EDUCATIONAL COURSES of JUA 2014 in KOBE 日本泌尿器科学会 2014年卒後教育プログラム 2014年4月24日(木)〜27日(日) 神戸市:神戸国際展示場 1号館 第102回日本泌尿器科学会総会における「卒後教育プログラム」の担当講師のご紹介と内容の概説(シラバス)をお届けいた します。多くの会員の皆様方のご参加をお待ちいたしております。 この度の卒後教育プログラムは14の専門部会すべてにおいて企画され、全部で17コース開設しております。プログラム内容 を充実させ、なるべく多くの方が受講できるように日時を設定しております。 本プログラムの実施にあたりましては総会会長の香川大学、筧善行教授および教室の先生方より全面的にご支援とご協力を 頂いておりますことを申し添えるとともに、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。 原 勲(教育委員会委員長) 開 催 概 要 1.日 時 4月24日(木) 9:30-11:00 [1]研究入門コース3)「癌の浸潤・転移・接着機構の研究」 基礎研究 10:10-11:40 [2]泌尿器がんの画像診断の基礎知識 泌尿器科腫瘍 13:30-15:00 [3]CRPC(去勢抵抗性前立腺癌)の治療 泌尿器科腫瘍 14:10-15:40 [4]泌尿器科医が知っておくべき感染症ガイドライン ─ CRBSI・Sepsis・FN ─ 尿路性器感染症 16:00-17:30 [5]陰茎腫瘍の診断と治療 泌尿器科腫瘍 4月25日(金) 10:10-11:40 [6]神経因性膀胱の診断と治療 排尿機能・神経泌尿器科 13:30-15:00 [7]前立腺肥大症の診断と治療 老年泌尿器科・前立腺肥大症 14:10-15:40 [8]尿路結石の診断・治療・再発予防 尿路結石 16:00-17:30 [9]泌尿器科における成育医療 16:40-18:10 [10]泌尿器腹腔鏡手術ガイドライン 小児泌尿器科 エンドウロロジー・腹腔鏡 4月26日(土) 9:30-11:00 [11]拒絶反応:診断と治療 腎不全・腎移植 10:10-11:40 [12]医療事故を紛争化させないために ~医療紛争・医療裁判の実態を踏まえて~ 医療制度・保険等 15:30-17:00 [13]泌尿器科血管病変の救急 外傷・救急医療 16:10-17:40 [14]女性泌尿器科疾患の特徴と診療のコツ ~女性下部尿路症状診療ガイドライン活用術~ 女性泌尿器科 4月27日(日) 9:30-11:00 [15]性機能障害診療の実際 内分泌・生殖機能・性機能 10:10-11:40 [16]オフィスウロロジーにおけるマネジメントとマーケティング Part3 ~オフィスウロロジーと画像診断~ 13:30-15:00 [17]進行性腎細胞癌の治療 オフィスウロロジー 泌尿器科腫瘍 2.会 場 神戸国際展示場1号館 2F 第6会場(展示室A) 4月24日(木) [1]・[3]・[5] 4月25日(金) [6]・[7]・[9] 4月26日(土) [11]・[13] 4月27日(日) [15]・[17] 第7会場(展示室B) 4月24日(木) [2]・[4] 4月25日(金) [8]・[10] 4月26日(土) [12]・[14] 4月27日(日) [16] 3.定 員 各コース 400名 ・定員になり次第、チケット販売は締め切りますのでご注意くださいい。 4.受講料 1コース 2,000円 5.テキスト 1冊 2,000円(17コース収録) ・「卒後教育プログラムテキスト販売デスク」にて随時販売いたします。 6.研修単位 1コース 5点 ・単位登録には会員カードが必要ですので、忘れずにご持参ください。 ・ 各コースとも、会場入口にて会員カードとチケットを提示しバーコードチェックを受けて入室し、講座終了 後の退室時には会場出口において必ずバーコードチェックを受けてください。 ・入退室両方のバーコードチェックのないものは、単位登録されませんのでご注意ください。 7.受講申込み ・事前オンライン販売を利用なさらなかった方は、受講される前にチケットをご購入ください。 ・ 販売場所は、神戸国際展示場2号館1階の「卒後教育プログラムチケット販売デスク」です。 ※受講会場ではご購入できませんので、ご注意ください。 ・ 表の通り、当日開催されるコースのチケットのみご購入いただけますが、各コースとも定員に達した時点で 販売終了とさせていただきますので、ご了承ください。 【チケット販売日時】 開催日時 コース No. 9:30~11:00 [1]* 10:10~11:40 [2]* 会場販売日時 7:30~ 9:55 7:30~10:35 4/24(木) 13:30~15:00 [3]** 4/24(木) 7:30~13:55 14:10~15:40 [4]** 7:30~14:35 16:00~17:30 [5] 7:30~16:25 7:30~10:35 10:10~11:40 [6] 13:30~15:00 [7]* 7:30~13:55 4/25(金) 14:10~15:40 [8]* 4/25(金) 7:30~14:35 4/26(土) 16:00~17:30 [9]** 16:40~18:10 [10]** 7:30~16:25 7:30~17:05 9:30~11:00 [11]* 7:00~ 9:55 10:10~11:40 [12]* 15:30~17:00 [13]** 4/26(土) 7:00~10:35 7:00~15:55 16:10~17:40 [14]** 7:00~16:35 9:30~11:00 [15]* 7:30~ 9:55 4/27(日) 10:10~11:40 [16]* 4/27(日) 7:30~10:35 13:30~15:00 [17] 7:30~13:55 ※ 「*」または「**」の付してあるコース(下記)は、講義時間が重なっているため、両方のコースを 受講することはできません。 