OPEN EYE Vol.17 - RED HAT OPENEYE

Success story for your business
Red Hat K.K. EDITORIAL 2014
OPEN EYE
オープンソースの 新 時 代 を 築く、サクセスストーリー
17
vol.
2014 September
INDEX
トップインタビュー
日産自動車株式会社 アライアンス グローバルVP
常務執行役員 CIO グローバルコーポレート IS/IT
ユーザー事例 Success Story
行徳セルソ氏
ロシュ、Red Hat JBoss Middlewareで
医薬アプリケーションを迅速に提供
○ レッドハット最新レポート
日産自動車株式会社
日産の車両生産計画の最適化を支える、
Red Hat JBoss BRMS
Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 5登場!
エンタープライズにおける推進に向けて、
OpenStackの簡素化と機能強化を実現
国内最大級のOSSイベント
「レッドハット・フォーラム 2014」開催!
世界で勝つオープンイノベーション
東京開催:2014 年 10月10日
(金)
ウェスティンホテル東京 大阪開催:2014 年 10月8日
(水)ザ・リッツカールトン大阪
ご登録はこちらから ▶▶ http://redhatforum2014.jp
世界標準のIT環境構築から、ビジネスに貢献する
ユーザー事例
日産自動車でITが担う役割は、
Success Story 「攻めのIT」へ。
レッドハット製品とともに進化し続ける
日産自動車
トップインタビュー
日産自動車株式会社 アライアンス グローバルVP
常務執行役員 CIO グローバルコーポレート IS/IT
日産自動車株式会社では、2011 年より6 か年計画(2011-2016 年)
の中期経営計画
行徳 セルソ 氏
JBoss EAP)
です。また同時に、 ―日産自動車の CIOに就任さ
戦 略 的 か つ 選 択 的 な アウト
れて満 10 年、今年で 11 年目を
「NISSAN POWER 88」
をスタートさせ、
グローバルにおける市場占有率 8%、営業利益
ソーシング体制の確立にも取
迎えられました。日産の IT 部門
率8%の達成を目標に掲げている。
これを受けたIT戦略が、
フランス語で スピード を意
り組 みました。つまり、B E S T
を先導されてきた過去 10 年間
Program では世界標準となる
を振り返り、さらにこの先の 10
IT 環境の整備を行ったという
年を見据えた時、日産の ITとし
ことです。
て、どんな視点や取り組みが必
これに対して今回のVITESSE
要だとお考えでしょうか。
味する
「VITESSE」
だ。同社の取り組みにおいて、ITはどのような役割を担い、
今後どのよ
うな変貌を遂げるのか。
アライアンス グローバルVP 常務執行役員 CIO グローバルコー
ポレート IS/ITの行徳セルソ氏に伺った。
は、NISSAN POWER 88 の企
―日産自動車では「NISSAN
「IT の役割という意味では、 画段階から我々IS/IT(=日産
「 私 が 入 社した 2 0 0 4 年 当
POWER 88」を支えるIT 戦略と
変化というよりも、進化してい
自動車の IT 部門)も参加して
時、カルロス・ゴーン CEO から
して
「VITESSE」
を打ち出してい
るといったほうが正しいでしょ
IT 戦略を策定したもので、 IT
言われたのは、IS/IT が何をし
ますが、その土台となるIT 部門
う。BEST Programで目指した
がビジネスにいかに貢献する
ているのかよくわからない、投
の取り組みとして、2005 年から
のは、ITアーキテクチャーの標
か に主眼を置いたものとなっ
資したコストに対してどのよう
実施した
「BEST Program」があ
準化と最適化をグローバルレ
ています。いわば守りのITから
なリターンが生まれているの
ります。現在の VITESSEも後半
ベルで図ることでした。そのた
攻めのIT に転じたもので、ま
かが不明だ、ということです。
期に入りましたが、この間の IT
め に採 用したの が R e d H a t
さに VITESSE の頭の VとI、す
複数の IT プロジェクトが動い
の役割の変化、あるいは新たに
Enterprise Linux
(以下RHEL)
で
なわち Value Innovat ion に
ているが、効果についてはあま
求められるようになった役割に
あり、Red Hat JBoss Enterprise
フォーカスした IT 戦略といえ
り聞かないし、手戻りも増えて
ついて、
お聞かせください。
Application Platform(以下
ます」。
いる。端的に言えば、IS/IT に
日産のグローバルITにベネフィットをもたらす
レッドハット製品を活用して、
ビジネスに貢献する
Success story for your business
対する満足度が低かったので
採用しました。最終的にIT は、
す。しかし逆の見方をすれば、 ビジネス貢献のために存在し
IS/IT がすべきことは実に明確
ま す 。こ の ミ ッ シ ョ ン は 、
であったということです。アグ
VITESSE 後の 2016 年以降も、
レッシブにIT環境を変え、目に
そう大きく変わることはないと
見える形で成果を示すこと。そ
考えています」。
のためには、多少のリスクも厭
わない。
これがBEST Program
―最近ではクラウドやビッグ
のスタートでした。
データなど、ビジネスを強力に
そこで先にも触れた通り、IT
支援するITソリューションが大
アーキテクチャーの標準化と最
きな注目を浴びていますが、こ
適化や、アウトソーシング体制
うした新しいテクノロジーを採
の整備などに取り組みました。 り込んでいくことについては、ど
事前にベンチマークを行い、そ
のようにお考えですか。
の時点での各要件のレベルを
決することはできません。そこ
もたらしてくれたと言えます。
正しく把握した上で、それらを
「今後は、我々が 何を管理
で は や はり、複 数 のクラウド
また、一般的にOSSの導入効
いかに向上させていくかという
すべきか という対象が大きく
サービスが混在するという形
果としては、まず最初に
