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News
JIKEN CENTER
自研センターニュース
MAY 2008
平成20年5月15日発行 毎月1回15日発行(通巻392号)
昭和51年5月27日 第三種郵便物認可
C
O
N
T
E
N
T
S
テクノ情報 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
次世代型安全技術
リペアリポート ・・・・・・・・・・・・・・・・6
国際オートアフターマーケットEXPO 2008
水性塗料/低溶剤塗料実演コーナー見学記
リペアリポート3月号 補足 ・・・・・・・・・・9
「構造調査シリーズ」新刊のご案内・・・・・・・・9
第3回 横滑り防止装置(ESC)の世界展開 ・・・10
超高張力鋼板 修理性調査(継続調査報告)・・・13
リペアインフォメーションS ・・・・・・・・・・14
作業事例紹介
1.トヨタマークX(GRX120)フロントサイドメンバ半裁位置について
2.ホンダモビリオスパイク(LA-GK1)クーラ配管の縁切りについて
輸入車指数作業トピック ・・・・・・・・・・・16
アウタドアオープナの脱着作業
お客様相談室レポート ・・・・・・・・・・・・18
アルファロメオ147 ドア配線について
2007年ユニバーサル技能五輪国際大会 開催 ・・・18
2007年「構造調査シリーズ」年間発行のご案内 ・・19
ボデーリペア懇談会開催される ・・・・・・・・13
別冊 新型車情報
1 ∼□
12
qマツダアテンザ セダン、ハッチバック、ステーションワゴン ・・□
1 ∼□
16
wトヨタ クラウン
(200系)・・・・・・・・・・・・□
1 ∼□
12
eニッサン スカイライン クーペ(CV36系)・・・・□
付録
自研センターニュース平成17年度(通巻367∼378号)総目次
TECHNO INFORMATION
テクノ情報
次世代型安全技術
スバル次世代ADA(Next Generation Active
Driving Assist)=「EyeSight
(アイサイト)
」
事故を起さない車を目指して
事故を起こさない車を目指した先進技術をスバルのHPや自動車工学2008年3月号を参考に要点をまと
めてみました。
スバルの「EyeSight」は「事故を起こさない車」の実現を目指す最新テクノロジーとして、従来型シ
ステムを機能面と価格面で一歩前進させた、より実用的で一般車への普及も可能とするプリクラッシュセーフ
ティシステムとして開発されました。
富士重工業株式会社では、
「EyeSght」を5月8日に発売したスバルレガシィに搭載し、将来的には軽自動車
への搭載も視野に入れているということです。
運転者がブレーキ操作をしなくてもADAが働いてブレーキが作動します。
1.スバル「EyeSight」とは
スバル「EyeSight」の特徴は、システムがシンプル且つ高性能で低コスト化が見込めること、
さらに、危険を感知するとより積極的にブレーキを作動させ、事故の回避や障害物との衝突被害を軽減
させる点にあります。
さらに、クルーズコントロール機能も拡充され、時速0km/hから100km/hまでの全車速域追従機能を実現し
ています。様々な運転支援システムが実用化されてきましたが、スバルの「EyeSight」はこれまでの
運転支援システムをより実用的に進化させた先進機能を有しています。
従来はカメラ・ミリ波レーダ・車両制御用コントロー
ラ・画像処理コントローラの四つが別々であったが、こ
のシステムでは一つにまとめられてシンプルになってい
るのが特徴。
2
自研センターニュース 2008年 5月号
2.スバルADAから「EyeSight」へ
スバルADAは1999年5月、世界で初めて実用化に成功したステレオ画像認識を用いた、ドライバ支援
システムをレガシィランカスター(現アウトバック)に搭載されたのが始まりです。
初期の機能としては、
1.車間距離制御クルーズコントロール
2.車間距離警報
3.車線逸脱警報
4.VDC(Vehicle Dynamics Control:横滑り防止装置)プレビュー制御
の4つの機能でした。
この従来型は、ステレオカメラ・ミリ波レーダ・車両制御コントローラ・画像処理コントローラの4
つからなり総重量は約4kgでした。
2003年9月、従来からの機能に新たに次の4つの機能が加えられレガシーツーリングワゴン3.0Rに搭載
グレードが設定されました。
1.追従モニタ
2.ふらつき警報
3.グリップモニタ
4.前車発進モニタ