4月24日(木) [1]と[2] [3]と[4] 4月25日(金) [7]と[8] [9]と[10] 4月26日(土) [11]と[12] [13]と[14] 4月27日(日) [15]と[16] 基礎研究 4/24(木)9:30〜11:00 [1]研究入門コース3)「癌の浸潤・転移・接着機構の研究」 診断や治療技術の進歩により多くの癌が治癒可能となっている。しかし、転移癌などの進行癌は現時点でも根治は難しく、臨床医 が取り組むべき重要な研究テーマの一つである。 転移にはいくつかのステップがあり、そのいずれかを制御することができれば、進行癌を克服する道筋が開けてくる。このステッ プには、増殖能、血管新生能、細胞接着能、遊走能、浸潤能、免疫からの忌避能などが深く関わっている。したがって、これらを解 析することが、転移に関する研究の基本といえる。 転移に関する研究には、マウスなどの実験動物を用いた invivo での解析、増殖能、遊走能、浸潤能などをみる invitro での解析が ある。動物モデルは、より臨床に近いという長所があるが、それぞれの癌の特徴を反映したモデルを作成することは容易ではない。 また、自然発生する臨床癌と異なり、動物モデルの多くは癌組織や癌細胞を移植して行っていることも課題として残る。癌細胞を用 いた in vitro の解析は、遺伝子の機能を評価する上で有用あり、転移における各ステップを個別に解析する上でも簡便である。しか し、あくまでも試験管内での現象であり、invivo の複雑な環境を再現することは困難である。 今回の卒後教育プログラムでは、これらの背景を十分に熟知した先生方と泌尿器癌における研究の実際を紹介していきたい。まず、 市川が前立腺癌に対する転移抑制遺伝子の同定について紹介し、癌研究における細胞遺伝学の重要性について述べる。次いで、京都 大学 神波大己先生には、教室で樹立されたマウス転移モデルを用いた研究の実際を示していただく。千葉大学 坂本信一先生には、 大学院生が一つの論文を仕上げる中で、in vitro の解析がどのように位置づけられているかを示していただく。いずれの先生も実際 に手を動かし、また直接研究を指導されている立場であることから、研究に興味を持たれている先生方にとって大変興味深くまた参 考になるものと期待している。 市川 智彦 昭和59年 千葉大学医学部卒業 平成元年 ジョンズホプキンス大学オンコロジー センター 同 10年 千葉大学医学部附属病院講師 同 13年 同 大学院医学研究院助教授 同 16年 同 泌尿器科学教授 神波 大己 平成4年 京都大学医学部卒業 同 11年 同 大学院医学研究科博士課程入学 同 15年 米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校 研究員 同 17年 京都大学大学院医学研究科泌尿器科助手 (現助教) 同 23年 同 講師 坂本 信一 平成11年 千葉大学医学部卒業 同 18年 ケンタッキー大学泌尿器科ポストドクトラル フェロー 同 21年 千葉大学医学部附属病院泌尿器科助教 同 22年 同 大学院医学研究院泌尿器科学助教 泌尿器科腫瘍 4/24(木)10:10〜11:40 [2]泌尿器がんの画像診断の基礎知識 現状の CT および MRI 撮影においては放射線科のレポートがあり、より正確性の高い画像診断となっている。しかし癌診療を行う 上で癌の画像診断は手術の際の地図となり、化学療法などにおいての評価病変となるため泌尿器科医としてもその診断能力は重要で ある。 本卒後教育セミナーは、泌尿器科領域の特に尿路および骨盤内の画像診断に関して新進気鋭の放射線科の先生に講義をして頂く。 上部尿路に関しては腎腫瘍および上部尿路の尿路上皮癌を中心に CT および MRI の診断に関して慶応義塾大学放射線科学教室の陣 崎先生にお願いし、下部尿路および前立腺に関して獨協医科大学放射線科学教室の楫先生にお願いしています。 本シリーズでは泌尿器腫瘍の診断に関して、近年の電子カルテによる画像のスクロールによるチェックにも活かせる確認および診 断の仕方もご教授して頂き、セミナー終了時には CT および MRI の読影がすらすら行えることが目標としている。是非明日の泌尿器 画像オタクの参加をお待ちしています。 近藤 幸尋 昭和60年 日本医科大学卒業 同 62年 関東逓信病院(現 NTT 東日本関東病院) 泌尿器科 平成4年 ピッツバーグ大学医学部薬理学教室リサーチ・ アソシエイト 同 12年 日本医科大学助教授 同 21年 同 教授 楫 靖 平成元年 島根医科大学医学部卒業 同 10年 天理よろづ相談所病院放射線部 MR 部門 医員 同 13年 神戸大学医学部放射線科講師 同 18年 獨協医科大学放射線医学講座主任教授 陣崎 雅弘 昭和62年 慶應義塾大学医学部卒業 平成6年 同 放射線診断科助手 同 11年 ハーバード大学付属BrighamandWomen’s Hospital研究員 同 18年 慶應義塾大学放射線診断科講師 同 21年 同 准教授 泌尿器科腫瘍 4/24(木)13:30〜15:00 [3]CRPC(去勢抵抗性前立腺癌)の治療 近年、進行性前立腺がん(去勢抵抗性前立腺がん;以下 CRPC)に対する考え方と治療法は、劇的に変化した。従来、アンドロゲ ン枯渇療法(以下 ADT)抵抗性となり、二次抗アンドロゲン交替療法や合成女性ホルモン療法後、再燃した症例をホルモン抵抗性 前立腺がん(以下 CRPC)と呼んでいたが、HRPC 後も種々の機序によりアンドロゲン受容体(以下 AR)活性が残存することが発 見され、ホルモン抵抗性と判定する時点の定義が困難となり、初期 ADT により血清テストステロンは去勢レベルにありながら PSA 上昇を中心とした病勢の進行を CRPC と定義するようになった。 治療においては従来より使用されていた LH-RHagonist に加え、LH-RHantagonist が本邦でも承認され、臨床に用いられている。また これまで CRPC 後の標準治療は、ドセタキセルのみであり、抵抗性となった後の有効な治療法は存在しなかった。