日本たばこ産業株式会社 様 「診断」と「変革」

リンクアンドモチ ベ ーション
Motivation
Summit
Report
モチ ベ ーションサミットレ ポ ート
日本たばこ産業株式会社
経営企画部 部長
近藤 紳雅(のぶまさ)氏
Company Profile
「JTグループならではの多様な価値をお客様に提供する
グロー バ ル 成 長 企 業」を目指し、主 に た ばこ・医 薬・食 品
(飲料・加工食品・調味料)事業を展開。
「診断」
と
「変革」の
組織力強化サイクル
「国内No.
1・世界第3位のたばこ事業」、
「医薬事業」、
「食品事業」の3つの事業を柱として、
世界120ヵ国以上でビジネスを展開する
多角的グローバル企業・JTグループ。
JTグループの組織力を強化するための取り組みについて、
“「診断」
と
「変革」”
という枠組みで、
経営企画部部長の近藤氏にご紹介いただきました。
【講演概要】
・第5回モチベーションサミット
「全社的な組織力強化の取り組み事例」
・開催日:2011年3月10日
・開催場所:LINK DINING(東京・銀座)にて
モチベーションサミットについて
リンクアンドモチベーションが、各業界リーディングカンパニーの人事
部門や経営企画部門のご責任者様(取締役・執行役員・部長)
をお招
きし、組織変革や人材育成において先進的な取り組みを実施されて
いる企業様から、事例をご紹介いただくクローズドセミナーです。
ご参加企業
(五十音順)
・アサヒビール株式会社
・ 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
・コクヨ株式会社
・サントリーホールディングス株式会社
・ 全日本空輸株式会社
・ソフトバンクモバイル株式会社
・ 第一三共株式会社
・ TANAKAホールディングス株式会社
・テルモ株式会社
・ 東レ株式会社
・日本電気株式会社
1
2
ランディング・スピリッツ」についても浸透度を測る
ようにしました。
このJ-MAPを開発・実施したことにより組織力強
化に向けた土台が整備され、各職場に結果をフィー
ドバックすることにより、自組織の変革に向けた取
り組みを行うことが可能になりました。
また、J-MAPは毎年実施されるので、経年比較す
ることができます。自組織が昨年に比べてどうだっ
なぜ組織力強化を
始めたのか
組織力診断の開始
たのか、1年間で変革したこと、起こったことを考え
比較することで、取り組みの成果を確認するととも
に、次の1年でどう変革していくのかを考えることが
できます。
課題は、
グループ会社含め調査の範囲を拡大す
ることでした。初年度はJT単体9,456名での実施で
組織力強化がテーマとなったのは2005年当時
の経営環境に端を発しています。
事業面においては、国内たばこの市場縮小は
あったものの、海外たばこ事業の成長に支えられ
て順調な推移をしていました。
まず、組織力強化の取り組みの第一段階として、
そもそもJTの組織力がどのような状況なのか診断
診断のため、オリジナルサーベイ
「J-MAP」を開発
広げ、2010年度では15,804名が回答しています。
し、全社的な調査を実施
しました。
これがJTとリン
りや増税圧力、喫煙者の減少などが、私たちが想
クアンドモチベーション
定していたよりスピードを増してきており、国内た
さん(以下LM)とのお付
ばこ市場の縮小はさらに進展すると見込まれてい
き合いのはじまりです。
ました。さらに、フィリップモリス社からライセンス
L M から提 案 をもら
を受けJTで製造販売していたマールボロのライ
い、J-MAPでは組織力を
センスが2005年4月に終了するという大きな転換
「共通目的」
「協働意志」
期も迎えており、社内での危機感が非常に高まっ
「コミュニケーション」の
3つで測ることとしまし
こうした状況を踏まえ、2003∼2005年の3ヵ年
た。加えて、当時の経営理
計画「PLAN-V」は、全社を挙げて徹底的に無駄を
念として持っていた「JTブ
排除し、強靭なコスト体質を構築するといった経
ランディング 宣 言 」
「ブ
営計画でした。
「PLAN-V」では、人員削減を含めた
グループ全体への拡大が不可欠です。
これについ
ては、J-MAPの実施対象を徐々にJTグループ全体に
することとしました。
しかしながら、たばこに対する世の中の風当た
