「グローバル・クレジット・サイクル」を掲載しました。

Perspectives
2016 年 7 月
グローバル・クレジット・サイクル
今は何イニング目なのか(また、どのようなゲームが展開されているのか)?
お客様から最も頻繁に聞かれるご質問の 1 つは、「今は、クレジット・サイクルのどのあたりなの
か?」ということです。多くのクレジット・サイクルを研究(また、経験)してきた中で、マーク・トウェ
インの「歴史は繰り返さないが、韻を踏む(同じような動きを繰り返す、の意)」という言葉が思い
Michael Collins、CFA
マネージング・ディレクター
シニア・インベストメント・
オフィサー
出されます。実際、これまでのクレジット・サイクルは韻を踏んでいます。全てのクレジット・サイク
ルは非常に似通っていますが、確かに各サイクルにはそれぞれ微妙な違いがあります。本レポ
ートでは以下に沿って話を進めます。
 「クレジット・サイクル」の定義
 現在のクレジット・サイクルのユニークな特徴
 現在のサイクルの中で、様々な業種がいかに異なる段階にあるのか

分析結果をいかに債券ポートフォリオ構築に反映させるのか
クレジット・サイクルの定義
世界のクレジット・サイクルを説明する上で、米国の国民的スポーツである野球が適切なたとえに
なると考えています。過去のいくつかのクレジット・サイクルの平均期間は約 9 年間であることから、
9 イニングの野球にたとえることは、前半と後半や、3 ピリオド、または 4 クォーターから成るその
他のスポーツにたとえるよりも適していると考えます。
ゲーム(またはクレジット・サイクル)の開始時期には、集中的なレバレッジ解消(通常は景気後退
の最中か、または景気後退後に生じる)が特徴として見られます。この時期には多くの企業がデフ
ォルトに陥り、企業の経営陣は猛省を迫られるため、事業拡大から生き残りをかけた経営姿勢に
シフトします。ゲームが序盤から進むに従って、レバレッジ解消も進み、やがてレバレッジ水準が底
打ちします。レバレッジ解消プロセスが完了した場合には、そのサイクルにおいてクレジットの質が
頂点に達するといった顕著な特徴が表れます。
ゲームの中盤では、企業は成長や拡大、競争などの要素に再び注目するため、「アニマルスピリッ
ト(経済活動に対する動物的衝動)」が再び戻ってきます。一般に、サイクルのこの時点までに金融
市場や金融仲介機関(銀行等)は十分に回復しており、積極的に投資機会を模索しています。通
常では、個人や法人、さらには銀行さえも緩やかに活動を始め、やがて借入を増やし、再びレバレ
ッジを高める意欲を示し始めます。このように積極的にリスクを求める行動が展開されると、ほぼ
確実にゲームは終了します(経営破綻が高水準となり、貸倒が生じ、通常は景気後退入りする)。
www.prudentialfixedincome.com
Perspectives—2016 年 7 月
典型的なクレジット・サイクルでは、レバレッジ解消が進み、次に再びレバレッジが
高まるといったパターンをたどっている
• ・高水準のデフォルト
Elevated Default Rate
Begins
to Decline
率が低下し始める
• Defaults Start
・デフォルトが増加し始
めるto Increase
Lレバレッジ
e ve rage
• ・企業は「サバイバルモード」に
Companies in “Survival Mode”
• ・流動性/整理統合を重視
Focus on Liquidity/ Consolidation
• ・レバレッジを解消
Deleveraging Occurs
• ・レバレッジが拡大
Leverage
Increases
・クレジットの質が頂点に
• Peak in Credit Quality
(レバレッジ水準は底打ち)
(Leverage Nadir)
1
2
3
4
• ・「アニマルスピリット」回帰
“Animal Spirits” Re-emerge
• ・企業は事業拡大に注力
Companies Focus on Expansion
5
6
7
8
9
““イニング”
In n ings”
出所:プルデンシャル・フィクスト・インカム、2016 年 6 月 30 日現在。
上の図表に示されている通り、典型的なクレジット・サイクルでは、レバレッジ解消が進み、次に再びレバレッジが高まり、多くの
場合で“バブル”が発生する(最終的にバブルが崩壊する)といったごく標準的なパターンをたどります。
過去のサイクルと比較して現在のクレジット・サイクルとの類似点と相違点は?
「歴史は繰り返さないが、韻を踏む」と言いますが、今回のサイクルも例外ではありません。(2000 年代末にかけての)“大不況
(Great Recession)”では、デフォルト率が極端な水準まで上昇し、米国のハイイールド債市場では 2009 年後半に直近 1 年間
のデフォルト率が 14%に達しました1 。修復には長い時間を要し、その間に法人や銀行、個人は借入を大幅に減らしました。そ
の後、企業は再びレバレッジを高めました。その要因としては、低金利や、あらゆるタイプの投資家による債券に対する旺盛な
需要が挙げられます。こうした一連のイベントを見る限り、現在のサイクルは過去のほぼ全てのサイクルと同じ様な傾向をたどっ
ている(韻を踏んでいる)と考えられます。ただし、現在のサイクル内における以下の微妙な違いを見ると、歴史は繰り返さないと
言えます。

