YAPPY 解析力学 Hamilton の正準方程式 2 2.1 Hamiltonian Lagrangian では q と q̇ が登場し、主役は q であった。しかしこの章では q̇ の代わりに p を用いる。 p≡ ∂L ∂ q̇ と定義する。これが Hamilton 形式の入り口で主役は q と p の 2 つになる。q と p を独立変数として新た に Euler-Lagrange 方程式に等価な方程式を作りたい。そのために Lagrangian のように q, p の関数 H を 次のように定義する。 H(q, p) ≡ pq̇ − L. (2.1) H を Hamiltonian という。このとき Hamiltonian は q̇ を変数として含まないことに注意。主役は q と p であるから、実際には q̇ が登場しないように作る。そのためには q̇ は、p の定義を用いて q̇ = · · · の形に 解き直し、q と p の関数だと思う。そして定義 (2.1) にある q̇ と Lagrangian の中にある q̇ に代入して q̇ を消去する。 2.2 正準方程式 この Hamiltonian を用いた Euler-Lagrange 方程式に等価な運動方程式を導出するために、Hamiltonian の全微分を評価する。Hamiltonian H(q, p) に対し q 7→ q + δq, p 7→ p + δp と微小変化させる。このとき δq と δp は全く独立であることがさっきと違う。これに応じた H の微小変化は δH = H(q + δq, p + δp) − H(q, p) ∂H ∂H = δq + δp. ∂q ∂p (2.2) 一方で Hamiltonian の定義 (2.1) から同じ δH を評価することもできる。そのために、まず δ q̇ は δ q̇ = q̇(q + δq, p + δp) − q̇(q, p) = ∂ q̇ ∂ q̇ δq + δp ∂q ∂p である。これを用いると Lagrangian の変分は δL = L(q + δq, q̇ + δ q̇) − L(q, q̇) ∂L ∂L δq + δ q̇ = ∂q ∂ q̇ ( ) ∂L ∂L ∂ q̇ ∂ q̇ = δq + δq + δp ∂q ∂ q̇ ∂q ∂p となる。従って δH は δH = (p + δp)(q̇ + δ q̇) − L(q + δq, q̇ + δ q̇) − pq̇ + L(q, q̇) ( ) ∂L ∂ q̇ ∂ q̇ ∂L δq − δq + δp = δpq̇ + pδ q̇ − ∂q ∂ q̇ ∂q ∂p ( ) ( ) ∂ q̇ ∂ q̇ ∂L ∂L ∂ q̇ ∂ q̇ = δpq̇ + p δq + δp − δq − δq + δp ∂q ∂p ∂q ∂ q̇ ∂q ∂p ∂L = − δq + q̇δp ∂q http://www2.rikkyo.ac.jp/stu/hyropom/ (2.3) 10 YAPPY 解析力学 となる。ここで微少量の 2 次の項は無視した。(2.2)、(2.3) の δq, δp の係数を比較することで次の方程 式を得る。 ∂H = q̇ ∂p ∂H ∂L =− . ∂q ∂q (2.4) ここまでで得られた方程式には、まだ運動方程式を用いていない。ただの式変形にすぎない。ここで Euler-Lagrange 方程式と p の定義を用いて d ∂L = ∂q dt ( ∂L ∂ q̇ ) = ṗ を代入すると ∂H = −ṗ ∂q (2.5) を得る。(2.4), (2.5) の組を正準方程式 (canonical equations) といい、Hamilton 形式における運動方程 式である。p を q に共役な運動量、q, p を正準変数という。 正準方程式のいいところは、Euler-Lagrange 方程式は時間の 2 階の微分方程式であるのに対して、(2.4), (2.5) は時間の 1 階の微分方程式になっているところである。積分を 1 回省くことができたのである。 2.3 例 質量 m の調和振動子は、運動エネルギー T , V がそれぞれ 1 T = mẋ2 2 mω 2 x2 V = 2 x はバネの自然長からの変位、ω は角振動数である。従って Lagrangian L は 1 mω 2 x2 L = mẋ2 − . 2 2 x に共役な運動量 p は p= ∂L = mẋ ∂ q̇ ⇒ ẋ = p m (2.6) Hamiltonian を求めるときは、(2.6) のように ẋ = . . . の形にしてから代入し、ẋ を消去する。 H = pq̇ − L ( 2 ) p mω 2 x2 p − − =p· m 2m 2 2 2 2 mω x p + = 2m 2 (2.7) Hamiltonian (2.7) は全エネルギーになっていることが確認できる。従って正準方程式は ẋ = ṗ = − http://www2.rikkyo.ac.jp/stu/hyropom/ ∂H p = ∂p m ∂H = mω 2 x ∂x (2.8) (2.9) 11 YAPPY 解析力学 (2.8) の両辺を微分し (2.9) に代入することで mẍ = −mω 2 x と調和振動子の Newton の運動方程式が得られる。(2.6) から p は普通の運動量であることが分かる。ま た (2.6) と (2.8) は同じ式である。 2.4 最小作用による導出 正準方程式を最小作用の原理から導出することも出来る。こちらのほうが以外と計算も楽である。作 用は Lagrangian の時間積分により定義したが、Lagrangian 的な量として pq̇ − H(q, p) の時間積分として作用を定義する。 ∫ tf S= ( ) dt pq̇ − H(q, p) ti “Lagrangian 的” とうのは、この関数の独立変数が q と p の 2 つという点で異なるためである。従って変 分もそれぞれ独立にとる。 ] ∂H ∂H δS = dt δpq̇ + pδ q̇ − δq − δp ∂q ∂p ti ] [ ]tf ∫ tf [ ∂H ∂H δq − δp = pδq + dt δpq̇ − ṗδq − ∂q ∂p ti ti ) ( ) ] ∫ tf [( ∂H ∂H = δp − ṗ + δq dt q̇ − ∂p ∂q ti ∫ tf [ を得る。但し、δ q̇ については部分積分を行い、δq(ti ) = δq(tf ) = 0 を用いた。任意の δq, δp に対して左 辺がゼロならば ∂H ∂p ∂H ṗ = − ∂q q̇ = が成り立つ。これは既に導出した正準方程式 (2.4), (2.5) と全く同じことに驚いてほしい。注意すべき点 は、独立変数が 2 つであることと、p 変分 δp に対して条件がついていないことである。 http://www2.rikkyo.ac.jp/stu/hyropom/ 12
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