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 ブラウン運動とその数理モデル
ここでは,一次元の直線上を動くブラウン運動の数理モデルを考える.
ランダムウォークの離散モデル
'! "% と呼ばれる確率過程を考える.直線上を動く粒子
の時刻 におけるその位置を座標 で表わす.初期条件として,粒子は時刻 で, にある.離散的な時
刻 ( を考え,時間間隔 ( が経過するごとに,粒子は が正か負の方向に距離 ( だけ移動
ブラウン運動のモデルとして,ランダムウォーク
する.
番目の変位を確率変数 ( で表わし,その値が ( となる確率を
( ( ( となる確率を
とする
( ( ) .( と ( は,互いに独立である.
+Δ x
㻙Δ x
t0 = 0
x0
q
t1 = Δ t
x
p
x
x0+Δ x
x0㻙Δ x
ランダムウォークの遷移確率
時刻
( の粒子の全変位は,
(
( の列 ( ( や, の列 を離散的な確率過程という.
で与えられる.
ランダムウォークの数値例. # $%
# $&
で, にあるとする.
時刻 ( での,粒子の位置 を考える. 歩のうち 歩は正の方向に移動したときの粒子の位置 を
問題 上記のランダムウォークで,粒子は時刻
求めよ.
時刻
( での,粒子の位置が ( となる確率を求めよ.また, である確率 を求
めよ.
解答
*
# で求めた について, と ( , ) ( の関係式を求めよ.
& ( の期待値 平均値( を求めよ.
解答
( (
( の 乗平均 ( を求めよ.
解答
( ) ( (
( の分散 ( ( を求めよ.
解答
( ( & (
の期待値 平均値 と分散 を求めよ.
の連続モデル
( と ( がともに に近づいた極限を考える.この極限では,粒子は時間的にも空間的にも連続的に動くよ
うになり,移動距離 は,連続的な確率過程となる.
ここでは,( と ( を に近づける際には,注意が必要である.例えば,離散の場合,時間 の間に粒子が移動す
次に
る距離は
であるが,
(
(
( (
になってしまう.
離散的に考えた場合,時刻 での の期待値と分散は,それぞれ,
とすると,粒子の移動距離が
((
#
&
+ & ((
で与えられる.連続モデルへ移った場合に が,確率過程として意味を持つためには, を除くすべての有限
の場合は,平均値が でもかまわな
な時刻で,この平均値と分散が有限の値をもつことが必要である ただし,
( ( が有限である必要がある.そこで,
( (
い .分散が有限となるためには,
とおく.この場合,平均値は,
を有限な定数として,
(( (
でない有限値になるためには, が ( と同程度の大きさにならなければならない.つ
となるので,この値が
のときの時刻 で平均値が有限になるためにある定数を として,
(( ( ( まり, となる必要がある.
問題 解答
上記の関係式を仮定したときの
# '( ) * +
と を,
となる 問題
と
# '( * +
と を求めよ.
で表わし,( , ( の極限をとると,それぞれ
( (
の解答において,( のとき, .標準偏差を で定義すれば,
となる.
( ,( の極限では,粒子は有限時間の間に無限回移動すると考えているので,中心極限定理によって,
である確率 は,-. 分布 正規分布 になる.先に求めた期待値と分散を使えば,
&
となる.
問題
の # で求めた関係式は,
) ( ( ) ) ( を について,右辺の を について /0" 展開し,さらに ( で両辺を割ると,
( ) ( ( ( という偏微分方程式が得られる.ここでは,( ( # の項を無視した.連続モデルに移行する際に仮定し
と書くことができる.左辺の
た条件
&, より,この方程式は,
) と表わされる.この形の方程式は !""#" 方程式と呼ばれている.係数
のときには,拡散方程式になる.
拡散係数と呼ばれる.
は,漂流 '1 "20,
は,
が, 式の解であることを確かめよ.
■問題
マルコフ連鎖 について, の確率分布が の値と がとった値だけから決まり, 以前の履歴によら
ないとき, をマルコフ過程 $" % という.また, が離散的な値もしくは状態をとるマルコ
確率過程 フ過程はマルコフ連鎖 もしくは,マルコフ鎖 と呼ばれる.
マルコフ連鎖を条件付き確率を使って表すと,
となる.さらに,時間的に均一なマルコフ連鎖では,確率が時刻 ステップ数 に依存しないので,
が成り立つ.
で が という値をとる確率を で表し,さらに,時刻 ) で が
という値をとる同時確率を であらわす.このとき, が という値をとったという条件の下で,
が をという値をとる条件付き確率を
■遷移確率と遷移行列 時刻
とあらわすと,
となる.