「コスト
戦略を立てたのです。やるべき
変わってくると思います。我々
が 想 定 され ま す 。そ の 時 に
削減」が挙げられますが、実は
IS/IT が果たすべき役割は、複
当初はさほど意識していません
数のクラウドサービスのデータ
でした。しかし、レッドハット製
今後IS/ITが考えていくべき課題は、
サービスをうまくマネージし、
データを統合していくこと
を高い精度で、より迅速に統
品の採用を展開していくなか
合し、ビジネス側に提供するこ
で、BEST Program の 5 年間の
とです。それがまさにビジネス
トータルコストは結果的に大幅
貢献に直結することになる。
に低減しました。コスト効果と
サービスをうまくマネージ
しても、十分に獲得できたとい
すること、そしてデータを統合
うことです。
ことをまず明確に定義し、より
すること。我々自身 が 要 素 技
VITESSEで採用したビジネス
ブラッシュアップさせていくた
術を使って何かを開発すると
ルール管理システムの JBoss
めの PDCA サイクルを回すとい
いうよりも、それらを使って提
BRMS は、IT インフラとしての
うのが、BEST Programでの取
供されるさまざまなサービス
RHELやJBoss EAPに対して、日
り組みでした。
を、ビジネス側のメリットに沿
産独自の強みを加速していくた
このBEST Programをベース
うように、いかに取捨選択して
めの ITソリューションだと言え
として初めて、現在の VITESSE
いくか、という取り組みがより
ます。機能面で高い品質を提供
が成り立ちます。VITESSE で
重要になると思います」。
してくれることはもちろん、5 年
は、さらなるシステムのシンプ
間の初期投資とメンテナンスコ
ル化と生産性向上を追求して
自身が、クラウドや今後登場し
―先のお話にも出たように、 ストにおいて、候補に挙がって
ITコストの最適化を図り、そし
てくる新しいテクノロジーを採
BEST Programへの取り組み時
いた他の商用製品と比べて約
てビジネス価値の最大化を支
用して新たなシステムを開発
にはRHELやJBoss EAPを、また
半分という劇的なコストメリット
援するための 攻めの IT を推
していくというよりも、 あらゆ
現在の VITESSE では JBoss
も期待できます。さらに今後、グ
BRMS をご採用いただきまし
ローバルで工場を新設する際
し進めていく。その一環として、 るIT サービスをマネージする
2013 年にはブラジル新工場
という形 態 に移 行していく必
た。御社の IT 戦略の中で、レッ
に導入するルールエンジンとし
の 立ち上 げ にあたり、レッド
要があると考えています。
ドハット製品はどのように貢献
ても、ベンダーロックインの心
できているでしょうか。
ハットのビジネスルール管理
たとえば、ただ 1 つのクラウ
システムであるRed Hat JBoss
ドソリューションで、日産自動
BRMS( 以下 JBoss BRMS)を
車全体が抱えている課題を解
配がないので横展開しやすい。
レッドハット製 品 は日産 のグ
「BEST Program の時にレッ
ローバル IT に対して、さまざま
ドハット製品を採用した最大の
なベネフィットをもたらしてくれ
理由は、ベンダーロックインか
ています」
。
らの脱却を図るためでした。当
時 は 複 数 のメーカー の サ ー
―RHEL や JBoss EAP が日産
バー製品を使っていたのです
自動車としては初めてのOSS 製
が、RHEL や JBoss EAPといっ
品だったとのことですが、当時、
た OSS 製品を採用することで、 社内での OSS への評価はどの
ハードウェアのコモディティ化
ようなものだったのでしょうか。
を図ることができ、メーカーに
依存することなく、仮想化など
「初めての試みなので、もち
も実現できるようになりました。 ろん懸念はありました。ただ先
グローバル共通の IT インフラ
にも述べたように、当時のIS/IT
を構築する上で、レッドハット
にはアグレッシブにIT環境を変
製品は極めて大きなメリットを
えていくことが求められていま
レッドハット製品は、グローバル規模の横展開など、当
初想定していたメリット以上の効果をもたらしてくれた
と笑顔の行徳氏。一緒に写るのは、世界最速の加速性
能を達成したハイブリッド車「新生 SKYLINE」
(日産本社
ショールームにて)
2 OPEN EYE
Red Hat K.K. EDITORIAL 2014
した。まずはやってみなければ
ました。レッドハットの優秀な
ライアンスとして統一していく
Celso Guiotoko
始まらない。PoC(=概念実証) エ ン ジ ニ ア の 人 た ち か ら 、 という戦略を打ち出しました。
からスタートし、そこにレッド
IS/IT に対してスキルトランス
VITESSE 後半の投資金額に
ハットの優秀なエンジニアの方
ファーをしてもらえる点も大き
は、このコンバージェンスファ
たちが参加してくれたことで、当
なメリットです」。
ンクションをサポートするため
初抱いていた懸念が払拭され、
のITコストも含まれているとい
スムーズに導入プロジェクトを
―VITESSEもいよいよ後半期
うことです。
進めることができました。
に入りました。
2016年までの残り
さらにアライアンスという点
また当時の IS/IT は、そのス
3 年間で、さらにドライブをかけ
では 、独ダイムラーとのオペ
キルを IT ベンダーや外部パー
ていきたいと考えている取り組
レーションレベルでの協業も
トナーに頼っていた部分が大
みがあればお聞かせください。
重要な取り組みで、これを支え
きかったのですが、レッドハッ
トのエンジニアの方たちと一緒
る ITプロジェクトも増えていく
「今後、日産自動車が目指す
でしょう」。
に仕事をしていくうちに我々の
1 つ の 姿 が デジタルカン パ
スタッフのスキルアップにも繋
ニー です。業務プロセスのデ
―現在、具体的に導入を検討
がり、ナレッジが蓄積されてき
ジタル化やデジタルマーケティ
されているレッドハット製品は
ています。この点でも、レッド
ングを推進し、さらなる効率化
ありますでしょうか。
ハットには感謝しています」。
やビジネス価値の獲得に貢献
していきたいと考えています。 「IS/IT の技術部隊が現在、
