高校生作文コンテスト 最優秀作品 『母が私に照らしてくれた道』

高校生作文コンテスト
最優秀作品
『母が私に照らしてくれた道』
埼玉県立小鹿野高等学校2年
小松 葵
母は専業主婦です。祖母の介護もしています。祖母が寝たきりになった時、私は小学
六年生でした。初めは、祖母の食事などの簡単な手伝いをしていましたが、月日を重ね
ると、その簡単な手伝いもしなくなっていきました。手伝いをする事が当たり前でした
が、いつからか手伝いをしない事が当たり前になりました。私は母の手伝いもせず、祖
母とも触れ合わず、中学三年生になりました。
受験の時期です。私は志望校を決めていませんでした。それどころか、進学するかす
ら決めずにいました。今振り返ると、未来のことに無関心だったのだと思います。その
時の私に道を照らしてくれたのは母でした。
ある日、久しぶりに祖母の食事を母に頼まれました。「え?」私は不思議そうに言い
ました。母は「おばあちゃん、葵がいいって言うの。」と返しました。私は母の内心は
「絶対面倒くさいんだ。」と思っていました。食事を持って嫌々祖母の部屋に入りまし
た。祖母に食事をあげる時間は長く、私は無言で他人のように接してあげていました。
食べ終わるとふいに「葵、ありがとうね。」と言われました。私は驚き「うん。」と答え
て部屋を出ました。私は自分の部屋にこもり、私の態度は最悪だったのにどうしてお礼
を言われたのだろうかと考えていました。しばらくすると母が部屋に来て横に座り、話
し始めました。「ご飯をあげてみてどう?」私は先程まで考えていた事を打ち明けまし
た。すると、なぜか母は笑いながら「葵らしい!」と言ってくれました。
今、私は高校で福祉を学んでいます。母があの時道を照らして、私に未来を見せてく
れました。母はあの時このように言って部屋を出て行きました。
「もし、おばあちゃんにご飯をあげてみて、おばあちゃんに対する考え方が変わった
ならば、その思いを形にできるような高校もあるよ。」
この言葉と母に感謝して、道を進みます。今では、おばあちゃんに食事をあげること
が当たり前になりました。