平成28年度 物理学演習 IB(電磁気学 I 演習) 演習の方針 (1) 誰が解くかは毎回直前に乱数表を元に決める。 (2) 単位取得に必要な発表回数は 5 回(状況次第で 4 回又は 6 回)以上とする。 (3) 指名されたものの全く解けない場合は −1 回、出席さえしていない場合は −2 回と数え、一度でも −4 回を下回った時点で単位は出さないものとする。 (4) 解けない人が複数(何人かはこちらが設定した難易度による)出た場合、自発 的に解く人を募る。この場合の発表点は当然高く設定する。 (5) 逆にあまりにも酷い発表は 0 回あるいは −1 回の扱いとする。基本的には 0.5 を単位として足し引きする。 (6) 問題は毎回原則として使い切る。解ける人がいなかった場合はレポートにす る。ただし、状況次第では次回への持ち越しを許すこともある。 発表の心得、作法 (1) 学籍番号、名前を書くこと。発表開始前には名乗ること。 (2) 人前で発表するというのはいかなる時も要求される能力である。単に問題を 解くことだけが目的の授業ではない。自分が授業しているのだとういう意識 を持って、どのような発表をすべきかよく考えること。「事前に問題を解いて おくこと」には発表練習も含まれる。どの問題に当たっても大丈夫なよう事前 に発表の練習までするように。発表の仕方として、最低限「大きな声を出す」 ことと「聴衆の目を見る」ことだけは心がけよ。 (3) 聞く方も会議の場にいるという意識をもつこと。積極的に質問し、また上記の 目的もあるので、お互いに発表の技術を磨く場であるとして、目についた点を 指摘してあげること。自分の欠点は分からないが、人の欠点はよく見える。授 業という場である以上指摘しないことこそが「失礼なこと」であると知れ。 (4) 問題が多いので、時間内に終わらせるためには自分がどれくらい時間をかけて いいのか、問題の難易度に照らし合わせてよく考えること。「必要な情報を落 とすこと」以上に「不必要な情報を加えること」がやってはいけないことであ ることと心得よ。繰り返しになるが、単に問題を解くだけでなく、発表の予行 演習もしておくこと。 1 (5) 論理の展開、つまり何を前提として、どういう理由、理論に基づいて何を説明 するのか、ということに心を砕くべし。 (6) 問題を解くにあたって必要な情報を必ずしも全て与えてはいない。論理の展開 に必要な設定は自分で考えること。きちんと図やグラフも書くこと。 (7) 講義と一体であるので、過年度生で講義の方の単位を持っているとしても演習 の単位が必要な場合は講義の方も受けること。 (8) そもそも、問題文をよく読むこと。言葉の意味・定義をよく考えること。 例えば座標の定義に注意を払うこと、など。 (9) 人に聞いても良いけど、丸写しはしないでね。教えてもらったことを自分で ちゃんと消化するように。さらに間違いを見つけた場合はきちんと教えてくれ た人にその成果を戻すこと。というか、その場で議論しようね。 それでも写すなら「確実に正しい答えを写せ」と言ったよねぇ。間違った答 え写して満足するな!せめてそれくらいの見極めはしてください。教える 方(写させる方)もよく考えてください。自分たちが如何に理解できていない かという事実に対してもう少し謙虚になった方が良いですよ。社会に出たとき に今のやり方で言い分けないことくらいはさすがに分かるよね! ? (10) 世の中で求められている力は、「問題解決能力」だそうです。これは与えられ た問題を単に解くというのではなく、1)まずどのような問題があって、2) それを解釈するために必要な言葉(変数といっても良いです)があって、3) 具体的に問題を解くためにその言葉を使ってどんな論理構造を入れるか、を見 出す能力です。 物理学をきちんと学べばこういう力はちゃんとつくはずなんですよ。ただし今 の皆さんのように、与えられた設定の元それらの設定の意味を考えずに漠然と 式変形するだけでは身につくはずもない力です。 といいつつ、結局は1)2)3)のほとんどをやってあげてしまいました。 11 『九九を知らない小学生に方程式は教えられないでしょ』 『あいつらは考えない、その方が楽だからな。でもそうなったら人としてはお 終いだ。』 『明日の忘れ物はきっと今日にある』 2 第0回 (蜘蛛の糸) 力学 I の試験を受けて • あまりにも皆さんが基本的なことを分かろうとしてなかったことに衝撃を受け ました。 • 言葉(定義)を大切にしてください。もちろん「数学語」まで含めての「言葉」 です。 • 漠然と式変形ができてもほとんど意味ありませんよ。まあそれすら出来ない人 はそもそも論外ですから、分野を替えることを考えた方が良いでしょう。それ でもしがみつきたいのであれば、それだけの物(努力)を見せてください。 • 今回の問題は最後通牒です。なぜ、以下の問題を出したのかよく考えてくだ さい。 • 演習では答えが正しければ正しいと言います。間違っている場合は「間違って いること」「正解へたどり着くまでのヒント」は出しますが、答えは言いませ ん。皆さんがどういう姿勢で演習に臨むか見させてもらいます。それに応じて こちらも授業態度(進め方)を考えます。 1 ベクトルと微分 一変数(例えば t)の関数であるベクトル u(t) を考える。 (1) 一般に、「ベクトルの微分の大きさ」と「ベクトルの大きさの微分」は異なる こと、つまり、 du du 6= (1) dt dt であることを、大きさの意味や微分の意味といった観点から説明せよ。 – この違いをほとんどの人が理解していないのには吃驚しました。 – もちろん等号が成立する関数形も存在します。具体例はともかく、どうい う条件が必要かくらいは考えてください。もっともそれを考えれば、具 体例はすぐ思いつくと思います。 (2) 力学 I の授業(演習含む、以下同)で du 6= 0 かつ du = 0 dt dt (2) を満たす具体例を二つ扱った。その二つの例 (u の微分方程式) を書き出し、そ du = 0 となることを導け。 の物理的な意味を述べた上で dt 3 – 数学的な構造という意味では一つです。 – もちろん授業で出てきたときには u とは書いてませんよ。 – u の微分は 0 ではないので u は時々刻々と値を変えます。 – コマの運動の場合を考えると実は三つ扱ってます。ただし、コマの場合 は或る意味「偶々」これを満たしました。あ、答えとしてはコマの運動 は除外してくださいね。もしこの文章の出だしを見て答えの一つはそこ から持ってくればいいと思った人は、向こう一年は数学や物理の勉強は しないで国語力を磨いてください。 2 運動の三法則 質量が m1 , m2 の質点 1, 2 が存在する孤立系を考える。座標は r1 , r2 とする。また それぞれの質点は互いに力を及ぼし、質点 i の j への作用を Fij と書くことにする。 (1) それぞれの質点に対する運動方程式を建てよ。 (2) F12 と F21 の間に成立する関係は何か? (3) (1)(2) で運動の三法則はどのように反映あるいは使われているのか、答えよ。 – 運動の「三」法則です。 (4) 常識的な座標系では重心は等速度運動する。これを説明せよ。 – 普通は「常識的な座標系」とは言いません。どう呼びますか?以下の問 題では適宜読み替えてください。 (5) 実は、一般的な座標系を取ると重心は孤立系といえども等速度運動しない。な ぜか? (6) ただし (5) の様な状況を考えたとしても、重心を原点とする座標系は「常識的 な座標系」となる。これを運動方程式の観点から説明せよ。 3 運動の三法則の適用1 ∼ 重心について 前の問題で考えた系において、二つの物体は自然長が l の質量や太さのの無視で きるバネ定数 k のバネでつながれているとする。さらに、このバネは折れ曲がった りせず常に直線の状態は保てるとする。 • いちいち言うのも何ですが、バネ以外の力は考えなくて良いですよ。前問にお いて、力の設定を具体化しただけです。いちいち言う、ということが何を意味 しているのか察していただけるとうれしいです。 4 (1) それぞれの質点に対する運動方程式を建てよ。 (2) (1) で運動の三法則はどのように反映あるいは使われているのか、答えよ。 – くどいようですが、運動の「三」法則です。 – 以下、座標 r1,2 は「常識的な座標系」における座標とします。 (3) (1) で求めた運動方程式を変形して、重心を原点とする座標系における運動方 程式を書け。 – 誰も察してくれなかったので念のために書きますが、この類の問題設定 であれば、運動方程式の意味では「1」だけの式と「2」だけの式に分 離しますよね?覚えてますか?レポートでさえこれを一人もやってくれ なかったのは吃驚でした。あ、あくまで運動方程式の意味では、ですよ。 (4) 重心に対するそれぞれの角運動量が保存することを示せ。 4 運動の三法則の適用2 ∼ 相対運動について 引き続き前の問題設定の場合を考える。 (1) 質点1を原点とする座標系における質点 2 が従う運動方程式を導け。 – 普通は相対座標と言います。が、敢えてこういう言い方をしてます。な ぜだと思います? – この設問内では、この座標系を使います。 (2) この系は加速度系である。このことが式の導出にどのように現れていたか説明 せよ。 (3) 質点2の角運動量は、それを適切に定義すれば、保存している。これを示せ。 (4) (3) より運動は平面上の運動となる。これを説明せよ。 – 平面はどうやって指定するんでしたっけ? (5) 運動方程式を極座標における動径方向と角度方向に分解せよ。 – これが出来ない人がレポートでさえ過半数を超えたのには吃驚でしたね。 こんなのも分からないやつをあがめるな! !写させる方も、この程度のこ とも分かっていないということを自覚しろよ! 5 – 基底ベクトルが定ベクトルではないということを繰り返し説明したし解 いてもらったつもりだったんですがねぇ。そしてそれは回転座標系の説 明のところで完結したと思っていたんですが…。 (6) (5) の式のどこに (4) の結果が現れているのか説明せよ。 (7) 角運動量(かそれに対応する量) を h と表し、相対運動の動径方向の運動方程 式を r のみで表せ。ただし、h がどういう量の書き換えなのかはきちんと示す こと。 (8) 角運動量が0の場合、初期条件にどのような制限がつくか答えよ。 (9) 角運動量が0の場合の解を求めよ。 (10) h 6= 0 の場合の動径方向の運動方程式は、回転座標系で見た運動に等しい。こ れを回転の角速度ベクトルがどのように与えられるかも含めて説明せよ。 (11) (10) で説明した見かけの力は通常何と呼ばれているか。 (12) 一般解は難しいので、この回転座標系にいる人にとっての停留点周りの運動を を考えることにする。この停留点はどのように与えられるか。 (13) 停留点周りであれば、質点2は単振動する。この振動の周期を求めよ。 – 解析的な解はありません。どういう式を解けばいいのか説明してください。 5 力学的エネルギー=運動エネルギー+位置エネルギー (1) 質点が一つしかない場合にその質点に働く力が F = −∇U (r) (3) と与えられる場合を考える。 (a) 質点を r0 から r までその外力に逆らって運ぶのに必要な仕事が経路に依 らないことを示せ。 (b) この仕事によって質点にはエネルギーが蓄えられたと解釈できこれを位 置エネルギーと呼ぶ。この位置エネルギーはどのように与えられるか? ∗ 答えを書いてしまうようですが、エネルギーの原点の意味を理解し てないんだなぁ、と絶望的な気分にさせてくれる解答が多かったで すよ。試験のどの問題のことか分かります? (c) 運動方程式を変形することで、力学的エネルギーが保存することを示せ。 6 さて、複数の質点 (i = 1, 2, · · · , n) があるときには質点 i に働く力 Fi が Fi = −∇i U (r1 , r2 , · · · , rn ) (4) と与えられるとき、U は位置エネルギーとしての意味を付与できる。これを問 題 3 に則して考える。 (2) 問題 3(1) の運動方程式を変形して、力学的エネルギーの保存則を導け。 (3) (2) で求めた力学的エネルギーから位置エネルギーを読み取れ。それが、式 (4) を満たすことを確かめよ。 (4) (2) で求めた力学的エネルギーの式を重心座標と相対座標の式に書き直せ。 (5) (4) で導出した式を元に、式 (4) を使って重心と相対運動の運動方程式を導き、 それが問題 3,4 で求めた式に一致することを確かめよ。 6 剛体の運動の一般論 • 最後の温情です。敢えて逆鱗に触れようとはしませんよね? 剛体の運動を考える。剛体を細分化し質点の集まりと解釈する。各質点 j に働く 外力を Fj とする。内力は各質点間で働く力として解釈し質点 k が質点 i の及ぼす力 を Fki と表す。 (1) 重心が従う運動方程式を書け。 (2) 全角運動量を L とすると、その時間変化率 (運動方程式) が X d L= rj × Fj dt j (5) と書けることを示せ。 (3) 角運動量は、重心の角運動量 LG と重心周りの角運動量 L′ の和で書けること を示せ。 P (4) 重心の角運動量の運動方程式は、重心に各質点に対する合力 F ≡ Fj が作用 しているしているとした時の力のモーメントを用いて表されることを示せ。 (5) 重心周りの角運動量の従う運動方程式を導け。 7 7 コマの運動 一般論を適用してコマの運動を求める。といっても一般解は難しいので、コマの 運動と言った場合にまず思い浮かべるであろう運動が実際に実現することを確かめ ることで、一般論をどのように使うのかを学ぶ。ここで言う思い浮かべる運動とい うのは、コマそのものは高速で軸周りに回転しつつ、コマの本体もゆっくり歳差運 動を行う(真上から見るとゆっくり円を描く)というものである。 具体的にはコマの芯は充分細いとする。コマの先端(接地する点)と重心の距離 を h、質量を M とする。また、コマは鉛直線に対して θ だけ傾いている物とする。 座標の原点はこの歳差運動の中心点とする。 • 教科書とは(あるいは試験の時の暗黙の了解とは)原点の取り方を変えたので 注意してください。この原点の取り方の方がみんなのイメージに合う解が得ら れます。この解き方をした後に、教科書と同じ原点の取り方(つまり接地点を 原点とする座標系を取ること)をして解いてみてください。なぜ、ここでの原 点の取り方の方が適切であるか理解できるでしょう。分からなければ、重心の 角運動量がどうなっているかをそれぞれの座標系で計算してみると良いと思い ます。 • 以下の解き方は原点をどこに取っていたとしても成立する解き方です。一方教 科書の解き方は、偶々原点を教科書の通り取っていたから成立する解き方で す。その違いを理解してください。 (1) コマそのものの回転は問題 6 のどの量に対応するか。 (2) この問題設定は、問題 6 で出てくる物理量にどのような条件を課したことにな るか。 – ベクトルは大小の比較が出来ないんですけどねぇ。それが分かっていな い人に大学の講義をどうやって行えばいいのか、教えていただけないで しょうか? (3) コマの軸が角速度 Ω で円運動しているとすれば、重心に対する運動方程式を 考えることで、全体でどのような力が働いているか分かる。 (i) 全体でどのような力が働いているか。 (ii) 力の一つは重力であるが、それ以外に通常の概念だと二つの力が働いて いる。他の力はどのような力であるか、またそれらは通常なんと呼ばれ るか答えよ。 – 今何を解きたいか、考えたいかを理解できていれば、漠然と「向心力」な どと答えるはずはないと思うんですが…。そう思いません? 8 – ましてや今考えている座標系は回転座標系ではないのに「遠心力」とか 「コレオリの力」の答えが出てくるなんてねぇ。 – まあそれ以前の問題として、円運動や力の釣り合いなど明らかに「高校 で学んだだろう!」と言いたくなる解答がいっぱいありました。予言は 的中しないことを願ってたんですけどね。 (4) コマそのものの回転が従う運動方程式(角運動量の従う式)を書け。 – これは、元の座標に依らず重心周りの運動方程式になるので常に同じ式 が得られます。 (5) (4) で求めた式を元に、コマの軸周りの角運動量の大きさを Ltop として Ω を求 めるための方程式を求めよ。特に問題設定に合うように近似した場合の Ω を 求め、それが θ に依らないことを確かめよ。 – この文章を見れば、教科書にあるようにいきなり近似した式を書くので はなくまずは厳密な式を書くことを要求されている、と分かると思うん ですが…。文章変ですか? (6) (5) で求めた Ω を使って重心の角運動量を求め、それがここまでの仮定を満た しているか確かめよ。 9 第 1 回 (高校電磁気学・力学 I の復習) • 用語は電磁気学で通常用いる表現を使う。 1 • クーロンの法則に現れる定数は k0 ではなく 4πǫ を用いること。ただし、ǫ0 は 0 真空の誘電率である。 • 問題文をよく読み、何を問うているのか、それに即した解答は何かをよく考え ること。 0 定数の定義と単位 (1) MKSA 単位系における単位を、kg、m、s、A を使った表記とそれに対応する よく使う表記で答えよ。(複数回答可) 例) 電荷 A· s=C (ア)電場 (イ)電位 (ウ)電流 (エ)抵抗 (オ)電力 (カ)電力量 (キ)起電力 (ク)磁荷 (ケ)磁場 (コ)磁束密度 (2) 次の定数の値を調べよ。 (ア)ǫ0 (イ)µ0 (ウ)光速 c 1 帯電した平板による電場 (A) 面積 S の十分に薄い金属平板がある。ここに電荷 Q が一様に分布している。 (1) この板から出ている電気力線の本数 N を求めよ。 (2) 電気力線の面密度を求めよ。 (3) 電気力線が板に垂直に出ているとして、板の周りの電場を求めよ。 (B) 同じ平板を 2 枚平行に端の位置を揃えて真空中に間隔 d で置く。それぞれ +Q と −Q に帯電させる。 10 (1) B から見た A の電位を求めよ。 (2) このことから静電容量を求めよ。 (3) 誘電率 ǫ の物体を間に挟んだ場合の静電容量を求めよ。 2 一様な電場 地表に平行に強さ E の一様な電場がかかっているとする。電場の向きとして x 軸 を取る。地表を xy 平面にとり、鉛直方向を z 軸とする。この電場中を質量 m、電荷 Q の質点が運動するとする。 (1) 原点の電位を 0 とする。このとき半径 d の円周上の電位を求めよ。 (2) R を図で表される点とする。直線 OR に沿って R→O と移動したとき、電場が なす仕事を求めよ。 (3) 円周に沿って R→P と動いたときに電場がなした仕事を求めよ。 (4) P→O と x 軸を動いたときに電場がなした仕事を求めよ。 (5) (2),(3),(4) から言えることは何か。 (6) t = 0 で (0,0,h) から静かに質点を置いたとき、t > 0 の運動を求めよ。 11 3 電気力線 電気的な力だけを考える。デカルト座標系を考え、A(−l/2, 0, 0)、B(l/2, 0, 0) と する。 (A) 点 A、点 B に等しい電荷 Q(> 0) を置いたとする。 (1) 電気力線の様子を図示せよ。 (2) (0, L, 0) に電荷 Q(> 0)、質量 m の質点を静かに置いたとする。この質点 が無限遠に到達したときの速度を求めよ。 (B) 点 A に Q、点 B に − Q3 の電荷を置いたとする。 (1) 無限遠と同じ電位になる点 (x, y, z) が満たす方程式を求めよ。 (2) x 軸上の点 P(x, 0, 0) に電荷 q を静かに置いたところ静止した。この時の P を求めよ。 (3) 点 A を出た電気力線の一部は点 B に、一部は無限遠に到達する。線分 AB となす角 θ で点 A を出た電気力線が点 B に入るとする。このとき θ のと りうる範囲を理由とともに答えよ。 (4) (3) の結果を反映するように電気力線の様子を図示せよ。 4 帯電したビーズの運動 水平に固定した摩擦のない絶縁体の細い棒に電荷 Q に帯電した二つのビーズ A、 B を通し質量の無視できる長さ L の絶縁体のひもで結んだ。それぞれの質量は M, m とする。回転運動は無視できて、質点のようにふるまうとする。A から B に向かう 向きに x 軸を取るとして以下の問いに答えよ。 (1) ビーズが静止している場合の糸の張力を求めよ。 (2) ひもの中央を引っ張ったところ、AB=d となったところで静止した。この時の 張力を求めよ。 12 (3) (2) の状況から t = 0 で手を離した。この時の A の運動を求めよう。 (a) 張力が働くまでの運動方程式をかき、相対座標と重心座標に分離せよ。ま た、重心座標の運動方程式を解け。 (b) エネルギー保存則が成り立つことを導き、これから時間に関する相対座 標の一階の微分方程式を導け。また、t を相対座標の関数として表せ。た だし積分形でよい。 (c) (b) の積分を実行し、手を離してから張力が働くまでの時間を求めよ。 (d) 張力が働いた後の運動を求めよ。 5 直線電流がつくる磁場 無限に長い直線の導線があり、そこから距離 r のところに長方形の回路 abcd ( bc=l2 , cd=l1 ) が、ab と導線が平行となるように置かれているとする。 (A) 導線に電流 I1 を流したとする。 (1) 点 a での磁束密度を求めよ。 (2) 点 d での磁束密度を求めよ。 (3) 回路 abcd を貫く磁束を求めよ。 (B) さらに abcd に微小な電流 I2 を反時計回りに流す。 13 (1) 各辺が受ける力を求めよ。 (2) 全体としてどのような力が働くか求めよ。 (C) I1 が時刻による (I1 = I1 (t)) とする。このとき回路に働く起電力を求めよ。 6 磁場中の荷電粒子 z 方向に一様な磁束密度 B の磁場がかかっているとする。t = 0 で原点から電荷 q の粒子 (質量 m) を、v = (vx0 , 0, vz0 ) で入射する。 (1) 運動方程式を立てよ。 (2) 運動方程式を解け。 (3) 運動エネルギーが保存することを確かめよ。これは運動方程式から直接示すこ ともできる。これを示せ。 (4) 運動を xy 平面に射影すると円運動になる。どのような円運動か答えよ。 (5) z 方向は等速直線運動なので一周するたびに z 方向へは距離 l 動く。l を求めよ。 7 電磁場中の荷電粒子 初速度の無視できる電荷 (q > 0)、質量 m の粒子が y 軸上にある電極 a の中心に置 かれたとする。ただし中心には粒子が通れる充分小さな穴があいているとする。同 じ形の電極 b が平行に置かれていて、ab 間には電圧 V がかかっているとする。 (A) b を通過したときの粒子の速さ v0 を求めよ。 その後粒子は直進するが、その先には z 軸に垂直に平行電極 c,d がそれぞれ z = ±h の位置に存在し、電極間に電場 E がかけられているとする。電極 c,d の y 方向の長さは l とする。 14 (B) (1) 粒子が電極に衝突しないとした場合、電極を出るときの粒子の z 座標 (z = z1 ) を求めよ。 (2) E の大きさが大きくなると電極に衝突する。衝突するときの最小の E の 大きさ (E = E1 ) を求めよ。 (3) 代わりに電荷 Q、質量 M の粒子で同様の実験を行うとする。このとき (1) の z1 に相当する座標 z2 を、z1 を含む形で表せ。 (C) さらに E = E1 に固定し、c,d の間に x 方向に磁束密度 B の磁場をかけて同じ ように粒子 (電荷 q 、質量 m)を入射させる。 (1) B = B1 のとき直進する。この B1 を求めよ。 (2) 0 < B < B1 とする。このとき (B)(1) の z1 に相当する座標 z3 を求めよ。 (3) 0 < B < B1 として、B と通過時間 T の関係をグラフにかけ。 8 ベータトロン 電荷 q 、質量 m の質点が時間的に変動する磁場(磁束密度 B(t)) 中を運動してい るとする。 (1) ある時刻で半径 a の等速円運動をしていた。この時の軌道上の磁束密度を B として、その速さ v を求めよ。 (2) 円を貫く磁束 Φ が ∆t の間に Φ + ∆Φ と変化した。 (a) 質点に作用する起電力を求め、これによる速さの変化 ∆v を求めよ。 (b) これにともない、半径 a に変化はないとすると軌道上の磁場をどれだけ 変化させる必要があるか答えよ。 9 1 変数関数のテイラー展開 x についての C ∞ 級関数 f (x), g(x), h(x) を考える。 (1) 関数 f (x) についての x = a まわりでのテイラー展開の表式を書け。また、そ のような表式に書ける理由を簡潔に説明せよ。 (2) 関数 h(x) = f (x) + g(x) の x = 0 まわりでのテイラー展開について次の 2 通り で 3 次まで計算し、両者が一致することを確かめよ。 (a) h(x) = f (x) + g(x) 自身を直接テイラー展開する方法 (b) f (x), g(x) のそれぞれをテイラー展開してその和を計算する方法 15 (3) 関数 h(x) = f (x)g(x) の x = 0 まわりでのテイラー展開について次の 2 通りで 3 次まで計算し、両者が一致することを確かめよ。 (a) h(x) = f (x)g(x) 自身を直接テイラー展開する方法 (b) f (x), g(x) のそれぞれをテイラー展開してその積を計算する方法 f (x) の x = 0 まわりでのテイラー展開の g(x) 3 次までの表式を求めよ。特に、f (0) = 0 のときにはどのような表式になるか 答えよ。 (4) g(0) 6= 0 とする。このとき、h(x) = (5) (2)(3) について 3 次までではなく、任意の次数で (a)(b) の両者が一致すること を示せ。 [補足] 実際には、 「x = 0 まわりでテイラー展開せよ。」ではなく、 「|x| ≪ 1 であるときの近 似式を求めよ。」や「x の 2 次までで展開せよ。」のような形で問われる場合が多い。 10 テイラー展開の具体例 (1) (1 + ax + bx2 )ecx を x の 3 次までで展開せよ。 √ (2) 1 + ax + bx2 を x の 3 次までで展開せよ。 1 についての x の 3 次までのテイラー展開を次の 2 通りで計算し、 1 + ax + bx2 両者が一致することを確かめよ。 (3) √ 1 を直接微分して求める方法 1 + ax + bx2 (b) (1) の結果を利用して求める方法 (a) √ (4) (1 + x)α を x の 3 次までで展開せよ。 (5) ax (a > 0) を x の 3 次までで展開せよ。 11 テイラー展開とロピタルの定理 (1) テイラー展開を利用して次の極限を計算せよ。 1 − cos x x→0 x2 sin 2x (b) lim x→0 tan 5x (a) lim 16 (c) lim √ x→0 x √ 1+x− 1−x (2) (1) での計算はロピタルの定理と言われるものと等価である。ロピタルの定理 について説明し、証明せよ。 17 第 2 回 (ベクトル解析の復習) ∇ ≡ ex ∂ ∂ ∂ + ey + ez ∂x ∂y ∂z と定義する。 デカルト座標系の種々の性質については既知とする。偏微分についても同様である とする。 1 勾配 ∇φ (1) 勾配 ∇φ の物理的な意味を説明せよ。 (2) 球座標 (r, θ, ϕ) を考える。φi = r, θ, ϕ のそれぞれに対し ∇φ はそれぞれの方向 の基底ベクトルに比例する。これを (1) の考えに則して説明せよ。 (3) r, θ, φ は独立なので ∂φj ∂φi = δij となる。 (a) ∂r ∂φj = · ∇φj ∂φi ∂φi と書けることを説明せよ。 (b) このことから ∂r ∝ ∇φi ∂φi であることを説明せよ。また、これは (1) の説明と一致していることを説 明せよ。 2 回転 ∇ × A (1) 回転 ∇ × A の物理的な意味を説明せよ。 (2) A = ∇φ と書けるなら、∇ × A = 0 であることを証明せよ。また、物理的に はどう解釈できるか説明せよ。 (3) ∇ × A = 0 なら A = ∇φ の形にできることを示せ。φ を A を用いた形で表現 すること。 18 3 発散 ∇ · A (1) 発散 ∇ · A の物理的な意味を説明せよ。 (2) A = ∇ × B と書けるなら、∇ · A = 0 であることを証明せよ。また、物理的 にはどう解釈できるか説明せよ。 (3) ∇ · A = 0 であるなら、A = ∇ × B の形にできることを示せ。また、B を A を用いて表せ。さらに、B → B ′ = B + ∇φ としても同じ A を与えることを 説明せよ。 4 保存力 r の関数として与えられる力 f = f (r) を考える。 (1) 保存力とはどのような力か説明せよ。 (2) それを式で表すとどのように書けるか、積分形と微分形で書け。 (3) 保存力の下での運動は力学的エネルギーを保存する。このことをここまで定義 した記号を用いて示せ。 5 εijk , ∂i を用いたベクトル解析 デカルト座標 (x1 , x2 , x3 ) = (x, y, z) におけるベクトル解析を考える。デカルト座 標の基底を ei (i = 1, 2, 3) とする。δij をクロネッカーのデルタ記号として、完全反 対称テンソル εijk を ε123 = 1 , εjik = εikj = εkji = −εijk (i, j, k = 1, 2, 3) を満たす量として定義する。さらに、演算子 ∂i (i = 1, 2, 3) を ∂i ≡ ∂ ∂xi により定義する。また、以下の問題では繰り返し用いられている添え字については 1, 2, 3 の和を取るというアインシュタインの規約を用いることにする。