を が という値をとったという条件の下で, が という値をとる確率とすると,
) ) #
また, となる.ここでの和は,可能なすべての経路についてとる.この確率
遷移確率と呼ぶ.また,遷移確率を要素とする行列 を状態 から状態 への 次の
を遷移確率行列 もしくは,推移確率行列 と呼ぶ.
例えば,下の図のようなランダムウォーク ( , ( とした において,時刻 で原点にあった状態が,時
刻 ) # で に移る遷移確率は,
) ) ) ) ) ) ) ) &
となる.時間的に一様な場合は,右辺の
, ) , ) は必要ない.
t=n
0
p0 → --1
t = n+1
t = n+2
t = n+3
p--1 → --2 --1 p--1 → 0
--2
p--2 → --1
0
p0 → --1
--1
x
p0 → 1
1
p1 → 0
x
x
x
を確率的に移り変わる場合,遷移確率行列は,
また,下の図のように3つの状態 となる.
p11
p12
e1
e2
p22
p31
p13
p21
e3
p32
p33
p23
■吸収壁のあるランダムウォーク
先に考えたランダムウォークでは,各ステップの変位
( の つの状態をとった.このとき,この つの状態の遷移確率行列は,
となる.一方,粒子の位置
( が (,もしくは
については状態数が無限にあるため,遷移行列を有限次元で表せない.
ここでは,空間幅を有限にとり,両端に吸収壁を設けたランダムウォークを考える.例えば,各ステップの移動幅
を
( として, と に到着したら,そこから動けなくなるようにする.この場合の遷移行列は,
となる.
p11=1
1
p23=p
p12=0
p21=q
2
p32=q
p11=q
p34=p
3
p43=q
4
x
1
■反射壁のあるランダムウォーク ランダムウォークにおいて,両端
確率行列は次のようになる.
となる.
p23=p
p12=p
p21=q
2
p32=q
p34=p
3
p43=q
4
x
に反射壁 上図右 を設ければ,遷移
■オルンシュタインウーレンベック 過程
える.ここでは,有限区間
粒子に対し位置に依存した吸引力が働く場合を考
3 4 において粒子は整数点上を移動するとし,中央の位置 へ向かって粒子に吸
引力が働くとする.そして,遷移確率を
で定める. を偶数とするとき,中央の位置では左右に移動する確率は等しく
比例して,内側へ向かう確率が増加する.このとき,遷移行列は,
となる.
この過程について,時刻
であるが,中央からの位置のずれに
#
#
における粒子の位置 の確率分布を とする. , と表せば,
) ) ) が成り立つ.
次に,この過程の連続的な極限を考える.時間刻みを
(, 変位幅を ( として,式 を書き換えると,
) ( ( ( ) ) ( ) ( となる.ここでは,吸引の中心位置を原点に取り,
( ) ( とする.この式は, 節の議論と同様に, が ( 程度の大きさになる要請から導かれ,
( となる.左辺を (, 右辺を ( について展開すると,
( ) ( ( ( となる.ここで,
と置くと,式
は,
となる.この方程式は
( (
& ) #
&
5%%6"% 方程式の一例である.この方程式により記述される確率過程をオルンシュタイ
ン#ウーレンベック &#'" 過程という.
白色雑音とランジュバン 方程式
を とし,ブラウン粒子が動くときに受ける摩擦力を とする.さらに,ブラウン粒子が多数の水分子
から受ける揺動力を であらわす. はブラウン粒子が受けるランダムな力を表している.その他の外力は働
ここでは, 次元のブラウン運動においてブラウン粒子が従う運動方程式について考える.ブラウン粒子の運動量
かないとすると,ブラウン粒子の運動方程式は
) となる.
については,次の性質を仮定する.
Æ #
! "
#
ここで,! であり, は の任意の関数である.また,Æ は,デルタ関数である.上記の仮定は,水
分子の平均衝突時間間隔が # , ブラウン粒子の緩和時間 より十分短い # ことから, # という
# 式の左辺は,自己相関関数 もしくは自己共分散関数 とよばれる統計
理想化を行ったということに対応する.
量で,これがデルタ関数になるということは,異なる時刻においてランダム力に全く相関がないことを意味している.
式のように白色雑音を含む微分方程式をランジュ
バン方程式と呼ぶ.そして, 式は前節で扱った 789"2% 過程のランジュバン方程式となっている.