規制、規制、規制:景気サイクルやクレジット・サイクルと同様に、規制もサイクルに沿って動いています。ただし、規制
サイクルは通常、非常に長いサイクルとなります。現在は確かに非常に厳しい規制サイクルのさなかにあると言えます。
実際、現在のクレジット・サイクルと過去のサイクルは微妙に異なっていますが、これは、世界大恐慌(Great
Depression)以降で最悪の景気後退や金融危機を受け、当局が規制強化を進めてきた結果であると考えています。規
制当局は、金融機関や住宅ローン、ストラクチャード(仕組み)商品、デリバティブ(これらの分野が前回の金融危機を
引き起こした要因であると考えられる)を厳しく規制し、金融危機の再発防止に努めています。したがって、これらの分
野では、事業を拡大することや、再びレバレッジを高めること、リスクを高めることが厳しく制限されたため、これらの分
野は依然としてそれぞれのサイクルの序盤にとどまっています(これについては次のセクションで説明します)。

欧州の政治リスク:世界経済が大不況から回復し始めた中で、欧州大陸は、周辺国の債務危機という 2 つ目の打撃を
受けました。周辺国の国債や社債の価格は 2010 年にスパイラル的に下落し始め、2012 年に底打ちしました。また、
1
出所:ムーディーズ・インベスター・サービス
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Perspectives—2016 年 7 月
最近の英国の国民投票における欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)支持により不透明感やボラティリティが高まってお
り、欧州大陸は現在、これに対処する必要があります。英国や欧州全体における政治リスクは引き続き金融市場に悪
影響を及ぼすと考えられる一方で、欧州中央銀行(ECB)による積極的な量的緩和策(QE)や、追加緩和の見通しを背
景に、欧州の債券市場は概ね堅調な展開となっています。ただ、世界的な信用危機からまもなくして欧州周辺国の危
機が表面化し、次いでコモディティ・バブルが崩壊し、英国の国民投票での離脱派勝利などを受け、一部の市場参加者
は実際に足下のサイクルを危機の連鎖と捉えています。

コモディティ・バブルの崩壊:多くの市場参加者は、次はいつリセッション(景気後退)に陥るのだろうかと思っています。
間違いなく、ほとんどのコモディティ・セクターや、多くの製造業セクターでさえも、世界的にすでにリセッションの状態に
あると言えます。多くのグローバル・コモディティ企業は信用危機以降、積
極的に事業を拡大するために多額の借入を行いました。とりわけ金属/鉱
業企業やコモディティ企業は、中国の際限ないと見られる需要を満たすた
めに競って中国に素材を提供しました。また、米国のエネルギー企業は、
主に借入による積極的な設備投資計画を通じて“シェール革命”を煽りまし
た。
現在のクレジット・サイクル内に
おける微妙な違いを見ると、
歴史は繰り返さないと
言えます。
中国の経済成長が鈍化し、コモディティ価格が下落する中で、コモディティ
企業のキャッシュフローは消滅し、レバレッジが急上昇したことから、これらの業種内では伝統的なデフォルト・サイクル
が生じ、このレポートの執筆時点においてもこうしたサイクルが続いています。ハイイールドに分類されるエネルギー企
業及び金属/鉱業企業の直近 12 ヶ月のデフォルト率はそれぞれ 10%台半ばから 20%近い水準にあります2 。後述す
るように、これらのセクターはそれぞれのクレジット・サイクルにおける独自のイニングにあると考えられます。

