全体景気動向(2016年4月期)

特別版
全体景気動向(2016年4月期)
年 4 回発行
目次
【企業マインド】
1
【消費動向】
2
【雇用環境】
3
【設備投資】
4
【海外動向】
5
【中部圏の展望・東海地方】
6
【中部圏の展望・北陸地方】
7
【企業マインド】
中小企業は景気の先行きを不安視
中小企業の景気は下降傾向が強まる。内閣府/財務省の法人企業景気予測調
査
(注)によると、景気が「上昇」と見る企業の割合から
「下降」と見る企業の割合
を引いた国内の景況判断指標
(BSI)は、中小企業の全産業で
「下降」超で推移し
ている。2015年10~12月期における現状判断は
「-8.3」
となり、前回調査の予想
(
「-3.2」
)
より5.1ポイント低下。先行きも、2016年1~3月期が
「-10.4」
となり、前
回調査比で5.6ポイント低下。2016年4~6月期の見通しも
「-7.5」
となっている。
日本政策金融公庫の中小企業景況調査によると、今後3カ月の売り上げ見通し
D.I.(季節調整値)
は、
「増加」超から
「減少」超に転換した。2015年12月は
「7.5」
、
2016年1月は
「9.4」
だったが、2月は
「▲0.7」
となった。2016年2月の分野別売り上げ
(季節調整値)
では、衣生活関連のみが
「減少」
超で、他はすべて
「増加」
超だった。
注)2004年4~6月期より、内閣府の法人企業動向調査と財務省の景気予測調査を一元化した。
40
20
法人企業景気予測調査および法人企業動向調査「企業経営者による景況判断指標」
BSI=「上昇̶下降」
値
製造業
非製造業
0
−20
−40
−60
−80
法人企業動向調査
(全規模)
−100
04
05
06
07
2002 03
注)2016年1∼3月期と4∼6月期は見通し
30
法人企業景気予測調査
(中小企業)
08
09
10
11
12
13
14
15
16 (年)
(出所:内閣府/財務省)
売り上げ見通しD.I.(今月以降3カ月間、過去3カ月の実績比「増加̶減少」)
20
10
0
−10
−20
−30
季節調整値
−40
−50
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月12月 1月 2月
2014年
2015年
2016年
(出所:日本政策金融公庫)
1
【消費動向】
1世帯当たりの消費支出は2期連続で減少
総務省の家計調査によると、総世帯の1世帯当たり消費支出は2015年10~12
月期で前年同期比実質3.4%減と、2期連続の実質減少となった。支出項目のう
ち減少したのは、被服及び履物
(11.3%減)
、教育
(7.5%減)
、交通・通信
(6.0%減)
、
光熱・水道(5.2%減)、教養娯楽
(4.5%減)など。増加したのは、住居
(1.5%増)
だけだった。勤労者世帯の消費支出も実質4.4%減
(2期連続の実質減少)となっ
た。経済産業省の商業販売統計によると、2015年10~12月期の小売業販売額は
前年同期比0.2%減の36兆4470億円。販売額が増加したのは、医薬品・化粧品小
売業の4.0%増、織物・衣服・身の回り品小売業の3.6%増、飲食料品小売業の
3.0%増、その他の小売業の2.0%増など。減少したのは、燃料小売業の14.8%減
だった。2016年1月(速報)は前年同月比0.1%減の11兆4790億円。日本チェーン
ストア協会が毎月発表している全国チェーンストア総販売額は、2016年1月が
対前年同月比で2.3%増となった。2015年11月は1.0%減、12月は変わらず。
消費支出の対前年同期実質増減率
(四半期ベース=月平均)
勤労者世帯
(1世帯当たり)
10
∼
12
月
7∼9月
4∼6月
月
12
1∼3月
10
∼
14年
7∼9月
13年
4∼6月
月
12
1∼3月
10
∼
7∼9月
4∼6月
月
12
1∼3月
10
∼
12年
7∼9月
11年
4∼6月
月
12
1∼3月
∼
5 (%)
総世帯
4
(1世帯当たり)
3
2
1
0
−1
−2
−3
−4
−5
−6
−7
10
15年
(出所:総務省)
(%)
10
8
チェーンストアの販売額伸長率の推移
6
(前年同月比)
4
2
0
−2
−4
−6
−8
−10
