2014年度(第24巻)

目 次
〔原 著〕
幼児に対する睡眠計の利用可能性の検証 -保育所の午睡調査から-
………………………………………………………… 高橋芳江,園田悦代,浅野弘明 …… 1
〔研究報告〕
Toward a Culturally Sensitive Understanding of taijin kyoufusho :
An Investigation into a Culture-bound Syndrome
……………………………………………………………………………… Dawn E. O'Day …… 11
〔資 料〕
Moving Toward the Future: Overcoming Language Barriers in the Hospital Setting During the 21st century.
……………………………………………………………………………… Dawn E. O'Day …… 25
日常生活行動が自立した高齢者の睡眠改善に向けた基礎研究
~アクティウォッチによる睡眠測定と身体活動量 , 生活習慣との関連~
……………………………………………………………………… 小松光代,三橋美和 …… 35
関節リウマチ患者および介護者のうつ状態と介護負担感との関連
………………………………………… 佐伯良子,宇佐美 眞,武政誠一 ,岩脇陽子 …… 41
新人看護師時代の職場における体験と SOC との関連
…………………………………………… 柴田明美,岩脇陽子,室田昌子,新垣洋美 …… 49
外来化学療法を受けるがん患者の就労と看護の動向についての文献的考察
………………………………………………………… 田村沙織,光木幸子,山中龍也 …… 63
農山村地域で暮らす後期高齢者の健康観
……………………………………………………………………… 小畑友季,星野明子 …… 69
がん患者の倦怠感に対するアロマテラピーの有効性に関する文献検討
……………………………………………………………………… 藤原 彩,山中龍也 …… 77
〔活動報告〕
看護基礎教育における多重課題対応シミュレーション教育の効果
………………………………………………………… 滝下幸栄,岩脇陽子,山本容子, 室田昌子,平松美奈子,原田清美 …… 85
レクリエーション活動にタブレット型端末を用いた精神看護学実習の試み
………………………………………………………… 占部美恵,福田弘子,北島謙吾 …… 95
〔その他〕
フリーソフトを用いた標本数の見積もり -比率の差と平均値の差の場合-
……………………………………………………………………… 吉井健悟,浅野弘明 …… 103
Improving Access to Outpatient Services for Non-Japanese Speaking Patients
…………………… Dawn E. O'Day、藤田佳信,住谷祐子,小城智圭子,西田直子 …… 111
京都府立医科大学大学院保健看護研究科修士論文要旨 …………………………………………………………………… 121
教員研究紹介 …………………………………………………………………………………………………………………… 131
平成 25 年度科学研究費補助金配分一覧(代表分) ……………………………………………………………………… 153
平成 25 年度科学研究費補助金 分担配分およびその他の助成金 ………………………………………………………… 155
京都府立医科大学看護学科紀要投稿規程 …………………………………………………………………………………… 156
CONTENTS
〔Original Article〕
Verification of the Availability of Sleep Sensor Instruments for Infants:
An Investigation on Sleep State of Nap at Nursery School
……………………………………… Yoshie Takahashi, Etsuyo Sonoda, Hiroaki Asano …… 1
〔Research Report〕
Toward a Culturally Sensitive Understanding of Taijin Kyofusho :
An Investigation into a Culture-bound Syndrome
………………………………………………………………………………Dawn E. O’
Day …… 11
〔Material〕
Moving Toward the Future: Overcoming Language Barriers in the Hospital Setting in the 21st Century
………………………………………………………………………………Dawn E. O’
Day …… 25
A Basic Study of Improving the Sleep Quality of ADL-independent Elderly People
The Correlation between Measuring Sleep by the Actiwatch and Daily Activity and Their Lifestyles.
………………………………………………………Mitsuyo Komatsu, Miwa Mitsuhashi …… 35
The Relationship between Depression and the Burden among Caregivers of Rheumatoid Arthritis Patients.
……………………… Ryoko Saeki, Makoto Usami, Seiichi Takemasa, Yoko Iwawaki …… 41
My Experiences as a New Nurse to the SOC
…………………… Akemi Shibata, Yoko Iwawaki, Masako Murota, Hiromi Shingaki …… 49
A Review of the Literature of Working Cancer Outpatients Receiving Chemotherapy and their Nursing
…………………………………… Saori Tamura,Sachiko Mitsuki,Ryuya Yamanaka …… 63
Status of the Health of the Elderly in Rural Areas in Japan
……………………………………………………………… Yuki Kohata, Akiko Hoshino …… 69
A Review of the Efficacy of Aromatherapy for Fatigue in Cancer Patients
………………………………………………………… Aya Fujiwara , Ryuya Yamanaka …… 77
〔Activity Report〕
A Nursing University Evaluation of Multi-tasking Simulation for The third-year Student
…………………… Yukie Takishita, Yoko Iwawaki, Yoko Yamamoto,Masako Murota, , Minako Hiramatsu, Kiyomi Harada …… 85
Nursing Students’Study of Effects of Patients’Recreational Use of Tablet PCs in Psychiatric Nursing Practicum
…………………………………………… Mie Urabe, Hiroko Fukuda, Kengo Kitajima …… 95
〔Others〕
Sample Size Determination for Proportions or Averages by Using Free Software
…………………………………………………………… Kengo Yoshii, Hiroaki Asano …… 103
Improving Access to Outpatient Services for Non-Japanese Speaking Patients
……………………………………… Dawn E. O’
Day, Yoshinobu Fujita, Yuko Sumiya, Chikako Koshiro, Naoko Nishida …… 111
高 橋 芳 江 他
京府医大看護紀要,24:1-10,2014
幼児に対する睡眠計の利用可能性の検証
-保育所の午睡調査から-
高橋芳江1),園田悦代2),浅野弘明2)
1)富山大学附属病院看護部
2)京都府立医科大学医学部看護学科
Verification of the Availability of Sleep Sensor Instruments for Infants:
An Investigation on Sleep State of Nap at Nursery School
Yoshie Takahashi 1), Etsuyo Sonoda 2), Hiroaki Asano 2)
1, Department of Nursing, Toyama University of Medicine
2, School of Nursing, Kyoto Prefectural University of Medicine
要約
睡眠の実態調査は、睡眠に関する諸問題を検討する上で、欠かすことができない事項であるが、幼児期を対象とした研
究においては、対象が幼いことや、簡便な測定ツールが普及していないこともあり、客観的なデータを伴った調査はあま
り多くはない。オムロン社が開発した睡眠計「HSL-101」は、成人に対する信頼性や妥当性は確認されているが、子どもに
対しては未確認である。子どもにも利用可能であることが示されれば、調査の可能性が広がるばかりでなく、その信頼性
の増大も期待され、睡眠関連研究に大きく貢献すると思われた。そこで、保育園児の午睡を対象に、この機器の利用可能
性を観察結果と比較することにより検証した。その結果、この睡眠計は、幼児の眠りの客観的データを得るための有用なツー
ルとなり得ることが示唆された。また、副次的に実施した、年齢別睡眠状態の比較結果から、年齢とともに午睡時間が短
くなる傾向が示唆された。
キーワード:幼児、睡眠計、午睡、睡眠、保育所
Ⅰ はじめに
なり得ると考えた。
健康の基本となる睡眠・覚醒リズムは、幼児期に獲
有効性の確認に際しては、脳波計やアクチグラフィ
1)
得されると言われている 。幼児期における午睡を含
などの精密測定を可能とする機器を利用(併用)する
めた睡眠の実態を詳細に調査することは、健全な睡眠
のが理想的ではあるが、成人対象の場合であっても睡
リズムの獲得を検討する上でも、欠かすことができな
眠妨害を含め多くの困難が伴い、その実施は容易では
い重要な課題であるが、その実態はあまり明らかには
ない。特に、多数の幼児を対象とした場合、その困難
なっていない
2) 3) 4)
。客観的なデータが得られるアク
さは飛躍的に増大し、実施はほぼ不可能に近いと思わ
チグラフィを用いた午睡の調査報告も散見されるが、
大半はアンケート調査であり
5) 6) 7)
、特に、午睡を実
れた。そこで、研究者による緻密な睡眠状態の観察で
代用することとした。
際に観察している調査は見当たらなかった。
実際、某保育園において園児の午睡を、上記睡眠計
本研究で用いたオムロン社の睡眠計は、成人に対し
と研究者による観察法により同時に測定した。本論文
ては信頼性や妥当性が確認されているが、子どもに関
では、その比較結果と、副次的に解析した年齢別睡眠
しては未確認である。この機器は、侵襲性が極めて低
状態の比較結果について報告する。なお、副次的解析
く、かつ、簡便に客観的データを得ることができる特
は、保育園における午睡に関しては、その必要性や、
性を有している。子どもの睡眠に対しても成人同様の
適切な時間等に関する議論があるが、これらを検討す
有効性が確認できれば、今後の研究の強力なツールに
るための資料が少ないこともあり、これらを検証する
-1 -
幼児に対する睡眠計の利用可能性の検証
ための客観的なデータを得る目的で実施した。
れとは別に、年齢別の睡眠状態の相違を睡眠計測定に
より抽出できるかを検証する目的で、2歳児と4歳児
Ⅱ 研究方法
を対象に、1日間の計測を実施した。3歳児に対して
1.事前調査
は、被験者1名に対し月曜日~金曜日の5日間連続し
午睡の計測には、オムロン社製一般医療機器「睡眠
て、2歳児と4歳児に対しては、被験者1名に対し火
計 HSL-101」
(以下、単に睡眠計)を使用した。幼児で
曜日~金曜日のうち1日のみ調査を実施した。各調査
の調査に先立ち、研究者自身が睡眠計を使用し、次に
日での対象者は2~3名で、睡眠計は被験者1名に対
示すように条件を変えて測定を繰り返した。具体的に
して1台使用した。測定は、保育所でふだん午睡をとっ
は、睡眠計の設置位置、寝床場所(ベッド、敷き布団)、
ている部屋で実施した。測定結果が無効となった場合
体位(側臥位や腹臥位など)、眠る時間帯、前日の睡眠
は後日、同じ曜日に再測定を実施することとした。
状態(寝不足)を変化させ測定した。その結果、適切
2) 調査方法・内容
な位置に設置した場合、睡眠計による計測結果と、体
睡眠計を用いた測定(調査1)と研究者(筆頭著者、
感が良く一致することが確認できた。
1名)による睡眠状態の観察(調査2)を併行して実
製造元のオムロン株式会社に、睡眠計の使用につい
施した。以下、調査別に概略を説明する。
て、子どもに適用できるかを、安全性を含め問い合わ
(1)調査1:睡眠計による測定
せ、次の回答を得た。『①睡眠計の使用による健康被害
研究者が所定位置に睡眠計を設置し、睡眠計による
はない。②一人寝ができる子どもであれば測定可能で
測定を実施した。これにより、入眠潜時(分)、総睡眠
ある。
』この回答より、乳幼児を含めた子どもに使用し
時間(分)、睡眠の深さ(10 分毎の眠りを数値化)の
ても特に問題は生じないと判断した。なお、上記以外
3項目をデータとして収集した(収集方法は後述)。
に『③睡眠測定記録に検出されたデータ(睡眠の深さ)
(2)調査2:午睡の観察
の解読方法は公表できないが、原理はアクチグラフィ
睡眠計による測定と併行し、研究者が被験者の眠り
と類似する。④睡眠計測定と睡眠ポリグラフ検査での
の様子を測定・観察した。主な、測定・観察項目は、
判別の一致率は 81.2%である。』との回答も得た。
就床時刻、起床時刻、眠りの様子、寝返り、日中の様
そこで、年齢や生活習慣の異なる知人(成人)に、
子であった。特に、睡眠状態に関し、福井ら8) の睡眠・
機器の概要や安全性、研究目的等を十分に説明し、合
覚醒スコアを基に作成された、築田らのスコア9) に基
意を得た上で協力を依頼し、睡眠計を使用した測定を
づき、「不眠」「傾眠・たやすく覚醒する」「一時覚醒し
行い、成人での有効性を確認するとともに、さらに、
てもすぐ眠る」
「ぐっすり眠っている」の4段階により、
その子どもである2歳 、 3歳 、 4歳の幼児を対象とし
10 分単位で眠りの状態を評価した。
て、睡眠計を使用した測定を行った。その結果、睡眠
3.睡眠計によるデータの収集
計による測定記録と、保護者による観察内容(入眠時
睡眠計によるデータは、測定終了後、オムロン社の
刻、起床時刻、午睡中の子どもの状況)とがほぼ一致
サービスを通じ収集した。具体的には、睡眠計を専用
することを確認するとともに、安全性に何ら問題が生
USB ケーブルによりパソコンと接続し、測定データを
じないことも確認した。なお、この一連の事前確認作
パソコンに転送する。その後、パソコンをインターネッ
業については、倫理委員会への提出書類にも記載した
トと接続し、計測データをオムロン社の健康管理サー
が、これに関する問題指摘はなされなかった。
ビス「ウェルネスリンク」へ転送する。すると、体動
2.調査方法
の頻度(多い/少ない)により眠りの状態が解析され、
1)対象、調査期間、測定場所
図1に示したようなグラフデータが、10 分単位で示さ
北陸地方のA市にある某市立保育所(以下、B保育
れる。このグラフを基に、10 分単位で、眠りの段階を
所)に調査を依頼し、同意を得た。保護者からの同意
「眠り0」( 以後、覚醒S )、「眠り1」、「眠り2」、「眠
が得られた同保育所に通う2歳児 、 3歳児 、 4歳児を
り3」の4段階に分類した。なお、眠りの状態は、数
対象に、午睡(13 時頃~ 15 時頃)に関する調査・測
字が大きくなるほど眠りが深くなることを示してい
定を実施した。調査は平成 25 年4月 15 日~同年7月
る。
5日に実施した。
データ入力に際しては、午睡の開始時刻は個人に
3歳児を対象に、睡眠計による計測の信頼性や妥当
よって異なるため、睡眠計の時間の表記は、
「時刻」で
性の検証目的で、連続する5日間の測定を行った。こ
はなく、
「就床からの時間」として処理した。被験者1
-2 -
高 橋 芳 江 他
図 1 睡眠計のデータの閲覧方法
図1
睡眠計のデータの閲覧方法
表1 睡眠計測定と観察法による眠りの状態の分類
表 1 睡眠計測定と観察法による眠りの状態の分類
睡眠計
観察法
眠りの状態
判定基準a)
眠りの状態
判定基準b)
眠り0
(覚醒S)
体動多
眠り⓪
(覚醒K)
眠っていない
眠り1
眠り①
傾眠・たやすく覚醒
眠り2
眠り②
一時覚醒してもすぐ眠る
眠り③
ぐっすり眠っている
眠り3
体動少
a) 詳細は非公開
b) 他の研究を参考に作成
名に対し、就床から2時間(120 分)の測定記録を入
いて、
「午睡の時間や時間帯を工夫し、柔軟に対応する」
力し、解析対象とした。
とされていることもあり、近年、保育所の午睡の在り
4.研究者による午睡の観察記録
方が見直されている。研究を依頼した施設では、積極
睡眠計の記録が4段階で評価されることに合わせ、
的に午睡がとり入れられており、毎日、ほぼ一定の時
被験者の就床から 10 分毎に眠りの状態を確認し、4段
間に午睡が実施されていた。なお、本研究では、保育
階で評価した。なお、
「不眠」は「覚醒K」と、
「傾眠・
所の午睡は子どもが昼食後に寝床に入って寝つく一時
たやすく覚醒する」は「眠り①」と、
「一時覚醒しても
的な眠りと定義する。
すぐ眠る」は「眠り②」と、
「ぐっすり眠っている」は
児童福祉法 13) では、幼児は満1歳から小学校就学の
「眠り③」と表記する。表1に、睡眠計での睡眠状態の
始期に達するまでの者とされている。本研究では、こ
れに従い、幼児とは、満1歳から就学前までの子ども
分類と、観察者による分類を示す。
と定義する。「就床時刻」とは寝床に入った時刻、
「入
Ⅲ 用語の定義
眠時刻」とは眠りについた時刻、
「入眠潜時」とは就床
午睡とは、一般的に、昼ねることを意味している
平成 20 年に改定された保育所保育指針
11)
10)
。
から入眠までの時間、
「総就床時間」とは就床から起床
までの時間、
「総睡眠時間」とは、総就床時間から総覚
では、これ
まで「午睡など適切な休息をとらせる」と明記されて
醒時間を差し引いた時間とする。
いたが、その文言が抹消され、同指針の解説書 12) にお
-3 -
幼児に対する睡眠計の利用可能性の検証
Ⅳ 解析方法
B保育所に通う園児の保護者に調査を依頼し、その
睡眠計測定と観察法による眠りの状態の関連性の検
結果、3歳児 19 名、2歳児 12 名、4歳児 14 名の同意
証には、一致の程度を示す統計指標カッパ係数(κ)
を得た。なお、同意が得られた3歳児のうち1名は、
を用いた
14)
。ここで、カッパ係数とは、カテゴリカル
保護者の意向により保育所での午睡をとっていなかっ
変数間の関連性の検証に利用される指標であり、クロ
たため除外し、最終的に、3歳児では 18 名を対象に、
ス集計結果から算出される。フィギアスケート競技の
被験者1名に対して月曜日~金曜日の5日間分の午睡
ような複数の現象(演技)を2人の評価者が評価した
を調査した。体調不良や行事予定等により調査できな
場合、その評価結果がどの程度一致しているかを表す
かった場合は、翌週の同じ曜日に測定を実施した。な
ときなどに、広く利用されている。2人の評価者が偶
お、調査期間の最終週に測定を実施した1名の被験者
然同じ評価を下し、評価が一致する可能性があるが、
が1日来園しなかったため、1日分の欠損が発生した。
カッパ係数は、このような偶然の一致を除外した「一
最終的には、3歳児に対して 89 日分のデータが得られ
致の程度」を示す指標になっている。カッパ係数は比
た。睡眠計での測定結果は、10 分間隔でデータ化され
率の一種であり、比率に関する統計手法を応用するこ
るため、1人1日分の 120 分の睡眠測定から 12 件の測
とにより、
「κ=0」に対する仮説検定や、95%信頼区
定値が抽出される。この結果、延べ 1,068 件の解析デー
間を算出することができる。以下の結果では、仮説検
タが得られた。
定結果での P 値と 95%信頼区間を併記した。
被験者の性別は、2歳児では男児6名(50.0%)、女
カッパ係数は、本研究のような測定の一致度の検証
児6名(50.0%)、3歳児では男児 11 名(61.1%)、女
においては、通常、0 ~ 1 の値をとり(理論的には負
児 7 名(38.9%)、4歳児では男児6名(42.9%)、女児
値も取り得る)
、値が大きいほど一致度が高いと判断さ
8名(57.1%)であった。体格データは計測していな
れている。Landis らによる基準 15) では、0.0 ~ 0.2「わ
いが、全員ほぼ一般的な体格であった。午睡部屋の平
ずかな一致(Slight)
」
、0.2 ~ 0.4「軽度の一致(Fair)」、
均室温(±標準偏差)は 24.0℃(± 2.6)で、室温や広
0.4 ~ 0.6「中等度の一致(Moderate)」、0.6 ~ 0.8「相
さも含め環境的な問題は感じなかった。
当な一致(Substantial)
」
、0.8 ~ 1.0「ほぼ完全な一致
2.睡眠計測定と観察法による評価の比較
(Almost perfect)」となっている。これがカッパ係数の
表2に、睡眠計測定と観察法による眠りの状態の判
通常の目安であり、特に、0.8 を超えた値は、かなり高
定結果を示す。睡眠計測定は、
「覚醒S」「眠り1」「眠
い一致と一般的に解釈されている。
り2」
「眠り3」の4分類、観察法は「覚醒K」
「眠り①」
全ての統計処理は SPSS for Windows Ver.21.0 を用い
「眠り②」「眠り③」の4分類でのクロス集計結果で、
て実施した。また仮説検定における有意水準は5%と
観察法の分類別に見た出現率(%)を示した。
した。
一致傾向としては、「覚醒S」(睡眠計による測定区
分)と「覚醒K」(観察による測定区分)は 99.2%とか
Ⅴ 倫理的配慮
なり高くなっていたが、「眠り3」と「眠り③」では
本研究への協力の同意は保護者の自由意思で決定
40.2%と半数以下となり、「眠り1」と「眠り①」では
し、同意をしない場合でも不利益を被ることはないこ
33.3%、
「眠り2」と「眠り②」では 17.6%と低い値になっ
と、一旦同意した場合でも随時撤回できることを説明
ていた。なお、一致の程度を示すカッパ係数は 0.44 で、
し同意を得た。また、調査により得られた情報は、研
中程度の一致であった。
究目的以外には使用しないこと、解析データには個人
今回の調査では、睡眠計測定による4段階評価を参
特定情報を含めず、通し番号により識別すること、記
考に、観察法による眠りの状態を4段階に分類したが、
録用紙等は鍵のかかるロッカーに保管し、秘匿性に最
「眠り①(傾眠・たやすく覚醒する)」、および「眠り②
大限配慮すること、研究終了後の資料は細心の注意を
(一時覚醒してもすぐ眠る)」の判断が難しく記録時に
払ったうえで廃棄することを併せて説明した。
確信がもてなかった。そこで、
「眠り①」「眠り②」「眠
本研究は、本学の医学倫理審査委員会の承認を受け
り③」を 1 つのカテゴリ「眠りK」とし、
「覚醒K」と
て実施した(承認番号 E-455)。
「眠りK」の2段階評価に尺度を再構成した。同様に、
睡眠計測定でも「眠り1」「眠り2」「眠り3」を1つ
Ⅵ 結果
のカテゴリ「眠りS」とし、
「覚醒S」と「眠りS」の
1.対象、解析データ
2段階評価に尺度を再構成した。
-4 -
高 橋 芳 江 他
表2 4段階評価での睡眠計測定と観察法による状態の一致率
表 2 4段階評価での睡眠計測定と観察法による状態の一致率
件数(%)
観察法による眠りの状態
覚醒K
眠り①
眠り②
眠り③
391
24
68
585
N
覚醒S 440
388(99.2)
15(62.5)
26(38.2)
11( 1.9)
睡眠計による 眠り1 122
3( 0.8)
8(33.3)
30(44.1)
81(13.8)
眠り2 271
0(
0)
1( 4.2)
12(17.6)
258(44.1)
眠り3 235
0(
0)
0(
眠りの状態
0)
0(
0)
235(40.2)
カッパ係数 0.44 (P<0.001、95%CI: 0.40 ~ 0.48)
表3 覚醒・眠りの2段階評価の場合の一致率
表 3 覚醒・眠りの2段階評価の場合の一致率
件数(%)
観察法による眠りの状態
N
睡眠計による
眠りの状態
覚醒K
眠りK
391
677
覚醒S
440
388(99.2)
52( 7.7)
眠りS
628
3( 0.8)
625(92.3)
カッパ係数 0.89 (P<0.001、 95%CI: 0.86 ~ 0.92)
表4 覚醒・浅い眠り・深い眠りの3段階評価の場合の一致率
表 4 覚醒・浅い眠り・深い眠りの3段階評価の場合の一致率
(%)
観察法による眠りの状態
覚醒K
眠り①②
眠り③
391
92
585
N
覚醒S
440
388(99.2)
41(44.6)
11( 1.9)
眠り1
122
3( 0.8)
38(41.3)
81(13.8)
眠り2,3 506
0( 0)
13(14.1)
493(84.3)
睡眠計による
眠りの状態
カッパ係数 0.76 (P<0.001、95%CI: 0.72 ~ 0.80)
表3にこの2分類によるクロス集計結果を示す。観
「覚醒K」391 件のうち、睡眠計の「覚醒S」は 388 件
察法での「覚醒K」391 件のうち、睡眠計の「覚醒S」
(99.2%)、「眠り①②」92 件のうち、「眠り1」は 36 件
は 388 件(99.2%)で、「眠りK」677 件のうち、睡眠
(41.3%)、観察法の「眠り③」585 件のうち、
「眠り2, 3」
計の「眠りS」は 625 件(92.3%)と、いずれも9割以
は 493 件(84.3%)であった。一致度を示すカッパ係
上が一致し、
カッパ係数も 0.89「ほぼ完全な一致」となっ
数は 0.76「相当な一致」となった。
た。
3.年齢別にみた睡眠計測定による調査結果
2分類とは別に、眠りの深さ(浅い・深い)に注目し、
副次的に実施した、年齢別の睡眠状態の比較調査結
尺度を3段階に再構成した。睡眠計測定により深い眠
果について報告する。図2の左側に、睡眠計による測
りとされる「眠り2」「眠り3」を統合し「眠り2, 3」
定での睡眠状況4分類の出現割合を各測定時点 (10 分
とした。観察法では、深い眠りは「眠り③」に該当す
間隔 ) 別に内訳グラフとして、年齢別に示した。また、
るため、
「眠り①」と「眠り②」を統合し「眠り①②」
同図の右側には、測定時点を合計した全体で睡眠状態
とした。
4分類の割合を円グラフとして示した。なお、このグ
表4に3分類でのクロス集計結果を示す。観察法の
ラフを含め、以後「覚醒S」は、単に「覚醒」と表す。
-5 -
幼児に対する睡眠計の利用可能性の検証
2歳児での結果を示したのが図2-1では、各時点に
また、カッパ係数は 0.89 と「ほぼ完全な一致」が認め
おける覚醒割合が少なく、特に、50 分~ 80 分間はほ
られた。
ぼ全員が「眠り2」以上となっていた。また、全時点
活動量をもとに眠りの状態を判定するアクチグラ
での覚醒割合は 17%とかなり少なくなっていた(円グ
フィにおいても、覚醒と睡眠の2段階で評価している。
ラフ)
。これに対して、3歳児の結果を示した図2-2
2段階評価であれば、観察法による測定結果とほぼ一
では、各時点での覚醒の割合が、2歳児に比べ増加し、
致しており、観察法の代替法になり得ると思われた。
さらに、全ての時点で覚醒が認められたが、50 分~ 80
なお、観察法は「覚醒」、睡眠計測定では「眠り」と評
分間は大多数が眠りの状態にあった。全体での覚醒の
価されたケースが1%程度認められた。睡眠計の使用
割合は、41%と増加したが半数未満であった。4歳児
に関する注意事項として、
「体の動きから眠りの状態を
の結果を示した図2-3では、覚醒の割合が2歳児や
判定しているので、安静にしていると眠っていなくて
3歳児よりかなり増え、全ての時点で 30%以上の覚醒
も眠っていると判定されることがある」とあり、上記
が認められたが、50 分から 70 分の 30 分間においては、
の食い違いは、この注意事項に該当すると思われる。
「眠り2, 3」
(深い眠り)が 50% 以上になっていた。
逆に、観察法では「眠り」、睡眠計測定では「覚醒」と
4歳児の全体での覚醒割合は、65%とほぼ3分の2に
評価された件数が 10%程度認められた。これは、睡眠
達していた。
計測定での評価が体動を基準にしているため、寝返り
等による体動が繰り返された場合、観察法では「眠り」
Ⅶ 考察
と評価されても、睡眠計測定では「覚醒」と評価され
1.対象について
たためと思われる。岩川ら 18) は、寝返りなどの粗大な
北陸に位置するA市は人口 42 万人、世帯数 17 万世
動きの出現頻度はノンレム睡眠の浅い段階が最も高
帯、年少人口約 13%の地域であり、近年では、少子化
く、次いでレム睡眠期と報告している。レム睡眠は月
や核家族化が進んでいる。調査対象としたB保育所は
齢が進むに従って減少するが、2~3歳では総睡眠時
市街地に位置し、敷地面積 1,000 ㎡で遊具を備えた広
間に対するレム睡眠の割合は 20 ~ 25%とされており
い運動場を有している。総定員は 90 名で、通所する子
19)
どもの両親は共働きが多く、車での通所の割合が高い。
的に言われるように、レム睡眠の割合の多い子どもに
この保育所では、3歳未満は毎日、3歳児は4月~9
おいては、寝返りの出現頻度も高く、観察と睡眠計に
月中旬、4, 5歳児は7~8月に午睡が実施されていた。
よる測定が異なってくることは避けられないと思われ
睡眠計の信頼性や妥当性の検証で用いたデータは、全
る。これを回避するためには、時点ごとに判断するの
て3歳児でのものであり、年齢差はない。男児が約6
ではなく、前後のデータも含めた評価が必要になるが、
割と女児より多くなっていたが、幼児期における睡眠
この点については、以後の課題としたい。
の性差は認めないという報告
16)17)
、成人よりもやや高い。子どもは寝相が悪いと一般
もあり、今回の解析
覚醒・眠りの2段階評価とは別に、眠りの深さに着
結果に、性差はほぼ影響していないと思われる。
目した集計も実施した。すなわち、オムロン社の提示
対象となった園児の体格に関しては、施設から提供
している基準に従い、睡眠計測定での「眠り2」と「眠
されたデータ(一部に欠損あり)や研究者による目視
り3」を「深い眠り」と、観察法での「眠り③」(ぐっ
で判断する限り、平均的な集団であった。
すり眠っている)を「深い眠り」として、その一致性
2.睡眠計の利用可能性の検証
を比較した(表4)。その結果、一致率は8割以上とな
1)睡眠計測定と観察法による評価の一致について
り、カッパ係数は 0.76 と「相当な一致」が示された。
睡眠計測定と観察法の4段階評価での比較では、
「覚
なお、観察法では「深い眠り(眠り③)」となったが、
醒」は 100%に近い一致率であった。しかし、「覚醒」
睡眠計測定では「覚醒」と評価されたケースが7件認
以外の評価は、睡眠計測定と観察法測定での判断基準
められた。これらは、就床から 30 分 ,40 分後、いわゆ
が一致していないことや、観察法での判断の困難さ(特
る「寝入りばな」の時間帯に発生していた。この原因
に、
「眠り①」と「眠り②」、あるいは、
「眠り②」と「眠
としては、睡眠計測定と観察法では、入眠時刻の評価
り③」の区別が容易ではない)もあり、一致率が低く
に若干のズレが生じたためではないかと思われた。実
なっていた。そこで、
「覚醒」と「眠り」の2段階に評
際、今回のデータを解析してみて、睡眠計測定での入
価を再構成した検証を行った。その結果、
「覚醒」での
眠時刻が観察法よりも遅くなっている印象を受けた。
一致率はほぼ 100%、「眠り」での一致率も9割以上、
このような点についても、今後、さらに検証していき
-6 -
高 橋 芳 江 他
たいと考えている。
非利き手首の装着が一般的であるが、乳幼児は手首に
観察法による睡眠状態の測定に関しては、その信頼
装着することで興味・関心が偏る可能性や顔などを傷
性や妥当性は成人においてであっても十分に検証され
つける危険性があり、また、睡眠中に無意識に機器を
ているとは言いがたい。特に、幼児に対しては、この
外す懸念もあることから、足首に対する装着可能性を
ような検証は皆無に近く、信頼性や妥当性の保証はな
検証する調査研究も実施されている 23)。どこに装着し
い。しかし、一般生活を営んでいる幼児における睡眠
たとしても、身体の装着に伴う睡眠阻害の恐れが払拭
状態の把握は、保護者の観察に頼らざるを得ないのが
できず、利用上の大きな問題点となっている。
現状である。今回の比較検証の結果、この観察の代用
近年、スマートフォンのアプリケーションを利用し
として利用できることが示唆されており、保護者の負
た、一般成人向けの測定方法も開発されている。これ
担(長時間の観察)を大幅に軽減することが可能であ
は、該当アプリケーションをダウンロードしたスマー
り、幼児の睡眠に関する研究において、万能という訳
トフォンを枕元のシーツの下に設置して眠ると、シー
ではないが、睡眠・覚醒の2段階評価の側面では、か
ツの動きにより、眠りの状態が記録されるという方式
なり有用なツールになり得ることが強く示唆された。
を採用している。しかし、乳幼児の場合は寝返りなど
また、睡眠の深さに関しても、研究を積み重ねること
により機器に接触する可能性があり、正確な測定がで
により、より信頼性の高い評価が可能になることも示
きない懸念が生じる。また、アクチグラフィ同様に、
唆されており、この点を含め、さらなる研究を進めて
直接ないし間接的に接触することにより、眠りを妨害
行きたいと考えている。
する恐れもある。
本研究で用いた睡眠計は、非接触で簡便に使用する
2)眠りを客観的に測定する機器について
ことができ、被験者、測定者ともに負担はかなり少な
睡眠段階を判定する国際的な基準は、脳波、眼球運
い。開発元のオムロン社によると、成人においては、
動図、筋電図の同時記録による睡眠ポリグラフ検査で
睡眠ポリグラフ検査との一致率は 81.2%とかなり高く、
ある。睡眠ポリグラフ検査は、睡眠段階や睡眠時間を
信頼性が保証されているが、子どもに対しては未確認
最も詳細にみることができる方法であるが、実施する
である。今回の調査により、子どもに対しても、保護
ためには、測定者の知識や技術だけではなく、器機の
者の観察に代わる測定法としての有効性が示唆されて
用意、測定場所や時間の確保など、多くの条件が必要
おり、今後の研究の有用なツールになり得ると思われ
となる。さらに、睡眠ポリグラフ検査は、被験者の負
た。
担が大きく、被験者の自然な睡眠を測定することは難
3.年齢別に見た午睡の状況
しいと言われている。特に、子どもが脳波検査の被験
副次的に実施した、年齢別の睡眠計による測定結果
者となる場合は、特別な配慮と基準が必要であるため、
(図2)より、年齢による顕著な差が認められた。測定
改訂臨床脳波検査基準 20) では、小児の項を別に設けて
時間全体での午睡状態は、年齢が高くなるほど「覚醒」
いる。また、ヒトの睡眠パターンや特徴を把握するた
の割合が増加し、年齢が低いほど、よく寝ている(午
めには継続的な測定が必要となるが、このような長期
睡時間が長い)ことが示された。睡眠の発達段階は、
間にわたる調査において、睡眠ポリグラフ検査を実施
2歳以上ではノンレム睡眠とレム睡眠の区別が明瞭と
することはきわめて困難であり、特に、幼児ではほぼ
なり、睡眠サイクルが完成し、4歳までは1回の睡眠
不可能と思われる。
周期は 40 分~ 60 分であり、幼児期は年齢とともに午
そこで、睡眠と覚醒状態の客観的データを得る調査
睡時間が減少するとされている 24)。また、幼児健康度
では、一般的にアクチグラフィが用いられている。こ
調査 25) によると、午睡ありの2歳児は 95%以上である
れは、加速度センサーが組み込まれた腕時計型の機器
が、4歳児では 45%に減少する。本調査においても、
で あ り、 活 動 量 を も と に 睡 眠 と 覚 醒 を 判 定 す る。
睡眠計による年齢別の測定結果は年齢が高くなるほど
Sadeh は乳幼児における睡眠と覚醒の判定式を報告
午睡の時間が減少しており、これらの先行研究とほぼ
21)
するとともに、アクチグラフィと睡眠ポリグラフ検査
の一致率は 90 ~ 95%と報告している
一致する結果となった。
22)
。アクチグラ
本研究では、ぐっすりと眠る(深い眠り)時間は、2
フィの装着部位は、手首や腰、足首などがあり、成人
歳児では 70 分間程度、3歳児では 40 分間程度認められ
では被験者の負担は少なく、簡単に睡眠と覚醒状態の
た。また、いずれの年齢でも、深い眠りとされる時間が
測定ができる。アーチファクトの混入を避けるために
全体の半数近くを占めており、3歳児までは午睡を必要
-7 -
幼児に対する睡眠計の利用可能性の検証
観察法による眠りの状態
睡眠計による
眠りの状態
覚醒´
383
眠り1,2´
82
眠り3´
543
覚醒
424
380(99.2)
37(45.1)
7(1.3)
眠り1
109
3(0.8)
34(41.5)
72(13.3)
図2-1 2歳児の睡眠計測定による午睡状況
図2-1 2歳児の睡眠計測定による午睡状況
図2-2 3歳児の睡眠計測定による午睡状況
図2-2
3歳児の睡眠計測定による午睡状況
図2-3 4歳児の睡眠計測定による午睡状況
図2-3 4歳児の睡眠計測定による午睡状況
としていることが示唆された。これに対し、
4歳児では、
4歳児の子どもから、午睡がない日の夕方に「眠たい」
半数近くの子どもにぐっすりと眠る時間帯が 30 分間程
と訴えてくることが数回あった。幼児の成長・発達には
度認められた。調査を実施した保育所では、4歳児以降
個人差があり、4歳児でも午睡を必要とする者が存在し
は夏期にのみではあるが、午睡の時間が設けられていた
ていることの表れと思われた。
が、近年、幼児期後半の午睡をとりやめる保育所も認め
このように、年齢別の比較において、先行研究に合
られるようになっている。上野らは、幼児期後半になる
致する結果が得られており、年齢による発達の特徴を
と保育所で一斉に午睡をとる必要がないことを明らか
とらえるという側面においても、利用可能な機器であ
26)
にしている 。また、星野は、保育所などの一律の午
ることが示唆されたが、機器による4段階評価の信頼
睡には注意が必要であり、個々に午睡の必要性を検討す
性が担保されておらず、この点については、今後さら
る必要性があると述べている 27)。今回の調査期間中に、
に研究を進めていく必要があると考える。
-8 -
高 橋 芳 江 他
Ⅷ 結論
言動の異常の関係の検討,ICU と CCU,13(10):959-
保育所での午睡調査から、幼児に対するオムロン社
962.
9) 築田春菜,由良亜紗美,植村友音 他 (2006):緊急
製の睡眠計の利用の可能性を検証した結果から、ある
いは、副次的に実施した年齢別午睡状態の比較結果か
入院した高齢者に対するアロママッサージの効果,
ら、以下のことが示唆された。
日本看護学会論文集 看護総合,37:336-338.
1.睡眠計測定と観察法による睡眠・覚醒の2段階評
10)広辞苑 (2008):広辞苑第 6 版,東京:岩波書店.
価は、統計学的に「ほぼ完全に一致している」ことが
11)厚生労働省 (2008):保育所保育指針<平成 20 年告
示され、睡眠計は、保護者の観察に代わる測定ツール
示>,東京:フレーベル館.
12)厚生労働省 (2008):保育所保育指針 解説書,東京:
となり得る。
2.睡眠の深度を含めた3段階、あるいは、4段階評
フレーベル館.
13)児童福祉法 (2013):児童福祉六法 平成 25 年版,
価では、睡眠計と観察による測定結果は2段階評価よ
りは低いが、中程度以上の一致を見た。
東京:中央法規.
14)Cohen,J. (1960):A coefficient of agreement for
3.副次的に実施した、年齢別の午睡状態比較結果か
ら、年齢とともに午睡時間が短くなる傾向が認められ、
nominal scales,Educational and Psychological
保育所での午睡実施には年齢や個体差を加味する必要
Measurement,20(1):37-46.
15)Landis,J.R.,Koch,G.G.(1977):The measurement of
がある。
observer agreement for categorical data,
Biometrics,33:159-174.
謝辞
16)石束嘉和 (1995):臨床精神医学講座「睡眠障害」
,
本研究にご協力いただきました施設の皆様、お子様
ならびに保護者様に心より感謝申し上げます。また、
49-59,東京:中山書店.
17)香坂雅子 (2012):女性の睡眠障害 男性の睡眠と女
睡眠計使用の確認の際にご協力いただきました皆様に
厚く御礼申し上げます。
性の睡眠,睡眠医療,6(3):403-409.
18) 岩 川 善 英, 小 木 曽 正 勝, 豊 田 桃 三 他 (1984):
文献
Lennox 症候群の睡眠中の体動について-痙攣発作の
1)
奥平進之 (1984):睡眠の科学,184-207,東京:朝
予後との相関-,脳神経,36:267-273.
19)Roffwarg,H.P.,Muzio,J.N.,Dement,W.C. (1966):
倉書店.
2)
上野美代子 (2004):幼児の発達年齢別に観た睡眠
Ontogenic development of the human sleep-dream
覚醒リズムの特徴―有昼寝群と無昼寝群の比較,小
cycle:the prime role of dreaming sleep in early life
児保健研究,63:449-452.
may be in the development of the central nervous
3)
日本保育園保健協議会 編集委員会 (2007):保育園
system,Science,152:604-619.
の昼寝 ( 午睡 ) について ( アンケート総数 116 件 ),
20)日本臨床神経生理学会 臨床脳波検査基準改訂委員
会 (2003):改訂臨床脳波検査基準 2002,臨床神経生
保育と保健,13(1):28-29.
4) 清水敦彦,板場昌栄,兵藤友妃子 他 (2007):幼児
理学,31(2):221-242.
の“睡眠”についての研究,足利短期大学研究紀要,
21)Sadeh A(1994):Assessment of intervention for
infant night waking(1994):Parental reports and
27(1):15-25.
5)
神 山 潤 (2002):3 歳 児 の 睡 眠, 小 児 科,43(10):
activity-based home monitoring ,J Consult Clin
Psychol,62:63-68.
1467-1474.
6) 荒木章子,大日向純子,鈴木菜 他 (2008):北海道
22)Ancoli-Israel S(2005):Actigraphy,Principles and
旭川市における3歳児の睡眠習慣に関するアンケー
Practice of Sleep Medicine,4 th ed(Kryger MH,Roth
ト調査,脳と発達,40:370-374.
T,Dement WC eds),Elsevier Saunders,Philaderphia:
7) 沼口知恵子,加藤令子,小室佳文 他 (2009):茨城
1459-1467.
23)矢野正,三村寛一 (2009):幼児の睡眠・覚醒リズ
県における幼児の睡眠調査-睡眠の実態-,小児保
健研究,68(4):470-475.
ム と 身 体 活 動 量, 大 阪 教 育 大 学 紀 要,58(1):201-
8)
福井道彦,松代圭子,大森陽子 他 (1989):SOAD
211.
score を用いた ICU 入室患者の睡眠覚醒状態と体動
24) 奈 倉 道 明 (2008): 睡 眠 の 年 齢 推 移, 小 児 内 科,
-9 -
幼児に対する睡眠計の利用可能性の検証
40(1):29-32.
25)日本小児保健協会平成 22 年度幼児健康度調査委員
会 (2011):平成 22 年度幼児健康度調査速報版,小児
保健研究,70:448-457.
26)上野美代子 (2004):幼児の発達年齢別に観た睡眠
覚醒リズムの特徴―有昼寝群と無昼寝群の比較,小
児保健研究,63:449-452.
27)星野恭子 (2008):早起きは重要か?午睡は必要か?,
小児内科,40(1):22-28.
- 10 -
Dawn E. O’
Day
京府医大看護紀要,24:11-24,2014
Toward a Culturally Sensitive Understanding of Taijin Kyofusho : An Investigation
into a Culture-bound Syndrome
Dawn E. O’Day
School of Nursing,Kyoto Prefecutural University of Medicine
Abstract
Taijin kyofusho was first identified in the early 1900s and has been described as a phobia concerned with interpersonal
relations in which those afflicted excessively worry about offending others. Most Japanese psychiatrists were once in
agreement that taijin kyofusho is a culture- bound disorder. The culture-bound nature of this disorder, however, has been
called into question due to cases that have since been identified in East-Asian and Western countries. Since cultural
psychology is in its infancy, this article seeks to investigate the extent to which Japanese culture was taken into
consideration when the concept of taijin kyofusho was first introduced to the West. It also examines how the Japanese
indigenous classification of this disorder, with its four subtypes, evolved in the West by examining how it has been classified
in editions of the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders since 1980. Furthermore, it discusses how Japanese
social norms that function to maintain social harmony can explain why taijin kyofusho should be considered a Japanese
culture-bound syndrome. It concludes with a recommendation to investigate the relationship between TKS and Japanese
psychocultural characteristics and social behavioral norms because Takeo Doi’s seminal works support this inquiry.
Keywords:taijin kyofusho , fear of interpersonal relations, culture-bound syndromes, anxiety, amae
Taijin kyofusho (TKS) is generally regarded as a
in which cases of TKS have been identified? Have the
subtype of social anxiety disorder (SAD). Claims about
diagnostic criteria drastically changed since TKS was
TKS as a culture-bound syndrome have been a subject
first introduced to the West, and what impact does the
of interest to mental health professionals in Asia and in
current diagnostic criteria have on the status of TKS as
the West for more than 30 years. At one time, Japanese
a culture-bound syndrome? If we examine the most
psychiatrists were in agreement that TKS is a syndrome
recent literature, will we discover that the controversy
that is culture-specific to Japan (Russell, 1989). Over
regarding the question of its culture-bound nature has
the years, however, cases of this syndrome have been
been resolved? Finally, are there psychocultural and/or
reported in other collectivistic and Confucian Heritage
sociocultural characteristics that are unique to Japan
cultures, such as Korea and China (Chang, 1997; Tseng,
that support the original assumption of TKS as a
2006). Additionally, cases of TKS have also been
Japanese culture-bound syndrome?
reported in individualistic cultures, such as Australia
and the United States (Kim, Rapee, & Gaston, 2008;
Based on my cumulative experiences as an
McNally, Cassiday, & Calamari, 1990). Investigations for
expatriate who has lived in Japan for many years, I find
the purposes of clarifying the culture-bound nature of
the Japanese psychiatrists’assertion that TKS is
TKS have been undertaken, but with mixed results
culture-specific to Japan to be a well-founded one. I
(Choy, Schneider, Heimberg, Oh, & Liebowitz, 2008).
believe that the Japanese psychocultural characteristics
and social behavioral norms that exist, such as role
The inconclusive findings related to the culture-
sets, wa, on, giri, enryo, tatemae-honne, amae , and
bound nature of TKS beg the following questions: If
hitomishiri , can explain TKS as a Japanese culture-
TKS is a culture-bound syndrome, how can we account
bound syndrome because these characteristics and
for the cases that have been reported abroad? What
these norms serve to promote harmony in
does Japan have in common with other Asian cultures
interpersonal relationships. Both maturity and
- 11 -
Toward a Culturally Sensitive Understanding of Taijin Kyofusho: An Investigation into a Culture-bound Syndrome
experience are needed to master the skill sets related
populations-at-large until they grew to realize that
to these norms. As individuals develop and learn to
their scientific view of the world was a myopic one.
effectively execute behaviors that correspond to them,
They eventually learned that they could not generalize
their confidence in social situations is promoted. On
the findings of these studies because their samples
the other hand, without an understanding of the
were not representative of the populations about which
ambiguity that is valued in this culture and without the
they were making their predictions. For example, the
confidence or the skills needed to carry out the
results of testing hypotheses related to anxiety
behaviors related to these norms, disharmony in
experienced by university students could not be
relationships occurs. This can make individuals feel
generalized to populations with dissimilar
anxious and cause them to worry about offending
demog raphics. More specifically, the findings
others. Consequently, it can put them at risk for
pertaining to anxiety experienced by White students
avoiding interpersonal social situations. For these
between the ages of 19 and 22, who were under
reasons and because cultural psychology is in its
pressure to take tests and meet deadlines, could not be
infancy, it is worth examining the assumptions and
generalized to mothers who were raising children,
factors that have led many mental health professionals
financiers who worked on Wall Street in New York City,
to disregard the consensus among Japanese
or marginalized groups of people, such as minorities,
psychiatrists that TKS is culture-specific.
who were unemployed and/or struggling to eke out a
living. Once they realized this, however, psychology, as
a field, began to advance with a less ethnocentric
Culture-bound Syndromes
perspective.
According to Becker and Kleinman (2000), culturebound syndromes are“illness phenomena that appear
Most psychologists have long assumed that the
to be restricted to a particular cultural context”(p.
general principles of human behavior can be applied
465). Various culture-bound syndromes can be found
across cultures, however, an interest in the relationship
around the world. Dissociative events such as amok ,
between culture and human behavior was precipitated
zar , and pibloktoq have been found in Malaysia, North
by sociopolitical events (e.g. the women’s movement,
Africa, and in the Eskimo population, respectively.
the gay rights movement, etc.) that didn’t take place
Individuals in the Caribbean, Southern United States,
in the United States until the 1960s and 1970s (Weiten,
and Nigeria have experienced psychiatric
2010). As American psychologists began to have a less
symptomology that has been attributed to witchcraft.
myopic view regarding the application of the general
These syndromes are called rootwork and ode-ori.
principles of human behavior and as they started to
Culture-specific disorders related to anxiety that arise
give consideration to marginalized groups of people
for various reasons have been reported throughout
such as minorities and women, they also began to
Asia, and they include dhat in India, koro in Japan,
consider the impact that culture can have on
hwa-byung in Korea, shenkui in Japan and China; and
multicultural groups of people living within and outside
taijin kyofusho has been reported in Japan as well
the borders of the United States. Cultural psychology,
(Becker & Kleinman).
however, has still not been given enough attention by
the fields of psychology and psychiatry in the United
As mentioned, cultural psychology, as a discipline,
States; and Trujillo (2000) has reported that caution
is in its infancy. This assertion is supported by the fact
needs to be exercised when interpreting culture-bound
that approximately 50 years ago, psychologists in the
syndromes for the following reasons:
United States regularly carried out scientific
invest ig at ions using college students as their
1.Psychiatry’s neurobiological knowledge base
participants. They made predictions about phenomena
has not developed firm predictive biological
and generalized their findings to respective
indicators, even for the major psychiatric
- 12 -
Dawn E. O’
Day
disorders such as schizophrenic and bipolar
some have referred to him as Masatake (Maeda &
disorder.
Nathan, 1999). Moreover, not all of those who report on
2.Definitions of syndromes are thus by necessity
this syndrome are in agreement about the etiology of
phenomenologically based and have imprecise
TKS. Some have reported that it was first described in
boundaries.
the 1920s (Johnson, 1993; Lim, 2003). Still others report
3.In defining clinical syndromes, psychiatry
that an original description of it was advanced in the
depends on subjects who present for medical
1930s (Choy et al., 2008; Maeda & Nathan). All seem to
attent ion, a pro cess influenced by many
agree, however, that Morita described shinkeishitsu ,
psychosocial and socioeconomic variables. Of all
TKS, and other anxiety disorders and that he was the
people suffering a psychological distress or
founder of Morita therapy.
disorder, only the minority who seek and find
access to the health care system are represented
Clinical Features of TKS According to
in the official definition of the disorders (p. 499).
Japanese Mental Health Professionals
According to Russell (1989), Morita viewed
Taijin Kyofusho
shinkeishitsu as a disorder that was within the norm of
According to Russell (1989) shinkeishitsu and TKS
anxiety experienced by individuals but considered it to
have been of interest to Western psychiatrists and
be a condition that is“more highly developed in some
anthropologists alike since 1976 with scholars such as
than others”(p. 392). Morita believed that using a label
Lebra, Reynolds, and Lock leading the forefront of
that was associated with pathology would cause those
investigations into this culture-bound syndrome. They
who suffer from it to suffer more because of their
have been especially curious about Reynolds’work as
hypochondriac nature. Therefore, he attempted to
it pertains to shinkeishitsu and TKS with the aim of
distance this disorder from an association with
adapting therapeutic techniques to treat anxiety
pathology by referring to it as shinkeisuijaku (Russell).
disorders, but their knowledge of therapeutic treatment
options appeared to have been limited to Morita
Morita classified TKS as Type 2, the most prevalent
therapy (Russell). If cultural psychology and culture-
of three subtypes of a more general form of anxiety
bound syndromes, in particular, have not been given
that was originally known as shinkeishitsu (Russell,
enough attention and if caution should be exercised
1989). Clinically speaking, TKS has been reported over
when interpreting culture-bound syndromes, then what
the years to manifest as an intense fear of
has happened to TKS since Lebra, Reynolds, and Lock
interpersonal relationships characterized by one or
i n t r o d u c e d i t t o t h e W e s t ? To g a i n a b e t t e r
more of the following symptoms: (a) fear of creating
understanding of this, I will first describe TKS before it
tension between oneself and others, (b) fear of emitting
was introduced to the West and then examine how the
personal body odor, (c) fear of causing distress to
clinical features of the syndrome have evolved over the
others by blushing, (d) inappropriate staring, (e) fear of
years.
eye-to-eye confrontation, (f ) inappropriate facial
expressions, (g) dysmorphophobia (fear of a blemish or
a physical deformity), (h) fear of making mistakes, and
Etiology of Taijin Kyofusho
(i) fear of offending others through the act of flatulence
TKS is an anxiety disorder that was first described
(Chang, 1997; Matsunaga, Kiriike, Matsui, Iwasaki, &
by the Japanese psychiatrist known as Shoma Morita
Stein, 2001; Russell). People who are diagnosed with
(Kleinknecht, Dinnel, Kleinknecht Hiruma, & Harada,
this syndrome might also be obsessed with shame
1997; Lim, 2003; Nakamura, Kitanishi, Miyake,
(Maeda & Nathan, 1999), and be afraid of failure and/or
Hashimoto & Kubota, 2002). Not everyone is in
experience“lowered social performance”(Johnson,
agreement about Morita’s given name, however, as
1993, p. 256). The age of onset for this disorder, which
- 13 -
Toward a Culturally Sensitive Understanding of Taijin Kyofusho: An Investigation into a Culture-bound Syndrome
is more prevalent in males than in females, is 14; and
classified as“serious”include psychosis. An example
the symptoms have been known to improve or
of this is patients who are convinced that others can
disappear after the age of 30 (Russell). Treatment for
smell their body odor beyond distances from which it
this disorder has included, but is not limited to the
is possible to detect odor. Individuals who have TKS
following (a) Morita psychotherapy, (b) bed rest, (c)
symptoms experience them in all areas of their lives
hospitalization, pharmacotherapeutic treatment in the
(i.e., in their private lives, with“intermediate level”
form of anti-anxiety medication, (d) psychoanalysis,
persons, and in their experiences with strangers, too).
and (e) cognitive-behavioral therapy (Maeda & Nathan;
Those who experience symptoms that fall into the
Russell; Welkowitz, 2000).
“pure”category have insight into their problems and
are more apt to seek psychiatric help for them when
The clinical presentation of TKS has been
compared to their counterparts who experience more
described in terms of the following types:“(a) transient
serious symptoms, lack insight into their condition, and
type, (b) phobic type (most typical); (c) delusional type
who might experience delusions of reference and/or
(most severe); and (d) phobic disorder, accompanied by
delusions of a persecutory nature as well (Russell).
schizophrenia, arising as a prodrome of schizophrenia
or as a postpsychotic syndrome”(Kasahara as cited in
In 1989, Takahashi (as cited in Lim, 2003) proposed
Maeda & Nathan, 1999, p. 526). According to Russell
the following diagnostic criteria for TKS: (a) the
(1989), in the late 1970s and in the early 1980s,
presence of at least one of six aforementioned features
Uchinuma characterized the symptoms of TKS as fluid
(e.g., fear of blushing, fear that others will notice
ones that were fluid and indicated that a single phobia
physical deformities, fear of emitting body odors, etc.),
might develop into others. He also recommended
(b) a fear of others noticing the afflicted and/or a fear
thinking about TKS phobic symptoms in terms of
of offending or embarrassing others (at least one of
stages, which might range from normal to psychosis
these must be present), (c) the afflicted is cognizant
and that they might be sequentially experienced. In
that the fear they are experiencing is excessive at some
fact, he asserted that some individuals might not
time while experiencing the symptoms, (d) the fear
experience all of the stages. He suggested that the
significantly interferes with the ability of the afflicted
milder form of TKS symptoms are rooted in feelings of
to carry out everyday activities, or interferes with
shame while the more serious symptoms, such as
social or occupational functioning, and/or causes the
psychosis, are based in guilt feelings. Uchinuma also
afflicted marked distress, and (e) those who are 18
reported that two fears associated with psychosis are
years of age or older must have been symptomatic for
fear of eye-to-eye confrontation and fear of personal
one year (or for at least six months in the case of those
body odor; and, like Morita, he viewed psychotic
who are under the age of 18) [Lim].
symptoms as separate from the ones generally
experienced by those afflicted with TKS (Russell).
Finally, according to Maeda and Nathan (1999),
diagnostic criteria were also proposed in 1995. In order
In 1981, Aoki (as cited in Russell, 1989) used a
to fulfill these criteria, all four of the following
dichotomous classification for TKS, which Aoki referred
conditions would have to be met: (a) a sense of
to as tanjunkei (pure) and jusho (serious). Aoki asserted
inadequacy regarding the ability to interact in social
that those who are afflicted with TKS typically
situations, (b) persistent suffering from the emotional
experience symptoms of the“pure”category. For
reactions caused by this sense of social inadequacy is
example, some experience a fear of blushing. They
present, (c) the two previous criteria cause the afflicted
experience these symptoms with“intermediate level”
to worry about their ability to have healthy
people who are between their uchi (private) and soto
relationships, and (d) the afflicted reluctantly avoid
(outside) worlds (e.g., teachers, colleagues, neighbors,
social situations in which they must interact with
etc.). On the other hand, TKS symptoms that are
others. Three additional criteria were also proposed for
- 14 -
Dawn E. O’
Day
a diagnosis of the delusional form of TKS to be met
movements (p. 903).
(Maeda & Nathan).
In the DSM-5, TKS is described as a culture-related
diagnostic issue under SAD, but one that has a
Clinical Features of TKS in Western Diagnostic
“broader construct than social anxiety disorder”(APA,
Nosology
2013, para. 16, line 1). According to the APA (2013), TKS
In order to understand how the diagnostic criteria
is a cultural syndrome, and those who are afflicted with
for TKS have evolved in the West, it is important to
it experience anxiety with regards to“the avoidance of
review the clinical features of TKS in the DSM nosology
interpersonal situations due to the thought, feeling, or
and the ICD as well. TKS was not included in the DSM-I
conviction that ones’appearance and actions in social
or the DSM-II. Also, it did not exactly correspond to the
interactions are inadequate or offensive to others”
nosological categories found in the DSM-III. As for the
(para. 15, lines 2-3). They also“tend to focus on the
DSM-III-R, according to Johnson (1993), “some
impact of their symptoms and behaviors on others”
uncomplicated cases approximate the DSM III-R
(APA, para. 15, lines 5-6). Furthermore, the DSM-5
diagnoses of“avoidant disorders of adolescence,”
utilizes a dichotomous classification, which they have
“avoidant personality disorder”(in adults), or“social
described as the offensive type and the sensitive type.
phobia”(p. 256). Furthermore, mild cases of TKS
The working group for the DSM-5 (APA, 2013) also
closely meet the diagnostic criteria of“adjustment
notes that cases of TKS have been…
reactions”as defined in the DSM III-R in 1987 or
“neurotic disorders”as described in the World Health
…found in Korea and in other societies that place
Organization ICD-9 in 1979 (Johnson). TKS can be
a strong emphasis on the self-conscious
found in the ICD-10 under social phobia (Maeda &
maintenance of appropriate social behavior in
Nathan, 1999). In the DSM-IV, the fear of blushing in
hierarchical interpersonal relationships. Taijin
TKS corresponds to the fear of blushing that is found
kyofusho -like symptoms have also been described
in social phobia, and the fear of a deformed body
in other cultural contexts, including the United
corresponds to dysmorphic disorder as they are
States, Australia, and New Zealand (para. 17, lines
described in this edition of the manual. However, social
2-5).
phobia and dysmorphic disorder as described in this
manual are missing the defining feature of TKS, which
The Current Status of TKS as a Culture-
is the fear of embarrassing or offending others. Also,
Bound Syndrome
with regards to the DSM-IV, some attempt had been
made to reconcile TKS symptoms with social phobia by
It is clear from this brief investigation of the
using a dichotomous classification of the neurotic
diagnostic criteria for TKS and how it has evolved, that
subtype (a more general form of TKS) and the
Western psychiatry is, indeed, moving forward with a
delusional form of TKS, the offensive subtype (Choy et
less ethnocentric perspective. The fact that individuals
al., 2008). TKS can also be found in the appendix of the
with symptoms related to TKS in various cultures
DSM-IV-TR (American Psychiatric Association [APA],
around the world still exist calls into question the
2000) with the following description:
culture-bound nature of this mental disorder. Theorists
have attempted to provide explanations for the
A culturally distinctive phobia in Japan, in some
existence of this mental disorder abroad by attempting
ways resembling Social Phobia in DSM-IV. This
to explain it vis-à-vis cultural factors. Broadly speaking,
syndrome refers to an individual’s intense fear
much of the literature focuses on collectivism vs.
that his or her body, its parts or its functions,
individualism and an allocentric vs. an egocentric
displease, embarrass, or are offensive to other
interpersonal focus. Recent studies, cross-cultural and
people in appearance, odor, facial expressions, or
otherwise, shed light on the current perspective of
- 15 -
Toward a Culturally Sensitive Understanding of Taijin Kyofusho: An Investigation into a Culture-bound Syndrome
mental health professionals’opinions with regards to
the Swiss group, they concluded that TKS is a mental
the status of TKS as a culture-bound syndrome.
disorder that is unique to collectivistic cultures
(Vriends et al.).
Collectivism vs. Individualism
Although researchers have largely discussed and
Hoffman, Asnaani, and Hinton (2010), for example,
investigated individuals from East-Asian countries,
conducted a literature review on the subject of cultural
collectivistic cultures, such as those found in Latin
considerations related to SAD. Their search was a
American countries, exist in other regions of the world,
retrospective one and because of its relationship to the
too. In fact, Schreier et al. (2010) conducted a study,
publication of the DSM-IV, they began their search with
which showed that individuals, who come from Latin
1994, the year the DSM-IV was published. They
American cultures, do not share the socially reticent
investigated the literature with regards to prevalence,
behaviors and the high levels of social anxiety, which
ways in which the disorder is expressed, and
have been found in East-Asian countries. They assert
treatments for SAD and social anxiety as they pertain
that Latin Americans tend to be more outgoing and
to sociocultural factors such as race, ethnicity, and
social, and this is one way in which they promote
culture. They also reviewed the literature for
harmony in their culture. The results of their study
contributing factors to SAD and social anxiety, such as
suggest that levels of social anxiety in individuals
individualism vs. collectivism, self-construal, gender
cannot be explained in terms of values inherent in
roles, etc. They mentioned that Asian cultures have
collectivistic countries across the globe (Schreier et al.).
more rules for social behavior but found lower rates of
SAD when compared to individuals from Russia and the
Allocentric vs. Egocentric Interpersonal
United States with a mixed result having to do with the
Focus
prevalence of TKS. The limitations of this study include
the limited number of articles that were reviewed and
Still others have explained the existence of TKS in
the disproportionate focus that was on American
Korea and China in terms of Confucian Heritage
samples. The findings had implications for the
cultures, which consist of people who, in contrast to
impending publication of the next edition of the DSM
Westerners, have an allocentric interpersonal focus
(Hoffman, et al.).
( C h a n g , 1 9 9 7 ) . W h i l e We s t e r n e r s t h i n k a b o u t
themselves as being independent, those in Confucian
Some researchers have asserted that TKS,
Heritage cultures think of themselves in relation to the
especially its offensive subtype, is an East-Asian
other members who comprise their group; therefore
specific-syndrome that is the result of cultural values
they are considered to have an interdependent self-
and ways of relating that are unique to collectivistic
construal (Chang; Markus & Kitayama as cited in Choy
cultures. They assert that these cultures are
et al., 2008).
characterized by socially reticent behaviors, which are
cultivated in order to maintain harmony in cultures
Choy et al. (2008) investigated interpersonal focus
such as Japan, Korea, and China. Investigations on this
using a dichotomous classification for TKS when they
topic using samples from various cultures have been
conducted a cross-cultural study in which they
undertaken, but with mixed findings. For example,
hypothesized that participants diagnosed with the
Vriends et al. (2013) conducted a cross-cultural study
offensive type of TKS would experience more of an
using Indonesian and Swiss undergraduate students as
allocentric focus when compared to participants
participants. They used instruments that measured
diagnosed with a more typical form of the neurotic
social anxiety, self-construal, and TKS. Based on their
type of TKS and SAD. They operationally defined
findings in which the Indonesian group showed more
allocentric focus as a fear of offending others.
symptoms related to TKS and more social anxiety than
Furthermore, they hypothesized that the egocentric
- 16 -
Dawn E. O’
Day
focus, as defined by a fear of embarrassing oneself,
found in the DSM IV-TR help physicians gain insight
would be greater for participants with typical
into patients’cultural identity, cultural issues, and
symptoms. The participants were from two countries,
culture-bound syndromes such as TKS. Furthermore,
the United States (n = 181) and Korea (n = 64), and the
they discussed the challenges of treating a foreign
TKS Questionnaire was utilized to assess the symptoms
student who might be reluctant to receive treatment
related to the offensive type. Seventy-five percent of
due to cultural attitudes about mental illness and
the study participants from both countries endorsed
recommended that reframing mental illness in terms of
five symptoms related to the offensive type, and an
something that is more acceptable to patients, such as
association was found between the severity of
culture shock, can help patients become amenable to
symptomatolog y in relat ion to so cial anxiety,
treatment options (Juckett & Rudolph-Watson).
depression, and disability relative to the severity of TKS
features. The authors concluded with a
Juckett and Rudolph-Watson (2010) also
recommendation for further investigation into the
recognized the value of understanding TKS within the
predictive relationship between offensive TKS features
context of Japanese culture in order to deepen their
in patients who have been diagnosed with SAD in
understanding of how to treat this disorder when they
relation to their response to cognitive behavioral
encounter cases of it in the United States. It is for this
therapy and pharmacotherapy. They also reported that
reason that we need to continue to seek clarification
the findings of this study suggest that TKS might not
about the culture-bound nature of this disorder. Indeed,
be as culture-specific has it was once believed to have
Welkowitz (2000) underscored the importance of
been (Choy et al.).
considering cultural factors when treating social
phobia when this author wrote the following:
TKS as a Culture-bound Syndrome and the
…in utilizing cognitive therapy with Japanese and
Need for Clarification
other Asian patients, it is important to consider
In spite of the fact that TKS has been recognized
general cultural characteristics, such as the
as a culture-bound syndrome in various editions of the
importance of displaying hierarchical deference
DSM, the findings from the aforementioned studies,
(i.e., respect for those in authority) as well as an
which have been conducted within the past 6 years, are
e m p h a s i s o n c o m m u n a l ve r s u s i n d i v i d u a l
mix e d a nd inconclusive. While it might seem
expression (p. 1500).
reasonable to accept this ambiguity, the following case
illustrates that cultural issues related to TKS must at
Japanese Cultural Factors that Contribute
least be considered in order to promote patients’
to the Development of TKS
compliance with treatment.
This inquiry into TKS has informed us that one of
Juckett and Rudolph-Watson (2010), who are
the defining features of TKS that does not correspond
general practitioners in the field of medicine, employed
to SAD is the obsessive worrying those who suffer from
the case history methodology to illustrate the
it have because their physical appearance or behaviors
challenges they encountered when they treated a 24-
might offend or embarrass others. Additionally, it is
year old Japanese student studying in the United States
clear that the question of the culture-bound nature of
who presented to their health clinic in West Virginia.
TKS has primarily been explained in terms of cross-
The patient presented to their clinic with concerns that
cultural differences. Thus far, the defining clinical
he was offending others with his body odor. They
features of TKS have been attributed to characteristics
diagnosed him with depression, adjustment disorder
found within collectivistic cultures for the following
secondary to culture shock, and a suspected social
reasons: (a) the relationships within these cultures are
phobia. The authors pointed out that case narratives
vertical, (b) there is an allocentric interpersonal focus,
- 17 -
Toward a Culturally Sensitive Understanding of Taijin Kyofusho: An Investigation into a Culture-bound Syndrome
which results with a concern for how behaviors affect
others, and (c) both rules for social behaviors and
The ability to react creatively and promptly within
behaving in socially reticent ways are the norm in
a series of role sets is strongly emphasized and
order to maintain social harmony. However, at least the
rehearsed in Japanese socialization throughout the
results of one study inform us that these are not
lifespan. Any change or attenuation in this facility
generalizations that can be made about all collectivistic
generates conspicuous anxiety, along with the wish
cultures (Schreier et al., 2010). Findings, such as this,
to flee interpersonal situations (p. 257).
begin to shift the focus of investigation to East-Asian
cultures because they share the aforementioned
Wa
cultural characteristics.
Trujillo (2000) has noted that TKS is best
There are differences among East-Asian cultures
understood“against the background of intense
that need to be considered. First of all, in addition to
Japanese emphasis on proper social behavior and the
the fact that values vary across cultures, there are
shame attending transgressions of decorum”(p. 498).
social norms that dictate the way in which people will
Wa is a psychocultural characteristic that is concerned
behave in interpersonal relationships within specific
with maintaining social harmony. Its importance to the
cultures. Some of these social norms are shared by
people in Japanese society cannot be underestimated.
East-Asian cultures but are expressed differently. On
Social acumen is needed to maintain social harmony
the other hand, some of them are unique to the
because of the balance that must be struck between
Japanese culture. Therefore, it is worth considering the
expressing oneself and restraining oneself, but at times
extent to which they might cause varying degrees of
the potential for conflict can threaten the status quo
anxiety to certain Japanese people who are not socially
(Lebra as cited in Johnson, 1993). According to
skillful and the extent to which they might explain the
Johnson, in such situations, attempts are made to
culture-bound nature of TKS. As previously mentioned,
confine or divert conflict. Psychological mechanisms,
these psychocultural and social behavioral norms are
such as repression and denial, can be used to attain
role sets, wa , on , giri , enryo , tatemae-honne , amae , and
that end. Furthermore, from a social-psychological
hitomishiri .
perspective, with special consideration given to saving
face, conflict can be managed between people through
avoidance or a resolution, the latter of which might