そして、これらを実現する上で
日産/ルノーの次世代共通プ
後半からは、OSS 活用のための
重要な鍵となるIT がクラウドで
ラットフォームの要件定義と設
社内組織であるCoE(Center of
あり、
ビッグデータです。
計に入っていますが、そこで採
Excellence)が立ち上がり、各
VITESSEの前半には15億円
用を検 討しているのがレッド
種開発プロジェクトに対する技
の 投 資 を 行 い 、5 6 億 円 のリ
ハット版の OpenStack である
―その後、BEST Program の
術支援やナレッジセンターとし
ターンを 得ることができまし 「Red Hat Enterprise Linux
として、物理データベースを仮
とクラウド、あるいはパブリッ
ての機能も提供しています。ここ
た。これを、後半では15倍以上
OpenStack Platform」です。 想的に統合することができる
ククラウドとプライベートクラ
でもレッドハットのコンサルティ
となる 236 億円の投資に対し
新しい共通プラットフォームに
ウドといった混 在 環 境 がごく
ングサービスをご利用いただい
て 455 億円のリターンを想定
ていますが、
この点はどのように
しています」。
評価されているでしょうか。
―VITESSE 後半の投資は、ク
「私たちはプラットフォームと
ラウド領域やビッグデータに関
アプリケーションの 2 つの領域
するものが主になるということ
で、2 4 時 間 3 6 5 日対 応 のサ
でしょうか。
データ仮想化製品の Red Hat
今後想定されるハイブリッド環境を
統合していくうえで、
レッドハットからの
情報提供やアドバイスは必要不可欠
ポートを利用していますが、何
かわからないことがあればそ
「それももちろんありますが、 このソリューションをどう使う
JBoss Data Virtualizationも
当たり前になってきます。その
の都度迅速に対応してくれる
先の金額には業務プロセスの
べきかという検証を、今まさに
検討しています」。
際に課題となるのは、複数環
ので、サービスレベルは極めて
変革を支援する IT 投資も含ま
進めているところです。
高いと思います。
れています。
また今後、ビッグデータ活用
―最後に、レッドハットに対す
キュリティの担保や効率的な
また今回の JBoss BRMS の
日産は今年、仏ルノーとアラ
の重要度がさらに大きくなりま
るご要望、あるいはご期待をお
運用を含めどのように実現す
導入時でいえば、どんな使い
イアンスを組んで 15 年目を迎
すが、膨大な量のデータを効
聞かせください。
るかということです。
レッドハッ
方をすべきか、どのような設定
えますが、今後ルノーとのコン
果的に活用していくためには、
が最適か、あるいはこんな使い
バージェンスファンクション、 データインテグレーションの実
「日産では現在、クラウドソ
となる機能やアドバイスを提
方を考えているがどう思うかな
つまり開発/生産/物流/購
現も重要な取り組みの 1 つで
リューションの導入を検討して
供してくれることを期待してい
ど、多くのアドバイスをもらい
買/人事といった各機能をア
す。そのためのソリューション
いますが、今後はオンプレミス
ます」。
境のインテグレーションを、セ
トには、そのような場面で必要
▼ VITESSE
Power 88
Cost
Leadership
Business
Expansion
Zero Emission
leadership
Enhancing
Quality
Sales Power
Brand Power
Value
Innovation
One PLM
Model Profitability / Product Costing
Business Expansion
Value
Innovation
OaO Improvement
Sales Power for Net Revenue
Technology
Simplification
Enhancing Quality
Service
Excellence
Support Function Global Standardization
Technology
Simplification
Service
Excellence
Application Convergence
IT Consolidation
RNTBCI Utilization
Global System Lifecycle Management
OPEN EYE 3
Success story for your business
ユーザー事例
Success Story
日産自動車
ビジネスルールエンジンの導入
日産の車両生産計画の最適化を支える、
Red Hat JBoss BRMS。
ビジネスの要求にも、迅速に対応
日産自動車は2014年4月、
ブラジルのリオデジャネイロ州レゼンデに年間の生産車両台数20万台、
エンジン20 万基の生産能力を持つ新工場を開設した。2016 年までにブラジルでの市場シェア5%を
目指すもので、2011年にスタートした5ヵ年の中期経営計画「NISSAN POWER 88」
で掲げたグローバ
ルでの市場占有率 8%達成を実現するための取り組みの一環となるものだ。同社では新工場の開設
にあたり、これまで国内で利用してきたシステムに替えて新たなビジネスルールエンジンの導入を決
定、そこで採用されたのがレッドハットの Red Hat JBoss BRMS だ。日産自動車株式会社 グローバル
IT本部エンタープライズアーキテクチャー部 榊原幸一郎氏に、導入の背景とその効果を聞いた。
背景
的に問題はないものの、将来的なグローバル展開を
パッケージを採用することで今後、他国への横展開
ブラジル新工場の開設にあたり、
販社へ最適な分配を行う仕組みが必要
考えるとベースになり得るものではありませんでした。
もしやすくなります。ただし生産計画の立案や見直
NISSAN POWER 88を支えるIT 戦略「VITESSE」
とし
し、最適台数の配置を行う部分は、日産生産方式の
て考えるべきことは、グローバル標準を目指して、い
心臓部に相当するもので、パッケージではその機能
日産自動車が今回レッドハット製品によって実現
かにオープン化を図るか ということであり、世界標準
を持ち合わせていません。ここにJBoss BRMSを適用
したシステムは、
