MEET@KORTRIJK バスワールド2015の会場から 奇数年10月にベルギー・コルトラ イクで開催されるバスワールドは 世界最大のバス専門ショーだ。主 催者によれば今回は36カ国411社が 出展,世界118カ国から 3 万4,932 人が来場した。この数は前回を 9 %上回り,出展者数共に過去最大 規模になった。本誌では 2 回にわ たって会場の新型バスをご紹介す るが,今回は電気バスなど“次世 代バス”を取り上げる。 65 量産電気バスのトップラ ン ナ ー のBYDは 中 国 に 本社を置き,地元深圳を 皮切りに販売台数を伸ば している.2010年からヨ ーロッパ各地で実用走行 を 重 ね, 2013年 に は オ ラ ンダに初輸出した.今回 は連節型と 2 階建ての電 気バスを出品,どちらも バスワールドが初公開の 場になる.後者は 2 年間 の開発期間を経てロンド ンから最初のロット57台 の受注に成功した.バス ワールド会場にはロンド ントランスポートの路面 交通ディレクターが出席, 電気バスへの期待感を熱 く語った.ボデーはアレ キサンダーデニスの担当. 下は屋外でEbusco(左) と並ぶ試乗車BYDのK9 BYDと と も に バ ス ワ ー ルドやUITP(国際公共 交通連合)のEXPOなど では常連のEbuscoはオ ランダの電気駆動,制御 技術メーカー.ボデーは 中国の広通客車が担当す るが,デザイン・仕様は ヨーロッパ標準にしてい る.プロトタイプは前中 2 扉のLE(ローエントリ ー,写真上)だったが,バ ッテリー配置を改良して フルフラット 3 扉を実現 した 66 BUSRAMA No.153 SILEO連節電気バス 全 長10.7m,12mの単車に続 い て2015年 のUITPで 発 表された車両で“ドイツ 製”を謳うがボデーはト ルコのボザンカヤ製.リ チウムイオン電池を屋根 上搭載し,リヤアクスル はZF製AVE130.制動エ ネルギー回生を行い一充 電あたり最大300㎞走れ るという ➡ユートンE12電気バス 2005年にバスワールドに 出展以来,急速に輸出実 績を伸ばしている同社が 初公開した電気バス.型 式 はZK6128BEVG. バ ッ テ リ ー 容 量 は295kW hで 1 ㎞あたりの電力消 費は 1 kWh以下という ボルボバス7900EV ボルボバスがディーゼル バスからハイブリッドま たは電気バスに置き換え を急ぐ背景には騒音にも 課税しようというスウェ ーデンの政策もあるが, UITP2015で 初公開した 全長10.7mのフルエレク トリックに続いて量産シ ティバス7900を電気バス にした.給電装置は車両 側でなく施設側から下降 する新しいタイプ ➡VDLシ テ ィ ア エ レ ク トリック UITPではド イツのケルンに納入され る連節型電気バスを初公 開したが,写真は12mシ ティア.ドライブライン はシーメンスのELFA型, バ ッ テ リ ー 容 量 は122 kWh.ドアも電動だ 67 イリザールi2e UITP 2015で初公開され たスペイン・イリザールの電気バス.同 社はバスに必要な空調や組立技術,都市 交通計画とスマートソリューションの立 案,電子制御技術,そしてR&D部門を担 当する各社をグループ化しており,この ような電気バスも完成する.電圧600~ 650V・容量376kWhのナトリウムニッケ ル電池と125Vのスーパーキャパシタを 搭載し,一充電200~250㎞走行を謳う. 既にバルセロナなど 2 都市で 3 台を稼働 中.開発の背景には本誌でもご紹介した ZeEUS(Zero Emission Urban Bus Systems)プロジェクトがある.このプ ロジェクトはECとUITPが推進し,40の 企業が参加していて,スタート開始から 42カ月で,将来望ましいソリューション を選択するべく主要 8 都市を舞台に実用 評価を行う.ヨーロッパの電気バス普及 の大きな動きとして見逃せない ドイツで長い歴史を誇るZiehl-Abegg社 のZAホイールを装備するVDLシティア のデモンストレーター.ZA社はエクス ターナルローターモーターを手がけてき た.このモーターはエレベーター用モー ターと基本的には同じで,ギヤがなく永 久磁石でシンクロするインホイールモー ターである.広幅シングルタイヤの装着 を前提にしており,ドライブアクスルモ ジュールも製品化している.シリーズハ イブリッド車とすればディーゼル車比20 ~30%の燃費改善ができ,もちろん電気 バスにも対応すると同時に,後輪間通路 幅の確保にも貢献する スカニアシティワイドLF・バイオガス 日本のバス市場はディーゼルエンジンが 大勢を占め,ディーゼル-電気ハイブリ ッドとCNGが設定されているに過ぎな いが,スカニアは国際市場を前提に様々 な燃料とそれに対応するエンジンを供給 している.ノンステップバスのシティワ イドをベースにしたバイオガス車は市街 地など行動範囲が決められた都市バス向 けで,おそらく将来も枯渇することがな いゴミや汚水から精製できる再生可能エ ネルギーという位置づけだ.オットーサ イクルによるエンジンの排出ガスレベル はユーロⅤ・EEVレベルという 68 BUSRAMA No.153 メルセデス・ベンツシターロNGT ヨー ロッパのシティバスのスタンダードと目 されるシターロは12m車,短尺車,長尺 車,連節車,長尺連節車とバリエーショ ンを拡大しているが,ここ数年,電気バ スやハイブリッドバス,燃料電池バスな どの新技術は沈黙を保っている.今回の バスワールドで初公開したのはシターロ の天然ガス車. 