これに対して、スバル「EyeSight」は従来4つで受け持っていた機能を高精度ステレオカメラ*1つに機
能統合され重量950g、シンプル且つコンパクトに収められています。
この次世代型が進化し、さらなる軽量化・コンパクト化・低価格化が実現すれば、スバルが目指す全
車種・全グレードへの搭載が現実となる日が必ず到来することと思います。
*ステレオカメラとは、対象物を複数の異なる方向から同時に撮影することによって奥行き方向の情報を捉えることができるカメラのこと。
ステレオカメラ:全長30cm
重量950g
カメラがぶれないためのアルミダイキャストフレームの左右にCCD
ステレオ画像処理LSI
カメラが取付けられる。
日立製作所製
自研センターニュース 2008年 5月号
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3.スバル「EyeSight」の特徴
高精度ステレオカメラ(30万画素のCCDカメラ2台)と、新開発ステレオ画像処理LSIによる画像処理
時間の高速化と精度の高い3D(三次元画像)作成能力により、障害物との「距離感」が正確になり物体
の「形状識別能力」が向上しました。先行車はもちろんのこと、車線・白線・壁・路面の高さや、人の
目には見えないような吹雪や夜間の雨の中でも対象物を認識することができます。
これまでのセンサを活用したシステムでは単に物が有るか無いかを「検知」していたのに対し、どの
ような物なのかを「認識」する領域に達しているのがこのシステムの優れた特徴といえます。
対象物が何であるかを識別できるため、前方の自転車や二輪車などの動作予測を行うことが出来ます。
レーダでは不可能だったスポンジ状の物体も認識することができ、フロントバンパ寸前のところまで認
識することができます。
外から見たステレオカメラ。
室内から見たステレオカメラ。
ルームミラーをはさんで2台のCCDカメラが見える。
左右のサンバイザの間に取付けられている。
4.主な先進機能
・フロントバンパ寸前まで対象物を認識できる
・金属以外のスポンジ状の対象物でも認識できる
・正面の車両だけではなく斜め前方の車両や自転車、歩行者なども認識し動作予測ができる
・渋滞時などの極低速時(15km/h以下)でもシステムが作動する
・誤発進防止機能として前方に障害物を認識している状態で、ペダルの踏み間違いによる誤発進時に
速度を低減する機能が作動する
・追従クルーズコントロール機能は車速0∼100km/hまで幅広い範囲で設定可能
・周囲の状況を認識し、自車がウィンカを出さずに車線から逸脱すると警告音で注意を促す
歩行者・自転車の認識例
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自研センターニュース 2008年 5月号
歩行者と車両の認識例
TECHNO INFORMATION
33M
40M
夜雨時の認識例
降雪時の認識例
5M
100%
割り込み車検知の例
車線認識例
ステレオカメラが前方の壁を認識し、スロットルが
調整される。ギヤ入れ間違いの急発進による衝突被
害を軽減させる。
クルーズコントロールは0∼100km/hまで設定できる。
【参考文献】
SUBARUオフィシャルWebサイト
自動車工学(株式会社鉄道日本社)
(研修部/武藤孝司)
自研センターニュース 2008年 5月号
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REPAIR REPORT
リペア リポート
国際オートアフターマーケットEXPO 2008
水性塗料/低溶剤塗料実演コーナー見学記
1.はじめに
2008年3月13日∼15日に東京ビッグサイトで開催された「第7回 国際オートアフターマーケットEXPO2008」
において、塗料メーカ4社による“水性塗料/低溶剤塗料実演”が行われました。今回のリペアリポートでは、
この“水性塗料/低溶剤塗料(以下 HS)実演”の模様と最近の水性塗料の動向について紹介します。
2.水性塗料/低溶剤塗料実演内容(紹介順:3月14日実演順)
(1)アクゾノーベルコーティング(株)
カラーベース
塗装方法
クリヤ
オートウェーブ(水性)
シルバーM・ブロック
オートクリヤWB(水性)
オートベースプラス(HS)
レッドP・ブロック
オートクリヤープラスHS(HS)
【実演の印象】
・水性カラーベースについては、インペイ性の高いタイプの水性塗料でした。
・水性クリヤベースについては、塗り肌が有機溶剤系クリヤに近い平滑性に仕上がっており、実用性は
相当高い印象をうけました。
(写真)
