戸籍だより 夢135号(平21.4) 戸籍だより 第135号(平21.4) 目 次 ◎ 「着任のごあいさつ」 大阪法務局民事行政部戸籍課長 寺田 章・ …1 ◎ 平成20年度大阪法務局管区内地方法務局戸籍・国籍事務担当者 打合せ会結果(戸籍関係) (京都地方法務局・奈良地方法務局■・大津地方法務局) … 3 ●・ ◎ 第59回戸籍事務研究会協議結果について ・・・33 ◎ 第5回大阪法務局本局管内戸籍定例会の開催結果について ・‥51 ◎ 電話による質疑応答事例(93) 第 二 係 …5畠 ◎ 戸籍雑感 「∼支局の戸籍係∼」 松田 博子 …58 ◎ 戸籍のポケット「戸籍事務のIT化を目指して!」 八木 秀典 …60 ● ◎ 告知板(お知らせ,次号掲載予定内容等) …63 ◎ 編集後記 …65 戸籍だより 第135号(平21.4) 着任のごあいさっ 大阪法務局民事行政部戸籍課長 寺田 章 本年4月1日付けの人事・異動で戸籍課勤務を命じられ, 過日着任いたしました。 誌友の皆様には,本局戸籍課係員,堺支局戸籍係長,岸 和田支局民事専門官と して大変お世話になりました云 「仏 ● の顔も三度」を超ネる4度目となりますが,どうぞよろし くお願いいたし■ます。 現在,わが国の社 会経済構造は,100年に一度という 厳しい経済危機の中で,公共サービ云の民間開放が強く催 し進めら・れており,国民の行政に対する意識は大きく変化 し,価値観の多様化もより一層進んできています。 このよ うな中で,日本国民の国籍と親族的身分関係を登 録・公証する の正確な記録と適正な運用により,極めて高い信頼と評価 を得ている戸籍制度■についても,様々な施策が講じられて ● います。 特に,個人情報の保護に関する国民の関心の高ま り など を背景と して,戸籍に記載されている個人情報の保護を, よ り一層確実なものとするこ とを目的と した「戸籍法の一 部を改正する法律」が昨年5月1日に、施行され,戸籍の謄 抄本等の交付請求ができる場合を制限するなど,戸琴の公 開制度の在り方を見直すと.ともに,真実で・ない身分関係が 戸籍に登載されるこ と を防止するため二 創設的届出におけ る本人確認の制度が新設されました。 −1、− ・一ヨギコ宰淳−壬、ご; 戸簑だより 第135号(平21.4) 本年1月1日から施行された,・生後認知のみの者にも届 ■.出による国籍取得を可能とする改正国要旨法第3条第1項の 国会審議においても,衆議院・参議院ともに「偽装藤知」 防止のために特段の措置を講ずることを求める附帯決議が なされており,ここでも真実の身分一関係の把握が強く 求め られているところです。 さらに,性同一性障害者の性別に由する取扱いの見直し や,ヰ出による戸籍の再製制度の導入等々,時代の要請に こたえるべく,制度の充実が図られています。 また,電子政府実現の名の下に,各種行政機関では事務 ㊤) 処理の改善・合理化が図■られていますが,なかでも戸籍事 務のコンピュータ化は,単に戸籍事務の迅速かつ適正な処 理の確保に止まらず∴これら各種行政事務のオンライン化 の前置となるものであり,■ 早期実現が急務となっています ので,引き続きその推進に御協力いただきますようお願い いたします。 今後も, 様々な問題や課題が提起されることと思われま すやミ,それら社会の要請にこたえるためには,同じ戸籍行 政に携わる市区町村の皆様と法務局が・‘より ̄層連携を深 ⑧ めることが肝要と考えております。 最後になりま.したが,皆様の日ごろの御尽力に衷心より 感謝申し上げますとともに,なお一層の連痍をお願いいた しまして,着任のごあいさっとさせていただきます。 どうぞよろしく お願いいたします。 −2− 戸籍だより 第135号(平21.4) 三言三言三言喜≡妄言三言宣言妄言至芸三三至言宣言妄言宣言 平成20年慶大阪法務局管区内地方法務局 戸籍■国籍事務担当者打合せ会(戸籍関係) 妄言妄言妄言宣言三言三言妄言言≡三言妄言妄言三三三雲三言 ★ 京都地方法務局 第1間 ● (要旨) 次の各ケースの場合において,子が父又は母の戸籍に入籍するには家庭 裁判所の許可が必要か。 ①嫡出でない子が先に帰化した準, ②父母の一方■が死亡しており,子が先に帰化した衡 単身の父又は母が 子と同一呼称の氏で帰化した場合 ③父母が離婚しており,子が先に帰化した後,単身.の父が子と同氏呼称 で帰化,その後更に母も子と同氏呼藤で帰化しており,■子が母の戸籍 に入籍することを希望している場合 (理由) ● 上記については,平成1 和40年4月10日付け民事甲第781号民事局長回答(以下「781号 回答」という)は維持されており,・.78.1号回答と近似した事案について は,家裁の許可を要しないとすることもあると示されているが卜781号 回答は,昭和62年10月1日付け民二第5000号民事局長通達発出に より整理されてお.り,同籍する旨の入籍届はできないと め,確認したい。 (参考) 戸籍だより第121与13頁(平成17年11月)‥・781は維持 ー3− 戸籍だより 第135号(乎21,4) 戸籍だ皐り第118号1 戸籍誌第750号74頁 2貫(平成17年1月)……781は維持 (平成15年11月)……… 781は維持 戸籍だより第114号1 6貫(平成16年1月)……全て整理 戸籍だより第111号5 9貫(平成15年4月)……全て整理 戸籍誌第723号6 (平成・13年12月)…・=…整理 戸籍時報第502号32頁(平成11年6月)………全て維持 戸籍誌第667号66頁(平成9年1■2月)‥‥‥…:,・全て整理 設題解説戸籍実務の処理−Ⅷ入籍編78頁(平成9年3月)・‥全て維持 【京都局意見】 ①∼③のうち,,①については父に認知されていない嫡出でない子であれ ㊨1 ば,7′81号回答と近似した事案と考えられるので,同籍する旨の入籍届 によることが可能であるものと考える。②③については近似した事衰とは いえないと考えられるので,民法第791条第1項により家庭裁判所の許 可を得て入籍届をすることになると考える。 また,昭和40年4月10日付け民事甲第782号民事局長回答(以下 「782号回答」という。)においては「子が先に帰化した後,父母が帰 化した場合」とあり,「父母が帰化した」とは父母が婚姻中であることを 指しているものと考■ぇる。そのため,①∼③のケースを781号回答及び 782号回答の解釈によって家庭裁判所の許可は不要であり同籍する旨の 入籍届が可能としている戸籍専門書の見解は,そもそも782号回答を拡 大解釈.しているものと考える。子が帰化した後に父母が婚姻中に帰化した 場合は昭和62年10月1日付け民二第5000号民事局長通達発出後は 父母の氏を称する入籍屑が可能であるので,782号回答は整理されたも のとして取り扱うことが相当であると考える。 なお,戸籍誌第750号78貫には帰化者?場合には「民睦第791条 の規定が適用されるのは,子と異なる呼称の氏を創設した場合であり,同 一呼称の氏を創設した場合には民法第791条わ規定は適用はなく,.同籍 する旨の入籍届で足りる。」旨の記述があるが,戸籍だより第121号1 4真においての本省の見解として①∼③のような事案については「民法第 791条第1項の規定により家庭裁判所の許可を要する。」とされており, 戸籍誌第750号の記述は781号回答の事案のみに限った考え方である ー4− 戸籍だより 第135号(平21.4) と思われる。 以上のことから,②③のような事案については,すべて民法第791条 第1項により家庭裁判所の許可を得て入籍届をするほかないこととなる。 【管区局意見】 (意見) ①②③とも家庭裁判所の許可を要する。 (理由) し 氏が同一といえないことから,・子が父又は母の戸籍に入籍するには,原則 として民法第791条第1項■により家庭裁判所の許可を要する。 なお,外国人が日本人(単身者)を養子とした後に養子と同一の呼称の 氏で帰化した場合は,同籍する旨の入籍届により養子を養親の帰化による 新戸籍阜こ入籍させてよいとする781号回答は,現在も維持されていると 考えるが,同先例は,便宜的処理を認めた特殊事例であることから,同一 の事例でない限り,直ちに同先例の趣旨が適用されるものではない。 よって,本間にづいては,いずれも家庭裁判所の許可を要すると考える。 ● 第2間 (要旨) 未成年の子を有する在日韓国人同士が,.日本において協議離婚届を提出 した。当該離婚は政行離婚となるが,離婚届に記載された親権者指定の効 力はどう・なるのか。 (理由) 離婚届に記載した親権者の定めは韓国では離婚自体が成立していないた め,親権者とは認められないとすれば,例えば日本法を準拠法とする15 歳未満の子の養子縁組の代諾や帰化申請は離婚届書記載の親権者では代諾 や申請ができず,韓国本国で離婚を成立させ親権者を定める必要があるた ー5− 戸籍だより 第135号(平21.4) め。 【京都局意見】 判例及び戸籍先例は,渉外的な法律関係において,ある問題を解決する ために不可欠の前提問題が国際私法上本間題とは別個の法律関係を構成し ている場合,その.前提問題の準拠法は,法廷地である我が国の国際私法に より定めるべきであるとしている(最高裁平成12年1月27日判決・平 成18年1月20日付け民†第128号民事局民事第一課長回答)。 本間に当てはめると,親権者指定の先決間翠である離婚について法の適 用に関する通則法第34条第2項により定めちれた準拠法(行為地法であ る日本法)によって有効に成立している以上,その離婚が韓国法上におい ては成立していない政行離婚であ?ても,本間題である親権者の指定が親 子間の汝律関係たっいての法の適用に関する通則法第32条により・定めら れた準拠法(子の本国法である韓国法)に基づき,適法に父母の協議によ って親墟者を定めているので(韓由民法第909条第4項),その親権者 の指定は有効であるものと考える。 【管区局意見】 (意見卜 京都局意見のとおり (理由) 韓国においては,平成16年9月20日以降従来の取扱いを改め,在日 韓国人夫婦の協議離婚についても韓国の家庭法院による離婚意思存否の確 認を受けなければ離婚の成立を認めないとする取扱いになっているが,我 が国の国際私法である法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。) 第34条第2項の規定により行為地法による方式は有効であることから, 在日韓国人夫婦の日本の方式による協議離婚は有効であると解される・。 −6− \ 戸籍だより 第135号(平21.4) 第3間 (要旨) 有資格者が職務上請求用紙を使用せずに自己の作成した様式により職務 上請求を行い,補正に応じない場合,不交付決定の対象となるか。 (理由) 職務上請求をする際に,職務上請求用紙を使用してその請求を行うこと については,戸籍法施行規則に規定があるが,それ以外にも例え■ば行改書 士に関しては「職務上請求書の適正な使用及び取扱いに関する規則」第3 ● 条に,職務上請求書の自己による作成及び使用についての禁止事項が規定 されている。これらの規定を根拠に不交付とできるか。 他の有資 ない場合に,・補正に応じない,または用紙の盗難等により補正に応じられ ない場合に,不交付決定までやってよいのか疑義があるため。 【京都局意見】 弁護士等の有資格者が受任している事件又は事務に関する業務を遂行す るために■必要がある場合における戸籍謄本等の交付請求については,現に 請求の任に当たっている者についての1号書類の提示と弁護士等の職印が 押印してある統一請求用紙との併用によって,弁護士等請求であることの 場 確認をすることとされた(戸籍法第10条の3第1項,戸籍法施行規則第 11条の3第4項)。 上記以外の弁護士等請求の方法については,戸籍睦及び戸籍法施行規則 に規定されていない。 したがって, 統一請求用紙及び職印を併用■しない職務上請求は認められ ないことから,補正に応じなければ,戸籍法第10条の3第1項,戸鱒法 施行規則第11条の3第4項を根拠に不交付決定をすることになる。 なお,日本行政書士連合会等が定めた 則を遵守する義務があるが,これを根拠に不交付とすることはできない。 おって,本来職務上請求をすべき事案を第三者請求することには,・資格 者の行為としていささか疑義があるが,依頼者からの委任状を添付した上, −7− 戸籍だより 第135号(平21.4) 第三者請求がされたら,戸籍謄本等の交付することは可能と考える。 【管区局意見】 京都局意見のとおり 第4間 (旨) 日本人父からフィリピン人女や子(1992年(平成4年)4月19日 ■ト 〓 〓一 .. コ「り 生)の認知届がA市で受理され当市に送付された。添付の出生証明書中父 母の婚姻年月自が1991年(車成3年)3月4日とあるが,当時父は他 ¢ト の日本人女と卓昏姻中であ.り,同年8月15日に離婚が成立し,平成9年5 月27日にフィリピンの方式により母と婚姻している。出生証明書記載の 一一一】「rJ■. 婚姻成立年月日は重婚にあたり,フィリピン家族法35条4項により無効 となることから,その効果として嫡出セない子となるとして認知届が受理 されたが, 定がある。この場合,届書を返戻し,認知届をするまでもなく,父母婚姻 による準正子として取り扱うべきか。 (理由) フィリピン家族法第54条によれば,同第36条による婚姻取消または 無効の判決が確定前に出生又は懐胎した子は嫡出子とする規定があるとさ れていることから,重婚関係にあった子であっても,別途,フィリピンの 法制で嫡出性を否認する裁判がない限り嫡出子とすると考えるが,同第5 4条の規定は,同第36条のみに適用されるのか,すべての婚姻無効に適 用されるのか,疑義があるため。 【京都局意見】 外国人女が生んだ子を日本人男が認知する場合,その子が嫡出でないこ との要件審査のため,子の出生当時;外国人母が独身で奉ったことを証明 する必要があるが,本件は,その証明書が添付されていない。 認知届に添付されている被認知者の出生証明書に記載されている父母の −8− ( ・戸籍だより 二第135号(平21.め 婚姻年月日と認知看である日本人父の戸籍に記載されている父母の婚姻年 月日が相違しており,いずれの婚姻年月日が正しいのか判別できない状態 であるが,そもそも,婚姻の証明については,婚姻証明書をもって確認す べきもゐで,被認知者の出生率明書ではなく,フィリ・ピンの官憲が発行す る婚姻の証明睾の発行を受けて,認知者の日本戸籍と対比して確認すべき であり,この婚姻証明書が ことを証明する書面に・なると考える。 フィリピン法上の婚姻年月日が平成9年5月27日であれば問感はない が,平成3年3月4日婚姻が正しいとなれば,平成3年3月4日わ婚姻に ついては重婚となり,フィリピン法上無効となる。 ● フィリピン法上重婚は絶対的無効であり,嫡出の推定は受けないので, 本件認知届をすることができると考える。 (参考) 戸籍だよ・り′第92号12貫 戸籍時報第‘468号64貫∼ 【管区局意見】 (意見) 京都局意見のとおり (理由) 本間のようキこ,出生証明書に父母の婚姻年月日が記載されていることか ら独身証明書を取得することができない場合には,当該子が嫡出でない子 であることが明らかであるとはいえないが,子の出生当時,日本人父は他 の日本人女と婚姻中であったことから,フィリピンの方式により婚姻が成 立していたとしても,フィリピン女との婚姻が重婚に当たり,同婚姻はフ ィリピン家族法により無効となる(同法第35条第4項,同第41条1 項)。 したがって, フィリピン人女の子は非嫡出子となり,認知届を受理して 差し支えないと考える。 ー9− 戸籍だより 井135号(平21.4) 第5間 匡以矧剃闇罰湖引山湖司り闇討醐 (要旨) 市区町村長が届出の不受理処分をした場合,届出人に対して受領した届 書を返戻することによって,その旨を明らかにするものとされている(大 正4年白月2日付民第1237号法務局長回答) 大津地方法務局戸籍.・国籍事務担当者打合せ会第1問の結論によれば,返 戻した届書が届出人に到達した日を不受理処分の日(効力発生の日)とす るのが相当 離婚や縁組等,届出人が複数ある場合についてはどうすればよいか。 また,届出人が行方不明で届書を返戻できない場合はどうするべきか。 伊 (理由) 不受理処分としなければならない届出には,婚姻,離婚,縁組,離縁な ど,届坤人が複数ある・ものがあり,その届出も,当事者双方の共謀により 虚偽の届出をしたものノ 当事者の一方が他方の知らない間に作成したも‘の など様々なケースがあるので,不受理処分の方法にづいて確認したい。 また,返戻すべき届書が届出人に到達しない場合もありうるが,その場 合不受垣処分がどうなるかについて平成18年度打合せ会の結論では触れ られていないので,これについても確認したい。 (参考) 戸籍だより第126号30貫,同第110号38頁 戸籍誌第598号42貫 【京都局意見】 市区町村の窓口で届書類を受け付けたときは,その年月日を記載し,そ の届書が適法なものであるか否かを垂査して,適法なものと認めたときは, これを「受理」(受付を認容する行政処分)し,不適蔭と認めたときは, これを「不受理」(受付を,拒否する処分)とする。 市区町村長は,原則として届書の記載と添付書類などにより,要件具備 の有無を審査すれば足り,届出人に身分行為意思があるかどうかを現地調 ー10− 戸籍だより ■弟135号(平21.4) 査などして確かめることを要しない。 戸籍法上,受理又は不受理処分の際には,文書を交付する扱いにはなっ ておらず,不受理処分をする場合,虐出人に対し不・受垣処分を嘗知する必 要があり,また,盾書を返戻する取扱いがされているが,不受理処分は; 届出人にとって不利益処分であるので,行政処分の一般原則に従?て,届 出人に告知した日,すなわち届書を直接返戻した日を不受理処分の日とし て取り蓼うのが相当であるとされてい争。 したがって, ◎前段については,届一出人が複数ある時は,最後に届出人に告知した日を もってネ受理処分の日とする。 鶏 ◎後劇こついては,届出人が行方不明で届書を返戻できない場合は,当該 市区町村役場の掲示板に,不受理の対象となった届書を申出があればいつ でも返戻する旨を公示し,当該申出がなければ,公示期限の満了日の翌日 をもって,「不受理処分の日」として処理して′も差し支えないのセはない かと考える。 (参考) 戸籍だより第126号30貢,第110号38頁 実務戸籍法75頁∼ 戸籍誌第98号4・2頁∼,・同第546号5β頁∼ 注釈司法軍士法(第三版)454頁∼ 行政手続法(18年改訂版)199頁∼ 大正4年8月2日付け民第1237号法務局長回答 昭和33年1月8日付民事甲第20号民事后長心得回答 【管区局意見】 (意見) 届出人が複数ある場合は,任意の1名に返戻すれば足りる。 いずれの届出人にも返戻できない場合は,市区町村におい七保存する。 (理由) 市区町村長は,届書を審査した結果,不受理処分をする場合には,受理 −1’1− 戸籍だより 弟135号(平飢.4) の拒否という消極的行為によって行い,却下決定書を交付するというよう な積極的な処分はしない取扱いとされている(大正4年8月2日付け民第 1237号法務局長回答)。 したがって,複数の届出人がいる場合でも,提出された届書は1通であ るから,届出人のいずれか一人に返戻することになる。 なお,行方不明等でいずれの届出人にも返戻できない場合は,市区町村 において「戸籍に関する雑書類つづり」に編てつし,保存する。 第6聞 (要旨) 特別養子から,実親の戸籍謄本(特別養子縁組当時)の交付請求がされ たと’き,縁組当時の戸籍に異動がなく美観がその戸籍に在籍している場合 でも,これに応じることができるか。 (理由) 特別養子縁組の・成立によって,実父母との法律上の親子関係が終了して いるため,謄本の交付請求には応じられないが,特別養子に係る■抄本の交 付には応じられると考える。一方,戸籍に記載されている者本人からの請 求であ■り,謄本の交付に応じることができるとする意見もあるため。 【京都局意見】 戸籍法第10条第1項の規定による,戸籍に記載されている者(そ?戸 籍から除かれた者を含む)からの請求であるから,交付に応じられる。特 別養子縁組をした者に対して,特に公阻を制限する規定がないことから, 通常の戸籍謄本等の請求があった場合と同様に審査し,謄本,抄本と区別 することなく処理せ■ざるを得ないと考える。 なお,特融養子縁組後に実父母が転籍等により戸籍を異動した場合につ いては,∧実父母との法律上の親子関係は終了しているため,戸籍法第10 条第1項の規定による本人請求はできない。 −12− 戸籍だより 第185号(平21.4) 【管区局意見】 京都局意見のとおり 第7間 (要旨) 日本人が外国人の子を認知する場合,通常,子の出生当時,母の独身証 明書等,子が嫡出でない子であることを証する′書面が必要とされている。 母子の国籍がフィリピンの場合,本国官憲が発行した出生証明書の父欄に 「U血10Ⅵn」とある場合は,非嫡出子と認定することはできないか。 (理由) フィリピンの・場合,賭出子の親子関係は民事登録簿に記載された出生記 録により証明される(家族法第172条第1項第1号前段)が,民事登録 官は申告に基づいて登録を行うにすぎず,事実由係の確認は行っ七いない ということで,本国官憲の証明に加えて,独身証明書を添付させるとある (戸籍だより第111号58頁)。できない頃合は申述書の添付であるの で,そこまで要求する理由が不明確である。父欄に「U血0Ⅵ狙」とある場 合iま,非嫡出子と認定できると考える。 国籍法の改正で,認知が増加する可能性もあり,再考する必要がある。 (参考) 戸籍誌第708号58頁,同第764号7.2頁,同第662号8貢 戸籍だより第60号30頁,同第92号12軋 同第111\号58頁 【京都局意見】 フィリピンの嫡出子の より証明される(家族法第172条第1項第1号前段)が,・民事登録官は 出生の申告に基づいて登録を行うにすぎず,事実確認は行っていないとわ ことである。そのため,父母が婚姻関係にない子が嫡出子として登録され たり,真実の父でない者が父として登録されることや,婚姻している女が 出産した子について,夫以外の者を父とする登録がされ.ることもあり得る ー13− 戸霜だより 第135号(平21.4) ことになると奉る(戸籍誌第662号8頁∼)ことから,出生証明書の父 欄の記載のみで,子が非嫡出子であると認定することは,できないと考え る。出生証明書の父欄が空白又はUnknownと記載■があっても,子の出生当 時の母の独身証明書を轟付させることになり,独身証明書が得られない場 合については,他に証明する方法がないことから,申述書の添付となる。 なお,国籍法の改正で恵知が増加する可能性■も考えられるため, 層,要件審査については慎重にされるべきである。 【管区局意見】 京都局意見のとおり なお,申述書のほか,現在独身であることの証明書,パスポート,外国町 人登録原票記載事項証明書等を添付させる必要があると考える。 第8間 (要旨) 妻が死亡除籍となった後に戸籍がコンピュータ化され,妻がコンピュー タ戸琴に移記されなふっ‘たことについて,夫から,「国の施策で一方的に 妻を移記しなかったことにより,これまでの私たち夫婦の人生が引き裂か れた思いであり, えると,この戸籍の状態を説明することもできないし,大きな人権問題だ と思っている。」として,また,戸籍法施行規則附則(以下「附則」とい ¢ う。)第2条第2項(「‥・省略することがセきる。」)の規定は強行規定で はないとして妻をコンピュータ化後の戸籍に移記するよう強く求めてきた ものである。 このように,戸籍のコンピュータ化以前の死亡により除籍となった妻や 子について,隼頭者等の申出により記載する取扱いはできないか。 (理由) コンピュータ化による戸籍の改製に閲すろ取扱いについては,附則第2 条第2項後段の規定.により,戸籍法施行規則(以下「規則」という。)第 37条ただし書きの各号に掲げる事項はコンピュータ化による改製戸籍に ー14− 戸籍だより 第135号(平21.4) は移記されない取扱いであり,戸籍のコンピュータ化以前にすでに死亡・ 婚姻等で除籍となっ五看で,戸籍の筆頭に記載された者以外は移記されな い。 ところで,附則第2条第−2項(「省略することができる。」)の規定を「省 略しなければならない0」とすると・移記作業によりコンビータ入力し た後,癖姻や死亡により除籍になった場合,一旦入力したものを逐一削除 しなければならないこととなり,そ.のまま移記されることもやむを得ない とされていることから,特に除籍者の移記を真っ向から否定する必要もな いと考えられ,死亡した配偶者・子の範囲において申出による記載を認め ても差し支えないものと 【京都局意見】 戸籍の改製の移記事項については,戸籍法施行規則附則第2条第2項に より,規則第37条ただし書に揚げる事項を省略することができるとされ ている。この取扱いは,戸籍の改正作業の迅速化と戸籍の簡明化及び経費 の節減等を考慮しているものであると考えられ,また∴転籍等により新戸 籍を編製する場合の取扱いとも整合する。この「省略することができる」 という表現方法を取っているのは,戸籍の改正作業着事後に,戸蒔から消 除された者等に関する事項について,これを逐一コンピュータの詭録から 消除することは,事務煩さになり多大な作業を要することになるため,こ のような 彊 た含みのある表現となっ七いることかち,それ以上に範囲を広げることは 相当でないと考える。 なお,改製の際の移記事項に限■らず,転籍の際の移記事項も‥含めて,申 出による移記が可能とする見解が示されない られないと考える。 【管区局意見】 京都局意見のとおり ー15− 戸籍だより第135号(平21.4) ★ 奈良地方法務局 第1間 (要旨) 草母が離婚した後,成年被後見人である子につき,離婚後の母の戸籍に 入籍させるため,成年後見人である母が民法第7白1条第1項の許可を得 た場合,同母を届出人とした入籍届を受.理して差し支えないか。 (理由) 実務上,成年後見人は成年被後見人の転籍届又は戸籍法第77条の2の 届出をすることができないとされており,所間の入籍屈も同様に解するも のと思われるが,成年後見人が成年被後見人の氏変吏の許可を得ながらも, 成年被後見人が本心に復さない限り入籍の 実的でなく,かつ,入籍させることで成年被後見人に不利益が及ぶもので はないと考えられるため。 【奈良局意見】 戸籍実務上,成年後見人は,成年被後見人の転籍届又は戸籍法第77条 の2の届出はできないこととされている。これは,本人の意思によらず成 年後見人の悪意により届出される危険と成年後見人の代理権がこれら届出 1 行為た及ばないことを理由とするものであり,一義的には,所問の入籍届 についても同様のことがいえるものと思われる。 し声ゝしなが・ら,成年後見人は成年被後見人の財産管理のみ■ならず日常生 活の面倒や療養看護を行うのが一般的であるほか(民法第858条もその 際の成年後見人の注意義務を規定している。)・,財産管理行為に際して成 年被後見人の戸籍取得の必要も奉り得るのであって,広い意味で戸籍の管 理も財産管理行為の一環と考えられなくない。.さらに,氏変更の家庭裁判 所の審理においては,成年被後見人の利益等について十分な配慮がされ許 可が決せられるのであって,成年後見人の悉意に陥る危険も想定し難い。 加えて,創設的届出とはいえ,婚姻等の身分行為と異なり,戸籍の編製・ −16− 戸籍だより 弟135号(平21.4) 異動を目的としたものであり,恋意の対象たるべき性質のものでもない。 以上のことから,成年後見人の代理権の範ちゅうから形式的に逸脱する ものの,成年後見人の現実的な機能等に着眼し,例外的に入籍届の届出資 格を認めても差し支えないものと考える。 【管区局意見】 (意見) 母(成年後見人)を届出人とする入籍届は受理することができない。 (理由) 戸籍法第32・条では,成年被後見人がその法定代理人の同意を得ないで することができる行為については,成年被後見人が自ら届け世なければな らない旨規定しており,父又は母の氏を称する入籍届は,届出によって効 力が生じる創設的届出であり′,法定代理人の同意●を必要としないものであ 早ことから成年被後見人が自ら届け出なければならず,成年後見人の代理 は認められない。 したがって,民法第7 っても,当該許可のみによって効力が生じるものではないから,成年後見 人からの入籍届は受理すべきでない。 第2間 (要旨) 夫婦の一方が,他方の婚姻前の美方戸籍を取得しようと戸籍法第10条 1項による本人等請求をする場合,配偶者としての請求資格が市役所保管 の戸籍によ・り判明しないときは,請求者に対し疎明資料を提示させるべき か。又は,市役所において関係市町村に照会・して確認すべきか。 (理 改正戸籍法及び通達においては,請求の任に当たる者の本人特定(本人 確認)及び権限確認については明記するものの,本人等請求,公用請求及 び弁護士尊請求における請求主体及び資格の確認について言及されていな ー17− 帝鱒ギ掌り=・∴.利亭碑(平21.4) いた・め,いかに取り扱うべき疑義があるため。 【奈良局意見】 本人等請求,公用請求及び弁護士等請求におし†ては,請求資格が法定さ れているため,請求に当たってはその確認が必要になるが,確認方法につ いては何ら規定等が存在しない。もっとも,公用請求や弁護士等請求につ いては,請求の任に当たる者の本人特定女は権限確認の中でその請求資格 は確認できる(公用請求書又は資格者証など)ので問題ないが,本人等請 求にづいては必ずしも明らかでない。 そこで 保管の戸籍でそれを確認できない場宅=千,請求者がその資格を自ら証明し 軒 なければ不交付決定をすることができるかが問題である。 しかし,法令に請求者の疎明責任の規定はないものの,その資格を名乗 って請求する以上,.当然■に請求者に自己疎明責任があると解せられ,これ に応じない場合には不交付決定して差し支えないものと考えられる。 なお,東京法務局の質疑応答によれば,請求者に証廃させることなく市 町村自ら確認‘しても差し支えないこととされているが,一の市町村の取扱 いは他の市町村の窓口トラブルの原因となり得るので,「律請求者に証明 責任を負わせるべきものとして取り扱うべきである。 (参考) 戸籍誌第815号126頁 【管区局意見】 (意見) 原則として,_請求者に疎明資料の提示を求めるべきであるが,便宜,本 籍地の市区町村長に電話等によって確認しても差し支えない。 (理由) 戸籍に記載されている者の配偶者,直系尊属又は直系卑属であることの 確率た,原則として,請求者に戸籍謄本等(住民票でも可)を提示させる 方法によってすることになるカミ_,ノ戸籍謄本等の交付請求を受けた市区町村 −18− 戸焉だより 弟135号(平21.4) 長において,便宜,請求者の本籍地の市区町村長に電話等によって確認し ても差し支えない。 第3間 (要旨) 日本人A男と養子縁組継続中に外国人B男と婚姻した日本人C女が,婚 姻後1年を経過して,戸籍法第1−07条第1項の氏の変更により夫である B男の氏を称したが,その後に養親A男と離縁した場合,C女は縁組前の 氏に復すると考えるべきか否か・。 (理由) 上記事例において,戸籍法第107条第2項による氏の変更をしている 場合について,当.然に縁組前の鱒に復するとする原則に対し,現に称して いる外国人配偶者の氏は復しないとする説があるが,いずれを正解とすべ きか。また,家庭裁判所の許可を得て変更した氏Iこついても同様に解すべ きか疑義があるため。 【奈良局意見】 民法上,養子は縁組によって養親の氏を称するが,婚姻によって氏を改 めた者(以下「改氏者」という。)は,婚氏を称する間は華親の氏を称す ることはないとされ(・民法第810条),養子は離縁によって縁組前の氏 に復する(同法第8■16条1項本文)が,改氏者については婚氏を称する 間は婚氏が優先する取扱いである。 そこで,所間のケースを考えると,C女が称する氏は呼称上の氏である から,C女は離縁により縁組前の氏に復すると解され,C女が改めてB男 の氏を称するためには,再度氏変更の手続を要することになる。 しかしながら,・配偶者が日本人であれば同女は復氏しないにもかかわら ず,配偶者由男が外国人であるがゆえに復氏するとい.うのは,余りにも不 合理であるから,C女は,B男の氏を称する限り復氏しないと解するのが 相当である。・これに対しては,昭和‘25年来積み重ねられた幾多の先例に 反するとの意見もあろうが,国際結婚の場合には離縁によって民法上の氏 −19− 戸籍だより 第135号(平21.4) のみが復氏し,婚氏相当である呼称上の氏は復氏しないと解することが可 能で卒る。また,そのように解しても, と考えられる。 なお,所間は,■戸籍法第107条第1項による氏変更であることを一つ の問題点としているが,同条第2項との差異は,婚姻成立後6■月を経過し た場合には必ずしも婚姻生活と氏変更の関連性が明らかでないことから, 裁判所の判断を介することとしたものであり,単なる手続上の差異にすぎ ず,所周の結論に影響するものではない。 (参考) 戸籍誌第584号79頁,同第678号4 【管区局意見】 (意見 C女は,A男との離縁により縁組前の氏に復する・と考える。 (理由) 戸籍法第107条第1項による氏の変吏は,呼称上の嘩の変更であり, その後の身分行為に伴い民法上の氏に変動が生じる場合にまで影響を及ぼ すものではないと考える。 したがって,本間において,C女とA勇が離縁した場合には,民法第8 16号第1項の規定により,C女は縁組前の氏に復することになる。 第4間 (要旨) 配偶者のいない成年者が家庭裁判所ゐ許可を得て父母の氏を称する入籍 届をする場合,その他欄に新戸籍を編製する旨の申出をしたときは,直ち に新戸籍を編製して差し支えないか。 (理由) 所間のケースでは,従来,事件本人は,父母の氏を称する入籍届により −20一 跡 戸籍だより 第135号(平21.4) 父母の戸籍にいったん入層した後に,分籍届をしなけれげ新戸籍を編製す ることができないが,直ちに新戸籍を編製しても戸籍の連続性を損なうも のではないこと,さらには戸籍の経済性の観点や国民甲強い要望があるこ と等にかんがみると,上記取扱いを認めても差し支えないものと考えられ るため。 【奈良局意見】 民法第791条は氏の変更は家庭裁判廟の喪可を得て戸籍の届出をする ことを効力要件とし,これを受けて戸籍法第98条は入籍届について規定 している。いずれも夫婦及びこれと氏を同じくする子を戸籍編製単位とし (戸籍法第6条),父母の氏を称する子は父母の戸籍に入る(同法第18 条第1項)という戸籍の原則を大前提とするものである。したがって,自 己の氏を称して婚姻した者が父母の氏を称する場合には新戸籍を編製する こととされ(戸籍法第20条),例外的に民法第79・1条第4項の従前の 氏を称する場合には新戸籍編製ゐ申出.が認められる(同法第19条第2項) など・している。 と.てろセ,所問の場合,成年者たる事件本人が単身戸籍の状態で父母の 氏を称することを希望するのであれば,入籍届及び分籍届の双方を要する ことになり,迂遠かつ不経済な手続であろうと思われる。また,直ちに新 戸籍を編■製するとしても,自己の氏を・称して婚姻した者が父母の氏を称す る場合等と同様に,事件本人の従前戸籍及び新戸籍の身分事項欄に父母の 氏を称する入籍届出による入除籍の旨を記載するならば,戸籍の連続性に 特段の影響も考えられない。さらに,事件本人の氏と.父母の氏の同一性は, そうした戸轟の記載をもって公示することが可能である。 以上のことからすれぼ,所間の取扱いを認めても差し支えないものと考 える。 (参考) 昭和24年9月15日付け民事甲第2042号(2)第375号民事局 長回答 ー21− 戸籍だより 第135号(平21.4) 【管区局意見】 (意見) 入籍届により直ちに新戸籍を編製することはできない。 (理由.) 民法第791条第1項による氏の変吏の手続は,家庭裁判所の許可を得 た上,入籍の届出によることとされているが,その趣旨は,親子同一氏の 原則及び親子同一戸籍の原則を可能な限り貫くため,当初から親子が嘩を 異にする場合や,後発的に親の氏が変動することによって親子の氏が異な るに至った場合に,子の氏をその異なる親の氏と向十の氏を称することが できるとともに,同一戸籍に入籍することができるようにするものである と解される。 したがって,入籍届により子につき直ちに新戸籍を編製することを認め ることは相当ではないと考える。 第5間 (要旨) 未成年者の後見開始届が未成年者の本籍地(A市)に届けられ,後見人 の本籍地(B市)へ送付された場合,B市ではどのように処理すべきか。 (参考) 昭和24年9月28日山口地方法務局徳山支局管内戸籍事務協議会決議 戸籍時報平成11年11月特別増刊号.87頁【間256】 (理申) 上記事案は送付不要(親権変更届等も同様)と考えるが,市町村によ り取扱いが統一されていない。送付を受けた市町村は,本籍人とし七受 理している市町村もあれば,いっ 不要つづりに編綴している市町村も見受けられる。非本籍人扱いするこ とも可能と思われるが,いかに処理すべきか。 −22− 戸籍だより 第135号(平21.㊥ 【奈良局夢見】 後見開始届については,後見人が届出人と・なり,被後見人を事件本人と して当該被後見人の戸籍にその旨記載されることになる。 したがって,後見人につき何ら記載を要せず,B市は受理地でなく,記 載を要する本籍地でないので,記載を要しない届書が送付されてきたこと になる。 原則返戻すべきであると思うが,受付帳ではなく,発収簿にその旨を記 載し戸籍記載不要綴りに編綴すべきであろう。 ただし,当該取扱いをした後,届出人がB市に記載事項証明を請求した 場合,応じることができるか否か疑義が生じる。 (参考) 戸籍時報特別増刊号平成11,年11月号87頁 【管区局意見】 (意見) A市に返戻すべきである。 (理由) 未成年者の後見開始届が後見人の本籍地であるB市に届けられた場合 ■ は,後見人について戸籍の記載を要しない土とから,未成年者の本籍地で あるA市に送付の上,B市においては非本籍人分として処理することにな るが,本間では当初からA市に届出がされているため,B市に送付する必 要がないことから,非本籍人の扱いをする必要もないため,返戻するのが 相当である。 なお,返戻しない場合は,発収簿に記載の上,雑書類に編てつすべきで ある。 −23− 戸籍だより 第135号(平21.4) 第6間 (要旨) 戸籍法第10条第1項による戸籍謄抄本の本人等請求の場合,法務局の 許可申請によって訂正除籍されている者は,同条の「その戸籍から除籍さ れた者」に該当しないとされているが,戸籍法第113条により訂正除籍 された者は該当するのか。 (理由) 戸籍法第10条第1項による戸籍膣抄本の本人等請求の場合の「戸籍に 記載されている者」とは,戸籍の「名」欄に記載さ・れている者(当該戸籍 章二■ミ から除籍された者も含むトを指すが,戸籍から除かれた看であっても,そ の者に係る全部の記載が市町村長の過誤によるものであ 法務局長の許可により訂正されている場合は,戸籍から除籍された者に当 たらないとされているが,訂正の実質的要件である戸籍の記載が「法律上 許されないものであること」又はその記載に「錯誤」があることは;戸籍 法第113条の規定による訂正と同意義であるにもかかわらず,訂正除籍 されている者が戸籍法第24条第2項の規定に限定されているため。 【奈良同意見】 戸籍法第24条第.2項の訂正は,申請による訂正の補充的な方法である から,戸籍の記載誤りが戸籍面上又は戸籍面≒届書その他の戸籍関係書類 の対比上明白である場合に限り許されるという制約がある。また,届書の 不備に基づいて生じた記載の誤りは,その不備が市町村長の形式事査によ っても容易に発見できる場合であっても,■戸籍法第24条第1項に該当せ ず,原則として申請により訂正すべきである。 以上のように戸籍法第24条第2項により消除された者は,当該戸籍に 当然に記載される看ではなく,訂正された記載に応じた事実上の生活実態 が認められる場合は想定し難いことから,そのような者に請求する権利を 認める必要がないことになる。 これに対して戸籍法第113条による訂正は,上記のような判断が当然 にできないので,戸籍から除かれた者に含まれ,請求できることになる。 −24− 戸籍だより・弟135号(平21.4) (参考) 戸籍訂正・追完の手引き8頁以下 戸籍話第815号3∼4貢 【管区局意見】 (意見) 戸籍法第113粂による訂正によって戸籍から除かれた者は,同法第1 0条虜1項に定める「声籍から除かれた者」に該当する。 (理由) 戸籍法第10条第1項は,戸籍に記載された者は戸籍の謄抄本の交付請 求をすることができる旨規定し,それは戸籍から除かれた者も含むとされ ているが,「その■者に係る全部の記載が市区町村長の過誤によちてされた ものであらて,当該記載が第 は,これに当たらないとされている。・これは∴市区町村長の過誤を理由に 消除された者は,訂正された記載に応じた事実上の生活実態が認められる 場合は想定し難く,そのような者が請求の痙由せ明らかにすることなく当 該戸籍を利用することにっいてほ,社会通念上一般に許容されているとは いえず,また,この場合は戸籍に「誤記」との表示がされるから,戸籍記 載に対応した事実上の生活実態が認められ得る他の戸籍訂正の場合と戸籍 場 面上も区別することができることから・除されたものと考えられる0 ところが,戸籍法第113条の規定に基づき家庭裁判所の許可を待て, 当事者から戸籍訂正の申請がされ,当該申請により戸籍の記載が消除され た場合には,戸籍記載に対応した事実上の生活実態があるかどうかは,戸 籍面上明らかではなく,過去の身分行為等についてこの戸籍の記載のみに よって公証される場合もある。 よって,戸籍法第113条に基づく戸籍訂正により除籍されている看で あっても, 同法第10条第1項による戸籍謄本等の交付請求をすることが できる。 ー25− 戸籍だより 第1さ5号(平21.4) ★ 大津地方法務局 第1間 (要旨) 日本の方式で日本人A男と協議離婚した韓国人女と日本人B男との創設 的婚姻届が提出された.。 韓国人女は本国に離婚登録をしていないため,韓国人女につき本国の独 身証明書が発行されず,前夫との婚姻事項が記録された婚姻関係証明書, 基本証明書,離婚届記載事項証明書,前婚の婚姻届記載事項証明書及び申 述書が添付されている。 受理せざるを得ないと考えるがどうか。 ■トト一 (理由) 準拠法を日本法として離婚が有効に成立していれば,当事者の本国法上, 離婚が成立していない場合であっても,後婚は重婚には当たらないと・され ているが,政行離婚にならない場合は,本国に離婚登録をさせた上で本国 の権限のある官憲が発給した独身であることを証する書面を添付させるべ きと考えられることから疑義がある。 (参考) 戸籍誌第786号6 7貢 【大津局章見】 (意見) 受理せざるを得ない。 (理由) 渉外的な婚姻の創設的届出において,外国人当事者の本国法が準拠法と なる場合には,本人自らが本国法上の実質的要件を具備していることを, 本国官憲が発給する証明書により立証すべきである。 −26− 戸稽だより 第135号(平21.4) 本件の場合,本国に離婚登翠をする・ことが可能と考えられることから, 身分関係を整序させ本国官憲が発給した独身証明書を添付するように指導 すべきである。 しかしながら,準拠法を日本法として離婚が有効に成立していれば,当 事者の本国法上,離婚が成立していない場合であっても,後婚は重婚には 当たらず,添付書面上前婚が解消していることが確認できれば,不受一理と することはできない。 【管区局意見】 (意見) 離婚届出後,現在も独身であるかどうかは,離婚届書の記載事項証明書 では判明しないので,管轄法務局に受翠照会させた上で,婚姻要件を具備 していることが確認できれば,受理して差し支えない。 (理由) 在日韓国人夫婦の日本の方式による協議離婚は政行離婚となるが(平成 16年9月8日付け民事局民事第一琴補佐官事務連絡),本間においては, 韓国法上も離婚が有効に成立してい■ると考えられるので,原則として韓国 人女が本国におい 明暑の記録により周女が独身であるか否かについて審査するべき しかし■ながら,韓国において離婚の登録がされていない場合であっても, 凛 当該離婚は,通如法に定められた日本法により有効に成立しており,後婚 は重婚には当たらないので,当該離婚届出後,現在も独身であることが確 認セきれば,受理することができる。 したがって,離婚届出後,現在も独身であるかどうかは,離婚届書の記 載事項証明書では判明しないので,管轄法琴局に受理照会させた上で,婚 姻要件を具備していることが確認できれば,受理して差し支えない。 第2間 (要旨) ブラジル人を事件本人とする創設的婚姻届において,備考欄が空欄であ −27■一 戸籍だより 第135号(平21.4) る発行後6か月以内の出生証明書・を独身を証する書面とみなして差し支え ないと考えるがどうか。また,本国公証人発給の宣誓書について,本国官 憲の公印認証がない場合であっても,積極的に添付を求めるべきと考える がどうか。 (理由) 最近,上記出生証明書の備考欄が空欄であったため取り直しを指導した ものの,何回取り直しても空欄であ の受理照会事案が増えており,この場合,事件本人から別途独身であると 認めるに足りる資料の.提出がなされなければ,受否の判断は事実上困難と なる。 ところ・で,当局が在名古屋ブラジル総領事館に照会したところ,同領事 館からは,「出生登録原簿に記載されている婚姻に・関する事項は省略でき ず,出生証明書の備考欄が空欄であっても,婚姻事項がない限りは独身で あると判断できる。また,備考欄記載については本国各登記所により対応 が異なる。」旨回答を得ている。 そこで,ブラジル人登録人口が年々増加している滋賀県下においては, 今後も同種の事案が増加することが予想される土とから,出隼証明書の取 扱いの整理・統一について検討する必要があるものと考える。 また,本国公証人発給の宣誓書にちいて‘は,本国官憲(在日領事館等を 含む)による公印認証がないことを理由に,これを届出人に返戻して申述 書による対応を−している市町が見受けられる。 そもそも宣誓書は,虚偽の宣誓による本国法上の罰則規定があることを 踏まえ,事件本人が独身であることの心証を得るための重要な資料として 位置付けられているものであり,公印認証がない場合であっても様式等に 特段の疑義がない限り,本国公証人発給の宣誓書を求めるよう指導すべき と考える。 【大津局意見】 (意見) 前段,後段とも提出庁意見のとおりと考える。 −28− r 一E■′気−−己亀■L−.:昌.i: ;︼J‘ 戸籍だより 第135号(平21.4) (理由) 1 出生証明書について 出生登録原簿に付記事項がないことを明確に証明させるため備考欄に 「Nada consta(何も記錮ない)」等の記載がある出生証明書を提出させることが 望ましいが,出生登録地の身分登録機関の発行する「出生証明書」一には, 全ての婚姻又は離婚事項が付記されることから,備考欄が空欄であること の一事をもって独身を証する書面に当たらないとするのは妥当ではなく, 他に宣誓書又は宣誓書が待られない旨の申述書の添付があれば,それらの 書面をもって婚姻の実質的要件を具備していると解されるので市町村限り で受理して差し支えない。 2 ■宣誓書について 宣誓書は当該ブラジル人が婚姻▲に障害がないことを確認する重要な書証 であることから,第一義的に■添付を求めるべき書面である。 宣誓書が得られない場合に,申述書をもってこれに代える取扱いは,ブ ラジル国の制度上やむを得ない事情が認められ,当該ブラジル人に不可能 を強いることができない場合に限り認めるべきである。 外国公文書の認証は本国の権限を有する官憲によって発行されたもので あることを担保するため.に必要なものであり,外交又は領事機関・による認 証を受けた宣誓書を提出させることが望ましいが,書面の作成名義や体裁 に疑義がなく先例等で示されたもの・と同一であると認められれば真正な書 場 面云判断して差し支えない。 【管区局意見】 (意見) 前段,後段ともに大津局意見のとおり (理由) 在日ブラジル人が独身であることを証する書面は,出生登録地の身分登 録機関の発行する婚姻の旨の付記のない,又は離嘩の旨の付記のある「出 生証明書」であって6か月以内に発行されたものとされている(平成14 年6月19日付け民事局第一課補佐官事務連絡,戸籍誌第733号68 ー29− 戸籍だより 第135号(平21.4) 頁)。 当局管内では,出生証明書の備考欄が空欄である場合,備考欄に記録が ないのか,それとも備考欄の記録が省略されているのか,明確でないこと から,備考欄に付記がある出生証明書の取■り直しを指導しているところで ある。 ブラジル本国の身分登録機関の出生証明書に関する取扱いが,提出庁の 理由のとおりであれば,出生証明書の備考欄が空欄であっても,当該証明 書をやって,独身であることを証する書面として取り扱って蓋し支えない と考えるがよ ブラジル本国での取扱いが確認できていないので,現段階で は,備考欄が空欄である場合は,備考欄に付記のある証明書の取り直しを 指導すべきである。 なお,取り直しても付記のない場合は,その旨の申述書を添付させた上, 市町村長限りで受理して差し支えない。 また,ブラジル大使館等が認証(発給)した宣誓書が得られない場合は, 宣誓書に代えて「宣誓書が添付できない.旨の申述書」の提出を求める取扱 いであるが(戸籍誌第756号42貫,戸籍だより第116号‘26貫), 本国公証人が発給した宣誓書が提出された■ときは,本国官憲(外務省又は 大使館等)の再認証が得られない場合であっても,宣誓書の作成者や様式 等から判断して疑義がなければ真正な書面として判断 考える。 (なお,ブラジル人を当事者とする創設的婚姻届の取扱いについて,平成 21年3月26日法務省民一第762号民事局民事第一課長通知が発出さ 、妾 れていますので,御留意願います。) 第3間 \\ (要旨) ブラジルの法制では,「裁判離婚」のみが認められ,「協議離婚」は認 められていないところ,日本に在住するブラジル人夫婦の一方から,日本 の家庭裁判所において離婚の調停が成立したとして調停調書を添付し離婚 届が提出されたとしても,この届は受理できないと考えるがどうか。 ー30− ■︳▼こ ・ √ ︳ t ・ ヽ ・ − ● ■ . 戸籍だより 弟135号(平21.4) (理由) 調停離婚は裁判所の関与する離婚でiまぁるが,当事者の合意を基礎とする ものであり,その本質は協議離婚の一種であってこれを外由裁判と同視し て取り扱うことはできないと考えられるが(昭和28年4月18日付け民 事甲第577号民事局長通達),戸籍誌第799号59頁以下において, これと異なる見解が示されてい−るため。 【大津局意見】 (意見) 受理して差し支えない。 彊 (理由) ブラジル国民法典には協議離婚の制度はないが,「裁判所が関与する合 意による直接離婚」も認められており,①事実上の別居が2年以上継続し ており,②当事者間において離婚の合意があった場合に,裁判所は当事者 からの申立てに基づき離婚原因の存否を・検討することなく離婚判決が下さ れるとされている。 その手続きは,当事者間の合意を基礎とし,裁判所が離婚要件を確認す るという点で日本の調停又は審判に酷似しており,そうであれば日本の調 停又は審判による離婚にブラジル国民法典上の「 よる直接離婚」と同等の効力を認めて差し支えないものと考える。 論 外国人間において日本国内で裁判離婚が成立した場合には,戸籍法上の 届出義務は課せられていないものの,在日外国人の身分関係の公証に資す る観点からすれば,届出があればこれを受理することができると考える。 【管区局意見】 (意見) 大津局意見のとおり (理由) ・調停及び審判による離婚は,当事者の意思によって成立ないし効力▲が左 右されるものであるとの理由により,これを国家機関の関与による一種の −31− 巨 戸籍だより 兼135号(平21.4) 合意離婚とみるのが多数説であり,戸籍実務においても同様の立場をとっ ている。したがって,離婚の準拠法となる外国法が裁判離婚のみを認める 国を本国法とする外国人夫婦の調停に基づく離婚の届出は受理しない取扱 いである(昭和28年4月18日付け民事甲第57J7号民事局長通達)。 ところで,ブラジル国においては,協議離婚の制度はなく,離婚には裁 判所の関与が必要とされているが,平成‘15年1月11日から施行された ブラジル新民法においては, 者において離婚の合意があった場合に,裁判所が,当事者の申立てに基づ き事実上の別居の認定と当事者の離婚の合意の有無を確認した上で離婚の 判決を下すという「合意による直接離婚」も認められている(ブラジル民 法第1580条第2項,離婚法第40条補項 こゐ「合意による直接離婚」の手続は,日本における調停離婚の手続と 同視できると考えられること,また,家庭裁判所において, た繭停離婚が外国人の本国において承認の余地があることを十分調査した 上で慎重に対処しているとのことであるから,57 となく,日本の家庭裁判所の調停調書を添付し辛ブラジル人夫婦の離婚届 は受理して差し支えないと考える。 戸籍だより 第135号(平21.4) 日日由由由良〕由良〕日日出田日日白〕lヨ【ヨ由日日日蝕日日白]田 第5・9回戸籍事務研究会の協議結果について 出田∈辺由由∈日日ヨ白∃E臼∈白』】【B由臼由lヨ白〕庄l日日E臼[辺【白日日日 平成20年1■2月18日,大阪家庭裁判所,一大阪府戸籍住民基本台帳事 務協議会及び当局の担当者合計45名が集い,当局第1会議室において第 59回戸籍事務研究会が開催されました。 本研究会は,戸籍事務にかかわる上記三庁がそれぞれ協議問題を提出し, 意見交換を行う研究会であり,毎年各庁が輪番で幹事庁となり実施されて おり,・今年度は当局が幹事となって行われました。 同研究会において検討さ.れた協議問題は,今後の戸籍実務の参考になる と思われますので,その協議碍果を掲載します。 なお,誌面の都合により,特に戸籍実務に直結すると思われる問題のみ を選択し,協議結果の趣旨を要約して掲載させていただきます。 【第 離婚届中親権者指定部分のみ無効である場合の処理 双方協議の上で,相手方に離婚の届出を託したところ,相手方は未成年 子の親権者を自分に書き換えて提出してしまった。離婚自体には争いがな く,親権者の指定の記載部分のみが無効であるとしたい場合,大阪家庭裁 彊・判鱒では伝統的■に■23条審判の親権者指定無効確認申立てをさせているこ とが多いが,そのような場合,戸籍上問題となる点は何か。また,その他 に戸籍を訂正する方法はあるか。 (出題趣旨) 先に提出された離婚届中の親権者指定部分を無効とする けて,戸籍法第116条の戸籍訂正申請とと・もに親権者指定届を提出でき るのであれば,簡易の手続として一定の効用がある。しかし,当事者間に 争いがある場合は,親権者指定無効の確認判決を得た上で.,改めて親権者 指定の審判を申し立てなければならないと考えるが,いかにも煩墳である ことから,親権者指定の無効を前提に,親権者指定の調停又は審判を申し −33− 戸籍だより 兼135号(平21.4) 立て,成立調書又は審判書謄本を添付して,改めて親権者指定届を提出す ることはできないか。もし独立した戸籍訂正が必要であれば,先になされ た親権草指定の戸籍記載を訂牢(戸籍法第24条)することはできないか。 あるいは,親権者指定の調停成立や審判確定を受けて,戸籍訂正許可の審 判(戸籍法第114条)がなされた場合はどうか。 (大阪法務局回答) 親権者指定の届出は,親権者の定めがないことを前提とするものなので, 戸籍面上,親権者の記載がされている場合には受理することができない。 