新興国の停滞と先進国の安定:足下のサイクルでは、新興国と先進国の間において成長軌道に違いが見られます。過
去 20 年の大半において、新興国による世界の経済成長への寄与度は一貫して伸びを示していました。しかし、ネガテ
ィブなコモディティ・サイクルや中国経済の成長鈍化を背景に、こうしたトレンドはここ数年において反転しています。米
国や欧州、日本の成長率は低い伸びにとどまっていますが、G3 各国の経済活動は少なくとも安定しています。ただし、
ブレグジットの英国国民投票の結果を受け、欧州では短中期的に景気が減速する可能性があります。
一方、多くの新興国(特にブラジルやロシア、中国)では、成長率が景気後退の水準、またはその水準に向かって急低
下しています。確かに、コモディティ・バブルの崩壊や(中央銀行の政策の方向性の違いに伴う)米ドル高の進行を背景
に、多くの新興国が景気循環の深刻な悪化や金融市場の低迷に見舞われています。今回のサイクルは、先進国を中
心とした 2008 年から 2009 年にかけての景気低迷とは対照的であると言えます。

中央銀行における政策の方向性の違い:米連邦準備制度理事会(FRB)は利上げに慎重な姿勢を維持してきました。
その理由としては、上述の要因に加え、他の主要中央銀行(ECB や日銀)が利下げを継続していることや、追加的な量
的緩和に着手していること、特にブレグジットの英国国民投票の結果を受け、今後も緩和的姿勢を維持すると予想され
ることなどが挙げられます。なお、FRB が利上げを示唆したことで、米ドルはほとんどの他通貨に対して急騰していま
す。FRB はフェデラル・ファンド・レートの緩やかな引き上げを検討する一方で、世界経済や為替市場を引き続き注視す
るとみられます。

人口動態:ベビーブーマー世代の人口は 1960 年代半ばから労働力となりましたが、足下ではそうした世代が定年を迎
えています。現在の景気回復が勢いを増すはずであった 2011 年には、ベビーブーマー世代の中でも最高齢層が 65
歳に達しました。米国では、ベビーブーマー世代が労働力から外れる一方で、“ミレニアル世代(およそ 18~34 歳の年
齢グループ)”や移民が労働力に加わったことで、労働力不足はほぼ補われ、結果として労働力の伸び率は 0%を若干
上回る水準となりました。一部の見方によると、米国の潜在成長率は 1.5%程度になると予想されています。こうした低
成長を背景に、今回のサイクルでは金利は正常水準を下回る状態で推移しています。労働力の伸びの停滞が長期に
2
出所:プルデンシャル・フィクスト・インカム及び JP モルガン、2016 年 6 月 30 日現在。
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Perspectives—2016 年 7 月
わたり経済に対するマイナス要因になる可能性があります。ベビーブーマー世代の中でも最若年齢層が 2029 年に 65
歳に達するまで、労働力の伸び率は上昇トレンドを回復しない可能性があると予測する向きもあります。もちろん、欧州
のほとんどの国や、日本、中国が直面している構造的な人口動態問題と比較すると、米国の経済成長に対する人口動
態問題はそれほど深刻ではありません。低い経済成長率や、それに伴う低金利は、多くの経済大国や地域における長
期にわたる特徴となる可能性があります。