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自研センターニュース 2008年 5月号
REPAIR REPORT
(2)BASFコーティングスジャパン(株)
カラーベース
塗装方法
クリヤ
オニキスHD
(水性)
シルバーM・ボカシ
クロノラックスCP(HS)
オニキスHD
(水性)
ディスパージョン仕様
レッドS・ブロック
スターラックスCP(HS)
【実演の印象】
・今回、新製品のオニキスHD専用水性ディスパージョンの紹介がありました。ディスパージョンとは
インペイ力、塗装性能を向上させるための原色を補助する製品です。このディスパージョンを使用す
ることで、インペイ性の低い赤系の塗色を2回塗りでインペイできるようになります。
(3)デュポン(株)
カラーベース
塗装方法
クリヤ
パーマハイド(水性)
シルバーM・ブロック
8600クリヤ(HS)
スタンドハイド(水性)
レッドロケット・ブロック
VOCハイプロクリヤ(HS)
【実演の印象】
・今回、特殊色の新色エクスクルーシブライン“レッドロケット”(写真)の紹介がありました。水性
塗料は有機溶剤系塗料と比較してインペイ性が高く、乾燥が遅めなので、カスタムペイントのオール
ペンの作業性は良いといえるのではないでしょうか。
自研センターニュース 2008年 5月号
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REPAIR REPORT
(4)イサム塗料(株)
カラーベース
バージョンアップ・アクアス
(水性)
塗装方法
シルバーM・ブロック
クリヤ
AXEL LowVOC
クリヤ(HS)
【実演の印象】
・今回、バージョンアップされたアクアスの紹介がありました。一番の改良ポイントはインペイ性の向
上です。従来型アクアスでは、インペイに5回塗りであったところが、2.5回塗りでインペイができる
レベルに向上していました。
・イサム塗料では、水性塗料の作り方の実演が行われました。水性塗料の製造工程である前練り工程∼
分散工程∼仕込み工程を目の当たりにして、塗料メーカの水性塗料作りに対する熱意や創意工夫を垣
間見たような気がします。
3.実演全体について
今回、同一ブースを使用して順番に実演が行われましたが、各塗料メーカが使用していた湿度計が統一
され たもの ではなか った た め 、湿 度 計 測 値 に か なりバラツキ が ありまし た 。全 て の 実 演 で 同じ 湿
度計を使用した湿度計測であれば、なおよかったように思います。
また、実演が各社でそれぞれ異なる内容でしたので、次回はできればひとつの課題を設けて、同一作業
の中で各社水性塗料の特徴を見せていただけると、ユーザは自分の好みに合った水性塗料を選びやすいの
ではないでしょうか。
以上のような要望はありますが、水性塗料4製品を一度に見ることができ非常に有意義なデモンストレー
ションでした。
4.最近の水性塗料の動向
日本国内における水性塗料の傾向は、当初外資系水性塗料はインペイ性が高く作業時間が早めという傾
向でしたが、現在ではボカシ作業性向上のために塗装仕様が変更され、作業時間が増加したのに対し、国
産水性塗料は、ボカシ作業性を損なわない程度にインペイ性が向上されつつあるため、両者の作業時間・
作業性は以前よりは差が少なくなっているように感じます。
その中でどのような水性塗料がユーザに選ばれていくのか、今後の塗料メーカ各社とユーザの動向を注
視していきたいと思っています。
また、今後水性塗料の作業性が向上し普及していくためには、高性能で安価な乾燥機器の開発が必須と
いえるでしょう。機械工具メーカに期待したいところです。
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自研センターニュース 2008年 5月号
(技術開発部/日吉健夫)
リペアリポート3月号 補足
自研センターニュース2008年3月号リペアリポートのX−TRAIL「リヤフェンダエクステン
ションの部品設定について」の作業6、作業7について補足いたします。
作業6
外側、室内側のパネル重なり部をそれぞれ溶接する。
日産自動車株式会社発行の車体修復要領書では「リヤフェンダエクステンション取替」につ
いて記載されていませんが、指数は外側をプラグ溶接、室内側を隅肉溶接で作成しています。
作業7
外側、室内側のパネル重なり部にそれぞれシーラを塗布する。
外側
室内側
隅肉溶接
リヤフェンダ
プラグ溶接
シーラ塗布
リヤフェンダ
エクステンション
(技術調査部/小松 靖)
「構造調査シリーズ」新刊のご案内
自研センターでは新型車について、損傷した場合の復元修理
No.