4 5 6 7 8 910 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 910 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 910 1112 1 2 3 4 5 6 7 8 910 1112 1
月 月 月 月 月 月月 月月 月 月 月 月 月 月 月 月 月月 月月 月 月 月 月 月 月 月 月 月月 月月 月 月 月 月 月 月 月 月 月月 月月 月
12年
13年
14年
15年
16年
(出所:日本チェーンストア協会)
2
【雇用環境】
完全失業者数は68カ月連続で減少
総務省の労働力調査(速報)によると、前年同月比でみた完全失業者数は2015
年11月、12月、2016年1月にそれぞれ10万人減の209万人、6万人減の204万人、
20万人減の211万人となった。完全失業率
(季節調整値)は、2015年11月3.3%、
12月3.3%、2016年1月3.2%。1月の結果を男女別でみると、男性は3.4%、女性
は2.9%。また、2015年10~12月期の完全失業率を地域別・前年同期比でみると、
全国9地域のうち失業率が低下したのは東北と中国・四国を除く7地区となっ
た。失業率が最も低かったのは東海の2.6%、最も高かったのは九州・沖縄の
4.0%だった。厚生労働省発表の有効求人倍率
(季節調整値)は、2016年1月は
1.28倍(正社員は0.80倍)となり、前月比で0.01ポイント上昇。厚生労働省の毎月
勤労統計調査によると、実質賃金は前年比で2015年11月0.1%減、12月0.2%増、
2016年1月は0.0%(速報)
となった。
有効求人倍率(倍)
1.3
完全失業者数(万人)
有効求人倍率と完全失業者数の推移
1.2
380
370
360
350
340
330
320
310
300
290
280
270
260
250
240
230
220
210
200
有効求人倍率
1.1
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
完全失業者数
0.5
0.4
3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1
2013年
2014年
2015年
2016年
(出所:完全失業者数は総務省「労働力調査報告」。有効求人倍率は厚生労働省「一般職業紹介状況」)
2
1
前年同月比(%)
実質賃金の推移
0
−1
−2
−3
−4
月
月
月
10 11 12
1月
9月
8月
7月
6月
4月
5月
2月
3月
月
月
2013年
2014年
注:2007年11月分より、算定方式を変更している
月
10 11 12
1月
9月
8月
7月
6月
4月
5月
2月
3月
月
月
月
10 11 12
1月
9月
8月
7月
6月
−5
2015年
2016年
(出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査」)
3
【設備投資】
機械受注は持ち直しの動き
内閣府の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である
「船舶・電
力を除く民需」
(季節調整値)は、2015年10月の前月比10.7%増から11月は14.4
%減となったが、12月は4.2%増と持ち直した。四半期ベースでみると、2015年
10~12月期は前期比4.3%増の2兆4842億円となり、前回の見通し
(2.9%増、2兆
4501億円)を上回った。製造業は0.5%増、非製造業は6.9%増だった。2016年1
~3月期は、製造業が12.0%増、非製造業が5.5%増となり、全体で8.6%増にな
るとしている
(注)
。
日本政策金融公庫の中小企業動向調査によると、2015年10~12月期における設
備投資実施企業の割合
(季節調整値)
は前期比2.7ポイント増の40.6%となった。製
造業は2.9ポイント増の47.0%、
非製造業は2.1ポイント増の35.7%となっている。
注)需要者別内訳の合計は全体の季節調整値とは一致しない
機械受注額の推移(船舶・電力を除く民需、四半期ベース=月平均)
(十億円)
1,500
月次
四半期(月平均)
1,400
2015年10月 9038億円
2015年 7∼ 9月期 7938億円
1,300
11月 7738億円
10∼12月期 8281億円
1,200
12月 8066億円
2016年 1∼ 3月期 8991億円
1,100