米国及び先進国の堅調な消費:グローバル市場や、新興国経済、コモディティ市場でボラティリティが極端に高まって
いるにもかかわらず、米国やその他一部の先進国の消費は比較的堅調に推移しています。住宅市場及び労働市場が
改善していること、エネルギーコストが低下していること、消費者が新たな債務(特に住宅ローン)を負うことができず、
またその意欲もないことなどにより、消費者の財務状態は比較的健全となっています。
現在はクレジット・サイクルのどのあたりなのか?
プルデンシャル・フィクスト・インカムでは、約 7 年前に(つまり“初球”から)このテーマに着手して以来、現在のクレジット・サイク
ルの成熟度合いを監視しており、今回のサイクルが過去のサイクルとは大きく異なっていることは明らかであると考えています。
最も大きな違いは、今回のサイクルが協調的なサイクルではないということです。むしろ、前述したように、様々な国やセクター、
業種それぞれが、サイクルにおいて独自の段階にあると言えます。以下では、いくつかの主要セクターに関してクレジット・サイク
ルのどの段階にあるかについて詳しく見ていきます。
銀行
規制当局が銀行の資本や資産の質、流動性などの要件(つまり、金融危機の再発防止への取り組み)の達成に対して厳格に取
り組んだことから、米国のマネーセンターバンク(グローバルに総合金融サービスを展開している巨大銀行)はレバレッジ解消プ
ロセスをほぼ完了しており、以下に示したように、おそらくクレジットの質において頂点に達している思われます。言い換えると、
米大手銀行は依然としてクレジット・サイクルの序盤にとどまっています。通常であれば、景気拡大のこの時点までに、銀行はす
でに積極的に貸出を行い、レバレッジを高め、過去のサイクルと同様に、効率的な資金運用を行うために顧客(例えば、ヘッジフ
ァンド)に資金を提供します。今のところ、銀行にはほとんど不良債権が発生していません。
23x
21x
19x
米国のマネーセンター
バンクは依然として
クレジット・サイクルの
序盤に位置している
17x
レバレッジのピーク
Peak in leverage
13%
レバレッジ比率
Leverage
Ratio (LHS)
(左軸、倍)
Tier1
自己資本比率
Tier 1 Capital Ratio (RHS)
(右軸、%)
15x
12%
11%
10%
歴史的に見て銀行
のレバレッジは現
在、低水準にある
13x
11x
9%
8%
7%
9x
6%
7x
5%
5x
3x
自己資本比率が悪化
Capital
ratios strained
4%
3%
出所:プルデンシャル・フィクスト・インカム、2016 年 3 月 31 日現在。米国のマネーセンターバンクの平均を示しています。
コモディティ・セクターにおける 2016 年初めの低迷時期のさなかに、アナリストは銀行のバランスシート上のエネルギ・セクター
へのエクスポージャーに注目しました。その結果、ほとんどの銀行がそうしたリスクを効率的に管理していることを確認しました。
一方、英国や欧州の主要銀行は米国の銀行よりもそれぞれ 1 イニングか 2 イニング遅れています。英国や欧州の主要銀行は、
特に周辺国及び(または)新興国へのエクスポージャー内の不良債権処理が終わっていません。また、これらの銀行のほとんど
は、レバレッジ解消を継続するため、追加資本を調達する必要もあります。
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Perspectives—2016 年 7 月
消費者
米国の消費者(及びその他ほとんどの先進国の消費者)は、全体としてレバレッジ解消を進めました。確かに、消費者の負債減
少のほとんどは、住宅ローンの債務帳消し(つまり、住宅ローンの債務不履行)によるものであった一方、銀行に対する新たな規
制に伴う貸出基準の厳格化により、新たに住宅ローンを受けることも難しくなっています。しかし、消費者は着実に貯蓄率も高め
ています。さらに、消費者はエネルギー・コストの低下や、雇用確保の向上、賃金の緩やかな改善、住宅や資産価格の上昇によ
る資産効果などから恩恵を受けています。
マイナス面では、特にサブプライムの自動車ローンや学生ローンにおいて借入の増加が一部に見られます。また、最近では消
費者の間でリボ払い式のクレジットの利用(例えば、クレジット・カード)が増えている兆候が見られます。このように、消費者の債
務が長期的な増加傾向を示しているにもかかわらず、消費者のレバレッジは、以下に示したように長期的なトレンドを大幅に下
回っています。これら全てを踏まえると、消費者は全体としてサイクルの中盤に位置していると考えられます。
消費者はクレジット・
サイクルの中盤に
位置している
資産に対する負債の割合
Liabilities to Assets
22%
20%
18%
16%
14%
消費者のレバレッジは長期的な
While
consumer leverage is
増加傾向にある
…
on
an increasing
secular trend ...
12%
10%
...…it今回のクレジッ
is currently
atトサイクルではレ
a low point in
バレッジは低水
the
credit cycle
準
8%
6%
出所:プルデンシャル・フィクスト・インカム及び FRB、2016 年 3 月 31 日現在。
不動産
不動産セクター内でも違いが見られます。集合住宅の建設が好調な一方で、伝統的かつ手頃な価格の戸建て住宅の建設は低
迷しています。一方、世帯形成は循環的な回復を示しています。したがって、住宅市場や住宅価格が、サイクル後半に見られる
過剰供給や過度のバリュエーションに近づくまでには、実際のところまだ長い期間がかかる可能性があります。一方、特に特定
の大都市における高級なアパートやマンションは、サイクルの後半に見られる特徴をすでに示している可能性があります。企業
が長期の資本支出プロジェクトにコミットすることを控えている中で、住宅以外の商業用物件の建設市場はやや回復が遅れてい
ます。
産業セクター
金融以外の産業セクター企業の間にも、強弱交錯した状況が見られます。グローバルクレジット市場にアクセスできる産業セク
ター内のコモディティ関連以外の大手企業は、記録的な額の債券を活発に発行しており、これにより戦略的な買収や、自社株買
い、配当などを行うための資金を調達するとともに、運転資金に充当するためにバランスシート上にキャッシュを確保しています。
こうした活動は通常、“イベント・リスク”と見なされています。
明らかに、これらのタイプの企業はクレジット・サイクルの中盤から終盤に進んでいます。ほとんどの尺度によると、こうした企業
グループの間では、グロス財務レバレッジ(キャッシュフローに対する債務総額の倍率)が過去最高水準か、またはそれに近い
水準となっています。興味深いことに、新たに調達された資金が伝統的な設備投資に充当されるケースはほとんどありません。
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Perspectives—2016 年 7 月
また、今回のサイクルにおける過去との微妙な違いにより、ゲームの終盤が通常のサイクルよりも長く続くか、あるいは延長戦
に突入する可能性さえあることが注目されます3 。