Role Sets
come about indirectly or through compromise
The asymmetrical nature of role sets within Japan
( Johnson). More often than not, however, social
has the potential to cause individuals to feel anxious
behavioral norms are used to maintain social harmony.
and coupled with other defining symptomology can
result in a diagnosis of TKS. In fact, Johnson (1993) has
On and Giri
described TKS as“a generalized weakening in the
capacity to sustain role sets”(p. 257). Roles sets are
Like wa , on, and giri involve complex, socially
generally asymmetrical in collectivistic cultures and
contextual ways of relating that require a high degree
symmetrical in individualistic cultures. Examples of
of social acumen, which are often learned from
roles sets include dyadic relationships such as doctors
childhood. According to Johnson (1993), on“requires a
and patients, teachers and students, and husbands and
special sense of obligation, gratitude, and dedication
wives. In individualistic cultures, such as the United
toward certain superiors who are pictured as having
States, the relationships tend to me more egalitarian
bestowed benevolent care and favors toward their
than their collectivistic counterparts. Since vertical
status subordinates”(p. 81). Japanese strive to reduce
relationships exist in Japan, one member of a dyad has
their sense of indebtedness to their superiors in various
superiority over the other. Johnson wrote:
ways. The term giri refers to social obligations, which
- 18 -
Dawn E. O’
Day
can involve peers, but is“more often concerned with
considered to be“any rule of conduct which Japanese
indebtedness toward persons of varying and different
accept by unanimous agreement,”and it helps them
statuses, involving relations that are outside the
“to safely and continuously entertain one’s honne ”(p.
immediate family or close friends”(Johnson, p. 81). Giri
82). It is a double standard that is valued in Japanese
regulates interpersonal relationships, and it is done by
society, and it is done in good conscience (Doi).
keeping the situation, the nature of the role sets, the
length of the relationship, etc. in mind (Johnson).
According to Johnson (1993), tatemae and honne is
Japanese“feel giri ”(obligation) when others, toward
a social norm that is related to self-presentation, the
whom they have enryo (restraint), show kindness to
latter of which is an important matter to the Japanese.
them (Davie & Ikeno, 2002, p. 18).
When those who are diagnosed with TKS blush or
behave in other ways that reveal their intentions or
feelings, they worry about this. The loss of control they
Enryo
experience in these situations threatens their“integrity
According to Doi (1981), enryo means to restrain
of self-presentation”(p. 257) and interrupts the balance
oneself, and it can be used to gauge levels of intimacy
they have between their tatemae (outside) and the
within relationships. There is an inverse relationship
honne (inside) worlds (Johnson). According to Doi, not
between restraint and intimacy. It is important that
all Japanese understand or accept the duality involved
individuals are aware of enryo because an extreme
with this way of relating, especially the youth. It
attitude about it vis-à-vis relationships can cause
requires a high level of maturity to accept the
problems for Japanese in both their inner and outer
ambiguity related to it and to incorporate it into the
social worlds (Doi). It is easy to imagine that failing to
way one communicates with others (Doi). Failure to
exercise restraint in relationships can cause individuals
properly use tatemae and honne in social situations
who lack confidence and who are overly concerned
has the potential do the following: (a) cause anxiety in
that their physical appearance might be offending
those who lack the ability to do it, (b) be offensive to
others, to feel anxious or fearful in certain situations.
others, and (c) create social disharmony. Social
In a collectivistic culture such as Japan, fears such as
disharmony, in turn, can give rise to social anxiety as
these are especially problematic because they can
well.
result in social avoidance due to excessively worrying
about bringing shame to members of the sufferers’in-
Amae
group (Kleinknecht et al., 1997). It seems reasonable to
say that without enryo , the individual will lack the
We cannot underestimate the importance of using
communication skills needed to carry out tatemae-
amae to promote harmony in interpersonal
honne .
relationships (Davies & Ikeno, 2002). Amae is the way
o n e i n d i v i d u a l i n a d y a d i c a n d a s ym m e t r i c a l
relationship depends upon the other’s benevolence
Tatemae and Honne
(Doi, 1981). It manifests in the lifelong desire for
Tatemae and honne can be found in other cultures,
intimacy with others (Doi, 2005). According to Doi
but it is used much more in Japan because the indirect
(1981), the relationship between a mother and her child
expression of feelings is considered a virtue and
is the prototype of amae , however, Japanese culture
maintaining social harmony is also valued (Davies &
allows for amae to be expressed in one form or another
Ikeno, 2002). Even when they disagree with each other,
in various relationships throughout an individual’s
Japanese strive for unanimous agreement in their
life. In the context of amae , behaving in inappropriate
communications (Doi, 2005). Tatemae can be described
ways when relating to others can cause one or both
as“principle”and honne as one’s true thoughts and
parties to feel anxious. Social acumen is needed to
feelings. More specifically, however, tatemae is
understand with whom it can be done and when it can
- 19 -
Toward a Culturally Sensitive Understanding of Taijin Kyofusho: An Investigation into a Culture-bound Syndrome
be done. Finally, an unfulfilled desire to amaeru can
experience it to adapt (Kleinknecht et al., 1997; The
cause anxious reactions in people, and this is strongly
Cleveland Foundation, 2014). Across cultures, it is also
connected to hitomishiri (Doi).
something that is experienced by most individuals
when social conflict occurs. Cultural influences,
however, impact the way in which it is experienced,
Hitomishiri
expressed, and the ways in which it is deemed to be
According to Doi (1981),“coming to know people”
pathological. With the exception of the differences in
is the most direct translation of the word, hitomishiri,
the orientation of interpersonal focus and the concern
which is commonly translated as shyness (p. 105).
about offending others vs. a fear of embarrassing
“Adults use this term to express social situations in
oneself, the diagnostic criteria for SAD closely
which they are reluctant to participate due to feelings
resembles those of TKS. Therefore, it is possible that
of self-consciousness. Hitomishiri is connected with the
misdiagnoses can account for some of the cases that
development of personality, and it is akin to“stranger
have been reported in Western cultures. Because an
anxiety”that infants have been reported to experience
explanation has not yet been provided for these cases,
in the West and in other parts of the world. Hitomishiri
further inquiry into this matter is recommended. As for
simultaneously occurs with amae at the time when the
the second question, a brief review of the literature
infant recognizes its mother and is able to tell the
revealed that individuals in East-Asian countries, such
difference between her and others. As the infant grows
as Korea, China, and Indonesia, share a Confucian
older and is reluctant to approach strangers, Japanese
Heritage culture and certain characteristics, such as an
mothers sometimes think that the child is experiencing
allocentric interpersonal focus and a concern about
too much hitomishiri . Some degree of hitomishiri is
offending others that are associated with TKS. These
necessary in relationships with people outside the
characteristics, as suggested by the aforementioned
familial sphere because it helps them to learn when
literature on this subject, can account for the cases of
can amaeru . Environmental influences and/or
TKS that have been reported in these countries.
disturbances in the mother-child relationship as the
infant begins to develop can give rise to anxiety in
The third set of questions I posed follows: Have
interpersonal relationships later in life. In relationship
the diagnostic criteria drastically changed since TKS
to amae , when hitomishiri is too strong, individuals can
was first introduced to the West, and what impact do
be frustrated, and this can give rise to neurotic anxiety.
the current diagnostic criteria have on its status as a
For this reason, Doi asserted that hitomishiri is
culture-bound syndrome? As previously mentioned,
specifically at the root of anxiety experienced by those
Western scholars became aware of TKS in 1976, and it
who suffer from TKS (Doi).
subsequently became known to Western psychiatrists
and psychologists through these scholars and the work
of Morita. As I began reading the literature in
Conclusion
preparation for this paper, I was concerned about a
At the start of this paper, I posed several
report which stated that a dichotomous classification
questions. The first two questions I posed follow: (a) if
for TKS was adopted in 1996 for the sake of
TKS is a culture-bound syndrome, how do we account
“simplicity”with a“mild/neurotic”type on the one
for the cases that have been reported abroad, and (b)
hand and a“severe/delusional”type on the other hand
what does Japan have in common with other East-
(Hashimoto as cited in Maeda & Nathan, 1999, p. 526). I
Asian cultures in which cases of TKS have been
was also concerned that the defining features of TKS as
identified? The answer to the first question might have
a syndrome that is indigenous to Japan (i.e., the
to do with the universal nature of anxiety. It is a
aforementioned four subtypes as described by
response experienced by humans and animals alike; it
Kasahara and the diagnostic classification which was
also serves as a warning and helps those who
proposed by Takahashi) would be lost when the
- 20 -
Dawn E. O’
Day
diagnostic criteria was collapsed into a dichotomous
The remaining questions I posed follow: (a) in view
classification for TKS (i.e., the“pure”vs.“serious,”and
of the increasing number of TKS cases found
the“neurotic”vs.“offensive”types). Based on these
worldwide, why can we not simply accept at face value
concerns and the long-standing ethnocentric
that TKS is not culture-bound, and (b) are there
perspective held by the mental health community in
psychocultural and/or sociocultural characteristics that
the United States, I expected that the Western
are unique to Japan that support the orig inal
psychiatric community would not recognize the
assumption of TKS as a Japanese culture-bound
significant and unique clinical features of TKS-
syndrome? We cannot simply accept at face value that
specifically that anxiety is exacerbated secondary to
TKS is not culture-bound because it is recognized in
the sufferers’concern that they will offend others. I
the current DSM as a culture-bound syndrome and
also expected that Westerners would not give enough
because an investigation into the reasons that it is
consideration to the cross-cultural differences that
considered culture-specific has not yet been conducted.
exist and that as they looked at the TKS symptoms
The focus of my inquiry into the indigenous description
through a Western cultural lens, they would attempt to
of TKS, the diagnostic criteria in Western nosologies,
mold these symptoms into their existing diagnostic
how the descriptions of the diagnoses have evolved,
criteria. It is interesting to note, however, that in spite
and the limited literature review was, in part,
of these concerns and the longstanding debate about
conducted to learn about the current general attitude
the culture-bound nature of TKS as well as the findings
and findings of TKS as it pertains to its culture-bound
of numerous studies, which suggest that this disorder
status.
is a universal phenomenon, the DSM-IV, the DSM-IVTR, and the DSM-5 all consider TKS to be a culture-
I found that broad generalizations about cross-
bound syndrome. In fact, the defining features of TKS
cultural differences were made in an attempt to explain
have been retained, and the indigenous culture-bound
TKS as a culture-bound syndrome. This was surprising
nature of this disorder has been recognized.
because my personal and professional cumulative
experiences while living in Japan lead me to believe
The fourth question that I posed regarding TKS
that TKS, as a culture-bound syndrome, can be
follows: If we examine the most recent literature, will
explained by Japanese psychocultural characteristics
we discover that the controversy regarding the
and social behavioral norms. Not satisfied with the
question of its culture-bound nature has been resolved?
explanations I found in the current literature,
As previously mentioned, Japanese psychiatrists were
particularly because there were no investigations into
once in agreement that TKS is a syndrome that is
the psychocultural characteristics that make Japan
culture-specific to Japan. After others in East-Asia and
unique, I began to investigate TKS in relation to amae
in other parts of the world learned about it, cases of
from psychoanalytic and anthropological perspectives.
TKS were reported in other collectivistic cultures and
It was in the seminal works of Doi that I found support
in Western countries, such as the United States and
for my ideas. In view of this discovery, I recommend a
Australia. Investigations were undertaken to clarify the
deeper invest ig at ion into the aforement ioned
culture-bound nature of TKS but with mixed results. No
psychocultural factors and the social behavioral norms
matter what the mental health professionals in Japan
related to communication that are unique to Japan (e.g.,
and/or in the United States claim about TKS with
wa , on , giri , enryo , tatemae-honne , amae , and
regards to its cultural specificity, it is clear, at least,
hitomishiri ), the reasons they can give rise to anxiety,
that they are generally in agreement that TKS is an
and how they relate to a diagnosis of TKS, especially
anxiety disorder (Nuckolls, 2006). As mentioned, the
with regards to the defining features of this disorder
DSM-5 currently recognizes TKS as a culture-bound
(e.g., being concerned about offending others).
syndrome, however, investigations into its culture-
Furthermore, because the unspoken expression of
bound nature continue.
feelings is valued over straightforward communication
- 21 -
Toward a Culturally Sensitive Understanding of Taijin Kyofusho: An Investigation into a Culture-bound Syndrome
in Japan, Japan is considered to be a high-context
Oriental Limited.
culture in which much is communicated indirectly and
Hoffman, S. G., Asnaani, A., Hinton, D. E. (2010). Cultural
through proscribed behavioral practices and patterns
aspects in social anxiety and social anxiety disorder.
that require a high level of social skill to perform. An
Depression and Anxiety , 27, 1117-11127.
inability to successfully execute social skills related to
Johnson, F. A. (1993). Dependency and Japanese
using communication strategies that are unique to
socialization: Psychoanalytic and anthropological
Japan can result in social disharmony and give rise to
investigations into amae. New York, NY: New York
University Press.
anxiety. For this reason, I conclude this paper by also
recommending an inquiry into the relationship between
Juckett, G., & Rudolph-Watson, L. (2010). Recognizing
TKS and Japanese communication strategies, such as
mental illness in culture-bound syndromes. Family
chinmoku , ishin denshin , and non-confrontational
Physician , 81(2), 209-210.
interactional styles that are practiced in this country.
Kim, J., Rapee, R. M., & Gaston, J. E. (2008) Symptoms of
offensive type taijin-kyofusho among Australian
social phobics. Depression and Anxiety , 25(7), 601-
Acknowledgements
I would like to express my heartfelt appreciation
608.
to Professor Kitajima, Professor Nishida, and Professor
Kleinknecht, R. A., Dinnel, D. L., Kleinknecht, E. E.,
Fujita for their assistance and support with the
Hiruma, N., & Harada, N. (1997).
publication of this article.
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- 23 -
Dawn E. O’
Day
京府医大看護紀要,24:25-34,2014
Moving Toward the Future: Overcoming Language Barriers in the Hospital Setting
in the 21st Century
Dawn E. O’Day
School of Nursing,Kyoto Prefecutural University of Medicine
Abstract
More than 50 countries throughout the world are involved with the medical tourism industry, and the majority of the
destination countries related to this industry are located in Asia. Language barriers, which pose problems for this industry,
exist when two people who do not share a common language encounter challenges when attempting to communicate with
each other. Language barriers increasingly pose problems for patients and healthcare providers in part because more and
more people are seeking medical services in countries in which a common language is not shared. This article identifies
some of the challenges patients face as they attempt to access the healthcare services they seek in hospitals that are foreign
to them. Additionally, it explores the impact doctor-patient language discordance can have on the following: (a) patients’
understanding of their medical condition, (b) the dissemination and receiving of medical advice, (c) patient satisfaction, and
(d) the appropriateness of the medical care they receive. Good communication between healthcare providers and patients is
essential for good medical treatment outcomes, so this article also explores the use of interpreters to facilitate such
communication between doctors and patients. It concludes with recommendations for effective methods that can improve
communication and help healthcare providers overcome language barriers that patients encounter in the hospital setting.
Keywords:language barriers, medical tourism, access to healthcare, cross-cultural issues
Medical tourism is an industry in which people
are not limited to, hair transplantation, ophthalmologic,
travel from their home country to other countries to
bariatric, and cosmetic surgeries (Turner, 2012). They
seek medical services. Although medical tourism might
also seek affordable dental care and infertility
seem like a new phenomenon, it is not. Expatriates, for
treatment services in such a demand that the
example, have been known to travel from less
respective terms“dental tourism”and“fertility
developed countries to more developed countries
tourism”have recently been coined to refer to them.
within South-East Asia to receive affordable medical
According to NaRanong and NaRanong (2011), Asia
care (Cohen, n.d.). More commonly, however, we have
leads the way as the region of the world in which many
heard about people who travel from developing
of the medical services and procedures are carried out
countries to developed countries to seek a quality of
for medical tourists. Thailand, Singapore, and India
healthcare they cannot receive within the country in
rank the highest among the destination countries that
which they reside. These people are usually wealthy or
provide these kinds of medical services. In fact, in 2008,
those who have had benefactors fund their trips and
of all of the medical tourists who sought health care
their medical expenses, so they can get the medical
across the globe, 90% of them received medical services
care they need.
in these three countries (NaRanong & NaRanong).
Today, the trend in the route of migration across
While medical tourism seems to be mutually
international boundaries to receive medical services
beneficial to those who receive medical care and for
has reversed. Primarily because healthcare services are
many people who reside in the destination countries as
exorbitantly expensive in developed countries, more
well, there is at least one major concern that is shared
and more people are traveling from developed
by medical tourists and their healthcare providers. This
countries to developing countries to receive a wide
concern is that medical tourists travel while assuming
range of affordable medical services, which include, but
certain health risks. For example, the WHO Research
- 25 -
Moving toward the future: Overcoming language barriers in the hospital setting in the 21st century
i n t o G l o b a l H a z a r d s o f Tr a ve l ( Wo r l d H e a l t h
at an affordable price that the medical tourism industry
Organization, 2007) found that the risk of deep venous
provides, or they find themselves in a doctor’
s office or
thromboembolism nearly doubles after flights that last
a hospital because they are living or vacationing
longer than four hours. This research group also found
abroad, if they do not share a common language with
that this risk increases with multiple flights that are
the healthcare providers from whom they are receiving
taken over short periods of time and with co-existing
medical services, they will encounter language barriers.
conditions, such as patients who have diabetes (World
These language barriers can have deleterious effects as
Health Organization). Moreover, the increased risk of
they might preclude patients from the following: (a)
post-operative complications is such a concern for
accessing healthcare services they might have traveled
many doctors that they tend to advise their patients
far and wide to receive, (b) understanding hospital
against flying soon after undergoing certain medical
procedures specific to the place in which they intend to
procedures (Amato-Watkins, Rao, & Leach, 2013).
receive care, (c) communicating effectively with their
Furthermore, medical tourists also assume a certain
healthcare providers, (d) understanding their medical
amount of risk due to language barriers, cross-cultural
conditions, (e) receiving medical advice, (f) obtaining a
communication styles, and cross-cultural clinical
high sense of satisfaction from the healthcare services
encounters, which can result in increased anxiety,
they have received, and (g) receiving appropriate
misdiagnoses, and treatment plans that are not in the
medical care.
best interest of the patients (Becker & Kleinman, 2000).
In spite of these risks, medical tourists
Accessing Healthcare Services
purposefully seek healthcare services abroad. However,
there are others who unintentionally find themselves in
Language barriers pose many problems, and one
a waiting area outside of a doctor’
s office, in an X-ray
of these problems is that they can prevent people from
room, or in an emergency room of a hospital in a
accessing healthcare services (Ponce, Hays, &
country that is foreign to them. These individuals are
Cunningham, 2006). Whether or not patients or their
expa tr ia te s who work abroad, the spouses of
healthcare providers realize it, patients need to share a
expatriates, and their children. They are also tourists
common language with the natives from the country in
who have come to see the sights, learn about another
which they are attempting to receive services in order
culture, or seek adventure. In the not so distant future,
to physically gain access to healthcare facilities. If
it is likely that fans of the Olympic games will join their
patients do not share a common language, services
ranks in Japan as well because it is expected that there
need to be provided to help bridge this language gap.
will be an increase in the number of foreigners seeking
Whether patients are medical tourists or general
medical services at the Kyoto Prefectural University
tourists, they will need to be able to read a map and/or
Hospital and other hospitals in the Kansai area. This is
public transportation service schedules to learn how to
due to the short sightseeing excursions that fans are
access the medical care they intend to receive. Doing
likely to take to Kyoto before or after watching the
this in unfamiliar surroundings within a couple of days
games in Tokyo. For this reason alone, if not for other
o f j u s t a r r i v i n g i n a c o u n t r y a f t e r t h e y h a ve
reasons, it is important to give consideration to the
undoubtedly spent up to a day traveling to their
language barriers and cross-cultural clinical encounters
destination country via a number of different modes of
that can impact the delivery of healthcare services and
transportation (e.g., car, airplane, train, etc.) makes this
treatment outcomes as it concerns patients who receive
a formidable task. Of course, patients who are
services in a hospital setting while they are in another
expatriates will probably not encounter as many
country.
difficulties as medical tourists because the expatriates
Language Barriers
already live in the country, and most likely the city, in
Whether people seek medical services abroad
which they will receive healthcare services. Newcomers
because they are availing themselves of these services
and those who are illiterate in the language, however,
- 26 -
Figure 1. This patient cannot recognize shapes due to a condition
called agnosia.
Dawn E. O’
Day
Even though the building is clearly marked in the Japanese language, for example, if it is
will need assistance because they are likely to have
not written in the non-native patient’s language, patients
difficulty finding their way
thebehospital.
willtonot
able to find the building they need, so they
Once at the hospital,
patients
must
to
can enter
it. It is
as if be
theyable
are groping
in the dark. (See
engage in goal directed behaviors.
They
also
need
tools
Figure 2.) It renders them just as helpless as the patient
to carry out these behaviors,
so Sack’s
they can
in Oliver
caseattain
study their
who had prosopagnosia, a
goals, which are often taken
for granted
nativehim from recognizing
perceptual
deficit by
thattheir
prevented
counterparts. The exceptions
to face.
thoseThis
whopatient
take also
the suffered from visual
his wife’s
resulted
an ability to recognize objects
ability to carry out goal agnosia,
directedwhich
behaviors
foringranted
© Can Stock Photo Inc. / heckmannoleg
Figure 2. Patients may grope in the
and shapes.
As a result
thisblind,
condition, this Figure
patient 2. Patients may grope in the dark when left to
include, but are not limited
to, patients
who ofare
darkonwhen
leftown
to rely
on their
own
rely
their
limited
language
skills.
those who suffer from dementia, and those who are
limited language skills.
mentally challenged.
To illustrate this point, let’
s take the case of
-4study who was diagnosed with visual agnosia and
patients who are diagnosed with dementia and who
prosopagnosia, a perceptual deficit that prevented him
experience agnosia. These patients must have the
from recognizing his wife’
s face. As a result of this
ability to derive meaning from the letters or characters
condition and his inability to recognize objects and
they see on signs, for example, in order to make sense
shapes, this patient, according to Sacks (1998), once
of them
andlanguage,
find their
way;willbut
patients
suffer
and those who are illiterate
in the
however,
likely
still havewho
difficulty
mistook a carrot for a key and attempted to use the
finding their way to the
hospital.
from
agnosia have difficulty doing this because they
Once at the hospital, patients must be able to engage in goal directed behaviors.
carrot to unlock the door to his apartment. As you can
cannot recognize shapes (See Figure 1.). Non-native
imagine, he was not able to enter it. Eventually, the
patients must also have the ability to derive meaning
patient’
s wife realized he was trying to get in, and she
from
the letters
or characters
they
see include,
on signs,
but
those who take the ability
to carry
out goal directed
behaviors for
granted
but are
opened the door for him (Sacks). Like this patient who
They also need tools to carry out these behaviors, so they can attain their goals. These
goals and tools are often taken for granted by most native patients. The exceptions to
areblind,
unable
to who
do this
they and
do those
not who
share
not limited to, patientsthey
who are
patients
sufferbecause
from dementia,
suffered from visual agnosia, patients who suffer from
are mentally challenged.
illustrate this
point,
take the
case oftheir
patients
who are
theTolanguage
used
bylet’s
people
within
destination
other forms of dementia, those who are blind, and non-
diagnosed with dementia and experience agnosia. These patients and non-native patients
country. This is problematic for them because their
native patients alike might feel as if they are groping in
alike cannot, albeit for different reasons, understand the meaning of what is written on
first goal is to locate the hospital. In the case of
the dark when they are trying to find their way in
signs. This is problematic for non-native patients who do not share the same language as
surroundings that are new to them. (See Figure 2.)
patients
whose
destination
ishospital,
Japan,andfor
the natives of the destination
country
because
the first goal iscountry
to locate the
instance,
no-native
patients
are unfamiliar
with
this involves the ability
to recognize
letters or characters
andwho
to understand
their meaning.
Although the patient described in Oliver Sacks’
Just as patients who suffer
from agnosia
cannotmake
recognize
shapes
(See Figure
1), these
the language
cannot
sense
of Chinese
characters.
case study was not distressed by his situation because
non-native patients cannot, in the case of Japanese language, for instance, make sense of
he was not aware of his condition, non-native patients
mistook a carrot for a key and attempted to unlock the door to his apartment. As you can
Chinese characters.
who cannot read signs, will begin to feel confused,
imagine, he wasn’t able to enter his anxious,
apartment.
his(See
wifeFigure
realized
he was trying
andEventually,
disoriented.
3.) Whether
it is a
to get in, and she opened the door for
himsign
(Sacks,
large
that1998).
clearly states the name of the hospital
Although this patient was notordistressed
by
this
situation
because
he wasn’t
a small sign that
identifies
the X-ray
room,aware
these
of his condition, non-native patients who cannot read signs, begin to feel confused,
anxious, and disoriented (See
Figure 3). Whether it is a large
© Can Stock Photo Inc. / gajdamak
sign that clearly states the name
1. This
patient cannot
recognize
shapes due to shapes
a conditiondue to
FigureFigure
1. This
patient
cannot
recognize
of
the
hospital
or a small sign
called agnosia.
a condition called agnosia.
that identifies the X-ray room,
Even
though
the inbuildings
clearly
Even though the building
is clearly
marked
the Japaneseare
language,
for marked
example, ifin
it isthe
these patients must rely on the
not written in the non-native
patient’s
language,ifpatients
Japanese
language,
they are not written in the nonkindness of a passerby
will not be able to find the building they need, so they
native patient’
s language, patients will not be able to
or a
can enter it. It is as if they are groping in the dark. (See
hospital volunteer who must
Figure 2.) It renders them just as helpless as the patient
summon up the courage they
find the building they need, so they can enter it. This
© Can Stock Photo Inc. / RTimages
just as helpless
as patients who suffer
in Oliver Sack’s caserenders
study whothem
had prosopagnosia,
a
need
to
help
a
whocannot
cannot
Figure 3.
3. Patients
Patients who
read read
signs signs
may getmay
lost get
and lost
feel
foreigner. Figure
agnosia
and recognizing
as the patient in Oliver Sacks’case
perceptual deficit thatfrom
prevented
him from
his wife’s face. This patient also suffered from visual
agnosia, which resulted in an ability to recognize objects
and shapes. As a result of this condition, this patient
-4-
Alternatively, they must rely on
and feel confused and disoriented.
confused or disoriented.
© Can Stockor
Photodoctors
Inc. / heckmannoleg
nurses
who have the ability to anticipate their needs to help them to gain
Figure 2. Patients may grope in the
physical access to the places
where they need to go. If they cannot get this support, the
dark when left to rely on their own- 27 -
departments
within the hospital and the medical services of which they need to avail
limited language skills.
themselves are just as inaccessible for these patients as the apartment was for the man
Moving toward the future: Overcoming language barriers in the hospital setting in the 21st century
patients must rely on the kindness of a passerby or a
doctor has provided.
hospital volunteer who might have to summon up the
When the doctor is ready to see a patient, a nurse
courage they need to help a foreigner. Alternatively,
calls the patient’
s name and accompanies him/her to a
they must rely on nurses or doctors who have the
private room. The nurse asks the patient to sit on the
ability to anticipate their needs to help them to gain
examining table. Then s/he takes the patient’
s
physical access to the places where they need to go. If
temperature and obtains vital signs in order to assess
they cannot get this support, the departments within
the patient’
s general physical health condition. The
the hospital and the medical services of which they
nurse also records information on the patient’
s chart.
need to avail themselves are just as inaccessible for
Then s/he will ask the patient to wait for the doctor
these patients as the apartment was for the patient
who will later come into the room. When the doctor
with prosopagnosia and visual agnosia who
arrives, s/he does the following: (a) greets the patient,
unsuccessfully tried to unlock the door to his
(b) utilizes a patient-centered approach in an attempt
apartment with a carrot.
to learn more about the health concerns that prompted
the visit in the first place, (c) examines the patient, (d)
has the patient undergo tests in or out of the doctor’
s
Understanding Hospital Procedures
office depending upon the equipment that is in the
Once patients arrive at their destination, they must
office, (e) discusses the results of the test, (f) discusses
cope with hospital procedures that are unfamiliar to
treatment options, and (g) the doctor suggests a
them. Every hospital and/or healthcare facility in which
general time frame in which patients should return to
people receive medical services has a system of rules
the office for follow-up visits if needed. Finally, if
and procedures that facilitate the delivery of healthcare
necessary, the doctor will write out a prescription and
services in an orderly fashion. Across cultures, patients
hand it to the patient at the end of the patient’
s visit.
will encounter procedures that are different from the
At this time, the patient returns to the receptionist,
ones with which they are familiar.
pays the bill, and the receptionist schedules a follow-
In America, for example, patients are often seen by
up visit if it is required.
physicians in private clinics or in medical buildings
Of course, procedures such as this vary across
that are separate from hospitals. Medical receptionists,
cultures. Unless patients have received medical services
who are seated behind a counter adjacent to the
in other countries, they have no idea what to expect.
waiting room in which patients sit, greet patients
Perhaps it is even fair to say that they expect the
immediately after they enter the office. In addition to
procedures to be the same as what they have already
greeting the patients, medical receptionists have the
experienced in their home country. They soon discover,
following responsibilities: (a) determining whether or
however, that everything is new, and this can cause
not patients have an appointment with the doctor or if
patients, who might already be experiencing stress
they are in need of an appointment, (b) determining if
because of concerns they might have about their
the patients who walked through the door are new or
health, to feel even more stress. Needless to say, this
returning patients, (c) giving forms to the patients for
can worsen their health condition.
them to fill out, (d) determining whether or not patients
For healthcare providers who have not had the
have medical insurance, (e) in the cases in which
experience of receiving healthcare abroad, they cannot
patients do not have medical insurance, they must
imagine nor can they be expected to anticipate how
establish the means by which the fee for the doctor’
s
patients might feel as these patients encounter hospital
services will be paid, (f ) they must obtain patients’
procedures that are very foreign to them. For the
contact information, (g) direct patients to the waiting
patient who is native to the country in which they
room, (h) answer phone calls, (i) arrange first
receive healthcare, most of the hospital procedures
appointments and follow-up appointments, and (j)
they encounter are second nature to them because
receive payments for the medical services that the
they have been receiving medical care from the time
- 28 -
relationship that can promote good health outcomes for the patient. (See figure 4.)
Therefore, the use of language in the clinical consultation should be of the utmost concern.
Dawn E. O’
Day
As Woloshin, Bickell, Schwartz, Gany, & Welch (1995) reported:
Along
withlearning
clinicalvis-à-vis
reasoning,
that they were children,
and their
the observations,
andthey
nonverbal
use of language
hospital setting, whether
realize itcues,
or not,skillful
has been
experiential. Exceptions
to thisthe
are
when with
they go
a
endows
history
its to
clinical
power and
new hospital to seek establishes
treatment, when
procedures
the new
clinical
interview
are put into place, and/or when new technologies,
as the
clinician’s most powerful tool. Language is
which require them to acquire new skills, are
the means by which a physician accesses a
introduced. In these cases, patients are able to learn
patient’s belief about health and illness,
about hospital procedures in the following ways: (a)
opportunity
they receive guidancecreating
from staff an
whose
responsibilitytoit address
different
belief
is to help patients, (b)reconcile
they seek staff
out to ask them
and
systems.
questions, (c) they read
monitors thatit can
found in language that
Furthermore,
is bethrough
the hospital, (d) they read the instructions that are on
physicians and patients achieve an empathic
the screen of the technological device that they are
connection that may be therapeutic in itself. (p.
using, and/or (e) they obtain guides that provide
724)
© Can Stock Photo Inc. / ferli
information about hospital procedures. For the patient
However,
it of
is the
within
the context of
this 4. A doctor’s skillful use of language can
Figure
who is illiterate in the
language
destination
Figure
A doctor’s
use of for
language
promote4.good
healthskillful
outcomes
patients
consultation
that the clinical
country in which
they are receiving
medical encounter
services, can go awry.
however, theseWithout
procedures
become obstacles
thattrained
can
professional
medically
interpreters,
can promote good health outcomes for
patients.
prevent them non-Japanese
from receivingspeaking
healthcare
unless seeking
the
therapeutic in itself. (p. 724)
patients
healthcare
challenges they face are addressed.
However, it is within the context of this consultation
services in Japanese hospitals, for example, must rely on the following to communicate
Communicating with Healthcare Providers
that the clinical encounter can go awry. Without
Once foreign patients find their way into a hospital
professional medically trained interpreters, non-
with their doctors: (a) the patient’s limited Japanese language skills, (b) the doctor’s
language skills as a non-native speaker of theJapanese
patient’sspeaking
language,
(c) family members or
and successfully contend with hospital procedures,
patients seeking healthcare services
with
degrees
of bilingual abilities,
or hospitals,
(c) informal
interpreters
they will visitfriends
a doctor
and varying
participate
in a clinical
in Japanese
for example,
must(e.g.,
rely on the
hospital of
staff,
clerks,
nurses, or other
doctors to
who
also have varying
degrees
of (a) the
consultation. volunteer
The importance
what
transpires
following
communicate
with their
doctors:
between patients
and doctors
this may
consultation
s limited
Japanese
skills, (b) the
bilingual
abilities)inwho
be called upon patient’
at the last
minute
to assistlanguage
in the clinical
cannot be underestimated, especially as it concerns the
doctor’
s language skills as a non-native speaker of the
consultation. According to Flores et al. (2003), the use of informal interpreters has been
use of language to diagnostically assess the patient, to
patient’
s language, (c) family members or friends with
formulate an appropriate treatment plan, and to
varying degrees of bilingual abilities, or (c) informal
establish a doctor-patient relationship that can promote
interpreters (e.g., volunteer hospital staff, clerks,
good health outcomes for the patient. (See Figure 4.)
-7-nurses, or other doctors who also have varying degrees
Therefore, the use of language in the clinical
of bilingual abilities) who may be called upon at the
consultation should be of the utmost concern. As
last minute to assist in the clinical consultation.
Woloshin, Bickell, Schwartz, Gany, & Welch (1995)
According to Flores et al. (2003), the use of informal
reported:
interpreters has been known to result in numerous
known to result in numerous errors related to interpretation. Errors, such as the omission,
Along with clinical reasoning, observations, and
errors related to interpretation. For example, errors,
nonverbal cues, skillful use of language endows
such as the omission, subtraction, editorialization, and
the history with its clinical power and establishes
substitution of words, have been known to result in
the clinical interview as the clinician’
s most
problems such as not communicating doctors’
powerful tool. Language is the means by which a
questions about drug allergies and doctors’
instructions
physician accesses a patient’
s belief about health
to patients (Flores et al.; Woloshin et al., 1995).
and illness, creating an opportunity to address and
Furthermore, the use of informal interpreters
reconcile different belief systems. Furthermore, it
compromises patient confidentiality; and language
is through language that physicians and patients
discordance between the doctor and the patient“may
achieve an empathic connection that may be
distract the physician’
s intellectual focus away from
- 29 -
Moving toward the future: Overcoming language barriers in the hospital setting in the 21st century
clinical thinking”as well (Woloshin et al., p. 724).
nurses who are not professionally trained as
Non-Japanese language speakers who seek health
interpreters have been found to be fraught with errors
care in Japan are members of a vulnerable population,
(Ebden, Bhatt, Carey, & Harrisson, 1988; Elderkin-
but there is a paucity of studies on the impact language
Thompson, Silver, & Waitzkin, 2001). The use of
barriers have on this population as it pertains to the
professionally trained medical interpreters, however,
hospital setting. Since most investigations that have
can improve patients’understanding of their diseases,
been undertaken focus on the extent to which language
and there is more than one kind of professional service
barriers impact Spanish-speaking people in English-
from which to choose (Baker et al., 1996).
speaking countries and/or the extent to which Spanish-
Hornberger et al. (1996) conducted a study to
speaking patients’
limited English language proficiency
compare the quality of communication, interpretation,
has on the health of these patients ( Woloshin,
and sat isfact ion among pat ients, do ctors, and
Schwartz, Katz, & Welch, 1997), it is important that we
interpreters using two types of language services. The
look at these studies to understand more about
study participants were mothers of newborns who
language barriers as they pertain to problems patients
were visiting their doctors for their first postpartum
and healthcare providers encounter.
check-up. The language services used are known as
“proximate-consecutive interpretation”and“remote-
Patients’
Understanding of Their Medical
simultaneous interpretation.”Proximate-consecutive
Conditions
interpretation refers to the situation in which an
interpreter, who is in close proximity to both the
With this in mind, a brief and informal review of
patient and the doctor, interprets for them in a
the literature informs us that language discordance has
consecutive manner. On the other hand, the interpreter
been known to have a negative impact on the extent to
who provides remote-simultaneous interpretation
which patients feel they understand their disease. For
services is at a remote location and provides this
example, Baker, Parker, Williams, Coates, and Pitkin
service through communication wires that are
(1996) administered a cross-sectional survey to
connected to headsets, which are worn by the doctor
Spanish-speaking and English-speaking Latino patients
and the patient. The findings of this study suggest that
who presented to an emergency room of a public
both the mothers and the doctors preferred the
hospital for medical problems that did not require
remote-simultaneous interpretation services. On the
urgent care to investigate how the use of interpreters
other hand, while the interpreters believed that the
affected patients’knowledge of their diagnosis and
mothers and their doctors understood each other
their treatment. In this study, patients who reported
better with this service, the interpreters preferred to
that they did not need an interpreter rated their
use the proximate-consecutive interpretation service
understanding of their disease as good to excellent 67%
(Hornberger et al.). A third interpretation service,
of the time. On the other hand, patients who reported
which is worthy of consideration, but was not
that they should have used an interpreter rated their
investigated for this study, is remote-telephonic
understanding of their disease as good to excellent
interpretation in which an interpreter can be called to
only 38% of the time (Baker et al.).
provide services. In this situation, a handset can be
Interpreters. Under the best of conditions, the non-
passed from the doctor to the patient as the interpreter
Japanese speaking patient might be assigned to a
provides services through the telephone. Remote-
Japanese doctor whose bilingual skills are sufficient to
telephonic interpretation and remote-simultaneous
conduct the clinical consultation, or someone within
interpretation services can ensure patient
the hospital might take it upon him/herself to assign
confidentiality while the proximate-consecutive
the patient to a doctor who has the bilingual language
interpretation service compromises it.
skills that are needed. Interpreter services that are
Whether proximate-consecutive interpretation,
provided by family members and those by bilingual
remote-simultaneous interpretation, or remote-
- 30 -
Dawn E. O’
Day
telephonic interpretation services are used, there will
doctors encounter when it comes to communicating
be errors. In fact, medical errors are common, but
with patients who do not share their native language.
those committed by professionally trained medical
Language barriers impede the delivery of optimum
interpreters are less likely to be of clinical significance
healthcare services in the field of nursing in which
to patients’health compared to interpretation that is
patients from minority groups are receiving care (Irvine
performed by informal interpreters (Flores et al., 2003).
et al, 2006). Addressing the needs of minority groups
Because of this, professionally trained medical
who have limited language skills poses special
interpreters are recommended in order to facilitate
challenges for nurses, particularly when caring for
clear and effective communication between doctors
patients who are receiving nursing care in the
and patients. Providing this service can result in good
community. For example, according to Kwok and White
health outcomes for patients who do not speak
(2011), language barriers in a population of Chinese-
Japanese. This might also put doctors at ease and help
Australian expatriate female patients, who had been
them to concentrate on the clinical aspects of the
diagnosed with breast cancer, caused patients to feel
doctor-patient consultation.
frustrated due to the following: (a) an inability to
understand information they had received about their
Disseminating and Receiving Medical Advice
disease, and (b) the challenges they had when
Just as language barriers are problematic for
communicating with their healthcare providers. Also,
patients, they are for residents, doctors, nurses, and
patients experienced feelings of hopelessness and
hospital staff alike. For example, O’
Leary, Federico, and
isolation. In situations like this, nurses must take on
Hampers (2003) investigated the perceptions of
the added burden of dealing with cultural issues and
pediatric residents who were responsible for providing
the experiences related to language barriers that result
care to Latino families whose English language ability
in negative feelings, which complicate the recovery
was limited. They found that some of the residents who
process for patients (Kwok & White). While language
did not share a common language with their patients
awareness and sensitivity with regards to minority
reported avoiding those families even though
populations can facilitate effective communication
interpreter services were available to them (O’
Leary et
between nurses and minority pat ients, it is a
al.). Furthermore, Ramirez, Engel, and Tang (2008)
responsibility that all healthcare providers must share
indicated that non-English speaking patients reported
(Irvine et al.). Just as w ith do ctors, effect i ve
receiving fewer explanations about their medical
communication between nurses and patients can have
condition from doctors who treated them in emergency
a positive impact on their relationship, which is a
rooms when compared to the patients’English-
therapeutic one and patients’health outcomes (Tay,
speaking counterparts. Language discordance has also
Ang, & Hegney (2011). Unfortunately, if language
been found to have a negative impact on the lifestyle
barriers are not addressed, this can have a negative
counseling that takes place between doctors and
impact on patients’perceptions of the medical care
patients. For example, English-speaking Hispanics who
they receive from their healthcare providers.
had been diagnosed with either diabetes or
cardiovascular disease were 50% more likely to receive
Patient Dissatisfaction
advice about diet or exercise than non-English speaking
Hispanics (Lopez-Quintero, Berry, & Neumark, 2009).
Language barriers have been associated with
Furthermore, it was found that Spanish-speaking
patients not feeling satisfied with the healthcare
patients were also not as likely to discuss lifestyle
services they have received. For example, Carrasquillo,
changes regarding diet and exercise in situations in
Orav, Brennan, and Burstin (1999) investigated the
which doctor-patient language discordance was present
extent to which non-English speaking patients who
(Eamranond, Davis, Phillips, & Wee, 2009).
received services in one of five emergency rooms in
Nurses face some of the same challenges that
urban hospitals in the northeast region of the United
- 31 -
Moving toward the future: Overcoming language barriers in the hospital setting in the 21st century
States were satisfied with the healthcare services they
language barriers can cause healthcare providers and
received and the extent to which they were willing to
patients when patients seek healthcare in a hospital
return to an emergency department. They found that
setting in which their native language is not spoken.
the non-English speaking patients reported less
Compared to the medical care received by native-
satisfaction with the medical care they received and