しかし、アンドロゲン 合成経路 CYP17A 遮断により抗腫瘍効果を発揮する Abiraterone、AR を標的とし、3種類の抑制効果(リガンド結合、核内移行、DNA 結合抑制)を有する Enzaltamide (MDV3100) は、ドセタキセル治療前、治療後の双方で良好な抗腫瘍効果が報告され、本邦でも承認予 定である。今後も申請・承認を控えた新規治療薬を含めると、従来では考えられなかったほど多くの治療選択肢が広がることになる。 一方で、進行性前立腺癌発生の機序やこれら新規治療薬の臨床成績、有害事象などは断片的な知識しかない状態であり、その使い 方やタイミングについては五里霧中の状態といってよい。本プログラムでは3名の講師により CRPC の発生機序(担当:松山豪泰) 、 CRPC に対する新規薬剤の基礎知識(担当:溝上 敦)、新規薬剤の臨床的エビデンスと治療戦略(担当:鈴木啓悦)の3つのパート 構成で、CRPC の治療を基礎と臨床の両面から概説する。 松山 豪泰 昭和56年 山口大学医学部卒業 平成4年 スウェーデン王立カロリンスカ研究所留学 同 8年 山口赤十字病院泌尿器科部長 同 13年 山口大学医学部泌尿器科助教授 同 20年 同 大学院医学系研究科泌尿器科学分野教授 鈴木 啓悦 平成2年 千葉大学医学部卒業 同 8年 米国ジョンズ・ホプキンス大学オンコロジー センター研究員 同 17年 千葉大学医学部附属病院泌尿器科講師 同 18年 同 大学院医学研究院泌尿器科学助教授 同 22年 東邦大学医学部泌尿器科学講座(佐倉)教授 溝上 敦 昭和62年 産業医科大学病院泌尿器科 平成4年 Wisconsin 大学 ComprehensiveCancer Center 留学 同 7年 金沢大学医学部泌尿器科助手 同 16年 同 講師 同 25年 同 准教授 尿路性器感染症 4/24(木)14:10〜15:40 [4]泌尿器科医が知っておくべき感染症ガイドライン─ CRBSI・Sepsis・FN ─ 泌尿器科医療の特徴的な側面は、外科的治療のみではなく、抗菌薬や抗癌剤による化学療法、尿道カテーテル・血管カテーテル管 理など、内科的治療に対する高度な技術と知識を必要とされることである。本コースでは、泌尿器科領域において全身管理を必要と する重症感染症を制御するためにも知っておくべき3つのガイドラインを紹介する。 ① カテーテル関連血流感染(Catheterrelatedbloodstreaminfection:CRBSI) :血管カテーテルの種類(末梢静脈・中心静脈) 、留 置部位、留置手技(皮膚消毒/maximalbarrierprecaution/ドレッシング)、交換手技、感染予防法、など。 ② 敗血症(Sepsis) :定義・重症度分類、診断(画像診断、血液検査、DIC)、血液培養採取法、感染症バイオマーカー(CBC、CRP、 PCT、IL-6)の意義、抗菌薬選択・投与法、補助療法(ステロイド、免疫グロブリン、エンドトキシン吸着療法)の有効性。 ③ 発熱性好中球減少症(febrile neutropenia:FN):リスク分類、診断と治療、予防抗菌薬の適応、抗真菌薬/抗ウイルス薬の適 応、G-CSF 製剤の適応、など。 若手医師のみでなく病院感染症対策の中心となっている中堅医師にも是非ともご聴講いただき、update された最新の知識を明日か らの診療に役立たせていただきたい。 山本 新吾 田中 一志 高橋 聡 濵砂 良一 昭和62年 京都大学医学部卒業 平成7年 アラバマ大学客員研究員 同 14年 京都大学大学院泌尿器科学分野講師 同 17年 兵庫医科大学泌尿器科准教授 同 21年 同 主任教授 平成4年 札幌医科大学医学部卒業 同 9年 国立感染症研究所協力研究員 同 12年 札幌医科大学医学部泌尿器科助手 同 14年 ワシントン大学(シアトル)研究員 同 18年 札幌医科大学医学部泌尿器科講師 平成2年 神戸大学医学部卒業 同 13年 同 附属病院泌尿器科助手 同 17年 同 講師 同 21年 同 大学院医学研究科腎泌尿器科学分野 特命准教授 同 24年 同 泌尿器先端医療開発学部門特命教授 昭和60年 愛媛大学医学部卒業 同 63年 宮崎医科大学医学部泌尿器科助手 同 10年 同 講師 同 15年 デンマーク王立血清研究所研究員 同 21年 産業医科大学泌尿器科講師 泌尿器科腫瘍 4/24(木)16:00〜17:30 [5]陰茎腫瘍の診断と治療 陰茎腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍があるが、特に問題となるのは陰茎悪性腫瘍の95% を占める陰茎扁平上皮癌(狭義の陰茎癌)で ある。陰茎癌は日本を含む先進国ではまれな疾患であり、その頻度は全悪性腫瘍の0.4% から0.6% であり泌尿器科医が日常診療で遭遇 することはまれである。しかし50歳から70歳までの高齢者に多く、疾患の特性上病院受診が遅れがちであるため、初診時には約30% の症例で鼠径リンパ節転移がみられ、5年生存率は約50% と予後不良である。したがって、正確な初期診断とそれに基づく適切な治 療が重要である。とは言っても患者数も非常に少なく、他の泌尿器癌と比較すると陰茎癌の診断法や治療法が進歩しているとは言い 難い。こうした状況の中で今回の卒後教育プログラムでは、最近の知見も含め、陰茎腫瘍の診断と治療について3名の講師に講義し ていただく予定である。まず中川(鹿児島大学)が陰茎腫瘍の疾患概念・疫学・病因について概説させていただき、湯村先生(横浜 市立大学)に陰茎腫瘍の診断(症状・診断方法・病期分類)と欧米のガイドラインから基本的な治療方針を示していただく。そして 呉屋先生(琉球大学)には陰茎腫瘍の治療として手術療法(陰茎全切除・陰茎部分切除・リンパ節廓清術)また温存療法としての放 射線・化学療法・レーザー治療等について概説していただく予定である。専門医を目指す先生方はもちろんのこと、指導医の先生方 にも最近の情報の整理や知識の確認にお役立ていただけるものと確信している。 