ていました。
したが、JTグループ全体の組織力を診るためには、
JTオリジナルサーベイ
「J-MAP」
リストラクチャリングに取り組み、一定の成果は得
られたものの、徹底的な無駄の排除・大幅な人員
減で現場の活気が薄れ、組織の疲弊が懸念され
ていました。
そんな状況の中で、2006∼2008年の3ヵ年計画
(JT2008)にて重点テーマとして掲げたのが「組織
力強化」です。
これは、現場の活力を取り戻して組織を活性化
することにより、順調な業績拡大を支える土台を
盤石なものとしたい、
という当時の経営陣の想い
によるものです。
そして、
「組織力強化」の取り組みに向けて、まず
は主管部門として経営企画部が旗を振ることにな
りました。
JTブランディング宣言(2002年制定)
∼すべてのステークホルダーに「かけがえのないディライト
(Delight)」を
約束・実現していくことを明確化したもの∼
• 私たちは、顧客に信頼され、推奨されるユニークなブランドを育成する世界的ブランディング企業を
目指します。
• 私たちは、
ブランドこそが、
ステークホルダーが抱く期待と信任から生まれる最大の経営資産である
と考えます。
• 私たちは、優れたブランド価値を構築し、
リフレッシュしていくために、経営資源と意志を投入します。
• 私たちは、
ブランドには誇りを、その価値の構築には責任を持ちます。
ブランディング・スピリッツ
1.当事者意識を持つ(コミットメント)
2.説明責任を果たす
(アカウンタビリティー)
3.社会と対話する
(ダイアログ)
4.専門性を備える
(プロフェッショナル)
5.変革する
(イノベーション)
6.壁を越える
(バウンダリレス)
7.品質とスピードを両立する
(クオリティ&スピード)
3
全社で取り組んだ
変革促進施策
JAMプログラム構成
訴求点
JTグループの価値観/
健全な危機感
現場での取り組みの
達成可能性
概要
「人口の減少」や「競争激化」
の環境変化の中でJTグループは
変化に挑み続ける意志を
持ち続けること を共有
「仕事の意義を理解すること」
「役割や立場を超えて
巻き込んでいくこと」
の大切さを実感する。
プログラム
JTグループの未来を考える
ロールモデルの共有
参加者:約200名
だけが生き残る。JTグループは一丸となって変化
ションの促進をゴールとすることまでを求め、組織
わ け で す が 、次 は いよ いよ 変 革 の 促 進という
に挑 み 続 ける」というコンセプトに落とし込 み、
力強化の一環としての位置づけを強化しました。
フェーズに入っていきます。
JAMのプログラムに反映しました。
さて、診断によって組織力の状況が把握できた
そして、変革の動きを確実に起すため、JAMに
LMに企画段階から相談に乗ってもらいました
出席しない直属上司や部門長にも明確な役割を
JAMといわれるリーダー層の意識醸成イベント
が、プログラムにはすごくいろいろな工夫がされ
与え、参加者のアクションプラン促進をサポートす
と、JTAといわれる社内表彰制度です。
ていて、参加者が眉間にしわを寄せて難しいこと
る体制を整えることで、事前事後含め、参加者が取
まず「リーダー層の意識醸成イベント」について
を話し合うのではなく、初めて会った者同士でも
り組みを継続しやすい環境整備施策を強化しまし
ご説明いたします。JTGroup Action Meeting、通
リラックスして意見を述べ合うなど、非常に和やか
た。
こうして、JAMは現場に組織変革の促進力を与
称JAMと呼ばれるイベントを2007年に実施いた
な雰囲気で対話が進んでいました。
えることができたと考えています。
現場での変革を促進するために実施したのが、
しました。
JAMの目的は、
「変革への意識を醸成する」
こと
です。
JAM開催の成果と課題についてですが、成果に
次に全社を対象とした変革促進施策のもう一
ついては、全社・事業横断的なコミュニケーション
つの事例として、社内表彰施策JTA(=JUST TRY
によって、
「会社も社員一人ひとりも変わらなけれ
AWARDS)をご紹介します。
JUST TRYはJTの頭文字をもじった駄洒落です。
参加者は、管理職のもとで現場の変革をリード
ばならない」
という危機感と変革のエネルギーを
する若手のリーダー層を集めました。彼ら・彼女ら
