第 6 回広島−明治−龍谷合同合宿 ∼ウサギと過ごす 1 泊 2 日

特集
学生の研究活動報告−国内学会大会・国際会議参加記 19
“第 6 回広島−明治−龍谷合同合宿
∼ウサギと過ごす 1 泊 2 日∼”
及び,広島明治単位互換プログラム
“プロテオミクス実験法,演習”
に参加して
中
出
賀
乃
われた.
そこで私は自分の専門とは異なる研究分野の方々
と様々な意見を交換・議論をした.この合宿を通じ
て自身の研究を新たな目線から考えることができ
た.大変有意義な時間を過ごせたと感じている.
3.講義“プロテオミクス実験法,演習”
Kano NAKADE
数理情報学専攻修士過程
8 日から 30 日は広島大学で行われた広島大学明
1年
治大学単位互換プログラム“プロテオミクス実験
1.はじめに
法,同演習”を受講した.単位互換プログラムは.
私は,2013 年 8 月 26 日から 27 日まで広島大学
龍谷大学が広島大学,明治大学と大学間交流に関す
と明治大学と合同で行われた“第 6 回広島−明治−
る包括的協定を結んでいるため,理工学研究科の学
龍谷合同合宿∼ウサギと過ごす 1 泊 2 日∼”
及び,28
生は他大学院の科目を受講することができるという
日から 30 日にかけて広島大学明治大学単位互換プ
ものである.この制度により講義を受講することが
ログラム“プロテオミクス実験法,同演習”に参加
できた.
今回の講義を担当してくださった泉俊輔先生に
した.
は,合宿から帰ってきた 27 日にお会いし,翌日か
2.研究合宿
ら共に講義を受ける 3 大学のメンバーと交流を兼ね
8 月 26 日から 27 日は広島県大久野島で研究合宿
た講義の打ち合わせに参加した.実験は少人数の班
に参加した.この合宿の目的は,数理分子生命理学
で行われた.生物・化学の分野にほぼ無知な我々の
の交流であり,数学・生物・化学という縦割りに分
ために,班員構成に専攻の偏りがないように配慮さ
割された専門の枠を超えて交流することにある.昨
れていた.
今,生命現象を数理モデルで再現することが多く行
3. 1
3 分時計の作成
われているが,実際のところ学生個人が専門の枠を
初日はうがい薬・ビタミン C 入り清涼飲料・オ
超えて考えるということは難しい現状がある.そこ
キシドール・デンプンのりを使って 3 分時計を作成
で普段のセミナーとはまた違ったこの合宿でともに
した.手順としてはじめにうがい薬のヨウ素・デン
衣食住を共有することで異分野の学生同士が意見交
プン・水を適量入れ,ヨウ素でんぷん反応で青紫色
換できるように交流することが目的である.
に変色することを確認した.次にビタミン C を入
合宿先の大久野島はたくさんの野ウサギがいるこ
れる.そこで還元により溶液の色が消えた.最後に
とで知られている.一歩,宿泊施設から足を出すだ
オキシドールを加えて時間を計った.少し時間が経
けで多くの野ウサギがえさを求めてよってきて,合
過すると,再び酸化されることにより青紫色に変化
宿のつかの間の癒しとなった.また,第二次世界大
した.この時間を先生に設定された 3 分にする為に
戦時には日本軍の毒ガス工場があった場所で,建物
溶液の量を何度も調整した.私の班は練習で与えら
の一部が保存されていたり資料館があり当時の様子
れた時間,ほぼ 3 分まで調整することができた.し
をうかがうことができる.そこで化学兵器の恐ろし
かし,本番では 30 秒程度で反応してしまい,残念
さを実感した.
な結果となった.練習と本番では各溶液の量は同じ
合宿は 3 大学の先生方・院生による研究発表やポ
であったのに失敗してしまったことから,数学と比
スター発表など分野・年齢の枠を超えた交流会が行
べて同じ数値でも異なった結果が出ることに化学実
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した.
験の難しさを痛感した.