ブラジル国内に約160社ある同社の
を見据えたコアシステムが必要だったのです」。
することにしたのです」。
販売代理店からの受注オーダーを受け付け、手元に
同社にとって、
このオープン化は極めて大きなチャレ
在庫があれば引き当てを行い、在庫がなければ工場
ンジとなるもので、榊原氏は
「文字通り、ゼロからに近
の車両生産計画に反映させるというものだ。状況の
い状態でソリューションを考えた」
と当時を振り返る。
変化に応じて、生産計画の見直しも行う。
BRMSを選んだ決め手
商用製品に比べて5年間の総コストは約半分、
OSSとしての成長性やフレキシビリティも魅力
「メインフレームのソースコードには細かい条件が
ただしブラジルでは、消費者が車を購入する際の
ぎっしりと組み込まれていて、今後の並行展開を考え
スタイルが日本とはやや異なる。日本では通常、消費
た時に最大のボトルネックでした。そこで最優先した
日産では製品選定に当たってJBoss BRMSと商用
者は自分が欲しい仕様の車を Web 上もしくはショー
のが、新しいシステムを いかにフレキシブルに作る
製品の2つに絞り込み、最終的にJBoss BRMSを選択
ルームに足を運んで、時間をかけて検討し、欲しい車
か ということでした」。
した。
その理由を榊原氏は次のように説明する。
が在庫になくても生産待ちをするケースが多い。一
「我々が求めていた必須機能は共に満たしていま
方ブラジルや北米などでは、販売店に展示された車
した。決定的な違いが出たのはコストパフォーマンス
の中から消費者が欲しい車を選ぶスタイルが一般的
システム要件
必要なのは、複雑な機能要件を満たして
短期間での立上げが可能な仕組み
とフレキシビリティ、オープン性、そして将来の成長性
う方式を採っているケースが多い。
今回、日産がブラジル新工場で導入したシステム
時には、エンジンや部品の供給量の制約や必要な部
「新工場の立上げ時に目指したのは、受注管理、生
は、SCM 関連の基幹業務システムの構築にはパッ
品が納入されるまでのリードタイムなどさまざまな制
で、そのためメーカーは各販社の販売力を加味して、
売ってほしい車種や台数を各販社に 分配する とい
ですね」。
まず機能面について、例えば生産計画を立案する
産計画の最適化、顧客への情報開示を同時に実現す
ケージ製品を利用し、より複雑な機能が要求される
約条件を加味し、その上で営業サイドの要望に沿っ
ること。日産としては一つの大きなチャレンジで、この
Order to Delivery( =受注から納車まで)の領域に
た計画が要求される。その際に、RETEアルゴリズム
うち生産計画の最適化のためにはビジネスルールエ
JBoss BRMSを採用している。前者には、受注管理や
を搭載したJBoss BRMSには大きな強みがあり、その
ンジンが必要でした」
と榊原氏は話す。
車両ステータス情報の開示といった機能が含まれ、
効果をPoCで検証した。
後者には、生産制約を加味した生産計画の立案、販
次に、今後 5 年間のトータルコストを算出したとこ
社に対する最適台数の配置、さらには生産待ちオー
ろ、JBoss BRMS は商用製品に比べて実に約半分で
求めたのはグローバル標準のコアシステム、
いかにフレキシブルに作るか が最優先課題
ダーを考慮した生産計画の見直しを行うための機能
済むことが明らかになった。
生産計画の最適化を図るシステムは、日本で利用
課題
が求められる。これは同社にとってまさに 競争力の
「VITESSEでは、
システムのシンプル化によるITコスト
源泉 となるものだ。
の最適化も大きな目標の1つですが、この点において
「工場開設に際しては、システムのデリバリース
JBoss BRMSは非常に魅力的なソリューションでした」
。
していたものがあり、当初はその流用を考えていたと
ピードを上げる必要がありました。そこで、パッケージ
さらに今後のグローバル展開を考えた時にも、OSS
いう。
とJBoss BRMS を中心とするスクラッチ開発のミック
であるJBoss BRMSには大きなメリットがあった。
「しかしそれはメインフレームで稼働しており、機能
スソリューションに決めました。基幹系については、
「コミュニティの活動や利用企業の増加によって機
ビジネスルールエンジンの導入の流れ
01
背景
02
課題
03
システム要件
04
BRMSを選んだ決め手
ブラジル新工場の開設にあ
たり、販社へ最適な分配を行
う仕組みが必要
グローバル標準のコアシステ
ムは いかにフレキシブルに
作るか が最優先
必要なのは複雑な機能要件
を満たし、短期間での立ち上
げが可能な仕組み
商用製品に比べ5 年間の総コ
ストは約半分、OSS の成長性
や柔軟性も魅力
・販社の販売力を加味して、販売台
数を分配する
・車両生産計画最適化にはビジネス
ルールエンジンが必要
・既存システムは世界標準のベース
にはなり得ない
・システムのオープン化を図ることが
求められた
・システムのデリバリースピードを上
げる必要があった
・パッケージとスクラッチ開発のミッ
クスソリューションを採用
・JBoss BRMSのRETEアルゴリズムを
PoCで検証
・OSS はコミュニティ活動や利用企業
の増加で進化していく
4 OPEN EYE
Red Hat K.K. EDITORIAL 2014
能はどんどん進化していきます。そのスピードも商用
地スタッフとコミュニケーションを図る際に可視化し
製品に比べてはるかに速い。またOSSなので小さく始
た業務プロセスでうまく話を進めることができる。こ
めて、軌道修正をしやすいというフレキシビリティも
れもまた大きなメリットです」。
ある。オープン化やグローバル化が容易なことは、大
日産では今回、生産計画最適化エンジンに関わる
きな武器になります」。
全業務プロセスの約 70%をJBoss BRMSでカバーし
実際の導入プロジェクトは 2012 年 11 月に始まり、
たという。ちなみに残り30%はマスターの作成や
2013 年 10 月に生産計画立案機能を先行カットオー
データ抽出を行う部分のため「ルールエンジンとして
バーした。
はカバーする必要のない領域」
とのことだ。
日産自動車株式会社
グローバルIT本部
エンタープライズ
アーキテクチャー部
アシスタントマネージャー
榊原 幸一郎
BRMSを導入したメリット1
BRMSを導入したメリット3
他国での導入時に比べて導入期間を