グロス・レバレッジは高水準であるものの、ネット・レバレッジ(債務総額からキャッシュを控除後の債務額の倍率)は低
水準であり、安価な資金調達コスト(つまり、低クーポン)により、インタレスト・カバレッジ・レシオ(支払利息に対するキ
ャッシュフローの倍率)は依然として管理可能な水準となっています。

多くの新たな債券が、海外に巨額のキャッシュを保有しているテクノロジーや医薬品業界の高格付け企業により発行さ
れています。これらの企業は、米国での課税を避けるため、キャッシュを本国へ送金することを控えています。これらの
ケースでは、債券発行のほとんどはキャッシュ残高により相殺されるため、ネット・レバレッジははるかに低水準となって
います。

最近の高水準のレバレッジも、コモディティ企業のキャッシュフローの大幅な減少を反映しています。このことはコモディ
ティ価格の下落によるものであり、必ずしも新たな債券の発行によるものではありません。
3.1x
2.9x
2.7x
米国の産業セクター
のレバレッジは、コモ
ディティ・セクターを
除いても上昇が続い
ている
2.5x
景気循環のピークに
At cyclical peak
Gross
Industrial Leverage
産業セクターのグロス・レバレッジ(倍)
Gross
Industrial Leverage ex-Commodities
産業セクター(除くコモディティ)のグロス・レバレッジ(倍)
2.3x
2.1x
Approaching
景気循環の
cyclical peak
ピークに近づく
1.9x
1.7x
1.5x
1.3x
出所:JP モルガン、2016 年 3 月 31 日現在。
中小企業
産業セクターの大手企業が安易にレバレッジを高めているように思われる一方、中小企業では状況が異なります。中小企業は
通常、大手企業のように資本市場に自由にアクセスできないため、銀行から資金を調達する必要があります。銀行の融資基準
の厳格化により、消費者は銀行から借入を行うことが困難となっており、これは中小企業も同じであるため、中小企業のレバレッ
ジ比率はここ数年で急低下しています。
3
野球には時間制限がありません。
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70%
Debt toレバレッジ比率
Net Worth Ratio
60%
中小企業もクレジッ
ト・サイクルの中盤に
位置している
50%
消費者セクターと同様に、中小企
Similar
to the consumer
業のレバレッジ比率も長期的な
sector,
SME leverage is
…
上昇傾向にある
on
a secular uptrend
...
40%
30%
... and has
…なお、レバレッジ比率も
also declined
景気循環的な低下局面とな
to a cyclical low
っている
20%
10%
0%
出所:プルデンシャル・フィクスト・インカム及び FRB、2016 年 3 月 31 日現在。
ゲーム(クレジット・サイクル)の終了?
最後に、グローバル・コモディティ企業、素材、重工業などのセクターや、一部の輸出企業、さらには一部の新興国も、クレジット・
サイクルの終盤に差し掛かっています。これらはすでに完全な修復/生き残りモードとなっています。これらの企業のほとんどは、
信用格付けの引き下げやデフォルトを回避するため、コスト削減や、設備投資の抑制、減配、資産売却、さらには増資、合併な
どに積極的に取り組んでいます。多くの金属/鉱業企業は、エネルギー企業と比べて、こうした修復処理において進んだ段階に
あると考えられます。前述したクレジット・サイクルの定義に従うと、これらの企業は実際に新たなクレジット・サイクルの序盤に入
っている可能性があります。
ほとんどの業種や経済セクターはクレジット・サイクルの異なるイニングに位置する
米国の高級集合住宅不動産
U.S. High End Multi-Family RE
Lレバレッジ
e ve rage
欧州の銀行
European
Banks
グローバル・コモディ
Global
Commodity Co’s,
ティ企業、輸出企業、
Exporters,
Certain EM Countries,
(中国を含む)一部の
新興国 Including China
米国の商業用不動産
U.S. Commercial RE
英国の銀行
UK
Banks
米国の中小企業
U.S. SMEs
米国の銀行
U.S.
Banks
米国の居住用不動産
U.S. Residential RE
グローバルセクター
Global
Sectors
U.S.
Sectors
米国セクター
U.S.
Consumer
米国の消費者
不動産セクター
Real
Estate Sectors
1
2
3
4
レバレッジ
L e v erage
景気循環の影響を受けにくいセクター
Less Cyclical Industrials
5
6
7
8
次の
Next
ゲーム
Game
>>
9
““イニング”
In n ings”
出所:プルデンシャル・フィクスト・インカム、2016 年 6 月 30 日現在。
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Perspectives—2016 年 7 月
投資への影響は?
業種やセクターが異なれば、クレジット・サイクルの段階も異なるため、投資家にとっては、資産配分やセクター・ローテーション、
業種選択などによって付加価値を高める大きな投資機会が提供されています。また、上記のような世界各国における景気状況
の違いにより、全ての資産クラスにおいて、ファンダメンタルズやレラティブ・バリューに基づく銘柄選択を行う豊富な投資機会が
提供されていると考えられます。
我々が債券ポートフォリオ全体にわたり採用している一般的な投資テーマでは、サイクルの序盤にあるセクターや企業の投資機
会を重視します。終盤にあるカテゴリーへの投資については、投資先を厳選することに努めています。例えば、合併・買収資金を
調達するために発行された債券への投資については、追加の信用リスクを完全に織り込んでいることが多いため、特に合併・買
収取引後において企業がレバレッジ解消に取り組んでいる場合などは、魅力的な投資機会になるとみられます。最後に、新たな
クレジット・サイクルに入り、「債務削減を進めている」セクターでは、ボラティリティが高まる可能性があるものの、魅力的な投資
機会が提供されると考えられます。
以下では、我々が注目する具体的な投資機会について述べます。