この実験の目的はピペットマンなど,使用したこ
(5)消化
とのない実験器具を使うことに慣れ,翌日の実験に
マイクロチューブを氷と共に放置してゲルを冷却
支障が出ないようにするためであった.広島大学の
させた.25 mM の NH4HCO3 12.5 ng/ μ L のトリプシ
院生の方や先生に一から教えていただいたおかげで
ン(酵素溶液)をゲルが膨張する 5∼10 μ L 加え
翌日からスムーズに器具を扱うことができた.
た.10 分間氷上で放置し,ゲルが初期の状態まで
3. 2
タンパク質の質量分析
3. 2. 1
膨張したか確認した.膨張が不十分な場合には蒸留
実験手順
水を加えた.最後にインキュベートを行い,2 日目
(1)ゲルの洗浄
の作業は終了した.
マイクロチューブに紫色に着色されゲルに覆われ
(6)抽出
たタンパク質が用意されていた.その中に 50% の
最終日は朝から先生,班員と共に広島大学霞キャ
アセトニトリル 100 μ L を加え,5 分間よく攪拌し
ンパスの医学部に移動し,実験を行った.抽出の為
た後に溶媒を取り除いた.これにより紫色に着色さ
に 0.1% の TFA, 75% のアセトニトリル 20 μ L を加
れたタンパク質の色素を取り除くことができる.色
え,5 分間攪拌した後,また 5 分間静置した.マイ
素が完全に抜けるまで数回この作業を繰り返し行っ
クロチューブから 0.5 μ L 採取し,質量分析を行っ
た.
た.板上に採取したものを乗せ,分析装置に読み込
(2)脱水によるゲルの縮小
ませた.数分後板上の画像をパソコン内に取り込む
ゲルが入ったマイクロチューブに 100% のアセト
ことができ,画像から正しく成分が現れている箇所
ニトリル 100 μ L を加え,攪拌した後 5 分間静置
を数個程度選び保存した.コンピュータがこの数個
し,溶媒を取り除いた.この後ゲルをデシゲータに
の成分分析データからタンパク質の質量分析を行っ
入れ真空ポンプで減圧乾燥した.乾燥させることで
た.
ゲルが収縮され,タンパク質が糸のようになってい
3. 2. 2
実験結果,考察
出力された結果の質量が最も多かった 4 箇所から
る先端を見つけ出すことができた.
実験していたタンパク質はウサギの筋肉の一部から
(3)還元,アルキル化
マイクロチューブに 10 mM の DTT in 25 mM の
採取されたものであることが分かった.
NH4HCO3 10 μ L を加え,ヒートブロックを用いて 60
長い時間をかけ,多くのの試薬を使い,同じ行程
分間 56℃ でインキュベートした.その後室温に戻
を何度も繰り返してはじめて,一つのの物質を見つ
し,溶媒を取り除いた.そして 55 mM の ICH2CONH2
けるということはとても達成感があった.普段の研
in 25 mM の NH4CO3 100 μ L を加え 30 間室温で攪
究は一人で作業することがほとんどなので,班員た
拌し,溶媒を取り除いた.次に前述の DTT と ICH2
ちと協力しながら行う実験はとても新鮮だった.ま
CONH2 を取り除く作業を行った.25 mM の NH4CO3
た,実験を通して,自分の専攻している分野が他の
100 μ L を加え溶媒を取り除く作業を 2 回ほど繰り
分野でどのように活かされているかを知ることがで
返した.
き,今後の研究の意欲を湧かせてくれた.
今回,この講義でお世話になった広島大学の泉先
(4)乾燥によるゲルの縮小
再び,乾燥によるゲルの収縮を行った.先ほどと
生をはじめとする先生方・事務の方・ともに学んだ
同様に 100% のアセトニトリル 100 μ L を加え,攪
仲間たちにこの場を借りて深く御礼申し上げます.
拌した後 5 分間静置し,溶媒を取り除いた.その
また,今回の合宿から講義に至るまでサポートして
後,ゲルをデシゲータに入れ真空ポンプで減圧乾燥
くれた本専攻の先生方にも深く御礼申し上げます.
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