English speaking patients, non-native English speaking
were not as willing to return to the same emergency
patients have also reported to have been less likely to:
department when compared to their English-speaking
(a) receive a referral for a follow-up appointment from
counterparts (Carrasquillo, et al.). Furthermore,
an emergency room doctor, (b) access preventive
compared to English-speaking patients who received
services for female-related issues, such as breast
care in an emergency room in the United States,
exams, mammography, or Pap testing, (c) have a
patients with limited English ability were less satisfied
regular doctor, (d) comply with treatment
with their experience in this medical setting and
recommendations, and (e) return for follow-up visits
received different rates of diagnostic testing as well
(Karter, Ferrara, Darbinian, Ackerson, & Selby, 2000;
(Ramirez, et al.).
Kirkman-Liff & Mondragon, 1991; Sarver & Baker, 2004;
Woloshin, et al.). In addition to the aforementioned
problems that language barriers can cause, as noted,
Receiving Inappropriate Medical Care
they can prevent patients from accessing the physical
Not only can language pose a problem in the
grounds of hospitals and the services that are provided
hospital setting, but communication styles that differ
within these hospitals. They can also prevent patients
between the doctor and the patient can cause
from understanding hospital procedures.
problems, too. According to Becker and Kleinman
As we move towards the future in the 21st century,
(2000), communication styles can increase the chances
it is important that we give consideration to the
that miscommunication will occur. One of the reasons
language barriers and the cross-cultural differences
for this is that even if the clinician is fairly fluent in the
that can prevent healthcare professionals from
patient’
s language, s/he might not be familiar with
delivering optimum healthcare services to foreigners
idioms that patients use to express distress. This
who find themselves in hospitals far away from their
problem can be compounded by the fact that culture
home countries. Even if these patients are seeking
influences the way people experience illnesses and the
medical services out of their own free will, they will
way that healthcare professionals are socialized to
discover themselves dealing with language barriers and
attend to some symptoms, but not to others. As you
cross-cultural clinical encounters that have the
can imagine, this impacts the way that healthcare
potential to pose health risks. These problems can
professionals respond to patients; and it can impact
result in increased anxiety levels, communication
treatment outcomes as well. In the context of
problems between patients and healthcare providers,
p s y c h i a t r y, f o r e x a m p l e , f r o m t h e c l i n i c i a n ’
s
misdiagnoses, poor treatment outcomes, and patients
perspective, patients might present in an atypical
who are not satisfied with the services that they need.
fashion if, due to their cultural experiences, they
Furthermore, these problems can also result in
minimize some symptoms and over report others.
frustration, stress, and fatigue for patients. This can
When this happens, clinicians can make erroneous
weaken the health condition of patients who are
assumptions, which can result in misdiagnoses and
seeking healthcare for pre-existing conditions and can
treatment plans that can be detrimental to the
cause the same problem for those who are recovering
wellbeing of their patients (Becker & Kleinman).
from elective surgeries as well.
Although the aforementioned problems seem to be
formidable ones, many of them can be prevented and/
Conclusion
or mitigated. For example, for patients who are
This article covers just some of the problems
encumbered by the logistics of navigating their way
- 32 -
Dawn E. O’
Day
around new surroundings, identifying the names of
Internal Medicine, Washington, D. C.
buildings and providing public transportat ion
Cohen, E. (n.d.). Medical tourism in Thailand. Retrieved
schedules and maps that are written in the patients’
native languages (e.g., ones that will help them find
May 10, 2014, from
http://www.graduate.au.edu/Journal/Journal1/
their way to the hospitals and another for the hospital
Medical%20Tourism%20Dr%20Cohen.pdf
grounds) can help them reach their destination with a
Eamranond, P. P., Davis, R. B., Phillips, R. S., & Wee, C. C.
minimal amount of stress. For those who are burdened
(2009). Patient-physician language concordance and
by the need to understand new hospital procedures,
lifestyle counseling among Spanish-speaking
providing in-patient and outpatient brochures, forms,
patients. J Journal of Immigration and Minority
and explanations in their native languages about
Health, 11 (6), 494-498.
hospital procedures and how to use machines they
Ebden, P., Bhatt, A., Carey, O. J., & Harrison, B. (1988).
The bilingual consultation. Lancet , 13, 347.
need to operate can help to ease that burden. Using
healthcare providers who are trained in cultural-
Elderkin-Thompson, V., Silver, R. C., & Waitzkin, H.
competence can help patients as well (Ponce, et al.).
(2001). When nurses double as interpreters: A study
A b o v e a l l , h o w e v e r, i t i s c l e a r t h a t u t i l i z i n g
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professionally trained medical interpreters is our best
setting. Social Science and Medicine , 52, 1343-1358.
defense against all of the problems patients and
Flores, G., Laws, B., Mayo, S. J., Zuckerman, B., Abreau,
healthcare providers face in the hospital setting.
M., Medina, L., & Hardt, E. J. (2003). Errors in medical
interpretation and their potential clinical
consequences in pediatric encounters. Pediatrics,
Acknowledgements
111 (1), 6-14.
I would like to express my heartfelt appreciation
Hornberger, J. C., Gibson, C. D., Wood, W., Dequeldre,
to Professor Nishida and Professor Fujita as I am
C., Corso, I., Palla, B., & Bloch, D. A. (1996).
deeply indebted to them for their encouragement,
Eliminating language barriers for non-English-
advice, and support.
speaking patients. Medical Care, 34(8), 845-856.
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小 松 光 代 他
京府医大看護紀要,24:35-40,2014
日常生活行動が自立した高齢者の睡眠改善に向けた基礎研究
~アクティウォッチによる睡眠測定と身体活動量 , 生活習慣との関連~
小松光代,三橋美和
京都府立医科大学医学部看護学科
A Basic Study of Improving the Sleep Quality of ADL-independent Elderly People
The Correlation between Measuring Sleep by the Actiwatch and Daily Activity
and Their Lifestyles.
Mitsuyo Komatsu, Miwa Mitsuhashi
School of Nursing,Kyoto Prefecutural University of Medicine
要約
本研究は , 日常生活行動が自立した高齢者の質問紙調査結果から抽出した良眠群と不眠群の睡眠実態と身体活動量や生活
習慣との関連を検討することを目的に , アクティウォッチによる睡眠測定とライフコーダによる活動量測定 , 質問紙調査を
行った .
睡眠測定及び質問紙調査から良眠群 22 名 ( 男性 6 名 , 女性 16 名 , 平均年齢 71.6 歳 ) と不眠群 11 名 ( 男性 3 名 , 女性 8 名 ,
平均年齢 72.4 歳 ) を群分けし , 良眠のための介入の視点を検討した . その結果 , 全体の睡眠時間 396.0 ± 58.2 分や睡眠効率
82.9 ± 8.7%, 入眠潜時 22.8 ± 14.8 分は , 年齢相応で群間差はなく , 睡眠満足感 , 熟睡感のある者は 7 割に満たなかった . 両群
の比較では睡眠障害の自覚や身体活動量 (PAL) 及び運動カロリ-に有意差 (p<.05) を認め , 不眠群は睡眠障害の自覚があり ,
身体活動量が多く , 排泄を理由とした中途覚醒が多い傾向であった . 睡眠改善に向けた介入の視点として , 中途覚醒への対
策および個々の生活習慣を考慮した身体活動量の検討や運動時間帯の配慮が必要であることが示唆された .
キーワード:キーワード:高齢者 アクティウォッチ 睡眠測定 PAL 中途覚醒
1. はじめに
徴的で単に眠れないことに留まらない 3).長期的には
2012 年国民健康・栄養調査によると ,「睡眠によっ
記憶や理解・判断 , 感情制御などを司る前頭連合野機
て十分に休息がとれていない人」の割合は 14.9%, 日本
能の低下 , 意欲の低下につながり社会活動を阻害し , 老
人の約 6 人に 1 人が睡眠不足の状態である .厚生労
年期うつ病や生活習慣病 , 認知症リスクを増大させる.
働省は,第 4 次健康づくり運動 ( 健康日本 21 第 2 次 )
睡眠障害の原因は , 活動不足や生体リズムの乱れ , 薬物
において , 栄養・運動と並び睡眠 ( 休養 ) の重要性を普
の影響 , 夜間頻尿や精神疾患など多様である 4).就寝前
及啓蒙する目的で , 健康づくりのための睡眠指針 12 箇
の「眠れないのではないか」という予期的不安が , 寝
条 (2014) を策定した.この指針では , 科学的根拠の蓄
床で過ごす時間を増やし ,「眠れていない」という精神
積により旧指針が改訂され , ライフステージ , ライフス
生理性不眠に繋がる 5) との指摘もある.加えて高齢者
タイルに応じて健やかな成長・発達と生活習慣病予防
では , 体内リズムの朝型化が早朝覚醒頻度の増加を招
やこころの健康保持を促進することをねらいとしてい
いている.
る.
不眠は認知機能低下や抑鬱などの精神機能や社会参
高齢期のライフステージにおいては , 不眠愁訴の割
加等の日常生活全般に大きく影響することはいうまで
合が増加し ,80 歳以上では ,2.5 ~ 3 人に 1 人と言われ
もないが , 高齢者の場合 , その原因や関連要因の複雑さ
ている .高齢者の睡眠障害の特徴は , 入眠潜時の延長 ,
故に積極的介入がなされるようになったのは最近のこ
中途覚醒の増加 , 睡眠効率の低下 , 睡眠の分断化等が特
とである.先行研究 6 ~ 11) では , 夕方体操や短時間昼寝 ,
1)
2)
- 35 -
日常生活行動が自立した高齢者の睡眠改善に向けた基礎研究
低強度運動のプログラム , 健康教室によって , 入眠潜時
ティウォッチ , フィリップス・レスピロニクス製 , 以
の短縮や睡眠の質の改善 , 睡眠剤の内服が減るなどの
下アクティウォッチ ) による睡眠測定への協力依頼を
介入成果や , 睡眠障害と日中の光享受時間 , 飲酒や身体
説明会開催又は依頼文の送付により行った.これらの
活動量 , 生活機能低下との関連が指摘されており , 睡眠
過程を経て、同意の得られた良眠群 15 名、不眠群 19
への働きかけのみならず生活習慣全体の改善が不可欠
名を対象に睡眠測定を実施した.
である.
2) 調査内容
辻らの前向きコホートによると , 夜間睡眠時間と日
調査項目は , 対象者の基本的属性 ( 性別 , 年齢 , 主観
中睡眠の有無 , 要介護認定・死亡リスクとの関連にお
的健康感及び精神的健康 , 治療疾患の有無及び通院状
いて , 男性の場合 , 夜間睡眠時間の長い者 , 女性では日
況 ) 及び客観的指標による 1 週間の睡眠測定(アクティ
中睡眠をとる者の要介護認定リスクが有意に上昇する
ウォッチ)と睡眠日誌記入 , 活動量測定 ( 運動習慣測
とされる
定器ライフコーダ GS
12)
.
, スズケン製 ) である.
このように,高齢者にとっての睡眠障害は , 単に眠
アクティウォッチでは , 就寝・起床時刻 , 夜間連続睡眠
れていないことに留まらず , 日常生活の過ごし方に影
時間 , 中途覚醒時間 , 中途覚醒回数 , 入眠潜時 ( 寝つき
響し , 長期的には認知症・介護予防の観点からも重要
に要する時間 ), 睡眠効率 ( 夜間の連続睡眠時間を臥床
な検討課題である .
時間で除する ) を , ライフコーダでは ,1 週間の運動量
本研究の目的は , 睡眠良好群 ( 以下 , 良眠群 ) と不良
(Ex), 総エネルギー消費量 (kcal), 基礎代謝量 (kcal), 身
群 ( 以下 , 不眠群 ) の睡眠実態と身体活動量 , 生活習慣
体活動量 ( 以下 ,PAL: 総エネルギー消費量を基礎代謝
との関連を明らかにし , 介護予防の観点から自立高齢
量で除した値 ), 運動エネルギー消費量を測定した.
者における良眠のために必要な介入の視点を探ること
さらに , 睡眠日誌にて睡眠の規則性や睡眠満足感 , 熟
である.
眠感 ( 睡眠の深さ ) とねつき , 寝起きの満足感を問い ,
主観的指標では , 睡眠障害重症度評価尺度 14), 睡眠健康
2. 方法
調査票 13), 良眠のための生活習慣の実践度 7), 入眠感調
1) 対象者
査票のうち就寝時の心身の状況 15) を用い , 食生活との
対象者選定の経過を図 1 に示す.本研究ではまず ,K
関連は , 食事摂取習慣及び食事回数と規則性 16), 及び体
府内の老人福祉センター利用者 , 老人大学参加者等の
格を調査した .
から得点
各々の質問紙尺度は , 後述のように評価した . 睡眠障
を算出し ,25 パーセンタイル以下 82 名を良眠群、75 パー
害重症度評価尺度 ( 以下 ,ISI) の 5 項目 7 問とは , 障害
センタイル以上 81 名を不眠群に群分けした.380 名中 ,
の自覚を問うものである (7 点以下:障害なし ,8 ~ 13 点:
再調査への協力同意のあった 204 名のうち、45 名が良
障害軽症 ,14 ~ 17 点:障害中等症 ,18 点以上:障害重度 ).
眠群 ( 得点 2.44 点以下 )、44 名が不眠群 ( 得点 5.19 以上 )
睡眠健康調査票 (14 項目 5 下位尺度:睡眠維持障害 4
に該当し , あらためて , 携帯式行動量測定装置 ( アク
項目 , 随伴症状 4 項目 , 無呼吸 2 項目,入眠困難 2 項目 ,
質問紙調査協力者 380 名の睡眠健康調査票
13)
起床困難 2 項目 , 点数が高い程睡眠障害あり ) は , 睡眠
質問紙調査協力者合計 380名
睡眠健康調査票得点 障害の特徴を把握するために用いた.就寝時の心身の
25パーセンタイル以下
75パーセンタイル以上
82名
81名
状況は、6 項目あり高得点程、心身の状態が悪い.良
眠のための日常生活習慣の実践 (25 項目 ) は、「既に実
このうち、
再度、調査に協力の同意あり 204名
2.44点以下
睡眠状態良好者45名
践している」「頑張ればできそうである」「できそうに
5.19点以上
睡眠状態不良者44名
ない」の 3 段階で評価し,
「既に実践している」習慣に
着目した.
睡眠測定調査への協力意思確認
精神健康状態として鬱傾向には GDS517) を , 日常生活
協力同意者
良眠群15名
不眠群19名
睡眠・身体活動量測定実施
有効回答14名
有効回答19名
活動能力には老研式活動能力指標 18)(3 下位尺度:社会
的役割 , 手段的自立 , 知的能動性 13 項目 ,13 点満点で ,
高得点程 , 活動能力が高い ), 活動に影響しやすい日中
分析・再グループ化 8名異動 良眠22名
分析対象
の眠気は , エプワース眠気尺度日本語版 19)(8 項目を 0
不眠11名
~ 3 点で回答し 11 点以上で過剰な眠気 ) を使用した.
食事バランス (40 点満点 ), 食事規則性 (12 点満点 ), 食
図 1 対象者の選定経過
図1 対象者の選定経過
- 36 -
小 松 光 代 他
生活での注意点 ( 項目数を得点化 , いずれも高得点ほ
全体 , 両群ともに 2.0 人であった.
ど望ましい食生活 ) と体格指数 Body Mass Index ( 以
対象者は , 治療中の疾患ありが 72.2%を占め ,75.8%が
下 ,BMI) である.
かかりつけ医をもっていたが , 主観的健康状態は
調査では , アクティウォッチ及びライフコーダ , 質問
93.9%が「良好~まあ良好」であった.就寝前に寝酒
紙を配布し ,7 日間昼夜の測定終了後 , 郵送法により回
や眠剤を服用する割合は 21.1%, 両群の治療中の疾患 ,
収した.睡眠測定の分析結果は , 書面にて返却した.
受診状況及び就寝前に眠剤や寝酒を服用する者の割合
調査期間は平成 22 年 3 月~ 25 年 11 月 , 睡眠測定は調
に有意差は認められなかった.
査への影響を考慮して 10 月~ 12 月に実施した.
精 神 的 健 康 度 (GDS5) は , 全 体 1.0 ± 1.1, 良 眠 群 1.0
3) 分析方法
± 1.3 点 , 不眠群 0.9 ± 0.5 点 , 平均するとうつ傾向は
分析は , 記述統計量 , 頻度集計を算出し , 定性データ
問題なく , 活動能力は ,12.1 ± 1.0 点 ,12.2 ± 0.9 点 ,12.9
2
はχ 検定にて分析した.定量データは分布を確認し
± 1.2 点と活動能力の高い集団であった.
た後 ,t 検定を行った (IBM SPSS21).分析は , 認知症治
2) アクティウォッチによる睡眠測定結果と睡眠障害の
療中の 1 名を除き有効なデータが得られた 33 名を対象
主観的評価
とした.また , 再度測定結果に基づく睡眠効率と睡眠
睡眠測定結果と主観的睡眠状態を , 全体 , 良眠群と不
健康調査票得点を標準化してクラスター分析し , 睡眠
眠群順に表1に示す.アクティウォッチによる測定結
効率 , 睡眠健康が良好な良眠群 22 名 , いずれも不良な
果では , 就寝時刻は , 全体 , 良眠 , 不眠群順に 22 時 22
不眠群 11 名に群分けした . 当初設定していた不眠群か
分 ± 132 分 ,22 時 12 分 ± 156 分 ,22 時 36 分 ± 66 分 ,
ら良眠群に 8 名が異動した .
起床時刻は ,6 時 30 分± 71.4 分 ,6 時 42 分± 72 分 ,6 時
良眠群 , 不眠群順に睡眠効率 87.3 ± 5.2%,74.0 ± 7.7%,
12 分± 72 分 , 夜間連続睡眠時間 396.0 ± 58.2 分 ,403.8
睡眠健康調査票 3.5 ± 1.5 点 ,5.3 ± 1.9 点であった . 群
± 62.2 分 ,389.4 ± 50.7 分 , 入眠潜時 22.8 ± 14.8 分 ,20.5
別の年齢 , 健康状態 , 性別に有意差がないことを確認し
± 14.7 分 ,27.8 ± 14.6 分 で あ っ た. 全 体 の 睡 眠 効 率
た上で比較した.
は ,82.9 ± 8.7% であり 70 歳代の標準的な数値 20) であっ
4) 倫理的配慮
た.
研究者所属の倫理審査委員会にて承認を得 ( 承認番
全対象者のうち 87.5% に中途覚醒があり , この理由
号 E-441), 対象者には研究の参加と結果公表に同意を得
が排泄によるものは 75.8% であった.中途覚醒回数は ,
た.研究対象者は , 関係機関職員から紹介された者及
全体 , 良眠群 , 不眠群順に 1.5 ± 0.9 回 ,1.3 ± 0.9 回 ,1.8
び老人大学等に参加した高齢者である.
± 0.9 回 , 排泄のための中途覚醒 1.1 ± 0.8 回 ,0.9 ± 0.8
回 ,1.5 ± 0.7 回 (t 値= -1.84,p<.1),1 週間の中途覚醒時間
3. 結果
の合計は ,50.8 ± 63.6 分 ,39.9 ± 46.9 分 ,72.6 ± 88.2 分
1) 対象者の背景
といずれも後者が悪い傾向であった.
対象者 33 名 ( 平均年齢 71.9 ± 5.1) は , 良眠群 22 名 (71.6
ISI では , 全体 7.4 ± 4.0 点 , 良眠群 7.6 ± 4.0 点 , 不眠
± 5.7 歳 , 男性 6 名 , 女性 16 名 ), 不眠群 11 名 (72.4 ± 3.9
群 11.5 ± 3.8 点と不眠群が高く睡眠障害を自覚してい
歳 , 男性 3 名 , 女性 8 名 ) である.家族構成員数の平均は ,
た (t 値 =-2.65,p<.05).
表1 睡眠測定結果と主観的睡眠状態
表 1 睡眠測定結果と主観的睡眠状態
全体(n=33)
夜間連続睡眠(分)
入眠潜時(分)
測
中途覚醒(回)
定
排泄のための覚醒(回)
中途覚醒時間(分)
睡眠障害重症度(ISI)
睡眠健康調査票
質
問
紙
調
査
睡眠維持
入眠困難
起床困難
呼吸関連
随伴症状
日中の眠気(JEES)
就寝前の心身状態
良眠群(n=22)
Mean(SD)
不眠群(n=11)
t値
t検定
n.s.
n.s.
n.s.
†
n.s.
396.0(58.2)
22.8(14.8)
1.5( 0.9)
1.1( 0.8)
50.8(63.6)
403.8(62.2)
20.5(14.7)
1.3( 2.1)
0.9( 0.9)
39.3(46.9)
389.4(50.7)
27.8(14.6)
1.8( 0.9)
1.5( 0.7)
72.6(88.2)
7.4( 4.0)
7.6( 4.0)
11.5(3.8)
-2.65
*
1.3( 0.6)
1.3( 0.7)
0.7( 0.5)
0.5( 0.6)
1.0( 1.6)
8.0( 5.5)
10.1( 4.5)
1.1( 0.6)
1.1( 0.7)
0.6( 0.4)
0.3( 0.4)
0.1( 0.3)
7.4( 5.8)
9.7( 4.6)
1.7( 0.6)
1.5( 0.6)
0.8( 0.6)
0.8( 0.6)
0.5( 0.5)
9.1( 4.5)
10.9( 5.4)
n.s.:not significant †:p<.1, *:p<.05,
-2.78
*
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
- 37 -
-1.84
日常生活行動が自立した高齢者の睡眠改善に向けた基礎研究
ISI と排泄のための中途覚醒回数と中途覚醒時間には
点 , 食事への注意点は 7 項目中 4.7 ± 2.3 個 ,4.7 ± 2.4
弱い正の相関 (r=.36, r = .38,p<.05) を ,ISI と睡眠効率に
個 ,4.8 ± 2.3 個であった.
は弱い負の相関 (r=-.372),p<.05) を認めた.
4) 良眠のための生活習慣と睡眠状態
睡眠障害の種類では , 睡眠維持の障害と入眠困難が
既に実践している良眠のための日常生活習慣を図 2 に
特徴であり , 睡眠維持の障害 (t 値 =-2.78,p<.01) は不眠
示す.実践割合の高いものから順に「朝食は良く噛み
群が有意に高かった.日中の眠気は , 全体 8.0 ± 5.5 点 ,
ながら食べる」
「寝床につく 1 時間前はたばこを吸わな
良眠群 7.4 ± 5.8 点 , 不眠群 9.1 ± 5.0 点で正常範囲内
い」84.8%,「趣味などを楽しむ」84.4%,「眠るためにお
に留まり群間差はなかった.11 点以上で日中過剰な眠
酒を飲まない」81.8% であった.実践できていないも
気と判定された者は 22.2%, 良眠群と不眠群に各 3 名、
のは「眠る前にリラックス体操 ( 腹式呼吸 ) を行う」
このうち 4 名が女性であった.昼寝の習慣は、全体
15.2%, 夕方に軽い運動や体操 , 散歩をする」21.2%,「午
76.7% , 良眠群 80.0%, 不眠群 70.0% が有していた.
後 3 時までの間に 30 分程度昼寝をする」,「一日一回
睡眠感について , 熟眠感「熟眠~だいたい熟眠」は
は腹の底から笑うようにする」25.0% であった.既に
全体 62.6% , 良眠群 66.7%, 不眠群 54.5%, 睡眠満足感「満
実践している生活習慣は , 全体 13.8 ± 3.7 項目 , 良眠群
足~まあ満足」は順に 67.9% ,66.7%,70.0% であり , 群別
13.4 ± 3.8 項目 , 不眠群 14.5 ± 3.3 項目で両群ともに生
の熟眠感 , 満足感に差がなかった.
活習慣に注意を払っていた.群別では ,「日中はたくさ
就寝時の心身の状況は , 順に 10.1 ± 4.5 点 ,9.7 ± 4.6
ん歩いて活動的に過ごす」の不眠群 81.1% が良眠群の
点 ,10.9 ± 4.5 点と大差なく , 就寝前には 71.4% が , 眠り
38.1% より有意に高い割合であった (χ2 値 =5.54,p<.05).
につくために環境への配慮や睡眠儀式などの工夫を実
4. 考察
践していた.
1) 対象者の睡眠評価
3) 睡眠と身体活動量・食事摂取の習慣(食事摂取のバ
対象者の睡眠は , 同年齢 70 ~ 74 歳の就寝時刻 22 時
ランスや規則性)( 表 2)
2 ~ 22 分 , 起床時刻 6 時 12 分 ( 男性 ) ~ 6 時 15 分 ( 女
一週間の身体活動量、食事摂取習慣を表 2 に示す。
性 ) とほぼ同様で , 夜間の連続睡眠時間は ,8 時間 8 分
運 動 量 は、 全 体 , 良 眠 群 , 不 眠 群 の 順 に 13.5 ±
よりやや短かった 20).入眠潜時は , 先行研究の 10 分以
10.5Ex,12.3 ± 11.5Ex,16.2 ± 7.8Ex で あ り 推 奨 運 動 量
内や 70 歳代女性の 19.5 分よりもやや長いが , 入眠困難
23Ex を満たしておらず , 非常に個人差が大きかった.
の自覚は問題の最上位ではなかった.睡眠効率も標準
総消費カロリーを基礎代謝量で除した身体活動量
的であった.女性の要介護リスクにつながりやすい日
(PAL)1.4 ± 0.1,1.4 ± 0.1,1.5 ± 0.1, 及 び 運 動 カ ロ リ ー
中の過剰な眠気の出現割合は 22.2% と先行研究 21) の
326.6 ± 235.1kcal,244.4 ± 186.8Kcal,521.6 ± 231.8kcal は ,
8.8% よりも高く , 今後さらに , 短時間昼寝など日中の
不眠群の値が有意に大きかったが (t 値 =-2.53,-3.28, い
眠気対策の普及が要請される.
ずれも p<.05), 運動の実施時間帯に群間差はなかった.
一般的に高齢者では , 排泄のための中途覚醒が問題
BMI は ,21.7 ± 2.9,21.3 ± 2.6,22.6 ± 3.5 と標準的で群別
となるが , 本対象者の場合 , 睡眠維持の問題に関する自
の体格差はなかった.
覚が高く , 有意差はないものの不眠群の覚醒回数が多
食事摂取習慣は , 対象者の 90.9% が配慮しており , 順
い傾向で中途覚醒時間も長い傾向にあった.先行研究 9)
に食事バランスは 30.4 ± 4.3 点 ,31.0 ± 4.1 点 ,29.3 ± 4.6
では , 同年代の中途覚醒時間が 45.7 分であり , 良眠群
点 , 食事規則性は 10.7 ± 2.1 点 ,10.8 ± 2.2 点 ,10.6 ± 1.9
はこの結果よりも良好であるが , 不眠群の中途覚醒時
表2 良眠群と不眠群の身体活動量、食事摂取習慣の比較
表 2 良眠群と不眠群の身体活動量、食事摂取習慣の比較
運動量(Ex)
活 PAL(a/b)
動 a. 総消費カロリー
量 b. 基礎代謝
運動カロリー(kcal)
食 食事バランス(点)
生 食事規則性(点)
活 注意点(点)
等 BMI
全体(n=33)
良眠群(n=22) 不眠群(n=11)
13.5(10.5)
12.3(11.5)
16.2( 7.8)
1.4( 0.1)
1.4( 0.1)
1.5( 0.1)
1663.9(265.2)
1605.7(247.4) 1802.3(269.8)
1164.8(131.1)
1151.6(115.2) 1196.1(167.7)
326.6(235.1)
244.4(186.8)
521.6(231.8)
30.4( 4.3)
31.0( 4.1)
29.3( 4.6)
10.7( 2.1)
10.8( 2.2)
10.6( 1.9)
4.7( 2.3)
4.7( 2.4)
4.8( 2.3)
21.7( 2.9)
21.3( 2.6)
22.6( 3.5)
n.s.:not significant
- 38 -
*:p<.05
t値
-2.36
-3.28
Mean(SD)
t検定
n.s.
*
n.s.
n.s.
*
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
小 松 光 代 他
0
50
%
100
84.8
84.8
84.4
81.8
78.8
78.8
75.0
66.7
65.6
63.6
63.6
59.375
56.25
54.5
54.5
53.1
50.0
48.5
42.4
40.6
31.3
25.0
25.0
21.2
15.2
朝食を良く噛みながら食べる
寝床につく1時間前はたばこを吸わない
趣味などを楽しむ
眠るためにお酒を飲まない
寝室は静かで適温にする
8時間睡眠にこだわらず自分にあった睡眠時間を規則…
毎日規則正しい起床
睡眠時間が不規則にならないようにする
日中はできるだけ人と会う
夕方以降、居眠りをしない
寝床でテレビを見たり仕事をしない
日中は太陽の光にあたる
午前中に太陽の光をあびる
夕食以降コーヒー、お茶等を飲まない
眠くなってから寝床に入る
日中はたくさん歩いて活動的に過ごす
いつもと違う道を通った料理を作るなど新しいことに挑戦
寝床で悩みごとをしない
ぬるめの風呂にゆっくりつかる
たくさん文字を書き新聞や雑誌など読み物を音読
寝床につく1時間前には部屋の明かりを落とす
昼食後から午後3時までに30分以内で昼寝
一日一回は腹の底から笑うようにする
夕方に軽い運動や体操、散歩
眠る前にリラックス体操(腹式呼吸)を行う
図 2 既に実践している良眠のための生活習慣
図2 既に実践している良眠のための生活習慣
間は 72.6 分あり睡眠の妨げとなっていることは否めな
3) 睡眠改善に向けた介入のための視点
い.ISI と睡眠効率及び排泄のための中途覚醒回数 , 中
本対象者では良眠 , 不眠を問わず , 一般的な高齢者と
途覚醒時間とは有意な関連が認められ , 対策が今後必
同様に睡眠維持に問題があり ,ISI と排泄のための中途
要であろう.
覚醒回数 , 睡眠効率に関連が認められた . 先行研究 6) ~
就寝・起床時刻や夜間の連続睡眠時間に差はないも
11)
のの , 睡眠満足感や熟睡感の値は 7 割に満たず決して
の継続的な介入や認知行動・介入によって入眠潜時の
高いとはいえない . 睡眠障害の自覚には有意差が認め
短縮や睡眠の質 , 抑うつ症状の改善等の成果が報告さ
られ , これは望ましい睡眠時間が一人一人異なり , 満足
れている . 本対象者の結果からは , 入眠潜時短縮の方策
感や熟睡感により左右されるため , 主観的・客観的の
のみならず , 睡眠維持を助ける中途覚醒回数減少や中
両側面から評価する必要性を改めて示すものである.
途覚醒時間の短縮に向けた方策の必要性が示唆され
2) 睡眠と関連する生活習慣
た.中途覚醒時間は ,30 歳代以降 10 年ごとに 10 分程
対象者は ,9 割以上が食生活に気を配り , 身体活動量
度増加する 23) ことが報告されており , 生物時計の老化
は , 個人差が大きく平均すると推奨量には足りないも
に抗することは容易でない . しかし , 夜間の不眠は抗利
のの , 生活習慣を意識した生活を送っている.不眠群
尿ホルモンの分泌を妨げ排尿量を増すため , 水分摂取
の PAL が有意に高かったが推奨運動量を遙かに超える
量の日内時間配分の提案や覚醒時に習慣的に排泄とい
者もおり , 過剰な身体活動量は , 睡眠を妨げている可能
う行動パターンを避ける , この他にも睡眠維持のため
性が示唆された.高強度運動よりも低強度運動の継続
の就寝中の効果的な体熱放散の工夫 , 中途覚醒時に再
が入眠潜時の短縮に有効 , や一人一人の運動習慣の違
度寝入りを促すための環境整備 ( 照度や室温の調整 )
いにより高強度運動 , 低強度運動いずれも睡眠障害の
等 , 生活習慣や環境面への配慮により柔軟に対応する
リスクとはなりにくいこと , 運動実施時間帯によって
方策があるのではないかと推測される.今後 , 中途覚
9)
では , 睡眠改善の方策として , 健康教育や運動教室等
睡眠に及ぼす影響が異なる ことは周知のとおりであ
醒の理由と対処の実態を明らかにし , 具体的に介入が
る.また , 身体活動に限らず , 高意欲の者の夜間睡眠は
可能な生活習慣をさらに探る計画である.
8)
意欲の低い高齢者よりも良好
22)
であり , 日中の過ごし
方との関連は今後も継続して検討が必要である.
- 39 -
日常生活行動が自立した高齢者の睡眠改善に向けた基礎研究
9) 北畠義典 , 青木賢宏 , 杉本淳他 (2010):低強度 , 高
5. 結論
1) 日常生活行動が自立した高齢者の睡眠実態は , 就床・
頻度の運動プログラムが不眠感を有する女性高齢者
起床時刻や睡眠時間 , 睡眠効率が年齢相応であり , 良眠
の睡眠に及ぼす影響-ランダム化比較試験- , 体力研
群と不眠群の差はなかったが , 後者では睡眠障害の自
究 ,108:8-17.
覚があり , 排泄を理由とした中途覚醒が多い傾向にあっ
10)田中美加 , 久佐賀眞理 , 田ヶ谷浩邦他 (2012):地域
た . 中途覚醒への対応をはじめ睡眠維持対策が早急の
在住高齢者における睡眠と生活機能との関連 , 日本
課題である .
衛生学雑誌 67:492-500.
2) 不眠群は , 身体活動量と運動カロリーが有意に高かっ
11)古谷由紀子 , 尾崎章子 (2011):睡眠を通じた地域
た . 身体活動・運動量は , 睡眠への影響を考慮し個々の
の健康づくりの取り組み ( 龍ヶ崎市の快眠プロジェ
ライフスタイルに応じた活動量や時間帯の検討が必要
クト ), 保健師ジャーナル ,67(7):599-602.
12)辻一郎 (2011):介護予防サービスの効果評価に関
である.
3) 対象者の睡眠満足感は 7 割に満たず , 熟睡感は 6 割
する研究 , 厚生労働科学研究費補助金 ( 長寿科学総
程度が「熟睡」と回答していた . 日中の眠気が過剰な
合研究事業 ) 平成 21 ~ 23 年度報告書 .
者は 22.2% と一般よりも高く , 要介護リスク予防の点
13)堀忠雄 (2008):睡眠心理学 ,p27 ~ 28. 京都市 : 北
大路書房 .
からも短時間昼寝などの日中の眠気対策の啓蒙を図る
ことが必要である .
14)宗澤岳史 ,Morin, C.M., 井上雄一他 (2009):日本語
版不眠重症度質問票の開発 , 精神治療学 24(2):219-
6. 謝辞
225.
本研究の調査にご協力くださいました対象者の皆様 ,
15)山本由華吏 , 田中秀樹 , 山崎勝男他 (2003): 入眠感
関係機関職員の皆様に心より感謝いたします.
調査票の開発と入眠影響要因の解析 , 心理学研
本研究は科学研究費補助金 ( 基盤研究 C21592913,24593503)
究 ,74:140-147.
16)阿部登茂子 , 大西早百合 , 福間和美他 (2001):サク
の一部として実施した成果である.
セスフルエイジングに向けての準備行動に関する研
究 , 京府医大短大紀要 10(2):217-224.
7. 文献
1)
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17)町田綾子 , 平田文 , 柳田幸他 (2002):簡易版うつス
の 概 要 http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-
ケール GDS5 の本邦における信頼性・妥当性の検討 ,
10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushin
日 本 老 年 医 学 会 雑 誌 39. 臨 時 増 刊 ( 学 術 集 会 集 録
ka/0000032813.pdf (2014.8.21)
集 ):104.
2)
土井由利子 (2007):高齢者の睡眠障害に関する疫
18)古谷野亘他 (1987):地域老人における活動能力の
学 ,Geriat.Med.45(6):657-661.
測定-老研式活動能力指標の開発- , 日本公衆衛生
3) 田中秀樹 (2007): 高齢者の睡眠改善 , 看護研究 ,40(2):79-
雑誌 34:109-114.
19)福原 俊一 , 竹上 未紗 , 鈴鴨よしみ他 (2006):日本
84.
4) 足立浩祥 (2005): 高齢者および認知症患者の睡眠の
語版 the Epworth Sleepiness Scale(JESS) ~これまで
問題に対する対処法 , 臨床看護 ,31(12):1771-1776.
使用されていた多くの「日本語版」との主な差異と
5)
岡島義 , 井上雄一 (2012):認知行動療法で改善す
改訂~ ,44(11):896-898.
る不眠症 , すばる舎 , 東京 .
20)兼坂佳孝 (2009):睡眠障害の疫学 , 睡眠医療 3:175-
6)
田中秀樹 , 城田愛 , 林光緒他 (1996): 高齢者の意欲
182.
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21)岡村毅 , 井藤佳恵 , 金野倫子他 (2012):地域在住高
老年精神医学雑誌 ,7:1345-1350.
齢者の日中の眠気 , 日本公衆衛生学会誌 59(9):675-
7)
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683.
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- 40 -
佐 伯 良 子 他
京府医大看護紀要,24:41-48,2014
関節リウマチ患者およびその介護者のうつ状態と介護負担感との関連
佐伯良子 1)、宇佐美眞 2)、武政誠一 3)、岩脇陽子 1)
1)京都府立医科大学医学部看護学科
2)神戸大学大学院保健学研究科
3)神戸国際大学リハビリテーション学部
The Relationship between Depression and the Burden among Caregivers of
Rheumatoid Arthritis Patients.
Ryoko Saeki1), Makoto Usami2), Seiichi Takemasa3), Yoko Iwawaki1)
1. Kyoto Prefectural University of Medicine, School of Nursing
2. Kobe University School of Medicine, Faculty of Health Sciences
3. Kobe International University, Faculty of Rehabilitation
要約
患者の高齢化に伴い、関節リウマチ (Rheumatoid Arthritis: 以下 RA) 患者を支える介護者への支援が求められている。本
研究の目的は、在宅 RA 患者のうつ状態およびその介護者のうつ状態と介護負担感との関連を明らかにすることである。通
院加療中の RA 患者とその介護者 65 組を対象とした。評価指標は、うつ状態(GDS-15)、介護負担感(Zarit 介護負担感尺度)、
ADL(MHAQ)、痛み(VAS)等を用いた。
その結果、RA 患者のうつ状態は、痛みと関連し、また、介護者のうつ状態は、介護年数、介護負担感と関連していた。
また、介護者の介護負担感は、介護年数と関連していた。
以上から、RA 患者には、痛みを軽減する援助が必要であり、介護年数が長い介護者への支援の必要性が示唆された。
キーワード:関節リウマチ患者,介護者,うつ状態,介護負担感、ADL、疼痛
Ⅰ.はじめに
の ADL 評価から、
ベルリン近郊に在住する RA 患者 2,177
関節リウマチ ( 以下 RA) は、その病因、病態は未だ
名について介護が必要となる割合を予測したところ、
十分に解明されたとは言えない。RA の治療では対症療
発症後 5 年以内に 26% の患者に介助が必要となり、4%
法があるものの、根治的な治療は十分確立されていな
の患者に介護が必要となると推定している。そして、
いのが現状である。そのため、RA の症状は少しずつ悪
発症後 30 年までに約半数の患者が介助を必要とし、
化する傾向があり、患者によっては、疼痛や上下肢の
16%の患者に介護が必要になることを報告している 6)。
機能障害、継続的な薬剤投与による副作用のために
わが国の人口構造の高齢化の影響で患者数は年々増加
QOL の低下がみられる1)。 する傾向にあり、その患者数は 70 ~ 80 万人にのぼる 1)。
RA は直接の死因とはなりにくいが、疼痛や関節破壊
そのため、介護者の介護負担感の増加が危惧される。
による上下肢の重篤な機能障害が引き起こされ、生活
一方、RA 患者の介護者の介護負担感は、被介護者の
機能の低下や社会的損失を生じる 。Dickens らは、
ADL 障害だけでなく、年齢、人間関係、患者の生活や
RA 患者が慢性疼痛、行動障害、不安障害および気分障
人生観、疲労などの精神的要因に関連する 7)-12)。梶原
害を伴いやすいことを報告している 3)。近年、RA の治
12)
療薬として生物学的製剤が開発され、抑うつ状態など
処療法が中心であり、罹病期間の長い患者が多く、疾
2)
の症状コントロールの改善が報告されている
4)5)
。
らは、RA は、薬のコントロールや痛みに対する対
病との共存のなかで生活を送るとしている。RA の痛み
RA 患者に対する介護では、Westhoff らは、Hanover
は、日内変動が大きい。身近にいる家族は生活を共に
Functional Status Questionaire に よ る RA 患 者 273 名
する中で、RA 患者の痛みと共存することになる。
- 41 -
関節リウマチ患者およびその介護者のうつ状態と介護負担感との関連
RA 患者のうつ状態について、松野ら 13) は、慢性に
3. 調査期間
持続する疼痛、機能障害とそれに伴う日常生活動作の
調査期間は、2005 年 3 月から 7 月である。
制限、関節の変形や破壊に対する恐怖、合併症や薬剤
の副作用に対する不安など、抑うつ傾向が生じること
4. 調査項目:
は RA 患者 130 名中
RA 患者の調査項目は、年齢、性別、罹病期間、介護
54%が何らかのストレス状態にあり、64%がうつ状態
保 険 利 用 の 有 無、 日 常 生 活 活 動(activities of daily
を報告している。また、黒田ら
14)
。痛み
living :ADL)modified health assessment
や機能障害による ADL の自立度の低下などの身体的な
questionnaire(MHAQ)18)、要介護度、うつ状態、痛み
変化が、うつ状態を引き起こしている。このように、
である。
RA 患者の状態の悪化や介護者の介護負担感が相俟っ
介護者の調査項目は、年齢、性別、患者との続柄、
て、介護者のうつ状態が引き起こされる。
介護年数、介護負担感、うつ状態、経済的負担の有無、
さらに RA 患者の研究では、RA 患者の疼痛緩和が多
介護者自身の健康状態である。
く、RA 患者の介護者の研究は少ない。RA 患者の介護
1)うつ状態
を呈し、疼痛が長引くほど抑うつ傾向がある
15)
7)12)
う つ 状 態 は、Geriatric Depression Scale(GDS-15) の
がしており、RA 患者の介護負担感やうつ状態との関連
GDS-15 短縮版 12)を用いた。GDS-15 は、日本語版にお
は見出せなかったとしている。RA 患者のうつ状態と介
いても信頼性と妥当性が確認されている。また、GDS-
護者のうつ状態について明らかにすることは、RA 患者
15 は、在宅高齢者のうつ状態を測定する尺度として広
の介護者の支援を行う上で極めて重要である。また、
く活用されている。合計点数は、0 ~ 4 点が正常範囲
RA 患者の介護者への支援を明確にすることにもつなが
であり、5 点以上は「うつ傾向」、10 点以上で「うつ状
る。RA 患者と介護者のうつ状態と介護負担感との関連
態」と評価する。
を明らかにすることで適切な支援が可能になる。
2)介護者の介護負担感
本研究は、RA 患者およびその介護者のうつ状態と介
介護負担感は、Zarit 介護負担尺度 17)19-22)を用いた。
護者の介護負担との関連を明らかにすることである。
親族を介護した介護者が情緒的・身体的健康、社会生
者の介護負担感の程度を数値化した報告を梶原ら
活および経済状況に関して被った被害の程度を示した
Ⅱ.研究方法
ものである。下位尺度は、Personal Strain( 介護そのも
1. 用語の定義
のによって生じる負担:個人 ) と Role Strain(介護者
本研究では、うつ状態および介護負担感を以下のよ
の生活が規制される負担:生活)の 2 つがある。質問
うに定義した。
は 22 項目で素点は 0 ~ 88 点の範囲で、得点が高いほ
うつ状態:矢富ら 16)と同様に食欲不振、睡眠障害、
ど介護負担感が高いことを示す。
気力の減退などの他の疾患に伴う身体的症状を含まな
3)痛み
いうつ気分、ポジティブ感情の低下、エネルギー減退
痛みは、Visual Analogue Scale(VAS)を用いた。「痛
を表す状態と定義する。
みはない」状態を「0」、
「これ以上の痛みはないくらい
17)
痛い(これまで経験した一番強い痛み)」を「10」とし
介護負担感:荒井ら
と同様に親族を介護した結果、
介護者が情緒的 • 身体的健康感、社会生活および経済
ている。現在の痛みが 10cm の直線上のどの位置にあ
状態に関して被った被害の程度と定義する。
るかを示す。
4)ADL
2. 対象者
ADL の評価には、1983 年に Pincus ら 18)が開発され
対象者は、H 県内のリウマチクリニックに通院中で
た Modified Health Assessment Questionnaire(MHAQ)
ある 133 名を対象として抽出した。このうち、調査に
を用いた。MHAQ は HAQ の 8 カテゴリーの 20 問から
協力が得られた RA 患者 123 名のうち、日常生活動作
成り、各カテゴリーから、1 問ずつ選択し、8 項目に簡
を家族に介護してもらっている RA 患者と調査の回答
略したものである。衣服の着脱、起立、食事、歩行、
が得られた介護者と対応のある 65 組を本研究の調査対
衛生、伸展、握力、活動の 8 項目で、RA の機能・能力
象者とする。
障害を評価することができる。何の困難もないが 0 点、
幾らか困難が1点、かなり困難が 2 点、できないが 3
点となっている。合計 24 点満点で得点が高いほど身体
- 42 -
佐 伯 良 子 他
機能や能力障害が生じていることを示す。
区分別では 60 代 24 名 (36.9% ) と最も多く、次いで 70
代 17 名(26.2%)、50 代が 15 名 (23.1%)、40 代 6 名 (9.2%)、
5. データ収集の方法
30 代 1 名 (1.5%)、80 代 (1.5%)、90 代 (1.5%) が各 1 名で
本調査の参加依頼は、診察の待ち時間を利用し、医
あった。
師が関節リウマチと診断された患者に対して研究趣意
罹 病 期 間 は 2 ヶ 月 か ら 48 年 で あ り、 平 均 16.1 ±
書を提示し、研究者が口答にて研究の目的および方法
11.6 年であった。
について説明し、本研究への参加の承諾が得られた場
介護保険を受けている 18 名 (27.7%)、受けていない
合に調査を実施した。RA 患者には半構成的面接法を行
が 47 名(72.3%)であり、その内訳は、要支援 2 名、
い、介護者には面接もしくは調査票を手渡し、後日回
要介護は 16 名であり、
「要介護Ⅰ」10 名 (62.5%)、「要
収した。
介護Ⅱ」3 名、
「要介護Ⅲ」1 名、
「要介護Ⅳ」2 名であっ
た。
6. 分析方法
身体障害者手帳については、46 名(70.8%)が保持
RA 患者およびその介護者の GDS-15 は、患者の性別、
し て お り、 そ の 内 訳 は、1 級 が 19 名 (41.3%)、2 級 が
介護者の性別、経済的余裕の有無、介護者の疾病の有
16 名 (34.8%)、3 級が 9 名 (19.6%)、4 級が 2 名 (4.3%) で
無を 2 群間で Mann-Whitney U 検定を用いた。RA 患
あった。
者およびその介護者の GDS-15 と、RA 患者の年齢、介
RA 患者の ADL では、MHAQ の総得点は 0 点から 24
護者の年齢、罹病期間、要介護度、身体障害者手帳の
点であり、平均 7.1 ± 6.2 点であった。ADL の介助が
等級、ADL、介護年数、介護者が新たに希望している
必要な 10 点以上の人は、22 名 (33.3%) であった。
介護サービス数との関連については Spearman の順位
RA 患者の痛み(VAS)については、0 ~ 10cm で平
相関を用いた。介護負担感と RA 患者およびその介護
均 4.7 ± 3.2cm で あ っ た。RA 患 者 の GDS-15 は、2 ~
者の GDS=15、RA 患者の年齢、介護者の年齢、罹病期間、
13 点までに分布し、平均得点は 4.5 ± 3.5 点であった。
痛み、ADL、要介護度、介護年数との関連についても
またその内訳は、0 ~ 4 点の正常範囲が 43 名 (66.2%)、
Spearman の 順 位 相 関 を 用 い た。 統 計 学 的 分 析 に は
5 ~ 9 点のうつ傾向が 15 名 (23.1%)、10 点以上のうつ
Stat Soft 社製 STATISTICA を用い、危険率 5%を有意水
状態が 7 名 (10.8%)22 名(33.8%)であった。
準とした。
7. 倫理的配慮 RA 患者とその介護者に対して、研究の趣旨、プライ
表 1 RA 患者とその介護者の属性
表1 RA患者とその介護者の属性
名
(%)
RA患者
性別
男性
8
12.3
女性
57
87.7
30代
1
1.5
40代
6
9.2
50代
15
23.1
60代
24
36.9
取した。なお介護者が不在の場合には文書にて研究の
70代
17
26.2
目的および方法について説明し,患者に持ち帰っても
80代
1
1.5
バシーの保護、不参加による不利益は受けないことを
年齢区分
明記した書面を口答で説明し、同意を得た。また面接
による聞き取り調査は、プライバシーの保護のため、
クリニックの個室にて患者と介護者それぞれ別室で聴
90代
1
1.5
性別
男性
28
43.1
女性
37
56.9
年齢区分
40代
11
16.9
らい後日にて回収した。患者と介護者から得られた情
介護者
報は記号化で対応できるようにし個人が特定できない
よう配慮した。
50代
17
26.2
Ⅲ.結果
60代
22
33.8
1. 対象者の背景
70代
12
18.5
RA 患者とその介護者の 65 組を解析した。
80代
3
4.6
夫
28
43.1
患者との続柄
1)RA 患者の属性
娘
16
24.6
RA 患者の属性は表1に示した。RA 患者の性別は、
嫁
10
15.4
男性 8 名 (12.3%)、女性 57 名 (87.7%) であった。
妻
8
12.3
平均年齢は、63.9 ± 13.6(38 ~ 93)歳であり、年齢
兄弟
3
4.6
- 43 -
関節リウマチ患者およびその介護者のうつ状態と介護負担感との関連
2)介護者の属性
RA 患者の GDS-15 と患者の年齢、罹病期間、要介護度、
介護者の属性は表1に示した。介護者の性別は、男
身障者手帳の等級、ADL、介護者の年代、介護年数、
性 28 名(43.1%)、女性 37 名(56.9%)であり、年齢
介護者の GDS-15 には関連がみられなかった。
は 40 歳代から 80 歳代で、60 歳代が 22 名(33.8%)を
4)介護者の GDS-15 と RA 患者の病態および介護状況
占めており、次いで 50 代 17 名(26.2%)、70 代 12 名
との相関
(18.5%)、40 代 11 名 (16.95% )、80 代 3 名 (4.6%) であっ
介護者の GDS-15 と RA 患者の病態および介護状況と
た。
の関連について表 3 に示した。介護者の GDS-15 と介
RA 患者との続柄は、夫が 28 名(43.1%)を占めて
護年数の関係では、介護年数の長さとうつ状態が低い
おり、次いで娘 16 名(24.6%)、嫁 10 名 (15.4%)、妻 8
正の相関がみられた(r = 0.272、p<0.05)。
名 (12.3%)、兄弟 3 名 (4.6%)、であった。
また、介護者の GDS-15 と RA 患者の年齢、患者の罹
介護者の経済的余裕の有無では、余裕有りが、34 名
病期間、患者の介護度、身体障害者手帳の級、ADL、
(52.3%)、余裕なしが、31 名(47.7%)であった。
患者の痛み、介護者の年代、新しく利用を希望してい
介護者の介護年数については、1 年から 7 年であり、
る介護サービス数との間には相関はみられなかった。
平均 2.0 ± 2.3 年であった。
5)介護負担感と RA 患者の病態および介護状況との
介護者の疾病の有無については、疾病ありが、40 名
相関
介護者の介護負担感と RA 患者の病態および介護状
(61.5%)、なしが、25 名(38.5%)であった。
介護者の GDS-15 は 0 ~ 13 点に分布し、平均 3.8 ± 3.1
況との相関を、表 4 に示した。介護者の介護負担感と
点であった。また、5 点未満 46 名(71.9%)、5 ~ 10 点
介 護 者 の GDS-15 と の 間 に 正 の 相 関(r = 0.283、
1 名 (23.4%)、10 点以上 3 名 (4.7%) であった。
p<0.05)がみられ、介護負担感の下位尺度 Role Strain
介護者の介護負担感は 0 ~ 81 点であり、平均は 23.4
との間に、低い正の相関(r = 0.283、p<0.05)が見ら
± 18.7 点であった。性別では、男性平均 19.2 ± 13.7 点、
れた。
女性平均 26.5 ± 21.1 点で両者間に統計学的な差はみと
介護者の介護負担感と介護年数との間には、正の相
められなかった。
関 (r = 0.31 p<0.05) がみられた。介護負担感の下位尺
3)RA 患者の GDS-15 と病態および介護状況との相関
度 Role Strain(r = 0.31 p<0.05) と Personal Strain(r =
RA 患者の GDS-15 と病態および介護状況との関連に
0.23 p<0.05) で低い正の相関が認められた。介護負担感
ついて表 2 に示した。RA 患者の GDS-15 と痛みとの相
の下位尺度患者の要介護度と Personal Strain(r = 0.55
関 で は、 低 い 正 の 相 関 が 認 め ら れ た(r = 0.322、
p<0.05) との間に正の相関が見られた。
p<0.01)
。介護者の GDS-15 と介護者が新たに希望する
介護負担感と RA 患者の年齢、罹病期間、身体障害
介護サービス数との相関では、低い正の相関が認めら
者手帳級、ADL、患者の GDS-15、VAS、介護者の年代
れた (r=0.25, p<0.05)。
については、相関がみらなかった。
表表2
2 RA
患者の GDS-15 と病態および介護状況との相関
RA患者のGDS-15と病態および介護状況との相関
表2
RA患者のGDS-15と病態および介護状況との相関
項目
GDS-15
項目
GDS-15
0.32**
0.32**
患者の痛み(VAS)
患者の痛み(VAS)
0.16
0.16
患者の年齢
患者の年齢
0.002
0.002
患者の罹病期間
患者の罹病期間
0.23
0.23
患者の要介護度
患者の要介護度
0.23
0.23
身体障害者の等級(級)
身体障害者の等級(級)
0.21
0.21
患者のMHAQ)
患者のMHAQ)
0.02
0.02
介護者の年代
介護者の年代
0.007
0.007
介護者の介護年数
介護者の介護年数
0.23
0.23
介護者のGDS-15
介護者のGDS-15
介護者が新たに希望する介護サービス数
0.25*
介護者が新たに希望する介護サービス数
0.25*
**
** p<0.01 *p<0.05
p<0.01 *p<0.05
注:
GDS-15:geriatric
depression
注: GDS-15:geriatric depression scale
scale
VAS:
VAS: visual
visual analogue
analogue scale
scale
MHAQ:
modified
MHAQ: modified health
health assessment
assessment questionnaire
questionnaire
表 3 介護者の GDS-15 と RA 患者の病態およ
び介護状況との相関
表3 表3
介護者のGDS-15とRA患者の病態および介護状況との相関
介護者のGDS-15とRA患者の病態および介護状況との相関
GDS-15
GDS-15
項目項目
患者の年齢
患者の年齢
- 0.025
- 0.025
患者の罹病期間
患者の罹病期間
0.0370.037
患者の要介護度
患者の要介護度
0.2270.227
身体障害者の等級(級)
身体障害者の等級(級)
0.1360.136
患者のMHAQ
患者のMHAQ
0.1680.168
患者の痛み(VAS)
患者の痛み(VAS)
0.12 0.12
介護者の年代
介護者の年代
0.0490.049
介護年数
介護年数
0.272*
0.272*
介護者が新たに希望する介護サービス数
0.13 0.13
介護者が新たに希望する介護サービス数
*p<0.05
*p<0.05
注:GDS-15:
geriatric
depression
scalescale
注:GDS-15:
geriatric
depression
MHAQ:
modified
health
assessment
questionnaire
MHAQ:
modified
health
assessment
questionnaire
VAS:
visualvisual
analogue
scalescale
VAS:
analogue
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佐 伯 良 子 他
6)介護者の GDS-15
表表4
4 介護負担感と
RA 患者の病態および介護状況との相関
介護負担感とRA患者の病態および介護状況との相関
介護負担 Role
Personal
感得点
項目
Strain
Strain
介護者GDS-15
0.283*
0.283*
0.232
患者の年齢
- 0.12
- 0.12
- 0.195
患者の罹病期間
- 0.147 - 0.147 - 0.187
身体障害者の等級(級) - 0.205 - 0.205 - 0.188
MHAQ
0.084
0.084
0.144
患者のGDS-15
- 0.12
- 0.12
0.01
患者の痛み(VAS)
0.187
0.187
0.219
患者の要介護度
0.46
0.46
0.55*
介護者の年代
- 0.096 - 0.096 - 0.114
介護年数
0.31*
0.31*
0.23*
*p<0.05
介護者の GDS-15 を介護者の性別でみると、女性平均
4.3 ± 4.2 点で男性平均 3 ± 3.7 点であり、男性に比べ
て女性が有意に(p<0.05)高値を示した。
介護者の GDS-15 を疾病の有無別でみると、疾病を
有する介護者平均 4.5 ± 3.6 点で、疾病の無い介護者平
均 2.6 ± 2.7 点に比べて、有意に(p<0.05)うつ状態に
なることを示していた。
介護者の GDS-15 を経済的余裕の有無別でみると、
経済的余裕のない介護者平均 5.2 ± 3.0 点で、経済的余
裕のある介護者平均 2.8 ± 2.6 点に比べ、有意に(p<0.01)
点 p<0.05
8
高かった。
点
Ⅳ.考察
6
本対象の RA 患者とその介護者の年齢を見ると半数
4
以上が 60 歳以上であり、加齢による身体機能の低下が
予測される。また、介護者の半数は経済的余裕が無い
2
としており、6 割は介護者自身が病気を持ちながら介
護をしていた。RA 患者のうつ状態に関連する要因では、
0
男性(n=28)
疼痛が関連していた。介護者のうつ状態に関連する要
女性(n=37)
因では、介護者の性別、介護者の病気の有無が関連し
図図1
1 介護者の性別による介護者の
GDS-15
介護者の性別による介護者のGDS-15
ていた。介護者のうつ状態と経済的余裕、介護年数と
点 p<0.05
が関連した。そこでまず、RA 患者とその介護者のうつ
8
状態を生じさせる要因について述べていきたい。
RA 患者のうつ状態について、黒田ら 14) は、疼痛が
6
長引くほど抑うつ傾向が強くなると述べている。本研
究においても RA の疼痛とうつの関連が示され、疼痛
4
がうつ状態に影響していることがわかった。慢性に持
2
続する機能障害とそれに伴う日常生活活動の制限、関
節の変形や破壊に対する恐怖、合併症や薬剤の副作用
0
疾病あり(n=39)
に対する不安など、RA 患者には多くの精神的ストレス
疾病なし(n=25)
や抑うつ傾向が生じる 23-24)。ADL の自立度の低さは抑
注:GDS-15:geriatric depression scale
うつの一要因と考えられ、痛みで「何もしたくない」
図 2 介護者の疾病の有無による介護者の
図2
介護者の疾病の有無による介護者のGDS-15GDS-15
につながる。したがって、RA 患者のうつ状態の軽減に
点 p<0.05
は、痛みを軽減させる日常生活の過ごし方を指導する
8
必要がある。
鷲尾ら 25)は、要介護高齢者に対する介護者の 48.9%
6
にうつ状態が見られたと報告している。本調査では
27.5% の介護者にうつ状態やうつ傾向がみられたが、
4
鷲尾らよりもやや少ない傾向であった。これは、鷲尾
らの研究対象が要介護高齢者であり、寝たきりや認知
2
症などの人が多いためと考える。
また今回、男性介護者よりも女性介護者の方がうつ
0
経済的余裕あり(n=28)
状態になりやすい傾向を示し、杉浦ら 26)の介護者のう
経済的余裕なし(n=31)
つ状態は女性介護者に有意に多いとする報告と一致し
図 3 経済的余裕の有無別の介護者の GDS-15
図3 経済的余裕の有無別の介護者のGDS-15
- 45 -
関節リウマチ患者およびその介護者のうつ状態と介護負担感との関連
ていた。女性は、男性に比べて介護以外の家事などの
は、その中心である家族の健康を維持し、うつ状態に
家庭内での役割の多さも関与している可能性が指摘さ
陥らないように介護負担感を軽減させることが重要に
れている
27)
。今後は、男性介護者と女性介護者におけ
なる。そのためには、RA 患者に対して、疼痛を緩和し
る特徴的なうつ状態に関連する要因を検討し、介護者
身体機能や ADL を向上させるためのリハビリテ-ショ
の性差を考慮した支援策を講じることが必要であろ
ンの介入と、介護者の介護軽減の視点に立った支援が
う。また、介護者の就労状態については、介護期間が
必要であり、行政や各種サ-ビス機関、地域による支
長くなると有職者ではうつ状態が改善するが無職群は
援体制の確立が今後必要である。本対象者の 7 割が介
悪化すると杉原ら
28)
が報告している。しかし、本研究
護保険を利用していなかったという実態から、適切な
では就労とうつとの間には関連が見られず、RA 患者の
時期に導入し、介護負担感やうつ状態などのアセスメ
介護者の就労状況と介護との関連については、今後の
ントを行い,介護負担を軽減するための支援が必要で
課題としたい。
ある。
また、介護者の健康状態が悪化すれば、介護者自身
がうつ状態になりやすいことが示された。介護者の健
Ⅴ . 研究の限界
康状態が悪いと、うつ状態を招くことにもなるため、
本研究は、調査期間内に外来通院中であった患者と
介護者に対する支援が大切である
20)25)
。したがって、
その介護者を検討したものであり、全ての介護者に面
RA 患者の状態だけに目を向けるのではなく、その介護
接を行っていないため、介護の現状の詳細を把握する
者の健康管理に十分配慮することが必要である。
には限界があった。今後、RA の病期による分類、介護
介護者のうつ状態と介護者の介護負担感との関係に
期間による分類など詳細な検討が必要であると考えら
ついては、浅見らの 29-30)介護負担感を感じている介護
れる。また、今後は、RA 患者の介護者に関連したうつ
者にうつ傾向が多いとする報告と一致した。介護者の
状態に注目したうえで、RA 患者への在宅支援という看
負担を、看護師は傾聴し、患者と介護者の関係を調整
護介入を行い、その効果を検討していく必要がある。
することが、介護者の介護負担感を軽減することにな
る。介護保険 31)が、在宅の RA 患者の介護に十分対応
Ⅵ . 結論
していないため、経済的余裕が無いと、介護負担感が
在宅 RA 患者のうつ状態およびその介護者のうつ状
増加し、介護者のうつ状態を悪化させる要因になって
態と介護負担感に関する調査を実施した結果、以下の
いたとも考えられる
32)
。RA 患者の治療費などの医療
ことが明らかになった。
費の負担の軽減したり、介護費用の経済的な支援が必
1. RA 患者のうつ状態は、痛みと関連し、また、介護
要である。そのためには、医療費助成制度や税の減免、
者のうつ状態と介護負担感と関連していた。
障害者年金などの助成や貸付、交通運賃の割引等につ
2. 介護者の介護負担感は、介護年数と関連していた。
いての情報を提供することも大切な支援のひとつであ
3. 介護者のうつ状態は、患者の要介護度、介護者の疾
る。
病の有無、経済的余裕の有無と関連していた。
介護年数が長期化すると介護負担感が増加し、うつ
これらから、RA 患者およびその介護者のうつ状態を
状態が悪化することが示された。杉原も要介護高齢者
軽減する支援の必要性が示唆された。
の主介護者の介護負担感は介護期間が長いほど増悪す
るとしている 28)。近年わが国では、平均寿命の更なる
謝辞
延長、長寿社会であり、RA 患者の罹病期間の延びも予
本研究を行うにあたり、快く応じて下さいました患
測され、介護者の介護年数の一層の長期化が予測され
者様、介護者の皆様と研究フィールドを提供して下さ
る。鷲尾 25) や北浜らは 31) 介護負担を増加させる要因
いました関係者の皆様に深く感謝申し上げます。また、
として、介護者の自由な時間の減少を挙げている。そ
本論文は、神戸大学大学院医学系研究科修士論文に加
のため、介護者の生活に介護から完全に離れた自由な
筆修正を加えたものである。
時間を確保することが重要となり、これを実現させる
サ-ビスの提供が必要である。介護年数が長くなって
Ⅹ ) 文献
も介護負担感を感じないような介護者への社会的サポ
1) リウマチ・アレルギー対策委員会報告書 (2005): 厚
-ト体制の構築が急がれる。
生科学審議会疾病対策部会リウマチ・アレルギー対
このように RA 患者の在宅生活を継続させるために
- 46 -
佐 伯 良 子 他
策委員会 ,1-50.
マチ患者における心理学的因子と関節痛との関連
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- 47 -
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- 48 -
柴 田 明 美 他
京府医大看護紀要,24:49-62,2014
新人看護師時代の職場における体験と SOC との関連
柴田明美1)、岩脇陽子1)、室田昌子1)、新垣洋美 2)
1)京都府立医科大学医学部看護学科
2)前京都府立医科大学大学院保健看護学研究科
My Experiences as a New Nurse to the SOC
Akemi Shibata1), Yoko Iwawaki1), Masako Murota1), Hiromi Shingaki2)
1.School of Nursing,Kyoto Prefecutural University of Medicine
2.Former Department of Nursing for Health Care Science, Graduate School of Nursing
for Health Care Science, Kyoto Prefectural University of Medicine
要約
本研究の目的は、新人看護師の就業継続の支援に向けて、新人看護師時代の職場における体験と SOC との関連を検討す
ることである。調査期間は 2009 年 8 ~ 9 月、対象者は 2 病院に勤務する看護師 435 名である。調査方法は自己記入式質問
紙調査である。調査内容は属性、新人看護師時代の体験、職場特性、SOC-13 を用いて、関連を分析した。303 名の有効回
答(有効回答率 78.9%)が得られた。新人看護師時代の職場における体験と SOC の関連では、患者の前で先輩看護師に怒
られた、先輩看護師に相談しても聴いてもらえなかったことのある人は、そうでない人に比べて有意に SOC が低かった。
また、職場環境と SOC との関連では、職場の一員として受け入れられていない、看護師に向いていない、看護師を辞めた
いとする人は、そうでない人と比べて有意に SOC が低かった。
以上から、新人看護師時代の先輩看護師との否定的な体験が看護師の SOC に影響していた。これらから、新人看護師の
SOC を高める先輩看護師の支援の方向性が示唆された。
キーワード:新人看護師時代、首尾一貫感覚(SOC)、先輩看護師、職場環境、体験
Ⅰ.はじめに
筆者ら 2)は、新人看護師への就業継続に向けた支援
高度医療の進歩と共に最新の治療が行われている臨
のあり方を明らかにするため、新人看護師が先輩看護
床の医療現場においては、益々専門的な看護が求めら
師にどのような関わりを望んでいるのかを検討した。
れている。このような臨床現場で働く看護師は緊張や
その結果、新人看護師は先輩看護師に対して、話しや
疲労などさまざまなストレスに晒されている。新人看
すい環境や指導者としての態度を求めており、新人看
護師は理想の看護を抱き就職したにも関わらず、自分
護師の成長を促す支援や新人看護師に合わせた指導を
の看護実践能力と臨床現場から求められる看護実践能
求めていることがわかった。従って、新人看護師への
力との間にギャップを感じ、就労を継続できずに離職
支援においては、先輩看護師の人的資源をうまく活用
に至ることも少なくない。
する必要がある。
日本看護協会の「2012 年病院における看護職員需給
労 働 者 の ス ト レ ス に 関 す る 研 究 で は、Sense of
状況調査結果」 によると、新人看護職員の離職率は
coherence(SOC:首尾一貫感覚)を用いた研究が注目
全国平均 7.5%であり、2008 年度から 4 年連続で減少
さ れ て い る。SOC と は 保 健 医 療 社 会 学 者 の Aaron
傾向である。これらの新人看護師の離職率が低下した
Antonovsky(1987/1979)3) により提唱された概念で
原因には、2010 年に新人看護職員研修が努力義務化さ
あり、
「個人の生活世界全般への志向性」と定義されて
れ、それぞれの病院が教育研修体制を整えてきたこと
いる。SOC が高い人ほどストレッサーにしなやかに対
の効果が表れているとも言える。しかしながら、看護
応し、状況をうまく乗り越えることができるとされ、
職員の離職予防は継続して取り組むべき重大な課題で
人々のストレス対処力や健康保持能力の予測因子とし
ある。
て現在広く検証されている 4)。この考え方は、看護師
1)
- 49 -
新人看護師時代の職場における体験と SOC との関連
のメンタルヘルスケア 5)、職務満足と就業意思 6)、労
働環境満足度や看護臨床能力
7)
り、幼少時の家庭環境や社会的役割により獲得され、
において研究が行われ
個人要因と環境要因からなる。
ている。
SOC は極めてストレスフルな出来事や状況に直面し
は、看護師自身の SOC に着眼し、「看護師
ても、それらを成長発達の糧に変えて、明るく元気に
がよりよい職業生活を送ることができるべく支援策を
生きている人々の中に見出した人生における究極の健
講じることは、ひいては患者自身の病の克服過程にも
康要因である。SOC は 3 つの下位尺度から構成されて
大きく関連することにもなる」と述べている。言い換
いる。把握可能感とは、自分の置かれている状況をあ
えれば、看護師の SOC を高く保つことができれば、仕
る程度予測または理解できるという感覚、処理可能感
事上のストレスにうまく対処し、仕事と私生活との両
とは、何とかなる何とかやっていけるという感覚、有
立が可能となり、仕事を続けることができる。看護師
意味感とは、日々の営みにやりがいや生きる意味が感
がキャリアを重ねることで、看護の質の向上につなが
じられる感覚を意味する。SOC が高い人は、時と場合
り、患者により良い看護を提供することができる。新
に応じて柔軟に適切な対処法を選び取り駆使すること
人看護師がよりよい職業生活を送るには、新人看護師
ができる。
の SOC を高める支援が必要である。また、看護師の新
4.調査項目
戸ヶ里
8)
人看護師時代の職場における体験と SOC との関連がわ
1)対象者の基本属性
かれば、新人看護師への就業継続を支援するための手
基本属性は、年齢、性別、職種、臨床経験年数、
がかりを見出すことができる。
職位、教育背景、家族背景である。学生の実習指導は、
そこで、本研究の目的は、看護師の新人看護師時代
「とてもそうである」
「まあまあそうである」
「あまり
の職場における体験と SOC との関連を明らかにするこ
そうでない」
「全くそうでない」の 4 段階で回答を求
とである。
めた。
2)職場の特性
Ⅱ.研究方法
職場の特性は、配置、勤務体制、給料、仕事への
1.対象者
満足感とし、「とても満足している」「まあまあ満足
対象者は、関西圏の都市部にある 300 床以上の地域
している」「あまり満足していない」「全く満足して
医療支援病院2施設に勤務する看護部長等の組織の看
いない」の 4 段階でたずねた。自分自身の健康状態は、
護管理者を除いた看護師 435 名である。
「とてもよい」
「まあまあよい」
「あまりよくない」
「全
2.調査方法
くよくない」の 4 段階で回答を求めた。
1)調査期間
3)新人看護師時代の職場における体験 2009 年 8 ~ 9 月
新人看護師時代の職場における体験は 9 項目とし、
2)データ収集
「いつもあった」
「時々あった」
「あまりなかった」
「全
自己記入式質問紙調査で行った。対象施設に研究者
くなかった」の 4 段階で回答を求めた。
自身が直接赴き、説明文書、自己記入式による調査票、
4)職場環境に対して感じていること 回収用封筒を看護管理者に手渡し、対象者への調査票
現在の配置の職場環境に対して感じていることは
等の配布を依頼した。調査票は無記名回答とし、留め
6 項目とし、
「いつもある」「時々ある」「あまりない」
置き法にて回収した。
3.研究の概念枠組み
「全くない」の 4 段階で回答を求めた。
9)
本研究の概念枠組みは Antonovsky(1987)の健康生
成モデルを参考に作成している。健康生成モデルは、
健康はいかにして回復され保持され増進されるのかと
いう観点から、その要因を健康要因と呼び、健康要因
の解明と支援・強化を目指す理論である。そして、ス
トレッサーに対処するための資源である汎抵抗資源と
ストレッサーに対する対処力である SOC が関連するこ
汎抵抗資源
(ストレッサーに対処するための資源)
SOC
(ストレッサーに対する対処力)
個人要因
性別 年齢
臨床経験年数
教育背景
家族背景
健康状態
環境要因
職場環境(人間関係含む)
新人看護師時代の体験
とを示している(図1)。
図図1
1 本研究の概念枠組み
本研究の概念枠組み
汎抵抗資源は SOC を形成するために必要な資源であ
- 50 -
把握可能感
処理可能感
有意味感
柴 田 明 美 他
5)SOC 尺度
学校 4 名(1.3%)、その他 7 名(2.3%)であった。看
SOC の 測 定 は Antonovsky(1987) が 作 成 し、 山
護継続教育は、認定看護師課程 9 名(3.0%)
、実習指
崎ら(2001)によって信頼性と妥当性が検証された
導者講習会修了者 35 名(11.6%)、その他 36 名(11.9%)
「SOC-13 日本語版」を使用した。SOC スケールは下
であった。
位尺度である、把握可能感(5 項目)、処理可能感(4
学生実習指導への関心は、
「とても関心がある」27
項目)、有意味感(4 項目)で構成されている。回答
名(8.9%)、
「まあまあ関心がある」101 名(33.3%)
「
、あ
は 7 件法でたずね、1 ~ 7 点で得点化し、逆転項目
まり関心がない」127 名(42.0%)、「まったく関心がな
の得点を逆転して、合計得点を点数化する。得点が
高いほどストレス対処力が高いことを示している。
表
1 対象の属性
表1 対象の属性
n=303
%
5.分析方法
項目
1)調査項目の基本属性、職場の特性は記述統計量
n
性別
を算出し、SOC と下位尺度は合計得点の平均値を算
女性
男性
274
29
Mean 33.2
Mean 10.6
90.4
9.6
SD 8.8
SD 8.2
師長
副師長
主任・副主任
看護師
20
4
40
239
6.6
1.3
13.2
78.9
従 属 変 数 と し 順 位 和 検 定(Mann-WhitneyU 検 定、
看護基礎教育
Kruskal-Wallis 検定)を行った。分析には SPSS17.0j.
看護大学
短期大学
専門学校
4年課程専門学校
その他
卒業後の継続教育
認定看護師課程
実習指導者講習会
その他の資格
学生実習指導への関心
とても関心がある
まあまあ関心がある
あまり関心がない
まったく関心がない
学生実習指導を行うこと
とても好きだ
まあまあ好きだ
あまり好きではない
好きではない
配偶者の有無
あり
なし
子どもの有無
あり
なし
生活状況
家族と同居
一人暮らし
健康状態
とてもよい
まあまあよい
あまりよくない
全くよくない
4
15
273
4
7
1.3
5.0
90.1
1.3
2.3
9
35
36
3.0
11.6
11.9
27
101
127
48
8.9
33.3
42.0
15.8
11
98
138
56
3.6
32.3
45.5
18.5
115
188
38.0
62.0
100
203
33.0
67.0
181
122
59.7
40.3
24
157
107
15
7.9
51.8
35.3
5.0
出した。
年齢
臨床経験年数
職位
2)調査項目の学生の実習指導、健康状態、給料へ
の満足、仕事への満足、私生活への満足、新人看護
師時代の体験、職場環境に対して感じていることは、
「そうである群」と「そうでない群」の2群に分け独
立変数とし、SOC と下位尺度の合計得点の中央値を
for Windows を使用し有意水準は 5%未満とした。
6.倫理的配慮
対象施設の看護管理者に研究の趣旨を文書及び口頭
で説明し同意を得た。対象者には本研究の目的と方法
について文書にて説明を行った。また、得られたデー
タは統計処理し、本研究の目的以外には使用しないこ
とを説明した。調査の参加は自由意思であり、参加の
拒否による不利益は一切ないことを説明した。
なお本研究は、対象の 2 施設の倫理委員会の審査を
受け承認を得てから実施した。
Ⅲ.結果
1.対象者の属性
384 名の看護師から回答が得られ、回収率は 88.3%
であった。そのうち有効回答が得られた 303 名(有効
回答率 78.9%)を分析対象とした。
対象者の属性は表 1 に示した。性別は、女性 274 名
(90.4%)、男性 29 名(9.6%)であった。年齢は 21 ~
60 歳、平均年齢は 33.2 ± 8.8 歳であった。臨床経験年
数は 1 ~ 38 年、平均臨床経験年数は 10.6 ± 8.2 年であっ
た。職位は看護師長 20 名(6.6%)、副看護師長 4 名
(1.3%)
、主任・副主任 40 名(13.2%)、看護師 239 名
(78.9%)であった。 看護基礎教育は看護大学 4 名(1.3%)、短期大学 15
名(5.0%)
、専門学校 273 名(90.1%)、4 年課程専門
- 51 -
新人看護師時代の職場における体験と SOC との関連
い」48 名(15.8%)であった。学生実習指導を行うこ
1)SOC 平均値
とは、
「とても好きだ」11 名(3.6%)、
「まあまあ好きだ」
SOC と下位尺度の平均値について表 3 に示した。
98 名(32.3%)、
「あまり好きではない」138 名(45.5%)、
対象者の SOC 平均値は 53.9 ± 6.2、把握可能感は
「好きではない」56 名(18.5%)であった。
19.4 ± 4.4、 処 理 可 能 感 は 17.7 ± 2.7、 有 意 味 感 は
家族背景は、配偶者あり 115 名(38.0%)、配偶者な
16.8 ± 2.3 であった。
し 188 名(62.0%)、子どもあり 100 名(33.0%)、子ど
SOC-13 の 信 頼 性 に つ い て、 本 研 究 に お け る
もなし 203 名(67.0%)であった。生活の状況は家族
Cronbach’s α係数は 0.83 であり、これらの信頼性
と同居 181 名(59.7%)一人暮らし 122 名(40.3%)で
は得られている。
あった。
2)基本属性との関連
健康状態は、
「とてもよい」24 名(7.9%)
、
「まあま
基本属性との関連について表 4 に示した。
あ よ い 」157 名(51.8 %)、「 あ ま り よ く な い 」107 名
性別では、女性は SOC54.0 ± 6.3、把握可能感 19.4
(35.3%)、
「全くよくない」15 名(5.0%)であった。
± 4.5、処理可能感 17.8 ± 2.7、有意味感 16.8 ± 2.3
2.職場の特性
表2 職場の特性
表2 職場の特性
職場の特性は表 2 に示した。
現在の配置は一般病棟 192 名(63.4%)、病棟以外
項目
n
111 名(36.6%)であった。
現在の配置
配置は、希望通りである 217 名(71.6%)、希望通り
一般病棟
192
病棟以外
111
配置が希望通りである
はい
217
いいえ
86
配置への満足
とても満足している
82
少し満足している
134
あまり満足していない
67
全く満足していない
20
給料への満足
とても満足している
6
少し満足している
65
あまり満足していない
151
全く満足していない
81
仕事がハードであるか
とてもハード
113
少しハード
146
あまりハードでない
37
全くハードでない
7
夜勤担当の有無
している
265
準夜勤回数(/月)
Mean 5.1
深夜勤回数(/月)
Mean 4.8
していない
38
時間外勤務の有無
している
281
時間数( /回)
Mean 11.5
していない
22
仕事への満足
とても満足している
11
少し満足している
149
あまり満足していない
124
全く満足していない
19
私生活への満足
とても満足している
47
少し満足している
176
あまり満足していない
67
全く満足していない
13
でない 86 名(28.4%)であった。配置への満足は、
「と
ても満足している」82 名(27.1%)、
「少し満足している」
134 名(44.2%)、
「あまり満足していない」67 名(22.1%)、
「全く満足していない」20 名(6.6%)であった。
給料への満足は、
「とても満足している」6 名(2.0%)、
「少し満足している」65 名(21.5%)、
「あまり満足して
いない」151 名(49.8%)、「全く満足していない」81
名(26.7%)であった。
仕事に対するハードさは、「とてもハード」113 名
(37.3%)、
「少しハード」146 名(48.2%)、
「あまりハー
ドでない」37 名(12.2%)
、
「全くハードでない」7 名
(2.3%)であった。
夜勤勤務は、
「している」265 名(87.5%)、「してい
ない」38 名(12.5%)であった。また、1 か月平均の
夜勤回数は、準夜勤 5.1 ± 2.1 回、深夜勤 4.8 ± 2.0 回
であった。
時間外勤務は、
「している」281 名(92.7%)、「して
いない」22 名(7.3%)であった。また、1 か月平均の
時間数は 11.5 ± 9.8 時間であった。
仕事への満足は、
「とても満足している」11 名(3.6%)、
「少し満足している」149 名(49.2%)、「あまり満足し
ていない」124 名(40.9%)、「全く満足していない」19
名(6.3%)であった。
私生活への満足は、
「とても満足している」47 名
(15.5%)
、
「少し満足している」176 名(58.1%)、「あ
まり満足していない」67 名(22.1%)、「全く満足して
いない」13 名(4.3%)であった。
3.SOC との関連 - 52 -
n=303
%
63.4
36.6
71.6
28.4
27.1
44.2
22.1
6.6
2.0
21.5
49.8
26.7
37.3
48.2
12.2
2.3
87.5
SD 2.1
SD 2.0
12.5
92.7
SD 9.8
7.3
3.6
49.2
40.9
6.3
15.5
58.1
22.1
4.3
柴 田 明 美 他
表3 SOCと男女別平均値
表3 SOC と男女別平均
女性(n=274)
男性(n=29)
全体(n=303)
平均値
標準
偏差
平均値
標準
偏差
平均値
標準
偏差
SOC
54.0
6.3
52.8
5.0
53.9
6.2
把握可能感
19.4
4.5
19.0
3.6
19.4
4.4
処理可能感
17.8
2.7
17.1
2.8
17.7
2.7
有意味感
16.8
2.3
16.7
2.3
16.8
2.3
であった。男性は SOC52.8 ± 5.0、把握可能感 19.0
11 年目以上は SOC54.9 ± 6.3、把握可能感 20.5 ±
± 3.6、処理可能感 17.1 ± 2.8、有意味感 16.7 ± 2.3
4.2、処理可能感 17.7 ± 2.7、有意味感 16.7 ± 2.3 であっ
であった。
た。臨床経験年数 3 区分と SOC との比較では、SOC
職位は、「師長・副師長・主任・副主任」と「看護
と把握可能感は臨床経験年数の区分において有意な
師」の 2 群に分け、SOC 平均値の比較を行った。把
差(SOC:p<0.01、把握可能感:p<0.001)を示した。
握可能感は「師長・副師長・主任・副主任」20.9 ± 4.3
3)職場の特性との関連
であり、
「看護師」19.0 ± 4.3 に比べて有意に(p<0.01)
職場の特性との関連は表 6 に示した。
高値を示した。有意味感は「看護師」17.0 ± 2.4 で
配置への満足では、
「満足している」は把握可能感
あり、
「師長・副師長・主任・副主任」16.3 ± 2.0 に
19.7 ± 4.4 であり、「満足していない」の 18.6 ± 4.3
比べて有意に(p<0.05)高値を示した。
に比べて有意に(p<0.05)高値を示した。
学生実習指導では、「関心がある」は把握可能感
仕事のハードさでは、「ハードでない」の SOC55.5
20.1 ± 4.3 であり、
「関心がない」18.9 ± 4.4 に比べ
± 6.5、把握可能感 21.0 ± 4.3 であり、
「ハードである」
て有意に(p<0.05)高値を示した。また、学生実習
の SOC 53.6 ± 6.1、把握可能感 19.1 ± 4.3 に比べて
指導が「好きである」は SOC55.0 ± 5.8、把握可能
有意に(SOC:p<0.05、把握可能感:p<0.01)高値を
感 20.2 ± 4.4 であり、
「好きでない」の SOC 53.3 ± 6.3、
示した。
把 握 可 能 感 18.9 ± 4.3 と 比 べ て 有 意 に(SOC:
仕事への満足では、
「満足している」の把握可能感
p<0.05、把握可能感:p<0.05)高値を示した。
20.1 ± 4.4 であり、「満足していない」の 18.5 ± 4.3
配偶者の有無では、配偶者ありは把握可能感 20.4
に比べて有意に(p<0.01)高値を示した。私生活へ
± 4.0 で、 配 偶 者 な し 18.8 ± 4.5 に 比 べ て 有 意 に
の満足では、「満足している」の SOC は 54.6 ± 6.0、
(p<0.05)高値を示した。
把握可能感 20.0 ± 4.3 であり、「満足していない」の
子どもの有無では、子どもありは把握可能感 20.6
SOC 52.1 ± 6.3、把握可能感 17.7 ± 4.0 に比べて有意
± 4.0 で、 子 ど も な し 18.8 ± 4.4 に 比 べ て 有 意 に
に(SOC:p<0.01、把握可能感:p<0.001)高値を示
(p<0.05)高値を示した。
した。
生活状況では、家族と同居は把握可能感 19.8 ± 4.3
4)新人看護師時代の職場における体験との関連
で、一人暮らし 18.7 ± 4.4 に比べて有意に(p<0.05)
新人看護師時代の体験と SOC との関連について表
高値を示した。
7 に示した。
健康状態では、「よい」は SOC55.0 ± 6.3、把握可
患者の前で先輩看護師に怒られたでは、「なかっ
能感 20.4 ± 4.3 であり、
「よくない」の SOC 52.4 ± 5.6、
た」の SOC 54.7 ± 6.3、把握可能感 20.3 ± 4.4 であり、
把 握 可 能 感 17.9 ± 4.1 と 比 べ て 有 意 に(SOC:
「あった」の SOC 53.0 ± 5.9、把握可能感 18.4 ± 4.1
p<0.001、把握可能感:p<0.001)高値を示した。
に 比 べ て 有 意 に(SOC:p<0.05、 把 握 可 能 感:
次に、臨床経験年数を 3 区分し SOC と下位尺度の
p<0.001)高値を示した。
平均値を比較した(表 5)。
一生懸命なのにやる気がないと言われたでは、
「な
1 ~ 4 年目は SOC51.9 ± 5.6、把握可能感 17.7 ± 4.3、
かった」の把握可能感 19.8 ± 4.4 であり、「あった」
処理可能感 17.4 ± 2.7、有意味感 16.8 ± 2.5 であった。
の 把 握 可 能 感 18.5 ± 4.2 に 比 べ て 有 意 に(p<0.05)
5 ~ 10 年目は SOC54.3 ± 6.1、把握可能感 19.4 ± 4.3、
高値を示した。また、「あった」の有意味感は 17.3
処理可能感 17.9 ± 2.7、有意味感 17.0 ± 2.3 であった。
± 2.3 であり、「なかった」の有意味感 16.6 ± 2.3 に
- 53 -
新人看護師時代の職場における体験と SOC との関連
比べて有意に(p<0.05)高値を示した。
に 比 べ て 有 意 に(SOC:p<0.05、 把 握 可 能 感:
仕事ができないと言われ不眠になったでは、
「な
p<0.001)高値を示した。
かった」の把握可能感 19.7 ± 4.4 であり、
「あった」
集中力が低下し間違いが増えていたでは、
「なかっ
の 把 握 可 能 感 18.4 ± 4.3 に 比 べ て 有 意 に(p<0.05)
た」の SOC 54.6 ± 5.9、把握可能感 20.2 ± 4.3 であり、
「あった」の SOC 52.9 ± 6.4、把握可能感 18.3 ± 4.2
高値を示した。
体重の増減等の身体症状があったでは、「なかっ
に 比 べ て 有 意 に(SOC:p<0.05、 把 握 可 能 感:
た」の SOC 54.8 ± 6.2、把握可能感 20.4 ± 4.5 であり、
p<0.001)高値を示した。
「あった」の SOC 53.2 ± 6.1、把握可能感 18.6 ± 4.2
先輩に相談しても聴いてもらえなかったでは、
「な
表4 基本属性と SOC
表4 基本属性とSOC
SOC
把握可能感
n=303
有意味感
処理可能感
平均
値
標準
偏差
有意
水準
平均
値
標準
偏差
有意
水準
平均
値
標準
偏差
有意
水準
平均
値
標準
偏差
有意
水準
女性
274 54.0
6.3
n.s. 19.4
4.5
n.s. 17.8
2.7
n.s. 16.8
2.3
n.s.
男性
29 52.8
5.0
19.0
3.6
17.1
2.8
16.7
2.3
n
性別
職位
**
師長・副師長・主任・副主任
64 55.0
6.2
n.s. 20.9
4.3
17.9
2.4
n.s. 16.3
2.0
看護師
239 53.6
6.1
19.0
4.3
17.7
2.8
17.0
2.4
看護基礎教育 ⋇
看護大学
4 52.0
3.7
n.s. 17.5
4.7
n.s. 17.5
4.0
n.s. 17.0
2.2
短期大学
15 52.0
4.8
18.0
3.8
17.2
1.7
16.8
2.1
専門学校
273 54.0
4年課程専門学校
その他
*
n.s.
6.2
19.5
4.4
17.7
2.7
16.8
2.3
4 56.8 10.5
21.5
4.7
18.5
4.4
16.8
1.7
7 52.4
3.6
17.4
3.2
18.3
2.4
16.7
2.9
17.8
2.6
n.s. 16.6
2.2
17.6
2.8
17.0
2.4
18.0
2.5
n.s. 16.7
2.2
n.s.
17.5
2.8
16.9
2.4
n.s.
17.4
2.9
n.s. 16.7
2.3
n.s.
17.9
2.6
16.9
2.3
17.5
2.7
n.s. 16.6
2.3
17.8
2.7
16.9
2.3
学生実習指導への関心
関心がある
128 54.4
5.9
n.s. 20.1
4.3
関心がない
175 53.5
6.4
18.9
4.4
*
n.s.
学生実習指導を行うこと
*
好き
109 55.0
5.8
20.2
4.4
好きではない
194 53.3
6.3
18.9
4.3
*
配偶者の有無
あり
115 54.5
6.4
n.s. 20.4
4.0
なし
188 53.6
6.0
18.8
4.5
**
子どもの有無
**
あり
100 54.8
6.4
n.s. 20.6
4.0
なし
203 53.5
6.0
18.8
4.4
家族と同居
181 54.2
6.0
n.s. 19.8
4.3
17.7
2.8
n.s. 16.8
2.2
一人暮らし
122 53.5
6.3
18.7
4.4
17.8
2.6
16.9
2.5
よい
181 55.0
6.3
*** 20.4
4.3
*** 18.0
2.6
n.s. 16.6
2.2
よくない
122 52.4
5.6
17.9
4.1
17.3
2.8
17.2
2.4
n.s.
生活状況
*
n.s.
健康状態
n.s.
有意水準 * :p<0.05, * * :p<0.01, * * * : p <0.001, n.s.:not significiant
(Mann-WhitneyU検定, ⋇ Kruskal-Wallis検定)
表5 臨床経験年数3区分とSOC
表5 臨床経験年数 3 区分と SOC
n=303
SOC
1~4年目(n=80)
把握可能感
平均値
標準
偏差
有意
水準
51.9
5.6
**
標準
平均値
偏差
17.7
4.3
処理可能感
有意
平均値
水準
***
17.4
有意味感
標準
偏差
有意
水準
平均値
標準
偏差
有意
水準
2.7
n.s.
16.8
2.5
n.s.
5~10年目(n=110)
54.3
6.1
19.4
4.3
17.9
2.7
17.0
2.3
11年目以上(n=113)
54.9
6.3
20.5
4.2
17.7
2.7
16.7
2.3
有意水準 * * :p<0.01,
(Kruskal-Wallis検定)
***
:p<0.001,n.s.:not significiant
- 54 -
柴 田 明 美 他
表6 職場特性とSOC
表6 職場特性と SOC
SOC
把握可能感
n=303
有意味感
処理可能感
平均
値
標準
偏差
有意
水準
平均
値
標準
偏差
有意
水準
平均
値
標準
偏差
有意
水準
平均
値
標準
偏差
有意
水準
一般病棟
192 54.0
5.8
n.s.
19.5
4.2
n.s.
17.8
2.4
n.s.
16.7
2.4
n.s.
病棟以外
111 53.7
6.7
19.2
4.6
17.5
3.1
17.0
2.2
19.4
4.5
17.9
2.6
16.9
2.2
19.5
4.2
17.2
2.8
16.7
2.5
19.7
4.4
18.6
4.3
19.6
4.7
19.3
4.3
n
現在の所属
配置が希望通りである
はい
218 54.2
6.1
いいえ
85 53.4
6.2
満足している
216 54.3
6.1
満足していない
87 53.0
6.2
満足している
71 54.0
5.9
満足していない
53.9
6.3
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
配置への満足
n.s.
*
17.8
2.7
17.4
2.6
17.7
2.3
17.7
2.8
n.s.
16.7
2.3
17.1
2.5
16.7
2.1
16.9
2.4
n.s.
給料への満足
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
仕事がハードであるか
ハードでない
44 55.5
6.5
ハードである
259 53.6
6.1
している
265 54.1
6.0
していない
38 52.5
7.1
している
281 54.0
6.1
していない
22 53.5
7.7
満足している
160 54.6
6.0
満足していない
143 53.2
6.3
満足している
223 54.6
6.0
満足していない
80 52.1
6.3
*
21.0
4.3
19.1
4.3
19.5
4.4
18.4
4.4
19.4
4.3
19.4
5.0
20.1
4.4
18.5
4.3
**
18.1
3.4
17.6
2.3
17.7
2.5
17.5
3.7
17.7
2.7
17.8
3.3
.147
16.5
2.4
16.9
2.6
16.9
2.3
16.6
2.2
16.9
2.3
16.4
2.2
n.s.
夜勤担当の有無
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
時間外勤務の有無
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
仕事への満足
n.s.
**
17.9
2.6
17.4
2.8
n.s.
16.5
2.2
17.2
2.4
*
私生活への満足
**
20.0
4.3
17.7
4.0
***
17.8
2.6
17.4
2.9
n.s.
16.7
2.2
17.1
2.6
n.s.
有意水準 * :p<0.05, * * :p<0.01, * * * : p <0.001, n.s.:not significiant
(Mann-WhitneyU検定)
表7 新人看護師時代の職場における体験とSOC
表7 新人看護師時代の職場における体験と
SOC
n
平均
値
標準
偏差
把握可能感
有意
水準
SOC
n=303
有意味感
処理可能感
平均
値
標準
偏差
有意
水準
平均
値
標準
偏差
有意
水準
平均
値
標準
偏差
有意
水準
19.3
4.4
n.s.
17.8
2.7
n.s.
16.8
2.3
n.s.
20.6
3.3
17.0
2.4
17.7
2.5
19.1
4.6
17.7
2.7
16.9
2.3
19.6
4.2
17.7
2.7
16.7
2.4
17.7
2.7
16.9
2.3
17.7
2.6
16.7
2.4
病棟の雰囲気を敏感に感じながら仕事をしていた
あった
283 53.8
6.3
なかった
20 55.2
4.8
あった
136 53.7
6.5
なかった
167 54.1
5.9
n.s.
先輩看護師にいじめられた
n.s.
n.s.
n.s.
n.s.
一度習った処置がなかなか覚えられなかった
あった
241 53.6
6.2
n.s.
19.1
4.3
なかった
62 55.0
6.1
n.s.
20.6
4.5
*
n.s.
n.s.
n.s.
患者の前で先輩看護師に怒られた
あった
141 53.0
5.9
なかった
162 54.7
6.3
18.4
4.1
20.3
4.4
18.5
4.2
19.8
4.4
18.4
4.3
19.7
4.4
***
17.5
2.8
17.9
2.6
n.s.
17.1
2.3
16.6
2.3
n.s.
一生懸命なのに「やる気がない」と言われた
あった
100 53.3
6.4
なかった
203 54.2
6.1
n.s.
*
17.6
2.8
17.8
2.7
n.s.
17.3
2.3
16.6
2.3
*
「仕事ができないと」といわれ不眠になった
あった
77 53.0
6.5
なかった
226 54.2
6.0
n.s.
*
17.8
2.7
17.7
2.7
n.s.
16.9
2.4
16.8
2.3
n.s.
体重の増減等の身体症状があった
あった
170 53.2
6.1
なかった
133 54.8
6.2
*
18.6
4.2
20.4
4.5
***
17.6
2.8
17.9
2.6
n.s.
17.1
2.5
16.5
2.1
n.s.
集中力が低下し間違いが増えていた
あった
129 52.9
6.4
なかった
174 54.6
5.9
*
18.3
4.2
20.2
4.3
***
17.7
2.8
17.7
2.6
n.s.
16.9
2.6
16.7
2.1
n.s.
先輩に相談しても聴いてもらえなかった
あった
57 52.3
5.7
なかった
246 54.3
6.2
*
18.1
3.8
19.7
4.5
*
17.5
2.6
17.7
2.7
有意水準 * :p<0.05, * * :p<0.01, * * * : p <0.001, n.s.:not significiant
(Mann-WhitneyU検定)
- 55 -
n.s.
16.7
2.4
16.8
2.3
n.s.
新人看護師時代の職場における体験と SOC との関連
かった」の SOC54.3 ± 6.2、把握可能感 19.7 ± 4.5 で
20.3 ± 4.2、処理可能感 18.0 ± 2.6 であり、「感じる」
あり、
「あった」の SOC 52.3 ± 5.7、把握可能感 18.1
の SOC 52.4 ± 6.0、把握可能感 17.8 ± 4.3、処理可能
± 3.8 に比べて有意に(SOC:p<0.05、把握可能感:
感 17.2 ± 2.7 と比べて有意に(SOC:p<0.001、把握
p<0.05)高値を示した。
可能感:p<0.001、処理可能感:p<0.01)高値を示した。
5)職場環境に対して感じていることとの関連
また、
「感じる」の有意味感は 17.5 ± 2.2 であり、
「感
職場環境に対して感じていることとの関連は表 8
じ な い 」 の 有 意 味 感 16.4 ± 2.3 と 比 べ て 有 意 に
に示した。
(p<0.001)高値を示した。
自分は看護師に向かないと感じるでは、「感じな
職場は一人一人の仕事の進み具合は気にしないで
い」の SOC 56.4 ± 6.9、把握可能感 21.7 ± 4.2 であり、
働いていると感じるでは、「感じない」の SOC 54.8
「感じる」の SOC 53.0 ± 5.6、把握可能感 18.5 ± 4.1
± 6.2、把握可能感 20.1 ± 4.4、処理可能感 18.0 ± 2.6
に 比 べ て 有 意 に(SOC:p<0.001、 把 握 可 能 感:
であり、「感じる」の SOC 52.3 ± 5.8、把握可能感
p<0.001)高値を示した。
18.1 ± 4.1、処理可能感 17.1 ± 2.8 に比べて有意に
看護師を辞めたいと思ったことがあるでは、
「な
(SOC:p<0.001、把握可能感:p<0.001、処理可能感:
い」の把握可能感 20.7 ± 4.3 であり、「ある」の把握
p<0.01)高値を示した。職場の看護師はお互いに助
可能感 18.9 ± 4.3 に比べて有意に(p<0.001)高値を
け合いながら働いていると感じるでは、
「感じる」の
示した。
SOC 54.3 ± 5.9、処理可能感 17.9 ± 2.6 であり、「感
仕事に行くのが辛いことがあるでは、
「ない」の
じない」の SOC 52.0 ± 7.0、処理可能感 16.5 ± 2.9
SOC 56.0 ± 6.8、把握可能感 21.6 ± 4.7 であり、
「ある」
に 比 べ て 有 意 に(SOC:p<0.05、 処 理 可 能 感:
の SOC 53.4 ± 5.9、把握可能感 18.9 ± 4.1 に比べて
p<0.01)高値を示した。
有意に(SOC:p<0.001、把握可能感:p<0.001)高値
を示した。また、
「ある」の有意味感は 17.0 ± 2.3 で
Ⅵ.考察
あり、
「ない」の有意味感 16.3 ± 2.2 と比べて有意に
1.SOC との関連
(p<0.05)高値を示した。
本研究の対象看護師は約 9 割が女性、約 8 割がスタッ
職場の一員として受け入れられていないと感じる
フであり、年齢は 30 代前半で臨床経験が 10 年前後の
では、
「感じない」の SOC 54.8 ± 6.1、把握可能感
看護師が約 3 割であった。これらから、対象者は職場
表8 職場環境に対して感じていることとSOC
表8 職場環境に対して感じていることと SOC
SOC
n
平均
値
標準
偏差
把握可能感
有意
水準
n=303
有意味感
処理可能感
平均
値
標準
偏差
有意
水準
18.5
4.1
***
21.7
4.2
18.9
4.3
20.7
4.3
18.9
4.1
21.6
4.7
平均
値
標準
偏差
有意
水準
17.6
2.7
n.s.
17.9
2.8
平均
値
標準
偏差
有意
水準
16.8
2.4
n.s.
16.9
2.0
自分は看護師に向かないと感じることがある
ある
220
53.0
5.6
ない
83
56.4
6.9
***
看護師を辞めたいと思ったことがある
ある
216
53.5
6.1
ない
87
54.9
6.2
n.s.
**
17.7
2.7
17.7
2.7
17.6
2.8
18.1
2.4
n.s.
16.9
2.4
16.6
2.1
17.0
2.3
16.3
2.2
n.s.
仕事に行くいのが辛いと感じることがある
ある
245
53.4
5.9
ない
58
56.0
6.8
**
***
n.s.
*
職場の一員として受け入れられていないと感じることがある
ある
111
52.4
6.0
ない
192
54.8
6.1
***
17.8
4.3
20.3
4.2
***
17.2
2.7
18.0
2.6
**
17.5
2.2
16.4
2.3
***
職場は一人一人の仕事の進み具合は気にしないで働いていると感じる
ある
109
52.3
5.8
ない
194
54.8
6.2
***
18.1
4.1
20.1
4.4
***
17.1
2.8
18.0
2.6
**
17.0
2.3
16.7
2.3
n.s.
職場の看護師はお互いに助け合いながら働いていると感じる
ある
253
54.3
5.9
ない
50
52.0
7.0
*
19.6
4.3
18.4
4.6
n.s.
17.9
2.6
16.5
2.9
有意水準 * :p<0.05, * * :p<0.01, * * * : p <0.001, n.s.:not significiant
(Mann-WhitneyU検定)
- 56 -
**
16.8
2.3
17.0
2.5
n.s.
柴 田 明 美 他
風土や職場環境が共通する病院で働く中堅看護師が比
り、その回数は月平均 10 回以上であった。看護師は、
較的多いと言える。
夜勤が常勤職員の雇用条件になっていることが殆ど
また、対象の看護師の SOC 平均値は 53.9 ± 6.2、下
である。また、超過勤務をしている人も約 9 割以上
位尺度の把握可能感 19.4 ± 4.4、処理可能感 17.7 ± 2.7、
であった。夜勤は日勤と違い身体的負担に加え、少
有意味感 16.8 ± 2.3 であった。これらは、吉田ら
10)
の
ない人数で多くの患者を担当しなければならず、看
SOC 平均値 51.9 ± 10.9、把握可能感 19.4 ± 5.0、処理
護師の判断が要求されることもあり、精神的な負担
可能感 15.1 ± 4.1、有意味感 17.4 ± 3.9 と比較すると、
も加わる。現在の仕事をきつく、ハードであると感
本研究の SOC + 0.2SD、把握可能感± 0SD、処理可能
じている人は約 9 割であり、職場環境が厳しい勤務
感+ 0.6SD、有意味感- 0.2SD であり、ほぼ同様の結
環境であることが推測される。一方、看護師の約 6
果であった。
割は健康状態がよいと自覚していた。主観的健康観
そこでまず、個人要因と SOC との関連について述べ
がよい人は、よくない人と比べて SOC 高かった。し
ていきたい。
たがって、健康であると自覚できることが当然なが
1)個人要因、環境要因との関連
ら SOC と関連している。
臨床経験年数で SOC と下位尺度の平均値を比較す
私生活への満足との関連では、看護師の約 7 割が
ると、臨床経験 11 年目以上の看護師の SOC と把握
満足しており、満足していない人に比べて SOC が高
可能感の平均値は、他の年齢区分と比較して高い傾
かった。対象者の家族背景として、配偶者がいる人
向がみられた。Antonovsky によると、20 歳~ 30 歳
は約 4 割、子どもがいる人は約 3 割であり、約 4 割
頃の成人前期は SOC の発達において重要な時期であ
は家庭生活において父親・母親や夫・妻の役割をもっ
り、とりわけ、職業の果たす役割が大きいとしている。
ていた。仕事と家庭の両立と SOC との関連について、
その理由として、
「職務保障」を挙げている。これは、
竹内ら 14) は、「母親/妻役割のある看護師は仕事だ
同僚をはじめとする職場の集団において、お互いが
けでなく、家庭生活においても重要な役割を遂行し
価値観を共有し、職場で働くことに対して適切な
なくてはならない。職場において、仕事以外の役割
フィードバックを受けているという感覚をもつほど
に対しても上司や同僚から理解を示してもらえて、
「一貫性」につながり、
「把握可能感」につながる
11)
。
サポートを得やすい組織文化が醸成されているほど、
本研究での臨床経験年数が 11 年目の人の年齢は約