中川 昌之 昭和56年 熊本大学医学部卒業 平成元年 アメリカ国立がん研究所(NCI)客員研究員 同 4年 大分医科大学泌尿器科講師 同 8年 同 助教授 同 11年 鹿児島大学医学部泌尿器科教授 呉屋 真人 平成5年 琉球大学医学部卒業 同 18年 那覇市立病院泌尿器科医長 同 21年 同 部長 同 23年 琉球大学医学部泌尿器科講師 湯村 寧 平成5年 横浜市立大学医学部卒業 同 20年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 泌尿器・腎移植科助教 同 23年 同 講師 同 24年 同 生殖医療センター泌尿器科講師 排尿機能・神経泌尿器科 4/25(金)10:10〜11:40 [6]神経因性膀胱の診断と治療 神経因性膀胱は下部尿路機能に関与した神経の障害によって生じ、下部尿路機能障害や下部尿路症状を呈する病態である。病因と なる神経障害は、脳・脊髄などの中枢神経から尿道・膀胱にかかわる末梢神経のいずれの部位にも生じる可能性があり、結果として 生じる下部尿路機能障害の病態が神経障害の部位や範囲に応じて多岐にわたることが少なくない。また神経因性膀胱では、尿意切迫 感、頻尿、尿失禁、排尿困難感などの下部尿路症状が患者の QOL に影響を与えるのに加えて、有熱性尿路感染症や腎・上部尿路障 害が生じることによって生命予後にも影響をおよぼす可能性もある。そのため日常診療では、様々な神経疾患によって生じる下部尿 路機能障害の病態を理解した上で適切な診断を行い、その病態に合わせた治療を行うことが必要となってくる。 本プログラムでは、まず(1)正常な下部尿路機能について理解した上で、様々な神経疾患によって生じる神経因性膀胱の病態に ついて概説する。続いて(2)神経因性膀胱を診断するうえで重要なウロダイナミクスについて概説した上で、ウロダイナミクス所 見を含めた神経因性膀胱の診断におけるストラテジーとポイントについて、さらに(3)最新の知見を含めた神経因性膀胱の病態に 応じた治療法について概説する。それぞれのセッションでは、具体的な症例を提示し日常診療で役に立つような内容にできたらと考 えている。 最後に、次世代の泌尿器科を担う若い先生方はもちろんのこと、すでに第一線で日常診療にあたられている先生方にも、神経因性 膀胱の診断と治療について少しでも理解を深めていただき、日常診療ですぐに実践できるようなプログラムにしたいと考えている。 三井 貴彦 平成5年 北海道大学医学部卒業 在日アメリカ海軍病院(横須賀市)インターン 同 14年 米国ドレクセル大学博士研究員 同 18年 北海道大学病院助手 同 19年 同 助教 松川 宜久 平成12年 名古屋大学医学部医学科卒業 半田市立半田病院研修医、泌尿器科医員 同 15年 名古屋大学医学部附属病院泌尿器科医員 同 17年 同 泌尿器科助手 同 18年 同 大学院医学系研究科泌尿器科助教 老年泌尿器科・前立腺肥大症 4/25(金)13:30〜15:00 [7]前立腺肥大症の診断と治療 前立腺肥大症は男性下部尿路症状(Male-LUTS)をきたす代表的な疾患であり、泌尿器科医のみなならず、一般医においても広く 診療がおこなわれるようになってきている。また、2008年9月に男性下部尿路症状診療ガイドライン(一般医向け)が、2011年6月 には前立腺肥大症診療ガイドライン(泌尿器科専門医向け)が出版され、それらのガイドラインに基づく診療の標準化が図られてき ている。 最近の LUTS に関する研究の発展は著しく、前立腺肥大症に基づく LUTS の発生機序やその病態解明においても新たなエビデン スが蓄積されてきている。臨床的にもこの複雑な病態を的確に判断することにより、患者のニーズに即した診療を行うことが可能に なると考えられる。特に、一般医から紹介されてくる、初期治療に対して抵抗性を示す患者に対する診療の際には、このことが重要 となってくる。 前立腺肥大症診療ガイドラインによる治療の第一選択は生活指導と薬物療法であり、薬剤としてはα1遮断薬が最も汎用されてい る。しかし、新たな作用機序の薬剤も開発され、多くの薬剤をどのように選択し、それらをどのように併用していくかについて、苦 慮することも少なくない。また、TUR-P をはじめとして、多くの外科治療法の選択肢がある中、全ての手術法を習得することは容易 ではないが、それぞれ方法の特徴などについての理解が望まれる。また、前立腺肥大症は進行性の疾患であることを念頭に置き、治 療法の長期成績について把握しておくことも必要である。 本プログラムでは、病態把握のための検査や、それに基づく薬物療法と外科療法の選択および臨床効果と安全性などについて提示 するとともに、最近の治療法の進歩や前立腺肥大症診療のこれからの展望などを含めて、3人の講師が解説する予定である。 吉田 正貴 昭和56年 熊本大学医学部卒業 平成元年 米国 Yale 大学医学部泌尿器科教室に留学 同 8年 熊本大学医学部泌尿器科助(准)教授 同 21年 熊本労災病院医療情報部部長 同 24年 国立長寿医療研究センター手術・ 集中治療部部長 舛森 直哉 昭和63年 札幌医科大学卒業 平成10年 米国ヴァンダビルト大学研究員 同 13年 札幌医科大学泌尿器科講師 同 18年 同 助教授 同 25年 同 教授 住野 泰弘 平成9年 大分医科大学医学部卒業 同 19年 大分大学医学部大学院医学系研究科修了 同 付属病院腎臓外科・泌尿器科助教 同 23年 ピッツバーグ大学泌尿器科 同 24年 大分大学医学部腎泌尿器外科学講座講師 尿路結石 4/25(金)14:10〜15:40 [8]尿路結石の診断・治療・再発予防 「尿路結石症診療ガイドライン」が2013年9月に改訂された。日本泌尿器科学会、日本泌尿器内視鏡学会、日本尿路結石症学会の共 同作成によるもので、初版から10年あまり経過しての改訂である。10年を振り返ると、知見の集積、新たな技術の開発と普及に伴い、 診断、治療、再発予防のすべてで、日常診療も大きく変化していることが判る。CT の一般化、軟性尿管鏡など手術機器の改良、予 防法のエビデンスの確立などはその代表例である。今回のガイドラインでは他のガイドライン同様に CQ(クリニカルクエスチョン) 形式に変更され、疫学、診断・治療、再発予防で38項目が用意された。 尿路結石は泌尿器科診療の中で最も多い疾患の一つであり、ほぼすべての泌尿器科医が診療に携わっているであろう。