参加者間で共有することができたことです。事後
「JTブランディング宣言」
「ブランディング・スピリッ
の変革への意識を醸成しコミュニケーションの強
のアンケートでは参加者の90%が意識や心構え
ツ」の理解・共有がなかなか進まない中、難しい言
化を図ることで、変革の原動力になってもらおうと
に変化が生じたと回答しています。
葉で は なく
「要 はこういうことなん だ」というス
いうものです。
このイベントで発したメッセージは2点です。
まず、健全な危機感として「変化せずには勝ち
残れない」
ということ。
課題は、意識の高揚が実現したものの、実際の
行動の変革は十分ではなかったことです。
先ほど述べたように、JAM2007では、直接組織
の中で活躍する若手リーダーに、ボトムアップで
社長の木村も口癖のように「変化に挑み続けな
の変革の役割を担ってもらうことが目的でした。そ
さい」
と言っており、これだけ環境変化が激しいと
の意味において、参加者の変革への意識高揚、各
自ら変化しないと生き残れない、
ということを明確
職場におけるイベント内容の共有ができたことは
にメッセージとして伝えました。
成功だったのですが、一方で、組織トップのコミッ
もう一つが、
「一人ひとりが変化し続ける主役を
担う」
ということです。
これは、変化というものは、言われたからやると
いうことではなく、現場の自発的な取り組みとして
行ってこそ意 義 があるという想 い から発 信した
メッセージでした。
ローガンを作ろうということで決まったのが「JUST
トや、個人ではなく職場単位でのアクションプラン
が な けれ ば、現 場で 変 革を起 すことは 困 難でし
た。その気づきが翌年のJAM2008年に活かされ
ることになります。
JAM2008はJAM2007の経験を活かし、
リラック
スした雰囲気は保ちながらも、イベント内容の共
それらのメッセージを踏まえ、
「生き残るのは最
有をゴールとするのではなく、イベント後、職場で
も強い者でも最も賢い者でもない。変化できる者
参 加 者 が 周 囲 を 巻 き 込 み 、組 織 単 位 で の アク
JUST TRY AWARDS授賞式
TRY」です。
「まずやってみよう」というメッセージ
を込めています。
で共有されるとともに、表彰パーティーで表彰式
JUST TRY AWARDS の目的は、
「ブランディング
が実施されます。グループ報については、取り組
宣言」
「ブランディング・スピリッツ」の実行のた
みの目的・内容・結果だけでなく、本人と、その上
め、まずは一歩踏み出した改善事例を共有するこ
司やスーテクホルダーに取材し、できるだけ生の
とにより、
「 変革を起すことはいいことなんだ」
「ぜ
事例を社内に届けられるような誌面といたしまし
ひ進めるべきだ」
「自分も挑戦してみよう」という
た。
このように社内に共有することは、単に事例の
マインドを醸成し、現場での変革につなげていこ
伝 達 だ けで は なく、受 賞 者 や 周 囲 の モ チ ベ ー
うというものです。
ションアップの面でも効果がありました。
決して大きなプロジェクトではなく、現場で進め
られている「JUST TRY」、すなわち「ちょっとした工
大切さを改めて認識してもらえたことです。
一方課題ですが、行動が促進され全体としてはこ
けたこと」で誰かに歓ばれたり、業務改善につな
の施策が非常に盛り上がったものの、
「職場間の温
がった事例を募集し表彰する制度です。
度差」や「目的との乖離」
といった問題点がありまし
下期ごとに自薦、他薦問わずエントリーする ②
事務局で期ごとに10件ずつ優秀賞を選定 ③社
各部門での
自発的な
組織力強化の
取り組み
JUST TRY AWARDSの成果は、行動することの
夫や、勇気を奮って始めたこと、めげることなく続
JUST TRY AWARDS の選考プロセスは、①上
4
年間20件の優秀案件については、グループ報
た。ある職場は積極的に参加するが、ある職場は
JUST TRY AWARDSに興味を示さないという状況で、
「職場間の温度差」が生じていたことも事実です。
本社による変革の促進が進むと同時に、各事
業部や部署による現場での変革の動きが始まり
ました。
「目的の乖離」
という点は、そもそもこの表彰施
数ある動きの中から、その代表格である、製造
策では、まず行動することの大切さを訴えることを