また、両者の役割葛藤である work-to-family conflict
30 歳頃にあたり、成人前期に相当する。就業を継続
が発生しにくいほど、母親/妻役割のある看護師の
することで臨床経験を積み、キャリアを重ねること
SOC は高まる可能性が示された」と述べている。職
が個人の SOC を高めることになる。
場においても家庭生活においても役割があり、看護
次に、健康状態と SOC との関連では、最近1か月
師は職場がこの役割を理解していると自覚できるこ
くらいの自分の健康状態についての主観的健康観で
とが仕事へのやりがいや満足感を感じることにつな
は、健康状態がよいと感じている人は約 6 割であり、
がる。私生活と仕事が満足であることは、SOC を高
SOC は健康状態がよくないと感じている人と比べて
めていた。看護師が仕事と私生活の両立ができるよ
高かった。
うな支援を職場全体で行うことは、よりよい看護サー
フ ィ ン ラ ン ド の 公 衆 衛 生 学 者 Suominen ら は、
ビスの提供につながる。
SOC と健康状態の自己評価との関係について、フィ
2)職場環境との関連
ンランド国民 3,115 名を対象に SOC を高群と低群の
看護師が現在の職場環境に対して感じていること
2 群に分けて検討している。その結果、男性では
と SOC との関連について述べていく。
SOC 高群が低群の 2.8 倍、女性では SOC 高群が低群
自分が職場の一員として受け入れられていると感
の 3.4 倍、健康状態の自己評価が良好であることが
じている人は約 6 割であり、受け入れられていない
示されている
と感じている人と比べて、有意に SOC、把握可能感、
12)
。これらは、SOC と健康状態は関連
していることを示している。
処理可能感が高かった。臨床現場では医療チームの
看護師の労働は重く、夜勤や超過勤務の負担の重
中で患者を受け持ち、他職種とも協働しながら、看
い病院では離職率が高いことから、日本看護協会も
護師としての役割を遂行してしかなければならない。
その対策のためのガイドライン
13)
を発表している。
本研究においても、夜勤をしている人は約 9 割であ
このような中で、自分から積極的にコミュニケーショ
ンを図り、良好な対人関係を築くことができる能力
- 57 -
新人看護師時代の職場における体験と SOC との関連
が必要となる。職場の中で受け入れられていないと、
三輪 17)らは、
「職場適応に影響を及ぼしているのは、
医療チームの一員としての役割遂行ができていない
燃え尽き状態、患者の感謝や患者の病状回復といっ
と感じてしまい、自己効力感を喪失しかねない。花
た肯定的反応及びロール・モデル支援であった。中
岡ら
15)
は、
「自分の知識と技術をもって看護実践す
でも、職場適応と最も関連がみられたのは燃え尽き
ることができて初めて看護者としての自分を認め、
状態であったことから、新卒看護師に対して精神的
チームメンバーとしての認識をすることができる」
身体的疲労を軽減し、リアリティショックを乗り越
と述べている。看護師が医療チームの一員として役
えられるような支援が不可欠である」と述べている。
割を果たしていると感じられるためには、日頃から
これらから、先輩看護師は新人看護師が自分自身を
看護師同士がお互いにポジティブなフィードバック
肯定的に評価できるよう支援をすることが大切であ
を行い、何でも話せるような職場の人間関係を構築
る。そして、新人看護師が成功体験を積み重ねられ
していくことが重要である。職場に自分の居場所が
るよう、うまくできた時は「褒める・認める」、新人
あり、職場環境に馴染めていることが、SOC、把握
看護師が一歩踏み出せていない時は「後押し・見守
可能感、処理可能感を高めることなる。
り」、そして、先輩看護師がやり方をみせる「ロール・
一方で、自分が職場の一員として受け入れられて
モデル」が必要である。
いないと感じる人は、受け入れられていると感じる
これらを踏まえると、職場の看護師同士が相互に
人と比べて有意に有意味感が高かった。有意味感は、
話し合える関係性を築くことができること、先輩看
出会った出来事に対して、その出来事が自分にとっ
護師が新人看護師のロール・モデルとなり、具体的
て意義があり価値があると見なせる感覚を指してい
な方法を見せて指導するといった支援が、新人看護
る。つまり、職場環境の中に職場の一員としての自
師の SOC を高める支援になる。
分の存在意義や価値を見出せない人は、有意味感が
2.新人看護師時代の職場における体験と SOC との関連
高かったことを意味する。Antonovsky はこの有意味
看護師が新人看護師時代に職場において体験したこ
感は強い SOC を維持する上で重要な位置にあり、強
とと SOC との関連についてみていきたい。
い SOC をもつ人とは、絶えず生じている世の中の変
看護師の新人看護師時代における先輩看護師との関
化に対して「新たな意味を見出すこと」で世の中に
係では、患者の前で先輩看護師に怒られた体験のある
柔軟に適応できる人を指し、この柔軟な適応の核に
人は約 5 割、先輩看護師に相談をしても聴いてもらえ
有意味感があると述べている
16)
。有意味感を高く保
なかった体験がある人は約 2 割であり、このような体
つことが、自分自身の価値を承認し、SOC を保つ要
験がある人は、ない人と比べて SOC は低かった。「先
因になっているのではないかと予測される。先行研
輩看護師に患者の前で怒られて自尊感情が傷ついた」
究において、職場に自分が受け入れられているかど
や「先輩看護師が自分の思いに耳を傾けてくれなかっ
うかという思いと有意味感との関連を検討している
た」といった体験は、後々まで新人看護師時代の記憶
研究はほとんどないため、今後検討すべき課題であ
として残ることが予測される。新人看護師時代の先輩
る。
看護師から受けたネガティブなフィードバックは、そ
次に、自分は看護師に向いていない、看護師を辞
の後の SOC の形成に大きく影響するとも言われ、ネガ
めたいと思ったことがある人は約 7 割であり、そう
ティブな体験が SOC を低くすることが推測される。
でない人と比べて SOC が低かった。また、仕事に行
大川ら 18)は、先輩看護師と新卒看護師との関係性の
くのが辛いと感じることがある人は約 8 割であり、
構築において、
「新卒看護師が悩みを言える、わからな
そうでない人と比べて SOC は低かった。これらの「看
いことを聞ける、意見を交わし合えるような関係の重
護師が向いていない、辞めたい、辛い」という思いは、
要性を明らかにし、このような関係性を先輩看護師と
多くの看護師が一度は抱く思いではないかと考える。
築けることによって、新卒看護師の心理的なエネル
看護師として自分の未熟さを痛感した時、仕事で失
ギーは高められていた」と述べている。このような先
敗した時、患者・家族との関係がうまくいかない時
輩看護師との関係性の重要性は、新卒看護師の職場適
などさまざまな理由が推測される。このような状況
応に関する研究でも指摘されている。水田 19)は、就職
にある場合には、何らかの支援が必要であり、この
後 3 か月から 6 か月のリアリティショックに影響する
状況を放置することは看護師の燃え尽き症候群など
要因について、職場適応と GHQ との関連を検討して
を招くことも予測される。
いる。リアリティショック反応のなかった人は、リア
- 58 -
柴 田 明 美 他
リティショック反応あった人に比べて、職場の人間関
の居場所がない、自分は看護師に向いていないと感じ
係に関する苦痛をほとんど感じていなかった。つまり、
ている看護師に対しては、自分の看護技術やケアに自
職場の人間関係がリアリティショックに影響すること
信を持てるように支援することが必要である。具体的
を示している。先輩看護師は新人看護師に対して、新
には、患者から感謝の言葉か述べられる、患者が回復
人看護師が些細なことでも相談できる機会を増やし、
し退院する場面に立ち会うなどの体験ができる機会を
新人看護師の思いを傾聴すること大切であり、看護師
設定する。また、看護ケアでうまくできたことは褒め、
も先輩看護師に自分の考えを伝えることが必要であ
具体的に良い点をフィードバックする。まだ一人で行
る。新人看護師と先輩看護師の相互作用の良し悪しが、
う自信がない看護ケアでは、新人看護師に対してそば
新人看護師の SOC に影響する。新人看護師が職場に適
で見守っていることを告げ、自信をもって実施できる
応していくためには、先輩看護師との人間関係を
よう後押しをすること、先輩看護師が手本を見せる、
いかに築いていくかに左右されることが考えられる。
ロール・モデルとして実践することが効果的である。
次に、新人看護師として働いていた頃の自分自身の
これらの体験を積み重ねることで看護師としての自信
変化について述べていきたい。
につながり、職場における自分の居場所や役割を見つ
体重の増減等の身体症状はなかった人は約 4 割であ
けることができると考える。 り、集中力が低下して間違いが増えたことはなかった
新人看護師時代の職場における好ましくない体験に
人は約 6 割であり、このようなことがあった人と比べ
おいて、患者の前で先輩看護師に怒られたという体験
て把握可能感、すなわち、自分が置かれている状況が
があった。このような体験は新人看護師にとって、生
ある程度予測できる感覚が高かった。新人看護師時代
涯残る「辛い体験」になることが予測される。また、
には、多くの看護師はストレスを感じながらも、徐々
患者・家族の前で新人看護師を注意することは、患者・
に職場環境や仕事に慣れていく。しかし、過剰にスト
家族との関係性が悪くなり、看護業務に支障を来すこ
レスを自覚した場合は、身体症状や精神症状として、
ともある。これらの自己否定された体験により、看護
体重の増減や集中力の低下が現れる。このようなスト
の仕事を続ける自信を失い、場合によっては離職願望
レスの自覚はネガティブな感情を引き起こすが、この
を抱くことも危惧される。そこで、新人看護師の指導
ネガティブ感情と身体の健康状態との関係について
においては、患者の前では注意をしない、看護師や医
は、Cohen の統合的ストレスプロセスモデルに見るこ
師等の第三者の前でも、周囲にわかるような注意をな
とができるとしている
20)
。このネガティブな感情が内
るべく避けることが大切である。また、指導する場を
分泌系の働きを活性化し、循環器系、免疫系の疾患発
考慮し、その場でのタイムリーな指導が必要な場合以
症を促す。また、ストレスの自覚は食生活の乱れや運
外は、十分配慮しなければならない。例えば、勤務が
動・睡眠不足等を引き起こしたりするなど行動的な側
終わってから休憩室ではない個室を確保する等の配慮
面にも現れ、身体的あるいは精神的な疾患を発症する
が必要である。
可能性もあるとされている。
次に、新人看護師は先輩看護師に相談しても話を十
これらを踏まえると、先輩看護師は、新人看護師が
分聴いてもらえなかった体験があった。新人看護師は
間違いを起こした時や身体症状を訴えた時は、これら
先輩看護師に、話しやすい職場環境の中で「話しやす
の事実を見過ごさず、丁寧に対応することが大切であ
い雰囲気作り」や「ゆっくりと話せる時間や機会の確
る。また、多くの場合、新人看護師の方からは訴えな
保」を望んでいた 21)。新人看護師にとって就職後に体
いため、先輩看護師は新人看護師の小さな変化にも細
験することは、ほとんどが初めての体験であり、不安
心の注意を払い、その変化に気付いた時は声を掛ける
や緊張感が伴う。新人看護師にとっては、相談したい
など「いつも気にかけている」という姿勢を示すこと
ことや悩みがあっても慣れない職場の環境や人間関係
が必要である。このことで、新人看護師は、いつも見
の中で先輩看護師に話かけることは、とても勇気のい
守られているという安心感をもつことができる。この
ることである。そのため、先輩看護師は新人看護師の
ような新人看護師の先輩看護師との関わりの体験は、
気持ちを考え、新人看護師が緊張せずに些細なことで
新人看護師の SOC を高めることにつながる。
も相談できること、消極的にならずに自分の意見や考
3.職場における新人看護師への支援への方向性
えを素直に話して良いことを伝えることが必要であ
職場における新人看護師への効果的な支援について
る。先輩看護師は新人看護師に対して、話を聴く態度
の方向性では、現在の職場環境において、職場に自分
を示さなければならない。
- 59 -
新人看護師時代の職場における体験と SOC との関連
3.新人看護師時代の職場における体験と SOC との
看護師は体重の増減等の身体症状や集中力の低下に
よる仕事上の間違いが増えたという体験をしていた。
関連では、先輩看護師に患者の前で怒られた、体
これらの体験はストレスが蓄積した結果出現する症状
重減少等の身体症状があった、集中力が低下し間
であり、このような状況になる前に周囲の看護師が気
違いが増えた、先輩に相談しても聴いてもらえな
付き、新人看護師に対して何らかの支援を講じること
かった体験がある看護師の SOC は、体験がない看
が必要である。具体的には、新人看護師がインシデン
護師に比べて有意に(p<0.05)低かった。
トやアクシデントを起こした時は、その発生状況を明
4.職場環境と SOC との関連では、自分は看護師に
らかにすることは大切であるが、それ以上に、複数の
向かない、職員の一員として受け入れられていな
業務を抱えていないか、体調はどうかなど、新人看護
い、仕事に行くことが辛い看護師の SOC は、そう
師の集中力が低下する状況について確認することが重
でない看護師に比べて有意に(p<0.001)低かった。
要である。新人看護師は間違い起こしたことで、自責
以上から、看護師の新人看護師時代の職場にお
の念に駆られ、さらに自分自身を精神的にも追い込ん
ける否定的な体験は、現在の看護師の SOC との関
でしまうことも予想される。同じ失敗を繰り返さない
連がみられた。新人看護師への指導においては、
ように集中力が低下していた状況を本人から聴くこと
新人看護師が自信を持てるような関わりが大切で
は、再発防止の対策を立てることができる。また、イ
あり、相互に話し合える良好な関係作りが、新人
ンシデント・アクシデントを振り返ることは、新人看
看護師の SOC を高める支援につながることが示唆
護師に対して効果的な教育的支援となる。
された。
以上のことから、新人看護師への支援の方向性は、
新人看護師が自分の看護ケアに自信が持てるような関
引用文献
わりを行う、新人看護師の話を聴く態度を示す、新人
1) 「2012 年病院における看護職員需給状況調査結果」
看護師の身体面や精神面の異変に気付くことが重要で
速報:日本看護協会ホームページ,2013 年 3 月 7 日発
ある。
表資料,http://www.nurse.or.jp/up_pdf/20130307163239_
f.pdf(2014 年 8 月 12 日閲覧)
Ⅶ . 研究の限界
2) 柴田明美,岩脇陽子,新垣洋美他(2012)
:新人看
本研究の限界は、新人看護師の置かれている職場環
護師が求める先輩看護師の関わり,京都府立医科大
境やその時点での経験を知るために、自分自身の新人
学看護学科紀要,22:75-85.
看護師時代を振り返って回答を求めていることであ
3) 山崎喜比古、吉井清子監訳(2001)
:健康の謎を解
る。過去の出来事や経験の記憶を想起する不正確さの
く ストレス対処と健康保持のメカニズム,19-39,
可能性がある。そのため、過去の出来事や経験の記憶
東京:有信堂
を想起する際に、対象者が思い違いや勘違いをする不
4) 竹内朋子、戸ヶ里泰典、山崎嘉比古(2009)
:看護
正確さが含まれる可能性があることを考慮しなくては
師の SOC と職場のあり方-いきいきとした看護師を
ならない。
支 え る 職 場 要 因 の 検 討 -, 看 護 研 究,42(7):517-
また、対象看護師の所属施設が 2 施設に限られてい
525.
るため、今回の結果を一般化するには限界がある。
5) 岩谷美喜子、渡邉久美、國方弘子(2008)
:クリティ
カルケア領域の看護師のメンタルヘルスに関する研
究-感情労働・Sense of Coherence・ストレス反応
Ⅷ.結論
看護師の新人看護師時代の職場における体験と SOC
の関連‐,日本看護研究学会誌,31(4):87-93.
との関連を検討する目的で、調査した結果、以下のこ
6) 中西真由美、柘植康子、二ツ森栄子(2007)
:関連
とが明らかになった。
病院5施設における中堅女性看護師の職業継続意志
1.本研究の看護師の SOC 平均値は 53.9 ± 6.2、下
と職務満足および Sense of Coherence(SOC)との
位尺度の把握可能感 19.4 ± 4.4、処理可能感 17.7
関係,第 38 回日本看護学会論文集看護管理:139-
± 2.7、有意味感 16.8 ± 2.3 であった。
141.
2.主観的健康と SOC との関連では、看護師の SOC
7) 眞鍋えみ子、小松光代、和泉美枝他(2012)
:大学
は そ う で な い 看 護 師 の SOC に 比 べ て 有 意 に
附属病院の看護職における Sense of Coherence と労
(p<0.001)高かった。
働環境満足度・看護臨床能力との関連,日本看護研
- 60 -
柴 田 明 美 他
究学会雑誌,35(2):19-25.
8)
戸ヶ里泰典(2009):看護学領域における SOC 研
究の動向と課題,看護研究,医学書院,42(7):491503.
9)
山崎喜比古(2009):ストレス対処力 SOC(Sense
of coherence) の概念と定義,看護研究,42(7):479490.
10)吉田えり,山田和子,芝瀧ひろみ他(2013)
:看護
師の Sense of Coherence とストレス反応との関連,
日本看護研究学会雑誌,36(5):25-33.
11)山崎喜比古(2008):SOC の形成要因―SOC はい
かにして育まれるか,ストレス対処能力 SOC,3953,東京:有信堂
12)山崎喜比古(2008):SOC と健康,ストレス対処
能力 SOC,69-90,東京:有信堂.
13)
「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライ
ン」:日本看護協会ホームぺージ,2013 年 2 月 28 日
発表資料,http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/
shuroanzen/guideline/pdf/guideline.pdf (2014 年 8
月 12 日閲覧)
14)前掲 4)
15)花岡澄代,福田敦子,津田紀子他(2006)
:病院に
就職した新卒看護職者の初期職場適応に関する検討
-初期職場適応の潜在構造とリアリティショックと
の関連から-,神戸大学医学部保健学科紀要,22:
1-11.
16)
)山崎喜比古(2008)
:成人の SOC は変えられるか,
ストレス対処能力 SOC,55-67,東京:有信堂
17)三輪聖恵,志自岐康子,習田明裕(2010)
:新卒看
護師の職場適応に関連する要因に関する研究,日本
保健科学学会誌,22(4):211-220.
18)大川貴子,室井由美,池田由利子他(2004)
:新卒
看護師が認識する先輩看護師からのサポート,福島
県立医科大学看護学部紀要:9-23.
19)水田真由美(2004)
:新卒看護師の職場適応に関す
る研究-リアリティショックと回復に影響する要因
-,日本看護研究学会雑誌,27(1):91-99.
20)前掲 12)
21)前掲 2)
- 61 -
田 村 沙 織 他
京府医大看護紀要,24:63-68,2014
外来化学療法を受けるがん患者の就労と看護の動向についての文献的考察
田村沙織 1),光木幸子 2),山中龍也 3)
1)京都府立医科大学大学院保健看護学研究科修士課程
2)京都府立医科大学大学院保健看護学研究科
3)京都府立医科大学大学院保健看護学研究科医学講座
A Review of the Literature of Working Cancer Outpatients Receiving Chemotherapy
and their Nursing
Saori Tamura ,Sachiko Mitsuki ,Ryuya Yamanaka3)
1)
2)
1, Graduate School of Nursing for Health Care Science,Kyoto Prefectural
University of Medicine, Master of Nursing for Health Care Science Course
2, Graduate School of Nursing for Health Care Science,Kyoto Prefectural
University of Medicine
3, Department of Medical Science,Graduate School of Nursing for Health Care
Science,Kyoto Prefectural University of Medicine
要約
本研究の目的は外来化学療法を受けるがん患者の就労と看護における今後の研究の方向性と示唆を得るために文献レ
ビューを行い,今後の課題について明らかにすることである.文献は,医学中央雑誌 Web 版を使用し集めた.検索には,
「外
来化学療法」「がん」「就労」のキーワードを用いた.また,抽出されなかった文献の中で外来がん化学療法と就労に関す
る内容が書かれた論文,公的資料を集めた.結果,がん患者の就労の現状,外来化学療法を受けるがん患者の就労継続に
おける精神的負担,就労支援に対するニーズ,患者の就労継続に向けた看護・支援の現状が明らかになり,今後の看護へ
の示唆を得たのでここに報告する.
キーワード:外来化学療法,がん,就労
はじめに
学療法室を併設する病院が増加した.今までの生活を
がんは,1981 年から我が国の死亡原因の第1位とな
継続しながら治療を受けることができる外来化学療法
り,現在にいたっており,国民の生命および健康にとっ
は患者の QOL を損なわずに治療を受けることができ,
1)
て 重 大 な 問 題 と な っ て い る . 日 本 の が ん 対 策 は,
インフォームドコンセントにより治療環境を自己決定
1984 年「対がん 10 カ年総合戦略」に始まり,現在は
できる現代において患者にとって望ましい治療環境で
がん対策基本法に基づいた「がん対策推進基本計画」
ある.
が実施されている.2012 年にがん対策基本計画の中に
治療を受けながら自宅で過ごし,社会生活を営むが
重点的に取り組むべき新たな課題として,
「がんであっ
ん患者が増えつつある.それに加え 5 年相対生存率が
ても暮らせる社会の構築」が追加され,
「就労に関する
上昇しており,がん腫・病期によっては慢性疾患と捉
ニーズや課題を明らかにした上で,職場における理解
えられる傾向がある.
の促進,相談支援体制の充実を通じて,がんになって
外来化学療法が発展し,就労しながらがん治療を受
も安心して働き暮らせる社会の構築を目指す」ことを
ける働く世代のがん患者が急増している.がんと診断
2)
挙げられている .また,2002 年の診療報酬の改定や
された人が社会人として自立し長期的な自己実現を目
薬剤の進歩,副作用を防止・軽減する薬剤の開発や看
指すがんサバイバーシップという考え方の中で,働き
護師による副作用対策が普及
3)
し,外来がん化学療法
ざかり世代にとっての就労問題は経済的な面だけでな
に診療報酬上の加算が認められたことにより,外来化
く,生きる意味にも直結する重要な問題である 4).そ
- 63 -
外来化学療法を受けるがん患者の就労と看護の動向についての文献的考察
して,がん患者にとって病者役割と社会的役割を両立
2)分析方法
5)
させていくことは,治療を継続する原動力になる .
分析方法は文献検討の結果をがん患者の就労の現
そこで,外来化学療法を受けるがん患者の就労と看護
状,外来化学療法を受けるがん患者の就労継続に対す
における今後の研究の方向性と示唆を得るために文献
る精神的負担,外来化学療法を受けるがん患者の就労
レビューを行い,今後の課題について明らかにする.
支援に対するニーズ,外来化学療法を受けるがん患者
2.研究方法
の就労継続に向けた看護・支援に分け分析した.
1)検索方法
3.結果
検索には“外来化学療法”
“がん”
“就労”のキーワー
1)年次推移(図1)
ドを用い,医学中央雑誌 Web 版を使用した.また,抽
“外来化学療法”と“就労”に焦点を当てた看護研究
出されなかった文献の中で外来がん化学療法と就労に
が始まったのは,2012 年からであった.
関する内容が書かれた論文,公的資料を集めた.
次に“外来化学療法”“がん”“就労”のキーワードで
対象文献は,抽出した 16 件のうち,原著論文 4 件と
抽出された文献数は 16 件であった.2012 年は,原著
原著論文と重複しない会議録 2 件,またその他の文献
論 文 1 件, 会 議 録 2 件, 特 集 / 解 説 1 件 で あ っ た.
の中で,
“外来化学療法”と“就労”に関する内容が掲
2013 年は,原著論文 1 件,会議録 1 件,特集 / 解説 1
載されている論文を 11 件抽出した.さらに,がんと就
件であった.2014 年は原著論文 2 件,会議録は 1 件,
労に関する公的資料 2 件を含め 19 件の文献(表1)を
特集 / 解説 6 件で,特集 / 解説は,雑誌「がん看護」
用いて検討を行った.
で特集記事が組まれており件数が増加していた.
表 1 対象文献一覧
表1 対象文献一覧
(件)
7
6
5
4
3
2
1
0
著者
発表年
タイトル
東京都福祉保健局
2014
がん患者の就労等に関す実態報告書
H26年5月
安原陽子
2014
外来化学療法を受ける患者の外来診察時の思
い
田村幸子他
2014
外来化学療法を受けている慢性期がんサバイ
バーが抱えている問題およびQuality of Life
との関連
和田さくら他
2013
外来化学療法を受ける男性消化器がんサバイ
バーの就労継続の様相
和田さくら他
2013
外来化学療法を受けるがんサバイバーの治療
と就労を両立するためのと取り組み
和田さくら他
2013
外来化学療法を受ける消化器がんサバイバー
における就労の位置づけ
佐藤三穂他 2013
がん患者が外来化学療法をを受けながら仕事
を継続するうえでの困難と取り組み、および
それらの関連要因の検討
岡本明美
2013
がん術後患者の職場復帰を支援するプログラ
ム作成への示唆
-産業看護職によるがん術後患者への職場復
帰支援の現状から-
田中登美他 2012
初めて化学療法を受ける就労がん患者の役割
遂行上の困難と対処
原恵里加他
2012
がん性疼痛がありがあり外来化学療法を受け
ている難治性消化器がん患者の療養生活上の
困難と対処
松田彩子他
2011
職場復帰した患者の心のケアとサポート
であり,そのうち約半数の人が依願退職,解雇,廃業
川崎優子他 2011
外来化学療法を受けているがん患者の潜在的
ニーズ
を余儀なくされていた 6).また,就労に対するニーズ
佐藤三穂他 2010
外来化学療法を受ける患者の精神的問題とそ
の関連要因の検討
は未就労患者のうち 85.0%が『仕事がしたい』と回答
澤田みゆき他
2009
外来化学療法を受ける肺がん患者のニーズ
堀井直子他
2009
外来化学療法を受けているがん患者の復職に
関する体験
2011 年の松田ら 8)の調査によると,就労した人が職
桜井まおみ他
2008
がん患者の就労・雇用支援に関する提言
場から受けている支援の有無は,職場からの支援が
梅津美香他 2005
医療機関における復職支援に関する看護師の
認識
武田貴美子他
2004
外来化学療法を受けながら生活していがん患
者のニーズ
福田敦子他 2003
外来がん化学療法患者の生活障害に関する研
究
原
著
論
文
会
議
録
特
集
/
解
説
原
著
論
文
2012
会
議
録
2013
特
集
/
解
説
会
議
録
原
著
論
文
2014
特
集
/
解
説
(年)
図1「外来化学療法」「がん」「就労」の文献数の推移
図 1 「外来化学療法」
「がん」「就労」の文献数の推移
①がん患者の就労の実態と看護(表2)
がん患者の就労の現状は,がんと診断された時点で,
『これまでの仕事を続けたい』と回答していた人は
75.9%,『就労状況が変化した』と回答した人が 31.0%
しており,また,
『仕事をしてほしい』と回答した患者
家族は 52.2%7)であった.
『あった人』は 28.8%,支援がなかった人は 61.2%であ
り,支援の内容は『勤務時間の変更』や『仕事内容の
軽減』であった.
また,退職の理由として『治療・療養に専念するため』
- 64 -
田 村 沙 織 他
が 53.1%と最も多く,次いで『体力面等から継続して
就労しているがん患者の困難は,社会的役割と病者
就労することが困難であるため』が 45.4%,『周囲に迷
役割を同時に担うことで患者は従来の役割を果たせる
惑をかけたくないため』が 34.6%
9)
であった.
かという困難を抱いている 17)であった.また,不安に
がん患者にとって仕事は,生きがいであり,生活・治
ついて寿命が延びると経済面も心配 18)と語っていた.
療を継続するための方法であり,不安への対処法 10)で
③外来化学療法を受けるがん患者の就労支援に対する
あった.そして,就労と治療を両立するための取り組
ニーズ(表4)
みとして,疾患と向き合い,気持ちを整えながら自己
外来化学療法を受けるがん患者の就労支援に対する
擁護する力を持ち,周囲の理解を得て仕事の調節を行
ニーズは,社会とつながりたい 19)であり,一方で周囲
うであった
11)
に病人と思われたくない 20)というニーズがあった.
.
②外来化学療法を受けるがん患者の就労継続における
また,患者は治療と仕事の調整に対するニーズ 21,22)
精神的負担(表3)
を持ち,土日の治療ができるシステムや夜間の治療な
就労継続するがん患者の精神的負担は,外来化学療
ど仕事時間以外に治療を受けること 23),仕事に合わせ
法を受けること自体が活動・時間の制限や仕事に影響
た治療間隔の調整をしてほしい 24)というニーズがある
しており 12),欠勤や早退をしにくいことで周囲に気遣
ことが明らかにされていた.
いをしている
13)
であった.しかし,休職している人は
就労していない人に比べ不安や抑うつ傾向が強く 14),
社会参加が精神面に及ぼす影響がある
かにされている.
15,16)
ことが明ら
家族からの支援ニーズ 25)として,患者への支援方法
についての助言・情報提供や患者の治療に関して相談
できる場の提供が多く挙げられており,一方的な情報
提供ではなく,相談できる場を充実させることが求め
表 2 がん患者の就労の現状
表2 がん患者の就労の現状
表2 がん患者の就労の現状
・がん診断時に『これまでの仕事を続けたい』75.9%
・がん診断時に『これまでの仕事を続けたい』75.9%
表2 がん患者の就労の現状
・『就労状況が変化した人』31.0%そのうち約半数の人が依願退職、解雇、廃業
・『就労状況が変化した人』31.0%そのうち約半数の人が依願退職、解雇、廃業
・未就労患者のうち85.0%『仕事がしたい』
・がん診断時に『これまでの仕事を続けたい』75.9%
・未就労患者のうち85.0%『仕事がしたい』
・患者の家族のうち52.2%『仕事をしてほしい』
・『就労状況が変化した人』31.0%そのうち約半数の人が依願退職、解雇、廃業
・患者の家族のうち52.2%『仕事をしてほしい』
・職場からの支援が『あった人』28.8%『なかった人』61.2%
・未就労患者のうち85.0%『仕事がしたい』
・職場からの支援が『あった人』28.8%『なかった人』61.2%
・支援の内容は『勤務時間の変更』や『仕事内容の軽減』
・患者の家族のうち52.2%『仕事をしてほしい』
・支援の内容は『勤務時間の変更』や『仕事内容の軽減』
・退職の理由『治療・療養に専念するため』53.1%
・職場からの支援が『あった人』28.8%『なかった人』61.2%
・退職の理由『治療・療養に専念するため』53.1%
『体力面等から継続して就労することが困難であるため』45.4%
・支援の内容は『勤務時間の変更』や『仕事内容の軽減』
『体力面等から継続して就労することが困難であるため』45.4%
『周囲に迷惑をかけたくないため』34.6%
・退職の理由『治療・療養に専念するため』53.1%
『周囲に迷惑をかけたくないため』34.6%
・就労継続するためには周囲の人たちの理解が必要である
『体力面等から継続して就労することが困難であるため』45.4%
・就労継続するためには周囲の人たちの理解が必要である
・仕事に対し責任感やプライドを持ち、職場で役割を感じている
『周囲に迷惑をかけたくないため』34.6%
・仕事に対し責任感やプライドを持ち、職場で役割を感じている
・治療するために仕事をしている・仕事は『生きる意味』であり,『生きがい』であり,
・就労継続するためには周囲の人たちの理解が必要である
・治療するために仕事をしている・仕事は『生きる意味』であり,『生きがい』であり,
『生活・治療を継続するための方法』『不安への対処法』である
・仕事に対し責任感やプライドを持ち、職場で役割を感じている
『生活・治療を継続するための方法』『不安への対処法』である
・就労継続するために疾患と向き合い,気持ちを整え自己擁護する力を持ち,周囲の理
・治療するために仕事をしている・仕事は『生きる意味』であり,『生きがい』であり,
・就労継続するために疾患と向き合い,気持ちを整え自己擁護する力を持ち,周囲の理
解を得て仕事の調節を行う
『生活・治療を継続するための方法』『不安への対処法』である
解を得て仕事の調節を行う
・働くことに生きる意味を見出していた
・就労継続するために疾患と向き合い,気持ちを整え自己擁護する力を持ち,周囲の理
・働くことに生きる意味を見出していた
解を得て仕事の調節を行う
・働くことに生きる意味を見出していた
表 3 就労継続による精神的負担
表3 就労継続による精神的負担
表3 就労継続による精神的負担
・外来化学療法を受けること自体が,活動時間の制限や仕事に影響している
・外来化学療法を受けること自体が,活動時間の制限や仕事に影響している
・欠勤や早退をすることについて周囲の人に気遣いをする
表3 就労継続による精神的負担
・欠勤や早退をすることについて周囲の人に気遣いをする
・休職している人は,就労している人,就労していない人より不安得点,抑うつ得点
・外来化学療法を受けること自体が,活動時間の制限や仕事に影響している
・休職している人は,就労している人,就労していない人より不安得点,抑うつ得点
ともに高い
・欠勤や早退をすることについて周囲の人に気遣いをする
ともに高い
・治療の副作用が社会的役割を担う上で支障になっている
・休職している人は,就労している人,就労していない人より不安得点,抑うつ得点
・治療の副作用が社会的役割を担う上で支障になっている
・社会的役割と病者役割を同時に担うことで患者は従来の役割を果たせるかという困難
ともに高い
・社会的役割と病者役割を同時に担うことで患者は従来の役割を果たせるかという困難
を抱いている
・治療の副作用が社会的役割を担う上で支障になっている
を抱いている
・寿命が延びると経済面も心配
・社会的役割と病者役割を同時に担うことで患者は従来の役割を果たせるかという困難
・寿命が延びると経済面も心配
を抱いている
・寿命が延びると経済面も心配表4 就労継続のためのニーズ
表4 就労継続のためのニーズ
・社会とつながりを持ちたい
・社会とつながりを持ちたい 表 4 就労継続のためのニーズ
・周囲の人の病人だと思われたくない
表4 就労継続のためのニーズ
・周囲の人の病人だと思われたくない
・費用面での不安軽減したい
・社会とつながりを持ちたい
・費用面での不安軽減したい
・治療と仕事を両立したい
・周囲の人の病人だと思われたくない
・治療と仕事を両立したい
・治療と仕事をうまくやっていきたい
・費用面での不安軽減したい
・治療と仕事をうまくやっていきたい
・治療と仕事の調整をしたい
・治療と仕事を両立したい
・治療と仕事の調整をしたい
・仕事にあわせた治療間隔の調整をしてほしい
・治療と仕事をうまくやっていきたい
・仕事にあわせた治療間隔の調整をしてほしい
・土日の治療ができるシステムや夜間の治療など仕事時間以外に治療を受けたい
・治療と仕事の調整をしたい
・土日の治療ができるシステムや夜間の治療など仕事時間以外に治療を受けたい
・仕事にあわせた治療間隔の調整をしてほしい
表5 就労継続のための看護支援
・土日の治療ができるシステムや夜間の治療など仕事時間以外に治療を受けたい
表5 就労継続のための看護支援
・80%の看護師が患者の復職支援に関心があり,そのうち復職支援を実施していないの
・80%の看護師が患者の復職支援に関心があり,そのうち復職支援を実施していないの
は64%で半数以上援助方法がわからない
表5 就労継続のための看護支援
は64%で半数以上援助方法がわからない
・セルフケアの観点からのアドバイスや仕事の具体的内容,仕事上の立場,経済的状
・80%の看護師が患者の復職支援に関心があり,そのうち復職支援を実施していないの
・セルフケアの観点からのアドバイスや仕事の具体的内容,仕事上の立場,経済的状
況,職場環境など,復職の難易度や状況を判断するための情報収集を行う
は64%で半数以上援助方法がわからない
況,職場環境など,復職の難易度や状況を判断するための情報収集を行う
・看護師へ仕事の相談をしている人は日常生活上の注意点を職場で公表しており,
・セルフケアの観点からのアドバイスや仕事の具体的内容,仕事上の立場,経済的状
- 65 -
・看護師へ仕事の相談をしている人は日常生活上の注意点を職場で公表しており,
日常生活の注意点を職場で公表している人ほどワークモチベーションが高かった
況,職場環境など,復職の難易度や状況を判断するための情報収集を行う
日常生活の注意点を職場で公表している人ほどワークモチベーションが高かった
・がん術後患者の把握が難しい
・看護師へ仕事の相談をしている人は日常生活上の注意点を職場で公表しており,
・がん術後患者の把握が難しい
・がん患者を支援する時間がない
日常生活の注意点を職場で公表している人ほどワークモチベーションが高かった
・がん患者を支援する時間がない
・がんであることを社員に隠す
・周囲の人の病人だと思われたくない
・費用面での不安軽減したい
・治療と仕事を両立したい
・治療と仕事をうまくやっていきたい
外来化学療法を受けるがん患者の就労と看護の動向についての文献的考察
・治療と仕事の調整をしたい
・仕事にあわせた治療間隔の調整をしてほしい
・土日の治療ができるシステムや夜間の治療など仕事時間以外に治療を受けたい
表 5 就労継続のための看護支援
表5 就労継続のための看護支援
・80%の看護師が患者の復職支援に関心があり,そのうち復職支援を実施していないの
は64%で半数以上援助方法がわからない
・セルフケアの観点からのアドバイスや仕事の具体的内容,仕事上の立場,経済的状
況,職場環境など,復職の難易度や状況を判断するための情報収集を行う
・看護師へ仕事の相談をしている人は日常生活上の注意点を職場で公表しており,
日常生活の注意点を職場で公表している人ほどワークモチベーションが高かった
・がん術後患者の把握が難しい
・がん患者を支援する時間がない
・がんであることを社員に隠す
・有給休暇で治療を受けているため,体調が悪いとき休暇が取れない
られている.
とともに生きがいであり,療養生活を行うための前に
④外来化学療法を受けるがん患者の就労継続に向けた
向かう力 30)となる.
看護・支援(表5)
また,患者は社会的役割を遂行しようと努力するが,
医療機関における看護師の患者への復職支援に対す
治療の副作用により体調が優れず,周囲に迷惑をかけ
る意識について,80%の看護師が『職業を持つ患者の
たくないため無理に仕事を引き受けることや,治療費
復職支援に関心があり』,そのうち『復職支援していな
を継続して支払うことによる経済的不安,有給休暇の
い人』が 64%でそのうち半数以上が『支援方法が分か
多くを治療のために活用し,自分の体調が優れないと
26)
らない』
としていた.看護師が行っているがん患者
きや気分転換の余暇のためには休みが取りづらい現状
の復職支援の内容は,セルフケアの観点からのアドバ
が精神的負担になっている。
イスや仕事の具体的内容,仕事上の立場,経済的状況,
現在,外来化学療法を受けるがん患者の就労におけ
職場環境など,復職の難易度や条件を判断するための
る困難についての研究は,質的研究が多く対象者も少
情報収集を行うこと
27)
であったことが明らかにされて
ない.また,看護における患者の就労に向けた支援に
いた.
ついて模索している段階であると考えられる.
また,看護師に仕事の相談をしている患者は,生活
2)外来化学療法を受けるがん患者の就労継続に向けた
の注意点を職場で公表しており日常生活の注意点を公
ニーズ
表している患者ほどモチベーションが高かった 28)とい
就労継続するためのニーズとして,治療を行う時間
う結果が報告されている.
をできるだけ仕事に支障がないようにしたいという患
産業看護師を対象にした研究
29)
では,社内でがん術
者の思いが伺えた.患者は,治療日の休暇だけではな
後患者の把握が難しいこと,精神疾患を有する患者へ
く,治療による副作用が強いときや私的な用事で休暇
の対応が優先されがん患者を支援する時間がないこ
を取らなければならないこともある.夜間や休日など
と,患者本人が,がんであることを社員に隠すこと,
の時間外に治療を行うことは,職場に対する気遣いに
産業看護師に病気を知られることで,昇進ができなく
よる精神的負担を軽減するためには有効な措置である
なることや病気休暇を取得することで給料やボーナス
と考える.就労している人だけでも対象に,夜診で治
に影響が出ることを懸念し,有給休暇で治療を受ける
療を受けるシステムがあれば,患者の負担を軽減する
こともあるため,体調が悪い時には休暇が取れなくな
ことにつながるのではないかと考える.その一方,医
るケースもあり,支援上の問題になっていた.
療の人材不足が問題とされている中で,患者のニーズ
考察
に合わせた時間に治療を行える人的環境を整備するこ
1)外来化学療法を受けるがん患者の就労における現状
とも求められる.
と困難
今後,がんサバイバーは増加することが見込まれて
外来化学療法を受ける患者は,抗がん剤の副作用に
おり,少子高齢化の日本において貴重な働き手になる
より生活の時間や活動範囲を制限されており,がん罹
ことが予測される.患者にとって,社会参加や就労継
患前と比べ思い通りの生活ができないのが現状であ
続することは自身の QOL を向上させ,前向きに治療に
る.がん患者にとって社会参加は,人間関係を築き,
取り組むことにつながる.現在,厚生労働省がん臨床
日常生活を活性化させるための源であると考える.ま
研究事業「がんと就労」の研究班が患者向けQ&A集
た就労や養育等,社会を支えていくべく世代である壮
31)
年期の患者にとって就労は,重要な社会的役割である
業に対する働きかけも行われている.
- 66 -
や企業向け支援マニュアル 32) を公表しており,企
田 村 沙 織 他
がんになってもがん罹患前と同様に生活できるよう
引用・参考文献
医療機関に従事する看護師は,就労継続や新たに就労
1) 厚生統計協会編 (2013):国民の指標増刊 国民衛生
を希望する患者にどのような支援ができるのかをさら
の動向 2013/2014 厚生統計協会
2) 厚生労働省 (2012):がん対策推進基本計画 平成 24
なる研究を重ね明確にする必要がある.
厚生労働省のモデル事業
33)
として,平成 25 年度よ
年
り全国 5 か所のハローワークに専門相談員を配置し,
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_
keikaku02.pdf
個々の求職者の希望や治療状況等を踏まえた職業相談
3) 有吉寛 (2003):なぜいま外来化学療法か,がん看護,
やがん診療拠点病院への出張相談を行っており,平成
26 年には,全国 12 か所に拡充することも考えられて
8(5):348‐351.
いる.行政の支援が始まり,就労しやすい環境が整い
4) 大島彰 (2013):がん患者のこころとからだを支え
つつあるが日々の生活の中での困難については,医療
る小児から高齢患者そして家族まで 働きざかりのが
者の介入が不可欠である.
ん患者のこころを支える がんサバイバーシップ,日
3)外来化学療法を受けるがん患者の就労継続に向けた
本社会精神医学会雑誌,22(4):474-479.
5) 田中登美,田中京子 (2012):初めて化学療法を受
看護・支援
患者は社会生活を営んでいる人として,がんに罹患
ける就労がん患者の役割遂行上の困難と対処,日本
した後も会社では今まで通りの自分でいたいという思
がん看護学会,26(2):62-75.
6) 桜井まおみ,市川和男,後藤悌他 (2008):「がん患
いがあり,周囲の人に気遣いされることや迷惑をかけ
たくないという思いがある.岡本ら
34)
の研究で明らか
者の就労・雇用支援に関する提言」,東京大学文部科
にされているように社内で,がんに罹患したことを隠
学省科学技術振興調整費.
したいため産業看護師との接触を拒否するケースがあ
http://workingsurvivors.org/img/csr_honpen.pdf
る.患者は,治療を受けている病院においては,自分
7) 東京都福祉保健局 (2014):がん患者の就労等に関
する実態報告書 H26 年 5 月
の経過をよく知る主治医や看護師に日頃の症状や療養
生活で困っている点について相談しやすい.それゆえ,
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/iryo_
医療機関に従事している看護師は,患者の生活背景を
hoken/gan_portal/soudan/ryouritsu/houkoku.files/
意識し,患者ががん罹患前と同じ環境の中で安心して
honpen.pdf
8) 松田彩子,小林未果,松下年子他 (2011):職場復
がんと共に生活できるように支援していく必要があ
帰 し た 患 者 の 心 の ケ ア と サ ポ ー ト,Jpn J Hosp
る.
Psychiatry,23(4):378-386.
また,患者の復職に対する看護支援では,セルフケ
アに焦点を当てている.生活者として疾患や治療によ
9) 前掲 7)
る生活障害をアセスメントし,必要なセルフケア能力
10)和田さくら,稲吉光子 (2013):外来化学療法を受
を高めることで自律した日常生活に近づくことができ
ける消化器がんサバイバーにおける就労の位置づ
る.そして,セルフケア能力を高め,症状コントロー
け,日本がん看護学会,27:277.
11)和田さくら,磯部陽呼 (2013):外来化学療法を受
ルが上手くいくことで精神的安定につながると考え
る.
けるがんサバイバーの治療と就労を両立するための
がん対策基本法の改正に伴い文献数に変化が見ら
取り組み,日本がん看護学会,28:275.
12)福田敦子,山田忍,宮脇郁子他 (2003):外来癌化
れ,看護の分野においてがん患者の就労に対する関心
が徐々に高まっている.同時にがん患者の職場復帰に
学療法患者の生活障害に関する研究,神大保健紀要,
対し看護師の認識も変わりつつある.患者がセルフケ
19:41‐57.
ア能力を身につけ仕事と治療を調整していくことが,
13)佐藤三穂,鷲見尚己,浅井可菜子 (2010):外来化
社会復帰をすることを可能にし,自律性のある生活を
学療法を受ける患者の精神的問題とその関連要因の
再構築することができる.社会における患者の現状は
検討,日本がん看護学会,24(1):52‐59.
さまざまであり,がん患者が職場復帰しやすいように,
14)前掲 13)
個別的で具体的な援助内容を明らかにしていく必要が
15)佐藤三穂,吉田恵,前田美樹他 (2013):がん患者
ある.
が外来化学療法を受けながら仕事を継続するうえで
の困難と取組み,およびそれらの関連要因,日本が
- 67 -
外来化学療法を受けるがん患者の就労と看護の動向についての文献的考察
ん看護学会,27(3):77-83
がん患者と家族に向けた包括的就業支援システムの
16)田村幸子,新谷恵子,佐々木榮子他 (2014):外来
構築に関する研究」(2014):企業 ( 上司・同僚,人事
労務,事業主 ) のための「がん就労者支援マニュアル」
化学療法を受けている慢性期がんサバイバーが抱え
ている問題および Quality of Life との関連,看護実
33)前掲 10)
践学会誌,26(1):73‐81.
34)北添可奈子,藤田佐和 (2008):外来化学療法を受
17)田中登美,田中京子 (2012):初めて化学療法を受
けるがん患者の“前に向かう力”,日本がん看護学会,
ける就労がん患者の役割遂行上の困難と対処,日本
22(2):4‐13.
がん看護学会,26(2):62-75.
18)原恵里加,真砂さおり,佐野真理子他 (2012):が
ん性疼痛があり外来化学療法を受けている難治性消
化器がん患者の療養生活上の困難と対処,日本看護
学会論文集 成人看護Ⅱ,42:183‐186.
19)前掲 17)
20)前掲 18)
21)澤田みゆき,伊賀陽子,山崎由紀子 (2009):外来
化学療法を受ける肺がん患者のニーズ,看護総合,
40:213-215.
22)武田貴美子,田村正枝,小林理恵他 (2004):外来
化学療法を受けながら生活しているがん患者のニー
ズ,長野県看護大学紀要,6:73-85.
23)川崎優子,内布敦子,荒尾晴恵他 (2011):外来化
学療法を受けているがん患者の潜在的ニーズ,UH
CNAS,RINCPC Bulletin,18:35-47.
24)安原陽子,横田須賀子,川形美恵他 (2014):外来
化学療法を受ける患者の外来診察時の思い,日本看
護学会論文集 成人看護Ⅱ,44:43‐46.
25)前掲 7)
26)梅津美香,小林美代子,堀井直子 (2005):医療機
関における復職支援に関する看護職の認識,産業衛
生学雑誌,47:553.
27)堀井直子,小林美代子,鈴木由子 (2009):外来化
学療法を受けているがん患者の復職に関する体験,
日職災医誌,57:118-124.
28)前掲 15)
29)岡本明美 (2013):がん術後患者の職場復帰を支援
するプログラム作成への示唆 産業看護職によるがん
術後患者への職場復帰支援の現状から,医療看護研
究,10(1):52-56.
30)前掲 11)
31)厚生労働科学研究補助金がん臨床研究事業「働く
がん患者と家族に向けた包括的就業支援システムの
構築に関する研究」(2014):診断されたらはじめに
見る がんと仕事の Q & A
32)厚生労働科学研究補助金がん臨床研究事業「働く
- 68 -
小 畑 友 季 他
京府医大看護紀要,24:69-76,2014
農山村地域で暮らす後期高齢者の健康観
小畑友季 1)、星野明子 2)
1)京都府立医科大学医学部看護学科
2)京都府立医科大学医学部看護学科保健看護学研究
Status of the Health of the Elderly in Rural Areas in Japan
Yuki Kohata, Akiko Hoshino
1, School of Nursing,Kyoto Prefecutural University of Medicine
2, Department of medical Science, Graduate School of Nursing for Health Care Science
Kyoto Prefectural University of Medicine
要約
本研究では、農山村高齢地域で暮らす後期高齢者の健康観を明らかにするため、A 市 B 町在住の後期高齢者 5 名を対象に
インタビュー調査を行った。インタビュー内容から逐語録を作成し、質的記述的分析を実施した。
その結果、
【歳を重ねる中で見出した健康の捉え方】【健康に影響するもの】【生活の受け止め方】【加齢変化への対処行動】
という 4 つのカテゴリーと、各カテゴリーを構成する 12 のサブカテゴリーが抽出された。
対象者の健康について表現は様々だったが、身体面、精神面が健康であると捉えている点が共通であり、認知機能の維持
を健康の要素に含めていた。対象者は、加齢に伴う身体機能の低下に直面し、歯がゆさを感じたり、生活範囲の狭まりを
感じたりしている一方で、農業や友人との関わりに楽しみを見出したり、無理をしないようにしたりと、身体的・精神的
健康のバランスをとりながら生活していた。
高齢者の生活を支えるためには、高齢者が持つそれぞれの健康観を理解し、それに応じた支援を考える必要がある。現
在の活動を維持できるように身体機能の維持の支援や、精神的健康・認知機能の維持するために、積極的に身近な他者と
関われる環境を作る必要性が示唆された。
キーワード:キーワード:農山村地域、高齢者、健康観
1. はじめに
ことを明らかにし、高齢者の生活を支える看護支援へ
わが国では、平成 37 年(2025 年)には、全人口の 3
の示唆を得ることを目的とする。
人に 1 人が高齢者になると予測されて、急速な人口の
高齢化が進むと指摘されている 1)。平成 13(2001)年
Ⅱ.方法
から平成 22(2010)年までの健康寿命の延び(男性 1.02
1)研究の対象および方法
年、
女性 0.97 年)は、同期間における平均寿命の延び(男
(1)対象の在住する地域
性 1.48 年、女性 1.37 年)より小さくなっている。要介
今回の調査の対象となった A 市 B 町は人口が 4,412
護認定者数は、65 ~ 74 歳で 452 人(3.0%)75 歳以上
人(平成 25 年 4 月 1 日現在)で、年齢別にみると 0 ~
2)
では 3,156 人(22.1%)が 要介護となっている 。
14 歳 が 375 人( 約 8.5 %)、15 ~ 64 歳 が 2,209 人( 約
超高齢化社会におけるサクセスフル・エイジングの実
50.1%)、65 歳以上が 1,828 人(約 41.4%)であり、平
現には健康の維持が必要不可欠とされている 3)。先行
均年齢は 54.8 歳となっている 6)。対象者の住む地域は、
研究では、主観的健康感に焦点を当てた研究が多くな
超高齢化地域である。
されているが
4)5)
、健康の捉え方についての研究は多
(2)対象者 くはない。
A 市 B 町に住んでいる、認知症などのコミュニケー
本研究は、農山村高齢化地域で暮らす後期高齢者を
ションや対人関係に障害を伴う疾患の既往のない後期
対象に、健康観や健康に過ごすために気を付けている
高齢者(75 歳以上)5 名を対象とした。
- 69 -
農山村地域で暮らす後期高齢者の健康観
Ⅳ.結果
(3)方法
9 月 14 日と 26 日に対象者の家で 1 人 30 ~ 60 分ずつ、
1)対象者の特性
作成したフェイスシート(年齢・性別・家族構成・通
対象者の特性について述べる(表 2)。5 名ともに、
院の有無・一日の生活の流れ老研式活動能力指標、社
老研式活動能力指数は 10 点以上と高く、要介護認定を
会資源利用(要介護認定)の有無)と、インタビュー
受けている者・社会福祉サービスを利用している者は
ガイド(①現在の健康状態について、②「健康」とは
いない。5 人とも日常の生活機能は自立している。家
どのような状態と考えるか、③「健康でない」状態は
族構成は、夫婦と子供および子供夫婦等の 3 名以上で
どのような状態と考えるか、④普段の生活の中で健康
同居している(表 1)。
に過ごすために心がけていることなどがあるか、⑤自
分の健康状態に影響を与えるものは何だと考えるか)
2)インタビュー分析結果
を基にインタビューを行った。インタビュー内容は、
インタビュー調査を分析した結果、4 つのカテゴリー
本人の許可を得て IC レコーダーで録音した。
と、各カテゴリーを構成する 12 のサブカテゴリーが抽
2)分析方法
出された(表 3)。カテゴリーを【 】、サブカテゴリー
録音した聞き取り内容から、逐語録を作成した。A
を〈 〉、コードを「 」で示す(表 2)。
~ E さんのインタビューをそれぞれ意味内容ごとに
【歳を重ねる中で見出した健康の捉え方】
コード化し、それらの内容を類似した意味内容ごとに
このカテゴリーは、〈体と心が自分の意思でコント
まとめサブカテゴリーとした。同様に、サブカテゴリー
ロールできること〉
〈食欲がありご飯がおいしいと思え
を分類し、カテゴリー名をつけ抽象化を行った。すべ
ること〉〈身体に痛いところがないこと〉〈生きがいを
ての分析過程において、質的研究の経験のある研究者
感じることができること〉
〈表情が穏やかで朗らかであ
に確認しながら進めることで、分析の信憑性を高める
ること〉という5つのサブカテゴリーからなる。
ように努力した。
〈体と心が自分の意思でコントロールできること〉で
は、「自分で思ったことが何でもできる」「自分がした
3)倫理的配慮
いと思ったことができる」「健康でないことは、自分の
インタビューを行うに当たり、対象者には調査協力
意思に身体が従わないことである」という身体を自由
http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h22/kiso/zentai/pdf/2-7.pdf
依頼時に本研究の主旨、収集した情報は研究の目的と
に動かすことができるといった身体面と、
「心も体も十
1 0 ) 森 山 悦 子 、 出 村 佳 子 ( 2013): 地 域 に 生 活 す る 後 期 高 齢 者 の 健 康 へ の 関
研究の成果を発表する以外に使用しないこと、匿名性
分でないと健康とはいえない」という精神面や、さら
心 , 日 本 看 護 学 会 論 文 集 老 年 看 護 , 43: 106-109
を厳守し、プライバシーを保護すること、研究への協
に「身体と心が私の意思でコントロールできる」では
貴子,
他 ,( 2011): 都 市 部 高 齢 者 に お け
認知面に問題がないことも健康の条件であると考えて
11)渋井 優,村山 洋史,河島
力は途中で辞退できることや、研究に同意しなくても
不利益は被らないことについて説明書を提示し、口頭
いると思われる。
る閉じこもり予備群の類型化-介護予防対策
の具体化に向けて-,日本公衆衛
で説明した。同意を確認し、同意書にサインを得た上
生 誌 , 58: 935-945
でデータの収集を実施した。インタビュー時はプライ
〈食欲がありご飯がおいしいこと〉では、「食欲があ
バシーに配慮し個室で行い、発言内容は対象者の了解
快便であること」「ご飯がおいしくて、痛くても無理に
を得て録音した。
でも動けるのが一番いい」というコードがあり、健康
り、痛い、痒いという自覚が全くない」「快眠・快食・
と食事が関係していると考えていることが分かった。
( 表 1)
対象者 年齢
対象者の概要
表 1 対象者の概要
性別
家族構成
通院
社会資源
の利用
老研式活動
能力指数
主観的健康感
A
80代
男性
妻・息子夫婦
無
無
13
良い
B
80代
女性
夫・息子夫婦
有
無
13
まぁまぁ
C
80代
女性 夫・息子夫婦・孫
有
無
10
悪い
D
80代
男性
妻・息子
有
無
12
まぁまぁ
E
70代
女性
夫・息子
有
無
12
良くない
- 70 -
小 畑 友 季 他
( 表 2)
イ ン タ ビ ュ ー 分 析表
結 2 インタビュー分析結果
果
カテゴリー
サブカテゴリー
コード
体と心が自分の意思でコ
体と心が私の意思でコントロールできる
ントロールできること
自分で思ったことが何でもできる
健 康 で あ る と い う こ と は 、自 分 が し た い と 思 っ た こ と
ができることである
健 康 で な い と い う こ と は 、自 分 の 意 思 に 体 が 従 わ な い
ことである
心も体も十分でないと健康とはいえない
食欲があり、ご飯がおい
しいと思えること
食欲があり、痛い・痒いという自覚が全くない
快眠・快食・快便であること
ご 飯 が お い し く て 、痛 く て も 無 理 に で も 動 け る の が 一
番いい
歳を重ねる 中
身体に痛いところがない
で見出した 健
こと
食欲があり、痛い・痒いという自覚が全くない
体の調子が良くなく、しんどいから健康体ではない
康の捉え方
健 康 で な い 状 態 と は 、精 神 が 不 安 定 で あ り 、足 ・ 膝 ・
腰が痛かったりして十分に日常生活ができないこと
膝と腰が痛いから健康状態は悪い
身 体 の 具 合 が 悪 く 、背 中 が 痛 い と こ ろ が 凝 っ た り 張 っ
たりして痛いので健康状態は良くない
何にも痛いところがなかったら健康
生きがいを感じることが
健 康 と は 、や る 気 が あ り 、前 向 き で 、何 か 目 的 に 向 か
できること
って歩けることである
生きがいを感じること
表情が穏やかで、朗らか
な人
健康に影響 す
健康に影響を与えるのは
表情が穏やかで朗らかな人は健康である
健 康 で な い 状 態 と は 、表 情 が 暗 く て 、動 作 が 鈍 い こ と
ストレスが一番健康に悪いと思う
- 71 -
生きがいを感じること
表情が穏やかで、朗らか
な人
表情が穏やかで朗らかな人は健康である
農山村地域で暮らす後期高齢者の健康観
健 康 で な い 状 態 と は 、表 情 が 暗 く て 、動 作 が 鈍 い こ と
健康に影響 す
健康に影響を与えるのは
ストレスが一番健康に悪いと思う
るもの
ストレス
健 康 状 態 に 影 響 を 与 え る も の は 外 部 か ら の 接 触( ス ト
レス)である
健康に影響を与えるのは
食事
健康に影響するのは、食事だと思う
血 圧 が 高 く 、肥 満 気 味 で あ る た め 、食 事 に は 気 を つ け
ている
畑を作るのが楽しみ
百姓したり、やることがあるから元気なんやと思う
畑を作るのは楽しみ
近所のお年寄りと話すこ
在所のお年寄りと喋って、笑うこと
とが楽しみ
隣のおばあちゃんと朝から晩まで話すことが楽しみ
生活の受け 止
喋ることが一番嬉しい
め方
加齢による体の変化に対
昔に比べて腕力がなくなり重たいものが持てなくな
して感じる歯がゆさ
って歯がゆい思いをしている
身体が辛いばっかしで、せめて背中が痛くなかった
ら、もうちょっと仕事ができた
日常生活に変化がなく、
月 に 1 回 役 場 ・ 農 協 ・ 郵 便 局 に 行 く 以 外 、ど こ に も 行
楽しみがない
く事がなく楽しみがない
身体の状態に合わせて、
家 の こ と や 家 役 な ど を し て お り 、し ん ど い た め 、無 理
無理をしない
せず、年相応の仕事をしていくことが一番である
持 病 が あ る た め 無 理 を せ ず 、自 分 の し た い こ と を す る
加齢変化へ の
のが一番いい
対処行動
自 分 の 適 当 に 動 け る こ と し か し せ ず 、無 理 な こ と は し
ないようにしている
血 圧 が 高 く 、肥 満 気 味 で あ る た め 、食 事 に は 気 を つ け
ている
〈身体に痛いところがないこと〉では、「食欲があり、
かったら健康」と身体面の状態については多くの意見
痛い・痒いという自覚が全くないため健康である」「体
が出てきており、特に「痛み」が健康に影響している
の調子が良くなく、しんどいから健康体ではない」「健
ことが分かった。
康でない状態とは、精神が不安定であり、足・膝・腰
〈生きがいを感じることができること〉では、「健康
が痛かったりして十分に日常生活ができないことであ
とは、やる気があり、前向きで、何か目的に向かって
る」
「膝と腰が痛いから健康状態は悪い」「身体の具合
歩けることである」
「生きがいを感じること」という意
が悪く、背中が痛いところが凝ったり張ったりして痛
見があり、
「前向き」や「やる気がある」などといった
いので健康状態は良くない」「何にも痛いところがな
コードがあり、物事をポジティブに捉えることができ
- 72 -
小 畑 友 季 他
る時が健康状態が良い時であると考えているようで
がなく、楽しみがない」というコードから、身体的な
あった。
衰えに加え、移動手段として車が必須であるという土
〈表情が穏やかで朗らかであること〉では、「表情が
地柄から外に出ることが難しくなっている状況がみら
穏やかで朗らかな人は健康である」
「健康でない状態と
れ生活範囲の狭まりを感じている。また、毎日同じよ
は、表情が暗くて、動作が鈍いこと」という意見から、
うな時間に寝起きして同じような生活をしていること
健康であれば見た目にも明るさが表れると考えている
から、変化が乏しい状態であるといえる。制限が加わっ
ことが分かった。
たことによって、生活に楽しみがなくなったと受け止
【健康に影響するもの】
めていた。
このカテゴリーは、
〈健康に影響を与えるのはストレ
【加齢変化への対処行動】
ス〉
〈健康に影響を与えるのは食事〉の 2 つのサブカテ
このカテゴリーは、
〈身体の状態に合わせて、無理を
ゴリーで構成される。
〈健康に影響を与えるのはストレ
しない〉の 1 つのサブカテゴリーで構成される。
「家の
ス〉では、
「ストレスが一番健康に悪いと思う」「健康
ことや家役などをしており、しんどいため、無理せず
状態に影響を与えるのは外部からの接触(ストレス)
年相応の仕事をしていくことが一番である」
「自分の適
である」というコードから、ストレスが健康状態を左
当に動けることしかせず、無理なことはしないように
右する要因のひとつであると考えていた。
している」などから、高齢であることを受け止め、相
〈健康に影響を与えるのは食事〉では、
「健康に影響を
応の行動をするように気をつけていることが分かっ
与えるのは、食事だと思う」「血圧が高く、肥満気味で
た。また、
「持病があるため無理せず、自分のしたいこ
あるため、食事には気をつけている」などから、自分
とをするのが一番いい」「血圧が高く、肥満気味である
の健康状態や持病を考慮し、塩分の取りすぎや、間食
ため、食事には気をつけている」というコードがみら
をしないようにすることなどに気をつけていると思わ
れた。持病の悪化を防ぐために自分なりの対処法を考
れた。
え実施していると思われる。
【生活の受け止め方】
このカテゴリーは、〈畑を作るのが楽しみ〉〈近所の
Ⅴ.考察
お年寄りと話すのが楽しみ〉
〈加齢による身体の変化に
1)健康の捉え方
対して感じる歯がゆさ〉〈日常生活に変化がなく、楽し
高齢社会白書によると、75 歳以上高齢者の有訴者率
みがない〉の 4 つのサブカテゴリーで構成される。
(人口 1,000 人当たりの「ここ数日、病気やけが等で自
〈畑を作るのが楽しみ〉は、「百姓したり、やることが
覚症状のある者(入院者を除く)」の数)は 500.0 を超
あるから元気なんやと思う」「畑を作るのは楽しみ」、
えており、半数以上の人が何らかの自覚症状を訴えて
〈近所のお年寄りと話すことが楽しみ〉では、
「隣のお
いる。また、持病やけがなどにより日常生活に影響が
ばあちゃんと朝から晩まで話すことが楽しみ」
「喋るこ
あるとしているものが約3割となっている 2)。今回の
とが一番嬉しい」
「在所のお年寄りと喋って、笑うこと」
調査では、ほとんどの対象者が何らかの自覚症状の訴
というコードで表わされている。日常生活の中で畑仕
えを持っており、日常生活の中でも家事や農作業、外
事をして、野菜や米を作ること、また、隣近所の高齢
出への影響を感じていた。自覚症状の中では、特に「痛
者同士など、誰か人と話すということが楽しみになっ
み」が日常生活の支障につながっていると感じており、
ているようであった。
健康の捉え方として、〈身体に痛いところがないこと〉
〈加齢による体の変化に対して感じる歯がゆさ〉で
と表れたと考える。また、現在は身体面に問題を持っ
は、
「昔に比べて腕力がなくなり重たいものが持てなく
ていない場合でも、持病を持っている者がほとんどで
なって歯がゆい思いをしている」
「身体が辛いばっかし
あり、その持病の悪化が身体的な健康に影響すると考
で、せめて背中が痛くなかったら、もうちょっと仕事
えているため、
〈食事〉に気をつけるなど、自身の健康
ができた」というコードがあり、加齢に伴い身体が少
を管理している。
しずつ衰えていったり、身体に痛いところが増えて
〈生きがいを感じることができること〉では、精神的
いったりし、昔にできていたことができなくなること
な部分の健康について述べている。高齢者は、不安感
に対して、歯がゆさを感じていることが分かった。
や孤独感を抱きやすいという心理的特徴がある。また、
〈日常生活に変化がなく、楽しみがない〉では、「月
後期高齢者の半数近くがストレスがあると感じており
に 1 回役場・農協・郵便局に行く以外どこも行くこと
7)
、またストレスと精神的な健康の間に何らかの影響
- 73 -
農山村地域で暮らす後期高齢者の健康観
がある 8)とされている。このような状況の中でもやる
できる人がいることが精神的な健康に繋がっていると
気を持って前向きに生活を送ることができるというこ
考えられる。高齢者の老化の受容には、機能低下を受
とが、高齢の精神的健康を表す重要な要素であると思
け入れる側面とは別に、前向きに対処する側面もある
われる。
ことが考えられる。
〈食欲があり、ご飯がおいしいと思えること〉〈表情
また、
「日常生活における活動範囲がほぼ屋内に限ら
が穏やかで朗らかであること〉は、身体の具合が悪く
れている状態」を高齢者の閉じこもりとされており、
なったり、悩み事があったりすると、食欲がなくなっ
外出頻度の減少が閉じこもりにつながる 11)ことから、
たり、ご飯がおいしく感じられなかったり、また表情
農作業をしに畑に出たり、隣人の家を訪ねたりするこ
が暗くなってしまったりすると考えられる。このこと
とは閉じこもりの予防に繋がるといえる。これらを楽
から食への意欲や表情の穏やかさなど 2 つのサブカテ
しみとして継続していけることが重要である。
ゴリーは、身体的・精神的な健康を表す指標のような
ものであると考える。
3)看護支援への示唆
高齢になるに従って、筋力や持久力などの運動機能
本研究では、農山村地域の A 市 B 町に暮らす高齢者
が低下し、活動にも制限が生まれる。また、脳血管疾
5 名を対象に、彼らにとっての加齢の受容と健康観に
患や骨折などにより寝たきりになる高齢者も多いこと
ついて考察した。対象者は、身体機能の変化に合わせ
から、自分のしたいことができるということは高齢者
た暮らし方を工夫していた。加齢による活動制限が進
にとって重要なことである。また、記憶障害や徘徊な
む今後も、他者との交流を継続するためには、自宅近
どを伴う認知症は高齢者にとって注目すべき問題であ
くの公民館や集会所のミニデイサービス、住民による
る。このような状態を対象者は、自分の行動と意思と
サロン活動などの場を活用できることが必要である。
が伴わずコントロールできない状態と捉えていた。そ
地域交流の場に、保健師や看護師が加わることで参加
して、健康とは〈体と心が自分の意思でコントロール
者の健康状態を確認し、また対象者のセルフケアを促
できること〉としている。対象者は、加齢に伴い体・心・
す支援体制が可能になると思われる。このような場へ
認知機能が衰えていくのを感じながら、それらを維持
の看護職の関与の可能性を具体化することによって、
したいという希望を持っており、身体的・精神的な健
予防を目的とした地域の高齢者支援につながることが
康に加え、認知機能の維持を健康の一要因として捉え
示唆された。
ていたと考えられる。
4)研究の限界と今後の課題
2)加齢変化の受容
本研究は対象者が 5 名と少なく、すべての対象者が
対象者は、農作業や家事をする中で、今までできて
要介護者ではなく、自立した生活を送っている。また、
きたことが少しずつできなくなっていき、筋力・持久
5 名とも家族と同居し、近隣に住んでいた。高齢者の
力などの運動機能の低下を実感していた。しかし、そ
健康観は、それぞれが置かれている状況や環境によっ
れらの変化を受け入れ、これまでの経験をもとに、無
て左右されると考えられるため、本研究の結果には偏
理をしないように調整したり、少しでも今の機能を維
りがあると考える。今後は、様々な状況・環境にある
持しようとウォーキングや体操を行うなど積極的な対
高齢者を対象とし、サンプル数を増やした調査が必要
処行動を行ったりしていた。多くの高齢者は、自分の
である。
体の調子に合わせてうまく付き合いながら生活してい
ると思われる。
Ⅵ.おわりに
一方で、農作業や近所のお年寄りと話すことを日課
本研究では、農山村高齢地域で暮らす後期高齢者の
とし、そこに楽しみを見出している。内閣府が行う老
健康観について、A 市 B 町在住の後期高齢者5名を対
年期を対象とした国際比較調査によると、
「日常生活の
象にインタビュー調査を行った。
中で生きがいを感じることとして、友人や知人との食
高齢者の生活を支えるためには、高齢者が持つそれ
9)
事や雑談をすることは生きがいへとつながっている」
ぞれの健康観を理解し、それに応じた支援を考え、現
としており、森山らは「親しい仲間の存在からエネル
在の生活を継続するための身体機能の維持を支援し、
ギーをもらい精神的な健康状態を保っている」
10)
と述
精神的健康・認知機能の維持には、他者との関わりが
べている。対象の高齢者も同じように、近所に親しく
重要であり、積極的に身近な他者と関われる環境を作
- 74 -
小 畑 友 季 他
ることが必要と考える。
■謝辞
本研究を進めるにあたり、調査を快諾してご協力く
ださった 5 名の対象者の方々に心から感謝致します。
Ⅹ)文献
1)
厚生統計協会編集 2011/2012 国民衛生の動向 58(9) 厚生統計協会 P.236 2011
2)
内閣府:平成 25 年版高齢社会白書概要版 (HTML
版 ) http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2013/
gaiyou/index.html
3)
山下匡将,宮本雅央,村山くみ,他 ,(2007):主
観的健康感と社会とのかかわりに関する研究,北海
道医療大学看護福祉学部学会誌,3:29-34
4)
志水幸,小関久恵,嘉村藍,他,
(2005)
:島嶼地
域高齢者の主観的健康感に規定要因に関する研究,
北海道医療大学看護福祉学部紀要,12:31-35
5)
松浦智和,西基,三宅浩次,他,
(2006)
:島嶼地
域高齢者の主観的健康感とその関連要因,北海道医
療大学看護福祉学部学会誌,2:45-53
6)
南 丹 市 ホ ー ム ペ ー ジ http://www.city.nantan.
kyoto.jp/
7)
厚生労働省:平成22年国民生活基礎調査の概況,
2011.7.12,http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/
hw/k-tyosa/k-tyosa10/3-3.html
8)
志水幸,早川明,山下匡将,他,
(2009)
:島嶼地
域高齢者の精神的健康の関連要因に関する研究,北
海道医療大学看護福祉学部紀要,16:15-23
9)
内閣府:第7回高齢者の生活と意識に関する国際
比較調査結果,
http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h22/kiso/
zentai/pdf/2-7.pdf
10)森山悦子、出村佳子(2013)
:地域に生活する後期
高齢者の健康への関心,日本看護学会論文集 老年
看護,43:106-109
11)渋井 優,村山 洋史,河島 貴子,他,
(2011)
:
都市部高齢者における閉じこもり予備群の類型化-
介護予防対策の具体化に向けて-,日本公衆衛生誌,
58:935-945
- 75 -
藤 原 彩 他
京府医大看護紀要,24:77-84,2014
がん患者の倦怠感に対するアロマテラピーの有効性に関する文献検討
藤原 彩1)、山中龍也2)
1)京都府立医科大学医学部看護学科
2)京都府立医科大学医学部保健看護学研究科医学講座
A Review of the Efficacy of Aromatherapy
for Fatigue in Cancer Patients
Aya Fujiwara1) , Ryuya Yamanaka2)
1) School of Nursing,Kyoto Prefecutural University of Medicine
2) Department of Medical Science, Graduate School of Nursing for
Health Care Science, Kyoto Prefectural University of Medicine
要約
終末期がん患者では身体的症状に加え、死を間近に感じる恐怖・不安・孤独感から影響される倦怠感が現れている。また、
術後や放射線療法中のがん患者は、がんに伴う身体的症状に加え、治療や処置による倦怠感が伴ってくる。このため、倦
怠感の緩和には、身体的な因子だけでなく、精神的な因子に対してアプローチの必要があると考えられる。今回、アロマ
テラピーを用いたケアの文献検討から、Cancer Fatigue Scale(CFS) を用いた検討では身体的倦怠感の有意な軽減が認められ
たが、精神的倦怠感に対しては有意な軽減はみられなかった。しかし、エッセンシャルオイルの香りによって気分がよくなっ
たり、元気づけられたりというリフレッシュ効果や爽快感が得られたり、家の香りを思い出すなどリラクセーション効果
なども得られることで、精神面に対してプラスの効果が認められた。また、患者の言動から精神的な効果が示唆された。以
上からがん患者の倦怠感に対してアロマテラピーの有効性が示唆された
キーワード:アロマテラピー、がん患者、倦怠感
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.研究方法
倦怠感とは、エネルギーが減退したと感じる主観的
方法は、文献を対象とした文献研究である。研究対象
な感覚であり、身体・心理的側面を含むものであると
論文の検索には医学中央雑誌 Web 版を使用した。
【アロ
1)
定義されている 。がん患者の倦怠感は、がんに罹患
マ】
【がん患者】
【倦怠感】をキーワードに、原著論文を
して比較的早期に出現し、進行期から終末期の状態で
対象として検索した。その結果、15 件の文献が選択され、
は 50 % 以 上 の 患 者 に 高 頻 度 に 認 め ら れ
2,3)
、患者の
がん患者の倦怠感におけるアロマテラピーの有効性を指
QOL を著しく阻害する症状であることが報告されてい
標を用いて検討している 9 文献を選定し研究対象とした。
4)
る 。がん患者の倦怠感は身体的・精神的要因が絡み
合った多次元性の症状であると考えられており、要因
Ⅲ.結果
の同定が困難であったり,同定できたとしても解消す
文献の出現推移は、2002 年 2 件,2003 年 1 件,2004
ることが困難な場合が多い。
年 1 件,2005 年 1 件,2006 年 2 件,2007 年 1 件,2008
本研究では、補完・代替医療の1つとして盛んに行
年 1 件であった。研究論文で調査されている対象者(が
われ注目を集めているアロマテラピーに着目し、がん
ん患者)は 40 歳代~ 70 歳代の男性 52 名 (40.4%)、女性
に罹患したことによる倦怠感に対してアロマテラピー
77 名 (59.6%)、計 129 名である。がんの原発部位は肺 31
を用いた結果、患者の身体的・精神的倦怠感にもたら
名 (24%)、 乳 房 14 名 (11%)、 大 腸 13 名 (10%)、 食 道 11
す効果を文献的に考察した。
名 (9%)、胃 10 名 (8%) 等である。終末期患者を対象とし
ている文献は 5 件で、その他は放射線療法中のがん患者
- 77 -
がん患者の倦怠感に対するアロマテラピーの有効性に関する文献検討
1 件、手術後のがん患者 1 件、不明が 2 件であった。
感で有意な改善がみられ (p<0.001)、アロマテラピーケ
がん患者の倦怠感のアセスメントに用いられる尺度
アが、倦怠感改善に有用な看護援助である可能性が示
として、表1の文献で主に用いられているのが、奥山
唆された。しかし、精神的倦怠感は、統計学的な有意
に よ っ て 開 発 さ れ た、Cancer Fatigue Scale(CFS)
差は認められなかった。ケアに関する感想では、対象
である。身体的・精神的・認知的という3つの下位尺
者全員が「気持ち良い」と答えており、再施行希望率
度から、15 項目、5段階の自記式質問票で構成されて
は 100%であった。
いる。身体的倦怠感(「疲れやすい」「身体がだるい」
また、宮内ら 9) は、同一症例に対して、1日目はタッ
などの倦怠感の身体的知覚)は最高 28 点、精神的倦怠
チやカウンセリングを行わずに仰臥位での会話のみの
感(
「物事の興味」
「活気」などの精神的活動の低下)
コントロール群(以下対象群)
、2日目はラベンダーを
は最高 16 点、認知的倦怠感(
「不注意」「忘れやすい」
使用した「精油+足浴とマッサージ」を行ったアロマテ
など注意、集中力の低下)は最高 16 点、これら3つの
ラピー群(以下アロマ群)とおき、介入前とケア4時間
ら
5)
下位尺度の合計が総合的倦怠感で、得点が高いほど強
図1
後にCFSを用いてその効果を評価した。アロマ群で
がんの原発部位
い倦怠感を示す。
は、総合的倦怠感と身体的倦怠感の得点が、対象群と比
6)
他に用いられている倦怠感尺度として、Piper に
より開発された Piper Fatigue Scale(PFS) の神里 7) の日
その他
24%
本語版 PFS がある。全項目数は 22 項目で、以下4つ
の下位尺度から構成されている。①行動面 / 強度、②
肺
24%
情緒面、③知覚面、④認知面 / 気分、各段階は 10 段階
評価で、軽度 (1 ~ 3)、中等度 (4 ~ 6)、重度 (7 ~ 10)
と評価する。22 項目の総得点が高いほど倦怠感が強い。
肝
4%
子宮
5%
1)終末期がん患者の倦怠感に対するアロマテラピー
ラベンダーを使用した「精油+足浴とマッサージ」
乳房
11%
膵
5%
により倦怠感緩和を調査した宮内ら 8) は、CFS をアロ
マテラピー施行前、施行1時間後、4時間後に測定し
胃
8%
評価した。ケア前とケア1時間後、ケア前とケア4時
間後の間で総合的倦怠感、身体的倦怠感、認知的倦怠
表1
食道
9%
図 1 がんの原発部位
がん患者の倦怠感に対するアロマテラピ―の有効性に関する文献一覧
表 1 対象文献の概要
著者
文献名
発表年
宮内ら 7)
終末期がん患者の倦怠感に対するアロマテラピーの有効性の検討
-足浴とリフレクソロジーを実施して-
2002
成田 11)
清潔ケアによる緩和ケア
-アロマテラピーとマッサージを併用して-
2002
宮内ら 8)
終末期がん患者の倦怠感に対するアロマテラピーの有効性の検討
-ラベンダーを使用した足浴とリフレクソロジーを実施して-
2003
酒井ら 15)
がん患者の倦怠感に対するアロマバスの有効性の検討
2004
杉原ら 13)
精油による手浴と前腕マッサージが倦怠感とバイタルサインに及ぼす影響
-健常者とがん患者を対象にして-
2005
八木橋ら 14) 放射線療法を受けるがん患者の倦怠感に対するアロママッサージの効果
2006
原田ら 10)
13
終末期女性癌患者の倦怠感に対するアロマテラピーハンドマッサージの効果
2006
宮内ら 9)
終末期がん患者の倦怠感に対するアロマテラピーを使用した足浴の効果
2007
室伏ら 12)
がん患者の倦怠感緩和を目的としたアロママッサージの効果
2008
- 78 -
大腸
10%
藤 原 彩 他
較して有意に低下していた (p<0.001)。この結果、アロ
ンを使用した「精油+清潔ケアとマッサージ」を実施
マテラピーが倦怠感の軽減に有効な援助であることが
し、心身への影響を調査した。そして、独自の観察項
示唆された。しかし、精神的倦怠感と認知的倦怠感は両
目によって主観的・客観的な評価を行った。対象患者
群の間に、統計学的な有意差は認められなかった。
の反応は、アロマの香りを楽しんでいる言葉が聞かれ
また、宮内ら
10)
は、アロマテラピーケアとしてスイー
たり、マッサージをされながら入眠してしまうことも
ト・オレンジを用いた足浴を実施(「精油+足浴」)し、
あり、心身のリラクゼーションが図れていることが観
アロマテラピー単独の効果に焦点をあてて再評価をし
察できた。麻薬の副作用により、いつも傾眠しがちで
ている。対象者を 1 日目に足浴(対象群)、3 日目にエッ
疲れやすい患者であったが、アロマの効果によりでリ
センシャルオイルを加えた足浴(アロマ群)を行うグ
フレッシュすることができ、起きている時は意識を
ループ 1 と、順序を入れ替えたグループ 2 に振り分け
はっきりとさせ、床につくと気分良く入眠する様子が
実施した。両群とも足浴前と足浴4時間後にCFSを
うかがえ、QOLを高めることにつながった。患者の
測定し、また3日目には足浴快適性についての聞き取
清潔ケア時にアロマテラピーとマッサージを用いたこ
り調査を実施した。この結果、認知的倦怠感と精神的
とは、清潔ケアのもたらす緩和効果とアロマテラピー
倦怠感については対象群とアロマ群で足浴前に比べ足
のリラクゼーション効果により、より一層の爽快感・
浴後にCFS得点の低下はみられたが、有意差は認め
幸福感をもたらすことができ、全身の倦怠感や疲労感
られなかった。総合的倦怠感と身体的倦怠感では、対
の緩和を図ることができた。対象患者からは「とって
象群、アロマ群のどちらにおいても足浴前後で有意な
も気持ちいい」「毎日やってくれるなんて幸せ」「座っ
改善がみられた (p<0.01)。しかし、総合的倦怠感と身
て起きている時は目が覚めてるし、横になるとスッと
体的倦怠感低下の値は両群間の比較では有意差が認め
眠れる」「頭がすっきりする」「目がパッとする」など
られず、アロマテラピーを使用したことの効果は確認
の言葉が聞かれた。
できなかった。快適性の調査ではエッセンシャルオイ
室伏ら 13) は、ラベンダーを使用した「精油+マッサー
ルの香りについて 97%の人が好意的な解答を示し、足
ジ」を実施し、その前後にCFSを用いて倦怠感への
浴継続の希望についてもアロマテラピー希望が 85%、
有効性を明らかにしている。マッサージの前後で総合
足浴のみが 3%、希望なしが 12%であった。CFSに
的倦怠感は、有意に低下した (p<0.01)。各下位尺度では、
よる評価では足浴に比べアロマテラピーを使用した足
精神的倦怠感には有意差は認められなかったが、身体
浴が有効であるとはいえなかったが、快適性の調査か
的倦怠感と認知的倦怠感は有意差を認めた (p<0.05)。
らは、アロマテラピーを使用した足浴が満足度の高い
よって、アロママッサージが倦怠感緩和に有効なケア
ケアであることが示唆された。
であることが示唆された。一日中ベッド上生活で、夜
原田ら 11) はラベンダー、マンダリンを用いた「精油
間不眠を訴える患者がアロママッサージを受けること
+ハンドマッサージ」による倦怠感への効果をアロマ
で入眠が促されたり、倦怠感の軽減により洗面所まで
マッサージ実施前後にCFSを測定し検討した。マッ
歩くといったADLの改善がみられた。また、ラベン
サ ー ジ の 前 後 で 総 合 的 倦 怠 感 は、 有 意 に 低 下 し た
ダーの香りから草原の場所をイメージしたり、自宅の
(p<0.003)。下位尺度では、精神的倦怠感には有意差は
花壇を思い出したりして一時的ではあるが、苦痛や不
認められなかったが、身体的倦怠感 (p<0.001) と認知的
安を忘れる効果が期待できることが明らかとなった。
倦怠感 (p<0.018) は有意差を認めた。このことから、ア
「香りが気持ちいい」
「香りだけでもリラックスできる」
ロマテラピーハンドマッサージは、倦怠感の軽減に有
「部屋にいるのに外にいるみたい」「北海道にいるみた
効であることが示唆された。いつも会話が乏しく抑う
い」「いつもよりよく話すようになった気がする」「気
つ状態と思われる患者が、マッサージ中に柔和な表情
持ちがよかった、よく眠れた」「またやってもらえたら
となり、今までの人生や家族・病気のことなどを自ら
うれしい、楽しみにしている」などの言葉が聞かれた。
語る様子もみられたり、マッサージ施行後の感想では
杉原ら 14) は、グレープフルーツを使用した「精油+
「気持ちよかった」
「元気が出た」
「香りが良くすっきり
手浴とマッサージ」による、倦怠感緩和への有効性を
した」
「手を握ってもらったら安心する」「定期的にし
明らかにした。隔日 3 回手浴とマッサージに精油を用
てほしい」
「化学療法中ずっと続いていたしびれ感が軽
いて行った。調査はバイタルサイン(脈、呼吸数、
体温、
減した」などの言葉が聞かれた。
血圧)と自記式質問紙(PFS)を介入前と介入後に実
また成田
12)
は、1 人の終末期がん患者を対象にレモ
施した。バイタルサインでは、体温は介入後に有意に
- 79 -
がん患者の倦怠感に対するアロマテラピーの有効性に関する文献検討
上昇したが、それ以外の項目では有意差が認められな
倦怠感は、有意差は認められなかった。また、患者か
かった。PFSの介入前後の平均値は、介入前 119、
ら「痛みがとれてよく眠れた」「体が楽になった」「リ
介入後 124 であった。介入前後で倦怠感の客観的指標
ラックスでき、気持ちよかった」などの声が聞かれた。
への影響はみられなかったが、言動のなかに「気持ち
術後がん患者の倦怠感に対してアロマバスを行った結
がいい」といった発言が聞かれるなど反応が良いこと
果、身体的倦怠感と認知的倦怠感を有意に低下させ
が明らかとなった。
(p<0.01)、軽減率が高かったことから、倦怠感の軽減に
有効であることが示唆された。
2)放射線療法を受けるがん患者の倦怠感に対するア
ロマテラピー
Ⅳ.考察
八木橋ら 15) は、がん患者の倦怠感は、臨床経過の全
「身の置き所のないだるさ」と表現される倦怠感は、
過程に出現し、化学療法・放射線療法中はより出現頻
進行がん患者のQOLを著しく損なう原因であり、希
度が高く、治療終了後3週間から長期間に及び持続し、
死念慮の大きな原因となっている。その頻度は進行が
第4週をピークに徐々に減少するが、化学療法を受け
ん患者の 70 ~ 100%と高く、終末期になるほど頻度が
る患者よりも持久力が低下する耐え難い症状であり、
高くなり、最終末にはほぼ 100%の患者に認められる
QOLを損なう重大な要因の1つであると述べてい
特徴的な症状である。倦怠感は主観的な感覚という側
る。そこで、ラベンダー、ローズマリー、スイート・
面と、身体的および心理社会的要因からなる多元的側
オレンジから好みのものを用いた「精油+マッサージ」
面の両側面をもった症候として理解されており、進行
により、放射線療法中のがん患者の倦怠感を緩和させ
がん患者の倦怠感の主な要因について表3に示す 17)。
るかどうかをケア前後に CFS を用いて評価している。
アロマテラピーは、植物の香りやさまざまな働きの力
放射線療法中のがん患者の倦怠感に対してアロママッ
をかりて、心や身体のトラブルを穏やかに回復し、健
サージを施行した結果、ケア前後で精神的倦怠感と認
康増進や美容に役立てていこうとする自然療法と定義
知的倦怠感には有意差が認められなかったが、身体的
されており、リラクセーションやストレスケアの他、
倦怠感が有意に低下しており (p<0.05)、その結果包括
美容や健康維持、疲労回復に役立てることが可能で、
的に総合的倦怠感の軽減につながったため (p<0.05)、
入浴やトリートメント、セルフスキンケアなど、アロ
アロママッサージが倦怠感の緩和に有効なケアである
マテラピーを上手に生活に取り入れていくことは、心
ことが示唆された。また、患者から「家の香りを思い
と身体のバランスを取り戻すときの、大きな助けとな
出す」などの声が聞かれ、家族のことや治療に関する
るとされている 18)。
思いなど自ら語りだす様子がうかがえた。
がん患者の倦怠感緩和に対するアロマテラピーの有
効性についての文献検討を行った結果、終末期がん患
3)術後のがん患者の倦怠感に対するアロマテラピー
酒井ら
16)
者・放射線療法中のがん患者・術後のがん患者の全て
は、がんの手術後入浴許可された患者を対
の場合において、ケア前後で認知的倦怠感は有意に低
象に、ラベンダー、クラリセージを使用した「精油+
下する場合と不変の場合があり、精神的倦怠感は有意
入浴(アロマバス)」による倦怠感緩和の効果を入浴前
差が認められなかったが、身体的倦怠感が有意に低下
後にCFSを用いて検討した。身体的倦怠感と認知的
しており、その結果包括的に総合的倦怠感の軽減につ
倦怠感は入浴前後で有意差を認めた (p<0.01)。精神的
ながっていた。アロマテラピーケアが倦怠感の緩和に
表2
C F S を 用表2 CFSを用いたアロマケア前後の倦怠感の評価
いたアロマケア前後の倦怠感の評価
宮内ら
ケアの時期
7)
原田ら
10)
室伏ら
12)
八木橋ら
14)
酒井ら
15)
総合的倦怠感
末期がん
p<0.001
末期がん
p<0.003
末期がん
p<0.01
放射線療法中
p<0.05
術後
N.D.
身体的倦怠感
p<0.001
p<0.001
p<0.05
p<0.05
p<0.01
認知的倦怠感
p<0.001
p<0.018
p<0.05
N.S.
p<0.01
精神的倦怠感
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
CFS: Cancer Fatigue Scale, N.D.: not determined, N.S.: not significant
- 80 -
藤 原 彩 他
有効なケアであることが示唆された。
効果があると考えられている 18,21)。精油ごとの主な作
今回用いた文献は、アロマテラピー(精油)を単独
用(薬理作用など)については表4に示す 22,23)。
で用いるのではなく、マッサージや足浴などと併用し
がん患者の倦怠感に対するアロマテラピーケアを行う
て行われていた。そこから、まずはアロマテラピーが
文献で、アロマテラピー単独でなく、リラクゼーショ
身体に対して直接的に影響を与える機序について考察
ンをもたらすケア(足浴、マッサージなど)を併用し
してみる。
て行われている理由としては、対象者ががん患者であ
アロマテラピーで用いられる精油には、特に倦怠感
るということが考えられる。がん患者の倦怠感を引き
緩和に関係してくる自律神経系への作用がある。精油
起こす因子は(表3)、浮腫など9つの身体的要因、不
の刺激は、鼻腔上皮嗅細胞から嗅神経を経由し、大脳
安・抑うつなどの心理社会的要因、放射線療法などの
辺緑系で古い記憶や本能行動と結びつき、さらに視床
治療的要因があり、それらが相互に影響し合いながら
下部へと伝わる。視床下部は、自律神経活動を司って
倦怠感をもたらしている。がん患者の倦怠感はこのよ
おり、芳香の刺激により鎮静作用をもたらす物質が放
うに身体・心理社会・治療的要因があることから、ア
出されることによって、交感神経の抑制や副交感神経
ロマテラピーに加えて、足浴やマッサージを併用し、
の促進効果をもたらすと考えられている
19,20)
。たとえ
相加相乗的に各々がもつ生理作用が強められる効果が
ばラベンダーでは精油の分子が中枢神経系内、特に自
あると考えられる。
律神経中枢に直接作用して、交感神経系を抑制するこ
具体的な作用機序として、身体的倦怠感の低下は、
とで身体的なリラックス状態を引き起こし、また吸入
前に述べた精油の効果に加えて、マッサージや足浴に
によって精神・心理的にリラックスした気分になり、
よる温熱刺激や循環促進効果が直接的に身体に作用
この効果によって二次的に自律神経系に影響を与え、
し、倦怠感を改善したと考えられる。また、アロマバ
身体的なリラックス効果が出現する、あるいは両方の
スを用いた検討では、アロマバスの温熱効果や静水圧
表4
が ん 患 者 の 表3 がん患者の倦怠感を引き起こす因子
倦怠感を引き起こす因子
1.身体的要因
1)身体障害
消 化 管 閉 塞 、出 血 、肝 障 害 、飢 餓 な ど の 病 態 に 起 因 し 、以 下 の よ う な
症状・所見を伴うが、治療により回復の可能性がある。
・貧血
・ 肝 障 害 ( 黄 疸 )、 腎 障 害
・低タンパク血症
・浮腫
・低ナトリウム血症
・栄養不良
・高カルシウム血症
・その他
2)がん悪液質
上記 と同様 の所 見であ るが 、炎症性 サ イトカイ ン が関与し 、 治療に
抵抗性である。
2.不安、うつなどの心理社会的要因
3.治療的要因
手術療法、化学療法、放射線療法など
- 81 -
がん患者の倦怠感に対するアロマテラピーの有効性に関する文献検討
表3
精油の主な作用
表4 精油の主な作用
精油
作用
中枢神経のバランスをとる働きがあり、ストレスからくる緊張をほぐし、怒りを和らげて疲労回復させる。
ラベンダー
鎮静作用、鎮痛作用、肉芽形成促進作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、降圧作用、通経作用
リフレッシュ効果が高い。頭をスッキリさせて、集中力や記憶力を高めたいときに有効。
レモン
末梢血管拡張作用、降圧作用、血糖降下作用、消化促進作用、肝・腎機能促進作用、強壮作用
神経の緊張をやわらげて感情の高まりを静める。
クラリセ-ジ
鎮静作用、抗痙攣作用、抗鬱作用、抗アレルギー作用、抗瘙痒作用、降圧作用
リフレッシュ効果があり、落ち込んだ心を元気にして頭痛の疲れを軽減する。
グレープフルーツ
リンパ浮腫改善作用、抗鬱作用、空気中抗菌作用、消化促進作用、利尿作用
脳細胞に働き掛けて、記憶力を増進させる役割がある。眠気を覚ます。
ローズマリー
肝・胆汁排泄促進作用、神経促進作用、筋肉賦活作用、血管循環促進作用
落ち込んだ気分を明るくして、不安や緊張をほぐす。不眠にも効果がある。
オレンジ・スイート
消化促進作用、精神安定作用、空気中殺菌作用、強壮作用、肝細胞再生作用、腎機能促進作用
鎮静力に優れ、ストレス緩和や緊張を緩和させる働きがある。
マンダリン
抗菌作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用、強壮作用、鎮静作用、組織再生作用
効果によって血液循環が改善し、筋肉や関節緊張が和
の香りから草原の場所や家の花壇をイメージしたりし
らいだことでリラックス効果が高まったことが関与し
て、一時的ではあるが幸福感を得られ、苦痛や不安を
16)
ていると考えられている 。認知的倦怠感の低下はマッ
忘れる効果が期待できた。また、がん治療中の患者で
サージやエッセンシャルオイルの効果によって、
「頭が
は、家族のことや治療に関する思いなど自ら語りだす
すっきりする」等の言葉が聞かれることから、すっき
様子が伺えたことから、闘病生活に向けて前向きに進
りした気分になり集中力が増し、いわゆる頭のだるさ
んでいけるような効果が認められた。他にもタッチに
が改善したと考えられる。精神的倦怠感の軽減が認め
よるコミュニケーションを通じて、患者に付き添うこ
られなかった原因として、終末期がん患者の場合、病
とで、
「手を握ってもらっただけで安心する」などの言
名告知や身体症状の増悪に伴い、抑うつ状態にあるこ
葉が聞かれることから不安・恐怖・孤独などの状態を
とが多く、この蓄積された精神的苦痛による潜在的な
癒すことも期待できた。これらの事から、心理的・精
抑うつ状態が、精神的倦怠感を低下させなかった原因
神的にも効果が得られることが期待され、がん患者の
と考えられる。放射線療法中のがん患者の場合、放射
精神的倦怠感を緩和させるためには、数回のケアで終
線療法中は粘膜障害から嗅上皮の感受性が低下しやす
わらせるのではなく、繰り返しアプローチすることで、
く、経鼻からの効果が得られにくいのが原因の一つと
潜在的な抑うつ状態を軽減していく必要があると考え
15)
考えられている
。術後のがん患者の場合は、治療や
られる。
処置などによって生じる身体的な要因に、病名告知や
身体症状の増悪に伴う抑うつや不安などが加わり、こ
Ⅴ.結論
ういった感情の揺れが視床下部を通して、自律神経や
・アロマテラピーにより終末期、術後、放射線療法中
ホルモンの調節により身体への反応を変化させると考
のがん患者の倦怠感は「身体的倦怠感」を有意に低
えられている
16)
。このように、精神的倦怠感緩和への
下させ、包括的に「総合的倦怠感」を低下させてい
アロマテラピーケアの有効性は CFS の結果からは認め
ることから、アロマを用いたケアががん患者の倦怠
られなかったが、患者の言動からは、
「元気がでた」「幸
感緩和に効果があることが示唆された。
16
せ」という言葉が聞かれたり、エッセンシャルオイル
・がん患者の「精神的倦怠感」と「認知的倦怠感」に
- 82 -
藤 原 彩 他
ついては、様々な要因からなるものであり、潜在的
ロマテラピーとマッサージを併用して , クリニカル
な抑うつ状態にあることが考えられるため、複数回
スタディ 23(11):966-972.
13)室伏利圭子 , 佐藤正美 , 長瀬雅子 , 他 (2008):がん
の繰り返しアプローチが必要と考えられる。
患者の倦怠感緩和を目的としたアロママッサージの
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セラピー:134-145, 大阪:メディカ出版 .
患者の倦怠感に対するアロマテラピーの有効性の検
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23)佐々木薫 (1998):精油50, はじめてのアロマテラ
ピー:77-101, 東京:池田書店 .
ルケア 12(6):526-530.
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者の倦怠感に対するアロマテラピーの有効性の検討
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期がん患者の倦怠感に対するアロマテラピーを使用
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期女性癌患者の倦怠感に対するアロマテラピーハン
ドマッサージの効果 , 日本看護学会論文集 37:95-97.
12)成田はるみ (2002):清潔ケアによる緩和ケア―ア
- 83 -
滝 下 幸 栄 他
京府医大看護紀要,24:85-94,2014
看護基礎教育における多重課題対応シミュレーション教育の効果
滝下幸栄1)、岩脇陽子1)、 山本容子1)、室田昌子1)、
平松美奈子2)、原田清美1)
1)京都府立医科大学医学部看護学科
2)京都府立医科大学附属病院
A Nursing University Evaluation of Multi-tasking Simulation for The third-year student
Yukie Takishita1)、Yoko Iwawaki1)、Yoko Yamamoto1)、Masako Murota1)、
Minako Hiramatsu2)、Kiyomi Harada1)
1 School of Nursing,Kyoto Prefecutural University of Medicine
2 University Hospital, Kyoto Prefectural University of Medicine
要約
看護基礎教育において、看護をマネジメントできる能力を養うことは重要である。今回、複数患者受け持ち時の多重課
題に対応する実践能力を育成することを目的に看護学士課程3年生を対象とし、病院看護管理者とともにシミュレーショ
ン教育を行った。その教育効果について質問紙による調査を行った結果、以下のことが明らかとなった。
1.学習目標の到達度:到達度が高い順に、チームメンバーとの協力及び報告・連絡・相談の重要性、患者の安全を守る
上での多重課題への適切な対応の重要性、多重課題・時間切迫の具体的な理解、1日の業務の組立てと管理の重要性であっ
た。
2.学習内容:多重課題・時間切迫時の冷静な対応の重要性や適切な判断力の必要性、優先順位判断の重要性等の看護職
者の能力についての言及が見られた。また、優先順位判断の具体的な指針や緊急時の対応の原則、リスクマネジメントの
適用視点、応援要請の重要性とその行動の正当性に関する記述も多く見られた。一方で、多重課題への対応が臨床現場に
おいて日常的である実感や不安に関する記述があった。
3.学習効果と感想:本授業は効果的であり、将来に役に立つ内容であるとすべての学生が評価していた。また9割以上
の学生が演習や講義から新しい知識を得ることができ、その内容に興味を持ったとしていた。具体的な感想では、すべて
の学生がタイムマネジメントや多重課題対応に関する学習の必要性を認識していた。一方で、多重課題に対応できるか不
安になった、今後の実践への自信にはつながらなかったとの記述も見られた。
以上から、シミュレーション技法を用いた多重課題対応の教育は有効であること、学生は、教育内容に興味を持ち、課
題に対応する原則について学んでいた。一方で、自己の力量に対する不安やイメージがわかないとする意見もあり、今後
の臨床実習や継続教育における継続的な教育の必要性が示唆された。
キーワード:看護基礎教育、看護実践能力、多重課題、シミュレーション、看護の統合と実践
1.はじめに
中でも患者を複数受持ち、多重課題状況において適切
看護をとりまく環境が大きく変化する中、看護職者
に看護を実践できるマネジメント能力の育成が重要視
が備えるべき看護実践能力の在り方が問われている。
されている。
平成 21 年には、保健師助産師看護師学校養成所指定規
多重課題対応に関する教育は、新人看護職員研修の
則の一部改正が行われ、新カリキュラムが発動したこ
努力義務化に伴い、継続教育の場において積極的に取
とは記憶に新しいところである。この改正では、看護
り組まれてきた 1)2)。そして、効果的なシミュレーショ
基礎教育と臨床実践のギャップを是正すべく、
「統合分
ン教育方法やフィードバック方法についての研究成果
野」が設けられ、
「看護の統合と実践」という新しい科
が蓄積されつつある 3)4)。一方、看護基礎教育におい
目が設定された。この科目で取り扱う内容は、チーム
ては、継続教育での成果を受けて、患者を複数受け持
医療の理解や災害看護、国際看護など多岐にわたるが、
つ実習の導入や多重課題演習の展開などが行われてい
- 85 -
看護基礎教育における多重課題対応シミュレーション教育の効果
るが 5)6)7)、カリキュラム改正から、まだ日が浅いこ
3.看護マネジメント論の概要と多重課題対応
とから、それらの成果の蓄積は十分とはいえない。特
シミュレーション演習の内容
に、多重課題への対応は、優先順位判断や業務の組立
1)看護マネジメント論の概要
て等、高度な看護実践が要求されることから、看護基
多重課題対応シミュレーション演習は、3年生配当
礎教育の段階で、何をどこまで教えるのか、あるいは
の専門科目である看護マネジメント論の中で行った。
どのように教えるのか、どのような教材が適切かと
資料1に看護マネジメント論の学習指導計画を示し
いった検討が十分になされていない。この点を踏まえ、
た。本科目は、平成 21 年度からのカリキュラム改正を
今回、学士課程の看護学生に対する多重課題対応シ
受けて、新設された教科目である。新しいカリキュラ
ミュレーション演習を行ったので、その教育効果と指
ムでは、看護基礎教育と医療・保健の実践現場との
導上の課題について検討する。
ギャップが指摘されたことを受け、臨床に近い形での
学習を行うことや知識と技術を統合させる「統合分野」
2.方法
が新たに設けられることになり、
「在宅看護論」と「看
1)研究対象者と研究時期
護の統合と実践」を教育内容とした科目が位置づけら
研究対象者は、看護学士課程3年生 78 名である。研
れたことは周知の通りである。
究時期は、平成 24 年 4 月である。
中でも、
「看護の統合と実践」は、卒業後、臨床現場
2)調査方法と調査内容
にスムーズに適応できることを目的として設定され
3 年生配当科目「看護マネジメント論(15 時間、1
た。具体的な内容は、①チーム医療及び他職種との協
単位)の中のタイムマネジメント講義並びに多重課題
働の中で、看護師としてのメンバーシップ及びリー
対応シミュレーション演習終了後に、自己記入式の質
ダーシップを理解する内容、②看護をマネジメントで
問紙を配布し、その場で記入、回収した。調査項目は、
きる基礎的能力を養う内容、③医療安全の基礎的知識
学習目標の到達度7項目、タイムマネジメント講義の
を含む内容、④災害直後から支援できる看護の基礎的
効果5項目、多重課題対応シミュレーション演習の効
知識について理解する内容、⑤国際社会において広い
果5項目であり、それぞれ「とても~まったく」の 4
視野に基づき、看護師として諸外国との協力を考える
段階でたずねた。加えて、講義・演習全体の感想9項
内容、⑥看護技術の総合的な評価を行う内容の6点で
目を「そう思う~思わない」の 4 段階でたずねた。また、
ある。特に、上記②の看護をマネジメントできる基礎
講義・演習からの学習内容と自己課題について自由記
的能力は、学生の複数患者受け持ちや多重課題対応へ
述を求めた。多重課題対応シミュレーション演習時の
の能力不足及び自身をマネジメントする力の不足に対
デブリーフィング・グループワーク記録(多重課題対
して設定されたものである。看護マネジメント論は上
応場面における改善や検討を要する点とその理由、対
記の①、②、③の一部を担う科目として設定した。
応策)も合わせて調査した。
授業時間は 15 時間(1単位)であり、3年生前期に
3)分析方法
配当されている。講師は、大学教員のほかに病棟師長、
数値データは、基本統計量を算出した。記述データ
認定看護師であり、共同で教育プログラムを策定した。
は、一文が一つの意味を持つものとしてコーディング
教育目的は、看護の対象者への直接的な看護の質保証
し、意味の類似性をもとにカテゴリー化した。カテゴ
に結びつく看護管理・看護マネジメントの重要性を学
ライズの妥当性を高めるために、質的研究に精通した
ぶことと自己の職業生活を考えることができることに
研究者1名に点検と助言を受け信頼性・妥当性を確保
おいた。具体的な教育目標は、資料1の通りである。
した。
2)タイムマネジメント講義と多重課題対応シミュ
4)倫理的配慮
レーション演習の概要
口頭と文書で研究の概要と参加の自由、不参加の場
資料2にタイムマネジメントと多重課題対応シミュ
合でも不利益が生じないこと、成績には影響しないこ
レーション演習の授業案を示した。本単元の学習目標
と、匿名性の保持、得られたデータは教育評価と研究
として、①看護を行う上で1日の業務を組み立て、管
の目的以外には使用しないこと、研究結果の公表方法
理していくことの重要性を理解できる、②業務スケ
等について説明した。文書によって研究協力の同意を
ジュール管理をする上での重要な視点や優先順位を理
得た。
解できる、③業務を行う上で、チームメンバーとの協
力及び報告・連絡・相談が重要であることが理解でき
- 86 -
滝 下 幸 栄 他
資料1 看護マネジメント論 学習指導計画
資料 1 看護マネジメント論 学習指導計画
の学習内容と関連させれば学生の興味・関心を喚起できるものと考
1.設定条件
1)対象:看護学士課程 3 年生
える。看護管理・マネジメントは、
「見ようと思えばすぐに見える」
2)科目区分・単位数:
「看護学の統合と発展」区分の専門科目、
身近なものであるという印象を持たせる関わりが重要であろう。
1 単位(15 時間)
3)指導観
看護管理・看護マネジメントの概念的な内容で終始するのではな
く、卑近な例を用いて臨床のマネジメント事象を理解させたい。特
2.本科目の教育的考察
1)教材観
に学生に身につけてほしい、多重課題・複数患者対応の業務遂行マ
看護マネジメントに関する内容は元来、看護管理学の要素の一部
ネジメントに関しては、
「看護管理のスキル」として提示したい。
であり、カリキュラム改正以前から教育されてきた。今回、新たに
そのため、シミュレーション演習やグループワークを取り入れ、事
教科目化された背景には、従来の組織論・組織行動論に依拠した内
象分析をさせる。また、臨床からのエキスパートを講師として招き、
容ではなく、学生の実態に即した実践的なマネジメント論の展開が
現場の実践知が学べるようにしたい。演習では、双方向性学習支援
期待されていることがある。即ち、チームマネジメントや業務遂行
ツール「PF-NOTE」を使用して、綿密な教育評価を行っていく。
マネジメント、看護師自身のマネジメント等、看護サービス全般を
管理する「看護サービスマネジメント」である。学生にとって、直
接的なケアの技術や看護の思考過程の学習に加えて、看護が提供さ
3.教育目的・目標
1)教育目的
れるまでに、医療チームのメンバーがどのように協働すれば、より
看護の対象者への直接的な看護の質保証に結びつく看護管理・看
よい看護サービスが提供できるのか、サービスの担い手である
「私」
護マネジメントの重要性を学ぶと共に自己の職業生活を考えるこ
がどのように自己を管理し、時間管理していけば、サービス向上に
とができる。
つながるかを考えることは有用である。患者-看護師関係における
2)教育目標
ケア評価の視点から、患者-看護師関係の成立を促す背景的要素に
(1)よりよい看護を提供する上で、看護をマネジメントしていく
目を向け、看護状況を俯瞰する体験は、臨床実習を前にした学生に
ことの重要性を理解できる。
とって看護を複眼的にとらえる視点を提供するものとなる。
(2)医療チームの一員としての看護師の機能とマネジメントの目
これらを踏まえ、本科目では、看護におけるマネジメント的視点
的が理解できる。
とは何か、
なぜそれが大切か、
医療チームのマネジメントとは何か、
(3)円滑で効率的な業務の組み立てと時間管理法を理解できる。
看護におけるタイムマネジメントの重要性と適用はどのようなも
(4)臨床における多重的課題の現状と対処の原則を理解できる。
のかについて学習させる。また、職業生活において自身をマネジメ
(5)看護管理者の役割とマネジメントプロセスを理解できる。
ントしていくことの一貫として、キャリア設計についても考える機
(6)看護をマネジメントする上での安全管理を理解できる。
会を提供したい。加えて、看護サービスの安全な提供という観点か
(7)看護と社会との関係における職能集団・看護行政の重要性が
ら、医療安全学習の総括的な学習機会を持ちたい。本科目のまとめ
理解できる。
として、看護職能集団の存在意義と看護行政について概括的な教育
を行う。これらは、従来全く学ぶ機会がなかったものである。看護
職全体のマネジメントの実際として提示し、専門職業人としての素
4.単元の構成
回数
主題
授業形式
講師
1
マネジメントとは何だろう:AKB48のマネージャーは
何をしている?
講義
大学教員
2
看護職者のキャリアマネジメント:自分のキャリア設計
図を作ってみよう。
講義
大学教員
3
看護の安全を守るマネジメント:1・2年生で学んだこと
を活かして‥
講義・演習
大学教員
認定看護師
4
看護管理者と看護マネジメントプロセス:看護の現場の
チーム作りを学ぶ
講義・演習
看護管理者
5
看護業務のタイムマネジメント:「クリティカルケア
ナース○○さんの1日」-スケジュール管理ができる力
をつける
講義・演習
6
看護業務のマネジメント:「新人看護師○○さんのある
日の出来事」-多重課題対応シミュレーション
演習
7
プロフェッション・職能団体の役割と看護行政:看護の
声を社会に届けることは、国民の幸せにつながる。
講義
地をつくる学習に位置づけたい。
2)学生観
3年生の前期は、基礎・教養科目、及び看護の基礎科目と臨床看
護関連科目がほぼ終了している。地域看護関連の科目を履修しなが
ら後期から始まる領域別臨地実習の準備をはじめる時期である。学
生は来たるべき長期間の実習に不安を抱きながらも、座学では学べ
ない臨床現場の体験に期待を膨らませている。
看護管理に係る既習内容は、1年次では看護管理概説と看護活動
の場、看護提供の仕組み等を学んでいる。2年次には医療安全管理
の実際をリスクマネージャーから学ぶ。しかし、学生の興味は、自
己の看護技術の能力や患者との関係作りがいかにうまくいくかに
あり、看護管理のイメージや興味は十分でない状況がある。一方で、
基礎看護学実習では、多くの職種がチーム医療に関わっている場面
や看護師の協働の場面、リーダーシップ等に関する学習内容が見ら
5.教育評価
れており、看護管理・マネジメントは実習における重要な学習内容
レポート
となっている。このような実習での体験をうまく想起させ、本科目
- 87 -
大学教員
看護管理者
大学教員
看護基礎教育における多重課題対応シミュレーション教育の効果
る、④多重課題・時間切迫とはどのような状況である
方略のシステムモデルである。学習意欲の問題と対策
か理解できる、⑤患者の安全を守る上で多重課題に適
を、①注意(Attention:学習者の興味関心を引き、探
切に対応していくことの重要性が理解できる、⑥多重
究心を喚起する。)、②関連性(Relevance:学習目標に
課題に対処する上での原則を理解できる、⑦タイムマ
親しみとやりがいを持たせる。)、③自信(Confidence:
ネジメント・多重課題の問題に対応する上での自己の
ゴールを明示し、成功の機会を与える。やればできそ
課題を明らかにできる、の7点を設定した。
う)、④満足感(Satisfaction):目標に到達した学習者
演習時間は 180 分であり、構成は、ベテランナース
をほめて認める。やってよかった)の4つの枠組みで
の1日を教材としたタイムマネジメントの講義(50
整理しインストラクション・デザインの設計手順を提
分)、
多重課題場面の演示(15 分)、デブリーフィング (15
案したものである。
分 )、学生による演示(15 分)、グループワークと発表
資料3に具体的なシナリオを示した。登場人物は患
(50 分)
、教員・看護管理者からのフィードバック、コ
者4名、看護師2名である。新人看護師が受け持ち患
メント(15 分)である。デブリーフィングでは、双方
者の様々な訴えに対応する中で、多重課題状況におけ
向性学習支援ツール PF-NOTE を用いて、多くの学生が
る看護について考えるストーリーとなっている。デブ
チェックした場面の録画を見ながら、検討を加えた。
リーフィング及びグループワークでは、患者の救命、
また、シミュレーションに関しては ARCS モデル
安全管理、応援要請、時間管理、患者への配慮等の視
8)
を加味したシナリオと運営を心がけた。ARCS モデル
点からの検討を行った。
とは周知の通り、ケラーが 1983 年に提唱した動機付け
「タイムマネジメントと多重課題対応シミュレーション」の授業案
資料2資料2 看護マネジメント論単元 看護マネジメント論単元 「タイムマネジメントと多重課題対応シミュレーション」の授業案
1.時間数:2 単位時間

