IEC/TC59 WG12(冷凍冷蔵庫の性能試験 方法)

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IEC/TC59 WG12(冷凍冷蔵庫の性能試験
方法)東京会議 報告
三菱電機株式会社
静岡製作所
冷蔵庫製造部 先行開発 G
坂本
克正
1. 概要
2. 日程
3. 日本の規格(JIS)について
4. 会議内容
5. 東京会議での決定事項
6. 次回について
7. 所感
流方式(通称:直接冷却)の2つが既存する。日本
国内においても一般家庭等で使用する冷凍冷蔵庫に
おいては間接冷却方式が圧倒的なシェアを占めるが、
小型冷蔵庫においては直接冷却方式もまだ多く既存
する。さらにヨーロッパなどでは一般家庭用の冷凍
冷蔵庫においても直接冷却方式が圧倒的な割合を占
めるのも現状である。
以上のような環境・文化・形態・方式といった
様々な複合要因を網羅した上での規格を作ることが
1.概要
国際基準化に不可欠であることがまず挙げられる。
このような背景を踏まえた上で現在 WG では消費
IEC/TC5
9WG1
2が4月1
5日(火)∼1
7日(木)
の3日間、電機工業会館にて開催された。本国際会
電力量の試験方法についての審議を最重要課題とし
て検討を重ねている。
議は冷凍冷蔵庫の性能試験方法を検討している WG
であり、最終目標を規格の国際標準化に見据えて活
2.日程
動を行っている。現在は年2回のペースで開催され
ており前回は2
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7年1
0月にワシントン、前々回は
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7年3月にシドニーで行われた。その中におい
て国際規格の標準化検討にあたり課題は山積されて
いる状態である。
会議:2008年4月15日(火)∼17日(木)、於
電機工業会館 会議室
参加国:アメリカ、オーストラリア、ニュージーラ
ンド、スウェーデン、イタリア、ドイツ、
冷凍冷蔵庫という製品は使用する温度環境や設置
メキシコ、韓国、日本(オブザーバーとし
条件の各国間の相違に加えて、食生活様式や文化と
て中国、インドも出席)総勢1
1ヶ国、計
いった要因が入ってくる。よって大きな食品をその
2
8名
まま保管する文化と小分けした食品を分類して保管
する文化とでは、製品の形態も異なっているのが実
議 長:Alberto M.Lorenzini(イ タ リ ア、Whirlpool
EUROPE)
際のところである。例を挙げるとアメリカなどでは
日本出席者:藤田健司 <東芝家電製造㈱>
大きな塊肉をそのまま保管するため大きな扉の2ド
中村 淳 <松下電器産業㈱>
アタイプが主流となっているのに対し、日本などで
佐々木宏 <松下電器産業㈱>
はお刺身を保管するチルド室や温度を切り替えられ
脇谷浩司 <シャープ㈱>
る切替室など分類収納ニーズが強く5∼6ドアタイ
坂本克正 <三菱電機㈱>
プが主流となっている。さらに規格標準化に対して
笹子雅純 <!日本電機工業会>
考慮しなければならないのが冷凍冷蔵庫の冷却方式
についてである。
3.日本の規格(JIS)について
冷蔵庫の冷却方式には冷蔵庫内に設置されたファ
ンにより冷気を送風する強制対流方式(通称:間接
消費電力量を決定する試験方法については、前回
冷却)とファンによる冷気送風を実施しない自然対
会議までに各国間でキーワードが共有されている。
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それはその試験方法が「実使用を反映しているこ
ポイントである。
と」
「簡便であること」
「再現性があること」という
日本の報告した内容としては、扉開閉や負荷投入
項目に適しているかということである。当然ながら
の代替手段として、それ相当の算出されたヒータ負
その試験方法で算出された数値は正確でなければな
荷や模擬負荷を最初に投入してそのまま試験終了ま
らない。この算出方法が正しいものでなければ実省
で放置しておくものである。この方法により試験作
エネに繋がっていかず、結果として CO2 削減とい
業は圧倒的に簡便になるが、現状課題も多く現時点
った地球環境保護という大きな指標にも繋がってい
において代替方法確立には至っていない。課題とし
かない。
てはヒータ投入については投入位置および相当する
日本国内においても実使用反映を目的とした試験
ヒータ容量の算出方法などが確立できておらず、実
方法の JIS C9
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1の改正が2
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6年5月に実施され
際に測定した消費電力値も機種によって現在の JIS
た。この試験方法は国内の家庭での使用状況を調査
の値に比べて増減する。この内容については日本と
した上で、その実使用が反映可能となるように改正
しても引き続き検討する予定であり、次回会議まで
された。その試験方法の中には実使用を反映すべく
に更なる深い検証を行う予定である。
扉の開閉や負荷の投入といった試験要領が盛り込ま
また前回会議においてアメリカの規格(AHAM)
れている。しかしながらこの試験方法(JIS)を国
で試験時の温度を7
0→9
0°
F に変更して扉開閉動作
際標準化するには各国の賛同を得ることができない。
を排除した事例も紹介されたため我々日本も検証を
それは前述のキーワードの一つである「簡便さ」が
行ったが、これも結果が JIS 測定値と大きく異なる
ないことである。扉開閉も負荷投入も実際に人が測
