H.26.1.15 シーズ Vol.3 米タンパク質の機能性解明の研究 新潟大学 農学部 教授 門脇 基二 ■どのような研究をされていますか 米に含まれているタンパク質がヒトの体にどのような効用があるか等の機能性を解明す る研究を行っています。 米(ここでは白米)は皆さんがご存知の通り 70~80%が澱粉から出来ています。ところ が、米の中には約 6%のタンパク質が含まれているのですが、あまり知られていません。一 般的にはタンパク質を含む植物としては大豆を思い浮かべる方が多いでしょう。また、日本 人は一日に必要なタンパク質を肉,魚介類の次に,実は米から取っているのですが、このこ ともほとんど知られておりません。このような状況ですから、米のタンパク質については、 これまで研究がほとんどされておらず、試験研究用に使用する試料も流通していませんでし た。 そこで、民間企業に協力をいただいて、米からタンパク質だけを抽出する研究から始めま した。2~3 年かけて純度 90%以上の米タンパク質を精製することが可能になり、動物実験 を開始しました。また、平行して遺伝子解析による分析も行ったところ、驚くべき機能性が あることが分かってきました。 <精白米の組成> <日本人が1日に摂取するタンパク質の内訳> <精製した米胚乳タンパク質> ■ 米タンパク質にはどのような機能性があるのですか まず、大豆タンパク質は血中コレステロールや中性脂肪の値を低下させることが分かって いますので、同じく植物由来の米タンパク質でも同様の効果があるか動物実験で調べまし た。すると、大豆タンパク質と同程度の効果が出ました。米を食べて健康になるというのは 意外でしたが、広く認知されれば、米の消費拡大にとって大きなプラスになるのではないで はないでしょうか。 しょうか。 次に、北海道大学との共同研究で遺伝子解析による検討を行ったところ、インスリンの分泌 をコントロールする遺伝子 GLP-1 に応答がありました。これは、糖尿病の治療に有効である可 能性があるということです。とうもろこしタンパク質にも同様の結果があることが分かっていま すが、一般的な大豆や小麦タンパク質にはない機能性です。 また、糖尿病患者の 3 割程度が合併症として腎臓病を併発しますが、腎臓病に対しても有効 なことが分かってきました。現在、付属病院で維持透析患者に米タンパク質をゼリー状にして摂 取してもらうヒト臨床試験を行い、リン過剰などの副作用のないタンパク質栄養源として有効性 が証明されました。 毎日食べているお米が、糖尿病や腎臓病の治療に有効であることが実証されれば、素晴らしい ことだと思います。遺伝子解析の結果、他にも抗アレルギーや抗肥満などに有効な機能性がある ことが既に示唆されており、今後の研究の発展が楽しみです。 ただ、課題としてはタンパク質が白米の中に 6%しか含まれていないため、抽出した残りのデ ンプンが無駄になり、結果としてコストが高くなるという問題があります。今後は、実用化する 上で効率的な抽出方法やデンプンとの組み合わせた活用法の確立も必要です。また、米糠の中に もタンパク質が含まれ、成分は異なりますが、同様の新しい機能が続々発見されつつあります。 <米タンパク質の健康機能> ■研究成果を活用して、どのような企業と連携の可能性がありますか 米タンパク質の有効な機能性が実証されつつありますので、疾病の治療や健康維持などの観点 から、共同研究や新商品開発のニーズがあります。例えば、食品製造業・卸売業・小売業全般が 関連する可能性があります。また、健康食品の取扱い企業、医療・介護食の製造や給食事業者、 米飯パックメーカー、酒造メーカー等と連携できれば良いと思います。 新潟大学へのお問い合わせやご相談につきましては、お近くの第四銀行本支店、 または第四銀行コンサルティング推進部(025-229-8180)まで、お気軽にご連絡 ください。
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