大野市和泉地区

概 要 版
大野市和泉地区
第1章
計画策定の趣旨
和泉地区には、シルル紀からペルム紀にかけての上穴馬層群等の古生代の地層(古生層)
のほか、ジュラ紀から白亜紀前期にかけての手取層群や白亜紀後期の足羽層群相当層の中
生代の地層(中生層)が分布し、恐竜化石、植物化石、貝類化石のほか、地質の時代を特
定するアンモナイトなどの示準化石
※
が多数発見されています。
中部縦貫自動車道大野油坂道路の大野東から油坂間では、大部分がトンネルで結ばれる
ことになるため、手取層群の九頭竜亜層群が広く分布している場所からは、排出される掘
削岩石に重要な化石が含まれることが想定されます。特に、野尻地係から岐阜県境にかけ
ては、古生層及び美濃帯
※
の中生層が広がっており、手取層群とは異なる古生物資料を得
ることができ、この区域では三葉虫、ウミユリ、サンゴ、腕足類等の希少化石の発見が期
待できます。
大野市は、化石が貴重な天然資源であることをもっと市内外に広くアピールし、地域の
活性化につなげていくため、長期的かつ総合的見地に立って保全や活用を図るためのマス
タープランを策定します。
第2章
計画の位置付け
本計画は、地域の貴重な資源である化石の保護・保全及び調査の方法、地層に関する資
料の保存策、化石に係る展示・活用方策等を立案し、総合的、かつ、計画的に推進し、も
って、観光人口及び交流人口の拡大並びに地域の活性化に寄与するための指針となるもの
で、第五次大野市総合計画
※
や他の計画との整合を図ります。
第五次大野市総合計画
「ひかりかがやき、たくましく、心 ふれあうまち」
基本施策30 豊かな自然環境の保全と創出
施 策
化石の保全と活用(平成24年11月 追加)
関連する基本施策
心豊かな人づくり……特色ある学校づくり、生涯学習の推進、地域を担う人材養成
豊かな心を育てる文化力の育成……文化的遺産の保存と活用
越前おおの総ブランド化の展開……越前おおのブランドの発信
戦略的な観光の推進……観光資源の活用と発掘、イベントの充実と広報の推進、エ
コ・グリーンツーリズムの推進
※印は、用語解説参照
1
1
第3章
和泉地区の地層
和泉地区を中心とする九頭竜川上流域には、古い順に飛騨変成岩類、古生代のシルル紀
からペルム紀の地層、中生代ジュラ紀中期から白亜紀前期の手取層群、そして白亜紀後期
の足羽層群相当層などが広く分布します。また、大野市南部から九頭竜湖の南西部にかけ
ては、飛騨外縁帯と呼ばれる東西方向に走る大規模断層で挟まれた古い地質体があります。
飛騨外縁帯は他の地域では見られない特徴的な化石を多産し、これまで世界的に先進的な
研究が行われた貴重な地域です。
第4章 和泉地区の化石の特色
大野市和泉地区は古生代と中生代の重要な化石を産出する地層が広く分布し、日本の土
台が大陸縁辺に存在していたころの海洋と陸上の歴史を紐解く上で重要な場所です。
和泉地区の古生物や層序
※
の研究は古くから行われ、現在においても専門家や化石愛好
家を魅了し続けています。
1
古生代の化石
古生代中期の化石は日本の限られた地域でしか見られず、和泉地区では九頭竜湖周辺
の露頭から得られます。
昭和24年に上伊勢で床板サンゴの一種であるハチノスサンゴなどが上穴馬層から発
見され、昭和51年には箱ケ瀬の白馬洞付近の子馬巣谷層中に包含された石灰岩岩体か
ら、シルル紀を示めす三葉虫エンクリヌルス類も発見されています。さらに平成12年
には、福井県で最古となる放散虫
2
※
化石の発見が報告されました。
中生代の化石
明治15年に下山地係の谷山谷で日本最初のアンモナイトが発見され、明治18年に
は貝皿地係や長野地係においてもアンモナイトが見つかり注目されました。また後野地
係では、昭和62年に日本最古の鳥類の足跡化石が、平成2年には獣脚類(肉食恐竜)
の足跡化石も発見され、海洋だけでなく、陸上に棲む中生代の動物たちの化石が得られ
ることも分かってきました。
さらに、平成8年には当時世界最古級とされたティラノサウルス科の歯の化石が、平
成21年にはカルノサウルス類(獣脚類)の歯の化石も発見され、北陸の重要な恐竜化
石産出地としても注目を浴びています。
2
2
和 泉 地 区 の 化 石 産 出 例
地層名
産出化石
足羽層群相当層 平家岳累層 植物化石