多重課題発生時の対処の原則

今の私ができること(今後の課題)
2.単元の考察
多重的課題への対応は、臨地実習では体験しがたい学習項目の一
4.本単元の学習目標
つであるが、入職後すぐにぶつかる壁である。優先順位の判断や応
①看護を行う上で 1 日の業務を組み立て、管理していくことの重要
援要請のタイミング等学ぶべき学習内容は多い。領域別実習に出る
性を理解できる。
前の準備学習として、また、看護のタイムマネジメント力を身につ
②業務スケジュール管理をする上での重要な視点や優先順位を理
けさせる学習機会として、実践的な教材を用いて学習を進める。こ
解できる。
こでは、タイムマネジメントと多重課題対応を、患者関係成立の技
③業務を行う上で、チームメンバーとの協力及び報告・連絡・相談
術、生活援助技術、治療援助技術、指導・教育技術に続く第 5 の看
が重要であることが理解できる。
護技術として位置づけ、看護職者として身につけるべき技術として
④多重課題・時間切迫とはどのような状況であるか理解できる。
学生に提示する。そして,その技術習得に向けての自己課題と取り
⑤患者の安全を守る上で多重課題に適切に対応していくことの重
組み方を各自が明らかにすることを学習目標とする。
要性が理解できる。
また、指導方略として、ケラーの ARCS モデルを加味し、学生
⑥多重課題に対処する上での原則を理解できる。
の関心や満足を高めるシミュレーションを行う。そして、
「具体的
⑦タイムマネジメント・多重課題の問題に対応する上での自己の課
な体験」から「考察・探索」
「一般化」
「再試行」のプロセスを確実
題を明らかにできる。
に踏ませる。綿密なシミュレーションシナリオと気づきを引き出す
デブリーフィング、フィードバック、講義を行い、知識の一般化、
普遍化を図る。
進行
3.教育内容

今なぜ、タイムマネジメント・多重課題対応の知識・技術が
必要なのか。

1 日のスケジュールの立て方と業務時間の管理:ベテランナ
ースの 1 日を一緒に見てみよう。

優先順位の考え方

人的資源とチームメンバーとの協力

多重課題とは

多重課題・時間切迫とインシデント
5.展開法
内容
5分
導入
50分
タイムマネジメント・多重課題対応の講義
10分
PF-NOTE・演習のオリエンテーション
15分
シミュレーション場面演示、学生はクリッカー操作
15分
PF-NOTEを用いてのデブリーフィング
15分
学生による演示
30分
グループワーク
20分
グループ発表
15分
指導者からのコメント、まとめ
- 88 -
滝 下 幸 栄 他
資料 3 多重課題シミュレーションの登場人物と状況設定
模擬患者A
模擬患者C
消化管の手術後2日目。持続点
滴中。前腕に留置針を挿入。点
滴の残量が少なくなりつつある
中で、刺入部痛を訴えてナース
コール。
呼吸困難で酸素マスクを使用し
ている、咳が激しく出て、SPO2が
93まで低下。Bさんのトイレ介助
中に、激しく咳き込む。
病 室
模擬患者B
模擬患者D
脳梗塞で左片麻痺がある患者。
排泄はベッドサイドの指示。移
動時に看護者の介助・見守りが
必要。Aさん対応中に、「トイレに
行きたい」と訴える。
•Aさんの刺入部位はやや発
赤。滴下は良好で、このまま
様子を見ようと患者に説明。
ボトル交換のために、チェッ
ク中、Bさんから、「トイレに行
きたい」との声が聞こえる。
先輩看護師:リーダーナース。
ナースステーション
Dさんが「Cさん、咳き込んで、
機械の数字も93。早く見て
あげて」と催促の声、Aさん
から、点滴がなくなりそうと
の声
Bさん、「トイレに行きたい」
Aさんからナースコール。「点
滴が入っているところが
ちょっと痛いのですが、見て
くれますか。」
新人看護師:入職3か月。病室の担当
術後順調に経過し、明日退院予
定の元気な患者。Cさんが激しく
咳き込んでいるので、看護師に
伝達。
•焦った新人看護師は、Bさん
の所にナースコールをおくの
を忘れてCさんのところへ。
•Cさんのところでは、Dさんが、
Cさんの背中をさすっていた。
看護師は、早速、観察・バイ
タルチェックを行うが。
•Aさんの薬液チェックを中断
して、トイレ介助。そのときC
さんの激しく咳き込む声が聞
こえる。Bさんをポータブルに
おろし、介助に一生懸命のと
ころに、Dさんが呼ぶ声がす
る。
Bさんが自力で立とうとして
いる。転倒しそうになってい
る。
•そこへ、先輩ナースが通りか
かり、Bさんの介助と新人看
護師の支援に入った。
資料3 多重課題シミュレーションの登場人物と状況設定
業務を行う上で、チームメンバーとの協力及び報告・連絡・
相談が重要であることが理解できる
患者の安全を守る上で多重課題に適切に対応していくこと
の重要性が理解できる
多重課題・時間切迫とはどのような状況であるか理解できる
看護を行う上で1日の業務を組み立て、管理していくことの
重要性を理解できる
多重課題に対処する上での原則を理解できる
業務スケジュール管理をする上での重要な視点や優先順位
を理解できる
タイムマネジメント・多重課題の問題に対応する上での自己
の課題を明らかにできる
よくできた
まあまあできた
0%
50%
あまりできなかった
できなかった
100%
図 1 学習目標の到達度
図1
学習目標の到達度
4.結果
レーション演習における学習内容を分析した結果、
「看
74 名(94.9%)の学生から同意が得られ分析した。
護職者の能力」、「多重課題対応スキル」、「演習課題か
1)学習目標の到達度
らの気づき」、
「教育方法への見解」の4つのカテゴリー
本単元の学習目標の到達度を図1に示した。
「よくで
と 16 のサブカテゴリーが抽出された(表1)。
きた、まあまあできた」と回答した割合はいずれの項
まず、カテゴリー「看護職者の能力」では、多重課題・
目も 85%以上であった。「よくできた」とした項目が
時間切迫時の冷静な対応や適切な判断力の重要性、中
高い順に、
「チームメンバーとの協力及び報告・連絡・
でも何を優先するかという優先順位をその場で判断で
相談の重要性」86.3%、
「患者の安全を守る上での多重
きる看護職者が備えるべき能力について言及されてい
課題への適切な対応の重要性」77.0%、
「多重課題・時
た。「多重課題対応スキル」のカテゴリーでは、具体的
間切迫の具体的な理解」73.0%、「1日の業務の組立て
な優先順位判断の視点や緊急時の原則、リスクマネジ
と管理の重要性」64.9%、
「多重課題対応の原則の理解」
メントの重要性、患者の心理面への看護、応援要請の
36.5%、
「スケジュール管理の視点と優先順位判断」
タイミングと意思表示の方法等、多重課題に対応する
29.7%、「自己の課題の明確化」28.4%であった。
ための行動や考え方が具体的に記述されていた。また、
2)学習内容と自己課題
「演習課題からの気づき」のカテゴリーでは、多重課題
タイムマネジメント講義並びに多重課題対応シミュ
は珍しいことではなく日常の業務において遭遇する可
- 89 -
看護基礎教育における多重課題対応シミュレーション教育の効果
表 1 タイムメンジメント講義・多重課題対応シミュレーション演習の学習内容
表1 タイムメンジメント講義・多重課題対応シミュレーション演習の学習内容
カテゴリー
サブカテゴリー
看護職者の能力
多重課題対応
スキル
演習課題からの
気づき
教育方法への
見解
記述例
多重課題・時間切迫時の冷静な対応の重要性
焦らず冷静に現状を把握することが大切。
多重課題対応時における適切な判断力の必要性
その時その時に適切な判断をしていかなければならないということを感じた。
多重課題対応時の優先順位判断の重要性
受け持ち患者のなかで優先順位を考えて行動することが大切だと思った。
優先順位判断の視点:生命への危険度と安全性・安楽性
多重課題ができた時は、生命の危険度・重要度を一番に優先する。
緊急時の対応の原則:その場を離れず、応援要請
第一発見者はその場を離れないのが原則。
多重課題対応への様々な対応スキル
隙間時間で対応することで出来ることがあるので、有効活用する。
多重課題対応におけるリスクマネジメント視点の重要性
リスクを回避することを常に考えていくことが大切。
時間切迫時にも忘れない不安への援助とプライバシーへの配慮
患者に不安や焦りを見せないようにする。
応援要請の重要性とその行動の正当性への理解
自分の手におえないと判断したときには助けを呼ぶことが大切だと分かった。
多重課題対応に向けてのチームの重要性と良好な人間関係の組織文化
職場内でのコミュニケーションが多重課題の対応に役立つ。
応援を円滑のするための準備と応援要請時の意思表示の重要性
今から自分は何をするのかをチームに伝えておく。
多重課題対応の日常性への現実的な理解
多重課題は珍しいことではなく、日常で起こりうることだと思った。
多重課題対応の困難性の実感と遂行への不安
シュミレーションをみて、自分もやりかねないことだと思い、とても不安になった。
多重課題対応の技術としての認識と日常における準備行動の必要性
タイムマネジメント・多重課題対応は、身につけるべき「技術」であることを学んだ。
多重課題対応における看護の普遍性に関する見解
基礎看護学で学んだこと、安全・安楽・プライバシーなどは常に大切な基本である。
演習方法への肯定的評価
他のグループの意見を聞いたことで、気づかなかった視点に気づくことができたこと。
表 2 今後の自己の課題
表2 今後の自己の課題
カテゴリー
記述例
優先順位判断能力獲得の重要性
何が一番重要であるかを判断する力。
なにを優先に行わなければいけないのか、判断する力を身につける。
緊急時における判断力と
臨機応変に対応できる力の育成
プライバシー・安全・危険など様々な観点から考え、
多重課題をどのように達成していくかを瞬時に判断し対応できるようにする。
緊急時に冷静沈着に対応できる力の育成
タイムマネジメント力の育成
応援要請と協力体制を整える技術
コミュニケーション力の向上と
人間関係作りへの努力
セルフモニタリングの実施
患者の安全・安楽、心理面に配慮する力の育成
日常生活における判断力の育成と
スケジュール管理への取り組み
多重課題対応への原則の理解
患者観察と状況を把握する力の向上
基本的な看護の技術と知識の向上
焦らずに冷静に対応できること。
何があっても、「自分がまず何をするべきか」を落ち着いて考えられるようにする。
多重課題が起こらないようにするためのスケジュール管理。
計画を立てることが少ない。練習してタイムマネジメントの技術を身につける。
自分一人ですべてやるのではない。誰かに応援を要請できるようになることも大切な技術。
コミュニケーション、チームワーク、ホウレンソウをもっと意識する。
周りに応援を定められるようコミュニケーションを日頃から十分にとっておく。
自分の力量を知り、1つの物事をするのにかかる時間の予測を立てる。
自分の力でできること、できないことの判断をつける。
患者の安全・安楽については、真剣に向き合う。
忙しい時でも、丁寧に一人一人に対応することで、患者に気を遣わせない。
タイムマネジメントは、日常生活でも考えていけるもの。普段から優先順位等をつける。
多重課題への対処の原則を頭に入れておく必要がある。
看護の現場での優先順位の決定事項を、根拠とともに理解すること。
一人一人の状態を把握しておくこと、病態や症状を理解することが大切。
多重課題に対応するためには基本的な知識や技術をしっかり身につけないといけない。
能性が高いことや多重課題対応への学習の必要性につ
を育成するために、セルフモニタリングを行うことや
いての見解が見られた。また、シミュレーションを見
日々の生活においても優先順位を考え、スケジュール
て、自分も同様の失敗をするかもしれないという不安
管理をきちんと行っていきたいとの見解が書かれてい
や多重課題に対応することの難しさに関しての感想も
た。また、多重課題への対応には、応援要請と協力体
見られた。
「教育方法への見解」のカテゴリーでは、シ
制を整えることが大切であり、そのためにコミュニ
ミュレーションやデブリーフィングの技法自体の学び
ケーション力を向上させ人間関係作りへの努力が必要
について記述されていた。
であるとの記述が見られた。そして、どのような状況
次に、多重課題対応に向けての今後の自己課題に関
においても患者の安全・安楽への配慮や心理面の援助、
しては、12 のカテゴリーが抽出された(表2)。「優先
患者観察と状況把握の力、基本的な看護技術力と知識
順位判断能力の獲得の重要性」や「緊急時における判
の向上が重要であり、それらの習得に今後も努力する
断力と臨機応変に対応できる力の育成」
、
「緊急時に冷
との記述があった。
静沈着に対応できる力とタイムマネジメント力の言
3)デブリーフィングとグループワークにおける検討
及」など、今後身につけていかなければならない能力
内容
について具体的な言及が見られた。そして、その能力
本演習はシチュエーション・ベースド・トレーニン
- 90 -
滝 下 幸 栄 他
グとして構成した。デブリーフィングとグループワー
3に示した。98.0%以上の学生が、「演習内容は将来に
クでは、
「シチュエーション」の具体的な分析を行った
役立つもの」であり、
「演習は効果的で」、
「演習から新
(表3)
。学生が指摘した問題点は、自力歩行ができな
しい知識を得ることができ」、「演習に興味を持った」
い患者の連絡手段を準備しなかったことによる転倒転
としていた。一方で、58.9%の学生が演習内容は難し
落リスクの惹起と血管痛を訴える患者への対応の遅れ
かったとしていた。
と薬物管理の不十分さ、重篤な症状を訴える患者の観
講義・演習への具体的な感想を図 4 に示した。
「そう
察とアセスメントの不足、適時の応援要請と報告の不
思う・ややそう思う」と答えた割合が高い順に、
「時間
備等であった。それぞれの問題点の背景として、看護
切迫・多重課題対応に関する学習の必要性を感じた」
者の冷静さの欠如や患者の痛みや不安に十分に着目が
100%、「タイムマネジメントについての学習の必要性
できていなかったことがあげられていた。そして対応
を感じた」100%、「多重課題・時間切迫の状況に対応
策は、ナースコールの常備、薬剤の確実な管理、患者
できるか不安になった」98.6%、「臨床の専門家の教育
の意向の十分な聴取等が記載されていた。
は効果があった」97.2%、「看護マネジメント学習への
4)講義・演習の効果と感想
意欲が高まった」91.8%、「時間切迫・多重課題対応に
タイムマネジメント講義の学習効果を図2に示し
向けての自分の行動指針がわかった」85%、
「多重課題
た。学生全員が「講義内容は将来役立つもの」であり、
対応について実際に行われている支援を聞いて安心し
「講義は効果的で」、
「講義から新しい知識を得る」こと
た」81.1%、であった。一方で、46.6%の学生が、「ま
が「とてもできた、まあまあできた」としていた。一
だ先のことなのでイメージがわかなかった」としてい
方で、54.1%の学生が講義内容は「とても・まあまあ」
た。また、「今後の実践への自信がついた」かでは、
難しかったとしていた。
68.5%の学生が「思わない、あまり思わない」として
多重課題対応シミュレーション演習の学習効果を図
いた。
講義内容は,将来に役立つものだった
演習内容は,将来に役立つものだった
講義は効果的だった
演習は効果的だった
講義から新しい知識を得ることができた
演習から新しい知識を得ることができた
講義内容に興味を持った
演習内容に興味を持った
講義内容は難しかった
演習内容は難しかった
0%
とても
まあまあ
50%
あまり
100%
0%
まったく
とても
図 2 タイムマネジメント講義の学習効果
図2 タイムマネジメント講義の学習効果
まあまあ
50%
あまり
図 3 多重課題対応シミュレーション演習の学習効果
図3 多重課題対応シミュレーション演習の学習効果
時間切迫・多重課題対応に関する学習の必要性を感じた
タイムマネジメントについての学習の必要性を感じた
多重課題・時間切迫の状況に対応できるか不安になった
臨床の専門家の教育は効果があった
看護マネジメント学習への意欲が高まった
多重課題対応について実際に行われている支援を聞いて安
心した
時間切迫・多重課題対応に向けての自分の行動指針がわ
かった
まだ先のことなのでイメージがわかなかった
今後の実践への自信がついた
0%
そう思う
100%
まったく
やや思う
あまり思わない
50%
思わない
図 4 タイムマネジメント講義・多重課題対応シミュレーション演習の感想
- 91 -
100%
看護基礎教育における多重課題対応シミュレーション教育の効果
表 3 デブリーフィングとグループワークにおける検討内容
表3 デブリーフィングとグループワークにおける検討内容
改善や検討を要する点
多重課題対応
スキル
多重課題発生時に応援要請の時期を逸した点
患者A氏の点滴交換を放置した点
患者A氏の痛みの訴えに適切に対応できなかった点
患者C氏に冷静に対応できなかった点
改善や検討を要する理由
対応策
患者B氏の転倒・転落の危険を招いたから
ナースコールを確実に手渡す
応援を要請する冷静さを欠いていたから
看護師自身の状況を適切に伝達し、はやめに応援を要請
する
患者の訴えよりも業務の効率性を優先したから
患者の意向を十分に聴取する
点滴薬剤が紛失する危険があったから
薬剤は、必ず持って移動する
患者の痛みや不安への配慮が不十分だったから
患者への不安に配慮する
患者把握や観察が不十分であったから
冷静さを保つ
5.考察
ついては同定されていない。これは多重課題という事
看護の現場で日常的に体験し、しかも新人看護師のリ
象を教育主題にする研究が十分されていない現状に加
アリティショックの第一の要因となっている多重課題対
え、多重課題への対応自体が、状況依存型の複合的な
応に関する看護実践能力の育成を目的としてシミュレー
判断と技術の集合体として認識され、教室での授業に
ションを用いた講義と演習を行った。その結果、一定の
なじむように学習の「核」を取り出し、単純化する取
教育効果と今後の指導上の課題が明らかとなった。
り組みが十分されていないことによる。現行のテキス
1)シミュレーション教育の学習効果と課題
トを見ても、多重課題の定義、優先順位判断の原則、
本授業の主たる目的は、看護の現場における多重課
夜勤と多重課題といった内容が簡単に書かれているの
題・時間切迫とはどのような状況であるのかを知り、
みである。よって、今回の取り組みによる学習効果が
その状況への対処が安全管理と看護の質にどのような
十分であったかどうかを客観的に評価することは難し
影響を及ぼすのかを理解できることである。そして、
い。しかしながら、少なくともこの授業のあとに展開
多重課題対応への原則の理解とその後の学習への動機
される領域別実習や卒業後の継続教育において学生自
付けの機会となることに主眼をおいている。
身が多重課題の状況を正しく認知し、学習すべき内容
学習目標の到達度を見る限り、概ね当初の目的を達
を明確にできる準備性を高める機会になったのではな
成することができており、一定の効果を確認すること
いかと考えている。
ができた。特に、多重課題に対応することは、患者の
さて、学生の記述した学習内容を見ていくと、多重
安全管理上、重要な力であることやチーム内のメン
課題は珍しいことではないといった課題体験の「日常
バーシップに関する理解は非常に高い到達度であっ
性」やシミュレーション中の新人看護師に自分の姿を
た。また、多重課題・時間切迫とはどのような状況で
重ねて、自分も失敗するかもしれないといった不安の
あるのかについて具体的なイメージを持つ機会となっ
吐露が見られていた。また、質問紙による調査でも、
たことがうかがえた。一方で、多重課題対応の原則や
ほぼすべての学生が多重課題に対応できるか不安に
優先順位を判断するの視点の理解について「よくでき
なったとしており、70%弱の学生が今後の実践に自信
た」と評価した学生は約 30 ~ 37%であり,やや低い
が持てないとしていた。
傾向であった。この点に関しては、学生の学習内容の
この点は、今後検討すべき課題である。多重課題対
記述において、優先順位を考える上での患者救命、安
応の学習は、知識や技術の応用性と自立的な判断力を
全性・安楽性を重視する見解や応援要請、患者の心理
必要とする内容であることから、学生の習熟度に合わ
面への援助等について具体的な内容が多く書かれてい
せて、体系的・段階的に進めていかなければならない。
た。また、デブリーフィング及びグループワークにお
今回、学生は多重課題に関して一定の知識を持ったこ
いても、シチュエーションから読み取れる問題を過不
とにより、それらが克服すべき現実の問題として認識
足なくとらえることができており、設定した学習内容
が進んだ様子がうかがわれる。猪又らの調査9) では、
は学べているのではないかと考えている。
新人看護師が多重課題に対応できるようになるのは、
多重課題対応あるいは看護におけるタイムマネジメ
入職後6ヶ月目くらいからであり、それまでは、業務
ントを看護基礎教育の段階から教育しておく必要性が
を「並列」して行うことができないか、あるいは極め
言われて久しいが、さて、それでは具体的に多重課題
て不正確、あるときはその必要性にも気づいていない
の何を教えるのか、どこまで教えるのかといった点に
状況であることを報告している。多重課題対応は高度
- 92 -
滝 下 幸 栄 他
な技術であり習熟には時間が必要であることから、学
いて指導計画を立てた。
生の不安は当然の反応であろう。今回の演習では、看
ARCS の視点から指導方略を見てみると、新人看護
護師の多重課題対応能力の獲得プロセスについては触
師が多重課題に翻弄され、より良い実践を模索するド
れなかったが、今後は、看護統合実習や新人看護職員
ラマ仕立てのシミュレーションは新奇性があり、学生
研修、OJT(On-the-Job Training)など段階を踏んだ
に「面白そう、何かありそう」と感じさせる、注意
教育が行われ、徐々にそれらの能力を身につけていく
(Attention)の要素を踏襲できていたと考える。また、
ことが可能であることを伝える必要がある。学生の不
関連性(Relevance)に関しては、多重課題の日常性を
安を軽減するためにも、また、まだ先のことでイメー
強調することにより、学習の将来的価値と看護との関
ジがわかないとした学生が 50%弱存在したことから
連性を認識できるようにしたことから、「将来に役立
も、能力獲得のプロセスイメージが持てるようなプロ
つ」との肯定的評価を得ることができている。自信
グラムを格付けすることが必要である。
(Confidence)に関しては、シナリオの難易度が高かっ
次に、今後の自己課題の明確化に関する目標では、
たことから「やればできそう」と思うところまでは行
30%弱の学生が「よくできた」としており、
「まあまあ
かなかった。このことは今後の改善点である。満足感
できた」を合わせると 90%以上が肯定的な評価をして
(Satisfaction)については、看護管理者から学生への
いた。具体的に出された自己課題内容は、優先順位判
肯定的な評価を加味したフィードバックがされるよう
断能力の獲得や臨機応変さの育成、冷静沈着さ、タイ
に設計していたが、どの程度、満足感を喚起できたか
ムマネジメント力など多重課題対応に直結する能力に
不明である。「自信」、
「満足感」とも学生がシミュレー
加えて、それらの能力を身につけるために取り組むべ
ションに直接参加し、体験する中で感じることができ
き具体的な行動についてであった。セルフモニタリン
るものであり、現行の一斉型教育の形式では限界があ
グの実践や日々の生活における優先順位判断と日常ス
る。この点も今後の検討点である。
ケジュール管理などについての見解である。自己課題
を「今の自分にできる」実践的なレベルで考えること
6.結論
ができている点がユニークである。
多重課題対応能力の育成を目的にシミュレーション
また、1年次から学んできているコミュニケーショ
教育を行った結果、以下のことが明らかとなった。
ンや人間関係形成の技術、心理面の援助、患者観察な
1.学習目標の到達度:到達度が高い順に、チームメ
ど基本的な看護技術と正確な知識が多重課題対応にお
ンバーとの協力及び報告・連絡・相談の重要性、患者
いても重要な意味を持ち、それらの習得に今後も努力
の安全を守る上での多重課題への適切な対応の重要
するとの見解が多く見られていた。看護実践能力の根
性、多重課題・時間切迫の具体的な理解、1日の業務
幹が高度な実践においても普遍的な価値を持っている
の組立てと管理の重要性であった。
ことに気づいたこの学びは秀逸である。
2.学習内容:多重課題の冷静な対応の重要性や適切
2)指導方略と今後の課題
な判断力の必要性、優先順位判断の重要性等の看護職
講義・演習の評価では、95%以上の学生が、「講義・
者の能力、優先順位判断の具体的な指針や緊急時の対
演習に興味を持つことができ」、
「将来役立つもの」で
応の原則、リスクマネジメントの適用視点、応援要請
あり、
「効果的で」、
「新しい知識を得る」ことができた
の重要性とその行動の正当性、多重課題対応の日常性
としていた。一方で、半数以上の学生が「講義・演習
等について学べていた。
内容は難しかった」としていた。
3.学習効果・感想:本授業は効果的であり、将来に
本授業では、学習への動機付けを喚起する目的で、
役に立つ内容であると評価していた。一方で、多重課
ARCS モデルに基づいたシミュレーション教育を実施
題に対応できるか不安になった、今後の実践への自信
し た。 す な わ ち 学 習 意 欲 の 問 題 と 対 策 を ① 注 意
にはつながらなかったとしていた。
(Attention:学習者の興味関心を引き、探究心を喚起
以上から、シミュレーション技法を用いた多重課題
する。)
、②関連性(Relevance :学習目標に親しみとや
対応の教育は有効であること、多重課題に対応するた
りがいを持たせる。)、③自信(Confidence :ゴールを
めの能力や原則について学べていることがわかった。
明示し、成功の機会を与える。やればできそう)、④満
一方で、自己の力量に対する不安や自信のなさに関す
足感(Satisfaction):目標に到達した学習者をほめて
る意見もあり、今後の臨床実習や継続教育における継
認める。やってよかった)の4つの枠組みを念頭にお
続的な教育の必要性が示唆された。
- 93 -
看護基礎教育における多重課題対応シミュレーション教育の効果
なお本研究は、平成 26 年度科学研究費補助金(基盤
研究 (C)26433290 の助成により行いました。
7.文献
1)
下村千里、安田ひとみ、渡邊葉月他 (2010): 新人看
護職員研修に多重課題・時間切迫シミュレーション
を導入して、日本病院会雑誌、57(3):307-311
2)
西本なをみ、村井律子 (2008): 新人看護師における
多重課題シミュレーションを導人した研修の有効性
BLS 発動時の判断能力向上への取り組み、日本循環
器看護学会誌 4(1):54-59
3)
松浪恵美子、近藤繁子 (2013): 新人看護師の多重課
題・時間切迫シミュレーション研修におけるポジ
ティブフィードバックを取り入れたリフレクション
の効果、
第 43 回本看護学会論文集 ( 看護教育 ):130-133
4)
猪又克子、長南記志子、亀石礼子、清水芳 (2008):
多重課題・時間切迫に関するシミュレーション学習
で実践力をつける、NursingBusiness C(2):36-41
5)
柄澤清美、久保田美雪、菅原真優美 (2010):卒業
前技術演習における「多重課題演習」の成果と課題、
新潟青陵学会誌、2(1):19-29
6) 藤澤雄太、外崎明子、関奈緒子、長岡波子 (2013):
国立がん研究センター中央病院における看護実践能
力の向上をめざした看護学統合実習の展開、国立看
護大学校研究紀要、12(1):26-33
7) 金子眞由美 (2010): 卒業前の多重課題演習プログラ
ムと学習効果、看護教育、51(11):980-985
8)
J.M ケラー (2010): 学習意欲をデザインする ARCS
モデルによるインストラクショナルデザイン ,45-70,
京都 : 北大路書房
9)
猪又克子 (2011: 新人看護職員の多重課題研修の意
義とあり方、看護実践の科学、36(5):6-11
- 94 -
占 部 美 恵 他
京府医大看護紀要,24:95-102,2014
レクリエーション活動にタブレット型端末を用いた精神看護学実習の試み
占部美恵、福田弘子、北島謙吾
京都府立医科大学医学部看護学科
Nursing Students’Study of Effects of Patients’Recreational
Use of Tablet PCs in Psychiatric Nursing Practicum
Mie Urabe, Hiroko Fukuda, Kengo Kitajima
School of Nursing,Kyoto Prefecutural University of Medicine
要約
本稿では、精神看護学実習におけるレクリエーション活動にタブレット型端末を用いた学生の関わりについて報告し、タ
ブレット型端末の活用の可能性を検討することを目的とした。A 病院にて精神看護学実習中に、受け持ち患者に対してタブ
レット型端末を使用した学生 10 名の実習記録を対象にした。タブレット型端末には iPad mini を使用し、学生たちは You
Tube にて音楽鑑賞したり、写真の鑑賞やインターネットにて画像を見ることに活用していた。これらは、患者の希望に沿
いながら実施していた。
iPad mini を精神看護学実習で用いることによって、患者にとって自己選択や自己決定の場になること、陽性症状を持つ
患者にとって現実的な関わりになること、過去の記憶の想起によって患者が生きてきた人生を肯定する場になること、コ
ミュニケーションツールとしての可能性が考えられた。
キーワード:タブレット型端末、レクリエーション活動、精神看護学実習
Ⅰ.はじめに
りになり、無為自閉などの陰性症状を呈する患者には活
タブレット型端末である iPhone や iPad は我々の日
動性を高める援助になる。だが、学生が毎日の援助の中
常生活の中で普及しており、医療では、遠隔画像診断サー
で取り入れることができるレクリエーション活動の内
1)
2)
ビス や診療業務効率化 に活用されている。また、タブ
容は、折り紙、塗り絵というように限られたものになり
レット型端末を用いた先行研究には、聴覚検査の有用性に
がちであった。学生が患者の好きな音楽や観たい映画な
3)
関する研究 や、認知症の早期発見のため認知機能検査に
どの好みを聞けても、患者が好きな事や希望を叶えるこ
4)
タブレット型端末を用いた報告 があった。看護の領域で
とは限られた実習期間では難しかった。そこで、タブ
5)
は、保健指導への活用 や、看護教育における看護技術演
レット型端末なら手軽に、どのような場所でも使用で
6)
習への導入 が報告されていた。しかし、看護領域におけ
き、患者が希望された音楽や映画、画像が視聴できるの
る報告は少なく、タブレット型端末の活用の可能性はまだ
ではないかと考えた。タブレット型端末ならば、患者が
まだ広がると考える。我々は、精神看護学実習におけるタ
希望された時にタイムリーに関わる事ができ、豊富な選
ブレット型端末の活用に向けて、医学中央雑誌にて「精神
択肢を提供することが可能と考えられた。
看護」
「タブレット型端末」のキーワードで検索したが、
本稿では、精神看護学実習においてタブレット型端
平成 26 年7月現在で国内における先行研究をみつけるこ
末を用いた学生の関わりについて報告し、タブレット
とはできなかった。
型端末の活用の可能性を検討した。
我々は、精神看護学実習において、タブレット型端
末をレクリエーション活動に取り入れる事を考えた。レ
Ⅱ.方法
クリエーション活動は、学生および患者の双方の緊張感
1.対象および期間
を軽減させながらコミュニケーションを円滑にし、幻聴
精神看護学実習を履修した学士課程4年生の中で、
や妄想などの精神症状を呈する患者には現実的な関わ
A 病院にて精神看護学実習中に、受け持ち患者に対し
- 95 -
レクリエーション活動にタブレット型端末を用いた精神看護学実習の試み
てタブレット型端末を使用した学生 10 名の実習記録を
になっているタイプのもの 14)。
対象にした。期間は、平成 26 年4月~6月である。
iPad mini:Apple 社によって開発・販売されているタブ
レット型コンピューターである。ワイヤレスにて、場所を
2.精神看護学実習の概要
選ばずに多くの場所でインターネットに接続できる 15)。
本学における精神看護学実習は3単位であり、病棟
You Tube:動画共有サービスであり、タブレット型
実習を3週間実施し、受け持ちケースの看護過程を展
端末やパソコンにて視聴できる。
開する。実習施設は、大学病院精神科、精神科単科病
5.倫理的配慮
院の計3か所に分かれて実習を行っている。また3週
精神看護学実習が終了した後、受け持ち患者に対し
間の中で、障害福祉サービス事業所実習、およびデイ
てタブレット型端末を使用した学生 10 名に対して、目
ケア実習またはセルフヘルプグループ実習を実施し、
的、方法を説明し、協力しなくても成績など不利益を
精神障害者の入院治療から社会復帰、地域生活を学ぶ
被ることは一切ないこと、個人が特定されないように
事を目的にしている。
匿名であること、結果を公表する場合も匿名性を保障
精神看護学実習前には、1年生で精神保健、2年生
することを文書にて説明し、同意を得た。本稿は学生
で精神看護学概論および精神看護援助論Ⅰ、3年生で
の実習記録を対象にした報告であるため、受け持ち
精神看護援助論Ⅱを学習する。
ケースの個人情報に関する記載を除外した。
3.方法
Ⅲ.結果
1)タブレット型端末は iPad mini(Apple)を使用し、
1.タブレット型端末の使用状況
接続には EMOBILE を用いた。
1)iPad mini の使用内容は、You Tube で音楽鑑賞をし
2)タブレット型端末の使用方法
たのは8事例だった。音楽は、受け持ち患者が希望
(1)iPad mini と EMOBILE は、精神看護学実習用に1
を述べて選択していた。ある程度 iPad mini に慣れ
台ずつ用意した。長期入院患者が多く、学生が受け
ると、自らタッチ操作をしてきた患者もいた。
持ちケースと一緒にレクリエーションを実施する頻
2)iPad mini の使用回数は、3週間の実習期間のうち
度が高い実習施設である A 病院に持参し、学生が
学生1人につき1回から3回であった。使用時間
希望した時にいつでも使用できるようにした。
は、1事例の記録では1回 20 分程度という記載が
(2)A 病院を実習した学生全員に、受け持ち患者のニー
あった。
ズに合わせて、臨地実習指導者の許可を得て iPad
3)音楽以外の使用では、You Tube でアニメ鑑賞1事
mini を使用してもよいことを伝えた。
例、インターネットの使用2事例、写真鑑賞1事
2)iPad mini を使用した学生は、A 病院を実習した
例であった。これらも、受け持ち患者の希望に沿
18 名中 10 名であった。
うものであった。
iPad mini を使用した学生が受け持ったケースは、
4)学生は、受け持ち患者と2人で音楽や動画、イン
長期入院の慢性期の患者であった。年齢は、40 歳
ターネットを視聴していた。他患者も交えていた
代から 80 歳代であった。学生は、受け持ち患者の
事例も、2事例あった。
状態に合わせながら、立案した行動計画に沿って
iPad mini を使用した。iPad mini を使用する際は、
2.学生の記述
教員および臨地実習指導者の指導を受けながら場
学生の精神看護学実習記録より抽出した記載を、表
所および実施方法を検討し、他患者にも配慮しな
1にまとめた。学生の記録には、受け持ちケースが希
がら実施した。他患者への配慮では、音が迷惑に
望した動画や音楽を一緒に鑑賞し、受け持ちケースが
ならないように場所と時間を考えた。
集中している姿や、笑顔、穏やかな表情の記述があっ
3)学生の実習記録より iPad mini 使用に関する記述
た。B 事例は、受け持ちケースの青春時代の音楽を一
を抽出した。
緒に聴いて懐かしい思いを共有しながら、レクリエー
ション後の精神症状を詳細に観察し、患者に適した時
4.用語
間を考えていた。F 事例では、学生が撮ってきた写真
タブレット型端末:コンピュータ製品の分類の一つ
を一緒に見て会話がはずみ、自主性や社会性をのばす
で、指で触れて操作できる液晶画面(タッチパネル)
機会になりうることを考察していた。
- 96 -
占 部 美 恵 他
1 iPad mini を用いたレクリエーション活動の実際(学生の実習記録より抜粋)
表1 iPad mini 表
を用いたレクリエーション活動の実際(学生の実習記録より抜粋)
使用内容 使用回数
学生の記録
70年代の洋楽を聴いた。イギリスのロックスターであるDeep parpleの
A
YouTube
1回目 曲を選択された。中学生の頃に聴いていたとおっしゃっていた。聴いて
いる間は無表情で集中していた。
B
1回目
(何か見たいのありますか?)Beatlesのrevolutionと話す。動画を見る
と、しきりに懐かしいと言い、動画をじっと見つめる。(中略)動画を見て
いる間、妄想発言少なかったが、その後妄想発言が活発になる。
2回目
詰め所前の机でBeatlesのLive動画等を鑑賞。好きな曲になると歌い
出したりと熱心に見ていた。同席していた他患に歌の意味を聞かれ、
「~ですよ」と答えていた。20分ほど鑑賞後、病室に戻らず廊下を2往
復徘徊していた。 鑑賞後廊下を徘徊しており、やや落ち着きがない?
(中略)音楽鑑賞の時間も20分以上は避けた方が良いと考える。
3回目
Beatles、John Denverなど。(中略)懐かしそうに話す。25分程鑑賞。
YouTube
1回目
C
YouTube
2回目
D
E
F
インターネット
YouTube
あらかじめ撮影
した写真
(景色、鴨川、
桜など)
インターネット
(折り紙の折り
方を調べる)
カメラ
(作品を写真に
とって楽しむ)
10分間のアニメ(アンパンマン)を2本を見た。計20分の中で、画面外
に視線が向いたのは1・2回程度だった。時折笑顔を見せ、(中略)他
の遊びに比べて集中している。
アンパンマンのアニメで歯みがきの大切さを題材にした回があったの
で、2人でそれを鑑賞し、その後「寝る前に歯みがきして下さいね」と
声かけし、「うん」との返答があった。アニメを見ている時は表情に変化
はあまりなかったが集中しており、(次の)要望があった。
1回目
iPadを見た瞬間タッチパネルを触り、興味津々。花の色を調べたり、
マップで自宅や病院周辺を見て、小さな頃の話など話してくれる。
洋画が好きなことが分かったので、今度は昔の洋画の動画を見ること
を約束した。(中略)マップを見て、昔のことを話す様子は穏やかで、
楽しい思い出をたくさんもっていらっしゃる方だと伝わった。
1回目
(DeepPurpleが好きという情報を得て)iPadについてご存じないというこ
となので、説明すると少し関心を持たれたようにこちらを見られる。(中
略)Deep Purpleのコンサート映像を一緒に見る。表情に大きな変化は
ないが、映像をじっと見られた。(中略)iPad操作を簡単に説明し、検索
画面から「次どれがいいですか?」と選んでもらうよう促すと、ゆっくりで
はあるがスムーズに操作され、ご自身で次の動画を選ばれた。このよ
うにして一緒に動画を鑑賞した。
1回目
(今日は桜や私の学校や新しくなった病院の写真を撮ってきたのでそ
れを見ながらお話しましょう)「それは楽しみやわ」笑顔。
写真の中で新しくなった病院の写真に興味を持っているようであり、
(中略)口数多く話される。(中略)かなり花が好きであることが分かっ
た。これが塗り絵にもつながったので、この花をうまく活用することが今
後 うまく対象者さんの自主性や社会との交流を促すことになることが
考えられる。今後、外に散歩に行くなどしたいと考えているが、なんで
もiPadで見れることが逆に外に出なくても大丈夫ということにつながり
かねないので注意して活用する。
2回目
折り紙を受け持ち患者、他患者を交えて実施。(中略)iPadを使って作り
方を調べると「すごいなあ。何でもできる」と言われた。その後作ったも
のを写真に撮った。
- 97 -
レクリエーション活動にタブレット型端末を用いた精神看護学実習の試み
使用内容
G
H
I
YouTube
インターネット
You tube
学生の記録
1回目
iPadで音楽を聞いた。患者からこんな歌もあったとリクエストしてくれ
た。表情が穏やかで笑顔も見られた。懐かしいとの発言があった。
(中略)音楽を聞くことで気分転換になるだけでなく、昔のことを思い出
すきっかけにもなったと思われる。
1回目
iPadを使用し、四季の画像、京都の画像を見てコミュニケーションをと
る。「きれいやねえ」と発言。また時折笑顔を見せられ楽しい様子。美
空ひばり、島倉千代子が好きなようで動画を一緒に見ると口ずさんで
一緒に歌われる。他患者も途中より一緒に動画を見はじめ、他患者が
受け持ち患者に話しかける場面もあるなど終始なごやかな様子であっ
た。
1回目
桜の写真を一緒に見た。「今は桜がきれいな季節ですね」というと、
「そうですね」と返答があった。写真を見ながら「きれいな川ですね」と
話されたり、桜の種類を尋ねると「ボタン桜」と答えてくださることもあっ
た。(その後、廊下の窓から外の景色を見に行く)デイルームに戻り、
「隅田川」や「チューリップ」、ペギー葉山の曲を一緒に聞く。iPadの画面
を集中して見ておられ、曲に関して「知っています」と発言された。表情
もやわらかくなられた様子が伺えた。海や果物、山などの写真を午後
から見た時には、(中略)発言されることが多くなり、コミュニケーション
の幅が広がる様子が見られたり、興味を持って下さる様子であった。
(中略)幻覚や妄想の様な発言は特に見られず、しっかりと覚醒されて
いる様子が見られ、刺激となっているのではないかと感じた。
2回目
写真を一緒に見た際に、その写真の説明をすると「へえ」「きれいや
ね」等と話しでくださった。北島三郎の曲を聞いた際には「与作は良い
ね」と話されたり、美空ひばりの川の流れのようにを聞いた際には「良
い曲やね」と話をしてくださった。聞いておられる間はずっと画面を見つ
めておられる様子であった。(中略)受け持って3日間の中では、質問を
しても「はい」「そうですね」「分かりません」など具体的な物事について
の発言はあまり聞くことができなかったが、今日は写真を見ると具体的
な物の名前を言ってくださることもあり、少しずつ信頼関係の構築が進
み、安心感を与えることができているのではないかと考える。
3回目
「塗り絵か写真を見るかどちらがいいですか」と聞くと「写真」と答えられ
たため、iPadで写真を見た。「どんな写真がいいですか。海、花、動物、
風景、何が良いですか」と尋ねると「動物」という返答があったため、犬
や猫、象などの画像を見た。「これは猫でしょ」と話すなど興味・関心の
ある様子が伺えた。レクリエーションをする時には、いくつか選択肢を挙
げて患者さんに尋ねると自分で主張してくださるようになり、帰り際も言
葉をかけてくださったり、笑顔も見られるようになり、レクリエーションが
良い刺激になっているのではないかと感じられた。
1回目
iPadを使用し、映像鑑賞(山口百恵、中森明菜、少年隊、ゴダイゴ、
イルカ)。「いいねえ」などの発言。映像の初めは表情とても明るい。口
調も穏やかで感想を口にする。映像の途中、傾眠みられるが声掛けし
たり、音楽で覚醒する。 30分ほど映像を見続けてたらほぼ覚醒
された。(中略)映像をにらみ つけるように見る様子が時々見られた
が映像終わりには笑顔になる。(中略)30分程見続けると傾眠はほと
んどなくなり、映像を見なくても 覚醒したまま会話を続けられるよう
になった。映像を一緒に鑑賞した ことにより日中の覚醒を促すことが
できたと評価できる。
2回目
映像鑑賞(西城秀樹、野口五郎、研ナオコ、細川たかし)する。
当初、眠気が強く覚醒不良であり、見守る。覚醒が強くなったタイミング
で映像鑑賞を提案すると、関心を持たれた様子で、映像を見ている間
も集中しており、傾眠等見られない。他の患者と映像を見て一緒に笑
われたりしている。
実際に撮影し
た写真画像
You tube
ネット写真画像
J
使用回数
YouTube
- 98 -
占 部 美 恵 他
Ⅳ.考察
B 事例や I 事例の記録に、音楽を聴いている間は妄
1.自己選択、自己決定の場
想が少なくなっていたという記載があった。渡辺は、
iPad mini を使用した学生は全員、受け持ち患者の希
統合失調症の陽性症状が音楽療法中、一時的に改善し
望を事前に聞いて準備していた。iPad mini を使用する
ていた 8) ことを述べている。様々な要因が影響されて
前に患者の希望に沿ったいくつかの曲を用意し、選択
いるであろうが、音楽、特に自分が好きな音楽という
権および決定権を患者自身に委ねていた。近年の精神
現実的な刺激を受けたため、現実見当を高めることが
病院は開放的な処遇が増えてきているが、幻覚や妄想
できたと考えられる。しかしながら、B 事例では音楽
などの陽性症状に対する行動制限や持ち物の制限、陰
を聴いた後に徘徊や妄想発言が増えていたことから、
性症状による活動性の低下があり、精神症状が強いほ
刺激を受けた後の昂揚感や症状の変化の観察も重要に
ど、入院が長期であるほど、高齢になって認知機能が
なると考える。今回の事例では、臨地実習指導者に事
低下しているほどこれらの傾向が強くなる。したがっ
前の許可と事後の報告を行い、教員とその都度振り返
て、長期に入院している患者にとって、希望をいくつ
り、「20 分以上避けた方が良い」というように受け持
かの選択肢から選んで叶えるという経験は、大変貴重
ちケースに合った方法を考えていた。この事例より、
であると考える。iPad mini を使用して、自分が好きな
タブレット型端末を用いたレクリエーション活動は刺
音楽を聴くこと、好きな画像や動画を見ることは、自
激になるため、効果だけではなく、精神症状がどのよ
らの希望が叶えられる場であり、小さいながらも自己
うに悪化するリスクもあるのか、事前に具体的に考え
選択、自己決定の場面になっていたと考える。
る指導と臨地実習指導者およびスタッフと協同して実
学生たちが iPad mini を用いて実施した援助は、遠
施することが重要であると考えた。
藤が述べている慢性的に統合失調症を有する人の自我
2)過去の記憶の想起
発達を支援する看護援助の「応答性(患者に関心を寄
患者が希望した音楽は若い頃に聴いた曲であり、発
せていることを示し、患者の気持ちを汲み取ろうとし
症前もしくは発症時に聴いていたことが推測された。
つつ、求めに応じる態度)」や「選択・決定の保障」に
音楽療法に関する先行研究では認知症高齢者を対象に
7)
つながる可能性を有していると考える 。自我発達へ
したものが多く、幼児期の童謡・唱歌よりも成人期に
の支援は専門性が高く、実際に学生が援助するのは難
歌った歌謡曲で肯定的な反応を示す傾向があり、個人
しい。だが、学生のコミュニケーション技術は未熟で
にとって大切な思い出と結びついている歌を用いるこ
はあるが、真摯に患者と向き合い、少しでも患者の自
との大切さを述べている 12)。これは、長期に入院して
信につながるように肯定的な言葉を伝えようと努力す
いる慢性期精神疾患患者を対象にした場合も、長らく
る姿勢は、患者に伝わるものである。また、本稿にて
隔絶された過去の記憶を想起する点において、個人の
報告しているように、患者が希望する写真を撮って見
大切な思い出と結びつく音楽が重要であることは同様
せたり、インターネットを活用して患者の好きな事を
と考える。すなわち、学生が一緒に iPad mini を用い
引き出すなど、患者の希望に対して学生は柔軟にユ
て音楽を聴く事は、患者が生きてきた過去を共に大切
ニークな発想ができる。それらの学生の良さを活かし
にする場であり、その人の人生を肯定する場になりう
ながら、学生の未熟さが患者を脅かす結果につながら
ることが考えられる。さらに長期に入院している慢性
ないように、教員は慎重に臨地実習指導者と調整しな
期精神疾患患者を対象にした場合、過去の楽しかった
がら指導していく。
時代や褒められた体験など肯定的な意味を想起させる
音楽は、寺田らが述べているように自主性を支える体
2.iPad mini で音楽を聴くことの意味
験 13) になり得ると考える。しかしながら、統合失調症
You Tube で音楽を聴くことを思いついた学生は多
患者にとって刺激にもなるため、病的体験を想起させ
く、タブレット型端末を用いて音楽を聴くことが彼ら
ないよう観察を行いながら肯定的な感情の交流を意識
にとって日常であるため、すぐに提案できたと考える。
するなど、慎重な対応が必要になるだろう。
音楽を聴いた患者たちの良い表情や好意的な感想を述
べられていたことが、学生の記録に記載されていた。
3.コミュニケーションツールとしての可能性
You Tube で音楽を聴くことの意味について、陽性症状
看護学生が精神看護学実習前にネガティブなイメー
に対する影響と過去の記憶の想起の点から検討した。
ジを抱くことは、多くの先行研究で述べられている
1)陽性症状に対する影響
9)10)11)
。緊張感を抱えた学生は受け持ち患者と出会い、
- 99 -
レクリエーション活動にタブレット型端末を用いた精神看護学実習の試み
会話を交わすだけではなく、折り紙や塗り絵などでお
フの皆様、受け持ちケースに同意して頂いた患者の皆
互いの緊張をほぐしながらコミュニケーションの媒介
様に心より感謝いたします。
になる物を活用して関係を築き、患者を理解していく。
そのプロセスで、精神障害者に対するネガティブなイ
文献
。
1) 藤井正彦,杉村和朗 (2011):大学中心の NPO が手
タブレット型端末は個人で使用する事が多いが、学
掛 け る 遠 隔 画 像 診 断 サ ー ビ ス,INTERVISION,
生たちは患者と一緒に音楽を聴いて同じ時を過ごし、
26(11):42-44.
メージをポジティブなものに変化していくのだ
9)10)11)
感想を言い合うなどコミュニケーションツールとして
2) 岩 崎 圭 悟, 村 澤 孝 秀, 玉 井 久 義, 他 (2012):
も活用していた。他患者も交えていた事例もあり、タ
Android Tablet 端末を用いた診療業務効率化の試み,
ブレット型端末の使用は1対1のコミュニケーション
医機学,82(4):322-328.
だけではなく、複数の人とのコミュニケーションの
3) 徳永仁,高村徳人,甲斐晃弘,他 (2014):健常者
きっかけにもなると考えられる。また、I 事例のよう
におけるタブレット端末のアプリケーションを用い
に普段の発語が少ない患者でも、iPad mini を媒介にし
た聴覚検査の有用性に関する基礎的検討,医療薬学,
て言語的コミュニケーションを引き出せる可能性も考
40(1):28-34.
4) 野田泰葉,占部美恵,木下彩栄 (2014):認知症の
えられた。
早期発見・支援プロジェクト;認知症を地域で見守
Ⅴ.結論
るネットワークづくり,京都大学大学院医学研究科
精神看護学実習において、レクリエーション活動に
タブレット型端末を活用する事で得られる可能性とし
人間健康科学系専攻紀要,9:59-61.
5) 辻よしみ,高嶋伸子,合田加代子,他 (2012):タ
て、以下の点が考えられた。
ブレット型携帯情報端末の保健指導活用への可能性
1.iPad mini の使用方法は、You Tube で音楽を聴く
自治体保健師の IT 活用実態からの考察,四国公衆
こと、写真を撮ること、インターネットで調べる
衛生学会雑誌,57(1),75-78.
6) 加治美幸,山下美智代,佐藤みつ子 (2014):タブレッ
ことなど、様々な使用可能性が考えられた。
2.iPad mini を精神看護学実習で用いることによって、
ト型端末を導入しての看護技術演習の試み,了徳寺
1)患者にとって自己選択、自己決定の場になる
大学研究紀要,8:161-168.
こと、2)陽性症状を持つ患者にとって現実的な
7) 遠藤淑美 (2005):慢性的に統合失調症を有する人
関わりになる一方で刺激になること、3)過去の
の自我発達を支援する看護援助の構造,日本精神保
記憶の想起によって、患者が生きてきた人生を肯
定する場になること、4)コミュニケーションツー
健看護学会誌 、14(1):11-20.
8) 渡辺恭子 (2012):統合失調症患者に対する 12 ヶ月
ルとしての可能性、が考えられた。
間継続した音楽療法の効果,日本音楽療法学会誌,
3.iPad mini を用いたレクリエーション活動は刺激に
12(1):32-39.
なるため、効果だけではなく、精神症状がどのよ
9) 太田友子,廣瀬春次,水津達郎,他 (2012):精神
うに悪化するリスクもあるのか、事前に具体的に
看護学実習前後における看護大学生が精神科看護に
考える指導が重要である。
対して抱く思いに関する分析,山口県立大学学術情
報,5:1-10.
10)松本梢,蘓原孝枝,五十嵐啓子 (2012):看護学生
Ⅵ.今後の課題
本報告はまだ試みの段階であり、本稿で得られた結
の精神疾患患者に対するイメージと精神看護学実習
果を基にして今後も iPad mini を精神看護学実習で用
の効果,足利短期大学紀要,32:99-101.
いることによる患者の変化および学生の学習効果の検
11)福田由紀子,小林純子 (2003):精神看護学実習前
討が必要であり、それが今後の課題となる。
後における看護学生の精神障害者へのイメージの変
化,日本赤十字愛知短期大学紀要,14:123-131.
12)高田艶子,岩永誠 (2014):補完代替医療としての
謝辞
本稿執筆にあたり、実習記録の使用に同意してくれ
音楽療法が認知症に及ぼす効果,日本補完代替医療
た学生、および精神看護学実習でご指導頂いたスタッ
学会誌,11(1):49-55.
13)寺田千幸,出口禎子(2010)
:長期に入院する統合
- 100 -
占 部 美 恵 他
失調症患者の自主的な行動を支えている体験や想
い,日本精神保健看護学会誌,19:148-154.
14)IT 用 語 辞 典 (2012):2014-10-09 確 認,http://
e-words.jp/w/E382BFE38396E383ACE38383E38388.
html
15)Apple 社 ホ ー ム ペ ー ジ :2012-10-09 確 認,http://
www.apple.com/jp/ipad-mini/
- 101 -
吉 井 健 悟 他
京府医大看護紀要,24:103-110,2014
フリーソフトを用いた標本数の見積もり
-比率の差と平均値の差の場合-
吉井 健悟 1)、浅野 弘明 2)
1)京都府立医科大学大学院医学研究科
2)京都府立医科大学大学院保健看護研究科
Sample Size Determination for Proportions or Averages by Using Free Software
Kengo Yoshii1), Hiroaki Asano2)
1, Graduate School of Medical Science, Kyoto Prefecutural University of Medicine
2, Graduate School of Nursing for Health Care Science, Kyoto Prefectural University of
Medicine
要約
標本数設定は、どのような研究においても、欠かすことができない重要検討事項である。特に、検証的研究においては、
研究の成否を左右する最重要事項となっている。本稿では、標本数設定(見積)の重要性を、臨床治験を例に再確認した
上で、比率の差と平均値の差の検証に限り、理論的な側面について概説するとともに、G*Power と PS(Power and sample
size Program) という 2 つのフリーソフトを用いた計算方法を紹介する。
キーワード:標本数の見積、計算方法、フリーソフト、G*Power、PS(Power and sample size Program)
[1] はじめに
がすべて水泡に帰してしまう。「裏付け」は、多くの場
標本数の設定は、多くの研究において重要な意味を
合、統計的仮説検定での有意差の導出を意味している。
持っている。特に、新薬の効き目を、実際の患者に適
有意差が出なかった場合、残念でしたでは済まず、莫
用して判定する臨床治験においては、標本数設定が最
大なる損失を被ることになりかねない。なお、フェイ
重要事項となっている。実際、治験のプロトコル(手
ズⅢの前には、動物実験やフェイズⅠ、フェイズⅡと
順書、計画書)には、どのような患者にどのような方
いった関門があり、効果が期待できない候補薬は、こ
法で投与するかといった基本計画以外に、解析計画
の段階でふるい落とされていく。このため、フェイズ
(データの集計方法、薬効を判定するための主要評価項
Ⅲまで進んだケースでは、多くの場合、それなりの薬
目や、その検証方法)について具体的かつ詳細に記載
効が期待されている(特に開発製薬会社においては)
。
されているばかりでなく、目標症例数(標本数)とそ
良く知られているように、データの精度が保たれて
の設定根拠についても明確に記載されている。プロト
いる限り、標本数が多いほど有意差は出やすくなる。
コルに記載された症例数は、途中経過を見ながら増や
このため、治験の実施側はできるだけたくさんの例数
したり減らしたりすることは、許されていない。この
で始めようとする。しかし、臨床治験は、さらなる効
ような調整を行うのであれば、調整手順をあらかじめ
果が期待される新薬と、新薬よりは効き目が劣るかも
決めておき、その根拠も含めプロトコルに記載してお
しれない従来薬(標準治療薬)や、効き目が全く期待
く必要がある。
できないプラセボ(偽薬)などの対照薬との比較によっ
フェイズⅢ(第Ⅲ相試験)と呼ばれる臨床治験は、
て効力が判定されるため(近年、プラセボを対照薬と
薬効確認の最終段階の検証作業であり、ここで「裏付
することは、かなり稀になっている)、対照薬を割り当
け」が得られなかった場合、その新薬の開発はそこま
てられた患者に不利益が生じるのではないかという倫
でとなり(当然、販売も不可)、数億円規模の開発費用
理的問題を内包している(特に新薬の効果が認められ
- 103 -
フリーソフトを用いた標本数の見積もり
た場合)。このため、闇雲に症例数を増やすことは許さ
発されている。手計算で処理するよりは、このような
れていない(不利益が無駄に拡散してしまうため)。統
ソフトを利用した方が、信頼性が高いばかりでなく効
計学的な裏付けを得るのに必要最低限の例数で実施す
率的でもある。
ることが求められている。世界的に、臨床治験は公的
そこで、本稿では、論文中に引用しても問題がない
機関(我が国では厚生労働省)の承認を経て実施され
と 思 わ れ る、G*Power と PS(Power and sample size
ており、審査過程で、標本数設定に関する疑義が生じ
Program)(いずれもフリーソフト)を用いた標本数の
た場合、実施機関(製薬会社)の信用問題にまで発展
見積方法について、比率の差を検証するカイ二乗検定
しかねない。このため、標本数設定を担当している部
と、平均値の差を検証するt検定に限り、理論的背景
門は、成功させなければならないという強いプレッ
を含め紹介する。
シャーのもと、成功に必要なぎりぎりの標本数を、祈
るような気持ちで決定している。
[2] 統計的仮説検定の概略
標本数を設定するためには、いくつかの情報が必要
設定された仮説に基づき観察された事象が生起する
となる。対照薬との効き目の差を、奏効率や寛解率な
確率を求め、その確率が小さい場合、その仮説の信憑
どの「比率」で判定するのであれば、それぞれの群で
性が薄いと見なし仮説を棄却する、というのが仮説検
どの程度の「比率」を見込めるか、また、血圧の降下
定の基本的な考え方である。
量などのように数量的に判定するのであれば、当該変
生起確率 P を判定する基準は、危険率と呼ばれ、通
数がどのような分布になるか(例えば、平均値や標準
常αで表される。多くの場合、危険率αは 0.05 に設定
偏差)を知る必要がある。フェイズⅢの一歩手前に実
され、P ≦ 0.05 の場合は有意(あるいは、有意差あり)
、
施されるフェイズⅡの治験はこのような情報の収集
P>0.05 の場合は非有意(あるいは、有意差なし)と表
が、主要目的の一つになっている(副作用に関する情
現される。有意の場合は、差があることあるいは関連
報収集や至適用量の設定なども、主要目的の一つであ
性 が 認 め ら れ る こ と の 裏 付 け と な る。 ち な み に、
る)。
EBM(Evidence Based Medicine) や EBN(Evidence Based
Nursing) における Evidence(根拠)となるためには有
臨床治験は薬事法に基づき実施されており、データ
意差が不可欠であり、有意差のない結果は Evidence と
管理を含め、その計画や実施内容はかなり厳格に管理・
はならない。非有意な場合、その結果は差のないこと
監視されている。これに対し、医療の現場で広く行わ
の裏付けにならないことは、銘記しておく必要がある。
れている臨床試験や看護研究も、臨床治験と同様に綿
非有意は、白黒を付けることができない、すなわち判
密な計画に従い実施するのが本来であるが、予算や期
定しようとしたが分からなかった状態であり、その結
間さらには人的パワーの制約があり、治験並の実施は
果が現実的に役に立たないことは容易に理解できるは
困難なことが多く、かなり簡略化された形で実施され
ずである。非有意が裏付けとなりえるのは、数十万あ
ているのが実情である。
るいは数百万人規模で調査・実験を行っても非有意で
しかし、近年、医療関係の研究の実施には、倫理審
あった場合に限られていると思っておく必要がある。
査委員会の承認が必要となっており、その審査過程に
このため、論文中に非有意な結果を記載すると、査読
おいて、解析計画や標本数の設定理由についても明確
者から、非有意は公表する価値がない(低い)ので抹
化することが求められている。調査であれ実験であれ、
消するよう求められ、メインの主張が記載できず、論
目標例数を明確化しない研究は科学的とはいえず、承
文が成立しなくなってしまうこともある ( 特に、一流
認されることはあり得ない。この例数設定に際しては、
の雑誌においてこのような傾向が顕著になっている)
。
現実的な制約(例えば、いくら集めても、当該例数は
この意味では、有意差を出さないと研究発表ができな
○個しかない)以外に、統計的側面からの理由も説明
いと言っても過言ではない。
する必要がある。
統計的仮説検定は、正しく処理したとしても、結論
従来、統計的な例数設定に関しては、SPSS などの統
を誤ってしまう危険性を内包している。差が無いのに
計パッケージにはその処理が含まれないこともあり、
有意差ありとする誤り(あわて者の誤り)と、差があ
参考書に示された計算式に基づき、いわゆる手計算で
るのに非有意となって見逃してしまう誤り(うっかり
算出することが多かった。しかし、最近、標本数の見
者の誤り)の 2 種類が起こり得る。前者を「第1種の
積に利用できる信頼性が担保されたフリーソフトが開
誤 り (type I error)」、 後 者 を「 第 2 種 の 誤 り (type II
- 104 -
吉 井 健 悟 他
error)」と呼んでいる。第 1 種の誤りを犯す確率(可
癒率と見込治癒率とのギャップもより小さくなること
能性)は、危険率αと等しくなる。第 2 種の誤りを犯
が期待できる。これにより、有意差を得られる確率が
す確率はβと表される。すると、
「1-β」は、差がある
上昇する。例えば、1 群 250 名として、先のシミュレー
場合に差があるという結論を得ることができる確率と
ションを実施してみると、検出力が 60% 強まで上昇す
なるので、「1- β」を検出力と呼んでいる。
ることが確認できる。しかし、これでも 10 回中約 4 回
仮説検定の多くは、本稿で紹介するカイ二乗検定で
は失敗してしまうことになる。
のカイ二乗値や、t検定でのt値のように、検定固有
この失敗する(有意差を導けない)確率を例えば、
の指標値をカイ二乗分布やt分布といった理論分布に
10 回中 1 回あるいは 2 回程度に納めたいが、これに見
当てはめて生起確率を算出している。確率を算出する
合った、標本数はいくらになるか、という計算を行う
代わりに、危険率に応じた範囲を設定し、そこに検定
のが標本数の見積である。上の説明で分かるように、
指標が含まれる場合に仮説を棄却するという方法で代
標本数の見積を行うためには、対照群と当該群での発
用することもできる。このような範囲を「棄却域」と
生率(上の例では治癒率)以外に、危険率αや検出力
呼び、棄却域以外の範囲を「採択域」と呼んでいる。
1-βの設定が必要となる。発生率はデータに合わせた
通常、棄却域は「ある値以上、あるいは、ある値以下」
値(予想値)を設定しなくてはならないが、危険率は
として、両端に設定されている。これが両側検定であ
5%、検出力は 20%( 稀に 10%) と固定した値を設定する
る。これに対し、「ある値以上」とか、「ある値以下」
のが通常である。なお、臨床治験のように会社の命運
のように、片方にのみ設定されている場合は片側検定
が掛かっている場合は、検出力を 10% に設定すること
と呼ばれる。片側検定が許されるのはかなり特殊な場
もあるが、標本数が多くなることもあり、臨床試験等
合で、特に、医学や看護分野で利用されることは稀な
では 20% に設定されることが大半である(5 回に 1 回
ため、本稿では、両側検定についてのみ言及する。
程度の不運は覚悟の上ということ)。なお、比率の差を
例に説明したが、t検定の場合には、発生率に代わり、
[3] 標本数の見積の理論的背景
両群での平均値や標準偏差に関する情報が設定時に必
例えば、対照群では 50% の治癒率、当該群では 60%
要となる(詳しくは、本稿の該当記載を参照)。
の治癒率が見込まれるとき、見込み通りの結果になっ
ても、100 名程度のデータでは、統計的に有意とはな
[4] 検定の理論的背景
らない。この差を有意にするためには、1 群につき約
比率の差を検証するためのカイ二乗検定と、平均値
200 名 ( 正確には 191 名 ) のデータが必要となる。
の差により分布の差を検証するt検定の理論的側面に
それでは、1 群 200 名のデータがあれば常に有意と
ついて概説する。
なるのか、と言えばそうはいかない。見込み通りの治
癒率とはならない可能性があるからである。例えば、
(1) カイ二乗検定
対照群での治癒率が見込みを上回り 55% になった場合、
ここでは、2 群間の比率の差の検証方法に限って説
当該群で見込み通りであったとしても、結果は非有意
明する。それぞれの群でのデータ数を A、B、該当事象
となる。もちろん、対照群で見込みを下回る、あるいは、
の発生件数を a、b とする。このような結果は、通常、
当該群で見込みを上回るといったラッキーな状況にな
図1のような 2 × 2 表にまとめられる。
「比率に差はな
れば、有意差が得られるが、アンラッキーな状況も同
い」という検定仮説の元では、式①で計算されるカイ
様に発生するのであり、ラッキーのみを期待している
二乗値が、自由度 1 のカイ二乗分布に従うことを利用
と痛い目を見てしまう。コンピュータシミュレーショ
して、生起確率 P が算出される。ただし、①式で計算
ンでこの点を確認してみると (1 群 191 名として)、50%
強、すなわち、ほぼ 2 回に 1 回しか有意とはならない。
言い換えると、必要最低限のデータ数で実施した場合、
検出力は 50% に過ぎず、2 回に 1 回は有意差が得られ
ず失敗してしまうことになる。
失敗の確率を減らすためには、データ数を増やす必
要がある。データ数を増やすと、55% vs 60% のような
図 1 クロス集計表(2×2表)の一般例
より小さい差でも有意となるばかりで無く、実際の治
- 105 -
図1 クロス集計表(2×2表)の一般例
フリーソフトを用いた標本数の見積もり
した場合、理論分布との適合性が悪いため、②式のよ
計算方法を紹介する。なお、いずれも、学術的目的で
うな連続修正(Yates の補正とも呼ばれる)を施した
あればその使用は「フリー」で、参考文献に示した
URL から簡単にインストールすることができる(イン
値を利用するのが通常である。
値を利用
するのが通常である。
値を利用するのが通常である。
ストール方法は省略)。
(ad  bc)22  N
2