尿路結石は 尿中の結晶核の形成・成長・凝集・個化と段階を経て形成されるとされてきたが、肥満など生活習慣病との関連、プラーク形成によ る形成機序など新たな概念も確立されてきている。尿路結石診療のエッセンスから応用まで、特にガイドラインで変化した内容を中 心に、3名の新進気鋭の先生方から講演いただく。「疫学・診断」では疫学的知見と診断方法について、 「治療」では排石促進から手 術治療の選択まで、「再発予防」ではこれまでのエビデンスをまとめながら解説頂く予定である。 専門医を目指す先生はもちろんのこと、指導医の先生方にとっても新たな知見が得られる有用な時間になるものと確信している。 安井 孝周 永田 仁夫 濵本 周造 井口 太郎 平成6年 名古屋市立大学医学部卒業 同 14年 国家公務員共済組合連合会名城病院医長 同 12年 名古屋市立大学助手 同 21年 愛知厚生連海南病院部長 同 22年 名古屋市立大学大学院医学研究科講師 平成13年 名古屋市立大学医学部卒業 同 21年 同 医学研究科腎・泌尿器科学分野助教 同 24年 愛知厚生連豊田厚生病院泌尿器科医長 同 25年 同 内視鏡部長 平成9年 浜松医科大学医学部卒業 同 医学部泌尿器科学講座入局 同 18年 同 助手 同 19年 同 助教 平成10年 大阪市立大学医学部卒業 同 16年 同 大学院修了 同 18年 SUNYUpstateMedicalUniversity 留学 同 20年 大阪市立大学病院講師 同 22年 同 講師 小児泌尿器科 4/25(金)16:00〜17:30 [9]泌尿器科における成育医療 「成育医療」とは、多くの泌尿器科医にとって、なじみが薄く、解りにくい言葉であると思われる。先進国の多くおいて、近年提唱 されるようになった「小児医療の発展型」と捉えることもできるが、泌尿器科医にとっては、それは一面的な理解である。これは、 腎・尿路・性腺・生殖器の臓器専門診療科の本質に関わる概念であり、パラダイムシフトとも考えられる。 成育医療は、 「胎児期、新生児期、乳幼児期、学童期、思春期を経て次世代を育成する成人期にまで至る人のライフサイクルの過程 で生じる様々な健康問題を包括的に捉え、それに適切に対応することを目指す医療」と定義され、 「小児医療、母性・父性医療および 関連・境界領域を包括するもの」とされる。Keyword は、「ライフサイクル」である。 成育医療の概念が泌尿器科にとって重要なのは以下のような理由による。① subspecialty として小児を扱う(小児泌尿器科)。② その対象疾患の中には、CAKUT(CongenitalAnomalyofKidneyandUrinaryTract)をはじめとする出生前診断例が少なくない (胎児診断)。③治療した後にも、思春期・青年期に追加治療や経過観察が必要なものが少なくない(生殖機能、腎機能、排尿機能) 。 ④精巣・男子外性器の治療に直接的に関わり、最終的に男性不妊治療を行う(父性医療) 。⑤小児期の女児外性器の手術治療(性分化 疾患)に直接的に関わり、遠隔的だが母性医療に関与する。つまり、泌尿器科においては、トランジション(キャリーオーバー)の 問題に留まらず、対象臓器そのものが、胎児期から妊娠出産あるいは父性(母性)獲得までのヒトのライフサイクルに深く関わる。 従来からの抗加齢的医療に加え、成育医療の視点が積極的に導入されることにより、より隙のない(見落とされる患者のない)総 合医学としての泌尿器科の体勢が整うことが期待される。本プログラムにて、若手の泌尿器科医が、泌尿器科学の広がりを実感する ことが出来れば、成功である。 中井 秀郎 岡田 弘 浅沼 宏 長谷川 雄一 昭和56年 慶應義塾大学医学部卒業 同 63年 都立清瀬小児病院泌尿器科医員 平成4年 同 医長 同 17年 獨協医科大学越谷病院泌尿器科助教授 同 19年 自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児泌尿器科教授 平成2年 愛媛大学医学部医学科卒業 同 4年 慶應義塾大学泌尿器科助手 同 16年 東京都立清瀬小児病院泌尿器科医長 同 19年 米国 Indiana 大学 ResearchFellow 同 21年 慶應義塾大学泌尿器科専任講師 昭和55年 神戸大学医学部医学科卒業 同 60年 NewYorkMedicalCollege 留学 平成14年 神戸大学医学部助教授 同 15年 帝京大学医学部泌尿器科助教授 同 19年 獨協医科大学越谷病院泌尿器科教授 平成9年 東京医科大学卒業 同 11年 癌研究会付属病院泌尿器科 同 12年 東京都済生会中央病院泌尿器科 同 14年 東京慈恵会医科大学泌尿器科 同 20年 国立成育医療研究センター泌尿器科 エンドウロロジー・腹腔鏡 4/25(金)16:40〜18:10 [10]泌尿器腹腔鏡手術ガイドライン 泌尿器腹腔鏡手術ガイドラインの初版は2008年4月に日本泌尿器内視鏡学会から発行された。このガイドラインは evidence-based medicine(EBM)に基づく手法で作成されたものの、各種腹腔鏡手術においては大規模なランダム化比較試験などのエビデンスレベ ルの高い文献が非常に少なかったため、各参考文献のエビデンスレベルのみ示され、推奨グレードは示されなかった。また、他の多 くの診療ガイドラインが採用している clinicalquestion(CQ)andclinicalanswer(CA) (Q&A)形式で記載されていなかった。近 年、単孔式腹腔鏡手術やロボット支援腹腔鏡手術などが開発・導入され、腹腔鏡手術は日進月歩に進歩しており、それに伴い新しい エビデンスも公表されている。以上の理由からガイドラインの改訂が必要となった。 本ガイドラインの改訂版は Q&A 形式で記載し、1術式について1つの主要な CQ を設け、CA には推奨グレードを定めることに した。ガイドライン改訂にあたって対象とした術式は、初版と同じ腹腔鏡下副腎摘除術をはじめとする泌尿器科領域における代表的 な6種類の腹腔鏡手術とし、今回新たに腹腔鏡下腎部分切除術とロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術を加えた。