次に 1 つの例 を挙げる。 3 X xi ei ≡ xi ei = r i=1 (1) εijk について次の性質を証明せよ。ただし、1 つ目の式についてはアインシュ タインの規約ではないので和は取られていないことに注意すること。 εiik = 0 , εijk = εkij = εjki 19 (2) 次の恒等式を証明せよ。 εijk εilm = δjl δkm − δjm δkl (3) ∂i について次の性質を証明せよ。ただし、f, g は (x1 , x2 , x3 ) の関数とする。 ∂i (f g) = (∂i f )g + f (∂i g) , ∂i ∂j f = ∂j ∂i f (4) E, F の外積 E × F を ei , εijk を用いて表せ。 (5) この問題での記法においてデカルト座標での ∇ は ∇ = ei ∂i と表され、これに より ∇φ = ei ∂i φ と表せる。このとき、∇ × E, ∇ · E はどのように表されるか。 (6) この問題での記法を用いて ∇ · (G × H), ∇ × (G × H), ∇ × (∇ × G) を表せ。 ただし、G, H は (x1 , x2 , x3 ) の関数とする。 (7) (6) で表した表式に基づいて、今までの結果から次の公式を証明せよ。 ∇ · (G × H) = (∇ × G) · H − G · (∇ × H) ∇ × (G × H) = G(∇ · H) − H(∇ · G) + (H · ∇)G − (G · ∇)H ∇ × (∇ × G) = ∇(∇ · G) − (∇ · ∇)G 6 他の座標系での ∇ 位置の関数 φ = φ(r) について考える。これは r = r(x, y, z)(デカルト座標系)では φ = φ(x, y, z) を意味 する。このとき、 dφ = ∂φ ∂φ ∂φ dx + dy + dz = (∇φ) · dr ∂x ∂y ∂z と書ける。右辺は内積なので座標系には依らない。よってどの座標系で見ても同じ 式が成立する。 (1) 円柱座標系 (r, ϕ, z) に対して以下の問いに答えよ。 (a) φ の全微分について次の を埋めよ。 dφ = = (∇φ) · dr (b) r の全微分について次の を埋めよ。 dr = (c) 以上より ∇φ の形を導け。 (2) 球座標 (r, θ, ϕ) に対して (1) の (a)∼(c) を繰り返せ。 20 7 ラプラシアン △ ≡ ∇ · ∇ 以下の座標系の ∇ を用いることによって、各座標系でのラプラシアン △ ≡ ∇ · ∇ を導け。 (1) デカルト座標 (2) 円柱座標 (3) 球座標 8 ラプラシアンとデルタ関数 △r が成り立つことを示す。 −1 4π|r − R| = δ(r − R) · · · (∗) (1) 関数 G(r1 ) (r1 = |r1 |) が △r1 G(r1 ) = δ(r1 ) 境界条件:G(r1 ) → 0 (r1 → ∞) を満たすとする。この等式の両辺を原点を中心とする半径 r2 の球状の体積で 極座標を用いて積分することにより関数 G(r2 ) の満たす微分方程式を求めよ。 (2) (1) の微分方程式を解くことにより G(r2 ) の表式を求めよ。 (3) r2 = r − R (r2 = |r2 |) とする。このとき任意の関数 f (r2 ) に対して △r2 f (r2 ) = △r f (r2 ) が成立することを具体的にデカルト座標系を用いることで導け。さらに、今ま での結果を用いて (∗) が成り立つことを示せ。 • 補足 (∗) より、G(r − R) = −1 4π|r−R| とすると Z △r G(r − R) = △r dr ′ δ(r − r ′ )G(r ′ − R) Z = dr ′ (△r δ(r − r ′ ))G(r ′ − R) = δ(r − R) 21 の関係が得られる。ここで、行列の関係式 N X [A]ii′ [A−1 ]i′ j = δij (A : N × N 正則行列) i′ =1 と比較すると、 N X i′ =1 Z ′ (i の和) ↔ dr ′ (r ′ の和) ((i, i′ ) 成分) ↔ △r δ(r − r ′ ) ((r, r ′ ) 成分) [A]ii′ −1 A i′ j ((i′ , j) 成分) ↔ G(r ′ − R) ((r ′ , R) 成分) ((i, j) 成分) ↔ δ(r − R) δij ((r, R) 成分) の対応がある。したがって、G(r ′ − R) は △r δ(r − r ′ ) の逆行列としての意味を持つ と解釈できる。また、ある関数 f (r), ρ(r) に対し微分方程式 △r f (r) = ρ(r) が成り立つとすると、 Z △r f (r) = △r dr ′ δ(r − r ′ )f (r ′ ) Z = dr ′ (△r δ(r − r ′ ))f (r ′ ) = ρ(r) と変形できる。このとき、行列とベクトルの関係式 N N X X [A]ii′ vi′ = ui ⇒ vi = [A−1 ]ii′ ui′ i′ =1 i′ =1 (u, v : N 成分ベクトル) との対応を見ると N X i′ =1 ′ (i の和) ↔ Z dr ′ (r ′ の和) [A]ii′ ((i, i′ ) 成分) ↔ △r δ(r − r ′ ) ((r, r ′ ) 成分) v i′ ui (i′ 成分) ↔ f (r ′ ) (r ′ 成分) (i 成分) ↔ ρ(r) (r 成分) となっており、関数 f (r)、ρ(r) はベクトルの成分としてみなすことができる。以上 より、△r δ(r − r ′ ) の逆行列である G(r − r ′ ) を作用させるこで Z f (r) = dr ′ G(r − r ′ )ρ(r ′ ) Z −1 ρ(r ′ ) = dr ′ ′ 4π|r − r | として f (r) の形を得ることができる。 22 解の公式とその極限 9 次のような x についての方程式を考える。 ax2 + bx + c = 0 · · · (∗) (1) a 6= 0 のとき、(∗) 式を解け。 (2) |4ac| ≪ b2 のとき、(1) で求めた解の近似式を求めよ。 (3) (1) で求めた解は、a → 0 の極限を考えると、符号を適当に選ぶことで a = 0 のときの (∗) 式の解と一致する。このことを示せ。 [補足] コマ、コマ、コマ、コマ、コマ、コマ、コマ、コマ、コマ、コマ、コマ、コマァ!! 10 多変数関数のテイラー展開 この問題で出てくる多変数関数はどれも C ∞ 級であるとする。 (1) n 変数関数 f (x1 , x2 · · · , xn ) についての xj = 0 (j = 1, 2, · · · , n) まわりでのテ イラー展開の表式を書け。 (2) 3 変数関数 h(x, y, z) = f (x, y)g(y, z) の x = y = z = 0 まわりでのテイラー展 開について次の 2 通りで 3 次まで計算し、両者が一致することを確かめよ。 (a) h(x, y, z) = f (x, y)g(y, z) 自身を直接テイラー展開する方法 (b) f (x, y), g(y, z) のそれぞれをテイラー展開してその積を計算する方法 (3) 2 変数関数 f (x, y) について、まず y を定数と見なして x = 0 まわりでテイラー 展開した後にその表式をさらに y = 0 まわりでテイラー展開した結果が (1) の n = 2 の表式と一致することを確かめよ。 (4) g(x, y) = e−ax log(1 + by + cx2 ) について x = y = 0 まわりで x, y の 4 次までテ イラー展開せよ。 (5) (4) について x, y のオーダーが y ∼ x2 であるとき、g(x, y) について x = y = 0 まわりで x の 4 次のオーダーまでテイラー展開せよ。 23 11 多変数関数のテイラー展開の具体例 次の関数について考える。 1 f (x, y, z) = p 1 + ax + by + cz + d(x2 + y 2 + z 2 ) (1) f (x, y, z) を x, y, z の 2 次までで展開せよ。 (2) r = xex + yey + zez , a = aex + bey + cez を用いると、f (x, y, z) はどのよう に表せるか。 (3) (2) の結果を基にして、f (x, y, z) を r の 2 次までで展開せよ。また、この結果 と (1) の結果が等価であることを示せ。 24 第 3 回 (静電場 1) 1 立体角 (1) 立体角について説明せよ。 (2) 普段よりも月が大きく見える現象をスーパームーンという。何故月が大きく見 えるのか、立体角の考え方に即して説明せよ。 (3) 電荷 Q の作る電場を点電荷を含まない一般の閉曲面で積分することを考え る。以下の図の点 r, r ′ における微小面積素を dS, dS ′ 、単位法線ベクトルを n(r), n(r ′ )、電場とのなす角を θ, θ′ とする。このとき、立体角 dΩ を各点に対 応する量を用いて表せ。またこれを用いて 2 つの微小面の寄与が打ち消すこと を導き、積分がゼロとなることを示せ。 2 クーロン力と重力 (1) 質量が 60kg の人体中の核子の数を見積もれ。さらに、人体中の陽子の数を見 積もれ。 (2) 人体中の電子と陽子の数が同数かつ陽子と電子の電荷量が厳密に等しければ、 人間の体は電気的に中性である。ここで仮に、人体中の陽子と電子の数が全く の同数であり、電子の電気量が陽子の電気量よりも α %小さいとする。このと き、r[m] 離れた 60kg の 2 人の間に生じるクーロン力と 60kg の人間 1 人に働く 重力の比を求めよ。 (3) 我々は普段、他の人との間にクーロン力を顕わには感じない。このことから、 α がどの程度以下でなければならないか、見積もれ。 25 3 電荷のずれと惑星運動 太陽と地球の 2 体系を考える。天体は質点として扱い、他の天体からの影響は無 視できるものとする。前問と同様に、天体中の陽子と電子の数は全くの同数として、 電子の電気量が陽子の電気量よりも α %小さいとする。 (1) 地球中の核子の数を見積もれ。また、陽子の数を見積もれ。 (2) 電気量のずれ α %が充分小さければ、地球は太陽を焦点とする楕円運動をす る。これを説明せよ。 (3) 地球が太陽を 1 つの焦点とする楕円軌道を描くことを 2 体系の運動方程式を顕 わに解いて示し、公転周期 T の 2 乗と長軸半径 a の 3 乗の比 T 2 /a3 の表式を求 めよ。 (4) 陽子と電子の電気量が厳密に同じであると思い込んでいるとすると、(2) の結 果はどのように解釈されるか。 (5) 地球の代わりに木星で (1)∼(4) について繰り返せ。地球での結果と木星での結 果を比較して、わかることについて議論せよ。 4 2つの点電荷の作る電場 (電気双極子) (1) 位置 (0, l/2, 0) に電荷 +Q、位置 (0, −l/2, 0) に電荷 −Q の点電荷がある状況を 考える。このとき、これらの点電荷が位置 r = (x, y, z) に作る電場 E(r) を求 めよ。但し l ≪ |r| として近似を行い、結果は具体的にデカルト座標系を用い て表すこと。 (2) 空間上に電荷 +Q を持つ点電荷 A と電荷 −Q を持つ点電荷 B の 2 つの電荷の みが存在する状況を考える。点電荷 B の位置から見た点電荷 A の位置ベクト ルを l とする。このとき、点電荷 A,B の存在する場所から充分遠方における電 26 場を求めよ。なお、結果は p = Ql を用いて表せ。また、この結果と (1) の結 果が同等のものであることを説明せよ。 (3) 空間上に電荷 +2Q を持つ点電荷 A と電荷 −2Q を持つ点電荷 B の 2 つの電荷 のみが存在する状況を考える。点電荷 B の位置から見た点電荷 A の位置ベク トルを l/2 とする。このとき、点電荷 A,B の存在する場所から充分遠方におけ る電場を求めよ。 5 4つの点電荷の作る電場 (電気四重極子)1 (1) 位置 (a/2, l/2, 0),(−a/2, −l/2, 0) に電荷 +Q、位置 (a/2, −l/2, 0),(−a/2, l/2, 0) に電荷 −Q の点電荷がある状況を考える。このとき、これらの点電荷が充分遠 方の点 r = (x, y, z) (l, a ≪ |r|) に作る電場 E(r) を求めよ。 (2) a = (a, 0, 0), l = (0, l, 0) とする。(1) の状況を、位置 +a/2 に +p = +Ql, 位置 −a/2 に −p = −Ql の双極子があるとみなして、これらの双極子が充分遠方の 点 r = (x, y, z) (l, a ≪ |r|) に作る電場 E(r) を求めよ。また、この結果が (1) の結果と一致することを確かめよ。 27 6 4つの点電荷の作る電場 (電気四重極子)2 (1) 位置 (0, b/2+l/2, 0),(0, −b/2−l/2, 0) に電荷 +Q、位置 (0, b/2−l/2, 0),(0, −b/2+ l/2, 0) に電荷 −Q の点電荷がある状況を考える。このとき、これらの点電荷が 充分遠方の点 r = (x, y, z) (l, a ≪ |r|) に作る電場 E(r) を求めよ。 (2) b = (0, b, 0), l = (0, l, 0) とする。(1) の状況を、位置 +b/2 に +p = +Ql, 位置 −b/2 に −p = −Ql の双極子があるとみなして、これらの双極子が充分遠方の 点 r = (x, y, z) (l, b ≪ |r|) に作る電場 E(r) を求めよ。また、この結果が (1) の結果と一致することを確かめよ。 7 クーロンの法則と ∇ × E(r) = 0 以下の各場合の電荷分布によって生じる電場 E(r) の表式を書き、∇ × E(r) = 0 となることを確かめよ。 (1) 原点の電荷 Q の点電荷 (2) 位置 R の電荷 Q の点電荷 (3) 一般の電荷分布 ρ(r) 28 第 4 回 (静電場 2) 1 2 つの双極子による電場 空間に反平行に 2 つの双極子 p, −p が位置 d だけ離れて存在しているとする。た だし |d| は充分小さいとする。このときこれらの双極子によって生じる電場を導け。 また、第3回の 5,6 との対応について論じよ。 2 静止した点電荷の作る電場 (1) 空間に N 個の点電荷(位置 ai , 電荷 Qi ; i = 1, 2, · · · N )があるとする。このと き、位置 r での電荷密度 ρ(r) を表せ。 (2) 上記の N 個の点電荷が位置 r に作る電場 E(r) を書け。 (3) ∇ × E(r) = 0 を示せ。 (4) ∇ · E(r) = ρ(r) を示せ。 