赤岩亜層群
手
中
取
生
層
層
群
石
徹
白
亜
層
群
九
頭
竜
亜
層
群
知那洞谷層 植物化石
後野層
鳥脚類の足跡化石
伊月層
非海棲貝類、植物化石、魚鱗
鳥類の足跡化石、獣脚類及び鳥脚類の足跡化石
ティラノサウルス科・イグアノドン類・カルノサウル
ス類の歯
大淵層
産出なし
葦谷層
腕足類・イノセラムス等の海棲二枚貝類
アンモナイト、植物化石
山原層
三角貝
山原坂層
アンモナイト、三角貝、植物化石
貝皿層
アンモナイト、ベレムナイト、腕足類・イノセラムス
等の海棲二枚貝類、植物化石、魚鱗、ウミユリ
栃餅山層
アンモナイト、ベレムナイト、海棲二枚貝類
植物化石
大井谷層
ベレムナイト
下山層
産出なし
左門岳累層
時代未詳の地層
古
生
層
植物化石、放散虫
大谷層
礫よりフズリナ
本戸層
礫中よりフズリナ、コケムシ、ウミユリ、有孔虫
石灰藻、サンゴ、二枚貝
芦谷層
産出なし
野尻層群
フズリナ、三葉虫、腕足類、ウミユリ、コケムシ
長野層
フズリナ
藤倉谷層
サンゴ
上穴馬層
サンゴ、三葉虫、層孔虫類、腕足類、ウミユリ
腹足類、頭足類
子馬巣谷層
放散虫、三葉虫
影路層
放散虫
3
古 生 層 の化 石
▲ 腕足類
▲ 三葉虫
▲ ハチノスサンゴ
16
▲ ウミユリ
▲ フズリナ
4
中 生 層 の化 石
▲鳥脚類の足跡化石
鳥脚類の足跡化石
▲
イチョウ類
▲▲イチョウ類
「画像提供:福井県立恐竜博物館」
▲ イグアノドン類の歯
▲ 鳥類の足跡化石
「画像提供:福井県立恐竜博物館」
▲
アンモナイト
▲ イグアノドン類の歯
▲ カルノサウルス類の歯
▲ アンモナイト
5
▲ カルノサウルス類の歯
5
▲ アンモナイト
第5章
1
化石をめぐる基本方針と基本目標
基本方針
地域の貴重な資源である化石について、その価値が多くの人に理解され、化石の保全と
活用に対する意識の高揚を図ることが重要となります。このため、学術分野の面からは、
化石及び地層に関する資料の保全と充実、教育分野の面では、小中学校の児童生徒や成人
を対象に化石に対する理解を深める事業を実施します。また観光分野の面においては、化
石をテーマとした体験型イベントなどによる交流人口の拡大を図ります。
今後は、この三分野を基本方針の柱とし、必要に応じて具体的な化石の保全・活用策を
検討していくこととします。
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基本目標
基本方針で掲げた学術分野・教育分野・観光分野における化石の保全、活用策について
は、次のとおり基本目標を定め、重点的に取り組みます。
(1)学術分野
(2)教育分野
基 本 方 針
(3)観光分野
①
①
②
②
③
③
④
④
⑤
⑤
重点保護区域の指定
重点保護区域の指定
化石の保全に向けた条例の制定
化石の保全に向けた条例の制定
公共土木工事等の施工に伴う化石の保全
公共土木工事等の施工に伴う化石の保全
化石及び地層の研究
化石及び地層の研究
協同事業による発掘調査の実施
協同事業による発掘調査の実施
①
①
②
②
③
③
④
④
和泉郷土資料館の充実
和泉郷土資料館の充実
学校での化石に関する学習の充実
学校での化石に関する学習の充実
生涯学習による市民意識の高揚
生涯学習による市民意識の高揚
化石に関する人材と市民組織の育成
化石に関する人材と市民組織の育成
①
①
②
②
③
③
④
④
発掘体験の環境づくり
発掘体験の環境づくり
積極的な情報発信
積極的な情報発信
発掘体験を取り入れた観光プログラムの充実
発掘体験を取り入れた観光プログラムの充実
化石に関する商品等の開発
化石に関する商品等の開発
6
6
第6章
1
化石をめぐる具体的な施策
学術分野
(1)重点保護区域の
指定
① 専門家等で構成する重点保護区域指定委員会(仮称)を
専門家等で構成する重点保護区域指定委員会(仮称)を
①
設置し、区域の指定や廃止の協議
設置し、区域の指定や廃止の協議
②
② 指定区域の公表と情報発信
指定区域の公表と情報発信
③
③ 指定区域の表示とパトロール
指定区域の表示とパトロール
④
④ 集中発掘調査の実施または専門機関等への要請
集中発掘調査の実施または専門機関等への要請