本ガイドライ ンの目的は、急増する腹腔鏡手術とその多様化する手術方法の発展に鑑み、適応基準、手術成績、および開腹手術と比べた低侵襲性 などに関する情報を EBM の概念に基づいて評価し、腹腔鏡手術の指針を提示するとともに、その適切な普及を図ることである。今 回の卒後教育プログラムにおいては、腹腔鏡下副腎摘除術、腹腔鏡下根治的腎摘除術、腹腔鏡下腎部分切除術、および腹腔鏡下腎尿 管摘除術のガイドラインを概説する。本卒後教育プログラムを通して泌尿器腹腔鏡手術ガイドラインについて理解を深めていただ き、日常の診療に役立てていただければ幸いである。 田中 正利 昭和55年 鳥取大学医学部卒業 平成6年 米国国立衛生研究所(NIH)留学 同 10年 九州大学医学部泌尿器科助教授 同 15年 福岡大学医学部泌尿器科主任教授 同 23年 福岡大学病院副病院長併任 服部 良平 昭和55年 名古屋大学医学部卒業 社会保険中京病院医師 平成元年 市立岡崎病院泌尿器科部長 同 12年 名古屋大学医学部泌尿器科講師 同 19年 同 准教授 同 24年 名古屋第一赤十字病院腎泌尿器内視鏡外科 部長 三股 浩光 昭和59年 大分医科大学医学部医学科卒業 平成8年 同 付属病院講師 同 12年 同 医学部助教授 同 16年 大分大学医学部教授 同 24年 同 附属病院副病院長(医療安全担当) 腎不全・腎移植 4/26(土)9:30〜11:00 [11]拒絶反応:診断と治療 腎移植の成否は確実な手術と行き届いた周術期管理にかかっている。強力な免疫抑制薬の登場と組織適合性検査の進歩により、急 性拒絶反応を経験する頻度は少なくなったが、時に厳しい拒絶反応を経験することはある。拒絶反応の診断の golden standard は腎 生検であり、組織診断により適切な治療を行っていく。しかし、移植後早期など出血のリスクが高い場合や針生検を行ったが、急速 な移植腎機能の悪化を認め、組織診断がつくまで治療を待つ事が出来ない場合などは、臨床診断のみで迅速な対応が必要な場合もあ る。いずれにしても急性拒絶反応の確実なコントロールが長期生着には必須である。一方で、維持期においては、内服不遵守(ノン アドヒアランス)や不十分な免疫抑制療法などが原因となり、急性/慢性拒絶反応を引き起こし、移植腎機能廃絶の危機にさらされ る。今回は腎移植の周術期管理、維持期の管理を担う若手泌尿器科医を主な対象に、4名の講師が、拒絶反応の診断および治療につ いて解説する。もちろん、現在、第一線で診療に当たっておられる先生方には、本講義が知識の整理と今後の診療の参考となれば幸 いである。 乾 政志 原田 浩 齋藤 和英 奥見 雅由 平成4年 香川医科大学卒業 同 13年 同 医学部附属病院助手 同 16年 香川大学医学部附属病院講師 同 24年 東京女子医科大学講師 同 25年 同 八千代医療センター准教授 昭和62年 新潟大学医学部卒業 平成6年 同 大学院医学研究科修了 同 10年 米国マサチューセッツ総合病院移植外科 同 11年 新潟大学医歯学総合病院講師 同 24年 同 移植医療支援センター副部長・ 病院准教授 医療制度・保険等 昭和62年 北海道大学医学部卒業 平成11年 市立札幌病院腎移植科副医長 同 13年 米国マサチューセッツ州ボストンチルドレ ンズホスピタル研究員 同 20年 市立札幌病院腎移植科副部長 同 21年 同 腎臓移植外科部長 平成9年 大阪大学医学部医学科卒業 同 10年 大阪府立急性期・総合医療センター泌尿器科 同 16年 米国マサチューセッツ総合病院/Harvard MedicalSchool 研究員 同 18年 鹿児島大学フロンティアサインエス研究 推進センター研究員 同 22年 大阪大学泌尿器科助教 4/26(土)10:10〜11:40 [12]医療事故を紛争化させないために~医療紛争・医療裁判の実態を踏まえて~ 医療者側代理人として、日々多くの医療紛争事案に携わる中で、医療者側・患者側双方に様々な誤解が生じているということ、更 に、その誤解が医療事故を紛争化させ、訴訟に発展してしまう一つの大きな要因となっていることを最近痛感する。 特に、医療事故直後の初期対応において誤解に基づく不用意な対処が、後々大きな火種となることが多いというのが実感である。 連日のように医療事故の報道がなされ、医療者側は常に訴訟リスクにおびえ、患者側は医療者に対する信頼を失いつつあるのが現 状である。 その結果、医療者側は、紛争化することを恐れるあまり、時として、過剰に患者側に迎合的となり、患者をモンスター化させてし まうケースも散見される。 本来、医療行為は医療者と患者とが対等で相互に信頼関係を構築しながら、病気の治癒という同じ方向に向かって協力しあえてこ そ成り立つものである。 そこで、本講演においては、このような様々な誤解をひも解きつつ、最近の医療訴訟・医療紛争の現状を踏まえ、医療者が問われ る法的責任、刑事手続きの流れ、さらには、民事裁判における医療者側の過失の判断基準である「医療水準」について概説するとと もに、医療訴訟において、 「診療ガイドライン」や薬剤の「添付文書」がどのような位置づけを持つのかについて、過去の裁判例を踏 まえて説明する。 本講演が、医療者側・患者側双方の誤解に基づく不幸な紛争回避の一助となれば幸いである。 水島 幸子 平成5年 中央大学大学院博士前期課程法学研究科 修了 同 14年 弁護士登録(大阪弁護士会) 弁護士法人淀屋橋・山上合同入所 同 16年 独立行政法人国立病院機構近畿ブロック 事務所 顧問弁護士 同 19年 水島綜合法律事務所 開設 外傷・救急医療 4/26(土)15:30〜17:00 [13]泌尿器科血管病変の救急 泌尿器科臨床で経験する救急疾患のうち、血管病変が原因となる疾患について、その病態と治療について概説する。 【講演分担】先 天性疾患、外傷性疾患を含めた後天性疾患、腫瘍性疾患、医原性疾患に分類し、泌尿器科学的見地から森田講師が診断と観血的治療 について述べ、血管病変の救急医療として近年急速に対象領域が拡大してきている Interventional radiology(IVR)の見地から阿保 講師が IVR 治療の実際について述べる。