1,000
900
800
700
600
9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3 6 9 12 3
09年度
10年度
11年度
12年度
13年度
14年度
15年度
16年度
注)2016年1∼3月期は見通し
(出所:内閣府)
50 (%)
中小企業の設備投資実施割合
45
40
35
30
25
製造業
全体
20
10
∼
12
月
7∼9月
4∼6月
1∼3月
12
月
2014年
10
∼
7∼9月
4∼6月
1∼3月
4
12
月
2013年
10
∼
7∼9月
4∼6月
2012年
月
月
2011年
12
1∼3月
∼
12
10
∼
7∼9月
10
7∼9月
10
4∼6月
非製造業
1∼3月
15
2015年
(日本政策金融公庫)
【海外動向】
米商務省によると、米国の2015年10~12月期における実質国内総生産
(GDP
改定値、季節調整値)は、前期比年率で1.0%増となった。前月発表の速報値か
ら0.3ポイント増加。市場予想は0.4%増程度だった。前期
(2.0%増)からは減速
した。内訳をみると、GDPの7割を占める個人消費は2.0%増となり、速報値か
ら0.2ポイント下方修正。輸出は2.7%減で、3四半期ぶりのマイナス。エネルギ
ー関連投資の縮小により民間設備投資も1.9%減と、3年ぶりのマイナスとなっ
た。
3月4日発表の米国の雇用統計によると、2016年2月の非農業部門雇用者数
(季
節調整値)は前月に比べて24万2000人の増加。市場の事前予想である19万人増
程度を大きく上回った。失業率は前月と同じ4.9%で、8年ぶりの低水準を維持
している。
3月2日発表の米連邦準備委員会
(FRB)
・地区連銀経済報告
(ベージュブック)
によると、
「1月から2月までの米国の経済活動は大半の地域で拡大したものの、
地域やセクターにより大きな開きが見られた」としている。景気は、全12地区
中7地区で「緩慢」あるいは「穏やか」に拡大。消費支出も過半数の地域で増加。
労働市場は緩慢な拡大が続いているが、賃金の伸びは地区により差が大きい。
欧州連合(EU)統計局が発表した、ユーロ圏
(19カ国)の2015年10~12月期に
おける実質域内総生産
(GDP速報値)は、前期比0.3%増
(前年同期比1.5%増)と
なり、前期と同水準を維持。EU全体
(28カ国)でも前期比0.3%増で、前期から
0.1ポイント減速した。ユーロ圏経済の3分の1を占めるドイツは0.3%増となり
前期と同水準。フランスは0.2%増、イタリアは0.1%増となり、いずれも前期
から0.1ポイント減速。スペインは0.8%増で前期と同水準となった。
中国国家統計局によると、中国の2015年10~12月期における実質経済成長率
(GDP前年同期比伸び率)は6.8%増となり、前期の6.9%を下回った。2015年通
年では前年比6.9%増。これは25年ぶりの低い伸び率になる。
国際通貨基金(IMF)は2016年1月に世界経済見通しを改定し、2016年の世界
経済の成長率を前回の見通しから0.2ポイント下方修正し3.4%とした。2017年
は3.6%と改善する見込み。ただ、原油安などの状況次第で、次回改定時にはさ
らなる下方修正もあると示唆している。2016年の見通しを地域別にみると、ユ
ーロ圏は前回見通し比で0.1ポイント上方修正し1.7%、米国は0.2ポイント下方
修正し2.6%、中国は前回と同じ6.3%、日本は前回と同じで1.0%としている。
5
【中部圏の展望・東海地方】
東海地方の経済は不安定な動き。日本政策金融公庫の中小企業動向調査によ
ると、静岡と長野を含む東海地方の景況天気図は、2014年4~6月期以来の
「薄曇」
が継続。2015年10~12月期、2016年1~3月期、4~6月期も
「薄曇り」が続く見通
しとしている。
鉱工業生産指数は、2015年10月はプラス0.9%、11月はプラス5.0%、12月は
マイナス1.1%と、不安定に推移。主力業種の指数
(2015年12月)
をみると、プラ
スになったのは電気機械工業(プラス8.5%)
、プラスチック製品工業
(プラス5.5
%)、輸送機械工業
(プラス2.7%)
、など。マイナスは、情報通信機械工業
(マイ
ナス26.4%)、非鉄金属工業(マイナス11.1%)
、電子部品・デバイス工業
(マイ
ナス6.8%)
などだった。