車 名
型 式
504
ニッサン GT-R
R35系
505
トヨタ タウンエースバン/
ライトエースバン
の立場から見た車両構造、部品の補給形態、指数項目とそ
の作業範囲、ボデー寸法図など諸データを掲載した「構造調
S402M系
査シリーズ」を発刊しておりますが、今月は右記新刊をご案内
いたしますので、是非ご利用ください。定価は1,120円です
(税込み、送料別)。
お申し込みは自研センター総務企画部までお願いします。
TEL
047-328-9111
FAX
047-327-6737
自研センターニュース 2008年 5月号
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特別記事
第3回 横滑り防止装置(ESC)
の世界展開
本稿では3回に分けてESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)について紹介してい
ます。これまで機能や効果、ESCの普及状況などについて紹介しましたが、最終回となる今回は日本の
装備率が低い背景と認知度、ボッシュの普及活動について紹介します。
1. 日本のESC装備率が低い背景
前回紹介したとおり、日本のESC装備率は欧米と比較して低い結果となっていますが、その理由は、
国内においてはESCを装備した車両の選択肢はまだ少なく、ESCの標準装備はもちろん、オプション設
定がない車種もまだ多い状況であることが考えられます。価格についても、標準・オプション設定のあ
る車両は価格帯の高い上級グレード車が多く、かつオプション設定もセットオプションで数十万円もか
かる場合があるなど、ESCを選択しづらい状況にあります。
また、一般ユーザにESCがあまり知られていないことも理由の一つと考えられます。
ボッシュでは2006年に一般ユーザ約1000名を対象としたアンケート調査を行いました。その中で、
ユーザは自動車を選ぶ際に安全機能や装備を重視していることがわかりましたが(図1)
、主にエアバッ
クやシートベルトなど、事故が起こったときに被害を軽減してくれる装備(パッシブセーフティ)に焦
点をあてており、事故を未然に防止する装備(アクティブセーフティ)への理解は十分ではありません
でした。特にESCの認知状況は図2からも分かるように大変低く、名前も機能も知っていたのはわずか
27%でした。
図1
日本の市場調査:安全機能・装備を重視
質問:あなたが車を購入する際に最も重視するものはどれですか?
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自研センターニュース 2008年 5月号
日本の市場調査:ESCの認知
図2
2.欧州でのESCの認知度
装備率の高い欧州でのESC認知度はどうでしょうか。図3の通り、日本に比べて高く、さらに2004年
から2006年にかけては大幅に認知度が上がっています。これは、欧州各国の交通安全に関係する組織、
例えばイギリスの自動車保険修理研究センター(Thatcham)やドイツの保険協会(GDV)などがESC装
備車の購入を推奨し、一般ユーザに対してESCの装備情報を積極的に提供するようになったことが大き
な理由として考えられます。
(図4)
この図は車種毎のESC装備状況を表しており、ESC設定なしのグレード(赤色)
、ESCオプション設定
グレード(黄色)
、ESC標準設定グレード(緑色)にし、装備率を示しています。
1つの車種の中で、ESCの標準・オプション設定があるのは上級グレードになるので、図の左側が赤色
に、右側が黄色や緑色になる傾向があります。
このような情報提供により、欧州では一般ユーザのESCに対する認知や関心も高まり、そのことによ
りさらにESCの需要が高くなり装備率が上がっていると考えられます。
図3
欧州の市場調査:ESCの知名度上昇
質問:「ESCの機能と名前をご存知でしたか?」への回答
自研センターニュース 2008年 5月号
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図4
欧州で一般ユーザに提供されているESC装備一覧表
3.ボッシュのESC普及活動
ボッシュは、1978年にABSを、1995年にESCをそれぞれ世界で初めて市場に投入し、常にアクティブ
セーフティをリードしてきました。ボッシュはより安全な自動車社会に貢献するために、グローバルな