したがって, 当該親権者め定めを無効とする確定判決による戸籍法第1 16条の戸籍訂正に妄り消除した上で改めて親権者指定の届出をすること に−なると考える。 戸籍法第114粂による戸籍訂正につい されるのであれば,戸籍実務上受理して差し支えないと考えるが,戸籍法 第24条第2項による職権訂正については,調停調書又は審判書謄本に親 権者指定の定めが無効であることが明記されていたとしても,親権者指定 の無効については,身分法上,財産法上重大な影響がある訂正であるので, 職権による訂正はできないと考える。 【第2間】(大阪家庭裁判所提出) 妻が子の親権者を母として勝手に離婚届を出し,その後,子の氏の変更 を済ませた。その後,夫から協議離婚無効確認の申立てかなされ確定した 場合,戸籍法第116条による戸籍訂正申請により,夫婦の戸籍は元に戻 るが,子七っいては更に戸籍訂正の許可を要する。こうした場合の戸籍法 第116条による戸籍訂正が可能な範囲について何いたい。 (大阪法務局回答) 確定判決に基づく戸籍法第1−16条の戸籍訂正の範囲については,判決 の主文のみに既判力がある−ことから,原則として,その主文で確定した身 分関係と直接矛盾する戸籍の記載を対象とし,その・他の身分事項に関する 訂正は,別途戸籍法第114条(又は第113条)の戸籍訂正の審判を得 て訂正すべきであるとされている。 −34− 軒 戸籍だより第135号(乎21.弟 本間においては,協議離婚事項及び親権事項については父母の離婚と親 権者の指定は一体のものと考えられるが,父母の離婚と子の入籍とは別個 の行為であると考えられることから,親権事項については戸籍法第116 条の戸籍訂正の範囲に含まれるが,子の入籍事項については含まれ のと考える。 主巨gl︻、l 【第3間】(大阪家庭裁判所提出) (1)民法第772条に関するいわゆる 父との親子関係不存在確認審判を受けず,実父との間で認知審判を受ける いわゆる先回り認知につき,従前は認知審判書の理由中の記載によっては 認知届を受理できない場合があるという取扱いをされていたのを改めたと 聞いているが,どのように改めた■のかを伺いたい。 (2)母の離婚後300日以内に出生したいわゆる推定を受けない嫡出子 の出生届出のために, ‘の証明を求めて家庭裁判所に来庁した母に対し,親子関係不存在確認手続 とあわせ,それと同様の効果を得ることができる手続だとして実父に対す る強制認知手続をも積極的に教示してよいか。 (出題趣旨) 推定を受けない嫡出子の表・見上の父子関係の断絶を目的とする実父への 強制認知請求は,従前から例外的取扱いとして慎重且つ抑制的に取扱うこ ととされてき、たが∴社会情勢の変化と共に,従前,とは異なる取扱いや考え 方が行われるようにな■ってきたのかどうか伺いたい。.現在家庭裁判所では, 受付時の翠明として,強制認知申立将には証人や参考人として元夫を呼ぶ 可能性があることやDNA鑑定を実施する可能性があることを注意してお り,積極的に強制認知手続をとるよう鱒めることはし七いない。もし,法 務局や戸籍役場での理解や位置付けが変化したのであれば,家庭裁判所の 説明振りも変える必要があるのではないかと考える。 (大阪法務局回答) (1)婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は, 婚姻中に懐胎したものと推定され,前夫の嫡出推定が及ぶが,これは,夫 婦が正常な婚姻関係にあることを前提として設けられた規定であるから, 夫が長期間不在であったり夫婦が事実上離婚している場合などに出生した ー35− 戸籍だより 勢1㌍号(平21.4) 子については,本規定を適 そこで,戸籍事務においては,妻が夫の子を懐胎し得ないことが客観的 に明白であることが裁判上明確にされている場合には,当該裁判書の謄本 の提出を得て,非嫡出子として取り扱うこととしている。 したがって,認知の審判が確定した場合には,上記の裁判上明確にされ ている場合に該当するので,認知届を受理するこ.とができる。 (2)母の離婚後300日以内に出生したが,嫡出の推定が及ばないこと を裁判上明らかにするには,原則的には,親子関係不存在確認の裁判の手 続によるべきであると考えることかち,嫡出否認や親子関係不存在確認の 申立七が困難な事案以外は,積極的に強制認知の手続を教示するのは相当 ではないと考える。 【第4間】(大阪家庭裁判所提出) 15才未満の者による養親死亡後の離縁の申立てについて,申立人の離 縁後の親権者となる父母が法定代理人としてなした申立てを認容した審判 例がある。このとき,離縁届を受け付けた市役所は,法務局に確認のうえ, 受理すべきではないとの回答を得たため,未成年後見人選任の申立てを促 した。 申立人らは未成年後見人選任申立をしたが,その後,市役所から受理す るという連絡を受けたため,申立人らは未成年後見人選任申■立事件を取り 下げた。 今後,このような事例の際には,未成年後見人適任の申立ては不要であ る前提で手続説明して差し支えないか伺いたい。 (出題趣旨) 離縁の届出のためにのみ後見人を選任することは無意味なものと思われ るが,離縁後に法定代理人となる実父母から申立て及び届出ができるかど うか,伺いたい。 (大阪法務局回答) .養親双方死亡後,15歳未満の養子が離縁しようとする場合には,戸籍 実務上,後見人が養子に代わって離縁許可の申立て及び届出をすべきもの とされているが(昭和37年9月13日付け民事二第396号民事局第二 −36− 戸籍だより 弟135号(平飢,4) 課長依命通知),これは,養親双方死亡後に後見が開始し,後見人が選任 されていることを前提としている。しかしながら,後見人が選任されてい ない場合において,後見人を選任しなければならないとすると,離縁後直 ちに後見が終了し実父卑が親権を行うことになる.にもかかわらず,琴線の 届出のためにのみ一時的に後見人を選任することとなり,同取扱いには疑 問が生じるところである。 また、,民法第811条夢2項は,養子の現在の法定代理人である養親は 利益が相反し,代理権を行使できないため,将来の法定代理人である実父 母の代翠権を認めた趣旨であ■ると考えられることから,本間においても, 後見人が選任されていない場合においては,現在の法定代理人が代理権を 場 行使できない瘍合であるから,同項 の代理権を認めても差し支えないと考えられる。 したがって,後見人が選任されていない場合に限って,実父母からの離 縁の届出を受理することができると考える。 【某5間】.(大阪家庭裁判所提出う 次のような場合に戸籍謄本の交付請求をする者に対し,交付請求の際に 何らかの書面や資料の提出を.要求されておられるか。あるいは,交付請求 が拒絶される事例はあるかム (1)元の夫が離婚した元の婁に対し養育費減額請求調停申立●てを行うた めに,一元の妻の戸籍謄本(子が同籍しているもの)の交付請求をする場合 (2)兄が医療保護入院(精神保健及び精神障害者福祉た関する法律第3 3条)したために,保護者選任申立て(同法第20条2項4号)を行うた めに,弟が入院患者である兄の戸籍謄本を交付請求する場合 (3)死亡した兄の相続を放棄する又は遺産分割調停事件を申し立てるた め,兄弟姉妹が被相続人である兄の出生から死亡時までの連続した戸籍, 除籍,改製原戸籍の各謄本の交付請求をする場合 (4)債務者が死亡したためその相続人に対し貸金請求訴訟を提起したり, 実父が認知しないので認知請求調停を申し立て草り,配偶者の不貞の相手 に対し慰謝料請求調停を申し立てたりするなど,裁判等の申立てのために 他人の戸籍謄本の交付請求をする場合 一37− 戸籍だより 第135号(平21.4) (出題趣旨) 本年5月1日より改正戸籍法が施行され,改正前の戸籍法第10条の戸 籍及び同第12条の2の除籍の各謄抄本と記載事項証明書の交付請求権者 の範囲が変更されたが,市区町村役場の窓口において実務上交付請求の理 由め適法性を明らかにするために提出をすることと定めている資料,ある いは第10条の4により求める説明に際し添付すべき資料(平成20年4 月7日付け法務省民一第1000号法務省民事局長通達第1の7(2)) として実務上定められているよう また,拒絶せざるを得ない交付請求が提出された場合において,市区町 村役場の窓口でけどのような取り扱いをされているのか,加えて, 求を行う者の不服申立権の保障に関しても伺いたい。 (大阪府戸籍住民基本台帳事琴協議会) 裁判所に提出する必要がある場合は,その旨請求書に記載すればよいこ とになっているが 必要である旨を記載した書面があると審査が容易となる。 また,上記事例の場合には,複数の戸籍謄本を請求される場合もあるが, どこまで必要なのか判断できず,必要のない者の戸籍謄本まで請求されて いるおそれもあるので,誰の戸籍謄本が必要かを明らかにしていただきた い。 (大阪家庭裁判所) 家庭裁判所で必要とする戸籍の範囲は,申立人,相手方,事件本人の現 在戸籍であり,これらは必ず求めている。その他つながりを見るために改 製原戸籍,親子が同籍している除籍の謄本を要求する場合もある。 これらの者以外について,家庭裁判所に提出する必要があるとの理由で 請求があり疑義があ早場合は,家庭裁判所の家事受付まで照会していただ ければ要否について回答する。 (大阪法務局回答) 戸籍法第10条の2第1項による戸籍謄抄本の交付嶺求については,同 項各号に規定する事項を明らかにしてしなければならないとされている。 −38− 戸籍だより 第135号(平21,4) その場合,明らかにする方法は,原則として交付請求書に記載すれば足り るが,当該請求を受けた市区町村長が明らかにすべき事項が明らかにされ ていないと認めるときは1当該請求者に対し,必要な説明を求める・ことが できるとされている(戸籍法第10条の4.)。 したがって,実務上定ま 内容によって個別に判断せざるを待ない。 家庭裁判所に提出する必要がある場合は,戸籍法東10条の2第1項第 2号に規定する「国女は地方公共団体の機関に提出 に該当するので,家庭裁判所に提出する旨とその理由を記載す.ることにな るが,その理由の記載としては,本間に記載されている程度の記載があれ ば足りると考える。 なお,(4)後段の慰謝料請求調停に相手方の戸籍が必要かどうかにつ いては,一般的に疑義が生じるので, と考える。 おって,(1)については,子が同籍しているので,子の父(直系尊属) として戸籍法第10条第1項により請求することもできる。 【第6間】(大阪家庭裁判所提出) 戸籍役場に届出や戸籍訂正申請をするに当たり,裁判の謄本の添付が必 要な場合がある■が,裁判中で引用すべき戸籍記載が例えば誤字や略字,旧 字,変体仮名,数字の多画文字でなされているような場合,裁判書を作成 する際に,当該文字につき裁判幸作成に使用しているコンピューターで出 力可能な字体で記載してもよいか。 (出題趣旨) 届出や戸籍訂正申請の際に添付する裁判の謄本(戸籍法第63条第1項 等)については,戸籍記載を引用しなければならないことが多いが,こう した場合には従前から,戸籍面上の誤字や略字等で裁判所で行う浄書で使 用する活字にない字体については,戸籍面上に記載されたとおりの字体を 直接手書■きするなどして転記していた。現在でも,戸籍訂正許可事件や氏 名の誤字使用を許す内容の氏,名の変更許可事件の各主文の記載について は,従前どおり戸籍面上に記載された誤字や使用を許す誤字につき,その −39− 戸焉だより 第135号(平21.4) 字体の形状をそのまま裁判書上に記載しているが,近年戸籍電算化の改製 が進んでいることから,こうした誤字等を主文上にそのまま記載すること が特段の意味を有する場合を除き,コンピューターで出力可能な字体(通 用字体と同じものが出力されるものと考えられる。)を使用した裁判の謄 本を添付した場合に届出や申請が受理されるものかどうか伺いたい。 (大阪法務局回答) 裁判書に戸籍面上の字体をそのまま記載することが特段の意味を有する 場合を除き,事件本人の特.定等に支障がない範囲であれば,貴見のとおり 取り扱っても差し支えないと考える。 【第7間】(大阪法務局帯出) 嫡出推定が及ぶ子(又はその母)がその父を相手方として提起した親子 関係不存在確認の裁判手続において,当事者の接触を避けるため,法廷に おいて当事者か顔を合わせないようにするとともに,連絡先が相手方に知 れないよう申立書等に現住所を記載しない等の配慮をす卑ことはできない か。 (出題趣旨) 最近,DV等の理由から,,出生した子の母が前夫と接触することを避け るため,出生の届出をせずに無戸籍となっている事例がマスコミ等に取り 上げられ,その問題を背景と 暗 いると聞いている。 本来,嫡出推定力亨及ぶ子と父との親子関係を否定するには,嫡出否認の 訴え又は親子関係不存在確認の裁判を行うのが原則であるので,上記理由 に配慮した裁判手続が可能かどうか確認したいため。 (大阪家庭裁判所回答) 法廷において当事者が顔を合わせないようにするという点については, 昨年,法改正がされ,民事訴訟法第233条により遮蔽の措置ができるよ うになった。人事訴訟法においても同規定を準用している。なお,当該措 置を・採った際には,その旨調書に記載するよう民事訴訟規則に規定されて ー40− 戸籍だより 弟135号(平21.4) いる。 なお,当該遮顧の措置を採るかどうかについては,申出があった場合に 当事者に意見を聞いた上で,各裁判体が判断することになる。 次に,連絡先を相手方に知れないように詞書等に記載しないよう由慮す ることができないかという点について・は,人事訴訟法において管轄の問題 があり,原則として,訴訟当事者の普通裁判籍を有する地又はそゐ死亡の ときにこれを有した地の家庭裁判所が専属管轄となるので(人訴法第4 条),大阪家庭裁判所で訴えを提起する場合,少なくとも大阪府までは記 載させる必要があると考えるが,この■ような取扱いを認めるかどうかの判 断についても各裁判体によるので,概括的な回答はできない。 また,訴訟記録を見られないようにするということも考えられるが,人 場 事訴訟法で準用する民甲訟法第91条により草本的には質が可能とさ れているので,これを隠すのは難しいと考える。 (大阪府戸籍住民基本台帳事務協議会)● 具体的に遮蔽の措置を行った事例はあるのか。 (大阪革庭裁判所回答) 改正後については把握していないが,改正前は,訴訟指拝という考えに 基づいて措置をしたことはある。 (大阪法務局) 12月初めに,奈良家庭裁判所葛城支部において,出生届未届けの子に ついて親権者の母が代理人として申立てをしている事案で母については本 籍地,氏名,生年月日で特定し,その子については生年月日のみで特定す る審判を,12月初めに出 ・許しておらず,届出も現時点ではないが,そのような事例があったと聞い ている。 【第8間】(大阪法務局提出) 中国人が日本人妻の連れ子を養子とする創設的養子縁組をする場合,実 質的成立要件の準拠法となる中国法上の養子縁組は養子と実父母及びその 血族との親族関係を終了させる「断絶型」の養子縁組であることから,戸 籍実務上,養子の本国法である日本民法上の「断絶型」’養子縁組である特 ー41− 戸籍だより 第135号(平21.4) 別養子縁組の規定による家庭裁判所の許可が必要であるという取扱いがさ れているところ,特別養子縁組の規定による許可を得ない場合は,「断絶 型」の効果のない養子縁組として成立させても差し支えないかどうか,家 庭裁判所での取扱いの実情をお伺いしたい。 また,家庭裁判所の許可を要するとした場合,日本民法上の特別養子縁 組の成立要件の中で,保護要件に該当するものとして審理されている要件 もお伺いしたい。 (出題趣旨) 届出人が断絶型の養子縁組の処理の希望をしない場合は,保護要件とし て日本民法上の普通養子縁組の要件を満たせば「断絶型」の効果のない養 か 子縁組として成立.させて差し支えないと考えるため。 特別養子縁組の成立には要保護要件も充足する必要があるが,連れ子養 子の場合は,当該要件を充足することが困難なため。 (参考) 戸籍誌第748号62頁 新人事法総覧 〈法規編別冊〉 中国家族法と関係諸制度129頁 家庭裁判月報48巻12号6・6頁 (大阪家庭裁判所回答) 養親が中国人,養子が日本人の場合に断絶型の効果のない養子縁組が成 立することはない。 このような場合には法の適用に関する通則法が適用され,同法第31条 第1項によると,縁組は縁組当時における養親の本国法によるとされてい る。 中国法では養子縁組はすべて断絶型であり,断絶型でない養子縁組を認 める規定はないので,中国人が養親である限り断絶型の効果しかあり得な いということになる。当事者が普通養子縁組の効果を望んでも中国法がそ のような規定になっている以上やむを得ないと考える。 後段については,裁判所の審理は,この場合,日本民法で審理するので −42− Jユ 戸顆だより 第135号(平21.4) はなく,中国法における養子縁組の成立について審理することになる。 したがって,実父母の同意は保革要件の一つとして当然に審議の対象と なるし,また,当該養子縁組が養子の福祉にかなうものであるかどうかと いう観点から審理しているのが実情である。 (大阪法務局) 中国人と日本人の夫婦が日本人を共同で養子とする場合,戸.籍実務上 相対的に断絶の効果は生じないとして取り扱っているが,この場合でも断 絶型の養子縁組の許可を要するのか。 場 (大阪家庭裁判所回答) 養親の本国法が分かれている場合,国際私法の分野では重複的な適用が されるので,中国が断絶型の養子縁組を採用している以上,裁判所の許可 を要すると考える。 【第9間】(大阪法務局提出) 出生の届出義務者がいないとして,就籍許可の審判により新戸籍が編製 されている子につき,後日,母子関係存在確認の裁判が確定し;その子が 入籍すべき戸籍が判明した場合, ヽ まず,就籍許可取消の裁判を行うことは 可能か。 柵 (出題趣盲) 就籍看であっ七も,父母の氏名及び本籍が明らかである場合は,出生の 届出による入籍の場合と同様に出生当時の父母の氏を称し,父母の戸籍に 入籍することとなる。 本間では,母子関係存在確認の裁判が き戸籍を有することと・なったの された就籍の許可はその前提を欠くこととなる。 よって,あらためて届出義務者からの出生の届出により,その子を本来 入籍すべき戸籍に入籍させるとともに,就籍届により編製した戸籍●を就籍 許可取消しの裁判に基づいて消除する必要があるところ,.就籍許可取消し の裁判に先だって出生の届・出を行うと,一時的に複本籍の状態になるため, ー43− 戸霜だより 第135号(平21・4) 出生の届出をする前に,就籍許可取消しの裁判の申立てを行うことが可能 かどうか確認したいため。 (大阪家庭裁判所回答) 就籍許可取消しについては, れるが,鱒消しの審判を行うためにI享,当該就籍をすべきではなかった, あるいは就籍すべき事実がなかったということが確認できれば足り,本事 例では,届出義務者が存在していたとし、 際に届出がされたということを′立証する必要性はないと考える。 【第10間■】(大阪法務尽提出) 中国に在住する中国国籍を持つ者が就籍許可の申畢てをした場合,申立 人の父母の婚姻が有効に成立しているか否かにういて事実認定を行うに際 して,婚姻を証する書面が.なく,婚姻当時の状況を知っているであろう関 係者も不存在であれば,・どのような点に注意して審理されているかお伺い したい。 (出題趣旨) 就籍することができる者は,当然,日本国民であることが大前提であり, 日本国籍を有しているかどうか,未だ戸籍に記載されていない看であるか どうかについて,慎畢な調査を要するものと考えるが,中国国籍を持つ者 が就籍許可を∴得た後,その者に関する婚姻や子の出生の届出がされた場合, 当局における事件調査において, のに困難となっている事案が散見される。 婚姻を証する書面の提出.がない場合,そのことをもって婚姻が不成立で あったとはいえないので,埠姻の成否については,事件本人あるいは関係 者の供述により認定するしかないが,儀式婚や事実婚の成立を供述のみに よって認定するとなると,その供述が,事実関係を認定するに足る信びょ 羞川窪ゴ蒼、叶jよ叫‖・・‘・,− ︼ う性のある供述であるかどうか,関係者らの供述に組齢はないかなど,総 合的に判断する必要があるが,事件本人から直接供述が得られない場合は, その認定が事実上困難となる。 裁判所において,就籍申立事件の調査を行うに際して,就籍者本人が中 −・・・ ナ44− 戸籍だより 第135号(平21.4) 国に在住しており,本人からの供述を得られない場合はどのような調査を 行った上で事実認定をされているか確認したいため。 (大阪家庭裁判所回答) 通常の就籍の調査では,本人を調査しないわけにはいかない。 就籍は,特に虚偽の申出がされる可能性が高いので,その意味からも本 人調査が必要である。 しかしながら,中国から本人が来れない事情がある場合,中国まで調査 に行くことはできないので,その場合には,質問形式の調査書を送り,そ の回答を申述書として求めるなどの方法も考えられるが,一般的な認識と 場 しては,書面だけでは難しいと考える。 また,本人が出生地や学校などある程度の経歴を言える場合には,親類 や近隣等の関係者に実際に聴取するなど,情報を得る方法も考えられる。 本間のよう■に婚姻開陳の有無について確認する場合たは,親族等に結婚 式の様子を聞いたり,その際に撮った写真を提出させるなどの調査を行う。 このように就籍の調査は,ケースバイケースであり,かなり難しいし時 間がかかる。 なお,家庭裁判所では,事実の調査は調査官が行うが,調査に当たって は,裁判官と打合せを行い,考えられる調査をすべて尽くした上で,裁判 官が最終判断をすることになる。その場合,裁判官は3種類の心証がある といわれている。それは,国籍があるとの心証,国籍がないとの心証,い 彊 ずれカニゎからないとの心証である。 「ある」という心証に達すれば,国籍を認めるが,「ない」あるいは「わ からない」場合は,却下することになる。そして,当該審判に不服がある 場合は不服申立により・上級裁判所で争っていただくことになる。 【算11間】(大阪法務局提出) 養子縁組無効や親子関係不存在確認等の調停において,家事審判法第2 3条の合意に相当する審判(以下 して,当該審判に基づき戸籍訂正申請がされることがあるが,当 部が参加せずにさ ため,申請人に対し,再度,身分関係の他方当事者(死亡している場合は, −45− 戸籍だより 第135号(平21.4) 検察官)を被告として,訴えを提起する必要がある旨の.説明を余儀なくさ れている。 この種の事案の審判について,家庭裁判所の取扱いの実情をお伺いした い。 (出題趣旨) 当事者の一部が参加せずにされた合意に基づく23条審判は,対世的効 力を有さないとされていることから,当該審判に基づく戸籍訂正申請は受 理すべきでないとされている。 したがって,こやような審判に基づき戸籍訂正申請がされた場合は,再 度,身分関係の他方当事者を被告として訴えを提起し,その審判等に基づ 顧‡ き戸籍訂正申請をしなければならない旨の説明を要することとなるが,そ の際,’申請人に理解を得られないことがあり,市区町村窓口で対応に苦慮 する土とがあるため。 (参考) 昭和53年4月6日付け法務省民二第2091号民事局長回答 昭和58年8月26日付け法務省民二第5082号民事局第二課声回答 平成11年I2月1日付け法務省民二第2565号民事局第二課長回答 戸籍誌第625号29頁,同第697号99頁 (大阪家庭裁判所回答) 本間のような2き条審判による戸籍訂正申請が受理されない理由につい て,戸籍先例では,対世的効力を有しないため戸籍訂正の資料にならない とされており,その根拠として,昭和37年の最高裁判決が引用されてい る。 ところが,その後も同種の23条審判は発せられており,それを受理で きないとする先例も重ねら・れている。 確かに23条審判の知世的効力は否定されているが,このような審判が 直ちに違法・無効であるとはいえないと考える。 これについては説が分かれており,23条審判の当事者適格について, 身分関係の当事者に限定し,23条審判を発することができるのは当該身 −46− 戸籍だより 第135号(平21.4) 分関係の処分につき当事者全員の実体的合意がされた場合に限るとする説 があり,これを実体法説という。この揚合には,当事者の一瓢のみが参加 した23条審判そのものが無効であるということになるが,他方,当事者 適格を人事訴訟手鱒と同じ,あるいはそこから検察官を除いた範囲である と考えるならば,事件の当事者が身分関係の当事者と一致するかどうかは ともかく,当事者間の合意を事件の当事者が人事訴訟を受ける権利そ放棄 したものと考え,23条審判手続については人事訴訟の簡易手続と位置づ けられる。これを手続法説といい,この場合,当該審判iま有効である。な お,昭和44年10月に示された最高裁家庭局の見解では,前記昭和37 事 のではないことになる。 このように現時点においては,いずれの説も定説にはなっていないので, このような23条審判があった場合の取扱いについては,事件を担当する 家事審判官の法解釈によるといわざるを待ないが,戸庵訂正目的であるこ とが明らかである事案にづいては,一方で家庭裁判所でも当該審判により 戸籍訂正ができないことは承知しているので,戸籍訂正申請に当たり役に 立たない23条審判をわざわざ行うことについては問題意識がある。 例えば,家事事件受付では,身分関係の当事者全員の合意が難しい場合 には巨人事訴訟の提起を促している。 しかし,郵送や窓口で強硬な申し入れがあった場合には,・受付段階で完 沸 全に申立てを排除することはゃきないので,その場合には受け付けた上 来庁した申立人に対し七は,23条審判が出てもそれは戸籍訂正の資料に ならないことを教示している。 また,受け付けられた事件については,調停手続の段階で,取下げ勧告 を行う可能性が高く,申立てがあったからといって必ず審判がでるわけで はない。しかし,双方当事者が強く合意成立を望んでいるにもかかわらず, 当該事件について調停不成立とできるかについては,家事審判官の考え方 によっては,難しいと考えられ,この場合には,合意に相当する審判をせ ざるを得ない場合がある。 −47− 戸籍だより 第135号(平21,4) 【第12間】(大阪府戸籍住民基本台帳事務協議会捷出) 特別養子の出生事項の届出人が母(実母)ゐ親権.者父となうていて,こ の特別養子縁組の届出により母となる特別養母・に父の記載がないとき(父 欄空白)の出生事項は,原則,そのまま移記されると思われるが,特別養 子縁組届をすることで戸籍の記載上,誤った記載がされていると見てとれ る。こぅいづた出生事項の記載がある事件本人(特別養子)のとき,特別 養子縁組の審判とは別に,,戸籍の記載上何ら問題点のないように,父母(特 別養父母)となる者との記載と合致した記載例’を審判書に記載できないか。 (出題趣旨) 特別養子縁組届で,特別養子となる者の出生事項中,届出人の資格氏名 が「母の親権者父0000」と記載されている場合において,特別養親の 戸籍に移記する際は,届出人の氏名を省略して「母の親権者父届出」と記 載して差し支えないとされている(平成3年1月22目付け法務省民二第 428号民事局長回答)。しかしながら,上記問題のように特別養母とな る者に父がいないときや,特別養母が特別養子の出生時成年である場合な ど いが,あたかも戸籍の記載に錯誤があると見て取れる。せっかく,特別養 子縁組の制度(民法)を利用して実子として戸籍の記載をするのであれば, 矛盾のない形ですづきであり,間違いがあると思われるような戸籍の をするのはいかがなものか。 (大阪法務局回答) 特別養子の出生事項の移記については,特別養子制度の趣旨を踏まえつ つ,戸籍制度の公示機能を損な・わないとの観点から従前の記載のとおり移 記することとされている(昭和62年10月1自付け民二第5000号民 事局長通達第6の1(2)ウ(イ))。