統括部門におけるJ-MAP分析手法を現場に獲得
事務局での表彰基準は、JUST TRYを褒め称え
優先し、
「JTブランディング宣言」
「ブランディング・
させる取り組み、M&S部門における管理職の横の
るコンセプトを大切にするため、次に挙げるよう
スピリッツ」そのものを前面に押し出さなかった
コミュニケーションを促進させる取り組みをご紹
な簡潔な選考基準としました。①その人なりの「気
ため、この表彰施策では「JTブランディング宣言」
介いたします。
員投票により年間の最優秀賞を決定する、という
ステップで行いました。
づき」や「工夫」があるか ②行動にあたっての苦
労や困難はどのくらいか ③誰か(または本人)
の歓びにつながるか。
「歓び」は、ブランディング宣
「ブランディング・スピリッツ」の理解や共有が進
みづらかったことが挙げられます。
このようにJAM、JTAにはそれぞれ良かった点、
製造統括部門はたばこ事業本部に属し、工場や
製造に関わる技術を統括する立場にある部門で、
M&S部門は製造統括部門と同様にたばこ事業本
言と一貫性を持たせるために選考基準に入れま
悪かった点がありましたが、J-MAPによる組織力
部に属しており、マーケティングおよび販売に責
した。
診断、そしてJAM・JTAによる全社・事業横断での
任を負っています。2007年にマーケティング機能
施策展開により、診断と変革のサイクルが回り始
とセールス機能が統合されて誕生しました。
2006年から2008年までの3年間実施しました。
毎年数千件の応募がありましたので選考には大
めました。
まず製造統括部門における、J-MAP分析手法を
変 苦 労しました が、素 晴らしい 取り組 み が 多 数
現場に促進させる活動である「組織力向上研修」
あったので、非常にやりがいを感じました。
をご紹介します。
組織力向上研修実施の経緯・目的としては、そ
れぞれの管理職がJ-MAPの結果をしっかり読み解
き、各部署の組織の強み・弱みは何なのかを分析
できる力を付与するというものでした。組織レベ
ルでJ-MAPの結果がフィードバックされるもの
の、その分析手法の知識がないために有効に活
用できない、改善活動に活かせないという課題を
踏まえて実施いたしました。
具体的な内容としては、①まずは管理職として
変革の牽引役を担っていくという役割認識をしっ
かりと持ってもらう ②J-MAPを読み取り、それを
分析できるスキルを身に付けてもらう ③その上
で自分の組織の課題を明確にし、それに対してど
ういう手を打っていくのかというアクションプラン
を作ってもらう ④そのアクションプランを皆で
開始時における開発力強化の取り組み全体像
本社による変革の促進
現場の変革
J-MAPによる診断、そして本社による変革の促進によって
本社による変革の促進によって、現場レベルの動きが始まった。
組織力強化のサイクルが回り始めた。
全社的な調査
本社に
全社的な調査
J-MAP導入
診 断
組織力を測る
診 断
変 革
本社に本社による
現場の変革
変革の促進
JAM、JTA
全社並びに事業横断
での施策展開
実現していくために、メンバーのモチベーション
きっかけは2007年にマーケティング部門とセー
を高めるスキルを付与する。大体このような4つの
ルス部門の統合が行われ、マーケティング アンド
プログラムで実施しました。
セールス部門として出発したことです。
組織力向上研修の成果は、
「 管理職がJ-MAPを
製造統括部門
M&S部門
J-MAPの分析手法
の獲得
管理職の横の
コミュニケーション
を促進
新部門の誕生に際し、管理職層の横のコミュニ
現 場で 使えるようになった」ことだと思 います。
ケーションの強化が必要と考えられました。その
J-MAPを読み解く手法を丁寧に現場まで伝え、現
ため、
「One Team One Goal」
というスローガンを
場がそれを獲得したことにより、自発的にJ-MAP
掲げ、
「進化2008」
というM&S部門の全管理職450
を活用してもらえる環境を作り出すことができま
名を集めた2日間の会議を実施したのです。
した。
変 革
本社による
変革の促進
一 つ の 部 門としての 統 合を成 功させるた め、
みました。部門統合後の未来を創っていく管理職
一方課題は、分析手法を獲得した結果、いかに