体制でESCの普及啓蒙活動をスタートさせました。日本においても、ESC体験試乗会や展示会・イベン
トへの出展、メディアへの情報提供など、2002年から積極的な普及活動を行ってきました。
これらの活動が認められ、2007年12月にはFIA(国際自動車連盟)より国際的に高い権威を持つ「FIA
ワールドプライズ(FIA World Prize for Road Safety, the Environment Mobility)」を受賞しました。
これからも、ボッシュは事故低減効果のあるESCの普及に取り組んでまいります。
ご寄稿頂いたボッシュ
(株)Mueller氏
(寄稿:ボッシュ
(株)
シャシーシステム事業部マーケティング部 http://www.bosch.co.jp/esc)
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自研センターニュース 2008年 5月号
超高張力鋼板 修理性調査(継続調査報告)
2006年7∼9月号「超高張力鋼板修理性調査」では自研センターの超高張力鋼板の修理性に対する取組
みや成果などを報告させて頂きました。しかしながら新スポットカッタの調査に関しては目標を達成で
きず課題を残していました。
この「新スポットカッタ調査」での自研センターの活動はスポットカッタ切削性評価と改善提案に限
られています。そのためスポットカッタメーカや販売店の協力に依存するところが多く、調査結果に大
きな進展が見られませんでした。しかし、今回切削(耐久)性に優れたスポットカッタを確認すること
ができたため、追加報告をさせて頂きます。
新スポットカッタ調査
商品名
C-17VR★(8.2mm)
製造元
中央砥研材株式会社
比較方法
・ボール盤……加圧力、切削物に対するドリルの角度などに変動の出ない機械的
な作業を前提にボール盤を使用
《テスト方法》
加圧力
25kg(一定)
回転数
1500r.p.m(無負荷状態)
評価基準
15秒以内/1点
テストピース
980MPa鋼板(448Hv)
1.4mm厚
・ハンドドリル……実車作業を想定し一般的に用いられるエア式ハンドドリルを
使用。
*加圧力、切削物に対する角度などは作業者による個人差が
ある。
《テスト方法》
ボール盤
加圧力
27∼38kg(変動)
回転数
1500r.p.m(無負荷状態)
評価基準
15秒以内/1点
テストピース
980MPa鋼板(448Hv)
1.4mm厚
結果(従来工具8.2mmとC-17VRの比較)
従来工具
C−17VR★
ボール盤
1点
8点
ハンドドリル*
1点
30点
ハンドドリル
*ハンドドリルは下向きで実施
考察
このハンドドリル調査ではハンドドリルを下向きの姿勢で、加圧力は作業者が「切れている」という
感覚(27∼38kg)で加圧した条件で得られた結果が30点になりました。この作業者が感じる「切れてい
る」感覚は、切り粉やチゼルエッジ(先端部の突起)の食込み状態で切削具合を判断し、無意識に加圧
力が27∼38kgのボール盤調査より高い加圧力での作業となりました。
修正作業に伴うスポット溶接部の切削作業では鋼板強度、作業位置、姿勢、作業者などの要素は切削
点数に影響を与えますが、今回調査したスポットカッタは相対的に比較して良好な結果が得られました。
本調査(2003年4月∼2008年3月)では多数のスポットカッタメーカや販売店のご協力を得て、切削性
の良いスポットカッタ(試作品を含め)を確認することができました。今後も自研センターでは、超高
張力鋼板の修理技法の調査(新スポットカッタの評価・改善)を進め、自研センターニュースに修理作
業効率向上につながる作業方法、工具、材料を紹介してまいります。
(技術開発部/松下正明)
自研センターニュース 2008年 5月号
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REPAIR Information S
リペア インフォメーション S
作業事例紹介
今月は、下記の作業事例について紹介します。
1.トヨタ マークX(GRX120)フロントサイドメンバ半裁位置について
2.ホンダ モビリオスパイク(LA-GK1)クーラ配管の縁切りについて
1.トヨタ マークX(GRX120)フロントサイドメンバ半裁位置について
トヨタ マークXのフロントサイドメンバ半裁
位置は、損傷に応じ、2箇所設定がありますので
半裁位置の紹介をします。(写真1)
写真1
フロントサイドメンバ半裁位置は、写真2「半裁A」
基準点