また,特別養子の出生事項中・の届 出人の資格氏名が「母の親権者父何某届出」と記載されている場合におい ては,届出人の氏名を省略して「母の親権者父届出」と移記し,養子の実 方の者の氏名が養子の戸籍上明記されることのないよう配慮されている (平成3年1月22日付け法務省民二第428号民事局長回答)。 本間については,「母の親権者父届出」と移記した場合,養子の戸籍の −48− 戸籍だより 弟135号(平21.4) 記載と養母の戸籍の記載を併せて見れば,一見奇異な感じを与えるおそれ はあるが,届出当時の出生事項の記載は誤っていないこと,・「親権者父」 の記載を別の記載に引き直すことができないこと,また,養子の戸寓の記 載を見ただけでは,資格氏名をすべて省略しないと特別華子縁組制度の趣 旨に反するとまではいえないことから,第428号回答のとおり取り扱わ ざるを得ないと考える。 【第13間】(大阪府戸籍住民基本台帳事務協議会提出) 養子縁組事項の移記方港について (例)婚姻で新戸籍を編製する場合 夫の婚姻後の戸籍 夫の婚姻前の戸籍 縁組事項 縁組事項 養母は離婚 縁組日 養父 甲野義太郎 養母 甲野 梅子 し,氏が乙野 縁組日 となっている−。 養父 甲野義太郎 養母 甲野 梅子 → 父母欄 父母欄 養父 甲野義太郎 養父 甲野義太郎 養母 甲野 梅子 養母 乙野 梅子 (出題趣旨) 上記のように移記しているが,縁組事項欄と父母欄が違っているのは好 ましくないとし,縁組事項も最新の状態に引き直すようにとなっている。 しかし,縁組事項を最新に引き直し続けていくと,縁組当時の戸籍を調 べるとき等ややこしくわかりにくいのではないかと考えている。 処理はどのようにすべきか。 (大阪法務局回答) 配偶者が氏又は名の変更の虐出をした場合における婚姻事項中の配偶者 の氏又は名を変更後の氏又は名に■更正する旨の申出は可能であり,更正後 −49− 戸籍だより 弟135号(平21.4) に転籍等により新戸籍を編製し婚姻事項を移記する場合は,更正事項の移 記は要しないとされている(平成4年3月30日付け法務省民二第160 7号民事局長通達)。 しかしながら,同通達を本間のような養子縁組事項中の記載に類推適用 することはできないと考えるので,原則として.,縁組事項の記載を引き直 す必要はないと考える。 なお,これを引き直すとする戸籍関係図書もあることから/仮に引き直 したとしても誤りとはいえないと考える。 戸籍だより 第135号(平21.4) 匠フ匠フ匠フ巨∋巨≡7匠7匠フ巨≡7匠フ匠フ匠フ匠フ匠フ匠柁≡7匠7匠フ巨≡7匠柁≡7匠7匠:7匠フ匠7 第5回大阪法務局本局管内戸籍定例会の 開催結果について 匠フ匠フ巨≡柁≡7匠フ匠フ匠フ匠フ匠:7匠フ匠:7匠フ匠フ匠フ匠フ匠フ匠フ匠:7匠フt≡柁≡7匠フ匡:7匠フ 本年2月13日(金)に,第5回大阪法務局本局管内戸籍定例会を 開催しました。 内容としては,国籍駿及び国籍法施行規則の一部が改正され,本年1 月1日から施行されたことに伴う戸籍事務の取扱いについて説明を行い ました。 今回の改正は,国籍法第3粂を違憲とする最高裁判決を受け, 正を妻件としていた国籍取得の要件から父母の婚姻を除いたもので,基 従来準 本的には‘,日本国民から認知■を受けた子は,法務大臣への■届出により日 本国籍を取得すること 改正国籍法第3条に基づき日本国籍を取得す に届出をする必要がありますが.,これにより国籍を取得した者は一定期 間内に市区町村長に届け出なければなりません。 また,今回の改正により,虚偽の認知が増加することも予測されるこ と 市区町村の戸籍事務担当者におかれては,今回の国籍法改正の趣旨を 理解していただき,適正な事務処理を行っていただく必要かあります 後半は,市区町村から提出された協議問題「棄児について戸籍が編製 された後,当該棄児の父又は母が判明した場合の取扱いについて」検討 しました。父又は母に引取りの意思がない場合や,父又は母が引き取ら ず,出生の届出をする意思もない場合に届出義務違反として戸籍法第4 4条に基づく催告ができるか等にりいて協議しました? なお,平成20年度の本局管内戸籍定例会は,今回で終了し,平成2 1年度は,6月4日(木),10月9日(金),翌年2月5日(傘)・に 行う予定ですので,.戸籍定例会の充実 に提出し 見をお寄せいただくよう,皆様の御理解と御協力をお願いします。 一51一 (平2l・4) 電話による質疑応答事例(93) 間1【コンピュータ改製により,正字に記録した文字を誤字へ戻す申出につ いて】 コンピュータ改製の際に,氏の文字が誤字であるため牢字で記録したが, 正字で記録する旨の告知書の未着を理由に元の誤字に戻して欲しいとの要望 があったが,応じることができるか。 (回答) コンピュータ改製前に,正字で記録する取扱いを欲しない申出があった場 噸 合には,改製しない取扱いであるので,改製日以後は当該申出をすることは できない。しかし,申出をし七いるにもかかわらず,誤って改製している場 合は,改製錯誤を理由に改製原戸籍を回復せざるを得ない。 本件については,未着かどうか判明しないことから誤字へ戻す申出をする ことはできない。 参考:戸籍だより第111号37頁 間2【養子縁組と婚姻届が同時にされた場合の戸籍処理について】 A市に本籍を有する養父と,B市に本籍を有する養子との養子縁組届と養 父と同籍している子と当該養子との婚姻届が,婚姻後の新本籍地であるC市 に同時に届出された。 この場合,C市での新戸籍編製の処理と戸籍記載はどうすればよいか。 (回答) 非本籍地に養子縁組届と婚姻届とが同時に届出された場合,婚姻による新 戸籍を編製するに当たり,養子に関して縁組事項を移記する必要があるが, 届書の送付年月日が不確定なことから,移記ができないことになるため,新 本籍での戸籍記載を保留しておく必要がある。 戸籍の記載に?いては,受理日から間隔が開くことになるので,「平成年 月日△△と婚姻届出○月○日××戸籍から入籍⑳」と処理した日を明示して ー52− 噂 戸籍だより 第135号(平21.4) おく取扱いになる。また,戸籍編製日については,受理日ではなく,入籍日 となる。 参考:戸籍誌第579号56頁,戸籍だより第96号47・頁 間3【出生事項中の届出人の資格が「祖父」となっている場合の移記につい て】 昭和21年に出生した嫡出子につき,出生事項が「昭和22年12月5日 祖父届出」 届出人の資格はどのように記載すればよいか。 なお,当該戸籍は,昭和45年に婚姻により編製したものであるが,従前 の本籍地の除籍には「祖父00」と氏名か記載され,その者が戸主であっ七。 (回答) 大正3年戸籍法施行当時の出生の届出義務者は,原則として,嫡出子及び 庶子については父,それ以外の子については母とされていた。また,父母が 届出ができない琴合は,第1戸主,第2同居者,第3立ち会った医師又は産 婆,第4介抱した者とされていた(大正3年戸籍法第72条)ご 届出当時は民法の応急措置法が施行され,戸主に関する事項は適用されな くなったため,旧戸籍法第72条第3項第1号についても,その適用がなく なった。 したがって,戸主であった者は,同居者の資格でないと届出ができないの で,本件については誤記と考えられるが,その者が同居者であったかどうか は不明であることから,戸籍法第113条の規定によらなければ,「祖父」 を「同居者」に訂正することはできないので,資格を省略して,氏名のみで 移記せざるを得ない。 参考:昭和22年4月16日付け民事甲第317号民事局長通達第2 間4【外国における裁判離婚の失期通知の要否について】 アメリカ合衆国た居住する日本人夫婦につき,夫が居住地の裁判所に裁判 離婚を申し立て,その裁判が確定し,確定日から10日を過ぎてから報告的 離婚届出が提出された場合,失期通知を家庭裁判所にする必要はあるか。 ー53− 戸籍だより 弟1a5号(平21.4) (回答) 外国に居住する日本人がその国の裁判による離婚をした場合であっても, 戸籍法第77条(戸籍法第63条準用)により,裁判確定日から10日以内 J に届け出なければならないので,期限内に届出されなければ,失期通知り対 象となる。 ・なお,戸籍法第41条に規定する証書の謄本が■法定期間内に提出又は発送 されなかった場合には,戸籍法施行規則第65粂の失期通知を要しないとさ れている。 参考:平成10年7月24日付け民二第1374号民事局長通知 戸籍誌第678号73頁 間5【変倖仮名から対応する漢字への更正の可否】 戸籍に変体仮名で記載されている氏又は名の文字があるが,その文字の手 渡となる漢字に更正することができるか。 (回答) 変体仮名は仮名であり,漢字に更正することは認められない。 参考:平成2年10月20日付け法務省民二第5200号民事局.長通津 、第3の1(4) 戸籍誌第569号60頁 間6【中国人同士の離婚無効の裁判が確定した場合の届出の可否】 中国人夫婦の協議離婚が受理され市区町村に届書が保管されているとこ ろ,当該離婚につき離婚無効の裁判が確定した場合;何らかの届出をするこ とは可能か。 (回答) 外国人同士の離婚を無効とする裁判が確定しても,外国人に戸籍が存在し ないため,戸籍訂正申請をすることができない。また∴外国人には,当該離 義旨 郎m 川什 淵脚 ■ n 婚を無効とする裁判の確定につき届出義務はない。 しかし,先にされた協議離婚の届出の記載内容が実質的に訂正されている −54− 聡 戸篇だより 弟135号(平21.4) ことに・なるので,その是正方法として追完の届出が認められでいる。 したがって,判決書謄本及び確定証明書を添付させた上で,追完届を受理 することになる。 参考:戸籍誌第583号80頁,同第7・01号71頁 間7【離婚後300日以内に出生した子につき,父母(同一人)が再婚した 後,父からの出生届出の可否及び親権事項め記載について】 離婚後300日以内に子が由生し,当該出生届をする前に父母(同一人) が再婚したが,夫から62条の嫡出子出生届をす争ことは可能か。また,親 ● 権事項はどうなるのか0 (回答) 当該子は,父母離婚後300日以内に出生して.いるのセ,母の夫の子と瀧 定される嫡出子であるから,通常の嫡出子出生届をすることになる。 子の親権については,出生時には民法の規定により当然に母が行うことと なるが,父母の再婚により届出時には父母の共同親権になっている。 ⊥般に父母離婚後の嫡出子についてする「親権者母」の記載は,父母離婚 後300日以内の子のうち,親権を行う母と戸籍を異にする子について,親 権の所在を明確にする趣曽のもとに記載することとされたので,母と同籍す る子については,この記載をする必要がないとする意見がある。しかしなが ら,当該親権の記載は,親権に関する公示を明確にする趣旨のものであるか ら,母と同籍するか否かにかかわらず,戸籍事務処理上は,一律に記載する 取扱いがされているので,省略することはできないと考える。 本件については,母が単独で親権を行うのは,父母が再婚するまでの間だ けであるが,・戸籍事務処理の統一的な取扱いから省略することはでき 考える。「親権者母」と記載した上で,父母再婚により父母共同親権に服す る旨を記載することになる。 参考:戸籍時報第392号84貫 戸籍誌第525号24頁,同第597号48頁 戸籍だより第・112号60頁,同第114号25頁 −55− 戸籍だより 第135号(平21.4) 間8【戸籍謄本等の公用請求における国又は地方公共団体の機関の範囲につ いて】 戸籍法第10条の2牒2項に規定されている国又は地方公共団体の機蘭 に,特別法に基づいて設置された認可法人や政策金融機関(例えば,日本銀 行,住宅金融支援機構等)も含まれるか。 (回答) 「国又は地方公共団体の機関」とは,国においては,行政機関が保有する 個人情報の保護に関する法律第2粂第1項に定める「行政機関」.(省,委員 会,庁等の国のすぺての行政機関)のほか,国会,裁判所とされ,地方公共 団体においては・地方自治法上の機関(都道府県知事・市区町村長・執行機 関及び付属機関)のほか議会とされており,具体的には,上記法律に列記さ れてし、る。したがって,特別法に基づいて設置さ.れた認可法人や政策金融機 関は,「国又は地方公共団体の機関」には該当しない。 参考:戸籍誌第801号12頁,同第815号8貢 間9【死体検案書の死亡日時が「平成21年2月上旬頃推定」と記載されて いる場合の戸籍記載について】 死体検案書の死亡日時が「平成21年2月上旬頃推定」と記載されている 場合,戸籍の記載はどのようにすればよいか。 また,その場合の配偶者の婚姻解消事項の記載はどのようになるか。 (回答) 事件本人の戸籍に「平成21年2月1日頃から10日頃までの間」と記載 する。配偶者の婚姻解消事項は,「平成21年2月10日夫(妻)死亡」と 記載する。 参考:昭和35年1月1寧日付け民事甲第110号民事局長回答 戸籍誌第691号62頁,同第142号54貫,同第138号3 0貢,戸籍だより第108号17貫 −56一 ㊨ 戸籍だより第135号(平21.4) 間10【中国人夫が日本人妻の連れ子(嫡出子)を養子とする縁組について】 中国人夫が日本人妻の連れ子(前婚の嫡出子,10歳)を養子とする家庭 裁判所の許可審判があったが,断絶効を有する創設的養子縁組として受理し て差し支えないか。 (回答) 実質的成立要件の準拠法となる中国養子縁組法上は,養子縁組によ■り養子 と実父母及びその血族との親族関係を終了する効果があることから■,日本法 上の保護要件として,特別養子縁組の規定による家庭裁判所の許可審判が必 要になる。本件審判が断絶効を踏まえた審判であれば,届出人に断絶型の処 ⑪ 理の申出をさせ,戸掛こ「美方の血族との親族関係終了」の旨を記載するこ とになる。 断絶型養子縁組処理は,原則として,養子につき新戸籍を編製することに なるが,養子が母と同籍している場合は,新戸籍を編製するこ■となく,同戸 籍の末尾に記載することになる。 なお,記載例については,次のとおりである。 戸籍の末尾に記載する養子の身分事項欄 「平成○年○月○日国籍や国00(西暦1900年○月○日生)の養子と なろ縁組届出(代諾者親権者母,美方の血族との親族関係終了)同日記載⑳」 養子に係る従前の部分の身分事項欄 「平成○年○月○日養子となる縁組届出(代諾者親権者母,美方の血族と ● の親族関係終了)同日末尾記載につき消除⑳」 参考:平成6年3月31日仙ナ民二第2439号民事局第二課長通知 平成6年4月.28日付け民二第2996号民事局長通達 戸籍誌第619号25頁,同第620号1貢 −57一 戸籍だより 第135号(平21.4) ♪♪戸籍雑感♪♪ ∼雷局の戸籍係∼ 私が在籍する大阪法務局東大阪支局総務課戸籍係は,戸籍係長1名., 係員3名.に加え,一国籍相談員1名,事務補佐員1名.で構成されています。 当支局の戸籍係では戸籍・国籍事務を行っており,係長・係員の区別な く,一般の方からの戸籍・国籍事務に関する相談,管内各市からの戸籍 事務に関する照会,帰化事件処理,登記融門を含む電話の応対が日常の 業務です。とは言いましても,当支局では,帰化事件数が多いため係員 3名が帰化事件処理に集中してくれているのが実情です。逆に言うと, 帰化事件処理に追われるため,戸籍事務について腰を据えて勉強する機 会が少ないということです。 支局では戸籍に関する事案数が少ないことと,事務室内で戸籍事務に ついての会話が飛び交わないことにより,知識の蓄積のスピードがどう しても緩やかになってしまうのだと思います。事務室内が戸籍だけの業 務であれば,隣の人が話していることを聞いたり,いろいろ議論を重ね, 必然的に自分の肥やしとなるのでしょうが,小さな支局においてはなか なかそうは行きません。 私が支局で戸籍事務を経験して感じた事は,支局のように兼務になれ ば,.各自の意識の差がとても大きく出てしまい,自分から踏み込んで処 理に当たらないとなかなか自分の知識として蓄積されないということで す。組織は違いますが,市区町村においても総合窓口制の導入や人事異 動周期の短期化により,同じことがいえるのではないでしょうか。 当支局では平成21年度から,・これまで3か月に1度開催していた戸 籍定例会を毎月行うことになりました。出席者も今まで固定されていま したが,ざっくばらんに誰でも戸籍事務担当者として出席できるように し,法務局を含む管内各市が輪番制で司会を務めることにしました。こ れは,難解な事例の研 当者として出席し,日常疑問を抱いていること,窓口で相談を受けてい る事象の研究,意見交換などをきっかけに,組織の隔たりなく討論する ことにより,互いの知識の底上げを図ることを目的としています。出席 者全員が定例会の主体となっていこうとするものです。結果,組織の利 −58− 戸籍だより 第135号(平21.4) 益にもなると思います。毎月,情報交換することでいい関係が構築でき, 事故の防止にもつながると考えています。 毎月,有意義な時周・を過ごせる‘ように頑張っていきたいと思 す。 (東大阪支局 戸籍係長 松田博子) 戸籍だより第135号(平21.4) ☆☆☆☆☆−☆戸籍のボナヰト☆☆☆☆☆☆ ☆☆戸籍事精のIT化を白描して!☆☆ みなさんは「IT」と聞いて,何を連想され‘ますか?まず頭に浮かぶ のはインターネットではないでしょうか?インターネットが普及し始め たのは,つい10数年前の土とだったと思いますが,ネットの世界はま さに日進月歩の勢いで,もは います。ネット利用者の中には,インターネットがなければ生活できな いという,いわゆる「ネット依存症」の人も少なくありません。かくい う私もそのこ人で,とにかく か知りたいこと,欲しいものがあれば,クリックーつで手に入る世の中 に,恐怖すら感じる程です。 このような,現代のIT社会に対して現在の戸籍事務の在り方はどう でしょうか。 戸籍事務の電子化の状況として‘は,2008年12月31日時点で全 国1951市区町村のうち1503市区町村(約77%)が,戸籍事務 ゐコンピュータ化を終えています。 戸籍事務のコンピュータ化のメリッ、トとしては,大きく分けて以下の 2つに大別されます。 (1)事務処理の正確性及び迅速化の確保 コンピュータシステムにおいては,届書等から入力された情報に 基づき,それらの事項に誤りがないか及び相互の事項に矛盾がない か等を自動的に審査するとともに,入力された内容が,民法,戸篇 法等の法令に適合したものであるか否かの受理要件を自動的に判断 することから,戸籍の正確性は大幅に向上することになります。 また,コンピュータシステムにより,■単に戸籍の記載を迅速に行 えるというのみならず,受附帳及び戸籍簿への記載が不要となるこ とや,戸籍の附票事務,人口動態事務,住民基本台帳法に基づく通 知事務及び相・続税法第58条の通知等の事務処理が合理化されるこ とにより,戸籍事務の処理体制自体の迅速化が図れます。 −60− 艇 戸井だより 第135号(平21.4) (2)住民サービスの向上 紙戸籍では,大量の戸籍簿の中から特定の戸籍を検索し,取り外 し,必要な作業が終われば,再び編てつするという作業が繰り返し 行われていましたが,コンピュータシステムの下では,戸籍の検索 は酪時にできますし,編てつなどの作業をする必要がなくなるため, 市区町村側からみれば各種証明書発行に要する処理時間の大幅な短 縮が図れるとともに,住民側からみれば,・待ち時間は大幅に減少し ます。 このように,戸籍事務のコンピュータ化には,様々なメリ ㊥ 私たち戸籍事務に従事する者にとってみれば,まさに待望のシスアムと いっても過言ではありません。 一方で,住民の視点にたって考えてみると,いくら戸籍事務の正確性 及び迅速性が図られたといっても,いささか物足りなさを感じざるを得 ません。今,住民の方々が望んでいるのは,①インターネットによる各 種証明書の交付請求,②各種証明書の電子証明書での取得,③各種届書 のインターネットによる届出といったものであり,インターネットと戸 籍システムが連動する戸籍事務のオンライン化こそが求められているの ではないでしょうか。 戸籍事務に従事する方々の中には,戸籍のコンピュータ化ですら,ま だまだおぼっかない状態であるのに,戸籍のオンライン化なんて∴まだ 当 ⑪ 等における情報通信 の技術の利用に関する法律(平成1 信技術利廟法」という。)及び行政手続等における情報通信の技術の利 用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成1■4 年法律第152号)の施行に伴い,戸籍法施行規則の一部を改正する 令(平成16年法務省令第28号)が施行され,これにより,,市区町村 長は,情報通信技術利用法第3条第1項i子規定する電子情報処理組織(い わゆるオンラインシステム)を使用して戸籍事務を行うことができるこ ととなりました。また,オンラインシステムによる戸籍事務の取扱いに ついても,平成16年4月1日付け民一第928号民事局長通達に’より ①オンラインシステムによる戸籍事務の取扱い(範囲等),②オンライ ■.藍Fl −61− 戸籍だより 弄1誠号(平21.4) ンシステムの使用(手続),③オンライン届出等の処理,④オンライン システムにおける文字の取扱いといったオンラインシステムによる事務 の取扱いが示されており,もはや法的には実現可能な状況にあるといえ ます。 もちろん,戸籍事務のオンライン化については,導入に係る諸経費に おいて相当の財政負担が見込まれることから,魂在の厳しい経済状況で は,近年中の実現は難しいかもしれませんが,戸籍の各種証明書は,パ スポートや登記等の行政事務に欠かせないものであることから,戸籍事 務のオンライン化がなされて初めて,他の行政事務のIT化が実現され るものであり,▲戸籍事務に従事する者の責任として,戸籍事務のオンラ イン化の実現を要望していくことが・必要なのではないでしょうか。 (戸籍課 八木) ー62− ぜ 戸籍だより 第135号(乎21.4) ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※笈※※※欒※※※※※※※※※※※※※ 知 ’板 ※※※晃※※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※※※ お知らせ 平成21年4月1日付けで大阪法務局長及び民事行政部長に人事異動 がありましたので,お知らせします。 ● 大阪法務局腋 白石 研二 民事行政部長 田村 隆平 次号掲載予定内容 ◎巻頭言 ◎大阪法務局本局管内戸籍定例会の開催結果について ◎平成21年度市区町村戸籍事務従事職員初級者研修セミナー問題 解答 ◎電話相談事例(94) ◎戸籍のポケット ?都合により内容が変更されることがあります∼ \ −63− 戸籍だより 弟135号(平21.・4) 大阪法務局戸籍事務担当者名簿(平成21年4月1日現在) 所属庁名 職 名 氏 名 大阪法務局 戸籍課長 寺田.章 民事行政部戸籍魂 第一係長 西村 隆 第二係長 西 ひろみ 戸籍国籍相談官 中野 利彦 戸籍指導官 鹿瀬 幸博 戸籍指導官 中村 泰平 戸帝指導官 南野 健一 事務官 秋山 亜希子 事務官 槍垣 陽 事務官 八木 秀典 支局長 大平 武男 総務課長 n 益本 吉啓 民事専門官 橋本 浩和 事務官 近藤 敦史 専務官 竹原 友深 事務官 松島 理絵 支局長 石由 裕計 総務課長 春名 貴英 民事専門官 家瀬 昌幸 戸籍係長 小林 拓之 戸籍指導官 島田 健治 戸籍指導官 宗本 亜希子 事務官 波部 友博 支局長 木南 敏規 総務課長 轟藤 勤 民事専門官 戸一籍課長 阿部 挙一 土屋 佳代 戸籍係長 松田 稔 戸籍指導官 西村 好明 支局長 岡野 良彦 総務課長 森本 勉 民事専門官 寺野 津− 事務官 菅野 公子 支局長 福本 由美子 総務課長 大浦 良土 民事専門官 根木 進 事務官 山内 和子 事務官 石田 仁也 大阪法務局北大阪支局 大阪法務局東大阪支局 大塀法務局堺支局 大阪法務局富田林支后 大阪法務局岸和田支局 −64− 畷 聴 戸籍だより 第135号(乎21.の §二§ § §§§§§§ § § § § §§ § § § § § § § §§§§§§§ § § 編 後 集 記 §§§ §§§§§§ § § § §§§§§§§§§ §§§§§§§§ § § 日に日に暖かい空気を感じ,心もウキウキしてくる季節ですが,誌 友の皆様はいかがお過ごしセしょうか。暖かくなるとともに花粉症に も悩まされる季節でもあり,日々苦労されている方も多いと思います。 また,この時期は人事異動等での出会いと別れの季節でもあります。 私事ですが,今号で 「戸籍だより」の編集から離れることになりま した。情報誌を発刊することの大変さと・,出来上がったときの安心感 ⑪ を交互に毎回感じつつ,今の時代に沿った新しい情報発信方法に変換 する時期にきているのでは?と考えながらの1年でした。 ★ 寺田戸籍課長から着任のごあいさ.つをいただきました。戸籍課は 課長含め4各の新メンバーが着任し,新体希りで今年度をスタートし ますので,よろしくお願いいたします。 ★ 「平成20年度大阪準務局管区内地方法務局戸籍・国籍事務担当 者打合せ会」の戸籍関係における協議問題と協議結果(京都地方法 務局・奈良地方法務局・大津地方法務局)を掲載しましたので執務 の参考にして下さい。 ★「第59回戸籍事務研究会協議結果」 ⑪ 事芸芸?臭農芸這這…警雲警警誓昌志票 ました。 その協集結果の趣旨を要約して掲載します。 ★ 「第5回 今回は,・国籍.法及び国籍法施行規則の一部が改正され,本年1月 1日から施行されたことに伴う戸籍事務の取扱いについて説明を行 いました。 り また,協議問題「棄児について戸籍が編製された後,当該棄児の 父又は母が判明した場合の取扱いについて」検討及び協議を行いま した。定例会につきましては,本年6月4日(木)に第6回を開催 予定しておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。 ⊥65− 戸籍だより 弟135号(平・21.4) ★ 「電話による質疑応答事例(93)」 皆様から,毎回御好評いただいております「電話照会事例」を掲 載しておりますので,事務処理上の参考に御清風ください。 ★ 「戸籍雑感∼支局の戸籍係∼」と琴して,今回は東大阪支局の松 田戸籍係長に執筆いただきまし七。支局にお.ける.戸籍係は,支局の 規模等にもよりますが,総務課としての業務が広範囲にわたるため, 他の事務を兼務しながら,戸籍・国籍事務処理をするという支 特の大変な面があります。そのためにも戸籍定例会 必要不可欠なものセあり,罪実させてい ます。 ★ 駆 ヒを目指して!」と凱て 筆いただきました。戸籍事務のオンライン化は,「ネット依存症」 ではない「.アナログ人間」(私の事ですが∴。)にとっては,夢の ような話と思ってしまうのですが,インターネット社会においては, 決して夢で終わらないようにしたいものです。 (編集子 酉) §§§§§§§一§ §§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§ −66− 戸籍だより 第135号(平21.4) 配 席 表 大阪法務局民事行政部戸籍課 平成 21年 4 月1日 現在 出入口 −67− 戸箱だより 第135号(平21.4) 戸籍だより 第135号(平21.4) 目 次 ◎ 「着任のごあいさつ」 大阪法務局民事行政部戸籍課長‘寺田 章・ …1 ◎ 平成20年度大阪法務局管区内地方法務局戸籍・国籍事務担当者 打合せ会結果(戸籍関係) (京都地方法務局・奈良地方法務局−・大津地方法務局) … 3 ● ◎ 第59回戸籍事務研究会協議結果について …33 ◎ 第5回大阪法務局本局管内戸籍定例会の開催時果について …51 ◎ 電話による質疑応答事例(93) 第 二 係 …5云 ◎ 戸籍雑感 「∼支局の戸籍係∼」 松田 博子 …58 ◎ 戸籍のポケット「戸籍事務のIT化を目指して!」 