平成18年10月1日 あいおい損害保険株式会社 常務役員 業務監査部長 國江 寛 殿 〒○○○—○○○○ (住所) mits 印 TEL/FAX ○○—○○○○—○○○○ 内部調査依頼書 兼 質問状 前略 貴社自動車損害保険の契約者の 氏が加害者である、平成17年9月1 9日に発生した交通事故の被害者の、mits と申します。 本件事故により私の保有する車両に生じた、いわゆる「評価損」について、同 年11月15日付けの書面で、貴社江戸川サービスセンターの担当者宛に支払を 求めましたが、担当者は、判例の示す要件を紹介し、文献を引用のうえ、評価損 は一般に認められていないとして、支払を拒否するとの回答書を送付してきまし た。 ところが、私が調査した結果、当書面に記述された判例や学説は、これまでの 判例や学説の動向に照らすと、明らかに事実と異なる、虚偽と言ってもよい内容 でした。 このため、私は評価損の支払を求め、東京簡易裁判所に提訴し、その後、貴社 が派遣した代理人弁護士の申述により東京地方裁判所民事第27部に移送後、数 回の弁論を経た結果、平成18年9月25日に、評価損を認める第一審判決が下 されました。 (※控訴について検討中) 1 評価損の認否や算定基準について、いまだ上級審で確立した判例が存在しない ことは認識していますが、貴社の担当者が、私の事案においては「裁判の判断」 では一般に評価損は認められていないという、明らかに事実とは異なる説明を被 害者に対して行い、保険金の支払を拒否したことは、被害者のみならず、契約者 である加害者の利益をも害するものであります。 また、評価損について、貴社の方針として、他の事案においても同様の説明に 基づいて支払を拒否しているとすれば、昨今盛んに報道されている保険金の不払 にも通じるものであり、 正確な情報を被害者に提供しようとしない貴社の姿勢は、 社会的な責任を問われて然るべきかと思います。 以上の趣旨により、下記の項目につき、内部調査のうえ、誠実なご回答を求め ます。 なお、3週間以内に書面による納得のできるご回答をいただけない場合は、本 件につき、金融庁、日本損害保険協会および国民生活センター等に報告・告発い たしますので、予めご了解ください。 草々 記 平成17年11月25日付け回答書面についての質問 (斜字は回答書もしくは文献からの引用) (1)「裁判の判断」について さて、現在の交通事故の紛争解決は、過去の裁判例を基にして、大半が訴訟によらず、示談に て解決をしていることはご高承のことと思います。本件についてみますと、大切な自動車に損傷 を被られ、誠にお気の毒といわざるを得ません。 しかし、ご主張の評価損(格落ち損)についての裁判の判断は、修理後において ① 新車購入直後の車 ② 機能的障害が残存した場合 ③ 外観が著しく損なわれた場合 2 に限定して認定をしており、一般的には評価損は認められていません。 実際は、ここで紹介されている3つの要件に当てはまらない事案についても評 価損を認容する判例が多数存在していましたし、 「赤い本」等でも多数紹介され ていたことについては、保険実務の専門家であれば、当然ご高承のことだったと 思います。 質問1:本件回答内容は、回答当時の貴社の公式見解だったのか? 質問2:本件回答内容について、現在の貴社の見解は? (2)本回答書において引用した文献内容について 自動車が事故によって破損し、修理しても技術上の限界から回復できない顕在的または潜在的な 欠陥が残存した場合(例えば、機能的障害が残存した場合、外観が損なわれた場合、耐用年数が低 下した場合など)には、修理費のほか右技術上の減価等による損害賠償を求めうる。 ところで、中古車市場では、右のような技術上の欠陥が存在していないのに事故歴があると いうだけで売買価格を下落させているようである。しかし、客観的な価値の低下がないのに評価 損を認める合理的理由に乏しく、事故後も当該車両を使用続ける場合はこの損害は何ら現実化し なかったことになり、また、このような場合にも評価損を認めることは、買い替えを正当化する 理由がない場合にも買い替えを認めたのと同一の利益を与えるものであって、相当ではないと考 えられる。 『民事交通訴訟における過失相殺の認定基準』より 東京地方裁判所民事交通訴訟研究会編 私の調査により、本引用元は、 「別冊判例タイムズNo.1」 (1991年・全 訂版)であることが確認されました。ところが、この『民事交通訴訟における過 失相殺率の認定基準』は、その後、1997年および2004年の2度にわたっ て改訂されており、1997年版および最新版では、評価損については、以下の ように記載されています。 自動車が事故によって破損し、修理しても技術上の限界等から回復できない顕在的又は潜在的な 欠陥が残存した場合(例えば、外観が損なわれた場合、耐用年数が低下した場合など)には、修 理のみによっては損害が回復したとはいえないので、修理費のほかに、減価分を評価損として認 められる場合がある(いわゆる技術上の評価損) 。 3 また、中古車市場では、事故歴があるという理由で、いわゆる事故落ち損として売買価格が下落 する場合がある(取引上の評価損)。いわゆる事故落ち損は、潜在的な欠陥が残っていることに 対する市場の評価であると解して、評価損としての損害を肯定する見解も少なくない(東京高判 平成 8 年 9 月 26 日 公刊物未掲載) 。しかし、この見解に対しては、修理がされた以上客観的な 価額の下落は肯定すべきでないこと、事故後も当該車両を使用し続ける場合にはこの損害はなん ら現実化していないこと、買替えを予定しない場合にも買替えを認めたのと同一の利益を被害者 に与えることなどを理由に、事故前から自動車を買い替える予定があり下取り価格の合意ができ ていたような特別な事情がある場合を除いて、事故落ち損を認めないという見解も有力である。 事故落ち損を求める場合は、事故の内容、程度及び予想される交換価値の下落を主張する必要が ある。交換価値の低下については、財団法人自動車査定協会の事故減価額証明書が証拠として提 出されている場合は、これをも参考にして、当該事故による事故車の損傷部位及び状態に応じて 算定することになる。初年度登録からの期間(例えば 2 年以内程度) 、走行距離、修理の程度を 考慮し、修理費を基準に、30 パーセント程度を上限として評価損として認めた例がある。 最新版においては、一律に評価損を否認する内容ではなくなっていることは明 らかですが、回答書においては、2版も前の、14年前の文献から引用されてい ます。 質問3:貴社の保険実務において、回答書提出時点において、1991年版の 「別冊判例タイムズ」を使用していたのか? 質問4:最新版では記載内容が大きく変更されているのにもかかわらず、19 91年版を使い続けたことについて、貴社の見解は? (3)本回答書の責任主体について 質問5:本回答書は、江戸川サービスセンター独自で作成されたものなのか? それとも、より上位の組織において作成・配布した、元となる雛形が存在する のか? 質問6:本回答書に署名している 氏の貴社における雇用形態および貴社 4 における役職は? 質問7:本回答書の内容につき、責任を持つ者(最終的に承認した者の氏名お よび貴社における役職)は? なお、本件について回答のない場合は、お客様 サービス部を統括する専務取締役須藤滋氏の最終責任であったと判断させてい ただきます。 以上 添付書類 ・ 平成17年11月15日付け「事故減価額請求の件」の写し ・ 平成17年11月25日付け「交通事故解決のお願い」 (回答書)の写し ・ 同 送付時の封筒の写し ・ 平成18年9月25日付け東京地方裁判所判決正本の写し 5
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