「半裁B」の2箇所です。計測基準点はフロントサイド
メンバ後方のサービスホールです。
(写真2)
半裁A 400
各寸法は以下の通りです。
・基準点∼「半裁A」 400mm
半裁B 580
・基準点∼「半裁B」
580mm
写真2
写真3は、フロントサイドメンバプレートアウ
タ半裁位置です。計測基準点はフロントサイドメ
ンバプレートアウタ後方のサービスホールです。
基準点
寸法は以下の通りです。
・基準点∼半裁位置 500mm
500
写真3の基準点はアンダコートで隠れています
が、アンダコートを除去すれば確認できます。ま
た、フロントサイドメンバプレートアウタの半裁
位置は1箇所のみとなります。
写真3
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自研センターニュース 2008年 5月号
REPAIR Information S
2.ホンダ モビリオスパイク(LA−GK1)クーラ配管の縁切りについて
今までクーラパイプ接続にはボルトやナットが使用されてきましたが、それとは異なる接続方法のも
のが多くなってきました。以下その箇所の縁切方法について紹介します。
縁切箇所です。エンジンルーム左奥に位置しま
す。
(写真4黄丸印)
写真4
接続部品の取付状態です。はじめにジョイント
キャップ(写真7)をカッタなどで切り、取外し
ます。(写真5)
ジョイントキャップ
ストッパ
写真5
写真7
ジョイントキャップ取外し後、ストッパ(写真
7)を取外しクーラパイプを引抜くようにして縁
切りを行います。(写真6)
注意:接続時は新品部品が必要になります。
80871−SSA−003
写真6
Oリングセット 5/8(低圧側)
80873−SSA−003
Oリングセット 8 (高圧側)
(技術開発部/島田東一)
自研センターニュース 2008年 5月号
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輸
入
車
指
数
作
業
ト
ピ
ッ
ク
このコーナーでは自研センターにて輸入車の指数を作成していくにあたり、その車種特有の修理作業について取上げてまいります。
アウタドアオープナの脱着作業
対象車種:BMW 740i(E65)
型 式:HL40
740iのアウタドアオープナ脱着作業の特徴について紹介します。
アウタドアオープナの脱着は、ドアトリムパネルを取外さずに作業できます。今回はドアトリムパ
ネルを取外してドアパネル内側より撮影した写真に基づき、構造・作動を解説しています。
ドアトリムパネル
ねじ込みプラグ箇所
ドアパネル内側
アウタドアオープナ
1.ねじ込みプラグを取外しSSTを使用して、サービスホールよりロックプレートによる固定を解除します。
※今回の作業では、ロングトルクスドライバ(T30)とコネクタツールを使用しています。
ロックプレート
アウタドアオープナ固定部
ロングトルクスドライバ
(T30)
解除方向
①ストップ位置
②押込み位置
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自研センターニュース 2008年 5月号
※先端が鍵状になっている。
コネクタツール
2.ロックプレートの作動を説明します。
アウタドアオープナ固定部
アウタドアオープナ固定部
ドライバ先端
コネクタツール先端
押込み位置
ストップ位置
①ロングトルクスドライバをロックプレート裏側
②①の状態のまま、コネクタツールをロックプ
(ドア外側)に挿入して、ストップ位置での引
レートのピンホールへ取付け、前方へ押込んで
っかかり部を持ち上げます。
固定を解除する。
3.アウタドアオープナを上方へこじってはずし、斜め下方へ引き出します。
アウタドアオープナ
コネクタツール
ロングトルクスドライバ
(指数部/高地公子)
参 考
325iのハンドルホルダの脱着作業
ねじ込みプラグを取外し、ボルトを緩めロックシリンダカバーを取外します。
次にハンドルホルダを後方にスライドさせて、はめ込みを外し、取外します。
スライドさせる際、ドアハンドル照明が干渉するのでドアパネル内に押し入れておく必要があります。
ハンドルホルダ
ドアハンドル照明
ロックシリンダカバー
←:スライド方向
自研センターニュース 2008年 5月号
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Customer Relations Department REPORT