 (ad  bc)  N
・・・ ①
・・・ ①
2 
・・・ ①
A B C  D
A B C  D
[6] 比率の差を検証する場合の標本数の見積例
( ad  bc  N/
N 2) 22  N
・・・ ②

 ( ad  bc  N/ 2)  N
・・・ ②
・・・ ②
 
A B C  D
A B C  D
2
Y2
Y
例として、スポーツ競技と選手の身体故障の関連性
を検証する研究を考えてみる。例えば、野球、テニス、
先に説明した棄却域としては、3.84
以上の範囲が該
値を利用
するのが通常である。
バレーボール、ハンドボール、砲丸投げなどのような
先 に 説 明 し た 棄 却 域 と し て は 、3.84 以 上 の 範 囲 が 該 当 す る 。す な わ ち 、② 式
当する。すなわち、②式で計算された補正カイ二乗値
「オーバーヘッドスポーツ」では、
「肩の痛み」が多発
先に
説明
な わ ち 、② 式
2 却 域 と し て は 、3.84 以 上 の 範 囲 が 該 当 す る 。す
(adした
bc)棄
N
2 
・・・ ①
で計算さ
たA補
カイ
乗 値 が 3.84 を 超 え た 場 合 に 、 有 意 差 あ り と
なる。
を超えた場合に、有意差ありとなる。
B正
C
D二
がれ
3.84
するような印象を受けたとする。文献検索やパイロッ
で計算さ
れ
た補
正
カイ
二 乗 値 が 3.84 を 超 え た 場 合 に 、 有 意 差 あ り と
なる。
2×2
に
す
カ
検 定 は 、 2 群 間群間の比率の差
の 比 率 の 差 以 外 に 、 夜ト研究を行った結果、オーバーヘッドスポーツ群では
更かしと朝寝
2表×
2対
表に対するカイ二乗検定は、2
( ad
bcる
N/ イ
2) 2二
 N乗
2×2 表
対す
る カ
イ
二
乗検定
は、2 群間の比率の差以外に、夜更かしと朝寝
2 に
・・・ ②
Y 
B の
C関
 D連 性 の 検 証 に も 適2用
以外に、夜更かしと朝寝坊のような
要因間の関連性
坊のよう
な 2 要A
因間
す る こ と が で き る 。 30%、その他の群では 15% の発生率が予想された。こ
坊のような 2 要因間の関連性の検証にも適用することができる。
の検証にも適用することができる。
の肩の痛みと競技との関連性を本調査で裏付ける(有
先 に 説 明 し た 棄 却 域 と し て は 、3.84 以 上 の 範 囲 が 該 当 す る 。す な わ ち 、②
式
意差を得る)ためには、どのくらいの標本数が必要か
で計算さ
補 正 カ イ 二 乗 値 が 3.84 を 超 え た 場 合 に 、 有 意 差 あ り と な る 。
(2)れtた検定
計算してみる(危険率は 5%、検出力は 80% として)
。
(2) t 検 定
(2) t2×2
検
定
表検定には、(a)
に 対 す る カ イ 二等分散性を仮定した対応のないt検
乗検定は、2 群間の比率の差以外に、夜更かしと朝寝
t
検
定 2に要は因、
性証
を 仮も定
し
応と
のない
、 (b)対 応 の あ る t 検
坊 のt
う
な
間(a)等
の 関 連分
性散
の検
適等分散性を仮定しない
用た
す対
るこ
きt
る検
。定
tよ 検
定には
、
(a)等
分
散
性 をに
仮定
し
た
対
応 のがなでい
t
検
定 、 (b)対(1)
応の
るt検
定、(b)
対応のあるt検定、(c)
PSあ
を用いた場合
定 、(c)等 分 散 性 を 仮 定 し な い 対 応 の な い t 検 定( ウ ェ ル チ 検 定 )が 含 ま れ て い る 。
定 、(c)等
分 散 性 を 仮 定 し な い 対 応 の な い t 検 定( ウ ェ ル チ 検 定 )が 含 図2に示したように、PS
まれている。
対応のないt検定(ウェルチ検定)が含まれている。
の起動画面で、上部にある
単に t 検
定と
言 っ た 場 合 は 、通 常 、(a)の 手 法
を 意 味 し て い る 。こ こ①『タブ』の中から「Dichotomous」を選ぶ。次に、
では見積を含
単に
t 検定と言った場合は、通常、(a)
の手法を意味し
単に t 検
定と
言 っ た 場 合 は 、通 常 、(a)の 手 法
を 意 味 し て い る 。こ こ で は 見 積 を 含
(2) t 検 定
め (a)にている。
つ い て の み 説 明 す る 。 ま た(a)
、 (a)の 手 法 を 単 に t 検 定 と 呼 ぶ②『Output』項目として、
ことにする。
「Sample Size」を選択する。
め (a)に つ い て ここでは見積を含め
の み 説 明 す る 。 ま た 、についてのみ説明する。
(a)の 手 法 を 単 に t 検 定 と 呼 ぶ こ と に す る 。
t 検 定 に は 、 (a)等 分 散 性 を 仮 定 し た 対 応 の な い t 検 定 、 (b)対 応 の あ る t 検
また、(a)
の手法を単にt検定と呼ぶことにする。
項 目 に 対 し、 上 か ら 順 に、
t検
定は、平
均 の 差 に よ り 、 2 群 間 の 量 的 デ ー タ の 分 布 の ズ レ引
をき
検続
証 き、
し て ③『Design』
い
t検定は、平均の差により、2 群間の量的データの分布のズレを検証してい
定 、(c)等 分 散 性 を 仮 定 し な い 対 応 の な い t 検 定( ウ ェ ル チ 検 定 )が 含 ま れ て い る 。
t検定は、平均の差により、2
「Independent」
「Prospective」
、
(2番目)、
「Two
る 。量 的
デ ー タ は 各 群 で 正 規 分 布 を す る群間の量的データの
こ と が 前 提 と な っ て お り 、さ
ら に (a)の 手(1 番目)
る単。量
ー言
タっ
はた各
規常分、(a)の
布をす
と味
がし前て提
っこてでお
に t的
検デ
定と
場群
合で
は正
、通
手る
法こ
を意
いと
るな
。こ
はり
見 、さ
積 をら
含 に (a)の 手
分布のズレを検証している。量的データは各群で正規
proportions」
(3番目)、
「Fisher’s exact test」
(4番目)
分布をすることが前提となっており、さらに (a) の手
を選択する。その後、④『Input』項目で、α欄 に「0.05」
、
法めで
は 、分
散
、す
な
わ
ちる
標 準ま偏
差
が
等し
い
こ
とに
も前提
と
な
っこ
ている
。標
本 数 を n、
(a)に
つ い散
て、す
の みな
説わ
明す
た差
、が
(a)の
手い
法こ
を単
定と
とな
呼ぶ
す。標
る 。本 数 を n、
法で
は 、分
ち 標。
準偏
等し
と もt前検提
っ てといにる
平均値
準に
偏差を
しの
、群で
別分
は 、のnズ
、 n2 の
よし
うて
にい、 下 付 の 数
tを
検 定m、
は 、標
平本
均標
の差
、σ
2 と
群間
デの
ー区
タの
検証
平均値
を
m、
標
本
標
準 偏よ差りを
σ
と
し 、量群的で
の
区
別 は布
、 n 11 、レnを
2 のように、下付の数
法では、分散、すなわち標準偏差が等しいことも前提
。量
タこ
はと
各群
分式
布③
をす
が定
前指
提標
とな
り値
、さ
(a)の
字るに
よ的
りデ示ーす
にで
す正る規。
にる
よこ
りと検
でっ
あてるおt
をら算に出
す る手。 こ の 指 標
字により
示すことにする。式③に
よ り 検 定 指m、標本標準偏
標であるt値を算出する。この指標
となっている。標本数を
n、平均値を
で は 、分 散 、す な わ ち 標 準 偏 差 が 等 し い こ と も 前 提 と な っ て い る 。標 本 数 を n、
が法、
自 由 度 (n 1 +n 2 -2)の t 分 布 に 従 う こ と を 用 い て 、 生 起 確 率 P が 求 め ら れ る 。
こと
を用いて、生起確率 P が求められる。
が、自由
度 (n 1 +n 2 -2)の t 分 布 に 従 う1、n
差をσとし、群での区別は、n
2 のように、下付の
①
平 均 値 を m、 標 本 標 準 偏 差 を σ と し 、 群 で の 区 別 は 、 n 1 、 n 2 の よ う に 、 下 付 の 数
数字により示すことにする。式③により検定指標であ
字により示すことにする。式③により検定指標であるt値を算出する。この指標
2
②
るt値を算出する。この指標が、自由度
(n12+n2-2)
n1う こ
1  1を
n  1、 
 1のt1 
m1 +nm2-2)の t 分 布 に従
確率1 Pが1求め ら れ ・
る。
が 、 自 由t 度 m(n
n1  1 と
 12 
用 nい22 て
 1 生22 2起 