(2)化石の保全に向け
た条例の制定
① 禁止行為や許可制度及び結果報告義務の厳格化
禁止行為や許可制度及び結果報告義務の厳格化
①
②
② 化石の寄贈及び所有権の明確化
化石の寄贈及び所有権の明確化
③
③ 化石の知識を有する監視員の登用
化石の知識を有する監視員の登用
(3)公共土木工事等の
施工に伴う化石
の保全
① 関係機関との連携を密にして、公共土木工事等の計画路線
① 関係機関との連携を密にして、公共土木工事等の計画路
や工事工程等について情報の収集
線や工事工程等について情報の収集
② 関係機関との連携を密にして、掘削岩石の調査研究体制の
② 関係機関との連携を密にして、掘削岩石の調査研究体制の確立
確立
③ 工事等により排出される岩石中の化石の保存方策の検討
③ 工事等により排出される岩石中の化石の保存方策の検討
④ 地質や産出場所ごとに掘削岩石保存場所の選定、確保
④ 地質や産出場所ごとに掘削岩石保存場所の選定、確保
① 化石の剖出作業や分類作業の検討
化石の剖出作業や分類作業の検討
①
(4)化石及び地層の
研究
② 貴重な化石の鑑定依頼
貴重な化石の鑑定依頼
②
③ 化石の登録及び保管システムの充実
化石の登録及び保管システムの充実
③
④ 化石及び地層の分布図作成
化石及び地層の分布図作成
④
(5)協同事業による
発掘調査の実施
① 福井県立恐竜博物館等の研究機関との協同調査方法の検
① 福井県立恐竜博物館等の研究機関との協同調査方法の検討
討
②
② 定期的に専門機関や大学等による集中調査の実施
定期的に専門機関や大学等による集中調査の実施
③
③ 手取層群など広域的な研究会の設立
手取層群など広域的な研究会の設立
7
7
2
教育分野
①
① 化石をメインとする展示内容の検討
化石をメーンとする展示内容の検討
(1)和泉郷土資料館
の充実
② セキュリティ面を強化し、貴重な実物化石の展示
セキュリティ面を強化し、貴重な実物化石の展示
②
③ 時代や地層に基づく展示ブースの整備
時代や地層に基づく展示ブースの整備
③
④
④
⑤
⑤
ホームページの新設と充実
ホームページの新設と充実
特別展示やイベントの企画
特別展示やイベントの企画
① 化石を題材とした教育補助冊子の作成
① 化石を題材とした教育補助冊子の作成
(2)学校での化石に
関する学習の充
実
②
② 化石や地層に関する教職員向けの研修会の実施
化石や地層に関する教職員向けの研修会の実施
③
③ 化石アドバイザー等の協力を得て、化石発掘体験の開催
化石アドバイザー等の協力を得て、化石発掘体験の開催
④ 化石に関する絵画や工作、
化石に関する絵画や工作、調査研究の成果等の作成を推
④
調査研究の成果等の作成を推奨
奨し、作品等の展示の検討
し、作品等の展示の検討
① 市ホームページ上に化石や地層に関するコンテンツの掲
① 載
市ホームページ上に化石や地層に関するコンテンツの掲載
(3)生涯学習による
市民意識の高揚
② 市民向けに化石セミナーや出前講座の開催
市民向けに化石セミナーや出前講座の開催
②
③ 手取層群観察会の開催
手取層群観察会の開催
③
④ 化石発掘体験を社会教育事業、
化石発掘体験を社会教育事業、公民館事業、子ども会育
④
公民館事業、子ども会育成
成会事業等に導入
会事業等に導入
(4)化石に関する人
材と市民組織の
育成
① 化石について調査研究を行う教職員や個人等によるグルー
化石について調査研究を行う教職員や個人等によるグループ
①
の育成・支援
プの育成・支援
② 化石の発掘体験指導や簡単な説明を行うことができる化石ア
化石の発掘体験指導や簡単な説明を行うことができる化
②
石アドバイザーの育成と組織化
ドバイザーの育成と組織化
③ 化石を剖出できる人材の育成
③ 化石を剖出できる人材の育成
④ 住民や団体が主体の化石をいかしたまちづくりへの支援
④ 住民や団体が主体の化石をいかしたまちづくりへの支援
⑤ 化石発掘体験を含む環境学習やツアーを実施する市民研究
化石発掘体験を含む環境学習やツアーを実施する市民研
⑤
究グループへの支援
グループへの支援
8
8
3
観光分野
①
多くの人が体験できる化石発掘体験場の整備
① 多くの人が体験できる化石発掘体験場の整備
(1)発掘体験の環境
づくり
