英語だけでいいのか? —フランス語教育と人文社会科学

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英語だけでいいのか?
—フランス語教育と人文社会科学
2007 年 7 月 7 日(土)13h30〜17h30
日仏会館ホール(恵比寿駅下車徒歩 10 分)・入場無料
後援
主催 財団法人日仏会館
日本フランス語フランス文学会、日本フランス語教育学会
【プログラム】
13h30〜15h30
講師
基調報告(あいうえお順、一人 20 分)
宇野 重規(東京大学社会科学研究所、フランス政治思想史)
小田中直樹(東北大学大学院経済学研究科、フランス経済史)
北村 一郎(東京大学大学院法学政治学研究科、フランス法)
佐藤 直樹(東京大学大学院総合文化研究科、生物学)
鈴木 啓二(東京大学大学院総合文化研究科、フランス近代文学)
司会 三浦 信孝(中央大学文学部、日仏会館常務理事、現代フランス研究)
15h30〜16h00
コーヒーブレーク
16h00〜17h30
全体討論(講師全員+会場)
【講師主要著作】
■宇野 重規 『デモクラシーを生きる:トクヴィルにおける政治の再発見』(創文社、1998)、『政治哲学へ』(東
京大学出版会、2004〔渋沢・クローデル賞〕)『トクヴィル:平等と不平等の理論家』(講談社選書メチエ、2007)
■小田中直樹 『フランス近代社会1814〜1852』(木鐸社、1995)、『歴史学のアポリア』(山川出版社、2002)、
『ライブ・経済学の歴史』(勁草書房、2003〔ハングル訳、2006〕)、『フランス7つの謎』(文春新書、2005)
■北村 一郎 編著に『現代ヨーロッパ法の展望』(1998)、『アクセスガイド外国法』(2004、以上東京大学出版
会)、『フランス民法典の 200 年』(有斐閣、2006)
■佐藤 直樹 『植物の比較ゲノム解析』(『植物の進化』秀潤社、2007 所収)、共著に『理系総合のための生命
科学』(羊土社、2007)、『光合成の科学』(東京大学出版会、2007)
■鈴木 啓二 共著に『Passages』(2001)、『フランスとその外部』(2004、以上東京大学出版会)、『フランス語入
門1’06』(放送大学教育振興会、2006)、 訳書にジュール・ヴェルヌ『八十日間世界一周』(岩波文庫、2001)
■三浦 信孝 『現代フランスを読む』(大修館書店、2002)、編著に『多言語主義とは何か』(1997)、『言語帝
国主義とは何か』(2000)、『普遍性か差異か』(2002)、『来るべき〈民主主義〉』(2003、以上藤原書店)
【 趣 旨 】
大学でフランス語を学ぶ学生の数が減っていると言われます。英語以外の第二外国語が必修から外される
傾向にあり、中国語や朝鮮・韓国語の追い上げがあるからです。仏語教師のポストは定年退職者が出ても後
を埋めないケースが増え、今の若手はフランスの大学で博士号を取ってきても就職がむずかしい状況です。都
立大学を首都大学に再編するにあたり、石原都知事が「フランス語は数を勘定できない言葉だから国際語とし
て失格」などと難癖をつけ、仏文科を含む人文学部を解体したのは、フランス語無用論の突出したケースです。
首相の私的諮問機関「21 世紀の日本の構想」懇談会が英語の第二公用語化を提案したのは 2000 年のこと
ですが、以後英語熱は高まるばかりで、2006 年の文科省調査では全国の公立小学校の 93.6%で英語教育が
導入されています。幸い英語以外の外国語を学べる高校は徐々に増えており、フランス語を学べる高校は
2004 年現在 248 校で、中国語の 553 校、朝鮮・韓国語の 286 校に続きますが、全国に高校は 5418 校あります
から、その 4.6%にすぎません。母語以外に二カ国語の習得を推奨する EU 諸国はおろかお隣の韓国と比べて
も、日本は外国語教育の多様化で大きく遅れをとっています。
大学でのフランス語教育振興は、日本フランス語フランス文学会や日本フランス語教育学会でよく討議される
テーマですが、これといった名案はありません。日仏会館は 26 の日仏関連学会との協力関係にあります。そこ
で今回はフランス語教師だけでなく、文学語学以外でフランス語を(も)使って研究教育にあたっている方々を
お迎えし、フランス語教育を広い視野から考えてみようと思います。
ブローデルの『地中海』やブルデューの『ディスタンクション』の翻訳は文学研究者によって行われています。
大学でフランス語を学ぶ学生の大半は文学語学以外に進みますから、仏語教師には専門を超えた広い教養
が必要です。教養部が解体されたあと仏語教師にはフランス語以外の講義も担当できる能力が求められてい
ます。逆に人文社会科学分野ではフランス語系は少数派にとどまり、フランス語で受信するだけでなく発信でき
る研究者はまだ限られています。自然科学では、重要な発見はラテン語やフランス語で発表されてきた歴史が
ありますが、現在では論文は英語で書くのが世界標準になっています。
しかしフランス語は、英語に水をあけられたとは言え、主要国際機関の公用語であり、知識層を中心に五大
陸に話者がいる国際語です。グローバル化に対処するには英語だけでいいのか。経済効率だけでなく批判的
な物の見方をするにはフランス語による人文主義的教養が必要なのではないか。語学文学以外の分野でフラ
ンス語を(で)学ぶことにメリットがあるとすれば、それは何か。フランス語振興のためのディシプリン横断型の
協力は可能か。これらがターブルロンドの出発点にある問いかけです。