5ヵ月短縮、
生産性も200%向上を実現
レッドハットのアドバイスによって
従来の10倍以上のパフォーマンスを達成
氏
いと榊原氏は強調する。
榊原氏は、JBoss BRMSの採用によって得られた最
日々刻々とオーダーが変化する生産現場におい
「処理時間を短縮できれば、突発の要求により、再
大のビジネスメリットはスピードだと強調する。
て、迅速かつ柔軟な生産計画の見直しができるとい
処理が必要になったケースにおいてもリカバリーに余
「以前 Asia 向けに同領域の仕組みを構築した時に
うことは、
システムに求められる最重要要件の1つだ。
裕が生まれ、結果的には販売機会の損失回避等、
ビジ
は、導入までに16ヵ月間かかったのですが、今回は
「ビジネスルールエンジンの利用を考えた時の大き
ネスリスクの低減にも繋がっています」
。
11ヵ月、最初の機能をリリースするまでは約 9ヵ月で
な懸念事項が、パフォーマンスでした。この点について
済みました。特に今回はパッケージとJBoss BRMSを
は先に述べたPoCで検証を行ったのですが、当初は1
利用したスクラッチ開発のミックスソリューションと
回の処理に約6時間半もの時間がかかっていました」
。
いう難しさがありましたが、基本的なデータ処理を行
日産がこの処理の許容時間として設定していたの
う部分とビジネスルールを処理する部分とをうまく切
は約 10 分。日本で 3ヵ月分の計画を処理する際に要
り離して開発を進めたことで、工場の早期立上げに
していた時間だ。そこで同社はこの目標値に向けて
日産では現在、仏ルノーとアライアンスレベルでの
貢献することができました。生産性も以前と比較して
パフォーマンスのチューニングを開始したが、その際
次世代共通プラットフォームの構築に取り組んでいる。
約200%UPと大幅に向上しています」。
に大きな助けとなったのが、レッドハットからのアド
「今まさに導入を進めている段階で、今年の 10 月
参考までに今回、同社は日本に開発拠点を置き、イ
バイスだったという。
にはリリースする予定です。また、将来的には、ハイブ
ンドのオフショアベンダーを活用して、
ブラジルの現地
「JBoss BRMS に投入する1 回当たりのデータ件数
リッドクラウドを実現する為にもOpenStack の導入も
スタッフと会話をしながら進めるという体制を採った。
が、パフォーマンスに大きく関係するということを教
視野に入れています」。
そこで生産性を高めるために、チケットドリブンディベ
えてもらいました。そして最適な件数についてはレッ
また同社は現在、日産のビジネス戦略に IT 側とし
ロップメント
(チケット駆動開発)
という手法を採用。
ドハット側で検討し、時間短縮を見込める提案をも
て応えていくために必要となるアプリケーションの
Web上で情報共有のためのチケットを発行し、全員が
らったことで、現在ブラジル工場では、8ヵ月分の計画
ロードマップ作成を加速させている。
そのチケットを見ながら状況を把握して、コミュニケー
を約 2 分で処理することができています。実質的には
「そのためにはアプリケーション自体のロードマッ
ションを採るといった工夫も凝らしたとのことだ。
日本の 10 倍以上のスピードでシステムを提供するこ
プと共に、それを支えるプラットフォームビューでの
とに成功した」。
製品ロードマップの情報も当然必要です。レッドハッ
また、上記以外にも、車両とオーダーの引き当て最
トには、こうした各領域での情報、さらに言えばコン
適化処理も短時間化に成功した。処理時間の短縮
ポーネントレベルでのきめ細かい情報提供を期待し
BRMSを導入したメリット2
ブラックボックスだった業務プロセスを可視化、
は、ビジネス側へ与えるインパクトとしても実に大き
その70%をJBoss BRMSでカバー
これまで日本国内で利用していたメインフレームの
生産計画最適化システムは、仕様書も紙ベースで陳腐
ローがなく、
横展開を考える上で障壁となっていた。
「これまでは業務部門に 生き字引 と呼ばれる人た
ちがいて、
ドキュメントがなくてもシステム開発ができ
ていましたが、そういう人たちも定年退職などで次々
と現場を離れていきます。今後の展開を考えれば、何
か問題が起きた時にすぐに対処できる環境を作って
プロセスも考慮しながら、JBoss BRMS に適用すると
Order to Delivery領域でのBRMS適用
プロジェクト範囲
BRMS適用範囲
Dealer
Sales
新システム
新システム
生産制約
最適化された
生産依頼
Vehicle
plant
Challenge
● 既存のMainframeアプリの
ダウンサイジング
● 基幹系パッケージ製品でサポート
されない複雑な業務ロジックの実現
最適な車両
Allocation
Dealerに対する
最適な台数Allocation
生産待ちオーダーを
加味した生産計画
見直し
(最適化)
発注処理
受注処理
インボイス処理
インボイス処理
情報問い合わせ
オーダー/
車両情報管理
いう作業を行ったのだ。
Solution
● JBoss Enterprise BRMSを利用し、
基幹系パッケージ製品に
依存せずに実装
販売会社の小売予測に応じた供給の決定
割当量を考慮した混合生産計画の決定
注文キャンセルや生産能力の変化に応じた生産計画の決定
● 生産能力余剰時の在庫補充計画の決定…
●
生産制約を加味した
生産計画の立案
そこで同社ではJBoss BRMSの導入をきっかけに、
での業務プロセスを洗い出し、ブラジル現地特有の
ています」。
BRMSの位置づけ
おく必要があったのです」。
業務プロセスの可視化にも着手した。メインフレーム
共通プラットフォームにレッドハット製品を採用、
コンポーネントレベルでの情報提供にも期待
▼ ブラジル新工場における生産計画の最適化を実現するRed Hat JBoss BRMS
化しており、ほぼブラックボックス化していたという。あ
るいはデータフローはあるものの、業務プロセスフ
今後の展望/レッドハットへの期待
●
●
Package
App
最適化された
生産計画に
基づく物流
計画への連動
Vehicle
Transportation
Database
WWW
JBoss EAP
(AP)
Batch Server
Web Service &
Rule Engine
Batch Shell
(BRMS)
Dealer Mgmt.