八木 秀典 …60 ● ◎ 告知板(お知らせ,次号掲載予定内容等) …63 ◎ 編集後記 …65 戸籍だより 弟135号(平21.4) 着任のごあいさっ 大阪法務局民事行政部戸籍課長 寺田 章 本年4月1日付けの人事・異動で戸籍課勤務を命じられ, 過日着任いたしました。 誌友の皆様には,本局戸籍課係員,堺支局戸籍係長,岸 和田支局民事専門官と して大変お世話になりました。「仏 ● の顔も三度」を超ネる4度目となりますが,どうぞよろし くお願いいたし・ます。 現在,わが国の社会経済構造は,1’0 0年に一度という 厳しい経済危機の中で,公共サービスの民間開放が強く・推 し進めら‘れており,国民の行政に対する意識は大きく変化 し,価値観の多様化もより一層進んできています。 このよ うな中で,日本国民の国籍と親族的身分関係を登 録・公証する の正確な記録と適正な運用によ り,極めて高い信頼と評価 を得ている戸籍制度についても,様々な施策が講じられて います。 特に,個人情報の保護に関する国民の関心の高まりなど を背景と して,戸籍に記載されている個人情報の保護を, よ り一層確実なものとするこ とを目的と した「戸籍法の一 部を改正する法律」が昨年5月1日 に、施行され,戸籍の謄 抄本等の交付請求ができる場合を制限するなど,戸籍 開制度の在り方を見直すと.ともに,真実で.ない身分関係が 戸籍に登載されるこ と を防止するため,創設的届出におけ る本人確認の制度が新設されました。 −1」 戸籍だより 第135号(平21.4) 本年1月1日から施行された,・生後認知のみの者にも届 ∴出による国籍取得を可能とする改正国籍法第3条第1項の 国会審議に 防止のために特段の措置を講ずることを求める附帯決議が なされており, ここでも真実の身分▲関係の把握が強く求め られているところです。 さらに,性同一性障・筆者の性別に関する取扱いの見直し や,・申出による戸籍の再製制度の導入等々,時代の要請に こたえるべく,制度の充実が図られています。 また,電子政府実現の名の下.に,各種行政機関では事務 紗 処理の改善・合理化が図 務のコンピュータ化は,単に戸籍事務の迅速かつ適正な処 理の確保に止まらず∴これら各種行政事務の,オンライン化 の前.経とな・るものであり,■ 早期実現が急務となっています ので,引き続きその推進に御協力いただきますようお願い いたします。 今後も,様々な問題や課語が提起されることと思われま す声ミ,それら社会の要請にこたえるためには,同じ戸籍行 政に携わる市区町村の皆様と法務局が・■より ̄層連携を深 める 最後になりま.したが,皆様の日ごろの御尽力に衷心より 感謝申し上げますとともに,なお一層の連痍をお願いいた しまして,着任のごあいさつとさせていただきます。 どうぞよろしくお願いいたします。 ー2− ⑧ 戸籍だより 第1顎号(平21.4) 三言至言妄言三言至言至言妄言妄言量宣言至芸妄言夏至言重要 平成20年度大阪法務局管区内地方法務局 戸籍■国籍事務担当者打合せ会(戸籍関係) 三言妄言三重妄言重言三言至言三言三言三三三重重言宣言三言 ★ 京都地方法務局 第1間 ● (要旨) 次の各ケースの場合において,子が父又は母の戸籍に入籍するには家庭 裁判所の許可が必要か。 ①嫡出でない子が先に帰化した準, ②父母の一方が死亡しており,子が先に帰化した徽 章身の父又は母が 子と同一・呼称の氏で帰化した場合 ③父母が離婚してお・り,子が先に帰化した後,単身の父が子と同氏呼称 で帰化,その後更に母も子と同氏呼藤で帰化しており,■子が母の戸籍 に入籍することを希望している場合 (理由) ● 上記については,平成17年度の大阪局の事務担の本省回答において昭 和40年4月10日付け民事甲夢781号民事局長回答(以下「781号 回答」という)は維持されており,178.1号回答と近似した事案について は,家裁の許可を要しないとすることもあると示されているが卜781号 回答は,昭和62年10月1日付け民二第5000号民事局長通達発出に より整理されてお.り,同籍する旨の入籍届はできないとする見解もあるた め,確認したい。 (参考) 戸籍だより第121号13頁(平成17年11月)‥・781は維持 ー3− 戸籍だより 第135号(平21,4) 戸籍誌第750号74頁 2頁(平成17年1月)……781は維持 (平成15年11月)……∴ 781は維持 戸籍だより第114号1 6頁(平成16年1月)……全て整理 戸籍だより第111号5 9頁(平成15年4月)……全て整理 戸籍だ掌り第118号1 (平成・13年12月)………整理 戸箱詰第723号6 戸籍時報第502号32貢(平成11年6月)……… 全て維持 戸籍誌第667号66頁(平成9年1−2月)…… …二ご・全て整理 設題解説戸籍実務の処理一Ⅷ入籍編78頁(平成9年3月)…全て維持 【京都局意見】 ①∼③のうち,①については父に認知されていない嫡出でない子であれ 紛 ば,7・81号回答と近似した事案と考えられるので,同籍する旨の入籍届 によることが可能であるものと考える。②③については近似した事案とは いえないと考えられるので,民法第791条第1項により家庭裁判所の許 可を得て入籍届をすることになると考える また,昭和40年4月10日付け民事甲第782号民事局長回答(以下 「782号回答」という。)においては「子が先に帰化した後,父母が帰 化した場合」とあり,「父母が帰化した」とは父母が婚姻中であることを 指しているものと考‘ぇる。そのため,①∼③のケースを781号回答及び 782号回答の解釈によって家庭裁判所の許可は不要であり同籍する旨の 入籍届が可能としている戸籍専門書の見解は,そもそも782号回答を拡 大解釈,しているものと考える。子が帰化した後に父母が婚姻中に帰化した 場合は昭和62年10月1日付け民二第5000号民事局長通達発出後は 父母の氏を称する入籍屑が可能であるので,782号回答は整理されたも のとして取り扱うことが相当であると考える。 なお,戸籍誌第750号78頁には帰化者?場合には「民睦第■791条 の規定が適用されるのは,子と異なる呼称の氏を創設した場合であり,同 一呼称の氏を創設した場合には民法泰791条わ規定は適用はなく, する旨の入籍届で足りる。」旨の記述があるが,戸籍だより第121号1 4頁においての本省の見解として①∼③のような事案i;ついては「民法第 791条第1項の規定により家庭裁判所の許可を要する。」とされており, 戸籍諌第750号の記述は781号回答の事案のみに限った考え方である −4− 戸籍だより 第135号(平21.4) と思われる。 以上のことから,②③のような事案については,すべて民法第791条 第1項により家庭裁判所の許可を得て入籍届をするほかないこととなる。 【管区局意見】 (意見) ①②③とも家庭裁判所の許可を要する。 (理由) 子と離婚した父又は母が別々に帰化した場合,同一呼称の氏であったと ● しても,これは帰化の際にそれぞれが鱒を創設したものであり.,民法上の 氏が同一といえないことから,一子が父又は母の戸籍に入籍するには,原則 として民法第791条第1項により家庭裁判所の許可を要する。 なお,外国人が日本人(単身者)を養子とした後に養子と同一の呼称の 氏で帰化した場合は,同籍する旨の入籍届により養子を養親の帰化による 新戸籍に入籍させてよいとする781号回答は,現在も維持されていると 考えるが,同先例は,便宜的処理を認めた特殊事例であることから,同一 の事例でない限り,直ちに同先例の趣旨が適用されるものではない。 よって,本間については,いずれも家庭裁判所の許可を要すると考える。 ● 第2間 (要旨) 未成年の子を有する在日韓国人同士が,日本において協議離婚届を提出 した。当該離卓昏は政行離婚となるが,離女昏届に記載された親権者指定の効 力はどう・なるのか。 (理由) 離婚届に記載した親権者の定めは韓国では離婚自体が成立していないた め,親権者とは認められないとすれば,例えば日本法を準拠法とする15 歳未満の子の養子縁組の代諾や帰化申請は離婚届書記載の親権者では代諾 や申請ができず,韓国本国で離婚を成立させ親権者を定める必要があるた 一5一 戸籍だより 第135号(平21.4) め。 【京都局意見】 判例及び戸籍先例は,渉外的な法律関係において,ある問題を解決する ために不可欠の前提問題が国際私法上本間題とは別個の法律関係を構成し ている場合,その.前提問題の準拠法は,法廷地である我が国の国際私故に より定めるべきであるとしている(最高裁平成12年1月27日判決・平 成18年1月20日付け民†第128号民事局民事第一課長回答)。 本間に当てはめると,親権者指定の先決間琴である離婚について法の適 用に関する通則法第34条第2項により定め_られた準拠法(行為地汝であ る日本法)によって有効に成立している以上,その離婚が韓国法上におい ては成立していない政行離婚であ?ても,本間題である親権者の指定が親 子間の法律関係についての法の適用に関する通則法第32粂により定めら れた準拠法(子の本国法である韓国法)に基づき,適法に父母の協議によ って親権者を定めているので(韓由民法第909粂第4項),その親権者 の指定は有効であるものと考える。 【管区局意見】 (意見上 京都局意見のとおり (理由) 韓国においては,平成16年9月20日以降従来の取扱いを改め,在日 韓国人夫婦の協萬離婚についても韓国の家庭法院による離婚意思存否の確 認を受けなければ離婚の成立を認めないとする取扱いになっているが,我 が国の国際私法である法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。) 第34条第2項の規定により行為地法による方式は有効であることから, 在日韓国人夫婦の日本の方式による協議離婚は有効であると解される▲。 ー6一 \ 戸籍だより第135号(平21.4) 第3間 (要旨) 有資格者が職務上請求用紙を使用せずに自己の作成した様式により職務 上請求を行い (理由) 職務上請求をする際に,職務■上請求用紙を使用してその請求を行うこと については/戸籍法施行規則に規定があるが,それ以外にも例えば行政書 士に関しては「職務上請求書の適正な使用及び取扱いに関する規則」第3 ● 条に,職務上請求書の自己による作成及び使用についての禁止事項が規定 されている。これらの規定を根拠に不交付とできるか。 他の有資庵者にも同塵の規定があるか不由であるが,明確な禁止規定が ない場合に,・補正に応じない,または用紙の盗難等により補正に応じられ ない場合に,不交付決定までやってよいのか疑義があるため。 【京都局意見】 弁護士等の有資格者が受任している事件又は事務に関する業務を連行す るために■必要がある場合における戸籍謄本等の交付請求については,現に 請求の任に当たっている者についての1号書類の提示と弁護士等の職印が 押印してある統一請求用紙との併用によって,弁護士等請求であることの 場 確認をすることとされた(戸籍法第1。条の3第1項,戸籍法施行規則第 11条の3第4項)。 上記以外の弁護士等請求の方法については,戸籍浜及び戸籍法施行規則 に規定されていない。 したがって, 統一請求用紙及び職印を ないことから,補正に応じなければ,戸籍法第10条の3第1項,戸鱒法 施行規則第11条の3第4項を根拠に不交付決定をすることになる。 なお,日本行政書士連合会等が定めた 則を遵守する義務があるが,これを根拠に不交付とすることはできない。 おって,本来職務上請求をすべき事案を第三者請求することには,資格 者の行為としていささか疑義があるが,依頼者からの委任状を添付した上, ー7− 戸籍だより 弟135号(平21.4) 第三者請求がされたら,戸籍謄本等の交付することは可能と考える。 【管区局意見】 京都局意見のとおり 第4間 (要旨) 日本人父からフィリピン人女や子(1992年(平成4年)4月19日 生)の認知届がA市で受理され当市に送付された。添付の出生証明書中父 母の婚姻年月日が1991年(車成3年)3片4日とあるが,当時父は他 の日本人女と婚姻中であり,同年8月15日に離婚が成立し,平成9年5 月27日にフィリピンの方式により母と婚姻している。出生証明書記載の 婚姻成立年月日は重婚にあたり,フィリピン家族法35条4項により無効 となることから,その効果として嫡出セない子となるとして認知届が受理 されたが, 定がある。この場合,届書を返戻し,認知届をするまでもなく,父母婚姻 による準正子として取り扱うべきか。 (理由) フィリピン家族法第54条によれば,同第36条による婚姻取消または 無効の判決が確定前に出生又は懐胎した子は嫡出子とする規定があるとさ れていることから,重婚関係にあった子であっても,別途,フィリピンの 法制で嫡出性を否認する裁判がない限り嫡出子とすると考えるが,同第5 4条の規定は,同第36条のみに適用されるのか,すべての婚姻無効に適 用されるのか,疑義があるため。. 【京都局意見】 外国人女が生んだ子を日本人男が認知する場合,その子が嫡出でないこ との要件審査のため,子の出生当時;外国人母が独身で奉ったことを証明 する必要があるが,本件は,その証明書が添付されていない。 認知届に添付されている被認知者の出生証明書に記載されている父卑の ー8一 ¢い ・戸籍だより 第135号(平21.4) 婚姻年月日と認知看である日本人父の戸籍に記載されている父母の婚姻年 月日が相違しており,いずれの婚姻年月日が正し.いのか判別できない状態 であるが,そもそも,婚姻の証明については,婚姻証明書をもって確認す べきもゐで,被認知者の出生証明書ではなく,フィリ・ピンの官憲が発行す る婚姻ゐ証明軍の発行を受けて,認知者の日本戸籍と対比して確認すべき であり,この婚姻証明書が贋認知者の出生当時,外国人母が独身であった ことを証明する書面に■なると考える。 フィリピン法上の婚姻年月日が平成9年5月27日であれば問感はない が,平成3年3月4日婚姻が正しいとなれば,平成3年3月4日わ婚姻に ついては重婚となり,フィリピン法上無効となる。 ● フィリピン法上重婚は絶対的無効であり,嫡出の推定は受けないので, 本件認知届をすることができると考える。 (参考) 戸.籍だよサ第92号12貫 戸籍■時報第‘468号64貫∼ 【管区局意見】 (意見) 京都局意見のとおり (理由) 本間のよう−こ,出生証明書に父母の婚姻年月日が記載されている・ことか ら独身証明書を取得することができない場合には,当該子が嫡出でない子 であることが明らかであるとはいえないが,子の出生当時,日本人父は他 の日本人女と婚姻中であったことから,フィリピンの方式により婚姻が成 立していたとしても,フィリピン女との婚姻が重婚に当たり,同婚姻はフ ィリピン家族法により無効となる(同法第35条第4項,同第41条1 項)。 したがって,フィリピン人女の子は非嫡出子となり,認知届を受理して 差し支えないと考える。 ー9− 戸籍だより 弟135号(平21.4) 際臣防除医院除隊阻間脳削削闘刻司刻調剤詞 第5間 (要旨) 市区町村長が届出の不受理処分をした場合,届出人に対して受領した届 書を返戻することによって,その旨を明らかにするものとされている(大 正4年白月2日付民第1237号法務局長回答) 大津地方法務局戸籍.・国籍事務担当者打合せ会第1間の結論によれば,返 戻した届書が届出人に到達した日を不受理処分の日(効力発生の日)とす るのが相当 、離婚や縁組等,届出人が複数ある場合についてはどうすればよいか。 また,届出人が行方不明で届書を返戻できない場合はどうするべきか。 伊 (理由) 不受理処分としなければならない届出には,婚姻,離婚,縁組,離縁な ど,届出人が複数ある・ものかあり,その届出も,当事者双方の共謀により 虚偽の届出をしたもの.,当事者の一方が他方の知らない間に作成したもの など様々なケースがあるので,不受理処分の方法について確認したい。 また,返戻すべき届書が届出人に到達しない場合もありうるが,その場 合不受垣処分がどうなるかについて平成18年度打合せ会の結論では触れ られていないので,これについても確認したい。 (参考) 戸籍だより第126号30貢,同第110号38貫 戸籍誌第598号42貢 【京都局意見】 市区町村の窓口で届書類を受け付けたときは,その年月日を記載し,そ の届書が適法なものであるか香かを垂査して,適法なものと認めたときは, これを「受理」(受付を認容する行政処分)し,不適法と認めたときは, これを「不受理」(受付を拒否する処分)とする。 市区町村長は,原則として届書の記載と添付書類などにより,要件具備 の有無を審査すれば足り,届出人に身分行為意思があるかどうかを現地調 −10− 戸籍だより’第135号(平21,4) 査などして確かめることを要しない。 戸籍法上,受理又は不受理処分の際には,文書を交付する扱いにはなっ ておらず,不受理処分をする場合,届出人に対し不受理処分を昔知する必 要があり,また,届書を返戻する取扱いがされているが,不受理処分は; 届出人にとって不利益処分であるので,行政処分の一般原則に従って,届 出人に告知した日,すなわち届書を直接返戻した日を不受理処分の日とし て取り扱うのが相当であるとされている。 したがって, ◎前段については,見出人が複数ある時は,最後に届出人に告知した日を もって ◎後段については,届出人が行方不明で届書を返戻できない場合は,当該 市区町村役場の掲示板に,不受理の対象となった届書を申出があればいつ でも返戻する旨を公示し,当該申出がなければ,公示期限の満了日の翌日 をもって,「不受理処分の日」として処理して′も差し支えないのセはない かと考える。 (参考) 戸籍だより第Ⅰ26号30頁,第110号38真 実務戸籍法75貢∼ 戸籍誌第98号4・2貢∼,▲同第546号56頁∼ 注釈司法書士法(第三版)454頁∼ 行政手続法(18年改訂版)199頁∼ 大正4年8月2日付け民第1237号法務局長回答 昭和33年1月8日付民事甲第20号民事后長心得回答 【管区局意見】 (意見) 届出人が複数ある場合は,任意の1名に返戻すれば足りる。 いずれの届出人にも返戻できない場合は,市区町村におい七保存する。 (理由) 市区町村長は,届書を審査した結果,不受理処分をする場合には,受理 −1■1− 戸籍だより 弟135号(乎ヱ1.4) の拒否という消極的行為によって行い,却下決定書を交付するというよう な積極的な処分はしない取扱いとされている(大正4年8月2日付け民第 1237号法務局長回答)。 したがって,複数の届出人がいる場合でも,提出された届書は1通であ るから,届出人のいずれか一人に返戻することになる。 なお,行方不明等でいずれの届出人にも返戻できない場合は,市区町村 において「戸籍に関する雑書類つづり」に編てつし,保存する。 第6間 (要旨) 特別養子から,実親の戸籍謄本(特別養子縁組当時)の交付請求がされ たと■き,縁組当時の戸籍に異動がなく美観がその戸籍に在籍している場合 でも,これに応じることができるか。 (理由) 特別養子縁組の・成立によって,実父母との法律上の親子関係が終了して =.⊥﹂. いるため,謄本の交付請求には応じられないが,特別養子に係る抄本の交 ⊥ 付には応じられると考える。一方,戸籍に記載されている者本人からの請 ■.−−.LL.−r1 求であ■り,謄本の交付に応じることができるとする意見もあるため。 【京春局意見】 ︼ 1﹂トト■■■l−一■−t−﹂.1.. 戸籍法第10条第1項の規定による,戸籍に記載されている者(そ?戸 籍から除かれた者を含む)からの請求であるから,交付に応じられる。特 別養子縁組をした者に対して,特に公開を制限する規定がないことから, 通常の戸籍謄本等の請求があった場合.と同様に審査し,謄本,抄本と区別 することなく処理せざるを得ないと考える。 なお,特別養子縁組後に実父母が転籍等により戸籍を異動した場合につ いては,・実父母との法律上の親子関係は終了しているため,戸籍法第10 条第1項の規定による本人請求はできない。 ー12一 戸籍だより 第135号(平21.4) 【管区局意見】 京都局意見のとおり 第7間 (要旨) 日本人が外国人の子を認知する場合,通常,子の出生当時,母の独身証 明書等,子が嫡出でない子であることを証する.書面が必要とされている。 母子の国籍がフィリピンの場合,本国官憲が発行した出生証明書の父欄に 「UnboⅦl」とある場合は,非嫡出子と認定することはできないか。 (理由) フィリピンの場合,賭出子の親子関係は民事登録簿に記載された出生記 録により証明される(家族法第172条第1項第1号前段)が,民事登録 官は申告に基づいて登録を行うにすぎず,事実関係の確認は行っ七いない ということで,本国官憲の証明に加えて,独身証明書を添付させるとある (戸籍だより第111号58頁)。できない場合は申述書の添付であるの で,そこまで要求する理由が不明確である。父欄に「U血own」とある場 合は,非嫡出子と認定できると考える。 国籍法の改正で,認知が増加する可能性もあり,再考する必要がある。 (参考) 戸籍誌第708号58貢,同第764号7。2頁,同第662号8貢 戸籍だより第60号30頁,同第92号12頁,同第111 【京都局意見】 フィリピンの嫡出子の華子関係は,民事登録簿に記載された出生記録に より証明される(家族法第172条第1項第1号前段)が,・民事登録官は 出生の申告に基づいて登録を行うにすぎず,事実確認は行っていないとわ ことである。そのため,父母が婚姻関係にない子が嫡出子として登録され たり,真実の牢でない者が父として登録されることや,婚姻している女が 出産した子について,夫以外の者を父とする登録がされることもあり得る −13− 戸籍だより 第135号(平21.4) ことになると奉る(戸籍誌第662号8頁∼)ことから,鱒生証明書の父 欄の記載のみで,子が非嫡出子であると認定することは,できないと考え る。出生証明書の父欄が空白又はU血ownと記載があっても,子の出生当 時の母の独身証明書を添付させることになり,独身証明書が得られない場 合については,他に証明する方法がないことから,申述書の添付となる。 なお,国籍法の改正で衰知が増加する可能性も考えられるため∴より一 層,要件審査については慎重にされるべきである。 【管区局意見】 京都局意見のとおり なお,申述書のほか,現在独身であることの証明書,パスポート,外国 人登録原票記載事項証明書等を添付させる必要があると考える。 ・第8間 (要旨) 妻が死亡除籍となった後に戸籍がコンピュータ化され,妻がコンピュー タ声帯に移記されなふっ七ことについて,夫から,「国の施策で一方的に 妻を移記しなかったことにより,これまでの私たち夫婦の人生が引き裂か れた思いであり,今も妻の遺影に手を合わせている子ども達の気持ちを考 えると,この戸籍の状態を説明することもできないし,大きな人権問題だ と思っている。」として,また,戸籍法施行規則附則(以下「附則」とい ¢ う。)第2条第2項(「‥・省略することができる0」) はないとして妻をコシピュータ化後・の戸籍に移記するよう強く求めてきた ものである。 このように,戸籍のコンピュータ化以前の死亡により除籍となった妻や 子について,輩頭者等の申出により記載する取扱いはできないか。 (理由) コンピュータ化による戸籍の改製に関する取扱いについては,附則第2 条第2項後段の規定.により,戸籍法施行規則(以下「規則」という。)第 37条ただし書きの各号に掲げる事項はコンピュータ化による改製戸籍に ー14− 戸籍だより 第135号(平21.4) は移記されない取扱いであり,戸籍のコンピュータ化以前にすでに死亡・ 婚姻等で除籍となっ■た看で,戸籍の筆頭に記載された者以外は移記されな い。 ところで,附則第2.条第2項(「省略することができる。」)の規定を「省 略しなければならない。」と・すると・移記作業によりコンビータ入力し た穣,頗姻や死亡により除籍になった場合,一旦人力したものを逐一削除 しなければならないこととなり,そ.のまま移記されることもやむを得ない とされていることから,特に除籍者の移記を真っ向から否定する必要もな いと考えられ,死亡した配偶者・子の範囲において申出による記載を認め ても差し支えないものと■思料する。 【京都局意見】 戸籍の改製の移記事項に より,規則第37条ただし書に揚げる事項を省略することができるとされ ている。この取扱いは,戸籍の改正作業の迅速化と戸籍の簡明化及び経費 め節輝等を考慮しているものであると考えられ,また∴転籍等により新戸 籍を編製する場合の取扱いとも整合する。この「省略することができる」 という表現方法を取っているのは,戸籍の改正作業着事後に,戸繹から消 除された者等に関する事項について,これを逐一コンピュータの記録から 消除することは,事務煩さになり多大.な作業を要すること・になるため,こ のような場合にはそのまま移記してもやむを得ないものとして,こういっ た含みのある表現となっ七いることから,それ以上に範囲を広げることは 相当でないと考える。 なお,改製の際の移記事項に限ちず,転籍の際の移記事項も‥含めて,申 出による移記が可能とする見解が示されない嘩り,便宜的な取扱いも認め られないと考える。 【管区局意見】 京都局意見のとおり −15− 戸籍だより第135号(平21.4) ★ 棄■良地方法務局 第1間 (要旨) 寧母が離婚した後,成年被後見人である子につき,離婚後の母の戸籍に 入籍させるため,成年後見人である母が民法第7白1条第1項の許可を得 た場合,同母を届出人とした入籍届を受理して差し支えないか。 (理由) 実務上,成年後見人は成年被後見人の転籍届又は戸籍法第77条の2の 届出をすることができないとされており,所間の入籍届も同様に解するも のと思われるが,成年後見人が成年被後見人の氏変更の許可を得ながらも, 成年被後見人が本心に復さない限り入籍の届出ができないとすることは現 実的でなく,かつ,入籍させることで成年被後見人に不利益が及ぶもので はないと考えられるため。 【奈良局意見】 戸籍実務上,成年後見人は,成年被後見人の転籍届又は戸籍法第77条 の2の届出はできないこととされている。これは,本人の意思によらず成 年後見人の悪意により届出される危険と成年後見人の代理権がこれら届出 l 行為た及ばないことを理由とするものであり,一義的には,所問の入籍届 についても同様のことがいえるものと思われる。 し鱒ゝしながち,成年後見人は成年被後見人の財産管理のみ■ならず日常生 活の面倒や療養看謹を行うのが一般的であるほか(民法第858条もその 際の成年後見人の注意義務を規定している。)・,財産管理行為に際して成 年被後見人の戸籍取得の必要もあり得るのであっ.て,・広い意痍で戸籍の管 理も財産管理行為の一環と考えられなくない。さらに,氏変更の家庭裁判 所の審理においては,成年被後見人の利益等について十分な酉己慮がされ許 可が決せられるのであって,成年後見人の悪意に陥る危険も想定し難い。 加えて,創設的届出とはいえ,婚姻等の身分行為と異なり,戸籍の編製・ ー16− 戸籍だより第135号(平21.4) 異動を目的としたものであり,悉意の対象たるべき性質のものでもない。 以上のことから,成年後見人の代理権の範ちゅうから形式的に逸脱する ものの,成年後見人の現実的な機能等に着眼し,例外的に入籍届の届出資 格を認めても差し支えないものと考える。 【管区局意見】 (−意見) 母(成年後見人)を届出人とする入籍届は受理することができない。 (理由) 戸籍法第32凛では,成年被後見人がその法定代理人の同意を得ないで することができる行為については,成年被後見人が自ら届け出なければな らない旨規定しており,父又は母の氏を称する入籍届は,届出によって効 力が生じる創設的届出であり,法定代理人の同意を必要としないものであ 早ことから成年被後見人が自ら届け出なければならず,成年後見人の代理 は認められない。 