お客様相談室レポート
お客様相談室の近況
当社から発表される技術資料について、お客様のご質問、ご照会が数多く寄せられています。なかで
も指数に関する質問が多く寄せられていますので最近の状況と併せて紹介します。
2.脱着・取替指数関係の相談内容
1.総受付件数
脱着・取替指数についての相談件数571件中の507
2007年度受付件数は年間1454件(月平均121件)
件を作業項目別に分類したものが表1で、2007年統
と昨年より6.6%減っています。その内訳は、
構成比
計では、
「B270」クォータパネル取替、
「B040」ヘッドラ
前年比
①脱着・取替指数関係
571件 ( 39.3%) (△ 14.4%)
ンプAssy脱着または取替、
「B210」
フロントまたはリヤ
②補修塗装指数関係
550件 ( 37.8%) (△6.6%)
ドア取替、
「B290」ボデーロワーバックパネル取替、
③内板骨格修正指数関係
31件 ( 2.1%) (+55.0%)
「B020」
フロントバンパ取替、
「B390」バックドア取替、
④外板板金修正指数関係
24件 ( 1.7%) (+140.0%)
「M040」フロントサスペンション片側脱着・分解・点
⑤指数以外
278件 ( 19.1%)
計1,454件
検・組立・調整に関する相談が多い状況にあります。
(+2.6%)
内容については「作業範囲・条件」に関するもの
(100%) (△ 6.6%)
が最も多く37%占めております。続いて「指数未設
となっており、指数に関するものが81%を占めてい
定の問合せ」18%、
「使い方」14%、
「指数値の内訳」
ます。
12%、
「指数での作業方法」10%となっています。
表1
脱着・取替指数・項目別件数内訳2005年度∼2007年度(507件/571件/総受付件数1454件)
(件数)
60
2005年度
2006年度
50
2007年度
48
45
43
40
30
30
20
10
13
11
22
20
18
15
7
13
10
55 4
4 4 5
5
10
5
8
7
5
20
18
15
4
9
9
7
5
4
16
1211
7
11
6
5
1
0
M010
M040
M050
M060
M230
M250
M255
B010
B020
B040
B100
B110
B140
B170
(作業項目)
(件数)
60
55
54
2005年度
2006年度
2007年度
50
43
42
39
40
36
35
33
31
30
20
20
13
10 11
7
10
12
11
9
14
12
8
6
B210
B216
B230
B240
自研センターニュース 2008年 5月号
12
5
4 4
B260
161615
8
7
B270
B290
B310
B326
M010:クーラコンデンサAssy脱着または取替
M040:フロントサスペンション片側脱着・分解・点検・組立・調整
M050:エンジン・トランスミッション&フロントサスペンションAssy脱着
M060:エンジン・トランスミッション&フロントサスペンションAssy脱着、サスペンション片側分解・点検・組立・調整
M230:インストルメントパネル脱着
M250:リヤサスペンションAssy脱着
M255:リヤサスペンションAssy脱着、片側分解・点検・組立・調整
B010:フロントバンパ脱着
B020:フロントバンパ取替
B040:ヘッドランプAssy脱着または取替
B100:フロントフェンダ脱着
B110:フロントフェンダ取替
B140:ラジエータサポートAssy(左右ラジエータサポートおよびフロントクロスメンバ)取替
B170:ラジエータサポート(Assy)、片側フロントフェンダエプロンAssy、片側フロントサイドメンバAssy取替
18
16
1414
11
9
2
0
19 20
17
B390
B420
5
B430
5
G010
7
G040
(作業項目)
B210:フロントまたはリヤドア取替
B216:スライドドア取替
B230:センタピラーAssy取替
B240:ロッカアウタパネル取替(センタピラー関係あり)
B260:ルーフパネル取替
B270:クォータパネル取替
B290:ボデーロワーバックパネル取替
B310:クォータパネル、ボデーロワーバックパネル取替
B326:リヤフロアパン取替
B390:バックドア取替
B420:リヤバンパ取替
B430:ヘッドライニング脱着
G010:ウインドシールドガラス脱着または取替