System
JBoss EAP
工場生産系
システム
Order to Delivery
期待効果
● 基幹系パッケージ製品と組み合わせたグローバル標準システムの実現
● 手組みと比較して極めて高い開発生産性を実現
● ルールとして切り離すことで、
ルールの可視化・システム保守性が向上
「これで今後、業務部門や他国への展開時にも、現
05
BRMSを導入したメリット1
06
BRMSを導入したメリット2
07
BRMSを導入したメリット3
他国での導入時に比べ導入
期間を5ヵ月短縮、生産性も
200%向上
ブラックボックスだった業務
プロセスを可 視 化、7 0 %を
JBoss BRMSでカバー
レッドハットのアドバイスに
より、従 来 の 1 0 倍 以上 の パ
フォーマンスを達成
・JBoss BRMS導入の最大のビジネス
メリットはスピード
・工場の早期立ち上げに多大な貢献
・従来の業務プロセスを洗い出し、
JBoss BRMSに適用
・他国展開を図る際のコミュニケー
ションにも有用
・3ヵ月分/約 10 分の処理を8ヵ月分
/約2分へ
・販売機会の拡大にも大きく貢献す
るもの
08
今後の展望/
レッドハットへの期待
共通プラットフォームにレッド
ハット製品を採用、コンポーネ
ントレベルでの情報提供に期待
・アプリケーションロードマップを支
えるための新プラットフォームを、仏
ルノーと共同検討、
導入予定
OPEN EYE 5
Success story for your business
ロシュ、Red Hat JBoss Middlewareで
医薬アプリケーションを迅速に提供
スイスに拠点を置く製薬会社のロシュは、同社のIT研究所セ
ンターである
「ファーマ・インフォマティクス・マドリッドサイト」
で設計されたエンタープライズ向けRed Hat®ソリューションを
導入した。イタリアのマドリッドにある同センターでは、世界中
の同社グループ企業にITサービスを提供している。Red Hat の
ソリューションを利用することによって、柔軟性を高め、システム
の管理や自動化を最適化し、アプリケーションの市場投入まで
の時間を短縮することに成功した。
導入の背景
広範囲にわたる運用を実現するためには、
スピードが必須
び購買マネージャーからも、ライセンスコストとプ
ラットフォームコストの削減を要求されていた。
ロシュは、研究開発によって医療関連の製品や
サービスを提供する企業だ。画期的な診断手法を発
見し、開発することで、疾病の予防や早期発見、診断
から治療、経過観察に至るまで、あらゆる製品やサー
ビスを提供している。
■ レッドハット製品
●
●
●
Red Hat JBoss® Enterprise
Application Platform
Red Hat JBoss Operations
Network
Red Hat JBoss Data Services
ファーマ・インフォマティクス・マドリッドサイトに
は、グループのグローバル IT インフラストラクチャ
サービスのほとんどが集約されている。同センター
は創設以来、6 つのグローバルデータセンターをサ
ポートしてきた。さらに、マーケティングや物流、財
務、人事といった、各部門の主要なビジネスプロセス
に適した戦略的ソリューションも提供している。
同センターでは、ロシュのグローバルな研究開発
部門もサポートしており、100 件を超える同社の重
要な国際プロジェクトにも参画している。また、150
●
Red Hat Satellite
カ国11万5,000人のユーザーにITサービスを提供
しながら、同社のインフラストラクチャのメンテナン
ソリューション
オープンソースによる柔軟性と革新を推進
スも担 当しており、8 , 0 0 0 台 以 上 の サ ー バ ーと
●
Red Hat Enterprise Linux®
200,000 台以上のコンピュータの管理を行う。スト
そんな状況において、ロシュのITマネージャーは、
レージ容量は、2.8ペタバイトを上回る規模だ。
オープンソースという代替案に関心を示していた。
ロシュは、同社の優良バイオテクノロジー子会社で
同社は、10 種類にも及ぶアプリケーションサーバー
あるジェネンテック社の 200 に及ぶアプリケーション
ソリューションの評価を実施し、最終的に Red Hat
を含め、約600の Java™アプリケーションをデプロイ
JBoss® Enterprise Application Platformを導入す
した。これらのアプリケーションをホストするアプリ
ることに決めた。評価の結果、同ソリューションが信
ケーションサーバーは、IT インフラストラクチャにお
頼性とスケーラビリティに優れており、さらにその強
いて極めて重要なテクノロジーであり、そのアップグ
力な機能によって TCO(総所有コスト)
も削減できる
レードは慎重に進められねばならなかった。
ことが証明されたからだ。
「2007 年には、多くの IT 市場アナリストが、Red
Hat JBoss Middleware がミドルウェア市場のリー
ゴールは、
市場投入時間を短縮すること
ダーになると予測していました。当社も、Red Hat
JBoss Middleware が今後市場で最も重要な Java™
ミドルウェアプラットフォームの刷新を検討するに
アプリケーションサーバーになると考えています。つ
あたって、ロシュは主なゴールとして2 つの目標を掲
まり、ソリューションを日々活用し、イノベーションに
げた。1つはインフラストラクチャの効率向上であり、
貢献し、飛躍的に進展させている企業が何社もある
これには、次のような課題が挙げられる。
ということです」
と、ロシュのシニア・ミドルウェアエン
ジニア セザール・インファンテス氏は述べる。
●
開発者の作業負荷を軽減し、
かつて同社は、他の Java アプリケーションサー
市場投入時間を短縮すること
バーソリューションとともに、ベンダーが提供するス
●
インフラストラクチャの供給の改善
タック全体を使用しなければならなかった。こうした
●
運用の最適化
ベンダー依存によって、コストが大幅に増加し、柔軟
●
Javaアプリケーションの開発の促進
性や革新性が制限されていた。
同社が選んだ新しいプラットフォームのメリットと
6 OPEN EYE
2 つ目の目標は、ベンダー依存を避け、プラット
して、Red Hatと他のベンダーによる異なるテクノロ
フォームの柔軟性を高めることだ。さらに、財務およ
ジーの融合が挙げられる。組み合わせて利用するこ
Red Hat K.K. EDITORIAL 2014
とで、ビジネスニーズに応じたインフラストラクチャ
の柔軟な拡張が可能となるからだ。
「現在のプラットフォームでは、必要な Red Hat テ
クノロジーを選択して他のベンダーのソリューション
