'1厘で求める.ただし,図中の6(>α)はJ'(6)=Eを満たすとする. (1)ガモフ因子Tをα’6〃,91,92,Eb,力で表 せ.ただし,積分を残したままの形で解 答せよ. (2)積分変数をx/6=cos2eで定義される0 に変数変換して積分し,Tを6,m'91,92, EMi,61mで表せ,ただし,azは CJD α/6=COS2a,を満たす. 図2 (3)α<<6の場合を考える.この時,α/6=cos2a,〈<1,α=〃/2,sin2q〈<1と なるこの場合,ガモフ因子はルexpH瓦7万)と書けMbをM,仙力 で表せ. (4)以下の数値を用いた場合,(3)で定義したECを単位を明記した上で有効数字 1桁で求めよ. "=3.0×10-27[kg],9,=92=1.6×10-1,[C],80=8.9×10-12[F/mMi=1.1×10-34[Js] -12‐ 第8間(化学) 理想気体Aについて以下の問に答えよ.文中のRは気体定数を表し,R=8.3JmorlKl とする.解答に際しては,導出の過程も示すこと.必要があれば,2-04=0.76,1,20唇3.0 を用いよ. 0 (問1)Aの熱力学的1性質について考察する.ここで,γ,CwCbはそれぞれAの比熱 比,定積モル比熱,定圧モル比熱を表わし,Qは温度に依存しないものとする. (1)1molのAを状態1(圧力P,,温度TI,体積yi)から状態2(圧力P2,温度 、,体積J'2)へと断熱可逆的に変化させる.このとき,系が外界に対して行 う仕事wと内部エネルギー変化△Uの関係を示し,次の式を導け. G1、(、/Tl)=Rln(WZ) (2)上の式とマイヤーの関係式(Cb-Cv=R)を使い,次のポアソンの式を導け. P,し,γ=P2zY (3)温度300KのAを,断熱可逆的に膨張させ体積を2倍にしたとき,温度が 228Kとなった.Aはいくつの原子からなると考えられるか答えよ. (問2)Aは500K以上の高温状態において,下の反応(i)のように理想気体B,Cに 変化する.この反応が化学平衡に達しているとき,以下の問に答えよ. 2A→B+C (i) (1)反応(i)の温度600K,圧力latmにおける平衡定数Klatm,600Kは2.8×10~2 (=l/36)であった.このときの反応進行度(%)(反応で消費されたAの反 応前のAに対する害'1合)を求めよ. (2)温度650K,圧力latmのときの反応(i)の平衡定数K1atM50Kは5.6xlO~'で あった.平衡定数の温度変化と反応熱△Hとの間で,下に示す式(ファント・ ホップの定圧平衡式)が成り立つとき,上記反応(i)の反応熱AHを有効数 字一桁で求めよ.ただし,△Hは考慮する範囲で温度に依存しないとする. 4 |弩禦1,=祭 (問3)(問2)では反応(i)が化学平衡に達しているとしたが,実際に化学反応が進 行する速度は,反応速度論によって決定される.高温状態において反応(i)は, 理想気体A2を経て次のように進行するとする.ここでた1,ル2,k3は,それぞれ の素反応での速度定数であり,Mは触媒となる気体分子を表す.また,反応物 ‐13‐ 系から生成物系に至るまでの,反応座標に対するエネルギーの変化が図1のよ うに表わされるとする.反応(iii)の逆反応は無視できるとする. 2A≦A1 (ii) A2+M昼B+C+M (iii) A2 (1)A2が定常状態にあると仮定して,Bの生成速度を表わす速度式をAl,A2,k3, Aの分圧[A],およびMの分圧[M]を用いて表わせ. (2)実験を行なうと,Bの生成速度は[A]の2次,かつ[M]の1次に比例すること がわかった.これが成り立つためには,A2,A3,[M]の間に,どのような条件 が必要か,簡単に記せ. (3)反応(i)の速度定数は800Kで1.2×lO3morldm3s~1,lOOOKで2.4×l04 mor1dm3s-Iであった.この温度範囲における反応(i)全体の活性化エネルギ ーEを有効数字一桁で求めよ. (4)(2)の条件が成立するとして,図1中の各素反応の活性化エネルギーE1,E2, E3とEの関係が,近似的にどのように表わせるか答えよ. (5)反応(ii)は,A21molあたりlxlO2kJmorlの発熱反応であった.このとき, E3を有効数字一桁で求めよ.また,(問2)(2)の答えを用いて,図1の①に 相当するエネルギーを,有効数字一桁で求めよ. エネルギー l 、」 図1 ‐14‐ 第9間(化学) (問1)下図のA’ Bは,元素X(●),Y(○)からなる2元化合物の結晶構造を示したも のである. どちらも格子定数αの立方品であるとして以下の問に答えよ. (A) (B) }JJLLETH]蓬 0 α (1) 結晶構造A,Bにおいて,元素Xの作る格子は同一である.この格子の名称を 答えよ. (2) 結晶構造A,Bで,元素Yの作る格子は元素Xの作る格子をそれぞれ(α/4,α /4,α/4),(α/2,0,0)だけ変位させたものである.A,Bの結晶構造名を答えよ. (3) A,Bそれぞれの構造で,最近接原子数,最近接原子間距離を求めよ. (4) A,Bそれぞれの構造で,第二近接原子数,第二近接原子間距離を求めよ. (5) A,Bの構造の二元化合物の多くは共有結合性あるいはイオン結合性物質であ る.共有結合,イオン結合のそれぞれの結合力の起源,結合の特徴を説明せよ. (6) イオン結合性が強い物質はA,Bのどちらの構造になりやすいか.理由を付け て答えよ. (問2) 放射線は一般にα線,β線,γ線に分類される.以下の問に答えよ. (1) α線,β線,γ線それぞれの実体は何か,説明せよ. (2) 低速のβ線は固体表面の原子構造,電子状態の解析に用いられる.その理由を 述べよ. (3) α線,γ線はそれぞれラザフォード後方散乱分光,メスバウアー分光に用いら れる.これら分光法のどちらか一つを選び,計測法の原理および得られる,情報 について簡潔に述べよ. (問3)有機化合物に関する以下の問に答えよ. (1)シクロヘキサンには代表的な二つの異なる配座が存在し,安定性も異なる.配 座の特徴がわかる概略図とニューマン投影図を描き,構造の特徴と安定性の差 について説明せよ. (2)n-へキサン,シクロヘキサン,ベンゼンの各試料がそれぞれサンプル管に入れ られて与えられたとする.分光学的方法または化学的方法を用いて,それぞれ を区別するための方法を提案せよ. ‐15‐ (3)メソ化合物またはメソ体とはどのような構造を持つ物質のことであるかを,簡 単な実例を示しながら述べよ. (問4)次の反応について,予想される主生成物の構造を記せ. 卜5 ’ら (1) (2) COOH 妻 I類 SOC12 -← 癩jii>-<二二 HBr -----← (8) □ M丁<二》-⑩ DNaBH4,MeOH ----- 2)H30+ ■ !■ -16‐
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