機種があり単純に試験測定室温度を上昇させるだけ
定中に実施する内容であり、試験中に冷蔵庫を放置
では不可であった。これは AHAM 規格の良し悪し
しておくことができない。
もあるとは思うが、各国の冷蔵庫に比べて日本の冷
よって実使用反映というキーワードでは JIS は高
蔵庫は電子化、インバータ化されていると同時に冒
い賛同を各国から得ているが、簡便さというキーワ
頭でも述べたように冷蔵庫の各部屋のレイアウトや
ードで賛同を得られていない。当然我々日本も実使
大きさ、形態が多種あるため制御が非常に複雑にな
用を反映可能で、かつ現在の JIS よりも簡便な試験
っていることも AHAM 規格を単純に反映できない
方法を確立したい思いはあるため、この扉開閉や負
一つの要因として挙げられるのではないかと考えて
荷投入の代替可能な次世代の試験方法を現在検討中
いる。
である。
しかしながら日本マーケットの高付加価値商品作
りは今後も継続されると推定され、他国のベーシッ
4.会議内容
クな機能の冷蔵庫でも日本のような多機能な冷蔵庫
でも双方ともに正確に反映できる試験方法を構築し
日本をはじめアメリカ、オーストラリア、ニュー
ていきたいと考えている。また他国のプレゼンも実
ジーランド、ドイツ、韓国がプレゼンを実施した。
施されたがいずれも考え方や概念といったベースの
前回ワシントン会議で決定した各国の宿題事項や新
部分については各国から賛同を得られたが、具体的
しく検証した結果について主に報告があった。日本
な試験方法や手段については再度各国で検討して次
は前述の JIS における扉開閉や負荷投入の代替案を
回に報告する運びとなった。
検討することが大きな宿題としてあった。
また消費電力量試験と同レベルで重要な国際標準
まずは日本の考え方として冷蔵庫を冷却するにあ
化必要な規格として冷蔵庫の内容積についても限ら
たり全ての熱負荷量 Qtotal=Q1+Q2+Q3+Q4+Q5
れた時間ではあったが議論した。内容積の決定につ
として説明を実施した。Q1は庫内温度と周囲温度
いては勿論消費電力量算出にも大きく関わってくる
差によって決まる熱漏洩量、Q2は扉開閉負荷、Q3
だけでなく、実際の販売価格にも影響を及ぼす可能
は庫内温度より温度の高い食品の投入負荷、Q4は
性があり消費電力量と並んで最重要課題であること
霜取負荷、Q5は庫内のヒータ等による発熱負荷で
は間違いない。この内容積の算出についても各国間
ある。この中で実使用により影響・差異が発生する
で「定義の明確化」をしたいと考えている。またこ
のが Q2と Q3であり、この熱負荷をいかに使用実
の算出方法や定義についても消費者にも賛同を得ら
態に合わせて消費電力量の値に反映させるかがキー
れる判り易い規格作りが望まれている。
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前回・今回の会議も議論の発散を抑制すべく消費電
力量規格に特化した議論となっているが、今後より
一層の取り組みが各国に求められている。今回はア
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ノ)を本命に調整する運びとなった。
また各国宿題を会議1ヶ月前を目安に送付し、事
前検討した上で会議開催することになった。
メリカから新 AHAM 規格として提案があり、規格
の詳細は後日各国に紹介されることとなった。
5.東京会議での決定事項
7.所感
冷蔵庫の世界市場において日本企業の占める台数
割合というのは非常に少ない。よってそのような状
3日間に及ぶ議論により以下内容を決定事項とし
況下において国際規格制定において日本の発言力と
た。消費電力量試験を行う際には銅シリンダーを使
いうのは決して強くなかった。しかし本 WG で回
用し、測定点は冷蔵室3点/冷凍室5点とする。ま
数を重ねていく上で、日本からの積極的な提案を継
た温度については試験周囲温度を1
6/3
2℃ の2温度
続的に実施していることで発言力が日々強くなって
とし、冷蔵室は 4℃、冷凍室は−1
8℃ とする点に
きていることを実感できるようになってきた。さら
ついて各国から同意があり決定された。しかしなが
に本 WG とは別にアジア太平洋パートナーシップ
らそれ以外の試験方法や規定については、再度各国
(APP)の活動も洞爺湖サミットを見据えて活動し
で検証実施して次回報告・検証する運びとなった。
ており、アジアとアメリカ/オーストラリア/ニュー
具体的には前述の扉開閉代替手段提案ならびに霜取
ジーランドの良い関係がお互いの現状を理解した上
り時の庫内温度上昇値の設定要否や、測定時間の短
で深まってきている。この良い関係を更に強固なも
縮化のための判断基準などが日本としても取り組む
のとして、特に直接冷却が主流の欧州勢と議論する
アイテムとなっている。
ことが規格整合に向けてのより速い、そして確実な
また内容積についても AHAM の新規格提案での
アプローチとして考えており、その結果が CO2 削
検証を実施し問題有無だけでなく新提案確立も視野
減などといった国際貢献につながるように精進して
に入れて活動する。
行きたいと考えている。
いずれにしても国際社会における日本の存在を向
また今回は会議室に国内メーカの冷蔵庫やカット
上させるためにも、より積極的な取り組みや提案を
モデルなどを展示したことにより、各国の出席者が
続けることが肝要と考える。
日本の冷蔵庫についてより深い理解をして頂いたこ
とも無形効果ではあるが大きな収穫であったことも
6.次回について
事実であり、今回の東京会議は主催国としての重責
を十分に果たした会議であった。
次回は1
1月4日(火)∼6
(木)
、イタリア(ミラ
会議風景(電機工業会館 6F 会議室)
会議室横の冷蔵庫展示スペースにて