自己改革の具体策と提案を発表

プ レ ス リ リ ー ス
平 成 28 年 9 月 8 日
報道関係
各位
全国農業協同組合中央会
(
J
A
全
中
)
JAグループ
自己改革の具体策と提案を発表
~輸出や資材価格の引き下げなどで農業者の所得向上を目指す~
全国農業協同組合中央会(JA全中)は8日、
「『魅力増す農業・農村』の実現に向
けたJAグループの取り組みと提案」と題する自己改革の具体策と提案を発表致しま
した。日本全体として人口減少や超高齢化社会を迎え、農業生産基盤の急速な脆弱化
が進むなか、JAグループとして「1円でも多く生産者手取りを確保し、1円でも安
く良い資材を供給する」取り組みを一層すすめることで、地域に暮らし続けられるよ
うな農業・農村の実現につなげることがねらいです。
具体的には、JAグループの年間輸出額を平成 24 年度 38 億円から 32 年までに 380
億円への拡大を目指すほか、JAグループで経済事業を担うJA全農は、青果の直販
事業の取扱いについて平成 30 年度までに 3,300 億円(平成 27 年度実績 2,949 億円)
へ拡大を目指すことなどを盛り込んでいます。
また、生産者と消費者双方に最大限のメリットを還元するために、たとえば資材関
連業界の再編について関係業界や政府に対して働きかけるほか、政府に対しては「骨
太の農業政策の確立」を求める提言も行い、JAグループ一丸となって、日本農業全
体の発展を実現し、将来にわたって安全・安心な食料の安定供給と地域の活性化など
に貢献してまいります。
なお、本日、「30 年産を目途とする生産調整の見直しに向けたJAグループの取り
組みと提案」をあわせて公表致しましたのでご案内申し上げます。
【添付資料】
・「魅力増す農業・農村」の実現に向けたJAグループの取り組みと提案
・30 年産を目途とする生産調整の見直しに向けたJAグループの取り組みと提案
【本件に関するお問い合わせ先】
JA全中広報部広報企画課(岸本・古林・加藤)
東京都千代田区大手町1-3-1 電話 03-6665-6010
「魅力増す農業・農村」の実現に向けた
JAグループの取り組みと提案
~「1円でも多く生産者手取りを確保し、
1円でも安く良い資材を供給する」ために~
平成28年9月8日
全国農業協同組合中央会
【ポイント】
取り組みの基本方向:
①共同販売により、消費者・実需者のニーズに応じた生産と直接販売等を拡大
②共同購買により、メーカー間の競争を促す
最重点事項:
①「小売・メーカーに対する交渉力強化(特に米、資材)」
②「輸出強化」
*こうした取り組みを後押しする規制緩和や法整備、関係業界の協力も提案
<当面の主な取り組みイメージ>
所得
【
JAグループ】
所得拡大・経営安定
創造的自己改革の実践
=
価格
付加価値・需要拡大
・加工、直販の拡大
・輸出体制の強化
・販売の多様化
(買取拡大、概算金見直し、
部会運営の改善など)
【
政策・
業界】
骨太の農業政策(長期
安定の政策)の 確立
・中間流通の再編
・ブランド化、輸出等の
支援強化
×
販売量
生産拡大等
・経済界との連携拡大
・人材育成の強化
・JAによる農業経営、
農作業受託の拡大
・経営体質強化支援策
の拡充
ー
コスト
資材価格の引下げ
・取扱品目の集約
・低価格商品の増加
・直送の拡大
・シェアリングの拡大
・見える化の推進
・銘柄等の集約
・工場等の再編
・規制緩和等
1
「魅力増す農業・農村」 の実現のイメージ
「魅力増す農業・農村」へ
・意欲ある農業者が増える、収入が増える
・地域に暮らし続けられる
・国産農畜産物、多面的機能の評価が高まっている
⇒消費者の豊かな食生活に還元
魅力・
価値
JAグループは、総合事業をフル活用し、
「1円でも多く生産者の手取りを確保」
「1円でも安く良い資材を提供する」
「農業の生産力向上と農村活性化」
に資する具体策を実行
現状(課題)
・高齢化
・儲からない
・耕作放棄地の拡大
・多面的機能の低下
第27回JA全国大会決議に基づき、
「農業者の所得増大」「農業生産の拡大」
「地域の活性化」を加速化
(経営体質の強化のための産業政策)
骨太の農業政策
(セーフティネット+地域政策)
食料・農業・農村基本計画
を実現できる長期安定の
政策(法制化、恒久的・安定
的財源の確保)
⇒今後、中長期的に確立
時間
2
1.「1円でも多く生産者の手取りを確保」するための主な具体策
