グリッドコンピューティング環境におけるオンラインジョブ割当手法

琉球大学主催 工学部情報工学科 卒業研究発表会
グリッドコンピューティング環境におけるオンラインジョブ割当手法
学籍番号 075736F 氏名 玉那覇 優作 指導教員 : 名嘉村 盛和
• Broker:User とグリッド環境間の仲介を行い、Information Service から情報を取得し適切な Resource に Job
はじめに
1
グリッドコンピューティングとは、地理的に分散した異
を割当てる
なるスペックを持つ多数の計算資源を統一的に利用出来る
である。グリッドコンピューティング環境(以下グリッド環
• Resource:ジョブを処理する PE(Processor Element)
で構成される
境)を構成する計算資源は、それぞれ仕様が異なるが、利
• Scheduler:Job を Resource 内の各 PE に割当てる
ようにし、更に全体の処理スループットを向上させるもの
用者は統一されたインターフェイスから、具体的な個々の
計算資源を意識すること無く計算処理を行うことができる。
しかし、グリッド環境にある多数の計算資源を有効活用し、
1. User は Job をグリッド環境に送る
2. Broker は Information Service をもとに適切な Resource に Job を割当てる
全体のスループットを高めるためには、効率の良い資源割
当が必須であり、近年、研究開発が進められているがまだ
十分な研究成果はあがっていない [1]。
3. Resource は取得した Job を Scheduler により各 PE に
割当てる
本研究ではグリッド環境において効率良くジョブ割当を
行うためのオンラインジョブ割当手法を開発する。実応用
4. 計算処理を行う
では、大規模データ処理、データベース、アクセス、ネット
5. 処理結果を User に送る
ワーク遅延など、様々なファクターを考慮した資源割当、ス
ケジューリングを行う必要があるが、本研究では、ジョブ
の計算量と資源の処理性能のみを考慮したジョブ割当手法
2.2
を検討する。
Resource スケジューリング
Resource は Broker から割当てられたジョブを PE に割
当てる。その代表的な Resource スケジューリングに Space
Shared と Time Shared がある。
グリッド環境
2
2.1
• Space Shared
FCFS 方式で Resource に到着した順にジョブを PE に
グリッドモデル
割当てる手法。PE が使用中なら待機状態となる。
想定するグリッド環境のモデルを図 1 に示す。また個々の
• Time Shared
空きの PE がない場合でも使用中の PE を共有する形
構成要素の役割、計算処理の流れを示す。
User#i
1
gridlets
Broker#i
2
2
Internet
5
5
5
2
PE:Processor Element
gridlet:User requires job
で割当てる手法。従って、待機状態は発生しない。
Resource#j
Scheduler
3
Machines
PEs 4
Informetion
Servirce
図 1: グリッドモデル
Broker におけるオンラインジョブ割
当
3
3.1
Buffered 割当
オンライン割当ではなく、すべてのジョブ情報 (到着時
• User:グリッド環境の利用者
• Job: ユーザージョブ
• Information Service:Resource のロケーション情報や
負荷情報を収集・管理し、Broker、Scheduler に情報を
提供する
刻、処理時間) が得られるのであれば、静的割当手法を用い
て、より最適なスケジュールを計算することが可能である。
そこで、静的と動的割当の中間に位置する、Buffered 割当
を提案する。これは、到着したジョブを随時割当てるので
はなく、Broker にある一定期間内に取得したジョブを貯め
て、そのジョブに最適化手法を適用し、ジョブを資源へ割
当てる手法である。そのモデルを図 2 に示す。
琉球大学主催 工学部情報工学科 卒業研究発表会
Broker
3:Resource
へ割当て
Resource1
Job1
1:Job
投入
Job2
Resource2
Job3
Resource3
2:ΔT
間に取得したJobを最適化
図 2: Bufferd 割当
3.2
図 3:正規分布時の処理終了 図 4:一様分布時の処理終了
時刻
時刻
ジョブ割当手法
表 2:処理終了時刻の標準偏差
標準偏差 FCFS Greedy
LS
• FCFS(First Come First Serve) 法
正規分布
一様分布
到着順にジョブリスト PL に登録し、先頭のジョブ(最
も早く到着したジョブ)から評価関数値の最も小さい
2878
2562
3438
1954
2915
2125
Resource に割当てて行く。
図 3 の正規分布時の終了時刻を見ると、Greedy 法の平均
• Greedy 法
ジョブサイズの大きい順に並べたジョブリスト PL の先 値が最も低く、FCFS 法より約 30 分短い時間で処理が完了
頭から随時ジョブを取り出し、評価関数の良い Resource することが分かる。LS 法の平均値が他の手法より大きいの
は、局所解探索のに要する計算時間により、Resource への
に割当てる。
ジョブの割当が遅れることで、Resource のアイドル時間が
• Local Search 法 (LS)
発生したものと考えられる。一方、図 4 の一様分布時では、
Greedy 法同様のジョブリスト PL を解空間として、要 Greedy 法、LS 法ともに、FCFS 法より低く、標準偏差でも
素から 2-opt 近傍探索を行い、一定時間または局所解 安定した結果となった。正規分布と比べて、一様分布では、
に陥るまで探索を行う。
ジョブサイズのばらつきが大きいため、FCFS 法が他の手
法より終了時間のばらつきが大きい。従って一様分布での
4
ジョブ処理においては、Buffered 割当がより有効であるこ
性能評価
とがわかる。
提案した割当手法と FCFS 形式での性能評価を、GridSim
という java パッケージを用いて行った [2]。Resource の処
理性能と Scheduler を表 1 に示す。24 時間の間に、一様分
5
今後の課題
布の時間間隔で 100 個のジョブが Broker に到着するものと
本研究では、ジョブの計算量と資源の処理性能のみを考慮
する。また、Buffered 割当は 1 時間毎に、FCFS ではジョブ
した Buffered 割当によるジョブ割当手法の検討をおこなっ
が到着次第随時割当てを行うものとする。LS 手法では、探
た。Buffered 割当の割当間隔には、グリッド環境の規模や
索時間の上限を 30 分とし、時間が経過するまでに見つかっ データ量に影響するため、今後の課題として、データ量、
た最良の割当を採用するものとする。すべてのジョブが終 ネットワーク遅延、ジョブの種類などを考慮した効率的な
了した時刻を処理終了時刻として、各 50 回試行したものの
割当間隔の設定、資源割当が挙げられる。
最大、最小、平均値とその標準偏差を比較した。ジョブサ
イズの分布は、正規分布と一様分布の 2 つを以下のように
参考文献
設定した。
• 正規分布:平均 200 万, 標準偏差 100 万, 最小値 1000
• 一様分布:最小値 1000, 最大値 400 万
Resource
Res 1
Res 2
Res 3
Ree 4
Res 5
表 1:性能評価に用いる Resource
Scheduler
Num of PE A PE MIPS
Time Shared
Time Shared
Space Shared
Space Shared
Space Shared
2
2
2
1
5
200
100
100
200
200
[1] M. Bertogna, M. Cirinei, and G. Lipari, ”Schedulability analysis of global scheduling algorithms on multiprocessor platforms,” IEEE Trans. on Parallel and
Distributed Systems, Vol. 20, No. 4, 2009.
[2] GridSim:A Grid Simulation Toolkit
http://www.buyya.com/gridsim/