【対象疾患】先天性疾患としては腎動静脈瘻、腎動脈狭窄が代表的である。後天性疾患とし ては腎動脈瘤、特発性腎出血、腎梗塞が挙げられる。腫瘍性疾患としては腎腫瘍の出血性緊急症に対する治療が対象とる。医原性疾 患の治療としては、腎移植後の腎動脈狭窄症や出血合併症や、腎部分切除術後の仮性動脈瘤、腎生検後の腎動静脈瘻、尿路出血が臨 床上問題となる。【講演方法】これらの対象疾患毎に、症候、診断法、ガイドラインの有無や普遍的な治療のためのフローチャートの 紹介、保存的治療や観血的治療と IVR の選択基準などを中心に講演を行う。観血的治療では出来るだけ実際の症例を提示して解説す る。IVR については、これらの疾患を治療するために行われる動脈塞栓術(TranscatheterArterialEmbolization;TAE)や経皮的血 管形成術(PercutaneousTransluminalAngioplasty;PTA)についての自験例を中心に、その画像所見のポイントや IVR の手技の実 際等について解説する。泌尿器科専門医として知っておかなければならない血管病変の救急対応について、実践的な知識が習得でき る機会になれば幸いである。 森田 研 平成元年 北海道大学医学部卒業 同 9年 米国クリーブランドクリニック研究員 同 13年 北海道大学病院手術部助手 同 19年 市立釧路病院泌尿器科部長 同 24年 北海道大学病院泌尿器科講師 阿保 大介 平成11年 北海道大学医学部卒業 市立札幌病院画像診療科 同 13年 北海道大学大学院医学研究科 放射線医学分野 同 17年 北海道大学病院放射線科 同 20年 同 放射線部助教 女性泌尿器科 4/26(土)16:10〜17:40 [14]女性泌尿器科疾患の特徴と診療のコツ~女性下部尿路症状診療ガイドライン活用術~ 平成15年に行われたわが国での疫学調査によれば、40歳以上の女性の約半数が頻尿などの下部尿路症状を有する。女性下部尿路症 状(femalelowerurinarytractsymptoms;FLUTS)には、尿失禁、頻尿などの蓄尿症状に加えて排尿症状、排尿後症状がある。女 性下部尿路症状に関連するガイドラインには2004年に刊行された「EBM に基づく尿失禁診療ガイドライン」があるが、発刊からす でに9年が経過した。そこで本領域の診療と治療法の著しい発展を鑑み、このたびその内容を一新し、かつ女性下部尿路症状を有す る患者を包括的に診療するために「女性下部尿路症状診療ガイドライン」が作成された。このように尿失禁以外の女性下部尿路症状 を網羅するガイドラインは世界的にも新しいものである。 本ガイドラインの利用者としては、泌尿器科医師を中心に、広く下部尿路症状を訴える患者の診療に携わる医師・看護師・保健師 などの医療従事者を想定した。その構成は、1)診療アルゴリズム:初期診療のアルゴリズム、専門診療のアルゴリズム、2)女性 下部尿路症状とは、3)疫学と QOL、4)病態と疾患、5)診断、6)治療の6章からなる。また、計12題の ClinicalQuestion(CQ) を設けた。 今回は、この新しいガイドラインの概要を専門診療のアルゴリズムに沿って解説する。さらに骨盤臓器脱や間質性膀胱炎などの女 性泌尿器科疾患と下部尿路症状との関連とその診療のコツについて分かりやすく提示する予定である。 高橋 悟 昭和60年 群馬大学医学部卒業 平成5年 米国メイヨークリニック泌尿器科リサーチ フェロー 同 10年 東京大学医学部泌尿器科講師 同 15年 同 助教授 同 17年 日本大学医学部泌尿器科学系主任教授 嘉村 康邦 昭和60年 福島県立医大医学部卒業 平成11年 米国スタンフォード大学研究員 同 20年 四谷メディカルキューブ泌尿器科部長 同 21年 東京大学泌尿器科非常勤講師 同 25年 福島県立医大泌尿器科臨床准教授 藤原 敦子 平成11年 京都府立医科大学卒、 京都府立医科大学泌尿器科学教室入局 同 19年 同 大学院修了 同 23年 同 泌尿器外科泌尿器先端医療講座助教 同 25年 同 大学院医学研究科泌尿器外科学教室 助教 内分泌・生殖機能・性機能 4/27(日)9:30〜11:00 [15]性機能障害診療の実際 性機能障害には、勃起障害(erectiledysfunction;ED)、射精障害、性欲低下、オルガズム異常などが含まれるが、診療の現場で最 も遭遇するのが ED である。高齢化を迎えた現代、ED の有病者数は1000万人以上と推測されるが、同時に ED を自覚した日本人が 医療機関を受診する率は5% 未満とされている。確かに ED は生命に直結する疾患でもなく、診療に訪れることに羞恥心がつきまと う。しかし、QOL の面から性生活・性活動が重要であることは言うまでもない。また、最近、ED は全身性に生じる血管内皮障害の 一症状として現れているにすぎないという考え方が広まり、そのため生活習慣病、特に心血管疾患との密接な関連性が指摘されてい る。ED が心血管疾患の前兆との報告もあり、ED 診療の重要性は高まっている。さらに、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH 症候 群)の概念が広まり、性機能障害と男性ホルモンとの関連性もより注目されるようになった。こういった背景の中、2012年に ED 診 療ガイドラインが改訂されている。 本卒後教育プログラムでは、ED を中心とした性機能障害の診療に関して、基本的な事項から最新情報までわかりやすく解説する。 まず、大阪大学の辻村が「性機能障害の原因と診断」について基本的な知識を概説する。その後、大阪市立大学の鞍作克之先生に「性 機能障害の治療」について解説いただき、最後に石川県立中央病院の重原一慶先生に LOH 症候群に関連した形で、 「性機能障害治療 における男性ホルモン補充療法の適応」についてご説明いただく。このプログラムにより、性機能障害の診療における現状と今後の 展望をご理解いただければ幸いである。 