ε0 29 3 電気双極子間に働く力 原点を中心とした双極子 p が位置 r を中心とした双極子 p′ に及ぼす力 F (r) を求め る。双極子 p′ を位置 r + l′ /2,r − l′ /2 に点電荷 +Q′ ,−Q′ が存在しているものとして 扱いこれらが電場から受ける力を考えることによりこれを求めよ。結果は p,p′ を用 いて表すこと。 4 電気双極子とガウスの法則 原点を中心とする双極子 p に対するガウスの法則を考える。電荷の総量はゼロな ので、双極子 p による電場を双極子を囲むように面積分した結果はゼロになる。こ れを原点を中心とした半径 r の球面で積分することにより具体的に示せ。 5 直線的に分布する電荷の作る電場 3 次元空間中に直線上に一様な線電荷密度 λ で電荷が分布している状況を考える。 電荷が分布している直線をデカルト座標系の z 軸に採る。 (1) 線電荷密度 λ の次元を求めよ。 (2) 点 r = (x, y, z) での電荷密度 ρ(r) を書け。 (3) 連続的な電荷分布に対するクーロンの法則を用いて、点 r = (x, y, z) における 電場を求めよ。 (4) ガウスの法則を用いて点 r = (x, y, z) における電場を求めよ。 (5) 以上の問題で得られた電場が ∇ × E(r) = 0 を満たすことを確かめよ。 30 6 球対称に分布する電荷の作る電場 (1) 電荷が球対称に分布しているとき電荷密度 ρ(r) はどのように書けるか。 (2) (1) の電荷分布における電場 E(r) の表式を書け。また、積分変数を r 方向と のなす角を Θ とした球座標 (R, Θ, Φ) で表し、Φ についての積分を実行するこ とで E(r) ∝ r を示せ。 (3) Θ について変数変換を行うことで E(r) を R についての積分のみを含む形に書 き換えよ。ただし、積分範囲に注意せよ。 (4) 球対称な分布として半径 a の球殻上に電荷 Q が一様に分布している状況を考え る。このとき、(3) の結果を用いて球殻の内側には電場が生じないことを示せ。 (5) (4) と同様のことをガウスの法則を用いて示せ。 (6) 以上の問題で得られた電場が ∇ × E(r) = 0 を満たすことを確かめよ。 7 平面に分布する電荷の作る電場 (1) 3 次元空間中の z = 0 の平面上に一様な面電荷密度 σ で電荷が分布している状 況を考える。このとき、位置 r での電荷密度 ρ(r) を σ を用いて表し、またクー ロンの法則を用いて電場を求めよ。 (2) (1) の状況においてガウスの法則を用いて電場を求めよ。 (3) 以上の問題で得られた電場が ∇ × E(r) = 0 を満たすことを確かめよ。 (4) 以上で得られた結果と、6,7 を比較したときに言えることは何であるか答えよ。 また、一般に d 次元に電荷が分布したときに電場はどのような関数形となるか。 31 第 5 回 (静電場 3) 1 電気双極子の作る静電ポテンシャル (1) 第3回の 4 の (2) と同じ状況を考える。ただし、2 つの点電荷の中点を原点とす る。これらの点電荷が充分遠方の点 r に作る静電ポテンシャル φ(r) を求めよ。 (2) 静電ポテンシャルから点 r での電場 E(r) を求めよ。また、この結果が第 3 回 の 4 と一致することを確かめよ。 (3) (1) の静電ポテンシャルを展開の次数を一つ上げるとどのような表式となるか 求めよ。 2 電気四重極子の作る静電ポテンシャル (1) 第3回の 5 と同じ状況を考える。これらの点電荷が充分遠方の点 r に作る静電 ポテンシャル φ(r) を求めよ。 (2) 静電ポテンシャルから点 r での電場 E(r) を求めよ。また、この結果が第 3 回 の 5 と一致することを確かめよ。 3 静電ポテンシャルの多重極展開 3 次元空間中にデカルト座標系を採り、原点からの距離が a 以下の領域 V に電荷 分布 ρ(r) で電荷が存在している状況を考える。このとき、電荷が分布している領域 から充分遠方の点 r (a ≪ |r|) における静電ポテンシャル φ(r) は Z ρ(R) 1 dR φ(r) = 4πε V |r − R| と書ける。 (1) 静電ポテンシャルの表式を R = |R| の 2 次まで展開せよ。 (2) 展開の 0 次と 1 次を全電荷と双極子を用いて表せ。 (3) 展開の 2 次について、電気四重極子 Z 1 Qij = dRρ(R)(Ri Rj − δij R2 ) (R = (R1 , R2 , R3 )) 3 V を用いて表せ。 (4) 全電荷、電気双極子、電気四重極子の独立な成分はそれぞれいくつあるか答 えよ。 32 4 静電場の多重極展開 (1) 3 と同じ電荷分布を考える。このとき、3 の結果を用いて点 r での電場 E(r) を 展開の 1 次までで求めよ。ただし、3 のように結果は全電荷、双極子を用いて 表すこと。 (2) 0 次の寄与が消え 1 次の寄与が最も利く場合に成り立つ条件を答えよ。同様に、 2 次の寄与が最も利く場合の条件を答えよ。 (3) (2) の各場合について、それぞれどのような電荷配置となっているか答えよ。 5 一様電場中の導体球 E0 O a z z 軸に平行である一様な外部電場 E0 中に半径 a の導体球が置かれている状況を考え る。導体中では電荷は外部電場 E0 を打ち消すように球面上に分布する。球の中心 を原点としたとき、以下の問いに答えよ。 (1) 原点を基準としたときの外部電場 E0 による位置 r での電位 φ0 (r) を求めよ。 (2) (1) の結果から、導体中を移動した電荷による誘導電位 φ′ (r) は φ′ (r) = f (r)cosθ の関数形を持つことがわかる。このとき、球面上以外で φ′ (r) の満たすラプラ ス方程式を立て、そこから f (r) の満たす微分方程式を導け。 (3) f (r) = rn と置くことにより導体球の内外について微分方程式を解け。ただし、 境界条件と (1) の結果を用いて与えられた物理量のみで表すこと。 (4) 以上より得られた導体球外での誘導電位 φ′ (r) は何に対応しているか、答えよ。 また、導体球面上の誘導電荷密度 σ ′ を求めよ。 (5) 誘導電位 φ′ (r) による導体球の内外における電場 E ′ (r) を求めよ。 33 6 鏡像法 1 空間上の x ≤ 0, y ≤ 0 の領域に接地した導体が置かれ、位置 (a, b, 0) に電荷 +Q の 点電荷がある状況を考える。このとき、鏡像法を用いて位置 r = (x, y, z) での電位 を求めよ。また、点電荷の受ける力を求めよ。 y +Q b 7 x a z 鏡像法 2 (1) 空間上に原点を中心とした半径 a の接地した導体球が置かれ、位置 (0, 0, d) に 電荷 +Q の点電荷がある状況を考える。、鏡像法を用いて位置 r = (x, y, z) で の電位を求めよ。また点電荷の受ける力を求め、d ≫ a として近似せよ。 +Q O a z d (2) (1) において導体球が接地されていない場合を考える。このとき、導体球の全 電荷が 0 であることに注意して前問と同様に鏡像法を用い位置 r = (x, y, z) で の電位を求めよ。また、点電荷の受ける力を d ≫ a として求め、前問の結果 と比較せよ。 +Q O a 34 d z 8 電気双極子の相互作用エネルギー 空間上に中心が r だけ離れた 2 つの電気双極子 p, p′ が置かれている状況を考える。 距離 |r| が充分離れているとき、双極子 p が p′ の位置に及ぼす電位を考えることで これらの双極子による相互作用エネルギー(静電エネルギー)を求めよ。また、こ れを用いて p′ の受ける力を求めよ。 9 孤立導体 空間中に導体があり、周りには導体に影響を与えるものがない状況を考える。導 体が電荷 q だけ帯電しているときの導体表面の電位を φS 、また無限遠での電位を φ∞ とする。このとき、一般に電位差 φS − φ∞ と電荷 q について C= q φS − φ∞ の関係がある。 (1) 上記の C についての物理的な意味を説明せよ。 (2) 導体に電荷 q が帯電しているとき、無限遠から導体表面まで微小な電荷 ∆q を 運ぶのに必要な仕事 ∆W を求めよ。ただし電荷 ∆q は導体の電荷分布に影響 を与えないほど微小であるとする。 (3) (2) を用いてはじめ導体が帯電していない状況から電荷 Q が帯電するまでに必 要な仕事 W を求めよ。また、この仕事は物理的にどのように解釈されるか答 えよ。 35 第 6 回 (静電場 4) 1 コンデンサーの電気容量の単位 (1) 平行板コンデンサーの極板間に働く力を求めよ。ただし、極板の面積など必要 な物理量については各自で設定し力の大きさは数値で求めること。 (2) 常識的にコンデンサーが壊れないという条件からコンデンサーに帯電する電 荷の量はどれほどだと考えられるか答えよ。 (3) (2) で考えた電荷と通常使われる電圧 (1V∼100V) からコンデンサーの電気容 量の単位として何を用いるのが適当であるか答えよ。 (4) 実際のコンデンサーの電気容量を調べ、今までの見積もりが妥当であるか議論 せよ。 2 クーロンの法則 ρ(r) = qδ(r − a)cosθ という電荷密度に対する電場を求めよ。 3 鏡像法 3 (1) 第 5 回の 7(1) において、位置 (0, 0, d) を中心として z 軸に垂直な電気双極子 p が置かれている状況を考える。このとき、鏡像法を用いて位置 r での電位を求 めよ。 p z O d (2) 第 5 回の 7(1) において、位置 (0, 0, d) を中心として z 軸に平行な電気双極子 p が置かれている状況を考える。このとき、鏡像法を用いて位置 r での電位を近 似的に求めよ。 p O d 36 z 4 静電エネルギー ∆S4 ∆x3 E4 ∆S3 ∆x2 E3 ∆S2 ∆x1 E2 ∆S1 ∆xA E1 ∆SA EA A φA φ1 φ2 φ3 φ4 電荷 Q が帯電した導体について考える。導体表面を図のように微小面に分割し、点 A における微小面積を ∆SA 、面電荷密度を ωA 、導体表面の電位を φA とする。導 体外の空間内の静電場の等電位面を φA , φ1 , φ2 , · · · とし、それらの間の微小間隔を ∆xA , ∆x1 , ∆x2 , · · · とする。また、各等電位面における電場を EA , E1 , E2 , · · · とし、 これらが横切る微小面積を ∆SA , ∆S1 , ∆S2 , · · · とする。このとき、無限遠での電位 をゼロとすると、静電エネルギーは導体表面全域における和を用いて 1X 1 U = φ表面 Q = φA ωA ∆SA 2 2 A と書ける。 (1) 導体表面 ∆SA 上及び ∆Si , ∆Si+1 (i = 1, 2, · · · ) で囲まれる立体におけるガウス の法則を用いて、面電荷密度 ωA と電場 EA , Ei (i = 1, 2, · · · ) の関係を求めよ。 (2) 面 ∆Si 上の電場が Ei = − φi+1 − φi ni ∆xi で表されることを説明せよ。ただし、ni は面 ∆Si における外向きを正とした ときの単位法線ベクトルである。 (3) 無限遠の電位がゼロなので φA = (φA − φ1 ) + (φ1 − φ2 ) + (φ2 − φ3 ) + (φ3 − φ4 ) + · · · ∞ X = (φA − φ1 ) + (φi − φi+1 ) i=1 と書けることを用いて、静電エネルギーの和の 1 つの項 12 φA ωA ∆SA を電場と 微小体積 ∆VA = ∆SA ∆xA , ∆Vi = ∆Si ∆xi を用いて表せ。 (4) 静電エネルギーの和は、∆SA を十分小さくとれば積分とみなすことができる。 このことと (4) の結果を用いて空間の静電エネルギー密度を求めよ。 37 5 球殻の静電エネルギー 一様な面電荷密度で電荷 Q が分布した半径 a の導体球殻の静電エネルギーを以下 の方法で求める。 Q a O (1) 球殻の作る電場を求め、静電エネルギー密度を全空間で積分することにより静 電エネルギーを求めよ。 (2) 導体球殻が電荷 q に帯電しているとき、微小な電荷 ∆q を無限遠から球殻上に 運ぶために必要な仕事 ∆W を求めよ。また、得られた結果から電荷が 0 から Q まで帯電するのに必要な仕事を求めることで静電エネルギーを求め、これが (1) の結果と一致することを確認せよ。 6 一様に分布した電荷の静電エネルギー 一様な電荷密度で電荷 Q が半径 a の球の体積中に分布している場合の静電エネル ギーを以下の方法で求める。 Q a O (1) 上記の電荷分布の作る電場を求め、静電エネルギー密度を全空間で積分するこ とにより静電エネルギーを求めよ。 (2) 無限遠から電荷を運び、電荷密度を一定にしたまま球を少しずつ大きくして上 記の電荷分布を作るのに必要な仕事について考える。 q(r′ ) r′ a O (a) 球の半径が r′ (< a) のとき、球内の電荷の総量 q(r′ ) 及び球の半径を r′ → r′ + ∆r′ とするのに無限遠から運ぶべき電荷 ∆q を求めよ。また、この微 小な電荷を無限遠から球の表面まで運ぶのに必要な仕事 ∆W を求めよ。 (b) 球の半径を 0 から a とするのに必要な仕事を求めることで静電エネルギー を求め、これが (1) の結果と一致することを確認せよ。 38 7 相反定理 空間に 2 つの導体 1,2 がある状況を考える。それぞれの電荷が q1 , q2 であるとき、 導体 2 を接地し導体 1 の電位を φ1 とすると q1 = C11 φ1 , q2 = C21 φ1 また、導体 1 を接地し導体 2 の電位を φ2 とすると q1 = C12 φ2 , q2 = C22 φ2 の関係がある。 q1 φ1 q2 φ2 (1) 導体 1,2 の電位がそれぞれ φ1 , φ2 であるとき、 q1 = C11 φ1 + C12 φ2 q2 = C21 φ1 + C22 φ2 が成り立つことを説明せよ。 (2) 導体のエネルギー U を Cij , qi (i, j = 1, 2) を用いて表せ。また、得られた表式 を用いて q1 → q1 + δq1 としたときのエネルギー変化 δU を求めよ。 (3) 導体 1 に無限遠から微小な電荷 δq1 を運ぶ仕事を考えることで、q1 → q1 + δq1 としたときのエネルギー変化 δU を求めよ。ただし電荷 δq1 は各導体表面の電 荷分布に影響を与えないほど微小であるとする。 (4) 以上より、相反定理 C12 = C21 が成り立つことを示せ。 8 球形コンデンサー 中心を O とする半径 a の導体球 (導体 1) と半径 b の導体球殻 (導体 2) について考 える。 39 a O b (1) 無限遠を基準とした導体 1,2 の電位を φ1 , φ2 とし、それぞれに帯電している電 荷を q1 , q2 とする。