「戦略の浸透」
「横のコミュニケーションの促進」が
の主体性を大きく醸成しつつ、異なる部署の管理
得点を上げるかということにばかり着目してしま
目的となっています。従って、単なる戦略の発表で
職たちがコミュニケーションによって深くつながり
う状況が生まれたことです。本来はJ-MAPをツー
はなく、ケースワークによって市場変化に適応する
あうことができ、課題というほどの課題はなく、非
ルとして使って組織力を向上させることが目的な
ことの 重 要 性を体 感し、参 加 者自らが 設 定した
常に成功した会議だったと思っています。
のに、目的と手段が逆転してしまうことになったの
テー マで の ディスカッション にて横 のコミュニ
です。
ケーションを促進させました。
次にご紹介するのが、M&S部門における取り組
みです。
徹底的に管理職の横のコミュニケーションを高
め、M&S部門の組織力を盤石なものにしようと試
組織力向上研修
目的
変革を促進していくためのマネジメント層
研修プログラム
内容
成果
進化2008
目的
M&S部門の誕生を成功させるための施策
① マネジャーとしての役割認識付与
② J-MAP分析スキルの付与
③ 自組織の課題明確化とアクションプラン立案
④メンバーのモチベーション向上スキル付与
(フォロー研修)
内容
・M&S部門戦略発表
・ケースワーク
「市場や環境変化への適応の重要性」の
体感
管理職が持ち帰り現場で使えるようになった
成果
1日目 戦略の浸透
2日目 横のコミュニケーションの促進
・自ら設定したディスカッションテーマに基づく議論
横のコミュニケーションの促進と主体性の醸成
5
様々な取り組みの
進化
3年は割合短い期間と考えられる方もいるかも
ドバックも充実させてきました。
本社による変革の促進方法も進化しています。
しれません。
しかし、組織の目指す目的はJTグルー
プミッション/WAYに進化しました。また、私たち
それは「ステップを明確にした理解・実践」
「JTグ
自身の組織力も進化しました。つまり、いままでの
ループミッション/WAYについて考える機会の提
「ものさし」では合わなくなっていたのです。
供」そして「全社への継続的な発信」です。
経年で変化を把握してきた流れが途切れるとい
まず、
「ステップを明確にした理解・実践」です
うデメリットはあるものの、無理に合わない「もの
が、現在の中計「JT-11」においては、まず管理職に
さし」を使うのではなく、組織の進化に合わせて
JTグループミッション/WAYを腹落ちさせて変革
「ものさし」も柔軟に進化させていく、
ということが
を促そうと試み、1年目:管理職の理解、2年目:管
大切だと考えております。
そこで、進化した「組織力」を把握するため、
「組
理職の実践と部下への理解・実践促進、3年目:全
員の理解・実践という目標を掲げました。
管理職から取り組みを始めた理由の一つには、
織目的」
「個の力」
「インナーコミュニケーション」
の3つで組織力を測ることとしました。
JAMから得られた経験があります。
新J-MAP設問の内容は、
「組織目的」はJTグルー
現場の意識の高揚は実現したものの、実際の行
ここまで、当社の中で診断と変革のサイクルと
プミッション/WAYについて、
「 個の力」は社員の
動の変革は十分ではなかったというJAMの課題
いう形で組織力強化が進んでいることをお話しま
自己認識や成長環境について、
「インナーコミュニ
に 対して、経 営 層 から管 理 職 、管 理 職 からメン
した。
ここからお話するのは、各取り組みの「進化」
ケーション」は 組 織 の 血 流 に つ いて診る構 造と
バーへと地に足を付けてJTグループミッション/
についてです。
なっています。
WAYを伝え、現場の変革につなげることで解決を
最初に、診断の進化についてです。
新J-MAPでは、経営理念が自分たちの仕事にど
図るようにしました。
お伝えしましたとおり、初期のJ-MAPは2006∼
の程度密接に絡んでいるのかをしっかりと測るこ
次いで「JTグループミッション/WAYについて
2008年度の3ヵ年計画における「組織力強化」の
とができ、現場により近く、実際の業務に結びつけ
考える機会の提供」です。具体的には、経営から現
テーマに対して作られたものでした。
て組織力を診断できるツールになったと思ってい