1 m
2


, sd
・・
1 
2
  

t

,
s

・
・
・
d
sd
n1  n2 P2が求められる。
n2 
分布に従うことを用いて、生起確率
1
 n
sd
n1  n2  2
 n1 n2 
t

m1  m2

, sd
sd
 n1  1  12   n2  1  2 2
n1  n2  2
1 1
  
 n1 n2 
・・・
③
③
③
結果
③
・・・ ③
[5] 標 本 数 の 見 積 公 式 、 見 積 ソ フ ト
[5] 標 本 数 の 見 積 公 式 、 見 積 ソ フ ト
見 積 式 を 具 体 的 に 説 明 す る た め に は 、 正 規 分 布 を 筆 頭 に 多 く の 統 計④
的指標や概
見積式
を具
体的に説明するためには、正規分布を筆頭に多くの統計的指標や概
[5]
標本数の見積公式、見積ソフト
⑤
[5] 標 本 数 の 見 積 公 式 、 見 積 ソ フ ト
見積式を具体的に説明するためには、正規分布を筆
見積式
を具体的に説明するためには、正規分布を筆頭に多くの統計的指標や概
7
7
英文表現例
頭に多くの統計的指標や概念(上側確率等)に触れる
7
必要があるため、本稿では省略する(詳細は参考文献 1)
~ 3) を参照)。
以下の項では、ヴァンダービルト大学医療統計学部
が提供している「Power and Sample Size Calculation」
(以下 PS) と呼ばれるソフト 4) と、ハインリッヒ・ハ
イネ大学デュッセルドルフ校の実験心理学研究所が提
5)
供している「G*Power」と呼ばれるソフト を使った
図 2 PS (Power and Sample Size Calculation ) 操作画面
- 比率の差の検証例 -
図2 PS (Power and Sample Size Calculation ) 操作画面
-比率の差の検証例-
- 106 -
吉 井 健 悟 他
power 欄に「0.8」、予想される発生率である「0.30」と
「0.15」を P0、P1 欄に設定する(パーセントではなく
検出力の観点からは、より大きな方の数字を利用する
のが安全である。
比率として、なお、欄の選択は任意)、m 欄には 2 群
の人数比となる「1」を入力する。以上の設定が終了後、
『Input』領域右上にある⑤ [Calculate] ボタンをクリッ
[7] 平均値の差の場合
ここでは、[6] で説明した「肩の痛み」に、筋肉バラ
クする。すると、必要なサンプルサイズが『Output』
ンス指標の一つである「脊椎-肩甲骨間距離(Scapula
領域の下に示される。今回の例では、1群 133 名となる。
spine distance、以下 SSD)の左右差が関係しているの
かを検証する例を考えてみる。文献検索やパイロット
(2) G*Power を用いた場合
研究により「肩の痛みを有する群」と「肩の痛みを有
G*Power の 起 動 画 面( 図 3) で、 ①『Test family』
しない群」において、SSD の平均値(±標準偏差)が
項目で「Exact」を選択する。次に、右隣の②『Statistical
4.0( ± 3.5)mm と 6.5( ± 4.3)mm 程度になりそうなこと
test』項目は「Proportions: Inequality, two independent
が分かった。本調査で関連性を裏付ける(有意差を得
groups (Fisher’s exact test)」を選択する。引き続き、
る)ためには、どのくらいの標本が必要になるか計算
③『Type of power analysis』
してみる(危険率 5%、検出力 80% として)。
項
目
は「A priori:
Compute required sample size ‒ given α , power, and
effect size」 を 選 択 す る。 そ の 後、 ④『Input
(1) PS による計算方法
Parameters』項目に対し、Tail 欄を「Two」
(両側検定)
図4に示したように、PS の起動画面で、①『タブ』
に変更し、予想発生比率である、「0.15」と「0.30」を
として「t-test」を選択する。②『Output』項目は「Sample
p1、p2 欄 に セ ッ ト し( 欄 は 任 意 )
、 α 欄 に「0.05」、
Size」、 ③『Design』 項 目 は「Independent」 を 選 ぶ。
Power 欄に「0.8」を、”Allocation ratio N2/N1”欄には
④ の『Input』 項 目 に 対 し て は、 α 欄 に は「0.05」
、
「1」をセットする(人数比)。その後、画面右下にある
power 欄には「0.8」を入力し、δ欄に平均値の差であ
⑤ [Calculate] ボタンをクリックする。すると、結果欄に、
サンプルサイズが表示される。今回の例では、1 群 131
る「2.5」
(= 6.5-4.0) を、σ欄に標準偏差の平均値「3.9」
(= (3.5+4.3) ÷ 2) を(注)、m 欄に両群の人数比とな
例となる。
る「1」をセットする。その後、④『入力』領域右上に
PS での計算例と、異なった結果になっているが、計
ある⑤ [Calculate] ボタンをクリックする。すると、②
算の方式が完全には同一ではないためである。ただし、
多くの場合、そのズレは今回の例のような微差となる。
目安という意味では、いずれを用いても大差ないが、
①
②
結果
③
④
②
①
⑤
③
英文表現例
結果
④
⑤
図 3 G*Power 操作画面
図3- 比率の差の検証例
G*Power 操作画面
図 4 PS (Power and Sample Size Calculation) 操作画面
- 平均値の差の検証例 -
-比率の差の検証例-
図4 PS (Power and Sample Size Calculation) 操作画面
-平均値の差の検証例- 107 -
フリーソフトを用いた標本数の見積もり
②
①
③
④
結果
⑥
⑤
⑨
⑦
⑧
図 5 G*Power 操作画面
- 平均値の差の検証例 -
図5 G*Power 操作画面
-平均値の差の検証例『Output』領域の下部に、必要なサンプルサイズが表
クリックする。すると、その右横にある”Effect size d”
示される。今の例では、各群 39 名となる。
欄 が 計 算 さ れ る。 そ れ を 確 認 し、 そ の 下 の 長 い ⑧
(注)
標準偏差は、正確には、両方の標準偏差を 2
[Calculate and transfer to main window] ボ タ ン を ク
乗して平均を求め、その平方根として計算する必要が
リックすると、メインの”Effect size d”欄に同じ数値
ある(分散の世界で平均し、それを標準偏差の世界に
がセットされる。その後、メインウィンドウでのα欄
戻すという操作であるが、両群の人数が異なる場合は、
に「0.05」、power 欄 に「0.8」、”Allocation ratio N2/
人数による重み付をおこなった平均とする必要もあ
N1”欄に「1」をセットし、画面右下にある⑨ [Calculate]
る)。しかし、両標準偏差に大きな差がない場合は、単
ボタンをクリックする。すると、必要なサンプルサイ
に平均値を求め代用しても、計算結果に大きな違いは
ズが計算され、結果欄に表示される。今の例では、1
生じない。
群 40 名となる。
比率の差の例と同様に、この例でも、PS と異なった
(2) G*Power による計算方法
結果となっている。PS では、標準偏差を簡略化して求
図5に示したように、G*Power の起動画面で、①『Test
めた値を使っていること以外に、G*Power では、標本
family』項目として「t tests」を選ぶ。次に、右横の②
数の見積では、整数化に対し、独自の対応がとられて
『Statistical test』 項 目 で「Means: Difference between
いることが関係している。例えば、計算結果が 14.2 に
two independent means (two groups)」を選択する。引
な っ た 場 合、 四 捨 五 入 し て 14 人 と す る と、 検 出 力
き続き③『Type of power analysis』項目としては、「A
(Power) が指定した値以下になってしまう。これを避
priori: Compute required sample size‒ given α , power,
けるために、小数を整数化するときは必ず切り上げて
and effect size」を選ぶ。 ④『Input Parameters』項目
(今の例では 15 人)処理される仕様となっている(マ
に対しては、まず、Tail 欄を「Two」(両側検定)に変
ニュアルでの記載)。このため、G*Power には、PS を
更する(後で変更しても問題はない)。次に、”Effect
含めた他のソフトと比べ、サンプルサイズが多めに算
size d”をセットするために、⑤で示した [Determine
出される傾向があるとされている。
=>] ボタンをクリックする。すると、右に別ウィンド
ウが開く。そこの⑥『n1 = n2』欄に、予想される各
[8] 使用上の留意点
群での平均値と標準偏差を4つの欄に順にセットする
標本数の見積は、サンプルが「どの程度」必要にな
(上 2 つに平均値を、下2つに標準偏差を)。今の例では、
るかの目安を算出するのであり、算出された数が絶対
上から順に「4.0」「6.5」「3.5」「4.3」と入力する。セッ
的な意味を持つわけではない。単なる目安であり、通
トできたら、右ウィンドウ内の⑦ [Calculate] ボタンを
常は、この値を参考に、多少多めに設定している。なお、
- 108 -
吉 井 健 悟 他
少なめに設定することは、検出力の低下につながるた
とも珍しくはない。いくら文献を検索しても、資料が
め、避ける必要がある(少なめに設定するのであれば、
公表されていない、あるいは関連研究がなされていな
最初から、検出力を例えば 0.7 や 0.6 に設定するのが自
い場合、必要情報を得ることは難しい。このような場
然な処理となる)。
合、臨床治験でのフェイズⅡのように、予備調査(パ
検出力は、Cohen の基準
3)
に従い、ほぼ 0.8 が利用
イロット研究)を行い、不足している情報を補うのが
されている。検出力不足(標本数不足)による失敗(第
原則であるが、その余裕がないことも多い。このよう
2 種の誤り=見逃し)を極力避けたいのであれば、0.9
なときは、
「それらしい数字で代用する」という方法以
や 0.95 を利用しても良いが、検出力を上げると、予想
外に、G*Power では、効果量 (Effect Size Index) と呼ば
以上にサンプル数が増え、実施が難しくなることも多
れる指標で代用することができるようにもなってい
い。実際、今回の平均の差の例で、検出力を 0.9 ある
る。効果量とは、問題としている差の大きさを、標準
い は 0.95 に 上 げ る と、 サ ン プ ル サ イ ズ が 40 か ら
誤差(標準偏差の一種、通常、標本平均の標準偏差を
53(0.9)、あるいは 65(0.95) と、1.3 倍以上に増加する。
示す)で基準化した指標で、ある意味、絶対的評価が
サンプル数が増えると、集める困難さ以外に、精度管
可能な指標となっている。t検定の場合には、
「0.2(効
理の問題も発生しやすくなる。よほど大切な研究で無
果量小)」、「0.5(効果量中)」、「0.8(効果量大)」とい
い限り、0.8 に止めておいた方が良い。逆に、0.8 未満
う Cohen の基準(目安)3) があり、効果量の設定に迷っ
の設定は、科学的な信頼性に疑問符を付けられかねな
た場合は、
「0.5」として設定することが推奨されている。
いので、
避けるのが賢明である。以上、結論としては「検
ただし、これは一種の方便であり、先に説明したよう
出力は 0.8 を用いる」のが無難な選択となる。
に、予備調査等で情報を収集するのが原則である。
今回、
PS と G*Power という 2 つのソフトを紹介した。
標本数の比について、補足しておく。統計的仮説検
若干の食い違いが生じるが、現実的には、一方のソフ
定において総標本数が同じ場合、群ごとの標本数が 1:1
トのみで用は足りる。しかし、このような見積を行う
のときに検出力が最も高くなることが知られている。
機会は、
それ程多くはない。このため、ソフト利用時に、
すなわち、有意差を得るという目的では、同じ標本数
例えば、検定の種類欄を「両側」(Two) とすべきとこ
に設定するのが最も効率的となる。珍しい疾患に対す
ろを、初期設定のまま「片側」(one) としてしまう、あ
るケースコントロールスタディ(症例対照研究)では、
るいは、危険率や検出力の数値を打ち間違える、さら
ケースの例数が限られるため、その不足分をコント
には、検定手法の選択を間違える、などのミスに気づ
ロール(対照)で補い、例えば、1:2 ~ 1:4 のような割
かないことも多い。先に説明したように、サンプルサ
り付けを行うことがあるが、このような状況に無いの
イズの決定は、非常に重要な意味を持っており、ここ
であれば、1:1 に設定するのが原則である。このため、
を間違えることは致命的である。2 つのソフトでの処
本稿では「1:1」を前提に計算方法を説明した。ちなみに、
理結果を確認することにより、このような単純ミスを
1:9 のような偏った構成バランスを指定した場合、1:1
避けることができる。処理時間も手間もほとんどかか
のときよりもかなり多くの総サンプル数が必要とな
らない。実際に見積を行う際は、両方のソフトを利用
る。実際、平均の差の場合(α= 0.05、1- β =0.8)
、80
し、互いの結果を見比べた方が良い。
(=40+40)から 218(=22+196) と 2.5 倍以上の増加となる。
PS にも G*Power にも、今回紹介した比率・平均の
今回紹介したソフトの使い方を説明した資料はあま
差以外に、多くの見積手法が採用されている。特に、
り多くはない。しかも大半は英文で、日本語でのまと
G*Power は、Wilcoxon の順位和検定(Mann-Whitney
まった解説書は、執筆時点では出版されていない。し
の U 検定)に対する見積も含まれている。順位和検定
かし、インターネットでソフト名をキーワードにして
に関しては、解説書にも見積方法の記載がないことが
検索すると、参考となる文献等をいくつか見つけるこ
多いため、貴重なツールとなり得る。また、PS には、
と が で き る( 例 え ば、PS に 対 す る 文 献 6) や、
図 2、図 4 に示したように、論文等でそのまま利用可
G*Power に対する文献 7))。
能な、統計手法に関する説明文の記載例が示される。
英文で投稿する際には、ここを参照(引用)すると良い。
参考文献
比率の差の場合は群ごとの発生率、平均の差の場合
1) 永田靖(2003)
:サンプルサイズの決め方、朝倉書
は群ごとの平均値と標準偏差に関する情報が必要とな
る。これら情報の一部(あるいは、全部)が不明なこ
店
2) Thomas P. Ryan (2013): Sample Size Determination
- 109 -
フリーソフトを用いた標本数の見積もり
and Power, Wiley.
3) Jacob Cohen (2009): Statistical Power Analysis for
the Behavioral Sciences, Psychology Press.
4 ) Po w e r a n d S a m p l e S i z e C a l c u l a t i o n ( P S ) :
(2014/08/15 現在 )
http://biostat.mc.vanderbilt.edu/w iki/Main/
PowerSampleSize.
5)
G*Power: (2014/08/15 現在 )
http://www.gpower.hhu.de/
6)
新谷歩 (2011): 今日から使える医療統計学講座 (3)
サンプルサイズとパワー計算 . 週刊医学界新聞 ( 医
学書院 ), 第 2937 号 (2011 年 7 月 18 日 )。
h t t p : / / w w w. i g a k u - s h o i n . c o . j p / p a p e r D e t a i l .
do?id=PA02937_06(2014/08/15 現在 ) .
7) 水本篤、竹内理 (2010): 効果量と検定力分析入門 統計的検定を正しく使うために -、外国語教育メディ
ア学会関西支部メソドロジー研究会 2010 年度報告
集、pp47-73。
http://www.mizumot.com/method/mizumototakeuchi.pdf(2014/08/15 現在 )
- 110 -
Dawn E. O’
Day
京府医大看護紀要,24:111-120,2014
Improving Access to Outpatient Services for Non-Japanese Speaking Patients
Dawn E. O’Day1, Yoshinobu Fujita2, Yuko Sumiya3,
Chikako Koshiro4, Naoko Nishida2
1)School of Medicine,Kyoto Prefectural University of Medicine
2)School of Nursing, Kyoto Prefectural University of Medicine
3)Freelance Interpreter and Translator
4)University Hospital Nursing Department, Kyoto Prefectural University of
Medicine
Abstract
A task force was established to address the issues of language barriers that burden hospital staff, increase anxiety levels for
non-Japanese speaking patients, and prevent such patients from accessing healthcare services at the Kyoto Prefectural
University Hospital. The task force members assumed the responsibility of translating and editing the outpatient brochure
while the medical departments within the hospital provided an English translation of the services they offer. Various
challenges regarding language and cross-cultural differences were identified and as much as possible were addressed in
deference to the vision, tone, and language used by the authors of the original brochure. This report concludes with a
summary of the progress the task force has thus far made along with recommendations for future work that can help
patients who are illiterate in the Japanese language independently gain greater access to healthcare services. These
recommendations include translating the inpatient brochure, writing instructions in the target language for machines that
are used by patients, translating words that are on the signage throughout the hospital, and addressing the needs of
multicultural patients by providing translations in more languages than just English.
Keywords:language barriers, cross-cultural differences, non-Japanese speaking patients, outpatient brochure, leaflet
As a native English-speaking patient with limited
Figure 1.) She waited for a few moments; then an
Japanese language skills, a foreigner faced many
English-Japanese interpreter came to help her. She
challenges as she attempted to navigate her way
eventually got the healthcare she had urgently needed.
through Kyoto Prefectural University Hospital (KPUH)
in order to receive urgent care services in the winter of
This event and ones similar to it led one of us to
2013. First of all, she became disoriented when she
offer to create a survival kit in English that could help
walked through the entrance and realized the hospital
behind
it,
so
she
help.
(See
approached
desk and
had been renovated since she had last
received the
care
asked
for
there. She had already been feeling anxious
Figure about
1.) She the
waited for
a
few
moments;
symptoms she was experiencing, which includedthen an
English-Japanese
blurred vision. However, she tried to orient
herself
byto help
interpreter
came
her. She eventually got
looking for a list of departments on a wall
in the lobby.
the healthcare she had
urgently
needed.
Even though her vision was blurred, she could
see
some Japanese writing. She looked at the signs that
and ones
were above her head, but she could see This
that event
nothing
similar to it led one of us
a
Photo credit: Dawn E. O’Day, M. S., 2014
survival kit in English
information desk. When she could not
one,help
shepatients
thatfind
could
face
similar Figure 1: This is the General Information desk that is located in the lobby
started to become more anxious. Therewho
was a circular
Figure 1. This is the General Information desk that
challenges
to of the Kyoto Prefectural University Hospital.
desk in the lobby with a staff member standing
behind
is located in the lobby of the Kyoto
independently gain access
to
medical
services
within
the
hospital.
This
person approached
one Hospital.
of her colleagues, asked
Prefectural
University
it, so she approached the desk and asked for help. (See
him for assistance, and he kindly offered to help. He sought permission for work to begin on
this project, and a meeting was arranged to discuss it at length on June 9th. On that day, as we
walked through the Center for Admitting and Discharging Patients to go to the meeting, we
noted some of the places in which only Japanese was written on signs in the hallways where
- 111 services;
-
patients walk to receive
and we discussed how this poses a challenge for nonJapanese speaking patients as they attempt to find their way to the various medical
departments within KPUH.
offer for
to an
create
was written in English. Secondly, shetolooked
Improving Access to Outpatient Services for Non-Japanese Speaking Patients
patients who face similar challenges to independently
those who are not proficient English language
gain access to medical services within the hospital.
speakers, they do not appear to address the needs of
This person approached one of her colleagues, asked
the visually impaired. Sugano et al., however, have
him for assistance, and he kindly offered to help. He
addressed this concern in Japan.
sought permission for work to begin on this project,
Because there is a shortage of braille transcribers,
and a meeting was arranged to discuss it at length on
Sugano et al. (2010) have developed a program that can
June 9th. On that day, as three of us walked through
be used by novices to translate various documents
the Center for Admitting and Discharging Patients to
from Japanese into braille. This program is called
go to the meeting, one of us noted some of the places
eBraille, and it is available via the Internet at no charge
in which only Japanese was written on signs in the
to the public. It is a program that has been proven to
hallways where patients walk to receive services. We
provide translations that are just as accurate, if not
discussed how this poses a challenge for non-Japanese
more so, than other braille translation programs. The
speaking patients as they attempt to find their way to
developers expanded upon their program by including
the various medical departments within KPUH.
more words from various fields into their dictionary,
which has resulted in a higher rate of translation
As with numerous other hospitals around the
accuracy. Specifically, they added more than 4,300
world, problems such as this abound. Meeting the
medical words and called this new version of their
needs of patients with unique concerns is becoming
program eBraille for medicine or eBraille-M for short.
more and more of a challenge for hospital personnel,
They modified the original Japanese text of the Kobe
and disseminating medical information to patients who
University Hospital brochure by eliminating content
have exceptional needs is a matter of growing
that was redundant, using a smaller font size, and
importance and a global concern for many (Sugano et
writing the sentences in a simpler form; then they
al., 2010). For example, the Australian Association of
translated the brochure into braille. They found that
Health Interpreters and Translators (2014) is an
adding the medical words increased the translation
organization whose mission it is to provide outstanding
accuracy of the brochures. They printed them out and
quality interpreting and translation services to patients
made them available to patients in various places
and healthcare professionals in an effort to address
throughout the hospital, so patients who are somewhat
some of these concerns. As for another example,
visually challenged or who are blind could access
because the University of Rochester Medical Center
information about healthcare services, which they
(2014) in the United States also recognizes the
would not otherwise be able to independently access.
importance of good communication between patients
In the end, they learned that the patients responded
and their healthcare providers, they offer services for
well to the dissemination of both the inpatient and the
the hearing impaired and non-English speaking
outpatient brochures (Sugano et al.).
patients and/or their family members. They also offer
the services of Spanish and American Sign Language
Documents related to the delivery of medical care
interpreters who are available 24-hours a day. Patients
services that frequently require translation include, but
and their family members can also use the medical
are not limited to, discharge patient instructions,
center’s telephone system, which is capable of
patient education materials, healthcare booklets,
translating 150 other languages. Furthermore, they
hospital employee manuals, hospital surveys and
offer closed-caption TV for the hearing impaired, and
questionnaires, signs and placards, patient medical
videophones, which enable telephonic synchronous
history forms, and inpatient and outpatient brochures
audio and video communication between two people
(Language Scientific, 2014). Translating documents,
(University of Rochester Medical Center). While they
such as brochures, into braille, English, and other
offer numerous services for the hearing impaired and
languages is the first step of many that can be taken by
an astounding number of interpreting services for
hospitals if healthcare providers wish to meet the
- 112 -
Dawn E. O’
Day
needs of the growing number of foreigners who are in
A decision was made to ask a professional
need of healthcare services in Japan. According to
translator who is known to one of us to translate the
Koyama et al. (2012), it is necessary for healthcare
outpatient brochure into English because of her
workers to take action in Japan in order to breakdown
experience in the healthcare system and her
language barriers, so the effective communication
outstanding ability to translate Japanese into English.
between patients and their doctors can take place.
(This translator has translated three books from
Toward this end, creating an English survival kit
Japanese into English on the subject of psychotherapy,
seemed like a good idea; however, after some
and she worked as a professional interpreter and
consideration, we decided to start by translating the
translator for the Aoibashi Family Clinic in Kyoto for 25
KPUH outpatient brochure instead.
years.) It was also decided that one of us would work
with the translator and edit the brochure in the event
The First Meeting
us also suggested that each of the medical departments
After the necessary introductions were made during
independently translate the services they respectively
the first meeting, a discussion was initiated by explaining the
provide which are listed in the leaflet. During this
various challenges that patients face at the hospital when
meeting, the group members also discussed the lasting
they do not speak or read Japanese. Language barriers that
impressions that patients have when they first come to
can prevent such patients from understanding hospital
the hospital and the importance of having a welcoming
procedures and that can impede their ability to gain physical
environment at the hospital. Furthermore, another
access to medical departments within the hospital were
member discussed the challenges nurses face when
discussed. An outpatient brochure that had been written by
attempting to deliver healthcare services to foreigners.
one of us for the Orthopedics Department of Yukioka
In particular, she mentioned that there is an increasing
Hospital in Osaka was presented and reviewed, and it was
number of foreign patients who are transported on an
suggested that a similar one be made for KPUH. Everyone
emergent basis from conferences they are attending in
agreed that this was a good idea, and one of us suggested
Kyoto, and language barriers between the nurses and
that it would be useful if the outpatient brochure, the leaflet
these patients pose problems that she hopes we will be
within the brochure, and the inpatient brochure for KPUH
able to overcome. At the close of the meeting, plans to
were all translated.
(See Figure
onal interpreter and translator
for the Aoibashi
Family 2.)
Clinic in Kyoto
also decided that one of us would work with the translator and edit the
t that she would like to participate in
ne else suggested that each of the
ts translate the services they
which are listed in the leaflet.
g, the group also discussed the
g a welcoming environment at the
ting impressions that patients have
me to the hospital. Furthermore,
scussed the challenges nurses face
o deliver healthcare services to
ular, she mentioned that there is an
of foreign patients who are
mergent basis from conferences that
in Kyoto, and language barriers
Photo credit: Kyoto Prefectural University of
nd these patients pose problems that
Medicine, n.d.
ercome. At the close of the meeting,
e outpatient brochure and the leaflet
a decision was made to meet again
rochure was translated.
Outpatient Brochure
that she would like to participate in this project. One of
translate the outpatient brochure and the leaflet were
reiterated, and a decision was made to meet again once
the outpatient brochure was translated.
The Outpatient Brochure
In the interim, meetings were held with the
translator on June 29th and June 30th, and she directly
translated into English the Japanese that was written in
the outpatient brochure. (See Figure 3.) The way
English is naturally spoken was taken into
consideration as adjustments were made to the words
that had been translated. Out of respect for the existing
hospital policies and for the vision, tone, and language
used by the authors of the original brochure, a sincere
eetings were held with the translator
ne 30th, and she directly translated
effort was made to translate the words into English as
apanese that was written in the
directly as possible. As the work progressed, various
(See Figure 3.) The way
English
Figure
2. is
This
is 2.the
Figure
This Japanese
is the Japaneseversion
version of of the first
was taken into consideration as the first page of the KPUH outpatient
challenges were encountered and some cultural
page of the KPUH outpatient brochure.
made to the words that had been brochure.
pect for the existing hospital policies
ne, and language used by the authors of the original brochure, a sincere
translate the words into English as directly as possible. As the work
hallenges were encountered and some cultural differences came to light.
- 113 -
of two of the members took place on July 3rd and July 10th to discuss the
changes that were made, the editing work, and the challenges that arose
brochure.
Improving Access to Outpatient Services for Non-Japanese Speaking Patients
Fundamental
Principles
Delivering high level medical
services
We take the utmost care in ensuring
the safety of our patients
Respecting patients’ rights and
delivering patient-centered medical
services
Healthcare providers working
together as a team to promote
medical services
As we continue to make
advancements in the field of
medicine, we train healthcare
providers who will be responsible
for contributing to its future
In Kyoto prefecture, we contribute
to community medical care as a
basic hospital service
The Philosophy and
Fundamental
Principles
of
KPUM
Philosophy
We are committed to
delivering world-class
medical services to the local
community.
Kyoto Prefectural University of Medicine
Figure 3. This is the English version of the first page
of the KPUH outpatient brochure.
465 Kajii-cho, Hirokoji agaru, Kawaramachi dori,
Kamigyo-ku, Kyoto 602-0841
Tel. 075-251-5111
www.h.kpu-m.ac.jp
Kyoto Prefectural
University
Hospital
Outpatient Guide
Photo credits: Microsoft for Word, 2011
Figure 3. This is the first page of the English version of the Kyoto Prefectural
University Hospital outpatient brochure. Different images, such as those
that are consistent with material that has previously been printed for the
hospital, will replace the images that can be seen on this sample page.
- 114 -
Dawn E. O’
Day
differences came to light. A meeting consisting of two
concerned the residents-in-training program and a
of the members took place on July 3rd and July 10th to
request in Japanese that patients “cooperate”with
discuss the translation work, the changes that were
hospital policy. Consistent with KPUH’s patient-
made, the editing work, and the challenges that arose
centered approach to delivering healthcare services
when translating the brochure.
and to ensure that foreign patients feel that their rights
are respected, the wording was modified so patients
will understand that they have a choice to accept or to
Challenges Members of the Task Force Faced
refuse healthcare services when the residents-in Several challenges were encountered that include,
training are present.
but were not limited to, differences in the way language
is communicated and understood, cross-cultural
Challenge #2: The following cross-cultural
differences with regards to hospital practices and
differences related to hospital practices and procedures
procedures, and instructions in the brochure that pose
were identified: (a) the request for additional money
a problem for patients who are not literate in the
when new pat ients do not provide a letter of
Japanese language (e.g., a link to the KPUH website
introduction when seeing a doctor, (b) the use of
that is written in Japanese, forms that are written in
automated machines to obtain tickets to see physicians,
Japanese that patients need to fill out, etc.). Some of
and (c) the use of a FAX machine to transmit
the examples of the problems that were identified and
prescriptions to pharmacies.
the solutions that were proposed to address these
problems follow:
Solut ion: Provide an explanat ion of these
procedures in a guidebook.
Challenge #1: Regarding the use of language and
the fundamental principles of the hospital, one
Challenge #3: The telephone number and the link
sentence in the brochure indicated that KPUH offers
to the url on the first page of the brochure currently
safe medical services. One of us was reluctant to
connects patients to an operator who speaks Japanese
include the comment about safe medical services in the
and a webpage in which the details about the
brochure because it might undermine the confidence
healthcare services offered by KPUH are written in
Westerners have in the hospital. (Paradoxically
Japanese. Additionally, telephone numbers used for
speaking, stating that medical services are safe can call
consultation, to support patients with cancer, and to
into question the quality of services that are offered.
make appointments for health examinations and
From a Western perspective it is expected that the
immunizations will connect people to Japanese-
hospital will engage in safe medical practices, so the
speaking staff.
obvious does not be stated.)
Solution: One of us, who is a native English
Solution: After discussing this problem, it was
speaker, offered her professional narration services in
made clear by one of the members of the task force
order to create automated telephone messages for
that it is necessary to state in the brochure that KPUH
native English speakers. She also recommended that
offers safe medical services. With this in mind, another
the contents of the outpatient brochure be published
one of us suggested communicating it in a way that
on the website in English. This will give prospective
will promote, rather than undermine, patients’
and returning patients an opportunity to familiarize
confidence in the healthcare services that are offered
t h e m s e l ve s w i t h t h e h o s p i t a l ’ s p o l i c i e s a n d
at KPUH. Therefore, the following wording was
procedures before arriving at the hospital. (Note:
suggested: We take the utmost care in ensuring the
Telephone numbers that are used for consultation,
safety of our patients . An additional matter regarding
support, and for making appointments is a matter that
language and cultural sensitivities arose. This matter
has yet to be resolved as the patients will need to
- 115 -
Improving Access to Outpatient Services for Non-Japanese Speaking Patients
speak to English-speaking staff members. At this time,
category. For example, in the case of digestive surgery,
however, there is a shortage of staff who possess this
a recommendation was made to use the terms
language skill.)
gastrointestinal surgery. Furthermore, Parkinsonism,
which is listed among the disorders one department
Finally, it was written in the Japanese brochure
treats, is an example of the need to seek clarification
that replacements for the hospital card can be obtained
about terms that do not constitute an inclusive
and that forms for certain services would need to be
category. The symptoms of Parkinsonism are related to
filled out. However, no explanation about how to
Parkinson’s disease; but Parkinson’s disease is a
replace the card or how to obtain the forms was
neurogenerative disease that is progressive. Parkinson’
provided. The procedures related to these matters will
s disease was not included in the brochure, so
need to be explained. Because of this and because more
confirmation about excluding it from the list was
explicit descriptions and instructions in English were
sought. When issues such as this arose, the head of the
written compared to what was written in Japanese, the
nursing department consulted with a member from the
number of pages in the English brochure currently
appropriate medical department for clarification and/
exceeds the number of pages in the Japanese brochure.
or confirmation regarding the services that are offered.
The Leaflet
Conclusion
As previously mentioned, the leaflet consists of a
To summarize this report, due to a challenging
list of the individual medical departments that exist
experience a foreign patient had while seeking medical
within the hospital and the medical services that they
care at KPUH, one member of the task force was
provide. (See Table 1.) The English version of the leaflet
inspired to create an English survival kit for patients
th
was forwarded to one of us on July 8 . The contents of
who speak English but who do not read and/or speak
the leaflet were subsequently edited; then two of us
Japanese. She approached another member who
th
met on July 17 to go over the editing that was done
sought permission to begin this project. Members of
and to discuss the issues that arose. After that, the
the KPUH Nursing Department and the KPUM Nursing
th
members of the task force met again on July 25 . As
School shared a similar vision and goal, and this
with the outpatient brochure, the leaflet was edited
resulted in the establishment of a task force. Members
with deference to the choices the original authors had
of the task force held meetings to devise a course of
made. (In this case, the authors are the physicians from
action, which began with translating and editing the
each department.) Consideration was also given to
outpatient brochure and the leaflet that accompanies
ensure that there was consistency in the writing
it. Through this process, challenges regarding language
throughout the leaflet. Specifically, choices needed to
and cross-cultural differences with regards to hospital
be made regarding the use of the words“department”
pract ices and pro cedures were ident ified and
vs.“division,”the use of American English vs. British
addressed. Furthermore, the process of translating and
English, etc. Only minor problems were encountered
editing the outpatient brochure called attention to
while editing the leaflet, and examples of these
additional materials that need to be translated (e.g.,
problems follow: (a) Westerners’unfamiliarity with
hospital forms, the KPUH website with regards to
the Chinese word kampo and how to translate it, (b)
outpatient services, etc.), procedures and policies
changing medical terms that are familiar to Japanese,
which would need to be explained to Westerners who
but that are not commonly used by Westerners even
lack familiarity with them (e.g., charging an additional
though these terms are in the English language (e.g.,
fee for patients who do not have a doctor’s referral
digestive surgery), and (c) seeking clarification about
letter, transmitting prescriptions by FAX machine, etc.),
terms that are used in the English language and appear
and the need for English-speaking staff who can
to be, but are not considered to be, an inclusive
provide support to foreign patients (e.g., arranging
- 116 -
Dawn E. O’
Day
Table 1. Leaflet: The KPUH Medical Departments and Medical Services
Table 1 Leaflet: The KPUH Medical Departments and Medical Services
Medical Departments
Medical Services
Department of General Medicine
First-time patient without a referral letter.
Department of Gastroenterology
Alimentary tract (esophagus, stomach, duodenum, small and large intestines), biliary tract (bile duct, gall bladder), liver, pancreas,
spleen, and endoscopy.
Department of Cardiology
Cardiology (heart and blood vessel diseases) and abnormal blood pressure.
Department of Nephrology
(Kidneys)
Kidney disease and dialysis.
Department of Pulmonary Medicine
Lung cancer, asthma, pneumonia, respiratory diseases, and sleep apnea syndrome
Department of Endocrinology and
Metabolism
Diabetes mellitus, endocrine disease, thyroid disease, and obesity
Department of Rheumatology and
Allergology
Rheumatoid arthritis and connective tissue disease
Kampo Medicine Outpatient
Department
General internal medicine, allergy, and immunology
Department of Hematology and
Oncology
Hematological malignancies and other benign hematological diseases
Department of Neurology
Cerebrovascular diseases, neurodegenerative diseases, diseases of peripheral nerve and muscle, dementia, parkinsonism, and
normal pressure hydrocephalus
Department of Gastroenterological
Surgery
Esophageal and gastric surgery, colorectal surgery, hepatobiliary and pancreatic surgery, and laparoscopic surgery
Department of Cardiovascular
Surgery
Cardiac surgery (coronary disease, valvular disease, arrhythmia), and vascular surgery (aortic aneurysm, arterial occlusion, and
varicose veins)
Department of Respiratory Surgery
Respiratory organ, lung cancer, spontaneous pneumothorax, chest wall tumor, mediastinal tumor, and hyperhidrosis
Department of Endocrine & Breast
Surgery
Breast cancer and breast disease
Department of Transplantation and
General Surgery
Organ transplantation (kidney, liver, pancreas), and general surgery
Department of Plastic and
Reconstructive Surgery
Reconstruction for the head, neck, and/or breast.
Plasty for cleft lip, cleft palate, polydactyl, and microtia.
Facial trauma, fracture, and wound repair.
Department of Neurosurgery
Brain tumor, skull base surgery, cerebrovascular disease (stroke), neurotrauma, pediatric neurosurgery, and functional
neurosurgery
Department of Orthopedics
Bone and joint disease, joint disorder (hip, knee, foot & ankle, shoulder, elbow, hand), rheumatoid arthritis,
spine and spinal cord disorder, peripheral nerve disorder, osteoporosis, musculoskeletal tumor, pediatric orthopedics, fracture, and
sports medicine
Department of Obstetrics and
Gynecology
Pregnancy, delivery, check of fetal abnormality, consultation of breast feeding, endometriosis, sexually transmitted disease,
infertility, climacteric disorder, female outpatient doctors available, cancer or benign tumors, and laparoscopic surgery
Department of Pediatric Cardiology
and Nephrology
Pediatric cardiovascular disease, Kawasaki disease, and pediatric renal disease
Department of Pediatric Surgery
・Pediatric abdominal and thoracic surgery (inguinal hernia, appendicitis, intussusception, and pectus excavatum)
・Neonatal surgery (anorectal malformation, congenital diaphragmatic hernia, intestinal atresia, and Hirschsprung’s disease)
・Pediatric oncologic surgery (neuroblastoma, Wilms’ tumor, and hepatoblastoma)
・Pediatric emergency medicine (trauma, foreign body ingestion and aspiration)
Department of Pediatrics
Pediatric neurology, neuromuscular disorders and epilepsy, cerebral palsy, developmental delay, developmental care for low birth
weight infants, the preterm infants and the syndromes of congenital anomaly, pediatric endocrinology and diabetes mellitus,
inherited metabolic diseases and newborn mass screening, obesity in childhood and adolescence, pediatric oncology, pediatric
hematology, pediatric hematological malignancies, clinic for the childhood cancer survivors, food allergy and pediatric asthma,
pediatric rheumatology and autoimmune diseases, primary immunodeficiency, auto-inflammatory syndromes and chronic
inflammatory diseases, hemophilia and the coagulation disorders, psychosomatic disorders in childhood and adolescence, clinic
for children and adolescents with headaches, and immunization services with vaccinations
Department of Pediatric
Cardiovascular Surgery
Congenital cardiovascular disease
Department of Ophthalmology
Cornea, refractive surgery, dry eye, allergic disease, atopic disease, keratoconus, contact lens, glaucoma, vitreoretinal disease,
diabetic retinopathy, macular disease, retinopathy of prematurity, uveitis, pediatric ophthalmology, lacrimal disorders, oculoplastic
surgery, ptosis, eyelid and orbital neoplasm, and blowout fracture
Department of Dermatology
Skin tumor, atopic dermatitis, urticarial, hair disorder, psoriasis, skin surgery, and collagen disease
Department of Urology
Adrenal tumor, retroperitoneal tumor, kidney cancer, urothelial/bladder cancer, testicular cancer, penile cancer, prostate cancer,
voiding dysfunction, pediatric urology, enuresis, female urology, urinary stone disease, urinary tract infections, infertility, sexual
- 117 -
Improving Access to Outpatient Services for Non-Japanese Speaking Patients
dysfunction, and partial androgen deficiency in the aging male
Department of Otolaryngology
Middle ear disease, vertigo, hearing loss, deafness in children, cochlear implant, genetic test for deafness, nasal/paranasal disease,
nasal allergy, pharyngeal disease, laryngeal disease, voice disorder, swallowing disorder, and head and neck tumors
Department of Psychiatry
Mood disorder (depression), anxiety disorder (panic disorder, obsessive-compulsive disorder, social anxiety disorder), old age
psychiatry (dementia, etc.), psychotic disorders (schizophrenia, etc.), adolescent psychiatry (eating disorders, etc.), and
psychological care for patients with cancer (psycho-oncology)
Department of Radiology
Radiation therapy, angiography, interventional radiology (IVR), peripheral blood vessel, and radioisotope therapy
Department of Anesthesia
Preoperative anesthesia clinic (PAP)
Department of Dentistry
Endodontic treatment, periodontal treatment, oral surgery, special needs dentistry, dental implant, temporomandibular joint
disease, xerostomia, and perioperative oral management (oral health care)
Inquiries about Cancer
Telephone number: 075-251-5235 (Weekdays: 9 a.m. to 5 p.m.; Closed: 12 p.m. to 1 p.m.)
Genetic Counseling Office
Telephone number for genetic counseling: 075-251-5515 (Weekdays: 3:30 p.m. to 4:30 p.m.)
Medical Center for Dementia and
Related Diseases
Telephone number for consultations:
Clinic for Second Opinions:
Appointments
Telephone number:
075-251-5566 (Weekdays: 9 a.m. to 5 p.m. Appointments)
075-251-5286 (Weekdays: 9 a.m. to 4 p.m.)
University Hospital, Kyoto Prefectural University of Medicine
List of Outpatient Services
Prepared in August 2013
appointments for immunizations). Members of the
English-speaking patients, (f ) translating into other
medical departments from within the hospital provided
languages words that are written on the signage
the task force with a translated version of their
throughout the hospital, and (g) addressing the needs
services, and only minor changes needed to be made to
of multicultural patients by providing translations of
their submissions. In the end, the task force discovered
the aforementioned materials in more languages than
that the length of the brochure that is written in
English.
English exceeds the number of pages of the brochure
that is written in Japanese, and its contents would,
It is evident that realizing these goals can help to
therefore, be more suitable for the beginnings of a
reduce patients’anxiety levels while providing them
comprehensive guidebook rather than a brochure. A
with the means needed to seek healthcare in an
guidebook can also serve the purpose of informing
autonomous manner. It can also help to minimize the
patients about hospital policies that are not included in
burden language barriers have on healthcare workers,
the brochure, and it can include a map to help patients
which will make it possible for them to concentrate
orient themselves to the hospital grounds, which can
their efforts on the optimal delivery of healthcare
also help them to independently navigate their way
services. Finally, meeting these goals can propel the
throughout the hospital as needed.
hospital in a forward-thinking manner as it, like other
hospitals around the world, rise to the 21st century
Finally, plans for the future work of this task force
challenge of meeting the healthcare needs of an
include the following: (a) identifying the General
increasing number of multicultural patients who either
Information desk by a sign with a large question mark
purposefully (e.g., by engaging in medical tourism) or
and/or words written in foreign languages that make
incidentally (e.g., by vacat ioning abroad) find
patients who do not read Japanese aware that it is a
themselves receiving medical care in countries that are
place where they can have their questions answered,
foreign to them.
(b) translating the KPUH inpatient brochure into
English, (c) writing instructions in English for the
Acknowledgements
machines that are used by outpatients (e.g., the FAX
machine, machines patients use to settle their hospital
We would like to express our deep appreciation to
bill, etc.), (d) translating forms into English that
Mr. Sakamoto, Assistant Manager of the Medical
patients need to fill out, (e) providing support and
Services Department, for his work and support related
English educational services to the nursing staff, so
to this project. We would also like to express our
that they can better address the healthcare needs of
heartfelt appreciation to Ms. Sumiya for the volunteer
- 118 -
Dawn E. O’
Day
work she has done. Her translation services are
invaluable, and the work she has done is greatly
appreciated.
References
Koyama, A., Niki, M., Matsuoka, H., Sakamoto, R., Sakai,
K., Jinnai, R., & Yasuda, K. (2012).
Psychological problems for non-Japanese speaking
patients in Japan. Journal of Travel Medicine, 19 (5),
1195-1982.
Language Scientific. (2014). Translation services for the
hospital industry. Retrieved October 14, 2014, from
http://www.languagescientific.com/translationspecialization-industries/life-science-translationservices/hospital-translation-services.html
Sugano, A., Ohta, M., Oda, T., Miura, K., Goto, S.,
Matsuura, M…Takaoka, Y. (2010). eBraille: A webbased translation program for Japanese text to
braille. Internet Research, 20 , 5, 582-592.
The Australian Association of Health Interpreters and
Translators (2014). AAHIT ( Victorian branch).
Retrieved October 14, 2014, from http://aahit.asn.au/
University of Rochester Medical Center. (2014).
Interpreter services. Retrieved October 14, 2014, from
http://www.urmc.rochester.edu/strong-memorial/
services-amenities/services/interpreters.aspx
- 119 -
修士論文要旨
都市部幼児園児の身体活動量および体格・体力
(その実態、身体活動量の季節差および保育園児との比較)
学籍番号 124101 青木好子
指導教員 岡山寧子
目的 本研究では、幼児期の健康・体力づくりに役立てる基礎資料として、都市部幼稚園児の身体活動量の実態と体
格および体力との関連を明らかにすることを目的として、3軸加速度計を用いて身体活動量を評価し、3つの課
題について検討した。研究Ⅰでは、幼稚園児の身体活動量・体格・体力の実態と相互の関連性について、研究Ⅱ
では身体活動量の季節差について、研究Ⅲでは保育環境の異なる保育園児を比較対象に幼稚園児との相違につい
て検討した。
方法 【対象】対象は、T 市H幼稚園の園児 83 名(男児 47 名、女児 36 名)および研究Ⅲの比較対照として K 市D保
育園の園児 95 名(男児 54 名、女児 41 名)
、いずれも 3 歳から 6 歳である。身体活動量は休日を含む 7 日間、3 軸
加速度装置内蔵活動量計を用いて、1 日あたりの総エネルギー消費量(TEE)、歩数、身体活動レベル(PAL)、運
動強度別(低強度、中等度、高強度)活動時間を測定した。体力は、25 m走、立ち幅跳び、テニスボール投げ、
両足連続跳び越し、体支持持続時間、握力、捕球の 7 種目で評価した。【研究Ⅰ】全ての測定値について男女別学
年別の平均値・SD を求め、身体活動と体格、体力との関連は偏相関分析と共分散分析で検討した。【研究Ⅱ】9 月
と 3 月の季節差については対応のある t 検定で、9 月と 3 月の身体活動量の関連については、偏相関分析を行った。
【研究Ⅲ】体格、体力、身体活動量の 2 園の比較は、性及び実年齢を共変量として共分散分析を行い、Bonferroni
の修正による多重比較を行った。
結果 【研究Ⅰ】身体活動量指標には、学年差は少ないが、男女差、平日休日間差が認められる指標が多かった。体力
には、明らかな学年差があり、5 歳児では 3 種目に男女差がみられた。身体活動量は、体格と有意な関連を示さな
かったが、体力には有意な関連が認められ、歩数および 4METs 以上活動時間の低値群は、中値群、高値群に比べ、
いずれの体力測定値とも低値を示した。
【研究Ⅱ】
9 月と 3 月の身体活動量は、歩数や PAL では差を示さなかったが、
中等度活動時間では夏期が、TEE、高強度活動時間は冬期が有意に高値であった。9 月と 3 月では、同活動量指標
間で有意な関連が認められた。
【研究Ⅲ】年齢調整後の身体活動量の比較で有意な差が認められたのは、平日は低
強度活動時間のみで、幼稚園が高値であった。休日は PAL と中等度活動時間が幼稚園で、高強度活動時間が保育
園で高値であった。
結語 本研究で対象とした都市部の幼稚園児においては、身体活動量は体力に関連し、高い身体活動量レベルの者の
体力が高値であった。季節差の検討の結果、年間を通してのより高レベルな身体活動量維持には、活動量の低下
しやすい冬期に、活発な身体活動を含む保育内容を設定することが効果的であることが示された。また、保育園
との比較では、平日は幼稚園や保育園で展開される保育内容や保育環境が、休日は家庭での過ごし方が幼児の身
体活動の量と質に大きく関係することが示唆された。今後は、更に対象を広げたデータを蓄積しながら、幼児期
に適した量と質を考慮した身体活動を明らかにし、これを幼児の体力アップや健康づくりを支援するプログラム
の開発につなげたいと考えている。
Key Words :幼稚園児、身体活動量、体力、季節差、保育園児
学位(修士)取得日 2014 年 3 月 1 日
-121 -
修士論文要旨
幼児の社会的スキルの獲得とその影響要因に関する研究
-自然体験活動の豊富さの観点から-
学籍番号 124101 国分映希
指導教員 園田悦代
目的 幼児の社会的スキルの発達にもたらす影響要因を、幼児と両親の自然体験活動の豊富さならびに両親の社会的
スキルから検討する。
方法 大阪府と京都府内の幼稚園および保育園の 3 ~ 5 歳児クラスに在籍する幼児 232 名とその保護者を対象とし、
質問紙調査を実施した。調査項目は、属性(幼児の月齢、性別、きょうだいの構成、両親の年齢)、幼児・父親・
母親の自然体験活動(自然体験活動を評価する尺度)、幼児・父親・母親の社会的スキル(幼児の社会的スキル尺
度、自己管理スキル尺度)とした。回答のあった 170 名(回収率 73.3%、有効回答率 100%)(男児:93 名、女児:
77 名、幼児の月齢:59.24 ± 12.02 か月、父親の年齢:39.72 ± 5.49 歳、母親の年齢:37.97 ± 4.32 歳)を分析対
象とした。統計解析は、χ 2 検定、対応のない t 検定、一元配置分散分析(Tukey の多重比較法)、相関分析(Pearson
の相関係数,幼児の年齢を制御変数とした偏相関分析)、重回帰分析を用いた。分析は SPSS 17 for Windows を用
い、すべての検定で有意水準は両側 5%とした。
結果 幼児の自然体験活動は年齢とともに増加し、明確な性差はなかった。きょうだいや兄姉の存在は自然体験活動
にポジティブに関係していた。幼児の社会的スキル 4 指標すべてに性差はなく、総得点および自己統制スキルは
年齢に伴い向上していた。きょうだいの存在は幼児の社会的スキルに好影響を与えていた。母親の社会的スキル
は幼少期の自然体験活動と関連していた。幼児の社会的スキル総得点、主張スキル、自己統制スキルは、母親の
社会的スキルと母親および幼児の自然体験活動から影響を受けていた。なかでも幼児の自然体験活動は幼児の社
会的スキルに最も影響を与えていた。
結論 (1) 幼児の社会的スキルは自身の自然体験活動の豊富さと密接な関連があった。(2) 幼児の主張スキルは、母親
の社会的スキルと幼児の自然体験活動から影響を受けていた。(3) 幼児の社会的スキルに強い影響をもつ幼児自身
の自然体験活動は、両親の幼少期の自然体験活動と正の相関があった。(4) 両親の幼少期の自然体験活動は、幼児
の自然体験活動を介して間接的に幼児の社会的スキルの獲得に影響を与える可能性があった。
したがって、社会的スキルの不足や少子化が問題視される現在、本研究により得られた知見が幼児の社会的スキ
ルを形成していく一助となることが期待される。それゆえに、著しい成長・発達をとげる幼児期の子どもに対して、
豊富な自然体験活動を経験できるよう、地域を含め幼稚園や保育園などの環境整備の推進が望まれる。
Key Words :幼児,親,社会的スキル,自然体験活動
学位(修士)取得日 2014 年 3 月 1 日
-122 -
修士論文要旨
病院に就職した新人看護職者の職場適応プロセスに関する研究
学籍番号 124104 坂井利衣
指導教員 西田直子
目的 本研究の目的は、新人看護職者が、就職前の段階からリアリティショックが落ちつくといわれる就職後 6 ヶ月
の間に、どのような不安や困難点を抱き、どのように乗り越えながら職場適応していくのかを明らかにすること
である。
方法 データは、看護系大学を卒業後、近畿圏内の病院に就職した 23 名を対象とした半構成的面接により収集した。
インタビュー内容は、木下康仁氏による修正版グラウンデッドセオリーの手法に基づいて、「就職前は、看護学生
が仕事をしていく上の心づもり」、「就職後 6 ヶ月は、新人看護職者が仕事に適応していくための対応」という分
析テーマで、逐語録から文脈の意味を壊さないように分析ワークシートを用いて分析した。概念を抽出し、さら
にサブカテゴリ、カテゴリへと分類した。
結果 対象者の概要は、国立大学から 5 名、公立大学から 2 名、私立大学から 16 名の研究協力が得られ、就職前は
23 名、就職後 6 ヶ月は 21 名を対象者とした。就職前は、仕事をしていく上での心づもりを説明する 32 概念が抽
出され、10 サブカテゴリ、4 カテゴリに分類できた。カテゴリは、【休まず仕事にいくための方法】【対人関係の
築き方】【仕事の身につけ方】【看護への期待】で形成された。看護学生が仕事をする上での心づもりは、うまく
職場に適応するために仕事に関するイメージから始まった就職前の思考プロセスであった。就職後 6 ヶ月は、仕
事に適応していくための対応を説明する 46 概念が抽出され、8 サブカテゴリ、4 カテゴリに分類できた。カテゴ
リは、
【休まず仕事にいくための方法】【対人関係の築き方】
【スムーズな仕事の仕方】
【看護の捉え方】に分類で
きた。就職後 6 ヶ月の新人看護職者が職場に適応していくための対応は、【休まず仕事にいくための方法】を確立
することで、【対人関係の築き方】を駆使し、【スムーズな仕事の仕方】を試行錯誤しながら、【看護の捉え方】を
模索しているという新人の職場での行動プロセスであった。新人看護職者の就職前から就職後 6 ヶ月の職場適応
への変化として、臨床現場で働くという実体験を通して、患者の死亡やボディイメージの変容に直面し、看護の
捉え方に戸惑うといったリアリティショックに陥っていた。一方、新人看護職者は、先輩や同期、患者の存在に
支えられ、看護できる喜びも感じていた。
結語 新人看護職者は、就職前の【看護への期待】と就職後の【看護の捉え方】に裏打ちされた看護職者としての自
覚から、自己の確立や他者理解などの人間的な成長と、看護観・職業観・人生観などを深い思考に発展させるといっ
た看護職者として成長する成長発達プロセスを辿っていた。
Key Words :新人看護職者、職場適応、修正版グラウンデッドセオリーアプローチ(M-GTA)
学位(修士)取得日 2014 年 3 月 1 日
-123 -
修士論文要旨
看護師の就業継続意思と組織コミットメントとの関連
学籍番号 124105 柴田明美
指導教員 岩脇陽子
目的 本研究の目的は、職場環境および組織における看護師個人の経験と組織コミットメントとの関連を検討し、病
院に勤務する看護師の就業継続意思に影響する要因を明らかにすることである。
方法 調査期間は、2013 年 6 月~ 7 月、対象者は近畿圏内の一般病床を有する 300 床以上の病院に勤務する看護師で
ある。調査方法は質問紙調査であり、調査項目は対象者の個人的特性、組織環境、組織における経験、就業継続
意思、専門職者行動、キャリア発達、3 次元組織コミットメント尺度(18 項目 : Meyer, Allen, & Smith, 1993) であ
る。分析は、組織環境や組織における経験、就業継続意思等と 3 次元組織コミットメント尺度との順位相関係数
による分析を SPSS17.0 for Windows を使用して行った。
結果 調査票の配布枚数は 4,532 部、回収部数は 2,332 部(回収率 51.4%)、有効回答 1,860 部、有効回答率 79.8%(女
性 96%、男性 4%)であった。本研究は、男性を除いた女性看護師 1,749 名を分析対象とした。対象者の平均年
齢は 35.1 ± 9.4 歳、平均臨床経験年数は 12.5 ± 9.1 年であった。組織コミットメントの平均値は、組織コミット
メントが (OC)57.2 ± 15.1 であり、下位尺度の情動的コミットメント (AC)18.9 ± 7.4、継続的コミットメント (CC)21.5
± 5.5、規範的コミットメント (NC)16.7 ± 6.0 であった。個人的特性では、年齢が高い、経験年数や勤続年数が長
いと、すべての OC 尺度は有意に高値を示した。組織環境では、夜勤回数が 4 回以下、給与や福利厚生が充実、
教育的支援や昇進の機会があることは、OC、AC、NC が有意に高値を示した。組織における経験では、能力に合っ
た役割が付与されている、看護の達成感や成功体験がある、理想の看護が行えている、患者から褒められること
が励みになると感じていると、OC、AC、NC が有意に高値を示した。就業継続意思では、OC、AC、NC が高いこ
とは、1 年後・5 年後・10 年後・定年までの就業継続意思および管理職を目指した就業継続・結婚や出産後の就
業継続意思があることを有意に示した。一方、すべての OC 尺度が低いと、労働条件が良い病院への離職意思、
真剣に今の仕事を辞めようとする離職意思があることを有意に示した。
結語 看護師の組織環境および組織における看護師個人の経験と組織コミットメントは関連していることが明らかと
なった。労働条件、キャリア向上の教育的支援、日々の看護の達成感や成功体験、職場の管理者や患者からの肯
定的評価、良好な人間関係が、女性看護師の組織コミットメントを高めていた。組織コミットメントが高いと、
組織への帰属意識が生まれ、就業継続意思に関連していた。女性看護師の就業継続のためには、女性のライフサ
イクルに合わせた労働条件の改善、看護師のキャリア発達を考慮した教育的支援、働きやすい職場の風土づくり
の必要性が重要であると示唆された。
Key Words :看護師、就業継続意思、組織コミットメント、女性、組織
学位(修士)取得日 2014 年 3 月 1 日
-124 -
修士論文要旨
引退期を迎えた老年者への統合に向けたナラティブ支援 -ライフストーリー 未来に続く自己物語-
学籍番号 124106 白石日見子
指導教員 小松光代
目的 本研究では、引退期を迎えた高齢者が、ライフストーリー ( 人生物語 ) に関するナラティブ ( 語り ) を通して、
老年期の発達課題「人生の統合」を図り、後年の生き方を見出すプロセスを明らかにすることを目的とする。
方法 ナラティブによる質的記述的研究。研究の同意が得られた引退期にある高齢者 4 名に対し、プライバシーが保
持できる個室で一回あたり約 60 分~ 90 分の半構成的面接を 4 回~ 5 回実施し人生について語ってもらった。加
えて、インタビュー前後に人生グラフ記載による視覚的評価を行った。インタビューの成果物として人生史を作
成し、本人と家族に閲覧を依頼しアンケート調査を実施した。分析では、録音したインタビュー内容から逐語録
を作成した。逐語録を基に、Dan McAdams らによるナラティブ分析手法を参考にし、人生の各時期の出来事や
体験・重要人物に関する語りを、歴史的事実とそれに対する解釈に分類し、語りの構造・変化・語るという行為
に対する主観的評価を抽出した。抽出した内容から統合に向けたプロセスを検討した。
結果 ライフストーリーの語りは、印象に残る出来事や影響を受けた人、時代背景など重層的な要素から構成され、
これらが、実体験として想起されるに留まらず、自己意識と絡み合いながら自己の内省を育み、出来事の解釈・
意味づけが行われていた。語りの変化としては、
【断片的に思い出す体験の語りから、意味を見出す語りへの変化】
【これまでの解釈に沿った語りから、新たな解釈に沿った語りへの変化】【苦難した体験の語りから、苦難に対峙
し乗り越えた自分自身の語りへの変化】【人生経験の当事者としての語りから、客観的な視点で捉えた語りへの変
化】が見られた。語るという行為に対する主観的評価は【人生の軌跡を確認する機会】【自己表現の機会】【意味
を問う機会】【再発見の機会】【大切にしてきたものを確認し未来につなげる機会】に区分された。語りの前後で
比較した人生グラフは、現在の地点及び近い将来に対する人生の満足度が上昇していた。成果物に対する反応は、
本人家族共に概ね良好であったが、受け取り方に個人差が認められた。
考察 引退期にある高齢者が、自分の過去や未来を語る行為は、統合に向けてアイデンティティを再体制化する一つ
のプロセスであった。ライフストーリーは、自己表現の機会から始まり、人生の想起、内省行為、解釈、意味づけ、
受容、客観視のプロセスをたどると同時に、自我や叡智を発達させる様相が伺えた。語りの共同構成者である聴
き手の反応はこのプロセスに影響を与え、看護師がライフストーリーに関するナラティブの一連のプロセスを理
解し、アイデンティティの再体制化を目指す行為としての意味を会話の中に見出し、共同構成者として積極的に
関与することは、引退期にある高齢者において有効な支援となる可能性が示唆された。
Key Words :老年期 看護 引退期 統合 ライフストーリー ナラティブ
学位(修士)取得日 2014 年 3 月 1 日
-125 -
修士論文要旨
リフレクション研修が中堅看護師に及ぼす影響とその成果
学籍番号 124107 新垣洋美 指導教員 岩脇陽子
目的 本研究の目的は、リフレクション研修が中堅看護師に及ぼす影響を検討し、中堅看護師に対するリフレクショ
ン研修の成果を明らかにすることである。
方法 対象者はA総合病院に勤務する臨床経験 5 年以上 19 年目までの中堅看護師 81 名である。対象者を単純無作為
に介入群と対照群に割り付けし、介入群には 2 回のリフレクション研修を実施した。調査方法は自記式質問紙調
査であり、調査内容は対象者の基本属性および背景、リフレクション研修の評価、自己の看護実践に関する評価
である。調査内容については記述統計量を算出し、同一群の介入前後の比較には Wilcoxon の符号付順位検定、2
群間の比較には Mann-Whitney の U 検定を用いて分析した。また自由記述は質的に分析し、コード化、カテゴリー
化した。
結果 介入群 22 名、対照群 43 名から有効回答が得られた。対象者の平均年齢と平均臨床経験年数は、介入群 30.4 ± 4.19
歳、7.5 ± 3.52 年、対照群 32.1 ± 5.07 歳、9.8 ± 3.78 年であった。リフレクションに対する捉え方について、介
入群は対照群に比べてリフレクションは意味がある、重要であるの 2 項目で有意に高く、介入後は介入前に比べて、
リフレクションに関心がある、意味がある、重要である、スキルを習得したいの 4 項目で高値を示した。看護実
践能力自己評価尺度は、介入後は介入前に比べて、援助的人間関係、看護の計画的な展開、ケアの評価の 3 項目
で有意に高値を示した。看護実践に対する自己評価では、介入群は対照群に比べて自信、他者からの承認の 2 項
目で有意に高く、介入後は介入前に比べて、自信、自己成長、他者からの承認の 3 項目で高値を示した。リフレ
クション研修における学びと今後への活用では『他者との対話を通じて自分の考えを広げる』『自己を客観的に振
り返り自己の看護実践を再認識する』『リフレクションのプロセスを活用する』のコアカテゴリーが抽出された。
自己の看護実践に対する内面的変化においては、【立ち止まり振り返る】【自己の傾向を客観的に見る】【自己の看
護実践を見直す】【他者との対話によりケアの方向性を得る】のカテゴリーを抽出することができた。
結語 リフレクション研修を受講して中堅看護師は、リフレクションのプロセスを通して自己を客観的に振り返るこ
とにより、自己の看護実践を再認識すると共に、他者と対話することで自分の考えを広げていた。リフレクショ
ン研修は、中堅看護師の看護実践能力を高め、看護実践に対する自信や自己成長の機会となることが明らかとなっ
た。以上から、リフレクション研修は中堅看護師の看護実践能力の向上に有用な方法であることが示唆された。
中堅看護師の成長には、このように自身の看護実践をリフレクションし、それを語り合う場を設けることが必要
である。
Key Words :リフレクション、中堅看護師、看護実践能力、看護継続教育、教育方法
学位(修士)取得日 2014 年 3 月 1 日
-126 -
修士論文要旨
幼児における睡眠計の利用可能性の検証-保育所の午睡調査から-
学籍番号 124108 高橋芳江
指導教員 園田悦代
意義 幼児期における午睡を含めた睡眠の実態を詳細に調査することは、健全な睡眠リズム獲得を検討する上で欠か
すことができない重要な課題であるが、その実態はあまり明らかにはなっていない。本研究で用いた睡眠計の信
頼性・妥当性は成人に対しては確認されているが、子どもに関しては未確認である。この機器は、侵襲性が低く
かつ簡便に客観的データを得ることができるという利点があり、その有効性が確認できれば、今後の研究の強力
なツールになり得ると考えた。
目的 睡眠計の利用可能性を、保育園児の午睡をメインに検証し、有効性が確認できた場合は、午睡を含めた幼児の
睡眠に関する研究に活用する。また、副次的に得られる観察結果やデータを統計的に分析し、得られた知見を保
護者や保育施設運営者に還元することにより、社会的貢献につなげる。
方法 1.午睡における入眠潜時・総睡眠時間・睡眠の深さを、睡眠計(オムロン株式会社製「睡眠計 HSL - 101」)
を用いて測定。