次の各場合において電気容量係数 Cij (i, j = 1, 2) を求めよ。 (a) 導体 1 のみ接地させたとき及び導体 2 のみ接地させたとき (b) 導体を接地させないとき (2) q1 = q, q2 = −q としたとき、導体 1,2 の電位差 ∆φ ≡ φ1 − φ2 と電荷 q の関係 を求め、このコンデンサーの電気容量を求めよ。 9 各系での電気容量 (1) 点 O, O′ を中心とした半径 a, c の導体球(導体 1,2) を距離 d(d ≫ a, c) だけ離し て置く。各導体の電位を φ1 , φ2 、電荷を q1 , q2 として電気容量係数 Cij (i, j = 1, 2) を求めよ。 a O c O′ d (2) 点 O を中心とした半径 a の導体球 (導体 1) と半径 b の導体球殻 (導体 2) があ り、そこに中心を O′ とした半径 c の導体球 (導体 3) を距離 d(d ≫ a, b, c) だけ 離して置く。各導体の電位を φ1 , φ2 , φ3 、電荷を q1 , q2 , q3 として電気容量係数 Cij (i, j = 1, 2, 3) を求めよ。 O a c b d 40 O′ 第 7 回 (静磁場 1) 1 オームの法則 導線上の 2 点間の電位差を φa − φb > 0 (φa > φb ) としたとき、その 2 点間に流れ る電流の強さ I は φa − φb I= R と表される。これをオームの法則といい、R を電気抵抗という。R は導線の 2 点間 の長さ l とその断面積 S を用いて R=ρ l S と表され、ρ は抵抗率と呼ばれる導線の形や大きさに依らない物質定数である。ま た、抵抗率の逆数 σ = ρ−1 を電気伝導度という。 図のような断面積 ∆S, 長さ ∆x, 電気伝導度 σ の微小な円筒型の導線を考える。円 筒の底面の電位を φ + ∆φ、円筒の上面の電位を φ、電流の大きさを I として次の問 いに答えよ。なお、円筒の上面から底面に向かう向きを正の向きとする。 ∆S ∆x φ I φ + ∆φ x (1) この円筒に対するオームの法則の式を与えられている量のみを用いて書け。 (2) 電流密度の大きさ i は I = i∆S により与えられる。このとき、電流密度の大き さ i を与えられている量のみを用いて表せ。 (3) 円筒の図のように x 軸を設定して電位を x の関数 φ(x) とする。このとき、適 切に x 座標を設定して図中の φ, φ + ∆φ を φ(x) を用いて表せ。 (4) (3) での解答を前提にして、I, i が各々電流と電流密度であるとすると (1)(2) で の表式はどのように変更されるか。さらに、得られた表式に対して ∆x → 0 の 極限を取ることで微分形の式を導け。 (5) (4) で導いた表式をベクトル形式で書き直せ。なお、ベクトル形式へ書き直す 手順や向き付けの意味が明瞭に分かる形で説明すること。 (6) (5) の結果から、一般の導線における定常電流密度 i(r) と電場 E(r) との関係 を導け。 41 2 電荷の保存則 次の各場合についてそれぞれ電荷の保存則を考える。 (1) 定常電流の場合 i S1 V i S2 電流密度 i(r) の定常電流が面 S2 から流入し面 S1 から流出することを考える。 このとき、領域 V の電荷の総量が一定という条件から ∇ · i(r) = 0 を示せ。ただし領域 V の側面からの電荷の出入りはないものとする。 (2) 一般の電流の場合 (a) 任意の領域 V からの単位時間当たりの電荷の流出量を電流密度 i(r, t) を 用いて書け。 (b) 任意の領域 V からの単位時間当たりの電荷の流出量を電荷密度 ρ(r, t) を 用いて書け。 (c) (a),(b) の結果を用いて電荷の保存則 ∂ ρ(r, t) + ∇ · i(r, t) = 0 ∂t を示せ。 3 正三角形の回路 A A θ B I a B B,C C 42 質量が M で一辺の長さが a の正三角形の回路を考える。図の点 A を固定し、回路 に電流 I を流す。鉛直上向きに一様な外部磁場 B をかけたとき、回路が図のように 角度 θ だけ傾き静止した。このとき、以下の問いに答えよ。 (1) 重力による点 A まわりのモーメントを求めよ。 (2) 電流 I による点 A まわりのモーメントを求めよ。 (3) (1),(2) から回路が静止する角度 θ の条件を求めよ。 4 回路に作用する力 B C I ds (1) 電流 I が流れている回路に外部磁場 B をかけると回路には I F =I ds × B C の力が働く。ただし C は回路を一周する経路、ds は回路に沿った微小変位で ある。外部磁場 B が一様な静磁場である場合、この力 F がゼロになることを 示せ。 (2) B を一様な静磁場としまた適当に原点を定めると、原点周りの力のモーメン トN は I I N = s × dF = I s × (ds × B) C C I I = I ds(s · B) − B ds · s C C となる。 (a) I C ds · s = 0 を示せ。 43 (b) I を示せ。 1 ds(s · B) = 2 C I C (s × ds) × B (c) 経路 C が平面上にあるとき I 1 s × ds = Sn 2 C を示せ。ただし S は回路の作る面積、n は回路の作る平面に対する単位 法線ベクトルである。 (d) 以上より、一般の平面上の回路に対して N = IS × B を示せ。 5 円電流と磁気双極子 1 z z B B θ I O +qm O a −qm θ l 図1 図2 (1) 原点を中心とした半径 a の円状の回路に電流 I が流れている状況を考える (図 1)。空間的に一様であり z 軸から θ だけ傾いた外部磁場 B がかけられたとき のモーメント N を求めよ。 (2) 回路の電流 I を一つの点電荷 (電荷 q) の円運動で置き換えることを考える。点 電荷が単位時間あたりに同じ場所を通過する回数を考えることにより、点電荷 の角速度 ω 及び角運動量 L を与えられた物理量で表せ。また、(1) のモーメン ト N を角運動量 L を用いて表せ。 (3) 磁荷の存在を仮定し、磁荷 qm に磁場 B がかかったとき 1 F = qm B µ0 の力を受けると考える。このとき、位置 ±l/2 の磁荷 ±qm の受けるモーメント を磁気双極子 m = qm l を用いて表せ (図 2)。 (4) 以上より円電流と磁気双極子の受けるモーメントは同等であることがわかる。 これまでの結果から角運動量 L と磁気双極子 m の対応を求めよ。 44 6 モーターの原理 B l C a D b/2 B l B C I b/2 B I A θ A D 図のように直線 l を回転軸とした長方形の回路 ABCD(AB=a,BC=b) に電流 I を流 し、回転軸 l に垂直に一様な磁場 B をかける。磁場 B と辺 AD,BC のなす角を θ と する。 (1) θ = 0 のとき回路の各辺に働く力を求めよ。また、回転軸 l まわりの力のモー メントを求めよ。 (2) θ 6= 0 のとき回路の各辺に働く力を求めよ。また、回転軸 l まわりの力のモー メントを求めよ。 (3) 電流を一定方向 (A→B→C→D→A) に流し続けた場合、回路は定性的にどの ような運動をするか答えよ。 (4) 回路が回転方向を変えずに回り続けるには電流をあるタイミングで切り替えな ければならない。これがどのようなタイミングとなるか理由とともに答えよ。 (5) (4) に即してモーターの原理を図を用いて説明せよ。 7 マグネトロン 半径 R0 の円筒状の陽極の中心軸に非常に細い陰極を置く。両極間の電位差を φ0 とし中心軸の方向に一様な磁場 B を与える。以下では時刻 t = 0 で陰極線から放出 される電子 (電荷 −e、位置 r(0) = 0、速度 v(0) = 0) の運動を考える。 R0 (1) 円筒座標系を用いて電場 E と磁場 B を表せ。 (2) ローレンツの力をこの座標系で表せ。 45 (3) 運動方程式を書き、円筒座標系の各成分が満たす式を求めよ。 (4) t > 0 の任意の時刻に対し z(t) = 0 を示せ。 (5) dϕ dt は 0 ではなくある一定の値を持つことを示せ。 (6) (4),(5) と動径方向の運動方程式より、力学的エネルギーの保存則が成立する ことを示せ。 (7) (6) より磁場 B が強くなると電子は陽極に届かないことがわかる。この時の臨 界磁場求めよ。 46 第 8 回 (静磁場 2) 1 円電流と磁気双極子 2 z z r r +qm I O O l −qm a 図1 図2 (1) 原点を中心とした半径 a の円状の回路に定常電流 I が流れている状況を考える (図 1)。適当な座標系を用いて、電流が充分遠くの位置 r(|r| ≫ a) に作るベク トルポテンシャル A(r) を求めよ。 (2) (1) で得られた表式を用いて磁場 B(r) を求めよ。 (3) 磁荷の存在を仮定し、原点にある磁荷 qm が位置 r に磁場 B(r) = 1 qm er 4π r2 を作ると考える。このとき、位置 ±l/2 の磁荷 ±qm が位置 r(|r| ≫ |l|) に作る 磁場を求め、磁気双極子 m = qm l を用いて表せ (図 2)。 (4) (2),(3) の結果から、微小円電流による磁場は磁気双極子による磁場と同等で あることがわかる。以上より m の表式を求めよ。 2 直線電流の作る磁場 I l (1) 無限に長い直線の導線に定常電流 I が流れている状況を考える。このときビ オ・サバールの法則を用いて、長さ l の区間に流れる電流が作る磁場 B(r) を 求めよ。 (2) (1) の状況において、同様にビオ・サバールの法則を用いてベクトルポテンシャ ル A(r) を求めよ。また、これを微分することにより (1) の磁場を再現するこ とを示せ。 47 (3) 磁場 B に対して区間 l を l → ∞ とした場合どのような表式が得られるか求 めよ。 (4) アンペールの法則を用いて導線全体の電流が位置 r に作る磁場 B(r) を求めよ。 3 円筒電流の磁場 z a I b z 軸を中心とした内径 a、外径 b の無限に長い中空円筒導体があり、電流 I が一様に z 軸方向に流れているとする。このとき各位置での磁場を求めよ。 4 閉回路と磁気双極子 1 r C I ds s O 電流 I が流れる一般の閉回路が充分遠方に作る磁場を考える。 (1) 始め平面状である回路を考える。s を回路上の位置としたとき、回路の電流に よる位置 r でのベクトルポテンシャル A(r) を求めよ。ただし、|r| ≫ |s| とし て近似を行い、結果は磁気双極子 m = µ0 ISn で表せ。ここで S は回路の作る 平面の面積、n は回路の作る平面に対する単位法線ベクトルである。 (2) 回路が平面状でない一般の場合に対しては磁気双極子を I 1 s × ds m = µ0 I 2 C と定義する。この磁気双極子が原点のとり方に依存しないことを示せ。 48 (3) 一般の回路に対して得られるベクトルポテンシャル A(r) の表式を用いて磁場 B(r) を求めよ。 (4) (3) から磁場 H(r) = µ−1 0 B(r) に対する磁気双極子によるポテンシャル φ(r) を求めよ。 5 閉回路と磁気双極子 2 B(s) C I ds r s 空間に依存する外部磁場 B 中に置かれた微小な閉回路 C について考える。r を回路 の中心付近の位置、s を回路上の位置とし、また回路には電流 I が流れているとす る。このとき回路に作用する力は I F (r) = I ds × B(s) C である。これについて以下の問いに答えよ。 (1) 回路が十分小さいので回路上の磁場 B(s) を B(s) ∼ = B(r) + [(s − r) · ∇r ]B(r) と近似できる。これが成り立つことを説明し、また I ∼ F (r) = I ds × (s · ∇r )B(r) C を示せ。 (2) (s · ∇r )B(r) = ∇r (s · B(r)) 及び ds × [∇r (s · B(r))] = −∇r × [ds × (s · B(r))] を示せ。 49 (3) これまでの結果と問題 3(2) の磁気双極子 m の定義を用いて F (r) = −∇r × [m × H(r)] = ∇r [m · H(r)] となることを示せ。 (4) 外部磁場 H(r) が位置 r ′ の磁気双極子 m′ によるものとしたとき F (r) を m, m′ 及び r, r ′ を用いて表せ。また得られた表式から 2 つの磁気双極子の相互作用 ポテンシャル V (r, r ′ ) を求めよ。 周期関数の積分 6 L を基本周期とした周期関数 f (x) は f (x) = f (x + L) を満たすものとして定義される。 (1) f (x) = f (x + nL) (n ∈ Z) を示せ。 (2) Z L dxf (x) = 0 Z L/2 dxf (x) −L/2 を示せ。 (3) 次の定積分 In = Z 2π dϕ 0 cosn ϕ 1 − 2α cos ϕ + α2 に対し、n = 0, 1, 2 についての値をそれぞれ求めよ。ただし、α 6= ±1 とし、 また必要であれば t = tan ϕ2 の変数変換を用いよ。 (4) (3) の結果を使って次の積分を求めよ。 Z 2π dϕ cos ϕ log 1 − a cos ϕ + a2 J1 = 0 50 7 立体角と磁場 B(r) Ω(r) C I ds 電流 I が流れる回路 C が位置 r に作る磁場 B(r) を立体角の観点から考える。 (1) 回路 C 上の位置及び微小素辺を s,ds とし、位置 r から回路 C を見下ろす立体 角を Ω(r) とする。このとき、見下ろす位置を r から r + δr にずらしたときの 立体角の変化 dΩ = Ω(r + δr) − Ω(r) は、見る位置を固定して回路を −δr だ け動かしたときの立体角の変化に等しいことを図を用いて説明せよ。 (2) −δr, ds, r − s のつくる平行六面体を考え、この立体の r − s に垂直な断面積 δS を求めよ。また、この結果を用いて −δr, ds で作られる微小な面を位置 r から見た立体角 δΩ を求めよ。 (3) (2) で得られた表式を回路 C に関する積分を行うことで dΩ を求めよ。また、 この結果とビオ・サバールの法則から位置 r に作られる磁場 B(r) を立体角の 勾配 ∇Ω(r) を用いて表せ。 (4) z 軸を中心軸、原点を中心とした電流 I が流れる半径 a の円形回路が中心軸上 の位置 (0, 0, z) に作る磁場 B(z) を (3) の結果を用いて求めよ。 (5) (4) の回路において、充分遠方の位置 r における磁場 B(r) を |r| ≫ a として 近似的に求めよ。 