場に発せられた変化を訴えるメッセージに対し
ます。
て、部門ごとにJTグループミッション/WAYにつ
これに対して2009∼2011年度の3ヵ年計画に
おいて着目されたのが、
「 戦略の継承・発展」
とい
また、JTグループミッション/WAYを浸透して
いて「考える会」を始めました。その実施方法は部
うポイントです。ブランディング宣言、ブランディン
いくためには、
どのような打ち手が必要なのかを
門ごとに任せたのですが、多様な事業があるの
グ・スピリッツが進化したJTグループミッション・
部署レベルで把握するため、さらに新たな設問を
で、部門や職場の仕事の内容によってJTグループ
JTグループWAYを共有・実践していくことで、企業
追加しました。それがJTらしさを把握するための
ミッション/WAYに対する考え方や行動は多少変
価値の増大を図ることとなりました。
設問であり、JTグループミッション/WAYについ
わってもいいと思っていました。
このため、2009年にJ-MAPはJTグループミッ
ション/WAYの共有・実践度を把握するための
サーベイへと進化いたしました。初期のJ-MAPが
全社の取り組みとしては、せっかくJTグループ内
て、未認知、認知、理解、共感、行動の5段階で状
況を聞く設問になっています。
また、これらの結果を現場にフィードバックし、
にいろいろな物の見方・考え方があるのならば、
それを共有することで新たな気づきが得られるの
「組織力」を測ることを目的にしているとするなら
さらなる共有・実践に向けたアクションのヒントと
ではないかと考え、全グループの管理職2,000名
ば、新しいJ-MAPは「組織力」を測りつつも「JTらし
して活用してもらうことを企図して、JTグループ
強を集め、JTグループミッション/WAYを考える
さ」を測ることが目的に加わったと言えます。
ミッション/WAYの「共有・実践度把握シート」を
機会を設けました。
グループ内での異業種交流会
開発しました。
にもなり、多様な力の結集となりました。
この診断の進化におけるポイントですが、組織
の目標と状況の変化に合わせて柔軟に「ものさ
し」を変更したことにあると考えます。
最後に「全社への継続的な発信」です。
この点に
このように、診断自体も進化させてきましたし、
診断後、各部門に「気づき」を与えるためのフィー
ついては、変革の必要性を発信し続ける手段とし
JTグループミッション
私たちJTグループの使命。
それは、
自然・社会・人間の多様性に価値を認め、
お客様に信頼される
「JTならではのブランド」
を生み出し、
育て、高め続けていくことです。
JTグループWAY
そのために、
私たち一人ひとりが、
・お客様を第一に考え、
誠実に行動します。
・あらゆる品質にこだわり、
進化し続けます。
・JTグループの多様な力を結集します。
ミッション/WAYの「共有・実践度把握シート」
進化した組織力強化の全体像
本社に
本社による変革の促進
JAM、JTA
全社並びに事業横断での施策展開
本社に
全 社的な調査
組織力を測る
診 断
JTらしさを測る
全グループマネジメントミーティング、社長通信
全社への継続的な発信とミッション/WAYに
ついて考える機会の提供
本社に
変 革
現場の変革
製造統括部門
M&S部門
J-MAPの分析手法の獲得
管理職の横のコミュニケーションを促進
現場主動のさらなる促進
(ツールとしてJ-MAPを使用)
管理職へのミッション/WAYの共有と
実践の促進
立っています。
て、イントラネット内に社長通信というコーナーを
通常Pに含まれているResearchとGoalの重要
設けて、
トップからの継続的な情報発信をしており
性に着目し、ResearchとGoalを独立させ、Planを
M & S 部 門 の イベントも変 貌 を 遂 げ、
「シンカ
ます。これはJUST TRY AWARDSの課題であった
立てる前段階で的確なResearch、明確なGoal設
2009」
となりました。カタカナの「シンカ」
としたの
「職場間の温度差」
「目的との乖離」を踏まえて生
定を行うことにより、
より精度の高いPlanを立案し
は、
「進む」の方の「進化」
と、
「深い」の方の「深化」、
まれた方法です。先ほどは、多様な考え方や行動
「新しい」の「新化」などいろいろな意味を含ませ
PDCAサイクルにつなげます。