辻村 晃 昭和63年 兵庫医科大学卒業 同 9年 大阪大学医学部泌尿器科学講座助手 同 10年 ニューヨーク大学泌尿器科、 細胞生物学臨床研究員 同 17年 大阪大学医学部泌尿器科学講座講師 同 22年 同 准教授 鞍作 克之 平成5年 山口大学医学部卒業 市立伊丹病院泌尿器科 同 11年 ニューヨーク州立大学シラキュース校 泌尿器科研究員 同 15年 大阪市立大学大学院医学研究科 泌尿器病態学助手 同 18年 同 講師 重原 一慶 平成15年 金沢大学医学部医学科卒業 同 附属病院研修医 同 16年 長野赤十字病院研修医 同 20年 金沢大学附属病院泌尿器科 同 23年 石川県立中央病院泌尿器科医長 オフィスウロロジー 4/27(日)10:10〜11:40 [16]オフィスウロロジーにおけるマネジメントとマーケティング Part3~オフィスウロロジーと画像診断~ 2012年のオフィスウロロジーにおけるマネジメントとマーケティング Part1「オフィスウロロジーに必要な保険の基礎知識」 、2013 年のオフィスウロロジーにおけるマネジメントとマーケティング Part2「オフィスウロロジーと在宅医療」に続き、本年は Part3と して「オフィスウロロジーと画像診断」を取り上げる。 病院勤務の泌尿器科医は、エコー、IVU、CT、MRI など様々な画像診断を駆使して泌尿器疾患の診断および病状の正確な把握に 努めておられると思う。一方、オフィスウロロジストも、院内にある限られた検査機器を最大限有効に用いて泌尿器疾患の診断に努 めている。しかし、泌尿器疾患の診断或いは病状の正確な把握には、院内の限られた検査機器のみでは十分に行うことが出来ないこ とも事実である。更なる検査目的で病院に CT や MRI 検査の依頼を行うことも少なくない。オフィスウロロジストは、患者が病院か ら持ち帰ったこれら画像について分かり易く患者に説明をしていかなければならない。結局、病院勤務の泌尿器科医もオフィスウロ ロジストも泌尿器疾患の診断および病状の正確な把握のためには、様々な検査機器から得られる画像診断に精通していることが必要 となる。 今回、日常診療で一般に診察する機会のある疾患を中心として、エコー検査のみならず CT、MRI、PET など様々な画像を含め解 説していく予定である。画像診断を行う上で、 “嵌り易い落とし穴”や“知っていると便利な鑑別診断法”など多くの画像を供覧しな がら泌尿器科医と放射線科医との討論形式で画像診断の解説を行っていく予定である。 今回の企画が専門医を目指す若手の先生方や、専門医資格を既に有している先生方にとっても明日からの診療に役立つものとなれ ば幸いである。 増田 光伸 昭和55年 奈良県立医科大学医学部卒業 平成11年 横浜市立大学医学部附属浦舟病院泌尿器科 助教授 ピッツバーグ大学留学 同 13年 増田泌尿器科院長 横浜市立大学客員教授 竹林 茂生 昭和53年 横浜市立大学医学部卒業 同 55年 同 放射線科 同 63年 (兼職)ワシントン大学マリンクロット放射 線医学研究所、客員研究員 平成11年 横浜市立大学医学部附属浦舟病院助教授 (放射線部部長) 同 21年 同 附属市民総合医療センター教授 (放射線部部長) 泌尿器科腫瘍 4/27(日)13:30〜15:00 [17]進行性腎細胞癌の治療 腎細胞癌は、抗癌剤や放射線治療の効果が期待できず、外科的切除が治療の基本である。しかし、遠隔転移例や切除不能例など進 行性腎細胞癌に対する治療においては薬物療法が中心になる。以前はインターフェロンα(IFNα)およびインターロイキン2(IL 2)によるサイトカイン療法が中心であったが、近年は VEGFR-TKI、mTORI による分子標的治療が主流となってきた。 進行性腎細胞癌に対する薬物療法として、現在のところ前述の2種類のサイトカインと、分子標的治療薬としてソラフェニブ・ス ニチニブ・アキシチニブの3種類の VEGFR-TKI、エベロリムス・テムシロリムスの2種類の mTORI が使用可能である。しかし、 一次治療としてどの薬剤を選択するべきか、二次治療、三次治療はどのような治療薬を選択するべきか、どのタイミングで治療薬を 変更するべきか等については、必ずしも明確ではない。病理組織型、リスク分類、転移部位、年齢、合併症などを考慮して治療薬を 選択するが、必ずしも明確な基準が無いのが現状である。 一方、進行性腎細胞癌の治療成績向上には、薬物療法だけでなく、原発巣に対する腎摘除術、転移巣に対する外科的切除術・放射 線治療・ラジオ波焼灼術など局所治療を併用した集学的な治療が必要である。手術療法や放射線治療の適応およびタイミング、局所 療法の効果を最大限に引き出す薬物療法の使い方などにも考慮する必要がある。また、薬物療法を施行せず、転移巣に対する手術療 法や放射線治療のみで長期生存が得られる症例もあるが、必ずしも適応は明確でない。 本プログラムでは、進行性腎細胞癌に対する治療として、外科的切除術・放射線治療など局所治療については徳島大学の高橋正幸 先生が、薬物療法については京都府立医大の本郷文弥先生が解説する予定である。 金山 博臣 昭和57年 徳島大学医学部医学科卒業 平成6年 同 附属病院泌尿器科講師 同 8年 同 泌尿器科助教授 同 11年 MD アンダーソン癌センター客員助教授 同 16年 徳島大学大学院 HBS 研究部泌尿器科学分野 教授 本郷 文弥 平成3年 京都府立医科大学医学部卒業 同 8年 同 大学院外科系修了 同 11年 京都府立医科大学泌尿器外科学助教 同 14年 米国カリフォルニア大学(UCLA)免疫・ 遺伝学教室研究員 同 21年 京都府立医科大学泌尿器外科学学内講師 高橋 正幸 平成3年 徳島大学医学部医学科卒業 同 12年 同 泌尿器科学講座助手 VanAndelResearchInstitute(Michigan, USA) 同 16年 徳島大学病院泌尿器科講師 同 25年 同 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 泌尿器科准教授
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