51 第 9 回 (静磁場 3、時間変動する電磁場 1) 1 ソレノイドの作る磁場 1 z z′ dz ′ O dI(z ′ ) a 半径 a、単位長さあたりの巻き数 n の無限に長い z 軸を中心軸とした円筒型のソレ ノイドに電流 I が流れている状況を考える。 (1) z ′ から z ′ + dz ′ の間に流れる電流 dI(z ′ ) の表式を書け。またこの電流が位置 r = xex に作る磁場 dB(x, z ′ ) をビオ・サバールの法則を用いて表せ。ただし 回路を一周する積分は実行しなくてよい。 (2) (1) の表式に対して z ′ 積分 B(x) = Z B(x,z ′ =∞) dB(x, z ′ ) B(x,z ′ =−∞) を実行することで磁場の表式を求めよ。ただし回路を一周する積分は実行しな くてよい。 (3) (2) の表式に対して回路を一周する積分を実行することで磁場 B(x) を求めよ。 (4) (1)∼(3) では位置 r = xex での磁場について考えたが、これが一般的な結果を 与えることを示せ。 (5) ソレノイドが有限の長さ L であるとすると、一般的な磁場 B を求めるにあた り (1) の設定をどのように修正する必要があるか、理由とともに答えよ。 (6) (5) において、磁場 B を (この系における典型的な距離スケール) ≪ L として近似的に求めよ。結果は L の依存性がわかるように書くこと。 52 2 ソレノイドの作る磁場 2 引き続き同じソレノイドを考える。円筒座標系を r = (R, ϕ, z) として以下の問い に答えよ。 (1) z ′ から z ′ + dz ′ の間に流れる電流 dI(z ′ ) が位置 r に作るベクトルポテンシャル dA(r; z ′ ) をビオ・サバールの法則を用いて書け。ただし回路を一周する積分 は実行しなくてよい。 (2) (1) で得られた表式から、ベクトルポテンシャルは ϕ 成分しか持たないことが 分かる。これを示せ。 原理的には (1) の結果を −∞ < z ′ < +∞ で足し合わせればベクトルポテンシャ ルは得られるが、z ′ の積分をいきなり行うと発散するので、まずは長さ L の充分長 いソレノイドであるとして、そのソレノイドが作るベクトルポテンシャルを考える。 ただし、原点はこのソレノイドの中心に取る。 (3) ここでの設定及び求めたい事柄から、「充分長い」ということを式で表すとど ういう条件になるか? (4) (2) で得られた表式から、ベクトルポテンシャルは A(r) = A(R, z)eϕ (ϕ) と書ける。A(R, z) を与える積分を書け。ただし、(3) の結果も考慮すること。 (5) (4) の積分を z ′ について行え。 (6) (5) で得られた結果を ϕ で積分するために被積分関数を L → ∞ で発散する項、 0 に近づく項、L に依らない項に分けろ。必要なら以下の式を用いよ。 √ x2 + 1) 1 = log x + log 2 + 2 + O(1/x4 ) 4x arcsin x = log(x + (7) (6) の結果を用いて、L → ∞ でのベクトルポテンシャルを求めよ。 (8) (7) の結果が前問の結果を再現することを確かめよ。 (9) (7) の結果からソレノイドは充分長いが、有限な長さである場合どのような補 正があるか答えよ。 53 3 発電機の原理 1 図のよう直線 l を回転軸とした長方形の回路 ABCD(AB=a,BC=b) を角速度 ω で 回転させ、回転軸 l に垂直に一様な磁場 B をかける。 B l C B l B a D b/2 B C A ϕ = ωt A b/2 D t=0 t>0 (1) 時刻 t = 0 で磁場 B と辺 BC,DA が平行であるとしたとき、時刻 t におけるコ イルを貫く磁束 Φ(t) を求めよ。 (2) (1) の結果から、コイルに生じる起電力 V (t) 及び電流 I(t) を求めよ。ただしコ イルの抵抗を R とする。 (3) t = 0 から t = t1 までに流れる全電荷量 Q を求めよ。 4 発電機の原理 2 前問では磁束の変化から回路の起電力を求めたが、ここでは同じ状況において導 線の各辺の電子の受けるローレンツ力から起電力を考える。 z D a/2 A B ϕ = ωt x y O b/2 b/2 B C −a/2 (1) 回転軸を z 軸とした円筒座標系 (R, ϕ, z) を用いて各辺 AB,BC,CD,DA 上それ ぞれにおいて 1 つの電子が運動しているときの各辺における位置を表せ。ただ し辺 AB,CD における電子の z 座標を zAB (t), zCD (t) とし、辺 BC,DA における 電子の動径座標を RBC (t), RDA (t) とする。 (2) (1) の結果を用いて導線の各辺で電子が受けるローレンツ力を求めよ。 54 (3) (2) の結果から回路に生じる起電力 V (t) を求めよ。 (4) 大問 1,2 ではそれぞれ別の方法で起電力を考えたが、どの考え方が適切である か。理由とともに答えよ。 5 変位電流 (1) 定常的な伝導電流 ie (r) に対するアンペールの法則 ∇ × B(r) = µ0 ie (r) に対して電荷の保存則 ∇ · ie (r) = 0 を示せ。 (2) 時間に依存する伝導電流 ie (r, t) に対して、アンペールの法則を ∇ × B(r, t) = µ0 itot (r, t) ∂ = µ0 ie (r, t) + ε0 E(r, t) ∂t と拡張する。ここで id (r, t) ≡ ε0 ∂E(r, t)/∂t を変位電流 (displacement current) という。このとき、ガウスの法則 ε0 ∇ · E(r, t) = ρ(r, t) を用いて一般の電荷の保存則 ∇ · ie (r, t) + ∂ ρ(r, t) = 0 ∂t を満たすことを示せ。 (3) (2) より積分形の法則として Z Z B(r, t) · dr = µ0 itot · ndS C S が得られる。ここで C は任意の閉曲線、S は経路 C を淵とする任意の曲面で ある。これがコンデンサーの系で成立することを示す。コンデンサーを充電し 導線でつなぐと正に帯電した極板から負に帯電した極板に導線を通して電流 I(t) が流れる。このとき時間に依存した電場 E(t) が極板間のみに生じる。こ のとき以下の (a),(b) の両方の場合で右辺の積分が同じ値となることを示せ。 55 (a) 積分範囲を導線を貫く面 S1 としたとき。 (b) 積分範囲を極板間の面 S2 としたとき。 S2 S1 C E(t) + − I(t) 6 ベータトロン B(r, t) = B(R, t)er r O v 磁束密度の時間変化によって発生する電場で電子 (電荷 −e、質量 m) を回転半径を 保ったまま加速させることを考える。円筒座標系 (R, ϕ, z) で z = 0 の平面において 外部磁場として B(r, t) = B(R, t)ez をかけ、その結果誘導電場 E(r, t) = E(R, t)eϕ が生じているとする。 (1) z = 0 の平面における電子の運動方程式を書け。またこれを動径方向と接線方 向に分離せよ。 (2) 電子が同一円周上を回転するという条件を用いて (1) の方程式を接線方向の速 度 v(t) を用いて書きなおせ。 (3) 誘導電場 E(R, t) と半径 R の円を貫く磁束 Φ(R, t) の満たす関係を求めよ。 (4) 以上より初期条件 B(R, 0) = 0, Φ(R, 0) = 0 を用いて磁場 B(R, t) と磁束 Φ(R, t) の満たす関係を求めよ。 7 運動する導線内に発生する起電力 時間によらない外部磁場 B 中の速度 v で移動するコイルに生じる起電力を考える。 B(s) C′ v∆t C ds 56 (1) コイル C が微小時間 ∆t の間に v∆t だけ移動し、移動先のコイルを C ′ と表 すとする。このとき、コイル C, C ′ を貫く磁束をそれぞれ ΦC , ΦC ′ とすると dΦ = ΦC ′ − ΦC が C と C ′ で作られる立体の側面を貫く磁束であることを説明 せよ。 (2) コイル C 上の位置 s において微小素辺 ds と v∆t が作る平面を貫く磁束 ∆Φ を 求めよ。 (3) (2) の結果をコイル一周に渡って積分することで側面全体を貫く磁束 dΦ を求 めよ。 (4) 以上よりコイル内に生じる起電力及び誘導電場を求めよ。 57 第 10 回 (時間変動する電磁場 2、拾遺 1) 1 鏡映変換 3 次元計量実ベクトル空間 V について考える。内積については標準内積を採用 する。 (1) 計量実ベクトル空間の定義を述べよ。 (2) 標準内積の定義を述べよ。 (3) a, v ∈ V について、v の「原点を含み a に直交する平面」による鏡映変換 Ref a (v) を考える。 (a) この鏡映変換の概略を図示せよ。 (b) v を a に平行な成分 vka と垂直な成分 v⊥a に分解せよ。 (c) (a)(b) の結果を用いて Ref a (v) の表式を求めよ。 (4) a, v ∈ V について、v の「原点を含み v⊥a に直交する平面」による鏡映変換 Ref v⊥a (v) を考える。 (a) この鏡映変換の概略を図示せよ。 (b) (3)(c) と同様に考えて Ref v⊥a (v) を求めよ。 (c) (3)(c) で得られた表式を基に Ref v⊥a (v) を求め、(b) と結果が一致するこ とを確かめよ。 2 応力テンソルと電力管 3 次元空間上に電場 E(r) が存在する場合を考える。 (1) 3 次元空間上の閉領域 V を考える。このとき、閉領域 V に働く応力による力 FV が一般に次のように書けることを示せ。ただし、n(r) は r ∈ ∂V での外向 き単位法線ベクトル、dS は微小面積素とする。 Z 1 2 F V = ε0 {E(r) · n(r)}E(r) − E(r) n(r) dS 2 r∈∂V (2) 次の図のような電力線に沿った円筒状領域 V (電力管) を考える。この電力管の 各部分に働く力について図や式を用いて説明せよ。 58 d V 3 1 個の点電荷と応力テンソル 3 次元空間上の原点に点電荷 q が存在する場合を考える。 (1) 任意の点 r = (x, y, z) での電場 E(r) を書け。 (2) 応力テンソル Tij (i, j = x, y, z) を求めよ。 (3) 原点を中心とする半径 r の球状領域 V を考える。この V に働く応力による力 FV が 0 になることを次の 2 通りで具体的に計算して示せ。 (a) 応力テンソルと FV の各成分との関係が明示的に分かる表式を用いる場合 (b) 2(1) の結果の表式を用いる場合 4 応力テンソルの図解 3 次元空間上の点 (l, 0, 0), (−l, 0, 0) に点電荷 q, −q が存在する場合を考える。 (1) 任意の点 r = (x, y, z) での電場 E(r) を書け。 (2) 応力テンソル Tij (i, j = x, y, z) を求めよ。 (3) xy 平面上で電気力線を図示せよ。 (4) x ≥ 0 という領域 V を考える。このときの領域 V に働く応力による力 FV を計 算せよ。 (5) (3) の結果と 2(1) の結果から、点電荷 q のみを囲むような閉領域に働く応力に よる力が 2 つの点電荷に対する引力を表していることを定性的に説明せよ。 59 5 表面張力とヤング・ラプラスの式 切れ目などのないような閉じた膜 S に対する平衡を考える。この膜は液相と気相 の境界面などに対応する。図のように、この膜の微小な面 ∆S を x 方向には半径 r1 の微小な角 θ1 の扇形の弧、y 方向には半径 r2 の微小な角 θ2 の扇形の弧であるもの と近似する。この面の端の部分に対してその接線方向に、x 方向の両端には大きさ fx の力がはたらき、y 方向には大きさ fy の力がはたらくものとする。 θ2 r2 θ1 θ1 r1 fx fy r1 fx fx fy x y fx x (1) 微小な面 ∆S の面積 ∆A を求めよ。 (2) 詳しくは熱力学や統計力学などで学習するが、膜 S は自由エネルギー F とい うエネルギーを有する。膜 S の全面積が A から A + δA だけ変化したときに自 由エネルギーが δF だけ変化したとすると、膜 S の表面張力 σ は δF = σδA により与えられる。これはばねの微小変位 δx に対する位置エネルギー変化 δE = kxδx = F δx と相似であり、この式における F = kx はばねにはたらく力である。さらに、 断熱過程での熱力学第 1 法則 δU = −pδV とも相似であり、この式における圧力 p は単位面積当たりの力という意味を持 つ。従って、σ は単位長さあたりの力であると類推できる。何故そのように類 推できるかを説明し、fx , fy が次のように表せることを示せ。 fx = σr2 θ2 , fy = σr1 θ1 (3) 微小な膜 ∆S の端にはたらく力の合力 f は図からもわかるように ∆S を鉛直方 向に引っ張る力である。端にはたらく力の合力 f の大きさを求めよ。ただし、 θ1 , θ2 は微小として展開せよ。 60 (4) 膜 S は閉じているので、膜 S の存在している空間は S の内側の領域 Vin と外 側の領域 Vex に分けられる。各々の領域から膜 S にかかる圧力を pin , pex とし、 その圧力差を ∆p = pex − pin とする。扇形の中心がある方向の領域が Vin であ るとして、微小な面 ∆S に対する圧力の釣り合いから、ヤング・ラプラスの式 1 1 + ∆p = σ r1 r2 を導け。 6 帯電したシャボン玉の平衡 S R Ω r Q シャボン玉外 R δR シャボン液 シャボン玉内 S θ Ω 図のように、空気が自由に出入りできる絶縁管の先に電荷 Q に帯電したシャボン 玉がある状況を考える。このシャボン玉は自らの作り出す電場による電場の応力と 表面張力により、ある半径 R で平衡を保っている。シャボン玉は有限であるが非常 に微小な厚み δR(≪ R) を持ち、表面張力は σ であるとする。この半径 R を 2 通り の方法で求めてみよう。なお、結果の式では適宜 δR → 0 としてよい。 (1) まず、電場の応力とシャボン玉の内外における圧力差が釣り合うという条件か ら求めよう。 (a) シャボン玉に接するような電力管に対して、電力管のシャボン玉と接し ている面に対してシャボン玉による電場が及ぼす応力とその反作用を考 えることで、シャボン玉が帯電していることによりシャボン玉にかかる 応力の大きさと向きを求めよ。 (b) シャボン玉には有限の厚さがあることから、シャボン玉外とシャボン液の 間及びシャボン液とシャボン玉内の間に各々境界面が存在するので、シャ ボン玉には 2 つの境界面が存在する。