居住用/商業用不動産ローンや消費者ローンへのエクスポージャーがある質の高いストラクチャード商品または資産担
保証券。規制当局(及び投資家)が金融危機の再発防止に少なくとも努めていることなどから、ABS(資産担保証券)、
RMBS(住宅ローン担保証券)、CMBS(商業用不動産担保証券)、CLO(ローン担保証券)等の多くは依然として価値
が低下しているため、バリュエーションは魅力的であると考えられます。特に、資本構成の上位にある証券は構造的に
大きな信用補完が期待でき、金融危機以前の同様な証券と比較すると、スプレッドが大きく拡大しています。さらに、原
担保価格の上昇や、引受業務の改善により、全体として原担保のファンダメンタルズはより健全になっています。

米国のマネーセンターバンクや選別されたグローバル銀行。債務の削減や資本の保持を通じてバランスシートの再構
築を行った銀行、またはそのプロセスのさなかにある銀行、さらには自己勘定取引部門の閉鎖やリスクの高い投資の
縮小などを通じてリスクを抑えたビジネスモデルを採用している銀行に注目しています。もちろん、銀行の行動は利他
的なものではなく、債券保有者の利益になる活動はほとんど全て、規制当局の要請に従ったものであると言えます。そ
れでも、これらの銀行に注目することは、債券保有者として、規制当局の動きを有利に活用するための 1 つの方法で
す。

堅調な個人消費による恩恵を受けている米国の消費関連セクター。ただし、経済状況の改善により全ての消費関連企
業の業績が向上しているわけではありません。実際のところ、経済状況は辛うじて改善しつつあります。名目経済成長
率が非常に低い今日の世界では、特にベビーブーマーの伝統的な消費性向から、ミレニアル世代の新たな消費/節約
行動にシフトしているため、ゼロサムゲームに近い状況となっています。世界の消費者セクターは成熟しており、レラテ
ィブ・バリューの投資機会が存在しているため、リサーチ分析においてファンダメンタルズを重視し、勝者と敗者を見分
ける必要があります。

産業セクターにおける AA 格から CCC 格までの格付け全体の中で選別された企業で、再びレバレッジを高めようとし
ていない企業。市場シェアを高め、キャッシュフローを増やし、レバレッジ解消を進め、基本的な信用力を高めている企
業に注目します。