したがって, っても, 民法第7 当該許可のみによって効力が生じるものではないから,成年後見 人からの入籍届は受理すべきでない。 第2間 (要旨) 夫婦の一方が,他方の婚姻前の美方戸籍を取得しようと戸籍法第10条 1項による本人等請求をする場合,配偶者としての請求資格が市役所保管 の戸籍によ・り判明しないときは,請求者に対し疎明資料を提示させるべき か。又は,市役所において関係市町村に照会・して確認すべきか。 (理由) 改正戸籍法及び通達においては,請求の任に当たる者の本人特定(本人 確認)及び権限確認については明記するものの,本人等請求,公用請求及 び弁護士専請求における請求主体及び資格の確認について言及されていな −17− 戸攣ギ掌り二′=.利鱒号(平2L4) いため,いかに取り扱うべき疑義があるため。 【奈良局意見】 本人等請求,公用請求及び弁護士等請求においては,請求資格が法定さ れているため,請求に当たってはその確認が必要になるが,確認方法につ いては何ら規定等が存在しない。もっとも,公用請求や弁護士等請求につ いては,請求の任に当たる者の本人特定女 は確認できる(公用請求書又は資格者証など)ので問題ないが,本人等請 求にちいては必ずしも明らかでない。 そこで 保管の戸籍でそれを確認できない場合に,請求者がその資格を自ら証明し 軒 なければ不交付決定をすることができるかが問題である。 しかし,法令に請求者の疎明責任の規定はないものの,その資格を名乗 → って請求する以上,.当然に請求者に自己疎明責任があると解せられ,これ に応じない場合には不交付決定して差し支えないものと考えられる。 / il イ なお,東京法務局の質疑応容によれば,請求者に証廃させることなく市 町村自ら確認しても差し支えないこととされているが,一の市町村の取扱 いは他の市町村の春日トラブルの原因となり得るので,「律請求者に証明 ∵ 〓〓 責任を負わせるべきものとして取り扱うべきである。 (参考) T 戸籍誌.第815号126貫 . . ■ 【管区局意見】 声H 湖川 代仙 (意見) 原則として,.請求者に疎明資料の提示を求めるべきであるが,便宜,本 籍地の市区町村長に電話等によっt確認しても差し支えない。 (理由) 戸籍に記載されている者の配偶者,直系尊属又は直系卑属であることの 確認は,原則として,請求者に戸籍謄本筆(住民票でも可)を提示させる 方法によってすることになるカミノ戸籍謄本等の交付請求を受けた市区町村 一18一 戸籍だより 第135号(平21.4) 長において,便宜,請求者の本籍地の市区町村長に電話等によって確認し ても差し支えない。 第3間 (要旨) 日本人A男と養子縁組継続中に外国人B男と婚姻した日本人C女が,婚 姻後1年を経過して,戸籍法第1−07条第1頑の氏の変更により夫である B男の氏を称したが,その後に養親A男と離縁した場合,c女は縁組前の 氏に復すると考えるべきか否か′。 (理由) 上記事例において,戸籍法第107条第2項による氏の変更をしている 場合について,当_然に縁組前の民に復するとする原則に対し,現に称して いる外国人配偶者の氏は復しないとする説があるが,いずれを正解とすべ きか。また,家庭裁判所の許可を得て変更した氏についても同様に解すべ きか疑義があるため。 【奈良局意見】 民法上,養子は縁組によって養親の氏を称するが,婚姻によって.氏を改 めた者(以下「改氏者」という。トは,婚氏を称する問は華親の氏を称す ることはないとされ(・民法第810条),養子は離縁によって縁組前の氏 に復する(同法第8‘1 間は婚氏が優先する取扱いである。 そこで,所間のケースを考えると,C女が称する氏は呼称上の氏である から,C女は離縁により縁組前の氏に復すると解され,C女が改めてB男 の氏を称するためには,再度氏変更の手続を要することになる。 しかしながら,配偶者が日本人であれば同女は復氏しないにもかかわら ず,配偶者由男が外国人であるがゆえに復氏するとい,うのは,余りにも不 合理であるから,C女は,B男の氏を称する限り復氏しないと解するのが 相当である。・これに対しては,昭和■25年来積み重ねられた幾多の先例に 反するとの意見もあろうが,国際結婚の場合には離縁によって民法上の氏 一19− 戸籍だより 第135号(平21.4) のみが復氏し,婚氏相当である呼称上の氏は復氏しないと解することが可 能で卒る。また,そのように解しても, と考えられる。 なお,所間は,・戸籍法第107条第1項による氏変更であることを一つ の問題点としているが,同条第2項との差異は,婚姻成立後6■月を経過し た場合には必ずしも婚姻生活と氏変更の関連性が明らかでないことから, 裁判所の判断を介することとしたものであり,単なる手続上の差異にすぎ ず,所周の結論に影響するものではない。 (参考) 戸籍誌第584号79貫,同第678号4 【管区局意見】 (意見) C女は,A男との離縁により縁組前の氏に復する七考える。 (理由) 戸籍法第107条第1項による氏の変更は,呼称上の民の変更であり, その後の身分行為に伴い民法上の氏に変動が生じる場合にまで影響を及ぼ すも.のではないと考える。 したがって,本間において,C女とA勇が離縁した場合には,民法第8 16号第1項の規定により,,C女は縁組前の氏に復することになる。 第4間 (要旨) 配偶者のいない成年者が家庭裁判所ゐ許可を得て父母の氏を称する入籍 届をする場合,その他欄に新戸籍を編製する旨の申出をしたときは,直ち に薪戸籍を編製して差し支えないか。 (理由) 所間のケースでは,従来,事件本人は,父母の氏を称する入籍届により −20−− 餅 戸籍だより−弄135号(平21.4) 父母の戸籍にいったん入籍した後に,分籍届をしなけれげ新戸籍を編製す ることができないが,直ちに新戸轟を編製しても戸籍の連続性を損なうも のではないこと,さらには戸籍の経済性の観点や国民の強い要望があるこ と等にかんがみると,上記取扱いを認めても差し支えないものと考えられ るため。 【奈良局意見】 民法第791条は氏の変更は家庭裁判所の許可を得て戸籍の届出をする ことを効力要件とし,これを受けて声籍法第98条は入籍届について規定 して}、る。いずれも夫婦及びこれと氏を同じくする子を戸籍編製単位とし (戸籍法第6条),父母の氏を称する子は父母の戸籍に入る(同法第18 条第1項)という戸籍の原則を大前提とするものである。し.たがって,自 己の氏を称して婚姻した者が父母の氏を称する場合には新戸籍を編製する こととされ(戸籍法第20条),例外的に民法第794条第4項の従前の 氏を称する場合には新戸籍編製ゐ申出.が認められる(同法第19条第2項) などしている。 ところセ,所間の場合,成年者たる事件本人が単身戸籍の状態で父母の 氏を称することを希望するのであれば,入籍届及び分籍届の双方を要する ことになり,迂遠かつ不産済な手続であろうと思われる。また,直ちに新 戸籍を編製する る場合等と同様に,事件本人の従前戸籍及び新戸籍の身分事項欄に父母の 導 氏を称する入籍届出による入除籍の旨を・記載するなラば,戸籍の連続性に 特段の影響も考えられない。さらに,事件本人の氏と.父母の氏の同一性は, そうしキ戸轟の記載をもって公示することが可能である。 以上のことからすれぼ,所間の取扱いを認めても差し支えないものと考 える。 (参考) 昭和24年9月15日付け民事甲第2042号(2)第375号民事局 長回答 ー21− 戸籍だより 第135号(平21.¢ 【管区局意見】 (意見) 入籍届により直ちに新戸籍を編製することはできない。 (理由.) 民法第791条第1項による氏の変吏の手続は,家庭裁判所の許可を得 た上,入籍の届出によることとされているが,その趣旨は,親子同一氏の 原則及■び親子同一戸籍の原則を可能な限り貫くため,当初から親子が嘩を 異にする場合や,後発的に親の氏が変動することによって親子の氏が異な るに至った場合に,子の氏をその異寧る親の氏と両十の氏を称することが できるとともに,同一戸籍に入籍するこ と解される。 したがって,入籍届により子につき直ちに新戸籍を編製することを認め ることは相当ではないと考える。 第5間 (要旨) 未成年者の後見開始届が未成年者の本籍地(A市)に届けられ,後見人 の本籍地(B市)へ送付された場合,B市ではどのように処理すべきか。 (参考) 昭和24年9月28日山口地方法務局徳山支局管内戸籍事務協議会決議 戸籍時報平成11年11月特別増刊号.87頁【間256】 (理申) 上記事案は送付不要(親権変更届等も同様)と考えるが,市町村によ り取扱いが統一されていない。送付を受けた市町村は,本籍人とし{受 理している市町村もあれば,いったん受理し,事後措置により戸籍記載 不要つづりに編綴している市町村も見受けられる。非本籍人扱いするこ とも可能と思われるが,いか‘に処理すべきか。 ー22− 戸籍だより 第185号(平21.4)・ 【奈良局意見】 後見開始届については,後見人が届出人と■なり,被後見人を事件本人と して当該被後見人の戸籍にその旨記載されることになる。 したがって,後見人につき何ら記載を要せず,B市は受理地でなく,記 載を要する本籍地でないので,記載を要しない届書が送付されてきたこと になる。 原則返戻すべきであると思うが,受付帳ではなく,発収簿にその旨を記 載し戸籍記載不要綴りに編綴すべきであろう。 ただし,当該取扱いをした後,届出人がB市に記載事項証明を請求した 場合,応じることができるか否か疑義が生じる。 (参考) 戸籍時報特別増刊号平成11・年11月号87頁 【管区局意見】 (意見) A市に返戻すべきである。 (理由′) 未成年者の後見開始届が後見人の本籍地であるB市に届けられた場合 亜 は,後見人について戸籍の記載を要しない土とから,未成年者の本籍地で あるA市に送付の上,B市においては非本籍人分として処理することにな るが,本間では当初からA市に届出がされているため,B市に送付する必 要がないことから,非本籍人の扱いをする必要もないため,返戻するのが 相当である。 なお,返戻しない場合は,発収簿に記載の上,経書類に編てつすべきで ある。 −23− 戸籍だより 第1a5号(平21.4) 第6間 (要旨) 戸筆法第10粂第1項による戸籍謄抄本の本人等請求の場合,法務局の 許可申請によって訂正除籍されている者は,同条の「その戸籍から除籍さ れた者」に該当しないとされているが,戸籍法第113条により訂正除籍 された者は該当するのか。 (理由) 戸籍法第10条第1項による戸籍謄抄本の本人等請求の場合の「戸籍に 記載されている者」とは,戸籍の「名」欄に記載さ・れている者(当該戸籍 吏:ミ から除籍された者も含む)・を指すが,戸籍から除かれた看であっても,そ の者に係る全部の記載が市町村長の過誤によるものであ 法務局長の許可により訂正されている場合は,戸籍から除籍された者に当 たらないとされているが,・訂正の実質的要件である戸籍の記載が「法律上 許されないものであること」又はその記載に「錯誤」があることはi戸籍 法第113条の規定による訂正と同意義であるにもかかわらず,訂正除籍 されている者が戸籍法第24条第2項の規定に限定されているため。 【奈良局意見】 戸籍法第24条第.2項の訂正は,申請による訂正の補充的な方法である から,戸籍の記載誤りが戸籍面上又は戸籍面キ届書その他の戸籍関係書類 の対比上明白である場合に限り許されるという制約がある。また,届書の 不備に基づいて生じた記載の誤りは,その不備が市町村長の形式審査によ っても容易に発見できる場合であっても∴戸籍法第24 ず,原則として申請により訂正すべきである。 以上のように戸籍法第24条第2項により消除された者は,当該戸籍に 当然に記載される看では.なく,訂正された記載に応じた事実上の生活実態 が認められる蓼合は想定し難いことから,そのような者に請求する権利を 認める必要がないことになる。 これた対して戸籍法第113条による訂正は,上記のような判断が当然 にできないので,戸籍から除かれた者に含まれ,請求できることになる。 −24− 戸籍だより 策135号(平21.4) (参考) 戸籍訂正・追完の手引き8貫以下 戸籍誌第815号3∼4貢 【管区局意見】 (意見) 戸籍法第113条による訂正によって戸籍から除かれた者は,同法第1 0条第1項に定める「戸籍から除かれた者」に該当する。 (理由) 鶏 戸籍法第10条第1項は,戸籍に記載された者は戸籍の謄抄本の交付請 求をすることができる旨規定し,それは戸籍から除かれた呑も含むとされ ているが,「その■者に係る全部の記載が市区町村長の過誤によらてされた ものであって,当該記載が第24条第2項の規定によって訂正された」者 は,これに当たらないとされている。・これは,市区町村長の過誤を理由に 消除された者は,訂正された記載に応じた事実上の生活実態が認められる 場合は想定し難く,そのような者が請求の痙虫を明らかにすることなく当 該戸籍を利用することにっいてをま,社会通念上一般に許容されているとは いえず,また,この場合は戸籍に「誤記」との表示がされるから,戸籍記 載に対応した事実上の生活実態が認められ得る他の戸籍訂正の場合と戸籍 場 面上も区別することができることから・除されたものと考えられる0 ところが,戸籍法第113条の規定に基づき家庭裁判所の許可を得て, 当事者から戸籍訂正の申請がされ,当該申請により戸籍の記載が消除され た場合には,戸籍記載に対応した事実上の生活実態があるかどうかは,戸 籍面上明らかではなく,過去の身分行為等についてこの戸籍の記載のみに よって公証される場合もある。 よって,戸籍法第113条に基づく戸籍訂正により除籍されている者で あっても,同法第10条第1項による戸籍謄本等の交付請求をすることが できる。 ー25− 戸籍だより 第1写5号く平21.4) ★ 大津地方法務局 第1間 (要旨) 日本の方式で日本人A男と協議離婚した韓国人女と日本人B男との創設 的婚姻届が提出された.。 韓国人女は本国に離婚登録をしていないため,韓国人女につき本国の独 身証明書が発行されず,前夫との婚姻事項が記録された婚姻関係証明書, 基本証明書,離婚届記載事項証明書,前婚の婚姻届記載事項証明書及び申 述書が添付されている。 受理せざるを得ないと考えるがどうか。 (理由卜 準拠法を日本法として離婚が有効に成立していれば,当事者の本国法上, 離婚が成立していない場合であっても,後婚は重婚には当たらなJ、と一され ているが,政行離婚にならない場合は,本国に離婚登録をさせた上で本国 の権限のある官憲が発給した独身であることを証する書面を添付させるべ きと考えられることから疑義がある。 (参考) 戸籍誌第786号67貢 【大津局章見】 (意見) 受理せざるを得ない。 (理由) 渉外的な婚姻の創設的届出において,外国人当事者の本国法が準拠法と なる場合には,本人自らが本国法上の実質的要件を具備していることを, 本国官憲が発給する証明書により立証すべきである。 ー26− 戸帝だより 第135号(平21.4) 本件の場合,本国に離婚登摩をする・ことが可能と考えられることから, 身分関係を整序させ本国官憲が発給した独身証明書を添付するように指導 すべきである。 しかしながら,準拠法を日本法として離婚が有効に成立していれば,当 事者の本国法上,離婚が成立していない場合であっても,後婚は重婚には 当たらず,添付書面上前婚が解消していることが確認できれば,不受■理と することはできない。 【管区局意見】 (意見) 離婚届出後,現在も独身であるかどうかは,離婚届書の記載事項証明書 では判明しないので,管轄法務局に受理照会させた上で,婚姻要件を具備 していることが確認できれば,受理して差し支えない。 (■理由) 在日韓国人夫婦の日本の方式による協議離婚は政行離婚となるが(平成 16年9月8日付け民事局民事第一琴補佐官事務連絡),本間においては, 韓国法上も離婚が有効に成立してい・ると考えられるので,原則として韓国 人女が本国におい 明書の記録により周女が独身であるか否かについて審査するべき しかしながら,韓国において離婚の登録がされていない場合であっても, 穆 当該離婚は,通如法に定められた日本法により有効に成立してお.り,後婚 は重婚には当たらないので,当該離婚届出後,現在も独身であることが確 認セきれば,受理することができる。 したがって,離婚届出後,現在も独身であるかどうかは,離婚届書?記 載事項証明書では判明しないので,管轄法琴局に受理照会させた上で,婚 姻要件を具備していることが確認できれば,受理して差し支えない。 第2間 (要旨) ブラジル人を事件本人とする創設的婚姻届において,備考欄が空欄であ ー27」 戸籍だより 第135号(平21.4) る発行後6か月以内の出生証明書.を独身を証する書面とみなして差し支え ないと考えるがどうか。また,本国公証人発給の宣誓書について上本国官 憲の公印認証がない場合であっても,積極的に添付を求めるべきと考える がどうか。 (理由) 最近,上記出生証明書の備考欄が空欄であったため取り直しを指導した ものの,何回取り直しても空欄である旨の記載がなされないという理由で の受理照会事案が増えており,この場合,事件本人から別途独身であると 認めるに足りる資料の.提出がなされなければ,受否の判断は事実上困難と なる。 ところで,当局が在名古屋ブラジ 館からは,「出生登録原簿に記載されている婚姻に・関する事項は省略でき ず,出生証明書の備考欄が空欄であっても,婚姻事項がない限りは独身で あると判断できる。また,備考欄記載については本国各登記所により対応 が異なる。」旨回答を得ている。 そこで,ブラジル人登録人口が年々増加している滋賀県下においては, 今後も同種の事案が増加することが予想される土とから,出隼証明書甲取 扱いの整理・統一について検討する必要があるものと考える。 また,本国公証人発給の宣誓書.にちいて‘は,本国官憲(在日領事館等を 含む)による公印認証がないことを理由に,これを届出人に返戻して申述 書に与る対応を■している市町が見受けら.れる。 そもそも宣誓書は,虚偽の宣誓による本国法上の罰則規定があることを 踏まえ,事件本人が独身であることの心証を得るための重要な資料として 位置付けられているものであり,公印認証がない場合であっても様式等に 特段の疑義がない限り,本国公証人発給の宣誓書を求めるよう指導すべき と考える。 【大津局意見】 (意見) 前段,後段とも提出庁意見のとおりと考える。 −28− rた・■ヲ、王壬′巳−−已−・−−、・・=・三言∼主・・・さら 戸籍だより 弟135号(平21.4) (理由) ▼−をー・12しノ ー − ・ ち − ヒ J − ︰ ; ニ ユ ー r ミ ︻ J 一 王 事 ⋮ と 妄 呈 − ・ ・ 1 ! † ! 1 ⋮ ≦ き L ■ ヱ ; ・ . さ き 一 ゴ 膏 皇 1 出生証明書について 出生登録原簿に付記事項がないことを明確に証明させるため備考欄に 「Nada consta(何も記郎ない)」等の記載がある出生証明書を提出させることが 望ましいが,出生登録地の身分登録機関の発行する「出生証明書」・には, 全ての婚姻又は離婚事項が付記されることから,備考欄が空欄であること の一事をもって独身を証する書面に当たらないとするのは妥当ではなく, 他に宣誓書又は宣誓書が得られない旨の申述書の添付があれば,それらの ● ⋮−■ト■仁さ⊇さ吉すユ委r♭き巨;≠−室きd∋■E■−■き¥ヒ■至tど′︻≡f■き豊吉≒i′・・■⊇′葺き・暮雪lF一竜−−トヨ 書面をもって婚姻の実質的要件を具備していると解されるので市町村限り で受理して差し支えない。 2 ■宣誓書について 宣誓書は当該ブラジル人が婚姻に障害がないことを確認する重要な書証 であることから,第一義的に・添付を求めるべき書面である。 宣誓書が得られない場合に,申述書をもってこれに代える取扱いは,ブ ラジル国の制度上やむを得ない事情が認められ,当該ブラジル人に不可能 を強いることができない場合に限り認めるべきである。 外国公文書の認証は本国の権限を有する官憲によって発行されたもので 呈⋮ト⋮⋮言古1三三8Jき慶一⋮・、!〃1 吉J← あることを担保するため.に必要なものであり,外交又は領事機関・による認 証を受けた宣誓書を提出させることが望ましいが,書面の作成名義や体裁 に疑義がなく先例等で示されたものと同一であると認められれば真正な書 ● 面云判断して差し支えない。 【管区局意見】・ (意見) 前段,後段ともに大津局意見のとおり (理由) 在日ブラジル人が独身であることを証する書面は,出生登録地の身分登 録機関の発行する1婚姻の旨の付記のない,又は離婚の旨の付記のある「出 生証明書」であって6か月以内に発行されたものとされている(平成14 年6月19日付け民事局第一課補佐官事務連絡,戸籍誌第733号68 −29− 戸籍だより 第135号(平21.4) 頁)。 当局管内では,出生証明書の備考欄が空欄である場合,備考欄に記録が ないのか,それとも備考欄の記録が省略されているのか,明確でないこと から,備考欄に付記がある出生証明書の取■り直しを指導しているところで ある。 ブラジル本国の身分登録機関の出生証明書に由する取扱いが,提出庁の 理由のとおりであれば,出生証明書の備考欄が空欄であっても,当該証明 書をやって,独身であることを証する書面として取り扱って羞し支えない と考えるが1ブラジル本国での取扱いが確認セきていないので,現段階で は,備考欄が空欄である場合は,備考欄に付記のある証明書ゐ取り直しを 指導すべきである。 なお,取り直しても付記のない場合は,その旨の申述書を添付させた上, 市町村長限りで受理して差し・支えない。 また,ブラジル大使館等が認証(発給)した宣誓書が得られない場合は, 宣誓書に代えて「宣誓書が添付できない.旨の申述書」の提出を求める取襲 いであるが(戸籍誌第756号42頁,戸籍だより第116号‘26貢), 本国公証人が発給した宣誓書が提出された■ときは,本国官憲(外務省又は 大使館等)の再認証が得られない瘍合であっても,宣誓書の作成者や様式 等から判断して疑義がなければ真正な書面として判断 考える。 (なお,ブラジル人を当事者とする創設的婚姻届の取扱いについて,平成 21年・3月26日法務省民一第762号民事局民事第一課長通知が発出さ れていますめで,御留意願います。) 第3間 \\ (要旨) ブラジルの法制では,「裁判離婚」のみが認められ,「協議離婚」は認 められていないところ,日本に在住するブラジル人夫婦の一方から,日本 の家庭裁判所において離婚の調停が成立したとして調停調書を添付し離婚 届が提出されたとしても,この届は受理できないと考えるがどうか。 −30− 戸籍だより 第135号(平飢.4) (理由) 調停離婚は裁判所の関与する離婚で革まあるが,当事者の合意を基礎とする ものであり,その本質は協議離婚の一種であっ七これを外由裁判と同視し て取り扱うことはできないと考えられるが(昭和28年4月18日付け民 事甲第577号民事局長通達),戸籍誌第799号59貢以下において, これと異なる見解が示されてい■るため。 【大津局意見】 (意見■) 受理して差し支えない。 導 (理由) ブラジル国民法典には協議離婚の制度はないが,「裁判所が関与する合 意による直接離婚」も認められており,①事実上の別居が2年以上継続し ており,②当事者間において離婚の合意があった場合に,裁判所は当事者 からの申立てに基づき離婚原因の存否を・検討することなく離婚判決が下さ れるとされている。 その手続きは,当事者間の合意を基礎とし,裁判所が離婚要件を確認す るという点で日本中調停又は審判に酷似しており,そうであれば日本の調 停又は審判による離婚にブラジル国民法典上の「 よる直接離婚」と同等の効力を認めて差し支えないものと考える。 論 外国人間において日本国内で裁判離婚が成立した場合には,戸籍法上の 届出義務は課せられていないものの,在日外国人の身分関係の公証に資す る観点からすれば,届出があればこれを受理することができると考える。 【管区局意見】 (意見) 大津局意見のとおり (理由) ・調停及び審判による離婚は,当事者の意思によって成立ないし効力が左 右されるものであるとの理由により,これを国家機関の関与による一種の −31− J え 戸籍だより 第135号(平21.4) 合意離婚とみるのが多数説であり,戸籍実務においても同様の立場をとっ ている。したがって,離婚の準拠法となる外国法が裁判離婚のみを認める 国を本国法とする外国人夫婦の調停に基づく離婚の届出は受理しない取扱 いである(昭和28年4月18日付け民事甲第57,7号民事局長通達)。 ところで,ブラジル国においては,協議離婚の制度はなく,離婚には裁 判所の関与が必要とされているが,平館15年1月11日から施行された ブラジル新民法においては, 者において離婚の合意があった場合に,裁判所が,当事者の申立てに基づ き事実上の別居の認定と当事者の離婚の合意の有無を確認した上で離婚の 判決を下すという「合意による直接離婚」も認められている(ブラジル民 法第1580条第2項,離婚法第40条補項 こゐ「合意による直接離軌 の手続は,日本における調停離婚の手続と 同視できると考えられること,また,家庭裁判所において, た繭停離婚が外国人の本国において承認の余地があることを十分調査した 上で慎重に対処しているとのことであるから,577号通達を適用するこ となく,日本の家庭裁判所の調停詞書を添付したブラジル人夫婦の離婚届 は受理して差し支えないと考える。 戸焉だより 弟135号(平21.4) 白〕臼lヨlヨlヨEIlヨ日日lヨ由lヨlヨ【ヨ日日白〕lヨ臼lヨ日日】lヨ臼【別ヨ 第519回戸籍事務研究会の協議結果について 庄ヨ由仁臼∈別ヨ白』lヨ∈別ヨlヨ【ヨ白』由臼由【別ヨ臼lヨlヨ‘ヨ亡由仁ヨ亡ヨ仁Ilヨ 平成20年1■2月18日,大阪家庭裁判所,■大阪府戸籍住民基本台帳事 務協議会及び当局の担当者合計45名が集い,当局第1会議室において第 59回戸籍事務研究会が開催されました,。 本研究会は,戸籍事務にかかわる上記三庁がそれぞれ協議問題を提出し, 意見交換を行う研究会であり,毎年各庁が輪番で幹事庁となり実施されて おり,今年度は当局が幹事となって行われました。 同研究会において検討さ.れた協議問題は,今後の戸籍実務の参考になる と思われますので,その協議碍果を掲載します。 なお,誌面の都合により,特に戸籍実務に直結すると思われる問題のみ を選択し,協議結果の趣旨を要約して掲載させていただきます。 【草1問】(大阪家庭裁判所提出) 離婚届中親権者指定部分のみ無効である場合の処理 双方協議の上で,相手方に離婚の届出を託したところ,相手方は未成年 子の親権者を自分に書き換えて提出してしまっキ。離婚自体には争いがな く,親権者の指定の記載部分のみが無効であるとしたい場合,大阪家庭裁 判所では伝統的◆に■23条審判の親権者指定無効確認申立てをさせているこ とが多いが,そのような場合,戸籍上問題となる点は何か。また,その他 に戸籍を訂正する方法はあるか。 (出題趣旨) 先に提出された離婚届中の親権者指定部分を無効とする けて,戸籍法第116条の−戸籍訂正申請とと▲もに親権者指定届を提出でき るのであれば,簡易の手続として一定の効用がある。しかし;当事者間に 争いがある場合は,親権者指定無効の確認判決を得た上で.,改めて親権者 指定の審判を申し立てなければならないと考えるが,いかにも煩墳である ことから,親権者指定の無効を前提に,親権者指定の調停又は審判を申し ー33− 戸籍だより 弟135号(平21.4) 立て,成立調書又は審判書謄本を添付して,改めて親権者指定届を提出す ることはできないか。もし独立した戸籍訂正が必要であれば,先になされ た親権者指定の戸籍記載を訂正(戸籍法第24条)することはできないか。 あるいは,親権者指定の調停成立や審判確定を受けて,戸籍訂正翠可の審 判(戸籍法第114条)がなされた場合はどうか。 (大阪法務局回答) 親権者指定の届出は,親権者の定めがないことを前提とするものなので, 戸籍面上,親権者の記載がされている場合には受理することがセきない。 したがって, 当該親権者め定めを無効とする・確定判決に 16粂の戸籍訂正に皐り消除した上で改めて親権者指定の届出をすること に■なると考える。 戸籍法第114粂による戸籍訂正につV†ては・,家庭裁判所において許可 されるのであ●れば,戸籍実務上受理して差し支えないと考えるが,戸籍法 第24粂第2項による職権訂正については,調停調書又は審判書謄本に親 権者指定の定めが無効であることが明記されていたとしても,親嘩者指定 の無効については,身分法上,財産法上重大な影響がある訂正であるので, 職権による訂正はできないと考える。 【第2間】(大阪家庭裁判所提出) 妻が子の親権者を母として勝手に離痛届を出し,その後,子の氏の変更 を済ませた。その後,夫から協議離婚無効確認の申立てかなされ確定した 場合,戸籍法第116条による戸籍訂正申請により,夫婦の戸籍は元に戻 るが,子七っいては更に戸籍訂正の許可を要する。こうした場合の戸籍法 第116条による戸籍訂正が可能な範囲について伺いたい。 (大阪法務局回答) 確定判決に基づく戸籍法第1、16条の戸籍訂正の範囲については,判決 の主文のみに既判力がある■ことから,原則として,その主文で確定した身 分関係と直接矛盾する戸籍の記載を対象とし,その他の身分事項に関する 訂正は,別途戸籍法第114条(又は第113粂)の戸籍■訂正の審判を得 て訂正すべきであるとされている。 −34− 軒 戸籍だより 弟135号■(平21.4) 本間においては,協議離婚事項及び親権事項については父母の離婚と親 権者の指定は一体のものと考えられるが,父母の離婚と子の入籍とは別個 の行為であると考えられることから,親権事項については戸籍法第116 条の戸籍訂正の範囲に含まれるが,子の入籍事項については含まれ のと考える。 量∫ 【第3間】(大阪家庭裁判所提出) (1)民法第772条に関するいわゆる 父との親子関係不存在確認審判を受けず,実父と.の周で認知審判を受ける 、 臣 いわゆる先回り認知につき,従前は認知審判書の理由中の記載によっては 認知届を受理できない場合があるという取扱いをされていたのを改めたと 彊 聞いているが,どのように改めた■のかを伺いたい。 (2)母り離婚後300日以内に出生したいわゆる推定を受けない嫡出子 の出生届出のために, ・の証明を求めて家庭裁判所に来庁した母に対し,親子関係不存在確認手続 とあわせ,それと同様の効果を得ることができる手続だとして実父に対す る強制認知手続をも積極的に教示してよいか。 (出題趣旨) 推定を受けない嫡出子の表見上の父子関係の断絶を目的とする実父への 強制認知請求は,従前から例外的取扱いとして慎重且つ抑制的に取扱うこ ととされてき、たが,社会情勢の変化と 方が行われるようにな・ってきたのかどうか伺いたい。.現在家庭裁判所では, 受付時の説明として,強制認知申立・時には証人や参考人として元夫を呼ぶ 可能性があることやDNA鑑定を実施する可能性があることを注意してお り,積極的に強制認知手続をとるよう革めることはし七いない。もし,法 務局や戸籍役場での理解や位置付けが変化したのであれば,家庭裁判所の 説明振りも変える必要があるのではないかと考える。 (大阪法務局回答) (1)婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は, 婚姻中に懐胎したものと推定され,前夫の嫡出推定が及ぶが,これは,夫 婦が正常な婚姻関係にあることを前提として設けられた規定であるから, 夫が長期間不在であったり夫婦が事実上離婚している場合などに出生した ー35− 扉搬娯拍巨欄185号(平21.4) 子については,本規定を適用すべきではない。 そこで,戸籍事務においては,妻が夫の子を懐胎し得ないことが客観的 に明白であることが裁判上明確にされている場合には,当該裁判書の謄本 の提出を得て,非嫡出子として取り扱うこととしている。 したがって,認知の審判が確定した場合には,上記の裁判上明確にされ ている場合に該当するので,認知届を受理することができる。 (2)母の離婚後300日以内に出生したが,嫡出の推定が及ばないこと を裁判上明らかにするには,原則的には,親子関係不存在確認の裁判の手 続によるべきであると考えることかち,嫡出否認や親子関係不存在確認の 申立七が困難な事軍以外は,積極的に強制認知の手続を教示するのは相当 ではないと考える。 【第4間】(大阪家庭裁判所琴出) 15才未満の者による養親死亡後の離縁の申立てについて,申立人の離 縁後の親権者となる父母が法定代理人としてなした申立てを認容した審判 例がある。このとき■,離縁届を受け付けた市役所は,法務局に確認のうえ, 受理すべきではないとの回答を得たため,未成年後見人選任の申立てを促 した。 申立人らは未成年後見人選任申立をしたが,その後,市役所から受理す るという連絡を受けたため,申立人らは未成年後見人選任申 下げた。 今後,このような事例の際には,未成年後見人適任の申立ては不要であ る前提で手続説明して差し支えないか伺いたい。 (出題趣旨) 離縁の届出のためにのみ後見人を選任することは無意味なものと思われ 争が,離縁後に法定代理人となる実父母から申立て及び届出ができるかど うか,何いたい。 (大阪法務局回答) .養親双方死亡後,15歳未満の養子が離縁しようとする場合には,戸籍 実務上,後見人が養子に代わって離縁許可の申立て及び届出をすべきもの とされているが(昭和37年9月13日付け民事二第396号民事局第二 −36− 戸籍だより 弟135号(平21,4) 課長依命通知),これは,養親双方死亡後に後見が開始し,後見人が選任 されていることを前提としている。しかしながら,後見人が選任されてい ない場合において,後見人を選任しなければならないとすると,離縁後直 ちに後見が鱒了し実父母が親権を行うことになる.にもかかわらず,琴線の 届出のためにのみ一時的に後見人を選任することとなり,同取扱いには疑 問が生じるところである。 また、,民法第811条夢2項は,養子の現在の法定代理人である養親は 利益が相反し,代理権を行使できないため,将来の法定代理人である実父 母の代理権を認めた趣旨であ■ると考えられることから,本間においても, 後見人が選任されていない場合においては,現在の法定代理人が代理権を 場 行使できない瘍合であるから,同卑の趣旨からみて,宰父母に離縁の届出 の代理権を認 したがって,後見人が選任されていない場合に限って,実父母からの離 縁の届出を受理することができると考える。 【第5間】.(大阪家庭裁判所提出う 次のような場合に戸籍謄本の交付請求をする者に対し,交付請求の際に 何らかの書面や資料の提出を∴要求されておられるか。あるいは,交付請求 が拒絶される事例はあるか云 (1)元の夫が敵婚した元の妻に対し養育費減額請求調停申立七を行うた めに,.元の妻の戸籍謄本(子が同籍しているもの)の交付請求をする場合 (2)兄が医療保護入院(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第3 3条)したために,保護者選任申立て(同法第20条2項4号)を行うた めに,弟が入院患者である兄の戸籍謄本を交付請求する場合 (3)死亡した兄の相続を放棄する又は遺産分割調停事件を申し立てるた め,兄弟姉妹が被相続人である兄の出生から死亡時までの連続した戸籍, 除籍,改製原戸籍の各謄本の交付請求をする場合 (4)債務者が死亡したためその相続人に対し貸金請求訴訟を提起したり, 実父が認知しないので認知請求調停を申し立てキり,配偶者の不貞の相手 に対し慰謝料請求調停を申し立てたりするなど,裁判等の申立てのために 他人の戸籍謄本の交付請求をする場合 −37− 戸籍だより第135号(乎21.4) (出題趣旨) 本年5月1日より改正戸籍法が施行され,改正前の戸籍法第10条の戸 籍及び同第12条の2の除籍の各謄抄本と記載事項証明書の交付請求権者 の範囲が変更されたが,市区町村役場の窓口において実務上交付請求の理 由め適法性を明らかにするために提出をすることと定めている資料,ある いは第10条の4により求める説明に際し添付すべき資料(平成20年4 月7日付け法務省民一第1000号法務省民事局長通達第1の7(2)) として実務上定められているよう.なものがあるのかを伺いたい。 また,拒絶せざるを得ない交付請求が提出された場合において,市区町 村役場の窓口ではどのような取り・扱いをされているのか,加えて,交付請 求を行う者の不服申立権の保障に関しても伺いたい。 (大阪府戸籍住民基本台帳事務協議会) 裁判所に提出する必要がある場合は,その旨請求書に記載すればよいこ とになっているが,信びょう性を判断するために,裁判所から戸籍謄本が 必要である旨牢記載した書申があると審査が・容易となる。 また,上記事例の場合には,複数の戸籍謄本を請求される場合もあるが, どこまで必要なのか判断できず,必要のない者の戸籍謄本まで請求されて いるおそれもあるので,誰の戸籍謄本が必要かを明ら▲かにしていただきた い。 (大阪家庭裁判所) 家庭裁判所で必要とする戸籍の範囲は,申立人,相手方,事件本人の現 在戸籍であり,これらは必ず求めている。その他つながりを見るために改 製原戸籍,親子が同籍している除籍の謄本を要求する場合もある。 これらの考以外について,家庭裁判所に提出する必要があるとの理由で 請求があり疑義があ早場合は,家庭裁判所の家事受付まで照会していただ ければ要否について回答する。 (大阪法務局回答) 戸籍法第10条の2第1項によ早戸籍謄抄本の交付嶺求については,同 項各号に規定する事項を明らかにしてしなければならないとされている。 −38− 戸籍だより 弄135号(平21.の その場合,明らかにする方法は,原則として交付請求書に記載すれば足り るが,当該請求を受けた市区町村長が明らかにすべき事項が明らかにされ ていないと静めるときは】,当該請求者に対し,必要な説明を求めることが できるとされている(戸籍法第10条の4.)。 したがって,実務上定ま 内容によって個別に判断せざるを得ない。 家庭裁判所に提出する必要がある場合は,戸籍法東10条の2第1項第 2号に規定する「国女は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合」 に該当するので,家庭裁判所に提出する旨とその理由を記載することにな るが,その理由の記載としては,本間に記載されている程度の記載があれ 彊 ば足りると考える。 なお,(4)後段の慰謝料請求調停に相手方の戸籍が必要かどうかにつ いては,一般的に疑義が生じるので,その必要性については説明を要する と考える。 おって,(1)については,子が同籍しているので,子の父(直系尊属) として戸籍法第10条第1項により請求することもできる。 【第6間】(大阪家庭裁判所提出) 戸籍役場に届出や戸籍訂正申請をするに当たり,裁判の謄本の添付が必 要な場合があるが,裁判中で引用すべき戸籍記載が例えば誤字や略字,旧 字,変体仮名,数字の参画文字でなされているような場合,裁判書を作成 する際に,当該文字につき裁判書作成に使用しているコンピューターで出 力可能な字体で記載してもよいか。 (出題趣旨) 届出や戸籍訂正申請の際に添付する裁和の謄本(戸籍法第63条第1項 等)については,戸籍記載を引用しなければならないことが多いが,こう した場合には従前から,戸籍面上の誤字や略字等で裁判所で行う浄書で使 用する活字にない字体については,戸籍面上に記載されたとおりの字体を 直接手書きするなどして転記していた。現在でも,戸籍訂正許可事件や氏 名の誤字使用を許す内容の氏,名の変更許可事件の各主文の記載について は,従前どおり戸籍面上に記載された誤字や使用を許す誤字につき,その −39− 戸籍だより 弟135号(平21.4) 字体の形状をそのまま裁判書上に記載しているが,近年戸籍電算化の改製 が進んでいることから,こうした誤字等を主文上にそのまま記載すること が特段の意味を有する場合を除き,コンピューターで出力可能な字体(通 用字体と同じものが出力されるものと考えられる。)を使用した裁判の謄 本を添付した場合に届出や申請が受理されるものかどうか伺いたい。 (大阪法務局回答) 裁判書に戸籍面上の字体をそのまま記載することが特段の意味を有する 場合を除き,事件本人の特定等に支障がない範囲であれば,貴見のとおり 取り扱っても差し支えないと考える。 【第7間】(大阪法務局帯出) 嫡出推定が及ぶ子(又はその母)がその父を相手方として提起した親子 関係不存在確認の裁判手続において,当事者の接触を避けるため,法廷に おいて当事者か顔を合わ草ないようにするとともに,連絡先が相手方に知 れないよう申立書等に現住所を記載しない等の配慮をす卑ことはできない か。 (出題趣旨) 最近,DV等の理由かち,出生した子の母が前夫と接触することを避け るため,出生の届出をせずに無戸籍となっている事例がマスコミ等に取り 上げられ,その間題を背景と‘して,実父 いると聞いている。 本来,嫡出推定が及ぶ子と父との親子関係を否定するには,嫡出否認の 訴え又は親子関係不存在確認の裁判を行うのが原則であるので,上記理由 に配慮した裁判手続が可能かどうか確認したいため。 (大阪家庭裁判所回答) 法廷キこおいて当事者が顔を合わせないようにするという点については, 昨年,法改正がされ,民事訴訟法第233条により遮蔽の措置ができるよ うになった。人事訴訟法においても同規定を準用している。なお,当該措 置を・採った際には,その旨調書に記載するよう民事訴訟規則に規定されて −40− 戸籍だより 第135号(平21.4) いる。 なお,当該遮蔽の措置を採るかどうかについては,申出があった場合に 当事者に意見を聞いた上で,各裁判体が判断することになる。 次に,連絡先を相手方に知れないように調書等に記載しないよう由慮す ることができないかという点について・は,人事訴訟法において管轄の問題 があり,原則として,訴訟当事者の普通裁判籍を有する地又はその死亡の ときにこれを有した地の家庭裁判所が専属管轄となるので(人訴法第4 条),大阪家庭裁判所で訴えを提起する場合,少なくとも大阪府までは記 載させる必要があると考えるが,この■ような取扱いを認めるかどうかの判 断についても各裁判体によるので,概括的な回答はできない。 また,訴訟記録を見られないよ.うにするということも考えられるが,人 彊■事訴訟法で準用する民事甲訟法第91条により草本的には質が可鱒とさ れているので,これを隠すのは難しいと考える。 (大阪府戸籍住民基本台帳事務協議会)’ 具体的に遮蔽の措置を行った事例はあるのか。 (大阪豪庭裁判所回答) 改正後については把握していないが,改正前は,訴訟指拝という考えに 基づいて措置をしたことはある。 (大阪法務局) 12月初めに,奈良家庭裁判所葛城支部において,出生届未届けの子に ついて親権者の母が代理人として申立てをしている事案で母については本 籍地,氏名,生年月日で特定し,その子については生年月日のみで特定す る審判を,12月初めに出 課しておらず,届出も現時点・ではないが,そのような事例があったと聞い ている。 【第8間】(大阪法務局提出) 中国人が日本人妻の連れ子を養子とする創設的養子縁組をする場合,実 質的成立要件の準拠法となる中国法上の養子縁組は養子と実父母及びその 血族との親族関係を終了させる「断絶型」の養子縁組であることから,戸 籍実務上,養子の本国法である日本民法上の「断絶型」■養子縁組である特 ー41− 戸籍だより 第135号(平21,4) 別養子縁組の規定による家庭裁判所の許可が必要であるという取扱いがさ れているところ,特別養子縁組の規定による許可を得ない場合は,「断絶 型」の効果のない養子縁組.として成立さ遮ても差し支えないかどうか,家 庭裁判所での取扱いの実情をお伺いしたい。 また,家庭裁判所の許可を要するとした場合,日本民法上の特別養子縁 組の成立要件の中で,保護要件に該当するものとして審理されている要件 もお伺いしたい。 (出題趣旨) 届出人が断絶型の養子縁組の処理の希望をしない場合は,保護要件とし て日本民法上の普通養子縁組の要件を満たせば「断絶型」の効果のない毒 針 子縁組として成立 特別養子縁組の成立には要保護要件も充足する必要があるが,連れ子養 子の場合は,当該要件を充足することが困難なため。 (参考) 戸籍誌第748号62頁 新人事法総覧 〈法規編別冊〉 中国家族法と関係諸制度129頁 家庭裁判月報48巻12号6・6貫 (大阪家庭裁判所回答) 養親が中国人養子が日本人の場合に断絶型の効果のない養子縁組が成 立することはない。 このような場合には法の適用に関する通則法が適用され,同法第31条 第1項によると,縁組は縁組当時における養親の本国法によるとされてい る。 中国法では養子縁組はすべて断絶型であり,断絶型でない養子縁組を認 める規定はないので,中国人が養親である限り断絶型の効果しかあり得な いということになる。当事者が普通養子縁組の効果を望んでも中国法がそ のような規定になっている以上やむを得ないと考える。 後段については,裁判所の審理は,この場合,日本民洛で審理するので −42− 】〉 戸綴だより 弟135号(平21.4) はなく,中国法における養子縁組の成立について審理することになる。 したがって,実父母の同意は保護要件の一つとして当然に審議の対象と なるし,また,当該養子縁組が養子の福祉にかなうものであるかどうかと いう観点から審理しているのが実情である。 (大阪法務局) 中国人と日本人の夫婦が日本人を共同で養子とする場合,戸層美顔上, 相対的に断絶の効果は生じないとして取り扱っているが,この場合でも断 絶型の養子縁組の許可を要するのか。 ● (大阪家庭裁判所回答) 養親の本国法が分かれている場合,国際私法の分野では重複的な適用が されるので,中国が断絶型の養子縁組を採用している以上,裁判所の許可 を要すると考える。 【第9間】(大阪法務局提出) 出生の届出義務者がいないとして,就籍許可の審判により新戸籍が編製 されている子につき,後日,母子関係存在確認の裁判が確定し,その子が ヽ 入籍すべき戸籍が判明した場合,まず,就籍許可取消の裁判を行うことは 可能か。 彊 (出題趣旨) 就籍看であっても, 父母の氏名及び本籍が明らかである場合は,出生の 届出による入籍の場合と同様に出生当時の父母の氏を称し,父母の戸籍に 入籍することとなる。 本間では,母子関係存在確認の裁判が き戸籍を有することとなったの された就籍の許可はその前提を欠くこととなる。 よって,あらためて届出義務者からの出生の届出により,その子を本来 入籍すべき戸籍に入籍させるとともに,就籍届により編製した戸籍tを就籍 許可取消しの裁判に基づいて消除する必要があるところ,就籍許可取消し の裁判に先だって出生の届出を行うと,一時的に複本籍の状態になるため, −43− 戸籍だより 第135号(平21・4) 出生の届出をする前に,就籍許可取消しの裁判の申立てを行うことが可能 かどうか確認したいため。 (大阪家庭裁判所回答) 就籍許可取消しについては, れるが,鱒消しの審判を行うためには,当該就籍をすべきではなかった, あるいは就籍すべき事実がなかったということが確認できれば足り,本事 例では,届出義務者が存在していたとい 際に届出がされたということを立証する必要性はないと考える。 【第10間・】(大阪法務局●提出) 中国に在住する中国国籍を持つ者が就籍許可の中辛てをした場合,申立 人の父母の婚姻が有効に成立しているか否かにういて事実認定を行うに際 して,婚姻を証する書面が.なく,婚・姻当時の状況を知っているであろう関 係者も不存在であれば∴どのような点に注意して審理されているかお伺い したい。 (出題趣旨) 戟籍することができる者は,当然,日本国民であることが大前提であり, 日本国籍を有しているかどうか,未だ戸籍に記載されていない看であるか どうかについて,慎畢な調査を要するものと考えるが,中国国籍を持つ者 が就籍許可を 当局における事件調査において/当該婚姻の有効性や事実関係を認定す争 のに困難となっている事案が散見される。 婚姻を証する書面の提出.がない場合,そのことをもっで婚姻が不成立で あったとはいえないので,鱒姻の成否については,事件本人あるいは関係 者の供述により認定するしかないが,儀式婚や事実婚の成立を供述のみに よって認定するとなると,その供述が,事実関係を認定するに足る信びょ う性のある供述であるかどうか,関係者らの供述に組靡はないかなど,総 護坪慮首布“増﹁モ八月 ・−1 合的に判断する必要があるが,事件本人から直接供述が得られない場合は, その認定が事実上困難となる。 裁判所において,就籍申立事件の調査を行うに際して,就籍者本人が中 †44− 戸籍だより 辛135号(平21.4) 国に在住しており,本人からの供述を得られない場合はどのような調査を 行った上で事実認定をされているか確認したいため。 (大阪家庭裁判所回答) 通常の就籍の調査では,本人を調査しないわけにはいかない。 就籍は,特に虚偽の申出がされる可能性が高いので,その意味からも本 人調査が必要である。 しかしながら,中国から本人が来れない事情がある場合,中国まで調査 に行くことはできないので,その場合には,質問形式の調査書を送り,そ の回答を申述書として求めるなどの方法も考えられるが,二一般的な認識と 場 しては,書面だけでは難しいと考える。 また,本人が出生地や学校などある程度の経歴を言える場合には,親類 や近隣等の関係者に実際に聴取するなど,情報を得る方法も考えられる。 本間のように婚姻関係−の有無について確認する場合には,親族等に結婚 式の様子を聞いたり,その際に撮った写真を提出させるなどの調査を行う。 このように就籍の調査は,ケースバイケースであり,かなり難しいし時 間がかかる。 なお,家庭裁判所では,事実の調査は調査官が行うが,調査に当たって は,裁判官と打合せを行い,考えられる調査をすべて尽くした上で,裁判 官が最終判断をすることになる。その場合,裁判官は3種類の心証がある といわれている。それは,国籍があるとの心証,国籍がないとの心証,い 彊 ずれかこゎからないとの心証である。 「あ からない」場合は,却下することになる。そして,当該審判に不服がある 場合は不服申立により上級裁判所で争っていただくことになる。 【第11間】(大阪法務局提出) 養子縁組無効や親子関係不存在確認等の調停において,家事審判法第2 3条の合意に相当する審判(以下「23条審判」という。)が確定したと して,当該審判に基づき戸籍訂正申請がされることがあるが,当事者の一 部が参加せずにされた審判である場合は,これを受理することができない ため,申請人に対し,再度,身分関係の他方当事者(死亡している場合は, ー45− 戸籍だより 第135号(平21.4) 検察官)を被告として,訴えを提起する必要がある旨の.説明を余儀なくさ れている。 この種の事案の審判について,家庭裁判所の取扱いの実情をお伺いした い。 (出題趣旨) 当事者の一部が参加せずにされた合意に基づく23条審判は,対世的効 力を有さないとされていることから,当該審判に基づく戸籍訂正申請は受 理すべきでないとされている。 したがって,こ・甲ような審判に基づき戸籍訂正申請がされた場合は,再 度,身分関係の他方当事者を被告として訴えを提起し,その審判等に基づ き戸籍訂正申請をしなければならない旨の説明を要することとなるが,そ の際,、申請人に理解を得られないことがあり,市区町村窓口で対応に苦慮 するととがあるため。 (参考) 昭和53年4月6日付け法務省民二第2091号民事局長回答 昭和58年8月26日付け法務省民二第5082号民事局第二課長回答 平成11年12月1日付け法務省民二第2565号民事局第二課長回答 戸籍誌第625号29頁,同第6■97号99頁 (大阪家庭裁判所回答) 本間のような2ゴ条審判による戸籍訂正申請が受理されない理由につい て,・戸籍先例では,対世的効力を有しないため戸籍訂正の資料にならない とされており,その根拠として,昭和37年の最高裁判決が引用されてい る。 ところが,その後も同種の23条審判は発せられており,それを受理で きないとする先例も重ねられている。 確かに23条審判の知世的効力は否定されているが,このような審判が 直ちに違法・無効であるとはいえないと考える。 これについては説が分かれており,23条審判の当事者適格について, 身分関係の当事者に限定し,23条審判を発することができるのは当該身 −46− 戸籍だより 第135号(平21.4) 分関係の処分につき当事者全員の実体的合意がされた場合に限るとする説 があり,これを実体法説という。この揚合には,当事者の一瓢のみが参加 した23条審判そのものが無効であるということになるが,他方,当事者 適格を人事訴訟手鱒と同じ,あるいはそこから検察官を除いた範囲である と考えるならば,事件の当事者が身分関係の当事者と一致するかどうかは ともかく,当事者間の合意を事件の当事者が人事訴訟を受ける権利そ放棄 したものと考え,23条審判手続については人事訴訟の簡易手続と位置づ けられる。これを手続法説といい,この場合,当該審判iま有効である。な お,昭和44年10月に示された最高裁家庭局の見解では,前記昭和37 − 事 のではないことになる。 このように現時点においては,いずれの説も定説にはなっていないので, このような23粂審判があった場合の取扱いについては,事件を担当する 家事審判官の法解釈によるといわざる.を得ないが,戸裔訂正目的であるこ とが明らかである事案については,一方で家庭裁判所でも当該審判により 戸籍訂正ができないことは承知しているので,戸籍訂正申請に当たり役に 立たない23粂審判をわざわざ行うことについては問題意識がある。 例えば,家事事件受付では,身分関係の当事者全員の合意が難しい場合 には,.人事訴訟の提起を促している。 しかし,郵送や窓口で強硬な申し入れがあった場合には,・受付段階で完 全に申立てを排除することはできないので,その場合には受け付けた上, 来庁した申立人に対しでは,23条審判が出てもそれは戸籍訂正の資料に ならないことを教示している。 また,受け付けられた事件については,調停手続の段階で,取下げ勧告 を行う可能性が高く,申立てがあったからといって必ず審判がでるわけで はない。しかし,双方当事者が強く合意成立を望んでいるにもかかわらず, 当該事件について調停不成立とできるかについては,家事審判官の考え方 によっては,難しいと考えられ,この場合には,合意に相当する審判をせ ざるを得ない場合がある。 ー47− 戸籍だより 第1a5号(平21.4) 【第12間】(大阪府戸籍住民基本台帳事務協議会提出) 特別養子の出生事項の届出人が母(・実母)ゐ親 の特別養子縁組の届出により母となる特別養母に父の記載がないとき(父 欄空白)の出生事項は,原則,そのまま移記されると思われるが,特別養 子縁組届をすることで戸籍の記載上,誤った記載がされていると見てとれ る。こぅいづた出生事項の記載がある事件本人(特別養子)のとき,特別 養子縁組の審判とは別に,・戸籍の記載上何ら問題点のないように,父母(特 別養父母)となる者との記載と合致した記載例を審判書に記載できないか。 (出題趣旨) 痔別養子縁組届で,特別養子となる者の出生事項中,届出人の資格氏名 が「母の親権者父0000」と記載されている場合に■おいて,特別養親の 戸籍に移記する際は,届出人の氏名を省略して「母の親権者父届出」と記 載して差し支えないとされている(平成3年1月22■日付け法務省民二第 428号民事局長回答)。しかしながら,上記問題のように特別養母とな る者に父がいないときや,特別養母が特別養子の出生時成年である場合な どほ, いが,あたかも戸籍の記載に錯誤があると見て取れる。