このことから、シャボン玉内外の 圧力差の大きさをヤング・ラプラスの式を用いて求め、その圧力差によっ てどの向きに力がはたらくか答えよ。 (c) シャボン玉が帯電していることによりかかる応力とシャボン玉内外の圧 力差が等しいという条件から半径 R を定めよ。 61 (2) 次に、シャボン玉の中心からの立体角が Ω であるような縁が円になっている 微小な曲面 S に対するクーロン力と表面張力による力が釣り合うという条件 から求めよう。 (a) S の縁の部分の円の半径を r とし、S の縁の円の中心とシャボン玉の中心を 結んだ直線と S の縁とシャボン玉の中心を結んだ直線のなす角を θ(≪ 1) とする。このとき、r を R, θ を用いて表し、微小な曲面 S の面積 A と縁 の長さ l を求めよ。 (b) この微小な曲面 S にはたらくクーロン力を求めよ。 (c) この微小な曲面にはたらく表面張力による力の合力を求めよ。 (d) 微小な曲面 S に対する力の釣り合いから半径 R を定めよ。 7 マックスウェル方程式 ∇ · B(r, t) = 0 マックスウェル方程式において、単磁荷が存在しないということは ∇ · B(r, t) = 0 という式により表現される。講義ではこのことを導く際の議論を大幅に省略したの で、この問題でその詳細について議論する。 (1) 電磁誘導の法則 ∇ × E(r, t) = − ∂B(r, t) ∂t の両辺について ∇· をとることで、 ∇ · B(r, t) = f (r) (f (r) : r の任意関数) が導かれることを示せ。 (2) B̃(r) というベクトルを ( ∇ · B̃(r) = f (r) ∇ × B̃(r) = 0 · · · (∗) を満たすベクトルとして定義する。 (a) B̃(r) = ∇Φ(r) と表せることを説明せよ。 (b) Φ(r) の満たすべき方程式を導け。 (c) (b) で得られた方程式を解き、B̃(r) を求めよ。 62 (3) (2) の結果から (∗) 式を満たすベクトル B̃(r) が存在することが分かる。E(r, t), B(r, t) が方程式 ∇ · B(r, t) = f (r) ∂B(r, t) ∇ × E(r, t) = − ∂t ρ(r, t) ∇ · E(r, t) = ε0 ∇ × B(r, t) = µ i(r, t) + ε µ ∂E 0 0 0 ∂t を満たしているとき、E(r, t), B̂(r, t) = B(r, t) − B̃(r, t) がマックスウェル方 程式 ∇ · B̂(r, t) = 0 ∂ B̂(r, t) ∇ × E(r, t) = − ∂t ρ(r, t) ∇ · E(r, t) = ε0 ∇ × B̂(r, t) = µ0 i(r, t) + ε0 µ0 ∂E(r, t) ∂t を満たすことを示せ。 [補足] このような議論は、もちろん E(r, t) についてのガウスの法則 ∇ · E(r, t) = ρ(r, t) ε0 をマックスウェル・アンペールの法則 ∇ × B̂(r, t) = µ0 i(r, t) + ε0 µ0 ∂E(r, t) ∂t から導く際にも適応できる。この際には、電荷の保存則 ∂ρ(r, t) + ∇ · i(r, t) = 0 ∂t も必要になるが、本質的な部分は上述の問題と同じなので各自確認しておくこと。 63 第 11 回 (時間変動する電磁場 3) 1 ゲージ変換 磁場 B = (0, 0, B)(B : 定数) を与えるベクトルポテンシャルについて考える。 (1) A = (− 12 By, 12 Bx, 0) が B を与えることを示せ。 (2) A′ = (0, Bx, 0) が B を与えることを示せ。 (3) A と A′ をつなぐゲージ変換 A′ = A + ∇χ に対し、χ の関数形を与えよ。ただし、ゲージ変換の時間依存性は考えないと した上で最も一般的な形を与えること。 (4) 時間依存性を持たせた場合の一般形を求めよ。 2 エネルギー保存則 真空中の N 個の点電荷 (質量 mi , 電荷 qi , 位置 ri (t), 速度 vi (t) ; i = 1, 2, · · · N ) に より電磁場 E(r, t), B(r, t) が生成されている状況について考える。万有引力の影響 を無視して以下の設問に答えよ。 (1) N 個の点電荷による電荷密度 ρ(r, t) 及び電流密度 i(r, t) の表式を書け。また、 E(r, t), B(r, t) の満たすマックスウェル方程式をこの結果を用いて表せ。 i 番目の点電荷が満たす運動方程式はデルタ関数を用いて mi dvi (t) = qi E(ri (t), t) + qi vi (t) × B(ri (t), t) dt Z = drδ 3 (r − ri (t)) [qi E(r, t) + qi vi (r) × B(r, t)] V と書くことができる。 (2) 上記の運動方程式と点電荷の速度 vi (t) との内積を取り i の和をとることで " N # Z " N # X d X1 mi vi2 (t) = dr qi δ 3 (r − ri (t))vi (t) · E(r, t) dt i=1 2 V i=1 となることを示せ。 64 (3) (1) を用いて (2) の右辺が Z Z 1 2 1 1 d 2 E(r, t) × B(r, t) · n(r)dS ε0 E (r, t) + B (r, t) − dr dt V 2 µ0 µ0 S と書けることを示せ。ただし S は領域 V を囲む閉曲面である。 以上より電磁場のエネルギー保存則は UM (t) ≡ UEM (t) ≡ N X 1 i=1 Z V 2 mi vi2 (t) 1 dr 2 1 2 2 ε0 E (r, t) + B (r, t) µ0 1 E(r, t) × B(r, t) S(r, t) ≡ µ0 を用いて d − [UM (t) + UEM (t)] = dt Z S S(r, t) · n(r)dS の形で表される。ここで、UM (t), UEM (t) はそれぞれ点電荷及び電磁場の持つエネル ギー、S(r, t) はポインティングベクトルである。 (4) 以上の保存則の導出では、運動方程式の変形を行う際にある仮定をしている。 その過程がどのようなものであるか答えよ。また、この仮定が成立することは 物理的にどのような状況に対応しているか答えよ。 3 ローレンツ変換 K 系において z 方向に一様な磁場 B = Bez がかかっている状況を、K 系に対し て x 軸正の方向へ速度 v で運動する K ′ 系に静止した観測者から見たときの見え方 を考える。K 系の座標を xµ = (ct, x, y, z)、K ′ 系の座標を x′µ = (ct′ , x′ , y ′ , z ′ ) とし、 時刻 t = 0 において両系の原点が一致しているとして以下の問いに答えよ。 v B = Bez z′ z y′ y O O′ x (1) K 系における磁場 B は、4元ベクトルポテンシャル φ/c 0 A 0 x Aµ (x) = = Ay Bx Az 0 65 x′ で与えられる。この Aµ (x) に対してローレンツ変換 A′µ (x′ ) = Λµν Aν (Λ−1 x′ ) を 行うことで、K ′ 系でのベクトルポテンシャル A′µ (x′ ) を求めよ。ただし、Λµν は γ −βγ 0 0 ! −βγ 1 γ 0 0 Λµν = β = v/c, γ = p 0 0 1 0 1 − β2 0 0 0 1 で与えられる。また、変換は場 Aµ と座標 xµ の両方で行うことに注意せよ。 (2) (1) で求めた K ′ 系の4元ベクトルポテンシャルから、K ′ 系での電磁場 E ′ (x′ ), B ′ (x′ ) を求めよ。 (3) 電荷 q 、質量 m の点電荷が K 系において時刻 t = 0 で原点に静止しているとす る。これを K ′ 系に静止した観測者から見た時の運動方程式を書け。また、こ の運動方程式を解き、K 系の運動と比較せよ。 (4) B を与える他のベクトルポテンシャルとして φ/c 0 A − 1 By x µ A (x) = = 1 2 Ay 2 Bx 0 Az を用いて (1)∼(3) を繰り返せ。 4 ファインマンのパラドックス 同心円状の外径 a, 内径 b の 2 つの円筒板からなる長さ l の円筒導体を考える。外 側の円筒板に一様に総電荷 +Q が分布し、内側の円筒板に一様に総電荷 −Q が分布 しているとし、円筒板同士は絶縁体でできた剛体棒によりつながれていて外側と内 側の 2 つの円筒板が一体となって運動するものとする。円筒導体の中心を原点とし て円柱座標をとり、円筒の底面に垂直な方向を z 方向とする。さらに、z 軸の正の向 きに空間的に一様な磁束密度 B(t) = B(t)ez がかかっているとして、時刻 t = 0 か ら t = τ にかけてこの磁束密度を単調に減少させて 0 にする。なお、時刻 t = 0 では 導体は静止していたとし、l は充分大きいとして端の効果は無視する。 (1) まず、時刻 t (0 ≤ t ≤ τ ) において 2 つの円筒板の間に生じる電場 E(r, t) を求 めよう。 (a) 外側と内側の円筒板が各々帯電していることにより 2 つの円筒板の間に生 じる電場 EG (r, t) を求めよ。ただし、電荷分布は常に一様であるとする。 66 (b) ファラデーの電磁誘導の法則を用いて、円筒導体と同心の半径 ρ の円を考え ることにより 2 つの円筒板の間における電磁誘導から生じる電場 EF (r, t) を求めよ。 (c) (a)(b) の結果から、2 つの円筒板の間に生じる電場 E(r, t) を求めよ。 (2) 時刻 t (0 ≤ t ≤ τ ) において、z 軸を回転軸としたときに円筒導体全体が受け る力のモーメント N (t) を求めよ。 (3) 時刻 t (0 ≤ t ≤ τ ) における円筒導体全体の角運動量 Lm (t) を求めよ。 (3) の結果からすると、空間の磁束密度を減少させたことにより、もともとは角運動 量が 0 であった導体に有限の角運動量 Lm (τ ) が生成されたことになる。単に力学の みを考えている範囲では、この導体に関して角運動量が保存されていないように思 われる。しかし、それは電磁場の持つ角運動量を考えてやれば何の矛盾も生じない ことがわかる。以下でそのことを確認してみよう。 (4) 時刻 t (0 ≤ t ≤ τ ) における 2 つの円筒板の間のポインティングベクトル S(r, t) を求めよ。 (5) 単位体積あたりの電磁場の運動量 gem (r, t) はポインティングベクトルを用い て gem (r, t) = S(r, t)/c2 により与えられる。このとき、z 軸を回転軸としたと きの 2 つの円筒板の間全体での時刻 t (0 ≤ t ≤ τ ) における電磁場の角運動量 Lem (t) を求めよ。さらに、導体の角運動量と電磁場の角運動量を合わせた全 角運動量が保存していることを確かめよ。 5 真空中の電磁波が満たす方程式 電荷や電流が存在しない真空中の電磁場を考える。 (1) このときに電磁場 E(r, t), B(r, t) の満たすマックスウェル方程式を書け。 (2) 変位電流が存在しないとして E(r, t), B(r, t) がそれぞれ満たす方程式を書き、 この場合には E(r, t), B(r, t) の従う波動方程式が得られないことを確かめよ。 (3) E(r, t), B(r, t) がそれぞれ従う方程式を求めよ。ただし、真空中の光速 c = √ 1/ ε0 µ0 を用いること。以下、この設問で得られた方程式を自由な電磁波の波 動方程式と呼ぶことにする。 67 6 1 次元の電磁波 E(r, t), B(r, t) が z, t のみの関数である場合の解を考える。 ( E(r, t) = Ex (z, t)ex + Ey (z, t)ey + Ez (z, t)ez B(r, t) = Bx (z, t)ex + By (z, t)ey + Bz (z, t)ez (1) Ez (z, t), Bz (z, t) が定数であることを示せ。 (2) Ex (z, t), Ey (z, t) が満たす方程式を求めよ。 (3) 変数変換 (z, t) 7→ (ξ, η) = (z − ct, z + ct) を行うことで、(2) で求めた方程式が次の形に書けることを示せ。 ∂ ∂ Eα (ξ, η) = 0 (α = x, y) ∂ξ ∂η (4) (3) の方程式を解くことで Eα (z, t) = Fα (z − ct) + Gα (z + ct) (α = x, y) と書けることを示せ。ただし、Fα (ξ), Gα (η) はそれぞれ ξ, η の任意関数である。 (5) (4) の結果を用いて Bx (z, t), By (z, t) を求めよ。 (6) Ex (z, t) = F (z − ct), Ey (z, t) = 0 の場合の解を考える。このような解を直線偏 光という。このときのポインティングベクトルを求め、その解釈を与えよ。 7 電磁波の平面波解 自由な電磁波の波動方程式について、電場 E(r, t) の解を E(r, t) = E0 ǫ exp[i(k · r − ωt)] とおく。ただし、ǫ はその成分を複素数とするベクトルであり、大きさは ǫ∗ · ǫ = 1 に規格化されているとする。 (1) E(r, t) が自由な電磁波の波動方程式の解であるとき、E(r, t) の実部と虚部も それぞれ自由な電磁波の波動方程式の解であることを示せ。 (2) ∇ · E(r, t) = 0 より ǫ と k の間の関係を求めよ。さらに、k を 1 つ定めると独 立な ǫ が 2 つあることを説明せよ。 (3) 自由な電磁波の波動方程式より k と ω の間の分散関係を求めよ。 68 (4) k = kez の場合に円偏光と呼ばれる解について考える。 (a) 複素ベクトル ǫ が 1 ǫ± = √ (ex ∓ iey ) 2 であるときの E(r, t) の実部 E± (r, t) を求めよ。 (b) E± (r, t) に対応する磁場 B± (r, t) を求めよ。 (c) ポインティングベクトルを求めよ。 (d) (a)(b)(c) の結果よりこれらの電磁波が円偏光であることを説明せよ。 (5) 円偏光の解 E± (r, t) の重ね合わせとして直線偏光の解を求めよ。 69 第 12 回 (時間変動する電磁場 4) 1 導体に侵入する電磁場 電気伝導度 σ の導体の表面に垂直に波数 k の電磁波が入射した場合を考える。導 体中ではオームの法則 i(r, t) = σE(r, t) 及びマックスウェル方程式 ρ(r, t) ∇ · E(r, t) = ε0 ∂B(r, t) ∇ × E(r, t) = − ∂t ∇ · B(r, t) = 0 ∇ × B(r, t) = ε µ ∂E(r, t) + µ i(r, t) 0 0 0 ∂t が成り立つものとする。