日銀の2015年12月短期経済観測調査によると、東海3県の設備投資額
(土地投
資含む)は、2014年度が全産業で前年度比7.8%増
(全国平均は4.3%増)
。2015年
度計画は、全産業で前年度比20.4%増、前回調査比で1.9ポイントの上方修正と
なった。製造業は18.2%増で前回調査と変わらず。非製造業は23.0%増で同4.2
ポイントの上方修正となっている。
雇用環境は底堅く推移。2015年10~12月期の静岡を含む東海地方の完全失業
率は2.6%となり、前期比で0.1ポイント低下、前年同期比では0.2ポイントの低
下となった(全国平均は3.1%)。有効求人倍率は2016年1月が1.49倍
(全国平均は
1.28倍)
となり、前年同月比で0.12ポイント上昇した。
静岡県を含む東海地方の建設工事受注高は、2015年10月5906億円
(前年同月
比7.7%増)
、11月5813億円
(17.5%増)
、12月6331億円
(20.8%増)
と、好調が継続。
新設住宅着工戸数も、2015年11月が8791戸
(前年同月比10.2%増)
、12月が8396
戸(同0.6%減)
、2016年1月は7746戸
(同2.9%減)
と、下降気味に推移している。
消費は底堅く推移。岐阜、愛知、三重3県の大型小売店販売額は2015年10月
1550億円、11月1584億円、12月1933億円で推移した。既存店ベースの対前年同
月増減率をみると、3県の合計で2015年10月が2.4%増、11月は1.6%減、12月は
0.2%増だった。また、名古屋市は2015年10月が3.0%増、11月は1.6%減、12月
は1.2%増となった
(2015年12月はいずれも速報)
。
6
【中部圏の展望・北陸地方】
北陸地方の経済は先行き不透明に。日本政策金融公庫の中小企業動向調査に
よると、北陸地方の2015年7~9月期の景況天気図は2014年4~6月期以来の
「薄
曇」が継続。2015年10~12月期、2016年1~3月期、4~6月期も
「薄曇り」が続く
見通し。鉱工業生産指数は、2015年10月、11月、12月に、それぞれ前年同月比
プラス0.7%、プラス3.9%、マイナス3.8%となっている。12月の指数を業種別
にみると、前年同月比でプラスになったのは、鉱業
(プラス23.2%)
、プラスチ
ック製品工業
(プラス3.9%)
、非鉄金属工業
(プラス2.2%)など。マイナスにな
ったのは、はん用・生産用・業務用機械工業
(マイナス21.9%)
、パルプ・紙・
紙加工品工業(マイナス20.3%)
、金属製品工業
(マイナス9.8%)などとなってい
る。
民間設備投資は堅調に推移。日銀の2015年12月短期経済観測調査によると、
設備投資の2014年度実績は、全産業で前年度比44.0%増
(全国平均は4.3%増)
。
2013年度実績
(2.3%減)と比べて大幅に改善した。2015年度計画は前年度比51.5
%増と、引き続き改善を見込んでいる
(全国平均は7.8%増)
。製造業は51.0%増、
非製造業は52.0%増となり、前回調査比で若干増加率が低下したものの、依然
として高い伸びを見込む。
雇用環境も比較的堅調。2015年10~12月期の新潟を含む北陸地方の完全失業
率は2.7%で、前期比で0.2ポイント上昇。前年同期比では0.2ポイントの低下と
なった(全国平均は3.1%)。有効求人倍率は2016年1月に1.40倍
(全国平均は1.28
倍)となり、前年同月比で0.05ポイント上昇した。
公共投資は弱含み。北陸地方の公共工事請負金額は、2015年10月が272億円
(前
年同月比20.5%減)、11月は265億円
(37.8%増)
、12月は176億円
(5.5%減)となっ
ている。新設住宅着工戸数
(新潟県を含む)は、2015年11月が2799戸
(前年同月
比16.1%増)
、12月が2272戸
(2.2%減)
、2016年1月は1539戸
(9.5%増)
と底固い。
消費は低調な動き。富山、石川、福井3県の大型小売店販売額は2015年10月
294億円、8月301億円、9月は370億円となった。既存店ベースの対前年同月増
減率を県別でみると、富山県は2015年10月0.3%増、11月3.7%減、12月1.7%減。
石川県は2015年10月0.6%増、11月4.4%減、12月0.5%減。福井県は2015年10月
3.7%増、8月2.1%減、12月1.7%減となっている
(2015年12月はいずれも速報)
。
7