せっかく,特別養 子縁組の制度(民法)を利用して実子として戸籍の記載をするのであれば, 矛盾のない形ですべきであり,間違いがあると思われるような戸籍の恵載 をするのはいかがなものか。 (大阪法務局回答) 特別養子の出生事項の移記については,特別養子制度の趣旨を踏まえつ つ,戸籍制度の公示機能を損な.わないとの観点から従前の記載のとおり移 記することとされている(昭和62年10月1自付け民二第5000号民 事局長通達第6の1(2)ウ(イ))。また,特別養子の出生事項中・の届 出人の資格氏名が「母の親権者父何某届出」と記載されている場合におい ては,届出人の氏名を省略して「母の親権者父届出」と移記し,養子の美 方の者の氏名が養子の戸籍上明記されることのないよう配慮されている (平成3年1月22日付け法務省民二第428号民事局長回答)。 本間については,「母の親権者父届出」と移記した場合,養子の戸籍の 一48− 戸籍だより 第135号(平21.4) 記載と養母の戸籍の記載を併せて見れば,一見奇異な感じを与えるおそれ はあるが,届出当時の出生事項の記載は誤っていないこと,「親権者父」 の記載を別の記載に引き直すこ・とができないこと,また,養子の戸籍の記 載を見ただけでは,資格氏名をすべて省略しないと特別華子縁組制度の趣 旨に反するとまではいえないことから,第428号回答のとおり取り扱わ ざるを得ないと考える。 【第13間】(大阪府戸籍住民基本阜帳事務協議会提出) 養子縁組事項の移記方単について (例)婚姻で新戸籍を編製する場合 夫の婚姻後の戸籍 夫の婚姻前の戸籍 縁組事項 縁組日 養父 養母 縁組事項 養母は離婚 一甲野義太郎 し,氏が乙野 縁組日 となっている’。 養父 甲野義太郎 養母 甲野 梅子 甲野 梅子 → 父母欄 父母欄 養父 甲野義太郎 養箪 甲野義太郎 養母 甲野 梅子 養母 乙野 梅子 (出題趣旨) 上記のように移記しているが,縁組事項欄と父母欄が違っているのは好 ましくないとし,縁組事項も最新の状態に引き直すようにとなっている。 しかし,縁組事項を最新に引き直し続けていくと,縁組当時の戸籍を調 べるとき等ややこしくわかりにくいのではないかと考えている。 処理はどのようにすべきか。 (大阪法務局回答) 配偶者が氏又は名の変更の届出をした場合における婚姻事項中の配偶者 の氏又は名を変更後の氏又は名に更正する旨の申出は可能であり,更正後 −49− 戸籍だより 第135号(平21.4) 、,−匂 1・Ⅰ.ゝ′.‖りリサ に転籍等により新戸籍を編製し婚姻事項を移記する場合は,更正事項の移 記は要しないとされている(平成4年3月30日付け法務省民二第160 7号民事局長通達)。 しかしながら,同通達を本間のような養子縁組事項中の記載に類推適用 することはできないと■考えるので,原則としてノ縁組事項の記載を引き直 す必要はないと考える。 なお,これを引き直すとする戸籍関係図書もあることから,‘仮に引き直 したとしても誤りとはいえないと考える。 戸籍だより 第135号(平21,4) 匠:7匠:7匠フ匡≡7匠フ匠:7匠フ匠フ匠フ匠フ巨≡柁≡7匠:7匠フ匠フ匠フ匠フ巨≡フ巨≡フ匠フ匠フ匠:7匠フ匠フ 第5回大阪法務局本局管内戸籍定例会の 開催結果について 匠:7匠フ匠フ匠∋匠フ匠フ匠フ匠フ匠フ匠フ匠フ匠:7匠:7匠フ匠フ巨≡フ匠フ匠フ匡≡7匡≡フ巨≡フ匡≡フ匠フ巨≡フ 本年2月13日(金)に,第5回大阪法務局本局管内戸籍定例会を 開催しました。 内容としては,国籍陰及び国籍法施行規則の一部が改正され,本年1 月1日から施行されたことに伴う戸籍事務の取扱いについて説明を行い ました。 今回の改正は,国籍法第3条を違憲とする最高裁判決を受け, 正を要件としていた国籍取待の要件から父母の婚姻を除いたもので,基 従来準 本的には,日本国民から認知を受けた子は,法務大臣への届出により日 本国籍を取得することができることになりました。 改正国籍法第3条に基づき日本国籍を取得す に届出をする必要がありますが,これにより国籍を取得した者は一定期 間内に市区町村長に届け出なければなりません。 またタ 今回の改正により,虚偽の認知が増加することも予測されるこ とから,虚偽の届出をした者に対する罰則も設けられました。 市区町村の戸籍事務担当者におかれては,今回の国籍法改正の趣旨を 濡 理解していただき,適正な事務処理を行っていただく必要があります 後半は,市区町村から提出された協議問題「棄児について戸籍が編製 された後,当該棄児の父又は母が判明した場合の取扱いについて」検討 しました。父又は母に引取りの意思がない場合や,父又は母が引き取ら ず,出生の届出をする意思もない場合に届出義務違反として戸籍法第4 4条に基づく催告ができるか等について協議しました。 なお,平成20年度の本局管内戸籍定例会は,今回で終了し,平成2 1年度は,6月4日(木),10月9日(金),翌年2月5日(金)・に 行う予定ですので,戸籍定例会の充実のため,協議すべき事項を積極的 に提出していただくとともに,同会の運営についてもきたんのない御意 見をお寄せいただくよう,皆様の御理解と御協力をお願いします。 ー51− 電話による質疑応答事例(93) 間1【コンピュータ改製により,正字に記録した文字を誤字へ戻す申出につ いて】 コンピュータ改製の際に,氏の文字が誤字であるため牢字で記録したが, 正字で記録する旨の告知書の未着を理由に元の誤字に戻して欲しいとの要望 があったが,応じることができるか。 (回答) コンピュータ改製前に,正字で記録する取扱いを欲しない申出があった場 嶋 合には,改製しない取扱いであるので,改製日以後は当該申出をすることは できない。しかし,申出をし七いるにもかかわらず,誤って改製している場 合は,改製錯誤を理由に改製原戸籍を回復せざるを碍ない。 本件については,未着かどうか判明しないことから誤字へ戻す申出をする ことはできない。 参考:戸籍だより第111号37頁 間2【養子縁・組と婚姻届が同時にされ冬場合の戸籍処理について】 A市に本籍を有する養父と,B市に本籍を有する養子との養子縁組届と養 父と同籍している子と当該養子との婚姻届が,婚姻後の新本籍地であるC市 に同時に届出された。 この場合,C市での新戸籍編製の処理と戸籍記載はどうすればよいか。 (回答) 非本籍地に養子縁組届と婚姻届とが同時に届出された場合,婚姻による新 戸籍を編製するに当たり,養子に関して縁組事項を移記する必要があるか, 届書の送付年月日が不確定なことから,移記ができないことになるため,新 本籍での戸籍記載を保留しておく必要がある。 戸籍の記載に?いては,受理日から間隔が開くことになるので,「平成年 月日△△と婚姻届出○月○日××戸籍から入籍⑳」と処理した日を明示して −52− 噂 戸籍だより 第1a5号(平21.¢ おく取扱いになる。ま牢,戸籍編製目については,受理日ではなく,入籍日 となる。 参考:戸籍誌第579号56頁,戸籍だより第96号47■貢 間3【出生事項中の届出人の資格が「祖父」となっている場合の移記につい て】 昭和21年に出生した嫡由子につき,出生事項が「昭和22年12月5日 祖父届出」 届出人の資格はどのように記載すればよいか。 なお,当該戸籍は,昭和45年に婚姻により編製したものであるが,従前 の本籍地の除籍には「祖父00」と氏名 (回答) 大正3年戸籍法施行当時の出生の届出義務者は,原則として,嫡出子及び 庶子については父,それ以外の享については母とされていた。また,父母が 届出ができない琴合は,第1戸主,・第2同居者,第3立ち会った医師又は産 婆,第4介抱した者とされていた(大正3年戸籍法・第72条); 届出当時は民法の応急措置法が施行され,戸主に関する事項は適用されな くなったため,旧戸籍法第72条第3項第1号についても,その適用がなく なった。 したがって,戸主であった者は,同居者の資格でないと届出ができないの で,本件 は不明であることから,戸籍法第113条の規定によらなければ,「祖父」 を「同居者」に訂正することはできないので,資格を省略して,氏名のみで 移記せざるを得ない。 参考′:昭和22年4月16日付け民事甲第3,17号民事局長通達第2 間4【外国における裁判離婚の失期通知の要否について】 アメリカ合衆国た居住する日本人夫婦につき,夫が居住地の裁判所に裁判 離婚を甲し立て,その裁判が確定し,確定日から10日を過ぎてから報告的 離婚届出が提出された場合,失期通知を家庭裁判所にする■必要はあるか。 −53− 戸籍だより 弟135号(平21.4) (回答) 外国に居住する日本人がその国の裁判による離婚をした場合であっても, 戸籍法第77条(戸籍法第63条準用)により,裁判確定日から10日以内 に届け出なければならないので,期限内に届出されなければ,失期通知り対 象となる。 なお,戸籍法第41条に規定する証書の謄本が一法定期閣内に提出又は発送 されなかった場合には,戸籍法施行規則第65条の失期通知を要しないとさ れている。 参考:平成10年7月24日付け民二第1374号民事局長通知 戸籍誌第678号73頁 問5【変塔仮名から対応する漢字への更正の可否】 戸籍に変体仮名で記載されている氏又は名の文字があるが,その文字の字 l. 源となる漢字に更正することができるか。 (回答) 変体仮名は仮名であり,漢字に更正することは認められない。 参考:平成2年10■月20日付け法務省民二第5200号民事局長通達 、第3の1(4) 戸籍誌第5占9号60頁 間6【中国人同士の離婚無効の裁判が確定した場合の届出の可否】 中国人夫婦の鱒議離婚が受理され市区町村に届書が保管されているとこ ろ,当該離婚につき離婚無効の裁判が確定した場合二 何らかの届出をするこ とは可能か。 (回答) 外国人同士の離婚を無効とする裁判が確定しても,外国人に戸籍が存在し ないため,戸籍訂正申請をすることができない。また,外国人には,当該離 婚を無効とする裁判の確定につき届出義務はない。 臣rn耶“いr裏FJ しかし,先にされた協蕎離婚の届出の記載内容が実質的に訂正されている h山日加削い鮎芯別h仙﹁日日日日NH鋸 引い ー54− 暇 戸籍だより 第135号(平21.4) ことになるので,その是正方法として追完の届出が認められて・いる。 したがって,判決書謄本及び確定証明書を添付させた上で,追完届を受理 することになる。 参考:戸籍誌第583号80貢,同第7・01号71貢 間7【離婚後300日以内に出生した子につき,父母(同一人)が再婚した 後,父からの出生届出の可否及び親権事項め記載について】 離婚後300日以内に子が出生し,当該出生届をする前に父母(同一人) が再婚したが,夫から62条の嫡出子出生届をす争ことは可能か。また,親 ● 権事項はどうなるのか0 (回答) 当該子は,父母離婚後300日以内に出生しているのセ,母の夫の子と・推 定される嫡出子であるから,通常の嫡出子出生届をすることになる。 子の親権については,出生時には民法の規定により当然に母が行うことと なるが,父母の再婚により届出時には父母の共同親権になっている。 一般に父母離婚後の嫡出子についてするイ親権者母」の記載は,・父母離婚 後300日以内の子のうち,親権を行う母と戸籍を異にする子について,親 権の所在を明確にする趣旨のもとに記載することとされたので,母と同籍す る子については,この記載をする必要がないとする意見がある。しかしなが 鎗 ・、 取扱いがされているので,省略することはできないと考える。 本件については,母が単独で親権を行うのは,父母が再婚するまでの間だ けであるが,・戸籍事務処理の統一的な取扱いから省略することはできないと 考える。「親権者母」と記載した上で,父母再婚により父母共同親権に服す る旨を記載することになる。 参考:戸籍時報第392号84頁 戸籍誌第525号24貢,同第597号48頁 戸籍だより第■112号60貢,同第114号25頁 −55− 戸籍だより 第135号(平21,4) 間8【戸籍謄本等の公用請求における国又は地方公共団体の機関の範囲につ いて】 戸籍法第10条の に,特別法に基づいて設置された認可法人や政策金融機関(例えば,日本銀 行,住宅金融支援機構等)も含まれるか。 (回答) 「国又は地方公共団体の機関」とは,国においては,行政機関が保有する 個人情報の保執こ関する法律第2粂第1項に定める「行政機関」・(省,委員 会,庁等の国のすべての行政機関)のほか,国会,裁判所とされ,地方公共 団体においては・地方自治法上の機関(都道府県知事,市区町村長,執行機 関及び付属機関)のほか議会とされており,具体的には,上記法律に列記さ れている。したがって,特別法に基づいて設置さ.れた認可法人や政策金融機 関は,「国又は地方公共団体の機関」には該当しない。 参考:戸籍誌第8ql号12頁,同第815号8貢 間9【死体検案書の死亡日時が「平成21年2月上旬頃推定」と記載されて い 死体検案書の死亡日疇が「平成21年2月上旬頃推定」と記載されている 場合,戸籍の記載はどのようにすればよいか。 .また,その場合の配偶者の婚姻解消事項の記載はどのよう.になるか。 (回答) 事件本人の戸籍に「平成21年2月1日頃から10日頃までの間」と記載 する。配偶者の婚姻解消事項は,「平成21年2月10日夫(妻)死亡」と 記載する。 参考:昭和35年1月1寧日付け民事甲第110号民事局長回答 戸籍誌第691号62頁,同第142号54貢,同第138号3 0貢,戸籍だより第108号17頁 −56− ㊨ 戸籍だより 第135号(乎21.4) 間10【中国人夫が日本人妻の連れ子(嫡出子)を養子とする縁組について】 中国人夫が日本人妻の連れ子(前婚の嫡出子,10歳)を養子とする家庭 裁判所の許可審判があったが,断絶効を有する創設的養子縁組として受理し て差し支えないか。 (回答) 実質的成立要件の準拠法となる中国養子縁組法上は,養子縁組によ■り養子 と実父母及びその血族との親族関係を終了する効果があることから■,日本法 上の保護要件として,特別養子縁組の規定による家庭裁判所の許可審判が必 要になる。本件審判が断絶効を踏まえた審判であれば,届出人に断絶型の処 ● 理の申出をさせ,戸轟に「美方の血族との親族関係終了」の旨を記載するこ とになる。 断絶型着手縁組処理は,原則として,華子につき新戸籍を編製することに なるが,養子が母と同籍している場合は,新戸籍を編製するこ・となく,同戸 籍の末尾に記載することになる。 なお,記載例については,次のとおりである。 戸籍の末尾に記載する養子の身分事項欄 「平成○年○月○日国籍中国00(西暦1900年○月○日生)の養子と なる縁組届出(代諾者親権者母,美方の血族との親族関係終了)同日記載⑳」 養子に係る従前の部分の身分事項欄 「平成○年○月○日養子となる縁組届出(代諾者親権者母,美方の血族と ● の親族関係終了)同日末尾記載につき消除⑳」 参考:平成6年3月31日柚ナ民二第2439号民事局第二課長通知 平成6年4月.28日付け民二第299■6号民事局長通達 戸籍誌第619号25頁,同第620号1頁 ー57− 戸籍だより 兼1a5号(平21.4) ♪♪戸籍雑瘍♪♪ ∼吉尾の戸籍係− 私が在籍する大阪法務局東大阪支局総務課戸籍係は,戸籍係長1名, 係員3名に加え,・国籍相談員1名,事務補佐員1名で構成されています。 当支局の戸籍係では戸籍・国籍事務を行っており,係長・係員の区別な く,一般の方からの戸籍・国籍事務に関する相談,管内各市からの戸席 亭務に関する照会,帰化事件処理,登記如門を含む電話の応対が日常の 業務です。とは言いましても,当支局では,帰 3名が帰化事件処理に集中してくれているのが実情です。逆に言うと, 帰化事件処理に埠われるため,戸籍事務について腰を据えて勉強する機 会が少ないということです。 支局では戸籍に蘭する事案数が少ないことと,事務室内で戸・籍事務に らいての会話が飛び交わないことにより,知識の蓄積のスピー しても緩やかになってしまうのだと思います。事務室内が戸籍だけの業 務であれば,隣の人が話していることを聞いたり,いろいろ議論を重ね, 必然的に自分の肥やしとなるのでし・ようが,小さな支局においてはなか なかそうは行きません。 私が支局で ば,.各自の意識の差がとても大きく出てしまい,自分から踏み込■んで処 理に当たらないとなかなか自分の知識として蓄積されないということで す。組織は違いますが,市区町村においても総合窓口制の導入や人事異 た■TIL■r一■ 動周期の短期化により,同じことがいえるのではないでしょうか。 当支局では平成21年度から,・これまで3か月に1度開催していた戸 籍定例会を毎月行うことになりました。出席者も今まで固定されていま したが,ざっくばらんに誰でも戸籍事務担当者として出席できるように し,法務局を含む管内各市が輪番制で司会を務めることにしました。こ れは,難解な事例の研究だけが目的ではありません。誰でも戸籍事務担 当者として出席し,日常疑問を抱いていること,窓口で相談を受けてい る事案 交換などをきっかけに,組織の隔たりなく二討論する ことにより,互いの知識の底上げを図ることを目的としています。出席 . 者全員が定例会の主体となっていこうとするものです。結果,組織の利 . 。 ∴ 。 . 一58− 戸籍だより 第135号(平21.4) 益にもなると思います。毎月,情報交換することでいい関係が構築でき, 事故の防止にもつながると考えています。 毎月,有意義な時.間を過ごせるように頑張っていきたいと息 す。 (東大阪支局 戸籍係長 松田博子) 戸籍だより 第135号(平21.4) ☆☆☆☆☆☆戸籍のボナヰト☆☆☆☆☆☆ ☆☆戸籍手指のIT化を白描して!☆☆ みなさんは「IT」と聞いて,何を連想され■ますか?まず頭に浮かぶ のはインターネットではなし†でしょうか?インターネットが普及し始め たのは,つい10数年前の土とだったと思いますが,ネットの世界はま さに日進月歩の勢いで,も厄や日々の生活には欠かせない存在となって います。ネット利用者の中には,インターネットがなければ生活できな いという,いわゆる「ネット依存症」の人も少なくありません。かくい う私もその二人で,とにかく暇があればパソコンに向かっ七います。何 か知りたいこと,欲しいものがあれば,クリックーつで手に入る世の中 に,恐怖すら感じる程です。 このような,現代のIT社会に対して現在の戸籍事務の在り方はどう でしょうか。 戸籍事務の電子化の状況としでは,2008年12月31日時点で全 国1951市区町村のうち1503市区町村(約77%)が,戸籍事務 ゐコンピュータ化を終えています。 戸籍事務のコンヴュータ化のメリットとしては,大きく分けて以下の 2つに大別されます。 (1)事務処理の正確性及び迅速化の確保 コンピュータシステムにおいては,届書等から入力された情報に 基づき,それらの事項に誤りがないか及び相互の事項に矛盾がない か等を自動的に審査するとともに,\入力された内容が,民法,戸籍 法等の法令に適合したものであるか否かの受理要件を自動的に判断 することから,戸籍の正確性は大幅に向上することになります。 また,コンピュータシステムにより,単に戸籍の記載を迅速に行 えるというのみならず,受附帳及び戸籍簿への記載が不要となるこ とや,戸籍り附票事務,人口動態事務,住民基本台帳法に基づく通 知事務及び相続税法第58条の通知等の事務処理が合理化されるこ とにより,戸籍事務の処理体制自体の迅速化が図れます。 一60− 艦 戸籍だより 第135一号(平21.4) (2)住民サービスの向上 紙戸籍では,大量の戸籍簿の中から特定の戸籍を検索し,取り外 し,必要な作業が終われば,再び編てつするとい 行われていましたが,コンピュータシステムの下では,戸籍の検索 は瞬時にできますし,編てつなどの作業をする必要がなくなるため, 市区町村側からみれば各種証明書発行に要す右処理時間の大幅な短 縮が図れるとともに,住民側からみれば,・待ち時間は大幅に減少し ます。 このように,戸籍事務のコンピュータ化には,様々なメリ ㊥ 撃たち戸籍事務に従事する者にとってみれば・まさに待望のシステムと いっても過言ではありません。 一方で,住民の視点にたって考えてみると,いくら戸籍事務の正確性 及び迅速性が ません。今,住民の方々が望んでいるのは,①インターネットによる各 種証明書の交付請求,②各痙証明書の電子証明書での取得,③各種届書 のインタ∵ネットによる届出といったものであり,インターネットと戸 籍システムが連動する戸籍事務のオンライン化こそが求められているの ではないでしょうか。 戸籍事務に従事する方々の中には,戸籍のコンピュータ化ですら,ま だまだおぼっかない状態であるのに,戸籍のオンライン化なんて∴まだ 当分先の話だと思われる方も多いかも知れません。 ㊥ しかしながら,法整備甲面からみれば,行政手続等における情報通信 の技術の利用に関する法律(平成14年払律第151号。以下「情報通 信技術利用法」という。)及び行政手続等における情報通信の技術の利 用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成ト4 年法律第152号)の施行に伴い,戸籍法施行規則の一部を改正する 令(平成16年法務省令第28号)が施行され,これにより,市区町村 長は,情報通信技術利用法第3粂第1項に規定する電子情報処理組織(い わゆるオンラインシステム)を使用して戸籍事務を行うことができるこ ととなりました。また,オンラインシステムによる戸籍事務の取扱いに ついても,平成16年4月1日付け民一第928号民事局長通達に■より ①オンラインシステムによる戸籍事務の取扱い(範囲等),②オンライ ー61− 青攣ギ皐り 井1亭5号(平21・4) ンシステムの使用(手続),③オンライン届出等の処理,④オンライン システムにおける文字の取扱いといったオンラインシステムにょる事務 の取扱いが示されており,もはや法的には実現可能な状況にあるといえ ます。 もちろん,戸籍事務のオンライン化については,導入に係る諸経費に おいて相宰の財政負担が見込まれることから,現在の厳しい経済状況で は,近年中の実現は難しいかもしれませんが,戸籍の各種証明書は,パ スポートや登記等の行政事務に欠かせないもめであることから,戸籍事 務のオンライン化がなされて初めてゝ 他の行政事務のIT化が実現され るものであり,・戸籍事務に従事する者の責任として,戸籍事務のオンラ イン化の実現を要望していくことが・必要なのではないでしょうか。 聡 (戸籍課 八木) ー62− 戸籍だより 第135号(平21.4) ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※避¥※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 知 板 ※※※※※※※※※※※※ ※※※※※※※※※※ お知らせ 平成21年4月1日付けで大阪法務局長及び民事行政部長に人事異動 がありましたので,お知らせします。 {..● 大阪法務局長 白石 研二 民事行政部長 田村 隆平 次号掲載予定内容 ◎巻頭言 ◎大阪法務局本局管内戸籍定例会の開催結果について ◎平成21年度市区町村戸籍事務従事職員初級者研修セミナー問題 解答 ◎電話相談事例(94) ◎戸籍のポケット ∼都合により内容が変更されることがあります∼ \ −63− 戸籍だより 第135号(平21.4) 大阪法務局戸籍事務担当者名簿(平成21年4月1日現在) 所属庁名 職 名 氏 名 大阪法務局 戸籍課長 寺田.章 民事行政部戸籍魂 第一係長 西村 隆 第二係長 西 ひろみ 戸籍国籍相談官 中野 利彦 戸籍指導官 虞瀬 幸博 戸籍指導官 中村 泰平 戸籍指導官 南野 健一 事務官 秋山 亜希子 事務官 槍垣 陽 事轟官 八木 秀典 大阪法務局北大阪支局 大阪法務局東大阪支局 大野法務局堺支局 大阪法務局富田林支局 大阪法務局岸和田支局 支局長 大平 武男 総務課長 n 益本 吉啓 民事専門官 橋本 浩和 事務官 近藤 敦史 事務官 竹原 友深 事務官 松島 理絵 支局長 石由 裕計 総務課長 春名 貴英 民事専門官 家瀬 昌幸 戸籍係長 小林 拓之 戸籍指導官 島田 健治 戸籍指導官 宗本 亜希子 事務官 波部 友博 支局長 木南 敏規 総務課長 轟藤 勤 民事専門官 阿部 琴− 戸籍課長 土屋 佳代 戸籍係長 松田 稔 戸籍指導官 西村 好明 支局長 岡野 良彦 総務課長 森本 勉 民事専門官 寺野 洋一 事務官 菅野 公子 支局長 福本 由美子 総務課長 大浦 良二 民事専門官 根木 進 事務官 U」内 和子 事務官 石田 仁也 畷 戸籍だより第135号(乎21.4) §・§ § §§§§§§ § § § §§§§§ §§§§ §§§§§§§§ § § 編 後 集 記 §§ § §§§§§§ § § § §§§§§ § § § § §§§§§§ § § § § 日に日に暖かい空気を感じ,心もウキウキしてくる季節ですが,誌 友の皆様はいかがお過ごしセしょうか。暖かくなるとともに花粉症に も悩まされる季節でもあり,日.々苦労されている方も多いと思います。 また,この時期は人事異動等での出会いと別れの季節でもあります。 私事ですが,今号で「戸籍だより」の編集から離れることになりま した。情報誌を発刊することの大変さと・,出来上がったときの安心感 ⑪ を交互に毎回感じつつ,今の時代に治った新しい情報発信方法に変換 する時期にきているのでは?と考えながらの1年でした。 ★ 寺田戸籍課長から着任のごあいさつをいただきました。戸籍課は 課長含め4名−の新メンバーが着任し,新体制で今年度をスタートし ます、ので,よろしくお願いいたします。 ★ 「平成20年度大阪準務局管区内地方法務局戸籍・国籍事務担当 者打合せ会」の戸籍関係における協議問題と協議結果(京都地方法 務局・奈良地方法務局・大津地方法務局)を掲載しましたので執務 の参考にして下さい。 ★「第59回戸籍事務研究会協議結果」 ⑪ 事冨星?臭農芸芸這苦警雲警警誓昌志望忘票 ました。 その協議結果の趣旨を要約して掲載します。 ★ 「第5回大阪法務局本局管内戸籍定例会の開催結果について」 今回は,・ 1日から施行されたことに伴う戸籍事務の取扱いについて説明を行 いました。 ぅ また,協議問題「棄児について戸籍が編製された後,当該棄児の 父又は母が判明した場合の取扱いについて」検討及び協議を行いま した。定例会につきましては,本年6月4日(木)に第6回を開催 予定しておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。 ⊥65− 戸籍だより 弟135号(平・21.4) ★ 「電話による質疑応答事例(93)」 皆様から,毎回御好評いたたいており 載しておりますので,事務処理上の参考に御活用..ください。 ★ 「戸籍雑感∼支局の戸籍係∼」と琴して,今回は東 田戸籍係長に執筆いただきまし七。支局にお.ける戸籍係は,支局の 規模等にもよりますが,総務課としての業務が広範囲にわたるため, 他の事務を兼務しながら,戸籍・国籍事務処理をするという支局独 特の大変な面があります。そのためにも戸籍定例会.は,戸籍事務に 必要不可欠なものセあり,秀美させていかなければならないと思い ます。 ★ 「戸籍のポケット」 「戸籍事務のIT化を目指して!」と零して 筆いただきました。戸籍事務のオンライン化は,「ネット依存症」 ではない「アナログ人面」,(私の事ですが・・■。)にとっては,夢の よう▼な話と思ってしまうのですが,インターネット社会においては, 決して夢で終わらないようにしたいものです。 (編集子・西) §§§§§§§一§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§ −66− 戸籍だより 第135号(平21,4) 配 席 表 大阪法務局民事行政部戸籍課 平成 21年 4 月1日 現在 出入口 −67−
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