②
化石発掘体験で必要な備品や教材の整備
② 化石発掘体験で必要な備品や教材の整備
③
③
④
④
DVDなどを活用した化石の紹介やクイズの提供
DVDなどを活用した化石の紹介やクイズの提供
発掘記念章、マイハンマーやマイゴーグルを贈呈する等の企
発掘記念章、マイハンマーやマイゴーグルを贈呈する等の企
画の実施
画の実施
① 化石の要素を取り入れた新しい観光施設の整備
(2)積極的な情報発
信
① 化石の要素を取り入れた新しい観光施設の整備
・九頭竜温泉平成の湯の整備
・九頭竜温泉平成の湯の整備
② 関連施設への誘導を図り回遊性を高めるため、観光拠点施
② 関連施設への誘導を図り回遊性を高めるため、観光拠点
設に化石に関する展示の付加
施設に化石に関する展示の付加
・・九頭竜国民休養地
九頭竜国民休養地 ・ 道の駅九頭竜
・ 道の駅九頭竜・ 九頭竜保養の
・ 九頭竜保
養の里など
里など
③
③ 来訪者が化石の情報を得やすくなるよう、化石案内パンフレ
来訪者が化石の情報を得やすくなるよう、化石案内パン
フレットや各種案内看板の整備
ットや各種案内看板の整備
④ 化石と関わりのある公共施設等の愛称募集
化石と関わりのある公共施設等の愛称募集
④
(ジュラトンネル、ジュラシックパーキング等)
(ジュラトンネル、ジュラシックパーキング等)
市ホームページ上に化石や地層に関するコンテンツの作成
(再掲)
⑤
⑤ 市ホームページ上に化石や地層に関するコンテンツの作成
(再掲)
(3)発掘体験を取り
入れた観光プロ
グラムの充実
①
①
②
②
観光資源や農林業資源等と結びつけた観光コースの開発
観光資源や農林業資源等と結びつけた観光コースの開発
化石や地層について学び、太古に思いをはせ、ゆっくり楽しめ
化石や地層について学び、太古に思いをはせ、ゆっくり
るようなウォークの開催
楽しめるようなウォークの開催
③
化石発掘体験ツ
③ 恐竜や化石の絵をラッピングした列車による
恐竜や化石の絵をラッピングした列車による化石発掘体
験ツアーの検討
アーの検討
④
④ 福井県立恐竜博物館等と連携して、広域的な化石発掘体験
福井県立恐竜博物館等と連携して、広域的な化石発掘体験ツ
アーの実施
ツアーの実施
(4)化石に関する商品
等の開発
①
①
②
②
化石をモチーフにしたゆるキャラの開発
化石をモチーフにしたゆるキャラの開発
マスコミや企業等とのコラボレーションによる商品開発の展
マスコミや企業等とのコラボレーションによる商品開発の展開
開
③ 地域限定の郵便切手やはがきの作製
地域限定の郵便切手やはがきの作製
③
④ 運送業者等と連携して、使用するボックスでの化石紹介
運送業者等と連携して、使用するボックスでの化石紹介
④
9
9
用 語 解 説
示準化石(しじゅんかせき)…… その化石の含まれる地層が堆積した地質時代を示す化石
のことで、アンモナイト、イノセラムス、トリゴニアなどがあります。
層序 …… 地層の積み重なり、またはその順序のことです
第五次大野市総合計画 …… 大野市の将来を展望し、まちづくりの目標と方向を示した
市の最上位計画で、長期的・総合的な市政運営の指針となる計画のことで、基本構想と基
本計画に分かれています。(平成23年2月策定)
放散虫(ほうさんちゅう)…… 二酸化ケイ素を成分とする浮遊性の海洋プランクトンです。
美濃帯(みのたい)…… 主にジュラ紀の地層からなる、海洋プレートの沈み込みによって
形成された地質帯です。
計画の策定経過
年
月
平成24年
日
内
8月20日
第1回策定委員会開催
容
委員長・副委員長互選、計画趣旨、
素案説明
9月27日
第2回策定委員会開催
化石産出地視察、素案修正案審議
8日
第3回策定委員会開催
素案修正案審議
12月18日
第4回策定委員会開催
素案修正案審議
11月
平成25年
2月
1日
パブリックコメント実施
2月14日まで
2月19日
第5回策定委員会開催、素案修正案審議、とりまとめ
2月20日
庁議
10
10
1㎜
写真は、平成8年に愛知県在住の方が和泉地区内で発
見した世界最古級のティラノサウルス科の歯の化石で、
時代は白亜紀前期の約1億3000万年前前後、大きさ
は長さ約1㎝、幅約5㎜
道の駅九頭竜にあるティラノサウルス親子の動体模型