グローバル・コモディティ企業や新興国におけるオポチュニスティックな投資。財務指標を適切な水準に調整している企
業や国、または、少なくとも信用状況の安定に向けた取り組みを進めている企業や国に注目します。多くの場合、これ
らの景気循環企業は、コストや設備投資、配当などを削減し、さらには増資を通じてフリーキャッシュフローの確保や流
動性の改善を行っています。一部のコモディティの価格が最近回復しているため、信用状況の見通しがさらに改善して
います。
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Perspectives—2016 年 7 月
まとめ
現在のクレジット・サイクルは、過去の多くのクレジット・サイクルと共通点があるものの、それ以上に相違点があると
考えられます。2008 年から 2009 年にかけての大不況を受けて規制強化が進んだことなどから、こうしたサイクル
の違いが生じたものと考えられます。結果として、様々なセクターや業種のクレジット・サイクルが異なるペースで進
んでいます。一部の国や業種(例えば、グローバル・コモディティ企業)では、クレジット・サイクルの終盤に差し掛か
っている一方、その他のセクターはそれぞれのクレジット・サイクルの序盤にあるように思われます。こうしたサイク
ルの不一致が投資家を混乱させ、その結果、投資機会が生じています。
実際、現在では信用スプレッドが拡大した水準となっており、これはクレジット・サイクルが終盤に差し掛かっているこ
とや、現時点で我々が予想するデフォルト率よりもデフォルト率が高くなる可能性があることを織り込んでいるものと
考えられます。市場のバリュエーションを踏まえると、特にクレジット・サイクルの序盤にあるセクターや業種、企業に
注目することが望ましいと我々は考えます。一方、クレジット・サイクルの終盤にあるセクターや業種、企業について
は投資先を厳選し、オポチュニスティックに投資機会を捉える必要があります。
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Perspectives—2016 年 7 月
留意事項 1
データの出所(特に断りのない限り):プルデンシャル・フィクスト・インカム、2016 年 6 月 30 日現在。
プルデンシャル・フィクスト・インカムは、1940 年投資顧問法に基づき米国で登録している関連投資顧問会社である PGIM インクおよびプルデンシャル・
ファイナンシャル・インクを通して事業を行っています。欧州および一部のアジアの国においては、プルデンシャル・フィクスト・インカムは PGIM フィクス
ト・インカムとして事業を行っています。プルデンシャル・フィクスト・インカムはニュージャージー州ニューアークを本社とし、次の事業も含みます。(i) ロン
ドンの PGIM リミテッドにおけるパブリック債券部門、(ii) 東京のプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社(PIMJ)、(iii) シンガポ
ールの PGIM(シンガポール)プライベート・リミテッド。プルデンシャル・ファイナンシャル・インクは、英国を本拠地とするプルーデンシャル社とはなんら
関係がありません。
本資料は、経済状況、資産クラス、有価証券、発行体または金融商品に関する資料作成者の見解、意見及び推奨を示したものです。本資料を当初の
配布先以外の方(当初の配布先の投資アドバイザーを含む)に配布することは認められておりません。またプルデンシャル・フィクスト・インカムの事前の
同意なく、本資料の一部または全部を複製することや記載内容を開示することを禁止いたします。本資料に記載されている情報は、現時点でプルデン
シャル・フィクスト・インカムが信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報の正確性、完全性、および情報が変更されないことを保証
するものではありません。本資料に記載した情報は、現時点(または本資料に記載したそれ以前の日付)における最新の情報ですが、予告なく変更され
ることがあります。プルデンシャル・フィクスト・インカムは情報の一部または全部を更新する義務を負うものではありません。また、情報の完全性または
正確性について明示黙示を問わず何ら保証または表明するものでなく、誤謬についての責任を負うものでもありません。本資料は特定の証券、その他
の金融商品、または資産運用サービスの勧誘を目的としたものではなく、投資に関する判断材料として用いるべきではありません。どのような投資戦略
またはリスク管理技術も、いかなる市場環境においてもリスクを最小化または解消できることを保証することはできません。過去のパフォーマンスは将
来の運用成績を保証するものではなく、また信頼できる指標となるものでもありません。投資は損失となることがあります。本資料に記載されている情
報や本資料から導出した情報を利用したことにより(直接的、間接的、または派生的に)被り得るいかなる損失ついても、一切責任を負いません。プル
デンシャル・フィクスト・インカムおよびその関係会社は、それぞれの自己勘定を含め、本資料で示した推奨や見解と矛盾する投資判断を下す可能性が
あります。
本資料はそれぞれのお客様の置かれている状況、投資目的、あるいはニーズを考慮しておりません。また、特定のお客様もしくは見込み客に対して特