と組み合わせることで、さらに多くの機能を利用する
ことができます。テクノロジーとソリューションを組み
合わせて、独自のインフラストラクチャを構築できる
ようになったのです。これは、当社に大きな価値をも
たらしてくれます」ロシュのインテグレーション /ミド
ルウェア、およびアプリケーションサービス部門責任
者のトップ、
ジャスト・ストール氏は語る。
「真の技術革新は、異なる構成要素を組み合わせ
ることで実現します。その成果を達成するためには、
Red Hat のような企業が提供する、柔軟性とオープ
ン性が必要なのです」
(ストール氏)。
成功の要因
アプリケーションを、
迅速にグローバルネットワークへ提供
コミュニティが実現するイノベーション
規制当局の要件を満たすソリューション
「現在は、マドリッドからロシュのグローバルネット
ロシュの IT チームは、何千人ものユーザーがオー
製薬業界は常に進化しており、イノベーションが
ワークにサービスを提供できるようになっています」
プンソースソフトウェアの改善に時間を費やしてい
重要な要因となっている。また、米国食品医薬品局
とインファンテス氏は述べる。
「当社にとっては、アプ
る、画期的で革新的なオープンソースコミュニティも
や欧州医薬品庁の積極的な管理によって、厳しく規
リケーションを迅速に提供することが何より重要で
高く評価している。
「オープンソースコミュニティに
制されている分 野でもある。R e d H a t のオープン
す。そして Red Hatと協力すれば、それを実現でき
よって絶えずイノベーションが進んでいます。テスト
ソースソリューションによってロシュは、安全に関す
る。ごく少数の管理者がいれば、マドリッドにいるス
され、検証され、標準化されると、市場のニーズを満
る厳格な義務や要件を維持遵守し、ベンダーロック
タッフだけでヨーロッパと米国全体のすべてのデー
たす明確で具体的な製品ロードマップに則って、商
インを避けながら、急速なイノベーションと成長を
タセンターを管理できるのです。
用ソリューションに組み込まれるのです」
とインファ
実現している。
Red Hatソリューションの強力な自動化と監視機
ンテス氏は話す。
「Red Hat JBoss Middleware の採用を決定する
能によって、インフラストラクチャ全体を管理でき、さ
「優れたテクニカルサポートに加え、Red Hat はこ
前に、市場を調査し、当社のニーズに適したさまざま
らにアプリケーションを市場に投入するまでの時間
の成長を遂げている活発なコミュニティもサポート
な選択肢を分析しました。他の企業には、選択肢を
を短縮することもできました」
(同氏)。
しています。これによって、プラットフォームの改善や
入念に検討して、自社のニーズに最適なソリューショ
問 題の解 決に必 要なソリューションやアーキテク
ンを選択することをお勧めします。そして長期的な
チャーを簡単に見つけることができます」。インファ
パートナーとなり、将来的に企業に制約を強いること
ンテス氏は続ける。
「幸運にも、当社はテクニカルサ
のないベンダーを選択することも、強くお勧めしま
ポートを頻繁に利用する必要はなかったものの、利
す」
とストール氏は述べる。
開発者の導入作業を迅速化
Red Hat Satellite は、システム管理プラットフォー
用するときは、知識が豊富で能力の高いスタッフに
ムだ。Red Hat JBoss Operations Networkは、アプ
直接相談することができます。以前の Javaソリュー
リケーションの管理と監視機能を提供する。この 2 つ
ションの場合は、いくつかの段階を経てようやく問題
のソリューションを組み合わせることで、ロシュはイ
を解決できる技術者に辿り着きましたが、Red Hat
ンフラストラクチャの導入プロセスを標準化して自
の場合は、最初から実に満足度の高いサービスを受
動化することで、監視およびバックアップシステムと
けることができます」。
統合させることができる。開発者は、標準化された方
法でソフトウェアをより迅速に導入できるのだ。
結果的に、
あらゆる種類のアプリケーション(Web、
コンサルティングがプラットフォームを補強
モバイル、病院、医薬品業界向けなど)の提供や、変
更に要する時間が大幅に短縮された。現在は、ミドル
Red Hatコンサルティングは、プラットフォームの
ウェア管理者 1 人あたり約 100 本のアプリケーション
構造を設計するときも、その構造を導入するときも、
を管理しており、インフラストラクチャの導入時間も、
極めて重要な役割を果たしている。
「 私たちのニーズ
数週間単位から数日単位にまで大幅に短縮された。
を的確に汲み取り、インフラストラクチャに適応して
「現在、当社の開発者の満足度は以前よりはるか
いくRed Hatソリューションの能力を高く評価してい
に高くなっています」
とインファンテス氏は語る。
「そ
ます。Red Hat のエンタープライズ向けソリューショ
れは、多くの開発者がオープンソースソリューション
ンは、以前から利用しているソリューションとも他の
による開発を好むからだけでなく、プラットフォーム
ベンダーの新しいソリューションとも効果的に連携し
が安定していることで、より迅速かつ経済的にアプリ
ます。これにより、革新のための柔軟性と能力が向上
ケーションを完成させられるからです」。
するのです」
とストール氏は説明する。
さらなるRed Hat ソリューションにも注目
「Red Hatとの協力関係は今後、さらに強くなると
考えています。現在、Platform-as-a-Service( PaaS)
ソリューションを導入する予定があるからです。当社
では今まさに、Red HatのOpenShiftのPoC(=概念
現在、当社はRed Hat JBoss Middlewareが市場で最も重要な
Java™ アプリケーションサーバーであると考えています。
Red Hat JBoss Middlewareを利用する企業は日々増え続けており、
イノベーションの飛躍的な発展に寄与しています。
ロシュ シニア・ミドルウェアエンジニア
セザール・インファンテス 氏
実証)に参加している段階で、このソリューションが
当社の成長過程において、さらなる柔軟性や融通性
を提供できるか、どのようにしてプラットフォームを
適合させるか、さらにどのように需要に応じた調整
ができるかを評価しているところです。今は私たち
にとって実にエキサイティングな時期で、将来が楽
しみです。このような最新ソリューションの実装を、
心待ちにしています」
(ストール氏)。
OPEN EYE 7
Success story for your business
Red Hat K.K. EDITORIAL 2014
○ レッドハット最新レポート
OpenStackをエンタープライズに!
Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 5登場
することに加えて、エンタープライズ向けのライフサイ
クルを提供することで、一部のテクノロジー企業だけ
が利用できたとも言えるOpenStackを、エンタープラ
イズでも利用可能となるよう推進している。
レッドハットのOpenStackは、最新版のIcehouseとRed Hat Enterprise Linuxを組み合
わせ、
エンタープライズ向けに最適化されたものだ。
OpenStackにおける
Red Hatのリーダーシップ
ESSEX(April 2012)
Red Hatは、
アップストリームでのOpenStackの開発
サポートライフサイクルは3年に拡張
Nebula
Red Hat
でもトップの貢献をしてきている
(右表参照)
。
2014年7月、Red HatのOpenStackディストリビュー
この中でも特筆すべきはクローズチケット数(=実
ションとして 3 世代目にあたる Red Hat Enterprise
質的なバグフィックス数)
であり、新機能の開発(全体
Linux OpenStack Platform 5が提供開始された。
のコミット数)
だけではなく、品質の向上、
という点で大
Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform
(以下 RHEL-OSP)
は、エンタープライズでの先進的な
HP
Independent
きく貢献している
(下表参照)
。
Red Hat がコミュニティでの開発、品質向上を牽引
FOLSOM(October 2012)
Canonical
Cloudscaling University of Melbourne
IBM
VMware
ユーザーや通信事業者、インターネットサービスプロ
バイダ(ISP)等での利用を想定したエンタープライズ
Citrix
Canonical
VMware
Piston Cloud
Cisco Systems
Rackspace
▼ アップストリームでの開発状況
Red Hat
Independent
向けOpenStackだ。
3500
RHEL-OSP の中身は、最新版となるIcehouse 版の
3000
OpenStackと、エンタープライズ市場をリードするRed
2500
Hat Enterprise Linuxを組み合わせて、
最適化している。
2000
2013 年 7月に提供した初代のRHEL-OSPのサポー
1500
トライフサイクルは6カ月、2世代目は18カ月、そして3
世代目では3年まで確実に延ばしてきた。
これは、中期
的な安定運用を望むエンタープライズでのニーズに
応えようとしていることの表れだ。
Red Hat
IBM
HP
Rackspace
Mirantis
SUSE
OpenStack
Foundation
eNovance
Intel
1000
350
300
250
200
150
Nebula
HP
OpenStack Foundation
eNovance
50
企業別の全体コミット数
0
Rackspace
GRIZZLY(April 2013)
100
500
0
Red Hat
Others
HP
Mirantis
IBM
Rackspace
Canonical
OpenStack
Foundation
Dreamhost
400
Mirantis
VMware
Nebula
企業別クローズチケット数
出典 : Bitergia http://activity.openstack.org/dash/releases/index.html?data_dir=data/icehouse
Red Hat
Independent
Rackspace
RED HAT ENTERPRISE LINUX OPENSTACK PLATFORM
HAVANA(October 2013)
eNovance
SUSE VMware
HORIZON
ダッシュボード
NOVA
GLANCE
SWIFT
NEUTRON
KEYSTONE
CINDER
HEAT
OpenStack Foundation
イメージサービス
オブジェクトストア
ネットワーキング
ボリュームサービス
オーケストレーション
Red Hat
Independent
CEILOMETER
Mirantis
認証サービス
コンピュート
HP
IBM
メータリング
HP
Rackspace
RED HAT ENTERPRISE LINUX
IBM
出展 : stackalytics.com/?release=havana&metric=commits&project_type=core
OpenStackのエンタープライズにおける推進に向けて、
簡素化と機能強化を実現。RHEL-OSPインストーラの改善や、
評価環境向けにVMware上で動作する仮想アプライアンス版も登場。
本番環境向けには、HA機能を実装
2014年8月、RHEL-OSPの機能拡張版が提供された。いずれもエンタープライズ向けの利用を推進するた
めのものであり、
以下にその主要なポイントをご紹介しよう。
されるパッケージは、既存の VMware vSphere 環境
で利用可能だ。この仮想アプライアンスは、カスタ
マーポータルよりダウンロード可能※であり、エンター
プライズ環境においても、容易にOpenStack の評価
ができる環境が整ったと言える。
※https://access.redhat.com/products/
red-hat-enterprise-linux-openstack-platform/ova-r
待望のHA機能を提供
多くのエンタープライズで求められていたHA
(High
Availability)
も、標準機能として利用可能になった。管
インストール、
構成の簡素化
い」
と言われたOpenStack の利用の障壁を一気に下
理画面で容易にHA 機能を有効にすることが可能であ
げた、
と言える。
り、OpenStackのコントローラノード、
サービスノードの
新たなRHEL-OSPインストーラーでは、従来のコマ
いずれでもActivie-Activeでの構成が組める。また、ソ
ンド形式から、ウィザード形式のインターフェースを
評価環境向けに仮想アプライアンスを提供開始
フトウェアロードバランサーと併用することで、システ
の環境に応じて、カスタマイズしたインストールオプ
Open Virtual Appliance for Red Hat Enterprise
エンタープライズでの利用に向けて、機能面でも大き
ションの設定も可能だ。従来、
「インストールすら難し
Linux OpenStack Platformとして、OFV 形式で提供
く前進したと言える。
実装し、
インストールの簡素化を支援。
もちろん、個々
ムの有効活用とスケーラビリティの向上も可能であり、
◎ レッドハットの製品、
サービスに関するお問い合わせはこちらまで >>> セールス オペレーションセンター ☎ 0120-266-086(携帯電話からは ☎ 03-5798-8510)
〔受付時間/平日9:30∼18:00〕 e-mail: [email protected]
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かであり、OpenStack Foundation の許諾の下に使用されています。Red Hat は、OpenStack FoundationやOpenStack コミュニティの系列企業ではなくまた、支持や出資を受けていません。その他全ての登録商標
及び商標の所有権は、該当する所有者が保有します。本誌に掲載された内容の無断複製・転載を禁じます。
OPEN EYE Vol.17
2014年09月 発行
発行:レッドハット株式会社
東京都渋谷区恵比寿 4-1-18
tel:03(5798)8500