なお、導体表面は yz 平面とし、x > 0 の領域が導体で占め られ、x < 0 の領域は真空であるとする。 (1) 導体中で電場が満たす方程式が ∂ 2 E(r, t) ∂E(r, t) 1 2 + ε0 ∇ E(r, t) = σ µ0 ∂t ∂t2 であることを示せ。ただし、導体中の電荷密度は 0 とする。 (2) (1) で導いた方程式を満たす電場が E(r, t) = E0 exp[i(kx − ωt)] のように書けるとき、k と ω の分散関係を求めよ。 (3) (2) の結果からも分かるように波数 k は一般に複素数となる。ω > 0 として k = kr + iki とおくとき、ω ≪ σ/ε0 に対する ki の表式を求めよ。ただし、 kr > 0 とする。 (4) (3) において kr > 0 に限定した理由について述べよ。 (5) 典型的な金属において可視光はほとんど金属内に侵入できない。このことを今 までの結果から説明せよ。なお、角振動数 ω の値は x = 0 の前後で変わらない とし、必要な値は各自で調べること。 [補足] 70 • 実際の金属の誘電率や透磁率は ε0 や µ0 ではない。演習問題としては取り扱わ ないが、必要な情報を集めて上述の議論の妥当性について各自議論してみよ。 また、それに付随して ω ≫ σ/ε の場合の議論についても考えてみよ。(ちなみ に、ε は ε0 の打ち間違いではない。) • 上記の問題では x = 0 において ω は連続であるとしたが、このことはマックス ウェル方程式から自然に導かれる電磁波の境界条件の帰結である。詳しいこと は物質中の電磁気学について学ぶ「電磁気学 II」の講義の範囲なので詳細な説 明は割愛するが、気になる人は休業期間などを利用して調べてみよ。 2 インダクタンス 1 I1 (t) (t) φe.m. 1 R1 S1 C1 I2 (t) φe.m. (t) 2 R2 S2 C2 図のように 2 つの電流回路 Ci (i = 1, 2) があり、それぞれの抵抗を Ri 、電流を Ii (t)、 伝導電流密度を ie (si , t)(si : 経路 Ci 上の位置ベクトル) とする。各回路には起電力 φe.m. (t) による電場 E e.m. (si , t) が生じており、また経路 Ci によって作られる面を Si i とする。このとき、これらの回路の満たす方程式を考える。 (1) 回路 Ci における起電力 φe.m. (t) 及び Ci を貫く磁束 Φi (t) を積分の形で書け。 i (2) 回路 Ci の位置 si における断面積を f (si ) とし、回路上の微小変位を dsi = ti dsi (ti : 単位ベクトル) と表すとする。 (a) 位置 si における電流 Ii (t) を以上の量を用いて表せ。 (b) 導体内部においては伝導電流 ie に対して変位電流 iD の大きさは十分小さ いため無視することができる。したがってマックスウェル・アンペール の法則が ∇ × B(r, t) = µie (r, t) (µ : 回路の透磁率) と書かれることを用いて (a) の Ii (t) が回路上の位置に依らず一定である ことを示せ。 (c) 回路の電気伝導度を σ とすると、回路の抵抗が Z dsi Ri = Ci σf (si ) と書けることを説明せよ。 71 (3) ファラデーの誘導法則 ∇ × E(r, t) + ∂B(r, t) =0 ∂t 及びオームの法則 ie (r, t) = σ (E(r, t) + E e.m. (r, t)) より、E(r, t) を消去し閉曲面 Si 上で面積分を行うことで、(1),(2) の結果から φe.m. (t) − i dΦi (t) = Ri Ii (t) dt の関係式が成り立つことを示せ。 (4) Φi (t) について積分中の磁場をベクトルポテンシャルで表すことにより、 Φi (t) = 2 X Lij Ii (t) j=1 の形に整理できる。このとき、電流の比例係数 Lij (i, j = 1, 2) を回路 C1 , C2 の 二重積分の形で求めよ。 (4) で得られた L11 , L22 を自己インダクタンス、L12 , L21 を相互インダクタンスとい い、コイルの形状や位置、また透磁率によって決まる定数である。この物理量を用 いて、閉回路に対して電流を決定する方程式は φe.m. (t) i − 2 X Lij j=1 dIi (t) = Ri Ii (t) dt と表される。 3 インダクタンス 2 z l I2 a S I1 −l 72 前問ではインダクタンスに対する二重積分を用いた公式を求めたが、実用上では回 路を貫く磁束を直接求めて電流の比例係数としてインダクタンスを求めるのが有用 である。以下ではこの考え方で相互インダクタンスを求めることを考える。 半径 a の円状回路(回路1)と長さ 2l、単位長さあたりの巻き数 n、断面積 S のソ レノイド(回路2)を中心を原点、中心軸を z 軸に揃えて設置する。回路2の断面 積が充分小さい (S ≪ πa2 ) として以下の問いに答えよ。 (1) 回路1に電流 I1 が流れた時に z 軸上に位置 (0, 0, z) に生じる磁場 B1 (z) を求 めよ。 (2) 条件より回路2の断面積内の磁場を一様であると近似することで、回路2の z から z + dz の区間を貫く磁束 dΦ2 を求めよ。またこの表式を積分することで 回路2を貫く全磁束 Φ2 を求めよ。 (3) (2) の結果と Φ2 = L21 I1 の係数を比較することで L21 を求めよ。 (4) (1) から (3) までの流れと同様にして、回路2に電流 I2 を流した時に回路1を 貫く磁束 Φ1 を求め、Φ1 = L12 I2 の係数と比較し L12 を求めよ。 (5) 相互インダクタンスは定義より L12 = L21 となる物理量であるが、上の結果が これを満たしているか確認せよ。もし満たしていない場合は、理由及びどのよ うな近似がなされるかについて議論せよ。 4 LCR 回路 1 I R +Q C L −Q V 図のようなインダクタンス L のコイル、静電容量 C のコンデンサー、抵抗値 R の抵 抗及び電圧 V (t) の電源からなる LCR 回路を考える。 (1) この LCR 回路に対するキルヒホッフの法則からコンデンサーに溜まっている 電荷 Q(t) の従う微分方程式を建てよ。 (2) まず、V (t) ≡ 0 の場合を考える。 73 (a) (1) の微分方程式の一般解を求めよ。 (b) 初期条件が Q(0) = Q0 , Q̇(0) = 0 であるときの解を求めよ。 (c) L, C, R の値により電荷 Q(t) の振る舞いは異なる。L, C, R の値に対して 場合分けをし、各々の場合についての電荷 Q(t) の振る舞い等を議論せよ。 5 LCR 回路 2 [LCR 回路 1 の続き] (3) 次に、V (t) = V0 cos ωt の場合を考える。 (a) このときの (1) の微分方程式を書け。 (b) (a) の微分方程式の特解として Q(t) = q cos(ωt − φ) の形を仮定する。この表式を (a) の微分方程式に代入して、sin ωt, cos ωt の線形独立性から q, φ を定めよ。ただし、0 ≤ φ ≤ π とする。 (c) (2) での結果と併せることで、(1) の微分方程式の一般解を導け。また、充 分に時間が経過した後の電荷の振る舞いはどうなるか。 (d) |q|, φ を ω の関数として図示せよ。また、これらのグラフから分かること について説明せよ。 (e) 抵抗の部分では単位時間当たり RI(t)2 (I(t) : 回路に流れる電流) のジュー ル熱が発生している。このジュール熱の時間平均 Z 2π/ω 1 J(ω) = dtRI(t)2 2π/ω 0 を計算し、ω の関数として図示せよ。ただし、I(t) の表式には (c) の後半 で答えたような充分時間が経過した後の電荷から導いた表式を用いよ。 (f) ジュール熱が発生する一方で、電源によりこの LCR 回路には単位時間当 たり V (t)I(t) のエネルギーが供給されている。この単位時間当たりに供 給されるエネルギーの時間平均 Z 2π/ω 1 dtV (t)I(t) P (ω) = 2π/ω 0 を計算し、J(ω) と一致することを確かめよ。ただし、(e) と同様に I(t) の 表式には (c) の後半で答えたような充分時間が経過した後の電荷から導い た表式を用いよ。 (g) (1) の微分方程式を変形することで、各時刻において回路系のエネルギー の時間変化が単位時間のジュール熱 −RI(t)2 と電源により単位時間に供 給されるエネルギー V (t)I(t) の和で与えられることを示せ。 74 6 電磁波の球面波解 電荷や電流の存在しない真空中における電磁波の球面波解を電磁ポテンシャルか ら求めることを考える。電磁ポテンシャル φ(r, t), A(r, t) としてローレンツゲージ における電磁ポテンシャルを採るとき、今の状況で電磁ポテンシャル φ(r, t), A(r, t) の満たす方程式は次で与えられる。 2 ∂ 1 ∇2 − 2 2 φ(r, t) = 0 c ∂t 1 ∂2 2 A(r, t) = 0 ∇ − c2 ∂t2 ∇ · A(r, t) + 1 ∂φ(r, t) = 0 c2 ∂t これに対して球座標 (r, θ, ϕ) を用いて、解の 1 つとして次のような形の解を求める ことを考えてみよう。 φ(r, t) = 0 , A(r, t) = Aϕ (r, t)eϕ (1) Aϕ (r, t) は ϕ に依らないことを示せ。 (2) Aϕ = Aϕ (r, θ, t) の満たす方程式が次のようになることを示せ。 1 ∂Aϕ 1 ∂ 1 ∂2 1 ∂ 2 Aϕ (rA ) + =0 sin θ − A − ϕ ϕ r ∂r2 r2 sin θ ∂θ ∂θ c2 ∂t2 r2 sin2 θ (3) (2) の偏微分方程式はそのままでは簡単に解けないので、Aϕ (r, θ, t) が r, θ, t そ れぞれについての 1 変数関数 R(r), Θ(θ), T (t) の積で Aϕ (r, θ, t) = R(r)Θ(θ)T (t) のように表せる場合について求めてみよう。このように解を求める方法を変数 分離法という。 (a) (2) の偏微分方程式に Aϕ (r, θ, t) = R(r)Θ(θ)T (t) を代入して整理するこ とで次の式が得られることを導け。 1 d2 1 d2 T (t) dΘ(θ) 1 d 1 = sin θ − [rR(r)]+ rR(r) dr2 r2 sin θΘ(θ) dθ dθ c2 T (t) dt2 r2 sin2 θ (b) (a) で得られた方程式について左辺は r, θ のみの関数で右辺は t のみの関 数である。このことから (a) の方程式の両辺が r, θ, t に依らない定数でな ければならないことを説明せよ。また、その定数を −ω 2 /c2 とするときに (a) の方程式が次のように書けることを示せ。 2 d T (t) + ω 2 T (t) = 0 2 dt 2 2 dΘ(θ) 1 1 d r d [rR(r)] + ω r2 = − sin θ + 2 2 R(r) dr c sin θΘ(θ) dθ dθ sin2 θ 75 (b) で得られた方程式の第 2 式も先程と同様にして 2 つの方程式に分離するこ とができ、λ を定数として最終的には次のような 3 つの微分方程式が得られる。 2 d T (t) + ω 2 T (t) = 0 · · · (∗) 2 dt d2 λ ω2 · · · (⋆) [rR(r)] + − 2 rR(r) = 0 2 2 dr c r dΘ(θ) 1 1 d sin θ + λ− Θ(θ) = 0 · · · (♯) sin θ dθ dθ sin2 θ (c) (∗) 式の一般解を求めよ。ただし、一般解は指数関数の形で表すこと。ま た、T (±∞) が有限であるという条件から ω につく制限を導け。 λ につく制限を求めるのは容易ではないが、(♯) 式を用いて θ = 0, π で Θ(θ) が 有限であることから λ = l(l + 1) (l = 1, 2, 3, · · · ) に制限されることが導かれ る。簡単のため、以下では l = 1 つまり λ = 2 の場合に議論を限ることにする。 2 2 2 ω d · · · (⋆)′ − 2 rR(r) = 0 2 [rR(r)] + 2 dr c r dΘ(θ) 1 d 1 sin θ + 2− Θ(θ) = 0 · · · (♯)′ 2 sin θ dθ dθ sin θ (d) Θ(θ) = sin θ が (♯)′ 式を満たしていることを確かめよ。 (e) (⋆) 式について ρ= ω r , R(r) = R̃(ρ) c と置くときに R̃(ρ) の満たす微分方程式を導け。 (f) (e) で得られた微分方程式の独立な 2 つの解 R̃(ρ) は 1 次の球ベッセル関 数 j1 (ρ) 及び 1 次の球ノイマン関数 n1 (ρ) と呼ばれ、 j1 (ρ) = sin ρ − ρ cos ρ cos ρ + ρ sin ρ , n1 (ρ) = − 2 ρ ρ2 により与えられる。これが (e) で得られた微分方程式を満たしていること を確かめよ。 (g) R(r) に対する独立な解は 2 つ存在するが、今考えている状況では電荷や 電流は存在しないので A(r, t) は発散する点を持たない。つまり R(r) も 発散する点を持たない。このことから j1 (ρ), n1 (ρ) の原点での振る舞いを 考えることで、原点付近の解として j1 (ρ), n1 (ρ) のどちらが適切であるか 答えよ。 (h) これまでの結果から A(r, t) の表式を書き下せ。ただし、T (t) の関数形に ついては T (t) が偶関数になるように定め、任意定数はまとめてベクトル ポテンシャルの次元を持つ定数 A0 として表記すること。 76 (i) 原点から充分遠方 r → ∞ において A(r, t) が f (r − ct) g(r + ct) A(r, t) ∼ sin θeϕ (r → ∞) + r r の形にかけることを示し、この式の解釈を与えよ。 (4) (3) で得られた A(r, t) に対する電磁波 E(r, t), B(r, t) を求めよ。 (5) ポインティングベクトル S(r, t) 及び電磁波のエネルギー密度 u(r, t) を求めよ。 また、これらの間の関係を求め、その関係が意味することを説明せよ。 (6) 原点を中心とする半径 R の球状領域を考える。この領域の表面から出て行く ポインティングベクトル S(r, t) の総量と領域内の電磁場のエネルギーの減少 量が等しいことを具体的に計算することで示せ。 77
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