ただし,ブラウン粒子の位置ではなく,速度についての 789"2% 過程である.
まずは, 式の解を考える. 式におて, のときの解は,
#
このような性質をもつランダムな変動は白色雑音と呼ばれる.
である.定数変化法
) $
$ は定数
$ $ とした
##
#&
$ を の関数に変形 に従い, 式の解として,
$ とした
#
式に代入し,未知の関数 $ の微分方程式を導くと,
を仮定する.これを,
$ $ "
) #
#
# 式を時刻 から まで形式的に積分すると,
$ 式の解は,
! ! ) は定数
#
となるので,
! ! ) )
! !
#
&
となる.
式の両辺の期待値をとると,
) となるので,
& 式より, の分散は
&
&
&#
である.さらに,
! !
&&
!! ! !
&
Æ! ! ! !
&
!
&
となる.
時間が十分経過
&
&
した定常状態を考えれば,&# 式は,
となる.一方で,熱平衡状態においては,エネルギー等分配則
#
はブラウン粒子の質量であり, はボルツマン定数である.つまり,#
が成り立つことが期待できる.ここで,
式より
式と比較すれば,
であるので,
&
がえられる.これはアインシュタインの関係式と呼ばれており,ブラウン粒子に働くランダム力の大きさと摩擦係数
の関係を与えている.ブラウン粒子の速度が速くなれば,運動エネルギーも大きくなるが,エネルギーの散逸も大き
くなり,それは水分子の熱運動へと変換されていく.視点を変えれば,水分子の熱運動がブラウン粒子にエネルギー
を与え,ブラウン粒子を駆動しているのである.アインシュタインの関係式
ようなエネルギーのやり取りのバランスを表しているのである.
は,ブラウン粒子と水分子間のこの
ランジュバン方程式とフォッカ―・プランク方程式の関係
一次元系において,ランジュバン方程式の一般形は次のようにあらわされる.
: ) % はランダム力を表し,
ここで,
Æ ! % ! % が定数のときは, を相加過程,もしくは加法過程と呼び,% が の関数のと
を仮定する.
きは相乗過程,もしくは乗法過程と呼ぶ.
式で記述される の確率分布 を記述するフォッカプランク方程式は,
) % % このとき,
式について,
となる.
となる定常解
は,
& &
$
% ;
%& $ は規格化定数である.つまり,
となる.ここで,
を満たすように
$ を決める.
#
式から の導出についての参考書:
3
4
34
問題 (
,
,
,
+
宗像 豊哲+ 物理統計学 + 基礎と応用 朝倉書店, 戸田 盛和 斎藤 信彦 久保 亮五 橋爪 夏樹 統計物理学 岩波書店
, 拡散現象のモデルとして次のランジュバン方程式を考える.
: ) ,
は 式の条件を満たすとする.次の問いに答えよ.
を求めよ.
ここで, は定数であり,
および,
& 式に対応するフォッカー・プランク方程式を求めよ 式を公式として使ってよい.
#
&
細胞内の拡散現象
ヒトのように
! を超える大きさに成長する動物では,血液を循環させることで,すべての組織へ必要な物質を効
率的に輸送する機構をもっている.このような血液循環おいて,肺から全身へと酸素を運搬はヘモグロビンがその役
割を担っている.肺において空気中から取り込まれた酸素は,肺組織中で
'! の有効距離にわたって拡散できる.
この有効距離は,酸素の自由拡散と組織中の細胞による酸素消費速度から決められる.肺においては,精密な毛細血
管網が各肺胞を取り囲んでいるため,肺胞表面から毛細血管中のヘモグロビンへの酸素の輸送は拡散のみで十分であ
る.また,心臓のポンプ機能により組織中の毛細血管へ運ばれたヘモグロビンから,各細胞への酸素の輸送は再び拡
散によって行われる.
/6' ;9;9,アデノシン三リン酸 のエネルギーを利用して物質を濃度勾配に
■能動輸送 細胞が
逆らって輸送すること.
■受動輸送 媒質中の物質の濃度差を駆動力とする輸送である.輸送方向は高濃度側から低濃度側へ生じ,輸送速度
は濃度勾配に比例する.
拡散時間
拡散係数
は,「長さ
時間」の次元をもっている.したがって,ある粒子が距離 にわたって拡散するのにか
かる典型的な時間 を
と見積もることができる.
問題 ' ! とする.このとき,球
'!,および ! にわたって拡散するのにかかる時間を見積もれ.
室温における水中の球場タンパク質の典型的な拡散係数の値を
場タンパク質が距離
&
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