第8回 バナナのチカラ

未熟
適熟
完熟
第8回 ● バナナのチカラ
くだものが人間の体にはたらきかけるチカラに
ついて、長年、くだものと野菜の分析研究を積み
スーパーオキシドは呼吸しているだけで発生す
◆ バナナのシュガースポット
る活性酸素、それがヒドロキシルラジカルに変化
◆ バナナのさまざまなチカラ
重ね、
「食」によって健康な生活を送る提案を続け
バナナは熟してくると、果皮に点々と黒い斑点
し、細胞膜の脂質酸化をおこします。一重項酸
東京マラソンなど市民マラソンでは、レースの
てきた、デザイナーフーズ株式会社代表取締役
が浮かんできます。これは、
「シュガースポット」
素は、紫外線を浴びると発生する活性酸素です。
途中でバナナが提供されます。長時間走るので、
社長丹羽真清さんに話していただきます。
と呼ばれ、その名前通り、甘くなったことを示し
また、それぞれの下の( )内は、私たちの体に
栄養補給が必要になるのですが、バナナの糖質
及ぼす影響です。スーパーオキシド消去活性は、
は、ブドウ糖、果糖、ショ糖などさまざまで、す
ています。青くて酸味があるバナナが好きという
◆消費ナンバーワンの
フルーツになるまで
人もいますが、やはりシュガースポットが少し出た
ところが食べごろで、おいしいと思います。
そこで、私たちデザイナーフーズ(株)は、シュ
「ヘルシーエイジング」に、ヒドロキシルラジカル
ぐにエネルギーに変わるものから少し時間がかか
消去活性は「病気予防」に、一重項酸素は「美
るものまで、体に吸収される速度が違います。そ
容」に影響があるわけです。
こで、スタミナが持続するわけです。また、バ
グラフでは 3 種類のバナナを比較しています。
バナナの輸入は、1903 年(明治 36 年)に台湾
ガースポットがないもの、あるもの、その数が多
からやってきたのが始まりです。私が子どもだっ
いものと3 種類のバナナを用意し、それぞれの抗
「未熟」バナナの3 つの頂点をいずれも100とする
B6、ナイアシン、パントテン酸までビタミンB 群
た頃はまだちょっと高級品で、おなかいっぱい食
酸化力をESR で測定し、熟度によってどう違うか
と、シュガースポットが少し現れた「適熟」が「未
が揃っていますから、糖質をエネルギーに確実に
べたい、と思ったものの一つでした。
をみてみました。
熟」より大きく、さらにシュガースポットがかなり
変えていくチカラがあります。
出ている「完熟」のほうが大きな三角形になって
ナナにはマグネシウム、それにビタミンB1、B2、
1963 年(昭和 38 年)に、バナナの輸入が自由
E SRというのは「電子スピン共鳴装置」と呼ば
化され、これをきっかけにエクアドル産のバナナ
れ、野菜やくだものなどの抗酸化力が測れる機
の輸入が増え、1970 年(昭和 45 年)には輸入量
械です。図の三角形は、E SRの測定結果を表し
くだもの屋さんでは、黒い斑点が出てきたバナ
1位になりました。一方フィリピンでは、1960 年
たもので、上の頂点は「スーパーオキシド消去活
ナは、なかなか販売しにくいと思いますが、じつ
代に日本市場向けのバナナ生産プランテーション
性」
、左は「ヒドロキシルラジカル消去活性」、右
はシュガースポットが出ているほうが、抗酸化力
バナナは、胃が弱っているときはもちろん、高
が作られて、1973 年(昭和 48 年)には輸入量 1位
は「一重項酸素消去活性」を示し、三角形の面
があるわけです。お客さまにこのことをぜひお知
齢になってからエネルギーをとるには、非常にす
の座を獲得し、現在までトップ。日本人が食べる
積が抗酸化力を表します。
らせしていただきたいと思います。
ぐれた食べ物といえるでしょう。
います。
バナナに含まれる糖のひとつ、フラクトオリゴ
糖は、大腸のビフィズス菌を安定的に増やしてく
れますし、食物繊維も多く、体の循環をよくする
ことにつながっています。
バナナは、台湾からエクアドルへ、そしてフィリ
ピンへと移ってきたわけです。
未熟のバナナの抗酸化力を 100 とした時
2004 年、バナナはみかんを抜いて、1世帯あ
スーパーオキシド消去活性
(ヘルシーエイジング)
たりの消費量が 1位になり、現在、日本で一番
消費されるくだものになっていることはご存じで
150
2008 年 9月にはバナナダイエットブームがありま
したね。一時期は品切れになるお店が続出して
100
騒がれました。卸売価格も上昇し、2009 年の輸
減りましたが、ブームの影響が落ち着いた 2009
年 9月以降も消費は底上げされている、とみてい
いようです。
10
未熟
適熟
完熟
50
入量は 9250万ケース、とこれまでの最高だったと
いいます。その後、2010 年は約 8200万ケースと
バナナは、バショウ科バショウ属のうち、食用に
されるもの。原生地はマレー半島とされます。大き
200
しょう。
ヒドロキシル
ラジカル
消去活性
(病気予防)
コラム★バナナのプロフィール
0
一重項酸素
消去活性
(美容)
く育ち、木のように見えますが多年草の草です。
いま、私たちが食べているバナナにはタネがあ
りません。輪切りにすると中心部にある小さな黒
間が栽培したもっとも古い植物の一つです。
現在、世界で栽培されているバナナは「生食
用」と「料理用」に分かれ、300 種類以上あります。
日本人に、いちばんなじみのあるバナナは「ジャ
イアント・キャベンディッシュ」種です。
い点がタネのなごりです。現在でも東南アジアに
日本では、チチュウカイミバエなどの害虫の侵
は、タネのある野生のバナナが残っており、食用
入を防ぐため、熟したバナナは輸入できません。
になっています。タネがなくなったのは突然変異
まだ青いうちに収穫し、日本に運ばれると、植物
によるもので、その時期がいつごろかはわかりま
防疫法、食品衛生法などの手続きがあり、輸入
せんが、紀元前 5000 年より前ではないかといい
通関した後、エチレンガスなどで追熟して市場に
ますから、今から7000 年以上前。バナナは、人
出回ります。
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