①消費者までの
距離を縮める
☆実需者への精米販売の拡大
全農:27年度77万tから35年度までに
100万tに拡大
②需要をつくる
☆事前契約取引の拡大
☆組織を挙げた輸出拡大
→輸出額を24年度38億円から32年度 全農:28年産米の事前契約見込数量
120万tの達成(27年産107万t)
までに380億円超
(括弧内は全農)
JAグループの取り組み
※今後3カ年の輸出取扱目標(括弧内は27年度実績)
☆青果の直販事業の拡大、外食・
中食企業等への販売強化等
全農:青果直販事業を27年度2,949億円
から30年度までに3,300億円に拡大
加工・業務向け青果物販売を27年度
321億円から30年度までに450億円に
拡大
③生産者個々の
努力を活かす
青果物:52億円(44億円)
米:31億円(6億円) 10,616t(1,725t)
牛肉:40億円
40
(22億円)
22
500
500t(314t)
314t
☆意欲ある農業者への米事業の
対応強化
→「買取販売」の拡大
全農:28年産米の買取販売目標数量
30万tの達成
☆輸出体制の強化
→全農による「海外営業拠点」の強化 →「概算金」に代わる意欲ある農
等の検討
業者への営農資金対応(融資)
(28年度より検討)
☆生産部会の再編・強化
→28年末までに実需者ニーズ等
に対応した改善方策を整理
対外提案
★東京オリンピックまでに、全て ★諸外国の輸入規制などの撤廃・緩和 ★産地パワーアップ事業、畜産ク
の加工食品について原料原産
(国)
ラスター事業の拡充(国)
地表示を制度化(外食等も情報開示
★海外におけるジャパン・ブランドの保
を拡大)(国・業界)
護・人材育成等(国)
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2.「1円でも安く良い資材を提供する」ための主な具体策
①製造・流通コスト
を下げる
(
括弧内は全農)
JAグループの取り組み
☆取扱品目を大胆に集約
→国産化成肥料の銘柄集約
(全農:29年より開始)
→水稲除草剤の品目集約
(全農:28年秋より開始)
②低価格商品
を増やす
③シェアリング
を増やす
☆担い手向け安価な輸入肥料取扱い ☆農機事業を「所有」から「共同
(全農:28年度秋肥用より受注開始)
利用」主体の事業へ転換
→「所有」から「共同利用」へ
☆農薬大型規格等の取扱拡大・開発
全農:28年はモデル地区で検証、
全農:26年より、規格の増強や取扱品目数の
拡大、本年7品目増加、計218品目・規格に
29年より本格展開
☆飼料供給のコスト低減
☆共同利用施設の有効活用と、
→商社・商系等との飼料原料の ☆機能を絞った低価格モデル農機開発
物流の合理化
共同購買、共同物流
(全農:28年2月より要望把握等開始、29年展開)
→JA間・担い手との連携による
→港湾・地域別の工場・メーカー
施設利用などの効率化
の再編
※上記等に関し、法人・青年農業者と全農による
全農:29年度にJA西日本くみあい飼料㈱の
3工場を集約、新工場を稼働
研究会を28年秋より開始
対外提案
★業界の再編、法整備(国・業界) ★ジェネリック農薬登録制度の簡素化 ★補助事業により建設する施設
の用途変更許可基準の緩和
(国)
(国・地方公共団体)
★銘柄集約を支援する施肥基準の ※ジェネリック農薬は、登録制度等の違いにより、日本
では諸外国に比べ開発費用が約10倍
緩和等(国)
(普及率:日本約5%、海外約30%)
★計画的な施設の集約・整備・
相互利用促進に向けた支援
★国際戦略バルク港湾等への支
(国)
援(国)
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○ 「『魅力増す農業・農村』の実現に向けたJAグループの取り組みと提案」には、そのほか、以下の農
業生産力向上・農村活性化などの取り組みも盛り込んでいます。
➢
➢
➢
➢
農業人材の育成・強化、労働力の確保(新規就農支援、農業経営塾全国展開への参画など)
他産業との農業イノベーション(経済界とのさらなる連携推進など)
農村振興の強化(鳥獣対策強化など)
資材価格等の「見える化」 (JAや全農におけるHP等での資材価格情報等の提供強化など)
○ 各取り組み・提案については、今後とも、さらに具体化・拡充等をはかり、改訂等をして参ります。
また、JA・県・全国の各段階においては、生産・流通・消費の変化をふまえた事業等の見直しを行