定の証券、金融商品、または投資戦略を推奨するものでもありません。いかなる証券、金融商品、または投資戦略についても、これらが特定のお客様も
しくは見込み客にとって適切であるかどうかに関する決定は下しておりません。本資料に記載された証券または金融商品についてのご判断はご自身で
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利益相反: プルデンシャル・フィクスト・インカムおよびその関連会社が、本資料で言及した有価証券の発行体との間で、投資顧問契約や他の取引関係
を結ぶ可能性があります。時にはプルデンシャル・フィクスト・インカムおよびその関連会社や役職員が、本資料で言及した有価証券や金融商品をロン
グもしくはショートするポジションを保有する可能性、およびそれらの有価証券や金融商品を売買する可能性があります。プルデンシャル・フィクスト・イン
カムの関連会社が、本資料に記載する推奨とは無関係の異なる調査資料を作成して発行することがあります。営業、マーケティング、トレーディングの
担当者など、本資料作成者以外のプルデンシャル・フィクスト・インカムの従業員が、本資料に表示する見解とは異なる市場に関するコメントもしくは意
見を、口頭もしくは書面でプルデンシャル・フィクスト・インカムのお客様もしくは見込み客に提示する可能性があります。利益相反もしくはそのおそれに
ついて、詳しくはプルデンシャル・フィクスト・インカムのフォーム ADV 第 2A 部をご覧ください。
情報提供については、英国では、PGIM インクの間接子会社である PGIM リミテッドが担当しています。PGIM リミテッドは英国金融行動監督機構
(FCA)の認可を受けており、FCA の規制が適用される他(登録番号 193418)、欧州経済領域(EEA)内の様々な法域でも正式に認可を受けています。
本資料は PGIM リミテッドが FCA の金融行為規制ソースブックに基づき、機関投資家や適格機関投資家向けに作成したものです。一部のアジア諸国
では、シンガポール金融管理庁(MAS)に登録し、その認可を受けた同国の投資運用会社である PGIM(シンガポール)プライベート・リミテッドが担当し
ています。日本では、国内の登録投資顧問会社であるプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社が担当しています。香港では香
港証券先物取引委員会に登録しているプラメリカ・ファンド・マネジメント・リミテッドが証券先物条例スケジュール 1 パート 1 で定義された機関投資家を
対象に提供を行っています。PGIM、PGIM のロゴ、およびロック・シンボルは、プルデンシャル・ファイナンシャル・インクおよびその関係会社のサービス
マークであり、多数の国・地域で登録されています。
© 2016 Prudential Financial, Inc. and its related entities.
2016-2056
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Perspectives—2016 年 7 月
留意事項 2
本資料はプルデンシャル・フィクスト・インカムが作成した"The Global Credit Cycle "をプルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社
が翻訳したものです。
本資料は、特定の金融商品の勧誘または販売を目的としたものではありません。過去の実績は将来の成果を保証するものではありません。
本資料に記載されている市場動向等に関する意見等は本資料作成日時点でのプルデンシャル・フィクスト・インカムの見解であり、事前の通知なしに変
更されることがあります。
本資料は、プルデンシャル・フィクスト・インカムが信頼できると判断した各種情報源から入手した情報に基づき作成していますが、情報の正確性を保証
するものではありません。プルデンシャル・フィクスト・インカムは、米国 SEC 登録投資顧問会社である PGIM インクのパブリック債券運用部門です。
原文(英語版)と本資料の間に差異がある場合には、原文(英語版)の内容が優先します。原文(英語版)につきましては、ウェブサイト
(http://www3.prudential.com/fi/pdf/pfi_global_credit_0716.pdf)をご参照ください。
“Prudential”、“PGIM”、プルデンシャル ロゴおよびロック・シンボルは、プルデンシャル・ファイナンシャル・インクおよびその関連会社のサービスマーク
であり、多数の国・地域で登録されています。プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社は、世界最大級の金融サービス機関プル
デンシャル・ファイナンシャルの一員であり、英国プルーデンシャル社とはなんら関係がありません。
プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 392 号
加入協会 一般社団法人 日本投資顧問業協会、 一般社団法人 投資信託協会
PIMJ201607150532
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