G040:バックドアガラス脱着または取替
Customer Reletions Department REPORT
照会、ネオ2(セブン)の操作に関する相談・照
3.補修塗装指数関係の相談内容
補修塗装に関する相談件数をその内容に応じ
会が寄せられています(表4)
。
分類したものが表2です。
塗り数値、付加数値、樹脂バンパ補修塗装指数、
加算基礎数値に関するものが71%を占めました。内
6.相談者の所属する組織を業界別(表5)に分
けてみますと割合は、
訳をみると
「塗り数値」では作業範囲や指数未設定
構成比
について、
「付加数値」ではブース加算や低隠ぺい
①修理工場
性塗色かどうかについて、
「樹脂バンパ補修塗装指
②自動車ディーラー
数」では使い方について、それ以外ではカラーNo.の
③損保、損調関係
塗膜の種類、耐スリ傷塗装かどうかの照会や材料
代についての相談が多数(10%)寄せられています。
表2
2007年度補修塗装指数の内訳(550件/受付件数1454件)
(61.4%) (+3.0%)
65件 ( 4.5%) (△7.1%)
386件
(26.5%) (△16.8%)
④各共済
42件
( 2.9%) (+68.0%)
⑤ソフト会社
27件
( 1.9%) (△51.8%)
⑥その他
41件
( 2.8%) (△45.3%)
となっています。修理工場、共済からの照会が増
塗り数値
28%
その他
29%
893件
前年比
え、損保・損調関係・ソフト会社からの照会が減
っています。
なお表6は業界別に内訳を示しています。
表5
加算基礎数値
11%
付加数値
16%
900
内板骨格
補修塗装指数
4%
樹脂バンパ
12%
893
867
810
2005年度受付件数1409件
2006年度 ″
1557件
2007年度 ″
1454件
800
700
600
4.内板骨格修正指数についての相談内容
内板骨格修正指数の質問、照会は条件・範囲、
使い方に関するものが多く占めています(表3)
。
表3
業界別内訳 2005年度∼2007年度
1000
2007年度内板骨格修正指数の内訳(31件/受付件数1454件)
500
464
400
300
200
100
基本指数
16%
386
375
69 70 65
修理工場
ディーラー
表6
脱着・取替
63 56
20 25 42
0
損保、損調
共済
72 75
27
ソフト会社
41
その他
2007年度業界別分類内訳
塗装
外板板金
内板骨格
その他
その他
ソフト会社
使い方
23%
各共済
条件・範囲
61%
損保、損調
修理工場
5.その他(指数以外)についての相談内容
ディーラー
内訳は車の構造・機能・作業方法・情報につい
0
100
200
300
400
600
700
800
900
1000
てが25%(70件)
、指数の有無・指数テ−ブル購入
以上がお客様相談室で受付けたご相談について
が23%(65件)を占め資料関係、出版物、指数値の
分類・整理した結果です。お客様相談室に寄せら
表4
2007年度その他(指数以外)(278件/受付件数1454件)
指数の有無
14%
指数
テーブル
購入
9%
構調
シリーズ
9%
その他
68%
(189件)
より分り易く、より使い易い指数となるよう努め
その他 12%
車の構造・機能
情報・作業方法他
37%
レバーレート、産廃 4%
る指数作成業務や指数の作業範囲を図を用いて解
説している「構造調査シリーズ」の中にも生かし、
その他の内訳
研修について 2%
HP、インフォメーション 4%
れた照会質問事項は、当社の主要業務の一つであ
て参りますので今後とも、ご理解とご支援をお願
い致します。
資料、データ、リスト
8%
ニュース以外の出版物 5%
JKCニュース 4%
寸法図5%
数値の紹介 9%
ネオ2操作 10%
(お客様相談室/船越繁子)
自研センターニュース 2008年 5月号
19
http://www.jikencenter.co.jp/
自研センターニュース 2008.5(通巻392号)平成20年5月15日発行 昭和51年5月27日 第三種郵便物認可 発行人/鈴木 稔 編集人/小林吉文 C 発行所/株式会社自研センター 〒272-0001 千葉県市川市二俣678-28 Tel(047)328-9111(代表) Fax(047)327-6737
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