搭載されるM447hLAG型 エンジンは排気量7.7ℓで重量は747㎏. シティバス用ガスエンジンでは最軽量か つ高性能を謳う.冬季の北欧や夏季のシ ェラネバダ(スペイン)でテスト走行を 重ねて信頼性を確保した.サービスイン ターバルは 6 万㎞という.これを機にラ イト回りのデザインを小変更した ボルボバス7900ハイブリッド 2013年の UITPでデビューしたボルボの連節ハイ ブリッドバスも販売実績を増やしている. 今回のショーでは7900電気バスが最大の 注目を集めたが,ハイブリッドも 5ℓの 小排気量エンジンで154人乗りの連節バ スを走らせる点では注目に値する.ディ ーゼル車に比べて30%の燃料と排出ガス 削減に貢献する.7900ハイブリッドバス は既に1,000台を販売しているという ベルギーのバンホールは多彩なバリエー ションから構成される観光系とシティバ スをラインアップするが,バスワールド は地元のホストとして毎回大きなスペー スに多くの台数を展示する.65ページ上 は同社の展示ブースだが,会談スペース が大きいのも特徴だ.また今回は 3 車体 連節バスのエクスキシティを 2 台,デモ 車として持ち込み,一部コルトライク駅 と会場の送迎車として運行した(65ペー ジ中).朝は通学生で混雑を極める会場 へのアクセスに売り込みたい様子.写真 は屋外に用意されたデモンストレーター でA330電気バス 69 バスワールド2015 スポットライト 天龍工業,バスワールドに初出展! バスワールドには日本からの見学者も少なくな いが,その来場者に強い印象を与えたのは日本の バス用シートのトップメーカー,天龍工業が出展 したことではないだろうか。同社は航空機用や鉄 道用に豊富な実績があり,海外のシートメーカー とも交流を持つ国際企業だが,バスワールドで世 界からの来場者の評価を得,また世界のバスのト レンドを感じたいと,電動シートや回転シート, 表皮を日本風にアレンジしたものなど,観光系シ ートを持ち込んだ。バス用シートのエキスパート に加え,社内公募のスタッフを含む 7 名のメンバ ーも国際舞台を体験し,多くを吸収して帰国した ようであり,それが最大の成果なのだと思う。 バンホール,日本向け 2 階建てバスを発表 今回のバスワールドは報道関係者向けのプレ スデーが一般公開に先立ち 2 日間設定されたが, そのプログラムは朝 9 時から夕方まで,30分刻 みで28社を数えた。その中で,地元バンホール は社長自ら,企業のエポックメーキングな話題 として日本向けの 2 階建て観光車TXアストロ メガについて紹介された。日本人にはよく親し まれた黄色いボデーの 2 階建てバスにはスカニ アエンジンが搭載されるようだ。出荷台数は10 台,2016年春の登場が予定されている。 日本国内では 2 階建てバスに根強い人気があ るものの,エアロキングの生産中止から既に約 5 年が経過し,稼働中の車両の代替は業界の大 きな関心だった。バンホール社としては,以前 購入された車両の追加受注と受け止めている様 子だが,日本の 2 階建てバスの市場規模や更新 時期はバスラマの誌面を通じて同社には伝わっ ており,さらなる受注に期待を寄せているよう である。 72 BUSRAMA No.153 こちらはヨーロッパ仕様のバンホールTDXアストロメガ カストロシュア VDL フートゥラ イベコバス ﹁X顔﹂のバスが増えている? 現在の国産バスの﹁顔﹂は,走行に必要 例も少なくない。だから日本の場合は乗用 た寸法で立体感を見せるような外板パーツ なヘッドライトや登録番号,十分な視界, 車には及ばない感もあるバスのデザインも, の分割を考えるものが増えてきた。上段左 それにシティバスなら利用者にとって必要 諸外国では様々な試みや傾向が見られる。 のようなコンサバティブなものでもヘッド な行先表示などが秩序正しく並んでいて, このページにはバスワールドの会場で見た ランプを吊り目にするのが最初の発想で, 破たんはないが楽しさもない。そもそもバ 5 台の最新型バスの顔をご紹介するが, それにバランスをとる関係でヘッドランプ スは直方体の箱であり,デザインの自由度 ﹁X﹂型の顔が増えてきているように感じる。 より下のパーツが﹁ハ﹂の字に広がり,徐々 そのものがないと言われるかもしれない。 空気抵抗の少なそうなスタイルやアイキ にX型を構成していく。最近の国産乗用車 この点,欧米はメーカーの数が多いことも ャッチが高いデザインは観光系車両の大き でもハイブリッド車を中心にX型の顔がエ あるが,シティバスには上に掲げた機能面 な商品力だが,シティバスにはまず安全や スカレートしているが,個人的には美しさ の要求に加えて,都市の景観の一部といっ 機能が形に表れる上,室内容積確保のニー を感じない。バスの場合は,あまりアグレ た視点でバスのスタイルにも様々なニーズ ズから,ともすれば平面的でシンプルなも ッシブにならず,ジェントリーで共感でき が寄せられる。そこで多くのバスメーカー のが求められがちかもしれない。イリビュ るくらいがちょうどいいだろうか。微笑ん がデザインを競うのだが,実はバスメーカ スの汎用観光/スクールバス向けのスコア でいるような表情にした小型バスも登場す ーやバス事業者からの要望に応え得るデザ ラーはその典型的だったが,さすがにシン るくらいだから,過激に見えるバスは日本 イン会社が存在していてそこが腕を振るう プル過ぎたか,近年のシティバスは限られ 人には好かれないのかもしれない。 (W) BYDミディバス Ekova 73
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