い、それぞれ関係する項目を工程表・行動計画等に落とし込み、組合員・役職員一体となって、速や
かにさらなる自己改革を実行に移して参ります。
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JAグループは、30年産に向けて、需要に応じた生産に主体的に取り組み、行政ルートで配分される生産数量目標を起点とした米づくりから脱却し、販
売を起点とした米づくりの実現をはかり、第27回JA全国大会において決議した基本目標の実現を目指す。
【基本目標】
<JA全国大会決議>
○ 農業者の所得増大
○ 農業生産の拡大
○ 地域の活性化
実現
【対応方向】
【取り組み内容】
【国の示す生産調整の見直しの概要】
○ 国は、生産数量目標の配分は行わないが、全国ベースの需給見通しの策定、産地別の需要実績や販売進捗・在庫状況などの情報提供
を行うとともに、麦・大豆・飼料用米等の戦略作物等への支援措置を継続。
○ 農業再生協議会(再生協)は、30年産以降も存続し、国による情報提供や飼料用米等への支援をふまえ、主食用米、飼料用米、麦、大
豆等の生産量の目安を策定。
○ 生産者やJAなどの集荷業者・団体は、国の情報提供等をふまえ、自らの経営判断や販売戦略に基づき、生産・販売のあり方を決定。
1.30年産以降の需要に応じた生産の取り組み
(1)再生協を通じた取り組み
○ 都道府県段階・市町村段階の農業再生協議会(再生協)を通じて、行政・集荷業者・JAグループ等の
関係者が一体となり、需要に応じた生産に向けて取り組む。
○ 再生協は、国の情報提供やJAグループの販売戦略等に基づき、県・地域全体の水田フル活用ビ
ジョンの検討をすすめ、生産者別の生産量の目安を情報提供する。
○ 需要に応じた生産に向けた産地に対する推進の手法や体制を検討し、国と連携した推進を実施する
ことを目的として、関係団体が参加する全国段階の組織の設置について検討をすすめる。
(2)JAグループ事業における取り組み
○ 米事業における基本戦略として、①事前契約取引の拡大、②買取販売の拡大、③実需者への精米
販売の拡大等に取り組みながら、生産現場に対し、販売戦略に基づき生産・取引提案を実施するとと
もに、担い手のニーズに十分応え得るよう、現行の事業方式の見直しをすすめる。
2.水田フル活用の取り組みの強化
○ 地域実態に応じて作物を組み合わせるなど、水田フル活用による水田農業経営の展開をすすめる。
3.主体的な需給調整の取り組み
○ 過剰生産となった場合、翌年の出来秋以降の長期計画的な販売や翌年産以降の作付面積の削減な
ど、各産地が主体的に需給調整に取り組む。
4.担い手の育成・確保の取り組み
○ 農地の集積・集約化等をすすめながら、担い手を中心として需要に応じた生産に取り組む。
【必要な政策・環境整備】
1.再生協を中心とした需要に応じた生産
○ 再生協等の関係者の役割を制度上に位置付けると
ともに、産地ごとの生産・販売に係るきめ細かい情報
提供の仕組み等が必要。
2.水田フル活用に対する政策支援
○ 麦・大豆・飼料用米等による水田フル活用に対する
政策支援について、恒久的に措置される必要。
3.担い手の経営安定対策等
○ 現行の収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)や検
討中の収入保険制度を含め、需要に応じた生産に取
り組む担い手に対する経営安定対策等を継続・拡充
する必要。
4.日本型直接支払制度
○ 地域の水田農業は、兼業・小規模農家を含む多様
な担い手の共同活動等によっても支えられていること
から、日本型直接支払制度を拡充する必要。
5.地域の水田農業の維持・発展に向けた取り組み
○ 中山間地など担い手が不足する地域での担い手または担い手のサポート組織として、地域の実態を
ふまえつつ、JA出資型農業法人の設立等に取り組む。
○ 兼業・小規模農家を含む多様な担い手が、需要に応じた生産や地域の共同活動などに取り組む。
6.輸出等の国産米需要の拡大に向けた取り組み
○ 輸出拡大、グルテンフリー等のニーズ掘り起こし、和食給食の推進など、需要拡大対策に取り組む。
5.輸出拡大等に向けた政策支援
○ 輸出先国における販売促進等に対する政策支援や、
和食給食等の積極的な導入や朝食欠食率の改善に
向けた対策等について、省庁横断的に取り組む必要。