田中: もしもし、トーマスさん?田中です。田中花子の弟。ぼくのこと覚えて

田中:
もしもし、トーマスさん?田中です。田中花子の弟。ぼくのこと覚えてます
か?
トーマス: あ、たろうくん。覚えてるよ、もちろん。この前花子さんからも連絡が
来たし。元気?
m e t s a t ö l l
田中:
うん、まあまあです。ところで、エストニアのメッツァトッルってすごいよ
ね~。ぼくすっかりはまっちゃって。トーマスさんも、メッツァトッル好き?
べつめい
トーマス:
うん、けっこう好きかな。ちなみに、バンドの名前はオオカミの別 名 だ
って、知ってた?
田中:
へぇ~、そうなのか。そういえば、オオカミは歌にも出てくるなぁ。なるほ
みんぞくおんがく
みんよう
ど! ところで、さっそく、エストニアの民 族 音 楽 とか民 謡 についていろいろ聞
きたいんだけど。
じしん
トーマス:
いいけど、わかるかな~?あんまり自信ないから、くわしい友達にいろ
いろ聞いてみたんだけどね…
はんい
田中:
みんよう
まあ、わかる範囲でいいから… えっと、まず、エストニアの民 謡 には「レ
ギラウル」っていうのがあるらしいけど、これってどんなもの?
しゅるい
トーマス:
「レギラウル」ね。それは、民謡の種 類 というか、タイプで、民謡の一
うた
かた
とくちょう
番古いタイプだと言われているもの。歌 い方 に 特 徴 があって、一人の人が歌った
いっせつ
ば
く
かえ
一 節 をほかの人がその場で聞いて繰り返 して歌うものなんだよ。メロディーは
たんじゅん
おんいき
ひろ
つぎ
つぎ
単 純 で、音 域 はあまり広 くない。それで、だいたい同じメロディーで次 から次 へ
か し
か
と歌詞を変えて歌うの。
田中:
なるほど。メッツァトッルの歌にもあるな、そんなのが。で、レギラウルは
ないよう
どんな内 容 を歌ってたの?
きほんてき
トーマス:
にちじょうせいかつ
のうみん
それはもういろいろ。エストニア人は基本的に農 民 だったから、農民の
き も
かんが
あらわ
日 常 生 活 のすべてが歌われていたんだって。歌には人の気持ちや 考 えが 現 れて
まわ
ひと
にちじょう
しごと
しぜん
し ご
せかい
えいきょう
あた
いて、歌うことで周 りの人 や 日 常 の仕事、自然や死後の世界にも 影 響 を与 える
ことができると思われていたとか。
くら
田中:
ないよう
死後の世界まで?すごいね~。でも、そういうのって、暗 い内 容 の歌なのか
な。
トーマス:
暗いのももちろんあったけど、そんなのばかりじゃないよ。たとえば歌
ねんちゅうぎょうじ
を歌いながら仕事をするとやりやすいとか、いろんな 年 中 行 事 の歌とか、遊びの
歌とか、いろいろあるから。
田中:
た う
なるほど。そういえば、日本にも仕事の時に歌う歌っていろいろあったなぁ。
うた
田植え歌 とか。
むぎ
トーマス:
か
と
うし
そうそう、そういうの。エストニアでは、麦 の刈り取りの歌とか、牛 の
ほうぼく
いとま
放 牧 の時の歌とか、あとは、たとえば糸巻きみたいな、家でする仕事の歌とか。
しょうがつ
田中:
ぼんおど
年中行事の歌って、どんなの?日本だと、お 正 月 の歌とか盆踊りの歌とかか
な?
かそう
トーマス:
まわ
エストニアでは、マルトの日やカドリの日っていう、仮装をして家を回
げ し
の
る日の歌や、夏至の歌、冬のヴァストラの日の歌や、ブランコに乗りながら歌う歌
とかかな。
こもりうた
田中:
へぇ~。あと、日本には子守歌もあるけど、エストニアにもある?
しぜん
トーマス:
もちろん。子守歌もあるし子どもの歌もあるし、あとは自然や
にんげんかんけい
ものがた
じだい
なつ
人 間 関 係 について物 語 るような歌や、ふるさとや子ども時代を懐 かしく歌う歌も
あるよ。日本にもあるでしょ?
しゅるい
田中:
に
そうだね、やっぱり歌は人の毎日の生活から来ているから、種 類 は似ている
ね。
ちほう
トーマス:
ちが
あと、地方によって違 いがあるところも日本と同じだと思うよ。エスト
みなみ
ほう
ちほう
とく
どくとく
ニアでは、 南 の方 のロシアに近いセット地方の歌は特 に独 特 だよ。
ばあい
田中:
みんよう
い
としよ
す
おんがく
なるほどね~。でも、日本の場合、民 謡 って言うと年寄りが好きな音 楽 っ
と
い
ていうイメージだけど、エストニアでは今の音楽にも取り入れられているのがおも
しろいよね。しかも、フォークからメタルまで。
うた
トーマス:
さいてん
うん、それはそうだね。エストニアでは歌 の祭 典 が有名でしょ?民謡は
歌の祭典のレパートリーにもなってるからね。
田中:
歌の祭典?なにそれ?
がっしょう
トーマス:
え!歌の祭典を知らないの?エストニアと言えば歌の祭典だよ。 合 唱
ぜんこく
がっしょうだん
あつ
いっしょ
のおまつりみたいなもの。 全 国 からいろんな 合 唱 団 が 集 まって、一 緒 に歌うの。
今は 5 年に一回あるんだよ。これは本当にすごいから、ぜひ見に来て!写真も送る
よ。
しら
田中:
ふ~ん、知らなかったな。また調 べてみるよ。
ぜったい
トーマス:
でんとうてき
がっしょうだん
あつ
絶 対 ね! 伝 統 的 には 合 唱 団 が集 まる歌の祭典なんだけど、最近では、
パンクの祭典とか夜の歌の祭典とか、いろんなところに名前が使われるようになっ
てて、おもしろいよ。