たからです。
で構わないと述べましたが、そういった中にあっ
このRG-PDCA®サイクルは仕事の内容を問わ
ても、緩やかな統一感とブレない目的意識は必要
ず、すべての仕事を行う上での「仕事の基本スタ
シンカ2009でのポイントは、進化2008が横の
であると考えています。
イル」
といえます。ですから、製造統括部門だけで
コミュニケーションの強化であったことに対して、
なく、今やたばこ事業全体でも用いられる考え方
縦のつながりを強化することに進化した点で、目
となりました。
的は、JTグループミッション/WAYを改めて深く
その一方で、現場での取り組みも進化していま
す。その一例として、再び製造統括部門とM&S部
門をご紹介します。
製造統括部門においては、管理職がJ-MAPを活
この進化した組織力向上研修においては、現場
主動を目指すため、RG-PDCA®サイクルの質を上
考える機会を与え、管理職が自ら組織変革を行う
状況を創出することです。
従って、JTグループミッション/WAYに関しての
用しながら、現場主動促進のためのツールとして
げることを目標としています。既成概念を打破し、
J-MAPを使用する状況となり、自ら考え、自ら動く
組織としてのゴールを魅力的に描く観点を付与
理解を促進することはもちろんですが、日々の活
組織を目指すようになりました。
し、そこに向かってJ-MAPを一つのツールとして
動 に紐 づ けてアクションプランを立 案 するた め
M&S部門においては、管理職がJTグループミッ
使用し、的確なResearch を行い、明確なGoal を
に、自分たちで課題を発掘し考えるようプログラ
ション/WAYを十分に理解し、現場に落とし込む
設定し、PDCAを進めていく、というストーリーに
ムの変更を施しています。
ことで進化する組織を目指す、というかたちに進
化しております。
今日までの組織力強化の取り組み
具体例をご紹介いたしますと、製造統括部門に
2006
おいては、これまでやってきた組織力向上研修の
2008
J-MAP
テーマを、J-MAPの分析手法を教えることから、現
全社での取り組み
2009
JAM2008
JUST TRY AWARDS
社長通信
主体的に動く、変革するという意味です。
全グループ
マネジメント
ミーティング
現場主動を実現するために製造統括部門の掲げ
る
「RG-PDCA®サイクル」
という仕組みの質向上を図
り、現場主動の実現を目指すものになりました。
RG-PDCA®サイクルのR、Gとは、Research & ReviewとGoalのことです。
2010
新J-MAP
JAM2007
場主動のさらなる変革促進を目指すことに進化さ
せました。現場主動とは読んで字のとおり、現場が
2007
部門ごとの
取り組み
製造統括部門
M&S部門
組織力向上研修
組織力向上研修
アドバンス
進化2008
リンクアンドモチベーションがお手伝いさせていただいた取り組み
シンカ2009
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ことではなく、必要性を気づかせる(JAM)、さりげ
なく促す(JTA)といった取り組みであったのが良
現在JTの
組織力強化は
どのような状態
にあるのか
かったのではないでしょうか。そこから各組織そ
れぞれで独自の取り組みが起こりました。遠回り
のようで一番の近道だったのです。
また、その押しつけでない取り組みを、試行錯
誤を繰り返しながらも粘り強く継続してきました。
この手の施策には社員からの批判がつきもので
すが、組織力を高めることが会社の成長につなが
ると信じて続けてきたことが、各組織で自ら変革し
現在のJTの組織力強化は「自走」状態であると
考えます。
当然、本人が納得しなければ意識は変えること
はできません。
ようとする動きにつながりました。
このように、私たちの組織の状態は現場が自ら
考え自ら動く
「自走」状態となっており、組織力強
化に向けた強い基盤ができてきていると考えてい
その意味で、全社的な取り組みとしては、組織
ます。ただ、まだまだ課題も多く、完成したとは言
力強化のために何かをやらせる、命令するという
えませんので、今後も粘り強く継続していきます。
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