対象者:A市立B保育所に通う2歳児 、 3歳児 、 4歳児 ( 主となる対象は3歳児 18 名 )
時間・場所:保育所での午睡の時間帯・ふだんの午睡の部屋
調査期間:被験者1名に対し、月曜日~金曜日の5日間連日
2.午睡の観察:睡眠計測定と並行し、被験者の就床・起床時刻、眠りの様子などを測定・観察。
3.保護者へのアンケート調査:こどもの調査期間中の夜間睡眠時間と睡眠・健康関連事項。
*解析:SPSS for Windows 21.0J を使用。睡眠計測定と観察法による評価を比較し、統計的解析により睡眠計の
有効性を検証した。検証には、一致の程度を示す指標であるカッパ係数を用いた。
結果 睡眠計の総データ件数は 1068 件。睡眠計測定と観察法による評価は「覚醒」では 100% 近くが一致し、「眠り」
では 90%以上が一致した。カッパ係数は 0.90 となり「ほぼ完全な一致がある」ことが明らかとなった。また、両
測定での相反する評価を詳細に確認した結果、発達に障害があるとされる子どもの測定記録において不一致が発
生していた。広汎性発達障害では睡眠に関する問題をもつ場合が多いとされており、睡眠計は、その異なる睡眠
の特徴をとらえていたと推測された。また、睡眠計による測定結果を年齢別で比較すると、標本数に差はあるが、
年齢により顕著な差が認められ、その差は発達の特徴に合致した結果となっていた。
結論 (1) 睡眠計測定と観察法による評価は、統計学的に「ほぼ完全に一致している」ことが示された。(2) 睡眠計は、
2歳 、 3歳 、 4歳の睡眠の違いを的確にとらえていた。(3) 幼児の午睡では深い眠りの時間が 30 ~ 70 分認められ
た。以上より、本研究で使用した「オムロン 睡眠計 HSL - 101」は、幼児の眠りの客観的データを得る手法とし
て非常に有用な機器であり、幼児を含む睡眠研究において、強力なツールとなりえることが示唆された。
Key Words :幼児、睡眠計、午睡、睡眠・覚醒、保育所
学位(修士)取得日 2014 年 3 月 1 日
-127 -
修士論文要旨
農山村地域に居住する壮年期者のコミュニティ意識と健康との関連
学籍番号 124109 西澤美香
指導教員 星野明子
目的 本研究の目的は、農山村地域に居住する壮年期の人々のコミュニティ意識と身体的・精神的健康との関連を明
らかにし、壮年期の人々の健康行動を実践するための支援方法を検討することである。
方法 対象者は A 市 B 町の 30 ~ 64 歳のうち、自治会長を通じて調査票を配布できた 2,336 名である。804 名から回
答が得られ ( 回収率 34.4%)、有効回答は 763 名 ( 有効回答率 32.7%) である。調査は自記式質問紙調査を行い調査
票の回収は郵送とした。調査項目は、対象者の特性、地域社会への態度<積極性><協同志向>、近所づきあい ( 近
所づきあいの程度,近所づきあいの人数 ),地域参加 ( 町内会等への参加,趣味等への参加 )、身体的健康 ( 健康
状態,健康習慣,健康行動への態度 )、精神的健康 ( 生活満足度、抑うつ度 ) である。分析は、対象者の特性と地
域社会への態度、近所づきあい,地域参加、身体的健康、精神的健康についての関連、さらに、身体的健康と精
神的健康を目的変数とし、主に単変量解析で有意差が認められた項目を説明変数として多変量解析を行った。
結果
1. 回答者のうち、男性 357 名 (46.9%)、女性 405 名 (53.1%)、平均年齢は 51.83 ± 9.42 歳であった。
2.地域社会への態度<積極性>は健康習慣、健康行動への態度、生活満足度、抑うつ度と関連しており、地域社会
への態度<協同志向>は健康状態、健康習慣、健康行動への態度、生活満足度、抑うつ度と関連していた。地域
社会への態度<積極性>は低・中・高群の高群になるほど健康習慣、健康行動への態度、生活満足度の平均得点
が高く、抑うつ度の平均得点が低かった。地域社会への態度<協同志向>は低・中・高群の高群になるほど、健
康状態、健康習慣、健康行動への態度、生活満足度の平均得点が高く、抑うつ度の平均得点が低かった。
3.近所づきあいの程度、近所づきあいの人数、町内会等への参加、趣味等への参加は健康状態、生活満足度、抑う
つ度と関連しており、近所づきあいの程度、近所づきあいの人数、趣味等への参加は健康習慣、健康行動への態
度と関連していた。近所づきあいの程度が高い、近所づきあいの人数が多い、町内会・趣味等への参加ありの者
は健康状態、生活満足度の平均得点が高く、抑うつ度の平均得点が低かった。近所づきあいの程度が高い、近所
づきあいの人数が多い、趣味等への参加ありの者は健康習慣、健康行動への態度の平均得点が高かった。
考察 高いコミュニティ意識や盛んな近所づきあい,地域参加は、人の行き来だけでなく様々な情報交換を可能にする。
農山村地域である B 町では自治会活動への参加者が多く、住民は日常的に近所づきあいを経験していてコミュニ
ティ意識を高めている。本研究の働き盛り壮年期世代の対象者は、関心を持ち互いに影響を受けることで、健康
意識の向上や健康行動の実践につなげていると考える。地域のつながりが強い農山村地域の特徴は、壮年期世代
の健康習慣の実践や健康行動の態度を形成し、生活満足度を高め抑うつを増幅させないことに影響していると考
えられる。
結論 農山村地域の特徴であるコミュニティ意識の高さや地域のつながりの強さを、農山村地域に居住する壮年期世
代の健康習慣の実践や健康行動の態度形成を促す支援方法の基盤にすべきと考える。保健師がこれまで実践して
きた地域組織の活性化や地域参加への促しなどの機会を活用し、健康づくりに視点を当てた支援方法の検討が重
要である。
Key Words :コミュニティ意識,農山村地域,壮年期
学位(修士)取得日 2014 年 3 月 1 日
-128 -
修士論文要旨
高齢透析患者の実態と QOL および体重管理に関連する要因
学籍番号 124111 藤井照久
指導教員 岡山寧子
目的 高齢透析患者の QOL 維持・向上を図るためには、QOL を高める要因を見出し、その要因に着目した対応が重
要である。そのために本研究では、高齢透析患者の実態をその身体的状況、自己管理、ソーシャルサポート、日
常生活や QOL 等から把握し、QOL と関連する要因を分析するとともに、体重増加と関連する要因を検討する。
方法 65 歳以上の血液透析患者 18 名を対象に、カルテからの情報収集および面接による聞き取りを行った。調査内
容は、性・年齢・職業等の基本属性の他、カリウム・リン・BUN などの臨床データ、野澤ら 10) の開発した血液透
析患者自己管理行動尺度 22 項目、金ら 11) の開発した慢性疾患患者に対するソーシャルサポート尺度 20 項目、腎
疾患患者の QOL 尺度 KDQOL-SF™1.3 日本版 79 項目および体重増加率である。分析方法は、各データの単純集計
を行って高齢透析患者の実態を把握した後、QOL と関連する要因を明らかにするため、QOL 高低群別のクロス集
計または平均値を算出してχ2 検定またはマンホイットニー U 検定を行った。さらに、体重管理と関連する要因
を明らかにするため、体重維持群と増加群別のクロス集計または平均値を算出してχ2 検定またはマンホイット
ニー U 検定を行った。有意水準は 5% 未満とした。
結果 主観的健康感は、6 割以上の者が「よい」と答え一般高齢者と相違がみられなかったが、主観的健康感と健康
への不安感をあわせた全体的健康感は一般高齢者よりも低かった。体重増加率は、6 割以上が維持群であった。
自己管理スコア、ソーシャルサポートスコアの平均は、それぞれ 56.7 ± 22.3 点、60.4 ± 20.4 点で、KDQOL、包
括的 QOL、腎疾患特異的 QOL の平均は、それぞれ 4627.1 ± 1597.5 点、1807.5 ± 761.5 点、2819.6 ± 984.5 点であっ
た。いずれも最小値と最大値は 3 ~ 8 倍の格差があり個人差がみられた。KDQOL と関連する要因として有意差が
あったのは、ソーシャルサポートスコア (p=0.021) で、包括的 QOL と関連する要因として有意差があったのは自
己管理スコア(p=0.024)とソーシャルサポートスコア (p=0.019) 、腎疾患特異的 QOL と関連する要因として有意
差があったのは、主観的健康感(p=0.04)
、体重増加率 (p=0.027)、自己管理スコア(p=0.013)、ソーシャルサポー
トスコア (p=0.002) であった。さらに、体重増加率に関連する要因として有意差があったのは、教育歴(p=0.016)
、
Ht(p=0.026)、自己管理スコア(p=0.001)、ソーシャルサポートスコア (p=0.001) であった。
結論 高齢透析患者は、健康への不安感が一般高齢者より高いことが推察され、合併症の予防や個々の患者にあった
きめ細かな支援を行う必要がある。また、高齢透析患者の身体的状況、QOL、自己管理状況、ソーシャルサポー
トは個人差が大きく、対象の生活歴や特性に応じた指導が必要であると考えられた。さらに、高齢透析患者の
QOL を高めるためには、本人と家族の理解度や特性にあった支援を行う必要があり、体重管理を適切に行うため
には、対象の教育歴や自己管理、ソーシャルサポート状況を考慮しながら、個々の患者と家族にきめ細かな聞き
取りを行い、正しくわかりやすい支援が必要であると考えられた。
Key Words :高齢透析患者、QOL、自己管理、ソーシャルサポート、体重管理
学位(修士)取得日 2014 年 3 月 1 日
-129 -
修士論文要旨
高校生の自己肯定感の実態と生活習慣、学校環境適応感との関連
学籍番号 124112 吉田智子
指導教員 岡山寧子 目的 本研究の目的は、高校生の自己肯定感の実態を把握し、その関連要因として、学校生活を含めた生活習慣、学
校環境適応感との関連を明らかにすることである。これをもとに、学校や家庭において、自己肯定感を高めるた
めの方策を導き出す。
方法 大阪府内の全日制の普通科、共学の私立高等学校に在籍する全校生徒 1072 名を対象に、質問紙調査を行った。
調査項目は、対象者の属性・生活習慣、自己肯定感、学校環境適応感である。分析は、各項目の単純集計を行っ
て対象の背景を把握した後、自己肯定感と属性および生活習慣、学校環境適応感との関連を把握するため、属性
および生活習慣、学校環境適応感を独立変数、自己肯定感を従属変数として、Mann-Whitney または KruskalWallis の検定を行い、有意差のある場合は Bonferroni の多重比較を行った。さらに、自己肯定感と学校環境適応
感との関連を把握するために、Spearman の順位相関係数を算出した。尚、分析には、SPSS 22.0J. for Windows
を使用した。
結果 全校生徒 1072 名に配布し、1028 名 (95.9% ) から回答を得て、有効回答 1023 名 (99.5%) を分析対象とした。自
己肯定感 130 点満点に対して、本研究対象全体の平均得点は 91.7 点であり、7 割程度、自己を肯定的に捉えてい
ることがわかった。自己肯定感の学年による比較では、得点が高い方から 3 年生、1 年生、2 年生の順であった。
下位成分のグループ内の平均得点が最も高かったのは「自己受容」で、最も低かったのは「充実感」であった。
また「自己受容」は学年が上がるにつれて高くなり、「充実感」は学年が上がるにつれて低くなる傾向があった。
男子は女子に比べて自己肯定感が有意に高く、下位成分すべてにおいても同じ結果であった。寮生・下宿生は、
自宅生に比べて自己肯定感が高く、通学時間においては、短い生徒の方が高かった。校内における諸活動の比較
では、所属数が多い生徒ほど自己肯定感が高かった。食事に関しては、朝食を含む 3 食を食べている生徒は自己
肯定感が高く、家族や寮生・下宿生と共食している生徒は高かった。睡眠に関しては、よく眠れていると感じて
いる生徒は高く、平均睡眠時間が 6-8 時間の生徒は高かった。自己肯定感と学校環境適応感は、強い相関関係にあっ
た。学校環境適応感の中で、自己肯定感と最も相関があったのは、
「友人関係」であった。下位成分同士では、
「自
己受容」と「自己表明・対人的積極性」が「友人関係」に、
「自己実現的態度」は「進路意識」に、
「充実感」は「特
別活動への態度」に最も強く相関していた。
考察 自己肯定感は男子に比べ女子が低い傾向にあるが、女子は、自己評価にボディーイメージが強く影響している
ものと思われる。寮生・下宿生は、自宅生に比べ自己肯定感が高く、高校生において同世代との共同生活は、自
己肯定感によい影響を与えているものと思われる。学校における諸活動に所属することは、自己肯定感を高める
ことが明らかとなったため、対話を通して部員間の絆が深められるようサポートしていくことが重要であると考
える。食事、睡眠などの生活習慣は、自己肯定感に影響を及ぼしていることが明らかとなった。家庭と連携を取
りながら朝食を含む 1 日 3 食を摂取し、共食を心がけることが重要である。また、睡眠は個人差があるものの、
睡眠の質と量を確保することが自己肯定感を高めるために重要である。自己肯定感には、学校環境適応感が関連
していたため、通学することが楽しいと感じられるような「生徒のための学校づくり」が必要であると考える。
また、下位成分において、「友人関係」が最も自己肯定感に影響していたため、学校において、友人関係を良好に
保てるようサポートすることが重要であると考える。
Key Words :自己肯定感,学校環境適応感,生活習慣,高校生
学位(修士)取得日 2014 年 3 月 1 日
-130 -
教 員 研 究 紹 介
西田 直子
研究分野:基礎看護学(基礎看護技術・コミュニケーション・看護情報学)
臨床看護学(運動障害看護・周手術看護・乳がん看護)
研究活動:
日本看護診断学会副理事長,日本看護技術学会第 13 回学術集会会長、日本看護研究学会第 40 回学術集会実行委員長,
バイオメカニズム学会評議員,日本看護研究学会評議員,日本看護教育学会評議員,第 20 回日本看護診断学会学
術大会企画委員
原著および総説、報告
1) 西田 直子 (2013):介入におけるアセスメント教育 看護介入を教授するときの教育方法,看護診断,18 巻 1 号 ,
28-33.
2)
西田 直子 , 冨田川 智志(2013):【移動介助技術の指導方法 - ボディメカニクスを実践に活かす】道具を活用した
移乗介助のボディメカニクス 他職種との連携を視野に入れた教育 . 看護教育,54 巻 12 号,1103-1107.
3)
西田 直子 , 水戸 優子 , 國澤 尚子 , 鈴木 ひとみ , 若村 智子 , 鈴木 和代(2013):安全安楽な移動動作の援助の実際
と工夫 . 日本看護技術学会誌,12 巻 1 号 ,24-25.
学会発表
4)
西田 直子(2014):研修会による看護師の移動介助に使用する補助具に関する認識の変化 . 看護人間工学研究誌,
14 巻 ,61, 彦根市 .
5)
西田 直子(2014):看護師にとっての安全安楽な移動動作の援助の改善 職場における腰痛予防対策指針の改訂と
腰痛予防への対処.日本看護技術学会誌,13 巻 1 号 ,37.浜松市 .
6)
田村 真由美 , 西田 直子(2014):慢性疼痛に対する看護介入と看護師の共感性との関連 . 日本看護技術学会学術集
会講演抄録集 12 回 ,69,浜松市 .
7)
室田 昌子 , 岩脇 陽子 , 山本 容子 , 北島 謙吾 , 西田 直子 , 伊藤 栄見子 , 松本 賢哉(2014):臥位でのヘッドトリー
トメントが心理面に及ぼす影響 . 日本看護科学学会学術集会講演集 33 回 ,569, 大阪市.
8)
西田 直子(2013):研修前看護師の移乗介助に使用する補助具に関する認識状況.日本看護研究学会雑誌,36 巻 3
号 ,213.秋田市.
9) 北原照代 , 垰田和史,辻村裕次,保田淳子,舟越光彦,西田直子,鈴木ひとみ(2013):病棟看護師の運動器障害
に関する研究.第 55 回社会医学会総会,名古屋市 .
10)北原 照代 , 垰田 和史 , 辻村 裕次 , 舟越 光彦 , 西田 直子 , 保田 淳子 , 鈴木 ひとみ(2014):病棟看護師の筋骨格系
症状訴え率と病棟別看護必要度との関連,産業衛生学雑誌 ,55 巻臨増 ,526 松山市 .
吾妻 知美
研究分野:看護倫理・管理学
研究活動:
著書
1)
吾妻知美(2011):看護ヘルスアセスメント.メヂカルフレンド社,201-216,1 月.
2)
吾妻知美(2011):MANUAL FOR ORAL CARE The Japanese Society of Oral Care.永末書店,42-44,2 月.
論文
3) 鈴木英子,吾妻知美,齋藤深雪,丸山昭子,香月毅史(2009):重症身体障害者施設の看護管理者のアサーティブ
ネスとアサーティブになれない状況の実態,日本看護管理学会誌 12(2),74-85.
4) 吾妻知美,前川幸子,重松豊美,服部容子,阿部朋子(2009):看護学における基礎看護技術習得を目指した「基
礎看護技術経験録」作成の試み,甲南女子大学研究紀要 看護学・リハビリテーション学編 3 号,59-68.
5) Eiko Suzuki,Miyuki Saito,Akira Tagaya,Eriko Mihara ,Akiko Maruyama,Tomomi Azuma,Chihumi
-131 -
Sato(2009)
:Relationship between assertiveness and burnout among nurse managers,Japan Journal of Nursing
Science 6(2),71-84.
6) 鈴木英子,多賀谷昭,松浦利江子,斎藤深雪,丸山昭子,吾妻知美(2009)
:看護管理職のアサーティブネストレー
ニング前後のバーンアウト得点の比較,日本看護管理学会誌 13(2),50-57.
7)
吾妻知美(2010)
:看護基礎教育における基礎看護技術の教育内容構成に関する提言,甲南女子大学研究紀要 看
護学・リハビリテーション学編第 5 号,1-11.
8)
吾妻知美,前川幸子,重松豊美,服部容子,阿部朋子(2010):基礎看護学実習において学生が経験した看護技術
の現状 -「基礎看護技術経験録」の分析から -,甲南女子大学研究紀要 看護学・リハビリテーション学編 第 4 号,
105-113.
9) 吾妻知美,池川清子,藤原桜(2010):看護技術の学習過程に関する検討 - 臨地実習における学生の体験を手がか
りとして -,甲南女子大学研究紀要 看護学・リハビリテーション学編第 4 号,115-123.
10)江口秀子,吾妻知美(2011):看護職の大学院への進学ニーズに関する調査 -A 大学の実習関連施設に勤務する看
護職を対象に -,甲南女子大学研究紀要 看護学・リハビリテーション学編第 5 号,203-210.
11)吾妻知美(2012)
:基礎看護学実習において学生が経験した「口腔ケアの現状」-「基礎看護技術経験録」の分析か
ら-,日本口腔ケア学会誌 6(1),46-50.
12)遠藤圭子,岡崎美晴,神谷美紀子,吾妻知美(2012):チーム医療を推進する看護師に必要とされる能力の検討 多職種と連携する看護師の調査から -,甲南女子大学研究紀要 看護学・リハビリテーション学編第 6 号, 1729.
13)青木香保里,浅井祐子,荒井眞一,吾妻知美,高野良子(2012)
:“甘み”に関する教育内容の再構成と指導,愛
知教育大学研究報告第 61 号(芸術・保健体育・家政・技術科学・創作編),75-84. 14)吾妻知美,岡崎美晴,神谷美紀子,遠藤圭子(2013)
:チーム医療を実践している看護師が感じる連携・協働の困難,
甲南女子大学研究紀要 看護学 - リハビリテーション学編 第 7 号,23-33.
15)大森裕子,江島仁子,西村美登里,原田江梨子,吾妻知美(2013):看護学科における学生生活支援に対する学生
評価 - アドバイザー制度に関する調査票の分析から -,甲南女子大学研究紀要 看護学・リハビリテーション学編
第 7 号,57-64.
16)青木香保里,鷲住美里,荒井眞一,吾妻知美,高野良子(2013)
:“排泄”に関する教育内容の再構成と指導,愛
知教育大学研究報告第 62 号(芸術・保健体育・家政・技術科学・創作編),93-101.
17)齋藤深雪,鈴木英子,吾妻知美(2013):精神科デイケア通所者の生活機能の実態,日本保健福祉学会誌 20(1),
35-45.
18)岡崎美晴,江口秀子,吾妻知美,神谷美紀子,遠藤圭子,服部兼敏(2014)チーム医療を実践している看護師が
多職種と連携・協働する上で大切にしている行為-テキストマイニングによる自由記述の分析 -,甲南女子大学甲
南女子大学研究紀要 看護学・リハビリテーション学編第 8 号,1-11.
19)青木香保里,荒井眞一,吾妻知美,高野良子(2014)食物アレルギーに関する教育内容の再構成と指導,愛知教
育大学研究報告第 63 号(芸術・保健体育・家政・技術科学・創作編),51-59.
学会発表
国際学会,国外発表
20)Miyuki Saito,Kaoru Baba,Eiko Suzuki,Akiko Maruyama,Tomomi Azuma,Yukiko Sato,Yumiko Endo,Sanae
Yamaguchi, Siho Sato(2009):Evaluation of Validity and Reliability of the Self-Rating Scale for Functioning in
Individuals with Mental Disorders (Participation), 1rd World Academy Nursing Science(Kobe)
21)Mikiko kamiya , Miharu Okazaki, Tomomi Azuma, Keiko Endo, Kanetoshi Hattori(2012):Abilities needed by nurses
who participating in Multi-Disciplinary team(1) A Pilot Study to Develop Survey Form ,
The
9 th International Conference with the Global Network of WHO Collaborating Centers for Nursing and
Midwifery. (Kobe)
22)Miharu Okazaki, Mikiko kamiya, Tomomi Azuma, Keiko Endo, Kanetoshi Hattori(2012):Abilities needed by nurses
who participating in Multi-Disciplinary team(2) Influences of Years of Multi-Disciplinary team Experiences and
-132 -
leadership Roles over Participating Skills ,The
9 th International Conference with the Global Network of WHO
Collaborating Centers for Nursing and Midwifery. (Kobe)
23)Tomomi Azuma, Eiko Suzuki, Miyuki Saito, Akiko Maruyama(2013):Nursing students' inability to become assertive
and Why they weren't able to achieve it in basic nursing study practice,The 21st IUHPE International
Conference on Health Promotion. (Thailand)
24)Eiko Suzuki,Kazutaka Makidaira,Tomomi Azuma,Akiko Maruyama,Miyuki Saito,Mayumi Sato,Kimie
Otani(2013):The relative factor of violence toward nurse from inpatients,The 21st IUHPE International
Conference on Health Promotion. (Thailand)
25)Akiko Maruyama,Eiko Suzuki,Miyuki Saito,Tomomi Azuma(2013):Factors affecting burnout of nurses who
are mother of pre-school-age children,The 21st IUHPE International Conference on Health Promotion.
(Thailand)
26)Tomom Azuma, Miyuki Saito, Eiko Suzuki, Jeremiah Mock, Kanetoshi Hattori(2013):Validity and Reliability of
Self Report Evaluation Scale of Daily Living Skills of Nurse Students 9thInternatioal Nursing Conference & 3 rd
World Academy Nursing Science (Korea)
国内学会
27)吾妻知美,服部容子,鈴木英子,齋藤深雪(2009):看護学生の生活体験の実態-清拭タオル絞りの実験から‐,
第 29 回 日本看護科学学会(千葉市)
28)齋藤深雪,馬場薫,吾妻知美,真木智(2010):統合失調症患者の日本語版 Rathus assertivness schedule(J-RAS)
の信頼性と妥当性の検討,第 36 回 日本看護研究学会学術集会(岡山市)
29)齋藤深雪,馬場薫,鈴木英子,吾妻知美,真木智(2010)
:精神科デイケア通所者のコミュニケーション能力の実
態 -J-RAS を用いて,第 30 回 日本看護科学会学術集会(札幌市)
30)吾妻知美(2011)
:看護実践能力を育成するための基礎看護技術教育-基礎看護技術の教育内容構成-,日本カリキュ
ラム学会 第 22 回大会(札幌市)
31)齋藤深雪,馬場薫,吾妻知美,真木智(2011):デイケア通所者の通所目的の有無による生活機能の比較-精神障
害者生活機能評価尺度を基準にして-,第 37 回 日本看護研究学会学術集会(横浜市)
32)鈴木英子,吾妻知美,有賀美恵子,森野貴輝,丸山昭子,井上善久,槇平一隆,多賀谷昭(2011):新卒看護師の
アサーティブになれない状況,第 31 回 日本看護科学会学術集会(高知市)
33)青木香保里,荒井眞一,吾妻知美(2012):節水を意識した食の学習の検討,北海道教育学会 第 65 回研究発表
大会(札幌市)
34)鈴木英子,小田和美,井上善久,吾妻知美,齋藤深雪,丸山昭子(2012):新卒看護師のアサーティブになれない
状況,第 38 回 日本看護研究学会学術集会(宜野湾市)
35)吾妻知美,鈴木英子,齋藤深雪(2012)
:基礎看護実習において看護学生がアサーティブになれなかった状況,第
38 回 日本看護研究学会学術集会(宜野湾市)
36)齋藤深雪,馬場薫,吾妻知美,鈴木英子(2012):デイケア通所者の生活背景による生活機能の実態,第 38 回 日本看護研究学会学術集会(宜野湾市)
37)鈴木英子,吾妻知美,平山喜美子,川村晴美,高野美香,井上善久,丸山昭子(2012):先輩看護師に対し新卒看
護師がアサーティブになれない状況と理由,第 16 回日本看護管理学会年次大会(札幌市)
38)岡崎美晴,神谷美紀子,吾妻知美,遠藤圭子(2012):チーム医療を推進する看護師に必要とされる能力の検討 経験年数による発揮していると感じる能力の違い,第 16 回日本看護管理学会年次大会(札幌市)
39)池川清子,吾妻知美(2012)
:看護における実践知 - 他者理解のプロセス,第 31 回日本医学哲学・倫理学会大会(金
沢市)
40)神谷美紀子,遠藤圭子,岡崎美晴,吾妻知美,服部兼敏(2012):チーム医療を実践している看護師が重視するこ
と - テキストマイニングツールを用いた分析 -,第 32 回 日本看護科学会学術集会(東京都) 41)齋藤深雪,馬場薫,鈴木英子,吾妻知美(2012)デイケア通所者の生活機能とコミュニケーション能力の実態,
第 32 回 日本看護科学会学術集会(東京都)
-133 -
42)青木香保里,荒井眞一,吾妻知美,高野良子(2013):家庭科教諭・栄養教諭・養護教諭の連携を目指した教員養
成大学における授業実践,平成 25 年度日本教育協会研究集会(札幌市)
43)齋藤深雪,馬場薫,吾妻知美(2013):精神障害者小規模作業所通所者の通所目的による生活機能の比較,第 39
回日本看護研究学会学術集会(秋田市)
44)鈴木英子,吾妻知美,齋藤深雪,丸山昭子,小檜山敦子,丸山陽子,國井亨奈,高山裕子(2013):プリセプター
が新卒看護師に対しアサーティブになれない状況,第 33 回日本看護科学学会学術集会(大阪市)
45)齋藤深雪,鈴木英子,吾妻知美(2013):精神科デイケア通所者のアサーティブネスと関連する背景,第 33 回日
本看護科学学会学術集会(大阪市)
46)岡崎美晴,吾妻知美,神谷美紀子,江口秀子,遠藤圭子,服部兼敏(2013)チーム医療を行う看護師が多職種連
携で大切にしている行為-テキストマイニングを用いて-,第 33 回日本看護科学学会学術集会(大阪市)
47)青木香保里,荒井眞一,吾妻知美(2014)
:映像教材を位置づけた家庭科における調理実習の事前学習に関する検討,
北海道教育学会 第 58 回研究発表大会,札幌市.
その他
48)吾妻知美(2011)
:実習に役立つ!看護技術チェックリスト 「体位変換」
(8-9)、「移乗・移送」(10-11)、「洗髪」
(16-17)
,看護学生 58(12) メヂカルフレンド社.
岩脇 陽子
研究分野:成人看護学,看護教育学,がん看護学,基礎看護学
研究活動 論文
活動報告
1)
岩脇陽子,藤本早和子,室田昌子,滝下幸栄,山本容子,松岡知子,関川加奈子 (2013): がん疼痛を有する患者と
のコミュニケーション技術教育の試み - がん疼痛看護基礎講座の実践 -, 京都府立医科大学看護学科紀要 , 23:7-16.
2)
山本容子,室田昌子,岩脇陽子,滝下幸栄 (2013): 看護学生の手指衛生教育において ATP 拭き取り検査法を導入す
ることの教育効果 , 京都府立医科大学看護学科紀要 ,23:17-23.
学会発表
(国内学会)
3)
西田直子,辻村裕次,山本容子,室田昌子,岩脇陽子,鈴木ひとみ,峠田和史 (2013): 車いす利用者の避難施設の
スロープ移動の筋負担,第 23 回バイオメカニズム・シンポジウム,京都,7 月 .
4)
西田直子,岩脇陽子,山本容子,室田昌子,垰田和史,辻村裕次,鈴木ひとみ (2013): 車椅子利用者にとっての避
難所のバリアフリー環境の現状調査 , 第 54 回日本社会医学会 , 東京 ,7 月 .
5)
室田昌子 , 岩脇陽子 , 山本容子 , 北島謙吾 , 西田直子 , 伊藤栄見子 , 松本賢哉 (2013): 臥位でのヘッドトリートメント
が心理面におよぼす影響 , 第 33 回日本看護科学学会学術集会 , 大阪 ,12 月 .
6) 山本容子 , 室田昌子 , 岩脇陽子 , 滝下幸栄 (2013): 学士課程看護学生に対する継続的な感染予防教育の効果 , 第 33 回
日本看護科学学会学術集会 , 大阪 ,12 月 .
7) 佐伯良子,岩脇陽子,室田昌子,福本環,滝下幸栄 (2013): 成人急性期看護学実習における ICU・手術室実習の学
習効果 , 第 33 回日本看護科学学会学術集会,大阪,12 月 .
8)
山本容子,室田昌子,岩脇陽子,滝下幸栄 (2013): 病院職員を対象としたパームスタンプ法を用いた手指衛生研修
の有効性-看護師,調理関係者,PSW を対象として- , 第 29 回日本環境感染学会総会,東京,2 月.
9) 福本環 , 岩脇陽子 , 松岡知子 (2013):性暴力被害者に対する看護に関する文献検討 , 第 39 回日本看護研究学会学術
集会 , 秋田 ,8 月 .
10)松岡知子 , 岩脇陽子 , 滝下幸栄 , 福本環 (2013):妊娠 5 か月から 9 か月の体重 , 子宮底長 , 復囲と歩容の変化 , 第 39
回日本看護研究学会学術集会 , 秋田 ,8 月 .
11)福本環 , 岩脇陽子 , 松岡知子 , 北島謙吾 (2013):性暴力被害者支援における看護介入のための文献的検討 , 第 33 回
日本看護科学学会学術集会,大阪 ,12 月 .
-134 -
12)松岡知子 , 岩脇陽子 , 滝下幸栄 , 福本環 (2013):妊娠末期妊婦の歩行速度により歩容の変化 , 第 33 回日本看護科学
学会学術集会,大阪 ,12 月 .
江本 厚子
研究分野:老年看護学、在宅看護学
研究活動:
著書
1)
周手術期看護論(分担執筆)ヌーヴェルヒロカワ
周手術期看護の実践編の項担当 39-148,176-183 頁(2005 初版 2014 第 3 版)
編者:雄西智恵美、秋元典子、分担執筆:江本厚子、他 20 名
2) 緊急度・重症度からみた症状別看護過程+病態関連図(分担執筆)医学書院「排尿痛のある患者の看護」841-849
頁排尿障害のある 患者の看護」の項担当 888-902 頁(2011)編者:井上智子、佐藤千史、分担執筆:江本厚子他
121 名
論文
3)
入院により生じた高齢患者の排尿障害とそのケアに関する研究 -システィマティックに取り組んでいる医療機
関・施設看護師へのインタビューから -東海大学健康科学部紀要第 18 号 53-54 頁 (2013) 江本厚子、木村勇
介
4)
二次資料を用いた文献検索方法の学習ニーズに関する研究-ゼミナールⅠ終了時における習得状況と活用につい
て- 東海大学健康科学部紀要第 18 号 55-56 頁 (2013) 江本厚子、沓澤智子、中津川順子、浜辺富美子、大
山太
5)
「根拠に基づく看護(Evidence-Based Nursing)」実践に必要な英語力養成のための教育支援プログラム開発とそ
の評価 石川県立看護大学附属地域ケア総合センター事業報告書第 6 巻 46-53 頁(2011)末弘美樹、江本厚子、
Naomi B.KAMIMURA
6) 病院利用者へのインタビューを取り入れた「看護福祉特講」の学習成果にもとづくプログラム評価 東海大学健
康科学部紀要第 15 号 61-71 頁 (2010)
佐藤正美、竹之内章代、西原留美子、堀越涼子、稗田里香、岩田香織、小島善和、白石知子、江本厚子、北島英治、
中野いく子
学会発表 ( 国際学会,国内学会 ):
7) 臨床現場における排尿ケア能力を習得するための取り組み ケースメソッド教育を導入して 永坂和子、江本厚
子 日本老年泌尿器科学会第 26 回学術集会(横浜)(2013)抄録 日本老年泌尿器科学会誌 Vol.26 114 頁
8)
排泄リハビリテーションにおける看護過程の展開と看護実践能力の習得にむけて-事例を用いた学生の教育- 江本厚子、永坂和子、佐藤幹代 日本老年泌尿器科学会第 26 回学術集会(横浜)(2013)抄録 日本老年泌尿器
科学会誌 Vol.26 109 頁
9)
医療施設および介護施設における排泄ケアシステムの確立にむけて-ケアスタッフへの教育に関する一考察- 江本厚子、永坂和子、木屋五月 日本老年泌尿器科学会第 25 回学術集会(徳島)(2012)抄録 日本老年泌尿器
科学会誌 Vol.25 118 頁
10)家族介護者が行う在宅要介護高齢者の口腔ケアの実態と関連要因 在宅要介護高齢者の属性に焦点をあてて 寺
島涼子、江本厚子、松木秀明、深谷安子 日本在宅ケア学会第 1 6回学術集会(東京)(2012)抄録 第 16 回日
本在宅ケア学会学術集会講演集 183 頁
11)介護認定審査会における審査委員の合意形成の方法 深谷安子、北村隆憲、木村勇介、江本厚子、岡田光弘、樫
田美雄 日本老年看護学会第 14 回学術集会(札幌)(2009)抄録 日本老年看護学学会 抄録集 115 頁
その他:
12)特集 事例から考える排尿ケアと患者の心と身体の痛み 排尿ケアで患者が感じる痛みとは へるす出版 臨床
看護 37 巻 14 号 1866-1868 頁 (2011)
13)ケアの根拠を確かめよう 最新研究レビューの要点「膀胱留置カテーテルによる尿路感染リスクを減らすために
-135 -
は?」日本看護協会出版会 Nurushing Today 24 巻 11 号 75 頁(2009)
北島 謙吾
研究分野:精神看護学
研究活動 著書:
1) 北島謙吾(2013)
:第Ⅱ章 5. 自己管理 A. ストレス管理 , 手島恵・藤本幸三 編集;看護管理学 , 南江堂 , 167-178, 6 月
2) 北島謙吾(2013)
:第 8 章 2 節,精神療法(心理療法)と看護、瀧川薫編;精神保健看護学、オーム社、第 1 版 1 刷、
166-172, 9 月
特別講演:
3) 北島謙吾:学会長講演(2013)
:臨地・教育から学んだ精神看護の原点と叡智、第 23 回日本精神保健看護学会、( 京
都 )、6 月
学会発表:
4) 三橋美和、北島謙吾(2013): 精神疾患をもつ人の睡眠セルフマネジメントに向けた援助の試みー精神科デイケア
における小集団プログラムの効果ー、第 23 回日本精神保健看護学会 ( 京都 )、6 月
5) Mie Urabe,Jin Narumoto,Teruyuki Matsuoka,Shogo Taniguchi,Yaka Kato,Mayu Ogawa,Kengo Kitajima,Ayae
Kinoshita(2013):Brain atrophy Comparison between Arzheimer’s Disease patients with Psychological Disturbance
and without Psycological Disturbance and Healthy Elderly People using Voxel Based Morphometry,Inter National
Psychogeriatric Asso. 16th Cong.,Seoul ,Koria ,Oct.
6)
室田昌子、岩脇陽子、山本容子、北島謙吾、西田直子 , 伊藤栄見子 , 松本賢哉(2013):臥位でのヘッドトリート
メントが心理面に及ぼす影響、日本看護科学学会、大阪、12 月
7) 福本環、岩脇陽子、松岡知子、北島謙吾(2013)
:性暴力被害者支援における文献的検討、日本看護科学学会、大阪、
12 月
星野 明子
研究分野:地域看護学
研究活動
著書
1) 藤内修二、阿彦忠彦、星野明子他(2014)他9名 保健医療福祉行政論 医学書院 2014 年 2 月、55-57
論文
2) 谷口奈穂 , 桂 敏樹 , 星野明子 , 臼井香苗 (2013): 地域在住の前期高齢者と後期高齢者における QOL 関連要因の比
較 , 日本農村医学会雑誌 ,Vol.62.no.2,2013,91-105.
3) Junko Ohashi ,Toshiki Katsura,Akiko Hoshino, Kanae Usui:Emotional intelligence quotient and QOL in Mothers
with infants in Japan, Journal of Rural Medicine Vol.8, No.2.2013 205-211
4) 西澤美香、星野明子 : 農山村地域に住む壮年期者の特性と健康習慣 , 京都府立医科大学看護学科紀要 23,47-54.
5) 星野明子 桂 敏樹 臼井香苗 千葉圭子 谷村富啓:住民参画による健康政策策定のプロセス , 京都大学
大学院医学研究科人間健康科学系専攻紀要 健康科学 9、62-65
学会発表
6) 真継和子 伊藤ちぢ代 星野明子 臼井香苗 : 高齢社会における地域ケアモデル確立の試みと地域実践科学として
の課題-地域コミュニティを基盤としたサロンにおける健康支援活動の実際を通して-、2013 年、秋田: 第 39 回
日本看護研究学会学術集会 (1) 104
7) 桂敏樹、星野明子、臼井香苗 他 6 名:都市化が急速に進む地方都市の健康増進・食育推進計画の戦略 (1)、日本
公衆衛生学会総会(三重)日本公衆衛生雑誌、60(10)289
臼井香苗 桂 敏樹 星野明子 他 6 名:都市化が急速に進む地方都市の健康増進・食育推進計画の戦略 (2) 日本
公衆衛生学会総会(三重)日本公衆衛生雑誌、60(10)289
-136 -
8)
村上佳栄子、星野明子、大西早百合、他 1 名:限界集落における独居高齢者の暮らしを持続可能にする要因の検討、
日本公衆衛生学会総会(三重)日本公衆衛生雑誌、60(10)415
9)
星野明子、臼井香苗、村上佳栄子、志澤美保、他 8 名 : 大都市町高齢化地域におけるヘルスケアタウンの創生 (1)
粟田健康街づくり会の戦略 (1),、日本公衆衛生学会総会(三重)日本公衆衛生雑誌、60(10)453
10)志澤美保、星野明子、臼井香苗、村上佳栄子、他 8 名:大都市町高齢化地域におけるヘルスケアタウンの創生 (2)
粟田地域健康力アップ大作戦、日本公衆衛生学会総会(三重)日本公衆衛生雑誌、60(10)453
11)千葉圭子、小島操、星野明子、他 6 名:京都府における新人保健師の効果的な研修体制の在り方、日本公衆衛生
学会総会(三重)日本公衆衛生雑誌、60(10)547
その他
松岡 知子
研究分野:助産学,母性看護学
研究活動:
原著論文及び総説
1)
岩脇陽子,藤本早和子,室田昌子,滝下幸栄,山本容子,松岡知子,関川加奈子 (2013):がん疼痛を有する患者
とのコミュニケーション技術教育の試み がん疼痛看護基礎講座の実践,京都府立医科大学看護学科紀要,23,
7-16,2013.
学会発表
2)
和泉美枝,植松紗代,吉岡友香子,松岡知子,増本綾子,伊藤多恵子,倉本孝子,眞鍋えみ子 (2014):助産師養
成機関の協働による分娩介助 OSCE の試み,第 28 回日本助産学学術集会,長崎,3月.
3)
福本環,岩脇陽子,松岡知子,北島謙吾 (2013):性暴力被害者支援における看護介入のための文献的検討,第 33
回日本看護科学学会学術集会,大阪,12 月.
4)
松岡知子,岩脇陽子,滝下幸栄,福本環 (2013):妊娠末期妊婦の歩行速度による歩容の変化,第 33 回日本看護科
学学会学術集会,大阪,12 月.
5)
福本環,岩脇陽子,松岡知子 (2013):性暴力被害者に対する看護に関する文献検討,第 39 回日本看護科学学会学
術集会,秋田,8月.
6)
松岡知子,岩脇陽子,滝下幸栄,福本環 (2013):妊娠5か月から9か月の体重,子宮底長,腹囲と歩容の変化,
第 39 回日本看護科学学会学術集会,秋田,8月.
山中 龍也
研究分野:臨床腫瘍学
研究活動
著書
1)
Yamanaka R: Primary Central Nervous System Lymphoma
- Recent advance on clinical research. pp461-470, In Terry Lichtor (ed.), Brain Tumors. INTECH, 2013.
英文論文
2)
Kawaguchi A, Yajima N, Tsuchiya N, Homma J, Sano M, Natsumeda M, Takahashi H, Fujii Y, Kakuma T, Yamanaka
R. Gene expression signature-based prognostic risk score in patients with glioblastoma. Cancer Sci 104(9):12051210,2013
3)
Takahashi R, Ishibashi Y, Hiraoka K, Matsueda S, Kawano K, Kawahara A, Kage M, Ohshima K, Yamanaka R, Shichijo
S, Shirouzu K, Itoh K, Sasada T. Phase II study of personalized peptide vaccination for refractory bone and soft
tissue sarcoma patients. Cancer Sci 104(10):1285-1294, 2013
4) Kon T, Natsumeda M, Takahashi H, Taki T,Fujii Y, Yamanaka R: Radiation-Induced Glioblastoma Following
Radiotherapy for Pituitary Adenomas: Marked Response to Chemotherapy. J Neurol Neurophysiol 4: 155.
doi:10.4172/2155-9562.1000155
-137 -
5)
Iwadate Y, Suganami A, Ikegami S, Shinozaki N, Matsutani T, Tamura Y, Saeki N, Yamanaka R: Non-deep-seated
primary CNS lymphoma ‒ therapeutic responses and a molecular signature J Neurooncol (in press)
和文論文
6) 岡田千鶴、滝智彦、吉田誠克、荒井優気、中川正法、山中龍也 : 遺伝カウンセリングにおけるクライエントへの支
援と医療者の役割に関する考察 . 京都府立医科大学看護学科紀要 23:55-65,2013.
7)
長谷部馨、山中龍也 : 告知後の癌患者の思いと必要な援助についての文献的考察 . 京都府立医科大学看護学科紀要
23:67-78,2013.
8)
森木美帆、山中龍也 : アロマテラピーが睡眠に及ぼす影響についての文献的考察 . 京都府立医科大学看護学科紀要
23: 79-87,2013.
学会発表
9) 山中龍也、川口淳、藤井幸彦、角間辰行
悪性星細胞腫瘍患者の予後予測方法の探索
第11回日本臨床腫瘍学会学術集会、仙台、8 月 29 日 -31 日、2013
10)山中龍也、川口淳、藤井幸彦、角間辰行
悪性星細胞腫瘍患者の予後予測方法の探索
第72回日本癌学会学術集会、横浜、10 月 3 日 -5 日、2013
小松 光代
研究分野:在宅・老年看護学
高齢者,睡眠健康,介護予防,認知症高齢者,ケア
研究活動
論文
1)
山縣恵美 , 山田陽介 , 杉原百合子 , 小松光代 , 木村みさか , 岡山寧子 (2013): 地域在住の自立高齢女性における体力
と抑うつ状態との関連 , 日本公衆衛生学会誌 , 60(4): 231-239.
学会発表
2) 小松光代 , 杉原百合子 , 山縣恵美 , 岡山寧子 (2013):認知症高齢者ケアにおける重要性認知と実践に関連する要因
-介護老人福祉施設職員を対象とした質問紙調査から- , 第 14 回日本認知症ケア学会大会 , 福岡市 , 6月 .
3)
杉原百合子 , 山縣恵美 , 小松光代 , 岡山寧子(2013):老年看護学実習での認知症高齢者理解における ICF 導入によ
る学び-学生レポートのテキストマイニングによる分析より- , 第 14 回日本認知症ケア学会大会 , 福岡市 , 6月 .
4) 小松光代 , 安江友世 , 杉原百合子 , 山縣恵美 , 岡山寧子 (2013): 認定看護師による摂食・嚥下障害の看護に関する学
生の学び-レポートのテキストマイニング分析から- , 日本老年看護学会第 18 回学術集会 , 大阪市 , 6 月 .
5)
杉原百合子、山田裕子、斎藤千鶴、小松光代、山縣恵美、岡山寧子 (2013):地域包括支援センターにおける看護
職の課題-インタビュー内容のテキストマイニング分析より,-日本老年看護学会第 18 回学術集会 , 大阪市 , 6 月 .
6)
三橋美和 , 小松光代 , 眞鍋えみ子 (2013):精神科デイケアにおける認知行動療法的アプローチを用いた睡眠改善プ
ログラムの試み日本睡眠学会第 38 回定期学術集会(秋田),6 月
7)
小松光代 , 眞鍋えみ子 , 和泉美枝 , 吉岡友香子 , 植松紗代 (2013):看護学士課程卒業時の看護実践能力と首尾一貫感
覚との関連,日本教育学会第 22 回学術集会 ,( 仙台市 ),8 月 .
8)
眞鍋えみ子 , 小松光代 , 和泉美枝 , 植松紗代 , 吉田友香子 , 笹川寿美 , 岡山寧子 (2013):新人看護師における就業3
年目までの職務ストレッサーとストレス反応 - 卒業後の縦断分析 -, 日本看護学教育学会 , 第 22 回学術集会 , 仙台市 ,
8月.
9)
山縣恵美 , 三宅基子 , 山田陽介 , 杉原百合子 , 小松光代 , 桝本妙子 , 木村みさか , 岡山寧子 (2013):地域在住自立男
性高齢者の閉じこもりリスクと体力 , 第 72 回日本公衆衛生学会学術集会 , 津市 ,10 月.
10)岡山寧子 , 小松光代 , 山縣恵美 , 杉原百合子 , 三宅基子 , 渡邊裕也 , 木村みさか , 山田陽介 , 桝本妙子(2013):地域
在住高齢者における熱中症による救急搬送の状況と関連要因 , 日本セーフティプロモーション学会 第 7 回学術大
会 , つくば市 ,11 月
-138 -
11)小松光代 , 三橋美和 , 杉原百合子 , 山縣恵美 , 眞鍋えみ子 , 岡山寧子 , 木村みさか (2013):後期高齢男性の睡眠測定
と生活活動時間からみた良眠のための保健指導の視点,第 33 回日本看護科学学会学術集会,東京,12 月 .
12)山縣恵美 , 山田陽介 , 桝本妙子 , 杉原百合子 , 小松光代 , 木村みさか , 岡山寧子 (2013):地域在住自立高齢女性の閉
じこもりリスクと体力,第 33 回日本看護科学学会学術集会,東京,12 月 .
浅野 弘明
研究分野:情報科学 , 統計学
研究活動:
原著
1)
小川節郎、菊池啓、浅野弘明、他 (2013): 変形性関節症を対象とした NS-315(トラマドール塩酸塩)の臨床第 III
相試験-プラセボを対照とした二重盲検群間比較試験(ランダム化治療中止デザイン)-、臨床医薬 29 巻 (6) 別冊、
3-18。
2) 小川節郎、細川豊史、浅野弘明、他 (2013): 帯状疱疹後神経痛を対象とした NS-315(トラマドール塩酸塩)の臨
床第 III 相試験-プラセボを対照とした二重盲検群間比較試験(ランダム化治療中止デザイン)-、臨床医薬 29
巻 (6) 別冊、19-36。
3) 小川節郎、細川豊史、浅野弘明、他 (2013): 慢性非がん性疼痛を対象とした NS-315(トラマドール塩酸塩)の長期
投与試験-非対照オープンラベル試験-、臨床医薬 29 巻 (6) 別冊、37-52。
4) Yukiko Okami, Gyozen Nin, Hiroaki Asano, et al. (2013): A randomized controlled trial of lifestyle self-monitoring
for irritable bowel syndrome in female nursing school students. Open Journal of Gastroenterology Vol.3 (8), 328336。
5)
高尾憲司、園田悦代、浅野弘明 (2013): 看護大学生の学年進度による健康度と生活習慣の差違-健康度・生活
習慣診断検査(DIHAL.2) を用いて-、京府医看護紀要、第 23 巻 1-6。
国際学会
6)
K Takao, E Sonoda, H Asano (2014): The Influence of Living with Family and Parents' Health Habits on Students'
Lifestyle at a Nursing College.9th International Nursing Conference & 3rd World Academy of Nursing Science,
Seoul, Korea.
7)
Masaya Takahashi, Yoshikazu Matsuoka, Hiroaki Asano, et al. (2013): CD133 Is a Positive Marker Of Human Cord
Blood-Derived CD34-Negative Hematopoietic Stem Cells, American Society of Hematology Annual Meeting. Dec.
7-10, New Oleans, USA
その他 ( 講演等 )
8)
浅野弘明 (2013): 医療統計学入門(関西医科大学大学院特別講義、5 月 30 日 , 6 月 27 日 , 7 月 25 日 , 9 月 26 日)
。
9)
浅野弘明 (2013): 情報処理(講演、京都府看護協会主催・認定看護師教育課程、7 月 3 0日、7月31日、8 月
5日、8 月6日)。
10)浅野弘明 (2013): 情報処理の基礎(講演、日本看護協会・神戸研修センター主催認定看護師教育課程、9 月5日)
。
11)浅野弘明 (2013): 正しい統計の使い方(講演、平成 24 年度京都府立医科大学リカレント講座 B コース、11 月 16、
12 月 7 日、12 月 14 日)。
園田 悦代
研究分野:小児看護学,看護教育
研究活動:
原著論文
1) 高尾憲司,園田悦代,浅野弘明(2013)
:看護大学生の学習進度による健康度と生活習慣の差違-健康度・生活習
慣診断検査 (DIHAL.2) を用いて-,京都府立医科大学看護学科紀要,23:1-6.
学会発表
(国際学会)
-139 -
2) Kenji Takao,Etsuyo Sonoda,Hiroaki Asano:The Influence of Living with Family and Parents’Health Habits on
Students’Lifestyle at a Nursing College, 9th INC & 3rd WANS,October 16-18,2013 Korea.
(国内学会)
3)
園田悦代,高尾憲司,馬場口喜子,平井美幸(2013):小児看護学実習におけるOSCEの導入を試みて-実習指
導の評価と今後の課題-,第 23 回日本小児看護学会学術集会,高知市,7月.
4)
高尾憲司,馬場口喜子,園田悦代(2013)
:看護大学生における生活習慣の影響要因の検討-児童生徒期に学習し
た生活習慣病の予防教育の実態から-,第 23 回日本小児看護学会学術集会,高知市,7月.
5)
平井美幸,園田悦代(2013)
:母親が心配する中学生の健康課題に関する実態調査,第 23 回日本小児看護学会学
術集会,高知市,7月.
6)
平井美幸,園田悦代(2013)
:中学校養護教諭に対する母親の支援ニーズに関する実態調査,第 60 回日本学校保
健学会,東京,11 月.
7) 高尾憲司,園田悦代,浅野弘明(2013):看護大学生における健康度・生活習慣の学年比較,第 33 回日本看護科
学学会学術集会,大阪市,12 月.
その他
8) 園田悦代 原案監修(2013)
:看護教育シリーズ(DVD)小児への経口与薬 VOL.1 基礎知識,医学映像教育センター,
東京.
9)
園田悦代 原案監修(2013)
:看護教育シリーズ(DVD)小児への経口与薬 VOL.2 基礎技術(乳児・幼児編),医
学映像教育センター,東京.
10)園田悦代 原案監修(2013)
:看護教育シリーズ(DVD)小児への経口与薬 VOL.3 基礎技術(学童・家庭編),医
学映像教育センター,東京.
滝下 幸栄
研究分野:基礎看護学,看護教育学
論文
1)
山本容子,室田昌子,滝下幸栄 (2013):看護学生の手指衛生教育において ATP 拭き取り検査法を導入することの
教育効果,京都府立医科大学看護学科紀要,23:17-23.
2)
岩脇陽子,藤本早和子,室田昌子,滝下幸栄,山本容子,松岡知子,関川加奈子 (2013):がん疼痛を有する患者
とのコミュニケーション技術教育の試み-がん疼痛看護基礎講座の実践-,京都府立医科大学看護学科紀要,23:
7-16.
学会発表
3)
山本容子,室田昌子,岩脇陽子,滝下幸栄 (2013):学士課程看護学生に対する継続的な感染予防教育の効果,第
33 回日本看護科学学会学術集会,大阪市,12 月.
4) 佐伯良子,岩脇陽子,室田昌子,福本環,滝下幸栄 (2013): 成人急性期看護学実習における ICU・手術室実習の学
習効果 , 第 33 回日本看護科学学会学術集会,大阪,12 月 .
5) 松岡知子,岩脇陽子,滝下幸栄,福本環 (2013):妊娠末期妊婦の歩行速度による歩容の変化,第 33 回日本看護科
学学会学術集会,大阪,12 月.
6)
松岡知子,岩脇陽子,滝下幸栄,福本環 (2013):妊娠5か月から9か月の体重,子宮底長,腹囲と歩容の変化,
第 39 回日本看護研究学会学術集会,秋田,8月
7)
山本容子,室田昌子,岩脇陽子,滝下幸栄 (2014):病院職員を対象としたパームスタンプ法を用いた手指衛生研
修の有効性 - 看護師、調理関係者、PSW を対象として -,第 29 回日本環境感染学会学術集会,東京都,2 月.
-140 -
光木 幸子
研究分野:がん看護学(外来看護),慢性看護学(セルフケア・糖尿病患者の看護),看護教育
研究活動
論文
1)
寺澤亜希 1,品川由里,宮島千恵,稲垣純子,倉ヶ市絵美佳,光木幸子 (2014):術後せん妄に対する看護師の知識
の向上とケアの統一を目指して~術後せん妄教育プログラムの導入~,京府医大看護紀要 Vol.23,p.35-40.
2) 北村治子,北野めぐみ,植田範子,光木幸子 (2014):生物学的製剤選択時における看護師の介入の有効性の検討,
京府医大看護紀要 Vol.23,p.41-46.
学会発表
3)
前滝栄子,光木幸子,吉田直久 (2013):早期大腸がんと病名告知を受けた患者のスピリチュアルな状態,第 18 回
日本緩和医療学会学術大会,神奈川県,6 月.
4)
藤田かおり,光木幸子 (2013):壮年期の夫ががんと診断されてから死別後に生じた妻の肯定的自己イメージ,第
18 回日本緩和医療学会学術大会,神奈川県,6 月.
5)
横田香世,光木幸子 (2013):インスリン療法からリラグルチドに変更した2型糖尿病患者への療養生活の変化,
第 7 回日本慢性看護学会学術集会,兵庫県,6 月.
6) 毛利貴子,光木幸子,占部美恵 (2013):「看護の統合と実践」受講による看護技術経験状況の変化 ",日本看護研
究学会第 39 回学術集会,秋田県,8 月.
7) 占部美恵,光木幸子,毛利貴子 (2013):ME 機器の操作と状況判断の習得に向けた行動目標の到達度の検討,日本
看護研究学会第 39 回学術集会,秋田県,8 月.
8) 服部美景,光木幸子 (2014):再発卵巣がん患者が治療を継続する過程のレジリエンス,第 28 回日本がん看護学会
学術集会,新潟県,2 月.
9)
藤田かおり,光木幸子 (2014):壮年期の夫のがん診断から師別後のプロセスを通して生じた妻の肯定的自己イメー
ジに影響した経験,第 28 回日本がん看護学会学術集会,新潟県,2 月.
臼井 香苗
研究分野:地域看護学
研究活動 著書 :
1)
出題基準別保健師国家試験問題、メディカ出版、監修 星 旦二(分担執筆)
論文 2) 地域在住の前期高齢者と後期高齢者における QOL 関連要因の比較.谷口奈保、桂敏樹、星野明子、臼井香苗.日
本農村医学会雑誌 62(2).
学会発表 ( 国際学会,国内学会 ):
3)
大都市超高齢化地域におけるヘルスケアタウン創生 粟田地域健康力アップ大作戦、公衆衛生学会、三重
4) 大都市超高齢化地域におけるヘルスケアタウン創生 粟田健康街づくり会の戦略、第 72 回公衆衛生学会総会、三
重
5) 都市化が急速に進む地方都市における健康増進・食育推進計画 事業計画と評価、第 72 回公衆衛生学会総会、三
重
6) 都市化が急速に進む地方都市の健康増進・食育推進計画の戦略 地域別実践戦略、第 72 回公衆衛生学会総会、三
重
その他
7)
「高齢社会における地域ケアモデル確立の試みと地域実践科学としての課題-地域コミュニティを基盤としたサロ
ンにおける健康支援活動の実際を通して-」日本看護研究学会第 39 回学術集会、秋田、交流集会Ⅱ世話人
-141 -
占部 美恵
研究分野:精神看護学
研究活動
著書
1) 占部美恵(2013)
:瀧川薫編集;精神保健看護学,精神科における治療と看護Ⅲ「環境療法」「認知行動療法」,オー
ム社,177 - 182
原著論文
2)
葛西麻生,大舘里枝,占部美恵(2014)
:自閉症者の歯科治療における支援の検討―歯科治療の行動を拡大できた
事例より―,第 44 回日本看護学会論文集精神看護,169 - 172.
報告
3)
加藤佑佳,松岡照之,小川真由,谷口将吾,藤本宏,占部美恵,柴田敬祐,中村佳永子,江口洋子,飯干紀代子,
小海宏之,仲秋秀太郎,三村將,福居顯二,成本迅(2013):認知機能障害により医療行為における同意能力が問
題となった2症例- McCAT-T を用いた医療同意能力の評価について-,老年精神医学雑誌,24(9),928 - 936.
4)
野田泰葉、占部美恵、木下彩栄(2014):認知症の早期発見・支援プロジェクト;認知症患者を地域で見守るネッ
トワークづくり,京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻紀要,9,59 - 61.
学会発表
国際学会
5) Mie Urabe,Jin Narumoto,Teruyuki Matsuoka,Shogo Taniguchi,Yuka Kato、Mayu Ogawa, Kengo Kitajima,
Ayae Kinoshita(2013):Brain atrophy Comparison between Alzheimer’s Disease patients with Psychological
Disturbance and without Psychological Disturbance and Healthy Elderly People using Voxel Based Morphometry,
International Psychologeriatric Association 16th International Congress,Seoul,Korea,Octorber.
国内学会
6)
加藤佑香,成本迅,松岡照之,小川真由,谷口将吾,占部美恵,柴田敬祐,中村佳永子,江口洋子,飯干紀代子,
小海宏之,仲秋秀太郎,三村將,福居顯二(2013):認知機能障害により医療行為における同意能力が問題となっ
た2症例- McCAT-T を用いた医療同意能力の評価について-,第 28 回日本精神老年医学会,大阪府大阪市,6月.
7)
占部美恵,光木幸子,毛利貴子(2013):ME 機器の操作と状況判断の修得に向けた行動目標の到達度の検討,日
本看護研究学会第 39 回学術集会,秋田県秋田市,8月.
8)
毛利貴子,光木幸子,占部美恵(2013):「看護の統合と実践」受講による看護技術経験状況の変化,日本看護研
究学会第 39 回学術集会,秋田県秋田市,8月.
9)
葛西麻生,大館里枝,占部美恵(2013)
:自閉症者の歯科治療における支援の検討-歯科治療行動を拡大できた事
例より-,第 44 回日本看護学会-精神看護-学術集会,群馬県前橋市,9月 .
その他
10)占部美恵,成本迅(2013):認知症高齢者の情動を活かした介入方法の開発に向けた脳画像(MRI)と behavioral
and Psychological Symptoms of Dementia(BPSD)、情動との関連の調査,大阪ガスグループ福祉財団研究報告書,
26,51 - 57.
佐伯 良子
研究分野:成人看護学
研究活動 学会発表 ( 国内学会 )
1) 佐伯良子 , 岩脇陽子 , 室田昌子 , 福本環 , 滝下幸栄 (2013): 成人急性期看護学実習における ICU• 手術室実習の学習効
果 , 日本看護科学学会学術集会 , 大阪市 ,11 月 .
-142 -
杉原 百合子
研究分野:在宅・老年看護学
研究活動 論文
1) 山縣恵美,山田陽介,杉原百合子,小松光代,木村みさか,岡山寧子 (2013): 地域在住の自立高齢女性における体
力と抑うつ状態との関係 . 日本公衆衛生雑誌,60(4):231-240
2) 峯本佳世子,杉原百合子,山田裕子,斉藤千鶴,田中八州夫 (2013): 地域包括支援センターにおける社会福祉士の
課題―フォーカス・グループ・インタビューでみえた専門職のジレンマ―.介護福祉学,20(2),:126-136
学会発表
(国内学会)
3)
杉原百合子,小松光代,山縣恵美,岡山寧子 (2013): 老年看護学実習での認知症高齢者理解における ICF 導入によ
る学び~学生レポートのテキストマイニングによる分析より.第 14 回日本認知症ケア学会大会,福岡,6 月.
4)
小松光代,杉原百合子,山縣恵美,岡山寧子 (2013): 認知症高齢者ケアにおける重要性認知と実践に関連する要因
~介護老人福祉施設職員を対象とした質問紙調査から~.第 14 回日本認知症ケア学会大会,福岡,6 月.
5) 杉原百合子,山田裕子,斉藤千鶴,小松光代,山縣恵美,岡山寧子 (2013): 地域包括支援センターにおける看護職
の課題~インタビュー内容のテキストマイニング分析より~.第 18 回日本老年看護学会学術集会,大阪,6 月.
6) 小松光代,安江友世,杉原百合子,山縣恵美,岡山寧子 (2013): 認定看護師の講義による摂食・嚥下障害の看護に
関する学生の学び~レポートのテキストマイニング分析から~.第 18 回日本老年看護学会学術集会,大阪,6 月.
7) 山縣恵美,三宅基子,山田陽介,桝本妙子,杉原百合子,小松光代,木村みさか,岡山寧子 (2013): 地域在住自立
男性高齢者の閉じこもりリスクと体力.第 72 回日本公衆衛生学会総会,三重,10 月.
8)
武地一,國立淳子,杉原百合子,高橋紗也子,濱川慶之,森俊夫 (2013): 認知症患者家族の意思決定を支援するツー
ルとしての KN 式ケアパス概念図の作成.第 32 回日本認知症学会学術集会,松本,11 月.
9) 岡山寧子,小松光代,山縣恵美,杉原百合子,三宅基子,渡邊裕也,木村みさか,山田陽介,桝本妙子 (2013): 地
域在住高齢者における熱中症による救急搬送の状況と関連要因.日本セーフティプロモーション学会第 7 回学術
大会,つくば市,11 月.
10)小松光代,三橋美和,山縣恵美,杉原百合子,眞鍋えみ子,岡山寧子 (2013): 後期高齢男性の睡眠測定と生活活動
時間の分析~良眠のための保健指導策を探る~.第 33 回日本看護科学学会学術集会,大阪,12 月.
11)山縣恵美,山田陽介,桝本妙子,杉原百合子,小松光代,木村みさか,岡山寧子 (2013): 地域在住自立女性高齢者
の閉じこもりリスクと体力.第 33 回日本看護科学学会学術集会,大阪,12 月.
その他
12)Yuriko Sugihara(2013):Process of decision making by family caregivers of elderly patients with dementia.
JAPANESE-FINNISH SEMINAR - Ageing as a positive phenomenon ‒ enriching interaction -.Sep. Lahti,FIN.
三橋 美和
研究分野:地域看護学
研究活動:
論文
原著論文及び総説
1) 田中小百合,桝本妙子,植村小夜子,堀井節子,三橋美和,神原恵(2013):新任期保健師が教育プログラムの課
題を達成できなかった要因と現任教育のあり方、明治国際医療大学誌、9, 9-18.
研究報告、その他
2) 三橋美和,堀井節子,益邑千草 (2013):「非専門職訪問者によるこんにちは赤ちゃん事業の意義と効果的な実施の
ための工夫-中核市へのヒアリング調査の結果から―」,厚生労働科学研究費補助金成育疾患克服等次世代育成基
盤研究事業「乳児家庭全戸訪問事業 ( こんにちは赤ちゃん事業 )」における訪問拒否等対応困難事例への支援体制
に関する研究 平成 24 年度総括・分担研究報告書,170-177.
-143 -
学会発表
国内学会
3) 三橋美和、北島謙吾(2013):精神疾患をもつ人の睡眠セルフマネジメントに向けた援助の試み 精神科デイケア
における小集団プログラムの効果、日本精神保健看護学会第 23 回学術集会・総会、京都、6 月.
4) 三橋美和、小松光代、眞鍋えみ子(2013)
:精神科デイケアにおける認知行動療法的アプローチを用いた睡眠改善
プログラムの試み、日本睡眠学会第 38 回定期学術集会、秋田市、6 月.
5) 三橋美和、堀井節子、益邑千草(2013):非専門職訪問者によるこんにちは赤ちゃん事業の意義と効果的な実施の
ための工夫、第 72 回日本公衆衛生学会総会、津市、10 月.
6) 益邑千草、三橋美和、堤ちはる、佐藤拓代、中板育美、堀井節子、齋藤幸子(2013):乳児家庭全戸訪問事業にお
ける訪問拒否等対応困難事例への対応検討、第 72 回日本公衆衛生学会総会、津市、10 月.
7) 堀井節子、三橋美和、益邑千草(2013):非専門職の訪問者による「こんにちは赤ちゃん訪問」事業の一方法、第
72 回日本公衆衛生学会総会、津市、10 月.
8) 田中 小百合,桝本 妙子,植村 小夜子,堀井 節子,三橋 美和(2013):新任期保健師を対象とした教育プログラ
ムの検討、第 72 回日本公衆衛生学会総会、津市、10 月.
9) 桂敏樹、星野明子、臼井香苗、三橋美和、村上佳栄子、光井朱美、金辻治美、大槻眞美子、西田秀樹(2013):都
市化が急速に進む地方都市の健康増進・食育推進計画の戦略(1)地域別実践戦略、第 72 回日本公衆衛生学会総会、
津市、10 月.
10)臼井香苗、桂敏樹、星野明子、三橋美和、村上佳栄子、光井朱美、金辻治美、大槻眞美子、西田秀樹(2013):都
市化が急速に進む地方都市の健康増進・食育推進計画の戦略(2)事業計画と評価、第 72 回日本公衆衛生学会総会、
津市、10 月.
11)小松光代、三橋美和、杉原百合子、山縣恵美、眞鍋えみ子、岡山寧子(2013):後期高齢男性の睡眠測定と生活活
動時間の特徴からみた良眠のための保健指導の視点、第 33 回日本看護科学学会学術集会、東京、12 月.
その他
12)春山早苗、荒木田美香子、上野まり、佐藤紀子、澤井美奈子、椎葉倫代、筑波優子、三森寧子、桝本妙子、植村
小夜子、三橋美和、田中小百合、堀井節子 (2013):新任期保健師現認教育の課題と今後の取り組み -「新任期
保健師の認識と大学教員との協働による現任教育例から-、日本地域看護学会第 16 回学術集会;ワークショップ,
徳島市,8 月.
室田 昌子
研究分野:成人看護学,基礎看護学,看護技術,看護教育,精神看護学
研究活動 論文 活動報告
1)
岩脇陽子 , 藤本早和子 , 室田昌子 , 滝下幸栄 , 山本容子 , 松岡知子 , 関川加奈子 (2013): がん疼痛を有する患者とのコ
ミュニケーション技術教育の試み - がん疼痛看護基礎講座の実践 -, 京都府立医科大学看護学科紀要 , 23:7-16.
2)
山本容子 , 室田昌子 , 岩脇陽子 , 滝下幸栄 (2013): 看護学生の手指衛生教育において ATP 拭き取り検査法を導入す
ることの教育効果 , 京都府立医科大学看護学科紀要 ,23:17-23.
学会発表 ( 国際学会,国内学会 )
3) 西田直子 , 辻村裕次 , 山本容子 , 室田昌子 , 岩脇陽子 , 鈴木ひとみ , 峠田和史 (2013): 車いす利用者の避難施設のスロー
プ移動の筋負担 , 2013 第 23 回バイオメカニズム・シンポジウム , 京都 ,7 月 .
4) 西田直子,岩脇陽子,山本容子,室田昌子,垰田和史,辻村裕次,鈴木ひとみ (2013): 車椅子利用者にとっての避
難所のバリアフリー環境の現状調査 , 第 54 回日本社会医学会 , 東京都 ,7 月 .
5) 室田昌子 , 岩脇陽子 , 山本容子 , 北島謙吾 , 西田直子 , 伊藤栄見子 , 松本賢哉 (2013): 臥位でのヘッドトリートメント
が心理面におよぼす影響 , 2013 第 33 回日本看護科学学会学術集会 , 大阪 ,12 月 .
6) 山本容子 , 室田昌子 , 岩脇陽子 , 滝下幸栄 (2013): 学士課程看護学生に対する継続的な感染予防教育の効果 , 2013 第
-144 -
33 回日本看護科学学会学術集会 , 大阪 ,12 月 .
7)
佐伯良子 , 岩脇陽子 , 室田昌子 , 福本環 , 滝下幸栄 (2013): 成人急性期看護学実習における ICU・手術室実習の学習
効果 , 第 33 回日本看護科学学会学術集会 , 大阪 ,12 月 .
8) 山本容子 , 室田昌子岩脇陽子 , 滝下幸栄 (2013): 病院職員を対象としたパームスタンプ法を用いた手指衛生研修の
有効性-看護師,調理関係者,PSW を対象として- , 第 29 回日本環境感染学会総会 , 東京 ,2 月.
毛利 貴子
研究分野:成人看護学
研究活動 著書 :
論文 1) 毛利 貴子 , 籏持知恵子 , 有本太一郎 , 岩崎吉伸(2013):安定期慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の栄養状態と食生
活の実態 京都府立医科大学看護学科紀要 ,23,25-34.
学会発表 ( 国内学会 )
2)
毛利貴子 , 光木幸子 , 占部美恵(2013)
:
「看護の統合と実践」受講による看護技術経験状況の変化 第 40 回日本
看護研究学会学術集会、秋田市、8 月
3)
毛利 貴子 , 有本太一郎 , 上田幹雄 , 棟近麻衣 , 松井善也 , 久保秀一 , 岩崎吉伸(2013):呼吸器内科外来における呼
吸教室開催のプロセスと今後の課題 第 23 回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会 , 東京都 ,10 月
4)
毛利 貴子 , 籏持知恵子(2013)
:安定期慢性閉塞性肺疾患患者における栄養状態と食生活の実態 第 33 回日本看
護科学学会学術集会、大阪市、12 月
5)
占部 美恵 , 光木 幸子 , 毛利 貴子(2013):ME 機器の操作と状況判断の習得に向けた行動目標の到達度の検討 第
40 回日本看護研究学会学術集会 , 秋田市 ,8 月
6)
笹川 寿美 , 毛利 貴子(2013):成人慢性期看護学領域における領域別実習前シミュレーション学習の学生の認識 第 23 回日本看護学教育学会学術集会 , 仙台市 ,8 月
7) 御神本奈保美、繁田正子、今西美津恵 , 毛利貴子 , 中澤敦子 , 井上郁 , 松井大輔 , 渡邊功 , 尾崎悦子 , 栗山長門 , 渡邊
能行(2013)
:看護学生の喫煙状況と喫煙関連因子に関する横断的研究 第 72 回日本公衆衛生学会学術集会 , 津市 ,10
月
その他
山本 容子
研究分野:基礎看護学,看護教育
研究活動:
論文
活動報告
1) 山本容子,室田昌子,岩脇陽子,滝下幸栄 (2013):看護学生の手指衛生教育において ATP 拭き取り検査法を導入
することの教育効果,京都府立医科大学看護学科紀要,23:17-23.
2)
岩脇陽子,藤本早和子,室田昌子,滝下幸栄,山本容子,松岡知子,関川加奈子 (2013):がん疼痛を有する患者
とのコミュニケーション技術教育の試み-がん疼痛看護基礎講座の実践-,京都府立医科大学看護学科紀要,23:
7-16.
その他
3)
山本容子 (2014):看護基礎教育から継続教育にわたる手指衛生改善のための標準的支援プログラムの構築,平成
23 ~ 25 年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金 基盤研究 C)研究成果報告書.
学会発表
4)
西田直子,岩脇陽子,山本容子,室田昌子,峠田和史,辻村裕次,鈴木ひとみ (2013):車椅子利用者にとっての
避難所のバリアフリー環境の現状調査,第 54 回日本社会医学学会,八王子市,7 月.
-145 -
5)
西田直子,辻村裕次,山本容子,室田昌子,岩脇陽子,鈴木ひとみ,峠田和史 (2013):車いす利用者の避難施設
のスロープ移動の筋負担,第 23 回バイオメカニズム・シンポジウム,京都市,7 月.
6)
山本容子,室田昌子,岩脇陽子,滝下幸栄 (2013):学士課程看護学生に対する継続的な感染予防教育の効果,第
33 回日本看護科学学会学術集会,大阪市,12 月.
7)
室田昌子,岩脇陽子,山本容子,北島謙吾,西田直子,伊藤栄見子,松本賢哉 (2013):臥位でのヘッドトリート
メントが心理面に及ぼす影響,第 33 回日本看護科学学会学術集会,大阪市,12 月.
8)
山本容子,室田昌子,岩脇陽子,滝下幸栄 (2014):病院職員を対象としたパームスタンプ法を用いた手指衛生研
修の有効性 - 看護師、調理関係者、PSW を対象として -,第 29 回日本環境感染学会学術集会,東京都,2 月.
吉岡 友香子
研究分野:母性看護学,助産学
研究活動:
論文
1) 和泉美枝,眞鍋えみ子,吉岡友香子 (2013):女子大学生の子宮がん検診受診と HPV ワクチン接種行動の関連要因
に関する研究,母性衛生,54(1):120-129.
学会発表(国内学会)
2) 吉岡友香子,植松紗代,和泉美枝,眞鍋えみ子 (2013):中学生の母親の娘への HPV ワクチン接種に影響を与える
要因,第 27 回日本助産学会学術集会,金沢,5 月.
3)
植松紗代,和泉美枝,吉岡友香子,眞鍋えみ子 (2013):妊娠中のマイナートラブルの特徴と日常生活の関連,第
27 回日本助産学会学術集会,金沢,5 月.
4) 和泉美枝,吉岡友香子,植松紗代,眞鍋えみ子 (2013):女子大学生の子宮頸癌検診受診率と HPV ワクチン接種行
動を決定する要因の検討,第 27 回日本助産学会学術集会,金沢,5 月.
5)
小松光代,眞鍋えみ子,和泉美枝,吉岡友香子,植松紗代 (2013):看護学士課程卒業時の看護実践能力と首尾一
貫感覚との関連,第 22 回日本看護学教育学会術集会,仙台,7 月.
6)
眞鍋えみ子,小松光代,和泉美枝,植松紗代,吉岡友香子,笹川寿美,岡山寧子 (2013):新人看護師における就
業 3 年目までの職務ストレッサーとストレス反応‐卒業後の縦断調査による分析‐,第 22 回日本看護学教育学会
術集会,仙台,7 月.
7)
吉岡友香子,和泉美枝,植松紗代,眞鍋えみ子 (2013):子宮頸癌予防ワクチン接種推奨年齢の娘を持つ母親の子
宮頸癌予防行動と知識との関連,第 54 回日本母性衛生学会,さいたま,10 月.
8)
植松紗代,和泉美枝,吉岡友香子,眞鍋えみ子,田中秀樹,岩破一博,北脇城 (2013):妊娠における睡眠充足感
とテレビ視聴時間との関連,第 54 回日本母性衛生学会,さいたま,10 月.
9)
和泉美枝,吉岡友香子,植松紗代,眞鍋えみ子 (2013):女子大学生の性感染症と性行為に関する知識と認識~医
療系と非医療系大学の比較~,第 54 回日本母性衛生学会,さいたま,10 月.
10)眞鍋えみ子,植松紗代,和泉美枝,吉岡友香子 (2013):産後ヨーガ教室が自律神経活動と唾液アミラーゼ活性に
及ぼす影響,第 54 回日本母性衛生学会,さいたま,10 月.
11)吉岡友香子,植松紗代,和泉美枝,眞鍋えみ子 (2014):看護学生の月経随伴症状と睡眠・食習慣との関連,第 28
回日本助産学会学術集会,長崎,3 月.
12)和泉美枝,植松紗代,吉岡友香子,松岡知子,増本綾子,伊藤多恵子,倉本孝子,眞鍋えみ子 (2014):助産師養
成機関の協働による分娩介助 OSCE の試み,第 28 回日本助産学会学術集会,長崎,3 月.
13)植松紗代,和泉美枝,吉岡友香子,眞鍋えみ子 (2014):妊娠女性のマイナートラブルに関連する要因の検討,第
28 回日本助産学会学術集会,長崎,3 月.
-146 -
和泉 美枝
研究分野:母性看護学・助産学
研究活動:
原著論文及び総説,報告
1) 和泉美枝,眞鍋えみ子,吉岡友香子 (2013):女子大学生の子宮がん検診受診と HPV ワク チン接種行動の関連要因
に関する研究,母性衛生,54(1),120‐129.
2)
倉ヶ市絵美佳,小松光代,大澤智美,中村尚美,和泉美枝,植松紗代,神澤暁子,橋元春美,小城智圭子 (2013):
A 大学病院における看護師の職務キャリアに対する認知と看護実践能力の関連,第 43 回日本看護学会論文集看護
管理,111‐114.
学会発表
3)
和泉美枝,吉岡友香子,植松紗代,眞鍋えみ子 (2013):女子大学生の子宮癌検診と HPV ワクチン接種行動を決定
する要因の検討,第 27 回日本助産学会,金沢市,5 月 .
4)
植松紗代,和泉美枝,吉岡友香子,眞鍋えみ子 (2013):妊娠中のマイナートラブルの特徴と日常生活の関連,第
27 回日本助産学会,金沢市,5 月 .
5)
吉岡友香子,植松紗代,和泉美枝,眞鍋えみ子 (2013):中学生の母親の娘への HPV ワクチン接種に影響を与える
要因,第 27 回日本助産学会,金沢市,5 月 .
6)
小松光代,眞鍋えみ子,和泉美枝,吉岡友香子,植松紗代 (2013):看護学士課程卒業時の看護実践能力と首尾一
貫感覚との関連,第 23 回日本看護学教育学会,仙台市,8 月.
7)
眞鍋えみ子,小松光代,和泉美枝,植松紗代,吉岡友香子,笹川寿美,岡山寧子 (2013):新人看護師における就
業 3 年までの職務ストレッサーとストレス反応-卒業時の縦断調査による分析-,第 23 回日本看護学教育学会,
仙台市,8 月.
8)
和泉美枝,吉岡友香子,植松紗代,眞鍋えみ子 (2013):女子大学生の性感染症と性行為に関する知識と認識-医
療系と非医療系大学の比較-,第 54 回日本母性衛生学会,さいたま市,10 月.
9)
植松紗代,和泉美枝,吉岡友香子,眞鍋えみ子,田中秀樹,岩破一博,北脇城 (2013):妊婦における睡眠充実感
とテレビ視聴時間との関連,第 54 回日本母性衛生学会,さいたま市,10 月.
10)木村涼子,植松紗代,和泉美枝,眞鍋えみ子 (2013):児への母乳率と体重及び体脂肪率との関連,第 54 回日本母
性衛生学会,さいたま市,10 月.
11)眞鍋えみ子,植松紗代,和泉美枝,吉岡友香子 (2013):産後のヨーガ教室が自律神経活動と唾液アミラーゼ活性
に及ぼす影響,第 54 回日本母性衛生学会,さいたま市,10 月.
12)吉岡友香子,和泉美枝,植松紗代,眞鍋えみ子 (2013):子宮頸癌予防ワクチン接種推奨年齢の娘を持つ母親の子
宮頸癌予防行動と知識との関連,第 54 回日本母性衛生学会,さいたま市,10 月.
13)和泉美枝,植松紗代,吉岡友香子,松岡知子,増本綾子,伊藤多恵子,倉本孝子,眞鍋えみ子 (2014):助産師養
成機関の協働による分娩介助 OSCE の試み,第 28 回日本助産学会,長崎市,3 月.
14)吉岡友香子,植松紗代,和泉美枝,眞鍋えみ子 (2014):看護学生の月経随伴症状と睡眠・食習慣との関連,第 28
回日本助産学会,長崎市,3 月. 15)植松紗代,和泉美枝,大久保友香子,眞鍋えみ子 (2014):妊娠女性のマイナートラブルに関連する要因の検討,
第 28 回日本助産学会,長崎市,3 月. 16)眞鍋えみ子,和泉美枝,倉本孝子,柳吉桂子,谷口初美,高田昌代,千葉陽子,脇田満里子,我部山キヨ子 (2014):
助産師教員の助産実践能力の標準レベル到達年数に関する研究,第 28 回日本助産学会,長崎市,3 月.
17)柳吉桂子,千葉陽子,谷口初美,我部山キヨ子,高田昌代,眞鍋えみ子,和泉美枝,倉本孝子,脇田満里子 (2014):
助産師教員の教育能力及び標準レベル到達年数に関する研究,第 28 回日本助産学会,長崎市,3 月.
18)我部山キヨ子,高田昌代,千葉陽子,柳吉桂子,和泉美枝,倉本孝子,谷口初美,脇田満里子,眞鍋えみ子 (2014):
助産師教員の研究能力及び管理能力の標準レベル到達年数に関する研究,28 回日本助産学会,長崎市,3 月.
19)渡辺綾子,植松紗代,和泉美枝,岩佐弘一,眞鍋えみ子 (2014):妊娠初期におけるつわり症状と睡眠の関連,日
本睡眠学会第 39 回定期学術集会,徳島市,7 月.
-147 -
20)伊藤文武,岩佐弘一,細川麻耶,辰巳弘,植松紗代,和泉美枝,眞鍋えみ子,北脇城 (2014):若年女性における
月経不順と健康被害との関連.第 43 回日本女性心身医学会,京都市,8 月.
その他 21)眞鍋えみ子,岡山寧子,笹川寿美,和泉美枝,松尾友子 (2013):領域別臨地実習における e-learning の活用を考え
る-看護基礎教育と臨床の協働による取り組み-,第 23 回日本看護学教育学会,仙台市,8 月.
馬場口 喜子
研究分野:小児看護学 看護教育
研究活動:
植松 紗代
研究分野:母性看護学・助産学
研究活動
原著論文及び総説
1)
倉ヶ市絵美佳,小松光代,大澤智美,中村尚美,和泉美枝,植松紗代,神澤暁子,橋元春美,小城智圭子 (2013):
A 大学病院における看護師の職務キャリアに対する認知と看護実践能力の関連,第 43 回日本看護学会論文集看護
管理,111‐114.
国内学会
2)
植松紗代,和泉美枝,吉岡友香子,眞鍋えみ子(2013):妊娠中のマイナートラブルの特徴と日常生活の関連,第
27 回日本助産学会学術集会,金沢,5 月.
3) 吉岡友香子,植松紗代,和泉美枝,眞鍋えみ子(2013):中学生の母親の娘への HPV ワクチン接種に影響を与え
る要因,第 27 回日本助産学会学術集会,金沢,5 月.
4) 和泉美枝,吉岡友香子,植松紗代,眞鍋えみ子(2013):女子大学生の子宮頸癌検診受診と HPV ワクチン接種行
動を決定する要因の検討,第 27 回日本助産学会学術集会,金沢,5 月.
5)
植松紗代,眞鍋えみ子,田中秀樹(2013):妊娠期における就寝習慣,熟眠感とマイナートラブルとの関連,第 38
回日本睡眠学会学術集会,秋田,6 月.
6) 植松紗代,和泉美枝,吉岡友香子,眞鍋えみ子,田中秀樹,岩破一博,北脇城(2013):妊婦における睡眠充足感
とテレビ視聴時間との関連,第 54 回日本母性衛生学会学術集会,埼玉,10 月.
7) 和泉美枝,吉岡友香子,植松紗代,眞鍋えみ子(2013):女子大学生の性行為に関する知識と認識,第 54 回日本
母性衛生学会学術集会,埼玉,10 月.
8)
木村涼子,植松紗代,和泉美枝,眞鍋えみ子(2013):児への母乳率と産後の体重及び体脂肪率との関連,第 54
回日本母性衛生学会学術集会,埼玉,10 月.
9) 眞鍋えみ子,植松紗代,和泉美枝(2013)
:産後のヨーガ教室が自律神経活動と唾液アミラーゼ活性に及ぼす影響,
第 54 回日本母性衛生学会学術集会,埼玉,10 月.
10)吉岡友香子,和泉美枝,植松紗代,眞鍋えみ子(2013):子宮頸癌予防ワクチン接種推奨年齢の娘を持つ母親の子
宮頸癌予防行動と知識との関連,第 54 回日本母性衛生学会学術集会,埼玉,10 月.
11)植松紗代,和泉美枝,吉岡友香子,眞鍋えみ子(2014):妊娠女性のマイナートラブルに関連する要因の検討,第
28 回日本助産学会学術集会,長崎,3 月.
12)和泉美枝,植松紗代,吉岡友香子,松岡知子,増本綾子,伊藤多恵子,倉本孝子,眞鍋えみ子(2014):助産師養
成機関の協働による分娩介助 OSCE の試み,第 28 回日本助産学会学術集会,長崎,3 月.
13)吉岡友香子,植松紗代,和泉美枝,眞鍋えみ子(2014):看護学生の月経随伴症状と睡眠,食習慣との関連,第 28
回日本助産学会学術集会,長崎,3 月.
-148 -
柴田 明美
研究分野:成人看護学、看護管理学、看護教育学
研究活動
著書:なし
論文
資料
1) 柴田明美,岩脇陽子,新垣洋美,浜崎美子,小松美幸(2012):新人看護師が求める先輩看護師の関わり,京都府
立医科大学看護学科紀要,22,75-85.
学会発表(国内学会)
2)
柴田明美,岩脇陽子,新垣洋美,浜崎美子,小松美幸(2012):新人看護師が求める先輩看護師の関わり,第 20
回日本看護教育学会,大阪市,8 月.
高尾 憲司
研究分野:小児看護学
研究活動
論文
1)
高尾憲司、園田悦代、浅野弘明 (2013).看護大学生の学年進度による健康度と生活習慣の差違-健康度・生活習
慣診断検査 (DIHAL.2) を用いて-.京都府立医科大学看護学科紀要,23,1-6.
学会発表
国際学会
2)
Kenji Takao, Etsuyo Sonoda, Hiroaki Asano(2013):The Influence of Living with Family and Parents’Health Habits
on Students’Lifestyle at a Nursing College. 3th World Academy OF Nursing Science (WANS), Souel, Korea,
Octorber 18.
国内学会
3)
高尾憲司,馬場口喜子,園田悦代 (2013):看護大学生における生活習慣の影響要因の検討 - 児童生徒期に学習した
生活習慣病の予防教育の実態から -.日本小児看護学会第 23 回学術集会,7 月,高知.
4)
高尾憲司,園田悦代,浅野弘明 (2013):看護大学生における健康度、生活習慣の学年比較.第 33 回日本看護科学
学会学術集会,12 月,大阪.
5)
園田悦代,高尾憲司,馬場口喜子,平井美幸 (2013):小児看護学実習における OSCE 導入を試みて - 実習指導の評
価と今後の課題 -.日本小児看護学会第 23 回学術集会,7 月,高知.
原田 清美
研究分野:基礎看護学、成人看護学、栄養学
研究活動
原著
1) Yukiko Okami, Gyozen Nin, Kiyomi Harada, Sayori Wada, Tomiko Tsuji, Yusuke Okuyama, Susumu Takakuwa,
Motoyori Kanazawa, Shin Fukudo, Akane Higashi (2013) : Irritable bowel syndrome in Chinese nursing and medical
school students-Related lifestyle and psychological factors. Open Journal of Gastroenterology, 3(1)55-63.
2) Yukiko Okami, Gyozen Nin, Kiyomi Harada, Masayo Iwasa, Kaori Kitaoka, Ayako Saruwatari, Wataru Aoi, Sayori
Wada, Misaka Kimura, Hiroki Asano, Yusuke Okuyama, Susumu Takakuwa, Motoyori Kanazawa, Shin Fukudo,
Tomiko Tsuji, Akane Higashi (2013) : A randomized controlled trial of lifestyle self-monitoring for irritable bowel
syndrome in female nursing school students. Open Journal of Gastroenterology, 3(8): 328-336.
3) Masayo Iwasa, Wataru Aoi, Keitaro Mune, Haruka Yamauchi, Kaori Furuta, Shota Sasaki, Kazuya Takeda, Kiyomi
Harada, Sayori Wada, Yasushi Nakamura, Kenji Sato, Akane Higashi (2013) : Fermented milk improves glucose
metabolism in exercise-induced muscle damage in young healthy men. Nutrition Journal, 12(1):83.doi:
-149 -
10.1186/1475-2891-12-83.
4) Kiyomi Harada, Ayako Saruwatari, Kaori Kitaoka, Wataru Aoi, Sayori Wada, Takayoshi Ohkubo, Katsuyuki Miura,
Yoshiyuki Watanabe, Takashi Kusunoki, Akane Higashi (2013) : Association between Low Birth Weight and High
Waist-to-Height Ratio in Japanese Elementary School Girls. Tohoku J. Exp. Med.,231(2): 85-91.
福田 弘子
研究分野:精神看護学
研究活動 学会発表
1) S.Minoda,N.Kotera,H.Fukuda,J.Aono,S.Higuchi(2013): Issues Concerning National Nurses Examination Successful
Candidates in the Economic Partnership Agreement-A Questionnaire Survey Concerning Foreign Nurses in Host
Facilities-, The 9th International Nursing Conference 2013 & 3rd World Academy of Nursing Science, Seoul, Korea,
Oct.
その他 2) 福田弘子 (2013):認知症治療病棟で働く看護師の気持ち ( 講演 ), 第 3 回認知症入院治療研究会 , 京都市 ,10 月 .
福本 環
研究分野:成人看護学,思春期看護学
研究活動
学会発表
1)
福本環 , 岩脇陽子 , 松岡知子 (2013): 性暴力被害者に対する看護に関する文献検討 , 第 39 回日本看護研究学会学術
集会 , 秋田 ,8 月 .
2) 松岡知子 , 岩脇陽子 , 滝下幸栄 , 福本環 (2013): 妊娠 5 か月から 9 か月の体重 , 子宮底長 , 復囲と歩容の変化 , 第 39
回日本看護研究学会学術集会 , 秋田 ,8 月 .
3) 福本環 , 岩脇陽子 , 松岡知子 , 北島謙吾 (2013): 性暴力被害者支援における看護介入のための文献的検討 , 第 33 回
日本看護科学学会学術集会,大阪 ,12 月 .
4) 松岡知子 , 岩脇陽子 , 滝下幸栄 , 福本環 (2013): 妊娠末期妊婦の歩行速度により歩容の変化 , 第 33 回日本看護科学
学会学術集会,大阪 ,12 月 .
5) 佐伯良子 , 岩脇陽子 , 室田昌子 , 福本環 , 滝下幸栄 (2013):成人急性期看護学実習における ICU・手術室実習の学習
効果 , 第 33 回日本看護科学学会学術集会,大阪 ,12 月 .
村上 佳栄子
研究分野:地域看護学
研究活動
学会発表 ( 国内学会 ):
1)
村上佳栄子,星野明子,大西早百合,桂敏樹 (2013):限界集落における独居高齢者の暮らしを持続可能にする要
因の検討,第 72 回日本公衆衛生学会,三重,10 月 / 第 3 回 4 大学連携研究フォーラム,京都,12 月 .
2)
桂敏樹,星野明子,臼井香苗,三橋美和,村上佳栄子,光井朱美,金辻治美,大槻眞美子,西田秀樹 (2013):都
市化が急速に進む地方都市の健康増進・食育推進計画の戦略(1)-地域別実践戦略-,第 72 回日本公衆衛生学会,
三重,10 月 .
3)
臼井香苗,桂敏樹,星野明子,三橋美和,村上佳栄子,光井朱美,金辻治美,大槻眞美子,西田秀樹 (2013):都
市化が急速に進む地方都市における健康増進・食育推進計画(2)-事業計画と評価-,第 72 回日本公衆衛生学会,
三重,10 月 .
4)
星野明子,臼井香苗,村上佳栄子,志澤美保,西澤美香,藤本萌美,細川陸也,三宅慧,小田川敦,石川信二,
中川智子,桂敏樹 (2013):大都市超高齢化地域におけるヘルスタウン創生 (1) 粟田健康街づくり会の戦略,第 72
-150 -
回日本公衆衛生学会,三重,10 月 .
5)
志澤美保,星野明子,臼井香苗,村上佳栄子,西澤美香,藤本萌美,細川陸也,三宅慧,小田川敦,石川信二,
中川智子,桂敏樹 (2013):大都市超高齢化地域におけるヘルスタウン創生 (2) 粟田健康街づくり会の戦略,第 72
回日本公衆衛生学会,三重,10 月
山縣 恵美
研究分野:在宅・老年看護学
研究活動:
論文
原著論文および総説,報告
1) 山縣恵美,山田陽介,杉原百合子,小松光代,木村みさか,岡山寧子(2013):地域在住の自立高齢女性における
体力と抑うつ状態との関連 . 日本公衆衛生雑誌 60(4):231-240.
2)
山田陽介 , 山縣恵美 , 木村みさか(2013):高齢者の身体活動量向上による骨格筋細胞量向上とうつ傾向改善との関
連,健康医科学 28:26-35.
3) Y. Watanabe, Y. Yamada, Y. Fukumoto, T. Ishihara, K. Yokoyama, T. Yoshida, M. Miyake, E. Yamagata, M. Kimura
(2013)
: Echo intensity obtained from ultrasonography images reflecting muscle strength in elderly men. Clinical
Interventions in Aging, 8:993-998.
学会発表
( 国際学会 )
4)
M. Kimura, M. Kitagawa, E. Yamagata, Y. Yamada, Y. Okayama(2013):Relationship between pain and fitness in
the community-dwelling elderly, 66th Annual Scientific Meeting of Gerontology Society of America, New Orleans,
USA, November.
( 国内学会 )
5) 小松光代,杉原百合子,山縣恵美,岡山寧子(2013):認知症高齢者ケアにおける重要性認知と実践に関する要因
介護老人福祉施設職員を対象とした質問紙調査から,第 14 回日本認知症ケア学会大会,福岡,6 月.
6) 杉原百合子,小松光代,山縣恵美,岡山寧子(2013):老年看護学実習での認知症高齢者理解におけるICF導入
による学び 学生レポートのテキストマイニングによる分析より,第 14 回日本認知症ケア学会大会,福岡,6 月.
7) 小松光代,安江友世,杉原百合子,山縣恵美,岡山寧子(2013):認定看護師の講義による摂食・嚥下障害の看護
に関する学生の学び レポートのテキストマイニング分析から,日本老年看護学会第 18 回学術集会,大阪,6 月.
8) 杉原百合子,山田裕子,斉藤千鶴,小松光代,山縣恵美,岡山寧子(2013):地域包括支援センターにおける看護
職の課題~インタビュー内容のテキストマイニング分析より~.第 18 回日本老年看護学会学術集会,大阪,6 月.
9)
山縣恵美,三宅基子,山田陽介,桝本妙子,杉原百合子,小松光代,木村みさか,岡山寧子(2013):地域在住自
立男性高齢者の閉じこもりリスクと体力,第 72 回日本公衆衛生学会総会,津市,10 月.
10)三宅基子,木村みさか,山田陽介,山縣恵美,桝本妙子,岡山寧子(2013):高齢者の外傷・介護予防推進・検証
の地域コホート研究:亀岡スタディの研究計画概要,第 72 回日本公衆衛生学会総会,津市,10 月.
11)岡山寧子,三宅基子,山田陽介,山縣恵美,桝本妙子,木村みさか(2013):亀岡スタディベースライン調査の特
性(地域特性),第 72 回日本公衆衛生学会総会,津市,10 月.
12)木村みさか,桝本妙子,三宅基子,山田陽介,山縣恵美,岡山寧子(2013):亀岡スタディベースライン調査の特
性(年齢・性による特性)),第 72 回日本公衆衛生学会総会,津市,10 月.
13)桝本妙子,山田陽介,三宅基子,小松光代,山縣恵美,岡山寧子,藤原佳典,木村みさか(2013):地域在住自立
高齢者の抑うつに関連する要因の分析,第 72 回日本公衆衛生学会総会,津市,10 月.
14)岡山寧子,小松光代,山縣恵美,杉原百合子,三宅基子,渡邊裕也,木村みさか,山田陽介,桝本妙子(2013)
:
地域在住高齢者における熱中症による救急搬送の状況と関連要因,日本セーフティプロモーション学会 第 7 回
学術大会,つくば市,11 月.
15)山縣恵美,山田陽介,桝本妙子,杉原百合子,小松光代,木村みさか,岡山寧子(2013):地域在住自立高齢女性
-151 -
の閉じこもりリスクと体力,第 33 回日本看護科学学会学術集会,東京,12 月.
16)小松光代,三橋美和,山縣恵美,杉原百合子,眞鍋えみ子,岡山寧子(2013):後期高齢男性の睡眠測定と生活活
動時間の分析~良眠のための保健指導策を探る~.第 33 回日本看護科学学会学術集会,大阪,12 月.
その他
17)木村みさか,山田陽介,山縣恵美.第 1 章 総合型介護予防プログラムの意義と概要 第 1 節 高齢期の身体的
特徴と介護予防の意義~運動器機能・口腔機能の向上と食生活改善の必要性.京都府立医科大学応用健康科学教室.
京都式介護予防総合プログラム構築事業 地域資源を活用した総合型介護予防プログラム実施マニュアル,京都:
京都地域包括ケア推進機構,2014:7-10.
-152 -
平成25年度科学研究費補助金配分一覧(代表分)
平成 25 年度科学研究費補助金配分一覧 ( 代表分)
(単位:千円)
基盤研究(B)
研究代表者
氏 名
年度
26
課題番号
研究課題
24390478
災害時における車椅子利用者の避難生活環境
のユビキタスシステムの開発と評価
教授
西田直子
2,400
3,100
24390347
脳悪性リンパ腫の全エクソンシーケンスを用い
た統合的ゲノム創薬・バイオマーカー研究
教授
山中龍也
3,400
3,400
合計
5,800
職
25
27
3,400
基盤研究(C)
課題番号
研究課題
職
研究代表者
氏 名
25
年度
26
24593268
看護基礎教育における看護実践の基盤となる
能力育成のための支援プログラム
教授
吾妻知美
900
22592621
外国人看護師の介護老人保健施設でのディス
コミュニケーションに関する研究
教授
江本厚子
300
23593352
住民参画による持続的な活動評価の質を担保
するアセスメント・アシュアランスの構築
教授
星野明子
1,000
24593503
不眠愁訴のある高齢者の入眠潜時短縮を目指
准教授
すプログラムの短期および長期効果の検証
小松光代
800
500
24593502
認知症高齢者本人の意向を尊重した意思決定
を行うための支援に関する研究
講師
杉原百合子
1,300
1,560
24593504
地域で生活する統合失調症をもつ人の睡眠衛
生に着目したスリープマネジメントの支援
講師
三橋美和
600
700
24593228
安楽を提供する新しい看護技術「看護用のヘッ
ドトリートメント」の開発
講師
室田昌子
800
500
23593169
看護基礎教育から継続教育にわたる手指衛生
改善のための標準的支援プログラムの構築
講師
山本容子
500
合計
27
1,200
100
6,200
挑戦的萌芽研究
課題番号
研究課題
職
研究代表者
氏 名
25
23659695
中枢神経原発悪性リンパ腫のN結合型糖たん
ぱく糖鎖解析から分子標的療法の開発
教授
山中龍也
900
24660051
認知症高齢者の情動を活かした看護介入方法
と評価スケールの開発
講師
占部美恵
500
合計
-153 -
1,400
年度
26
1,100
27
若手研究(B)
研究代表者
課題番号
研究課題
職
氏 名
年度
25
26
22792264
ネットワークが希薄な公営住宅におけるコミュニ
講師
ティカフェを活用した予防的介入研究
臼井香苗
600
24792456
安定期慢性閉塞性肺疾患患者における栄養教
育プログラムの開発(延長)
講師
毛利貴子
800
24792510
有職未婚女性における月経随伴症状と生活習
慣および自律神経活動との関連
講師
吉岡友香子
500
900
24792508
臨床・教育・消費者協働による客観的臨床能力 講師
試験を用いた助産学生の助産実践能力育成
(学内)
和泉美枝
700
600
24792509
妊娠期のマイナートラブル、QOLをアウトカムと
したセルフケア行動の有効性の検証
助教
植松紗代
500
500
24792578
限界集落で暮らし続ける独居高齢者の強さとそ
の意味
助教
村上佳栄子
1000
24792579
高齢者のうつ予防に有効なプログラムの作成・
評価:骨格筋量とうつとの関連に着目して
助教
山縣恵美
900
合計
-154 -
5,000
500
27
平成25年度科学研究費補助金分担配分およびその他の助成金
平成 25 年度科学研究費補助金分担配分およびその他の助成金
1 文部科学省、各省庁
(1)文部科学省基盤研究
所属
職
氏名
基礎看護学 教授 西田直子
基礎看護学 教授 西田直子
看護学科
教授 吾妻知美
看護学科
教授 吾妻知美
成人看護学 教授 岩脇陽子
成人看護学 教授 岩脇陽子
成人看護学 教授 岩脇陽子
精神看護学 教授 北島謙吾
精神看護学 教授 北島謙吾
看護学科
教授 星野明子
看護学科
教授 星野明子
看護学科 准教授 浅野弘明
代表
研究代表者
又は
所属機関名
部局
職
分担
滋賀医科
分担
医学部
助教
大学
京都府立
分担
医学部
講師
医科大学
愛知教育
分担
教育学部
准教授
大学
国際医療
分担
大学院
教授
福祉大学
京都府立
分担
医学部
教授
医科大学
京都府立
分担
医学部
講師
医科大学
京都府立
分担
医学部
講師
医科大学
医歯薬学総
分担 長崎大学
教授
合研究科
京都府立
分担
医学部
講師
医科大学
関西看護
分担
看護学部
教授
医療大学
大阪医科
分担
看護学部
准教授
大学
大学院生命
京都府立
環境科学
教授
分担
大学
研究科
小児看護学 准教授 園田悦代 分担 京都橘大学 看護学部
基礎看護学 准教授 滝下幸栄 分担
基礎看護学 准教授 滝下幸栄 分担
地域看護学 講師 臼井香苗 分担
地域看護学 講師 臼井香苗 分担
成人看護学 講師 室田昌子 分担
成人看護学 講師 室田昌子 分担
基礎看護学 講師 山本容子 分担
基礎看護学 講師 山本容子 分担
基礎看護学 助教 原田清美 分担
京都府立
医科大学
京都府立
医科大学
関西看護
医療大学
北原照代
室田昌子
青木香保里
鈴木英子
西田直子
山本容子
室田昌子
花田裕子
室田昌子
奥津文子
真継和子
東あかね
准教授
片山由加里
医学部
教授
西田直子
医学部
講師
山本容子
教授
奥津文子
教授
桂 敏樹
医学部
教授
西田直子
医学部
講師
山本容子
医学部
教授
西田直子
医学部
講師
室田昌子
医学部
教授
西田直子
京都大学 医学研究科
京都府立
医科大学
京都府立
医科大学
京都府立
医科大学
京都府立
医科大学
京都府立
医科大学
氏名
研究課題名
看護必要度と看護師の労働負担評価に基づい
た運動器障害予防対策に関する研究
安楽を提供する新しい看護技術「看護用のヘッド
トリートメント」の開発
家庭科教諭・栄養教諭・養護教諭の連携を目指
した授業プログラムの開発
新卒看護師の先輩看護師、指導看護師及び看
護管理職のアサーティブになれない状況
災害時における車いす利用者の避難生活環境
のユビキタスシステムの開発と評価
看護基礎教育から継続教育にわたる手指衛生
改善のための標準的支援プログラムの構築
安楽を提供する新しい看護技術「看護用のヘッド
トリートメント」の開発
16歳以上の虐待被害者を対象とした包括的継続
的自立支援に関する研究
安楽を提供する新しい看護技術「看護用のヘッド
トリートメント」の開発
リンパ環流を促進するリンパ浮腫用ベスト型空気
波動式ドレナージ装置の開発
在宅療養者と家族のQOL向上を目指した小地域
基盤型ケアコミュニティの開発
胎児期からの望ましい生活習慣の形成と健康づ
くり
臨床判断を導く患者理解と看護師による患者像
の口述に関する研究
災害時における車いす利用者の避難生活環境
のユビキタスシステムの開発と評価
看護基礎教育から継続教育にわたる手指衛生
改善のための標準的支援プログラムの構築
リンパ環流を促進するリンパ浮腫用ベスト型空気
波動式ドレナージ装置の開発
エビデンスに基づいた汎用型次世代健康づくり
のデザイン設計とシステムイノベーション
災害時における車いす利用者の避難生活環境
のユビキタスシステムの開発と評価
看護基礎教育から継続教育にわたる手指衛生
改善のための標準的支援プログラムの構築
災害時における車いす利用者の避難生活環境
のユビキタスシステムの開発と評価
安楽を提供する新しい看護技術「看護用のヘッド
トリートメント」の開発
災害時における車椅子利用者の避難生活環境
のユビキタスシステムの開発と評価
金額
(千円)
80
100
100
70
200
100
100
300
100
100
130
100
80
100
100
50
20
100
100
100
100
100
(2)その他
代表
研究代表者
又は
部局
職
分担 所属機関名
京都府立
精神機能
精神看護学 講師 占部美恵 分担 医科大学
講師
病態学
医学研究科
京都府立
精神機能
精神看護学 講師 占部美恵 分担 医科大学
講師
病態学
医学研究科
所属
看護学科
職
氏名
教授 星野明子 分担
京都大学
医学部
教授
氏名
成本 迅
成本 迅
桂 敏樹
研究課題名
JST「認知症高齢者の医療選択をサポートするシ
ステムの開発」
COI-T「高齢者の地域生活を健康時から認知症
に至るまで途切れなくサポートする法学、工学、
医学を統合した社会技術開発拠点」
エビデンスに基づいた汎用型次世代健康作りの
デザイン設計とシステムイノベーション
金額
(千円)
(-)
(-)
65
3 その他
助成金の名称( 新潟大学脳研究所共同研究費 )
代表
所属
職
氏名
又は
分担 所属機関名
医学
研究代表者
部局
職
氏名
研究課題名
中枢神経原発悪性リンパ腫の全ゲノム解析を基
盤とした分子標的創薬の展開
教授 山中龍也 代表
助成金の名称(東海大学健康科学部特別研究助成金 )
代表
研究代表者
所属
職
氏名
又は
所属機関名
部局
職
分担
健康科学部
教授 江本厚子 分担 東海大学 健康科学部
教授
看護学科
氏名
深谷安子
-155 -
研究課題名
要介護高齢者とケア提供者間のタイプⅡコミュニ
ケーションスケールの開発に関する研究
金額
(千円)
1,000
金額
(千円)
675
京都府立医科大学看護学科紀要投稿規程
1.原稿の種類
投稿原稿の種類は、論壇、総説、原著、資料、活動報告、その他であり、それぞれの内容は以下のとおりである ( 図
表を含む)
。
【論壇】(Sounding board)
保健看護領域や担当する専門領域に関する問題や話題や動向について、今後の方向性を指し示すような論述や提
言 (5頁以内)
【総説】
(Review Article)
ある主題について研究論文、調査論文などを総括し、解説したもの (10 頁以内)
【原著】
(Original Article)
独創的な研究により、新しい知見を示した研究論文 (10 頁以内)
【資料】
(Information)
調査や研究で得られた重要なデータを整理し、報告することに主眼を置くもの (7頁以内)
【活動報告】(Report)
保健看護領域や担当する専門領域に関連した研究成果の意義が明らかで報告する価値が高いもの (10 頁以内)
【その他】(Others)
保健看護領域や担当する専門領域に関連した解説、研究紹介等で、研究専門委員会が適切と認めたもの (7頁以内)
2.投稿資格
本誌の投稿者は原則として本学の専任教員に限る。ただし、卒業生、大学院生、共同研究者等編集委員会が執筆
を認めた者はこの限りではない。
3.投稿論文の制約
論文は独創的な研究で、他誌に未発表のものに限る。また、倫理上問題となるものは採用しない。
4.投稿論文の著作権(財産権)
本紀要に投稿された論文、抄録の著作権は、京都府立医科大学医学部看護学科に帰属する。
5.執筆要領
1)投稿原稿は和文もしくは英文のワープロ横書きで、A4版を用い、1 頁は 36 字× 30 行(1080 字)とする。原稿
の長さは、原則として、希望する原稿の種類の頁数以内とする。なお、本誌 1 頁(原稿 2 枚分)は、A4版 24 字
× 45 行の 2 段組となる。
2)原稿の記述順序は、Ⅰ)表題、Ⅱ)著者名、Ⅲ)所属名、Ⅳ)原稿の枚数及び図、表の数、Ⅴ)別刷 30 部を超え
て必要とする数、Ⅵ)希望する原稿の種類、Ⅶ)要約、Ⅷ)キーワード(3 ~ 5 語)、Ⅸ)本文、Ⅹ)文献とする。
(Ⅰ~Ⅵは表紙として1枚にまとめる。)
また、和文の原稿にあっては、表題、著者名、所属名の英文訳を付すること。
3)原則として、漢字は当用漢字、送りがなは新かなづかいを用いるものとする。略字は、 国際的慣例に従い、単位
又は単位記号は国際単位系による。欧文文字、算用数字は 2 字 1 コマとする。
4)図、表は、1 枚の用紙に1つずつ記載し、まとめて原稿の末尾に添付する。本文中には図、表が挿入されるべき位
置を明記する。なお、図、表の大きさは指定がない限り「原寸大」とする。
5)文献は本文の引用箇所の右肩に番号をつけ、本文の最後にその番号順に次の方法で記載する。
著者名は 3 名までを表記し、それ以上は“他”又は“et al.”を用いる。
記述順序は、雑誌の場合、著者名(西暦発行年):論文表題、雑誌名、巻:最初頁-最終頁.とする。雑誌名の省
-156 -
略は Index Medicus 及び日本医学雑誌略年表(日本医学図書館協会編)によるものとする。
単行本の場合は、著者名(西暦発行年):書名(第何版)、引用頁、発行地:発行所とする。
例:雑誌の場合
金成由美子 , 安村誠司(2002)
:高齢者における転倒予防介入プログラムの有効性に関する文献的考察,日本公
衆衛生雑誌,49:287-304.
Polit, D. F., Gillespie, B. M.(2009):The use of the intention-to-treat principle in nursing clinical trials, Nursing
Research,58(6):391-399.
例:単行本の場合
宗像恒次(1996):最新行動科学からみた健康と病気,10-20,東京:メヂカルフレンド社.
6.投稿原稿の提出
投稿原稿は、原稿 1 部と著者名及び所属名を削除した原稿のコピー2部を編集委員会に提出する。最終原稿提出
時に、CD:COMPACT DISC(ファイル名「筆頭者(本文)」
「筆頭者(図、表)」で保存したもの)を提出する。
7.原稿の受け付けおよび採否
投稿原稿の採否は、査読を経て、編集委員会で決定し、投稿者に通知する。
また、編集委員会の決定により、投稿者に原稿の修正及び原稿の種類の変更を求めることがある。
8.著者校正
原稿の校正は投稿者の責任において行い、原則として再校までとする。校正はすみやかに行い内容及び組版面積
に影響を与える改変は許されない。
9.掲載料等
論文の掲載料及び別刷 30 部までは無料とする。ただし、別刷の増刷は著者の負担とする。
10.その他
この規程に定めるもののほか、紀要の編集に関して必要な事項は別に定める。
附 則
この規程は、平成16年4月16日から施行する。
附 則
この規程は、平成20年5月8日から施行する。
附 則
この規程は、平成22年4月8日から施行する。
附 則
この規程は、平成23年10月24日から施行する。
-157 -
編 集 後 記
京都府立医科大学看護学科は開設から早くも 12 年目を終え、大学院保健看護学研究科修士課程においても第 7
期目の修士(保健看護学)修了生を今年度輩出致します。 この様な時期に紀要第 24 巻を無事に発刊する運びとなりました。
この間、平成 20 年度には公立大学法人京都府立医科大学として法人化され、年々教育研究活動の充実が求めら
れてきました。そこで、昨年度から紀要の「論文査読要領」を刷新し、原著および総説論文については学外第一
線で活躍の研究者の方々に査読を依頼致しました。この様に外部研究者からの査読を導入したことにより、従来
にも増して紀要論文が厳選され質の向上に寄与して来たと思われます。
査読要領を刷新した今回の紀要では、原著1編、研究報告 1 編、資料 7 編、活動報告 2 編、その他 2 編、総数
13 編を掲載することとなり、昨年(10 編)よりも掲載数が増加致しました。これからも紀要の益々の充実をはか
るべく、諸先生各位のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い致します。
年末の多忙な時期に、執筆、査読、そして編集・出版作業にご尽力、ご協力頂きました皆様方に感謝申し上げ
ます。
研究専門委員長 北 島 謙 吾
編集委員長 西田 直子
編 集 委 員 北島 謙吾 松岡 知子 藤田 佳信 滝下 幸栄 小松 光代 臼井 香苗 室田 昌子
京都府立医科大学看護学科紀要 第 24巻
平成 26 年 12 月 2 5 日 印刷・発行
発 行 京都府立医科大学医学部看護学科
〒602-8566 京都市上京区河原町通広小路上る梶井町 465
TEL (075) 251 - 5166
印 刷 株式会社 アール工芸印刷社
〒615-0054 京都市右京区西院月双町 118
TEL (075) 925- 7583