7 芳 香 用 品 - 日本アセアンセンター

B-7. 芳香用品
7
芳 香 用 品
1. 日本のマーケット事情
(1) 品目の定義
ここでは、室内及び自動車内に芳香を付けるための調製品を扱う。なお、芳香を付加する効果に伴い、消臭、防臭効
果があるものについてはこの中に含める。貿易統計上の分類及びHS番号は以下の通り。
HS番号
0603.90
0604.10、91、99
品目名
染色、漂白、染み込ませまたはその他の加工を施した、乾燥した切り花及び花芽で、花束
用または装飾用に適するもの(ポプリ等)
染色、漂白、染み込ませまたはその他の加工を施した、乾燥した植物の葉、枝その他の部
分(花および花芽のいずれも有しないものに限る)
およびこけ・地衣類で、花束用または
装飾用に適するもの(ポプリ等)
3301.11~90
柑橘系およびハーブ系の精油(エッセンシャルオイル)
3307.41
アガバティその他の香気性の調製品で燃焼させて使用するもの(お香等)
3307.49
室内及び自動車用の芳香剤
3307.90
その他の芳香剤(におい袋等)
(注1) ただし上記の分類中、0603.90、0604.10、0604.99にはドライフラワー、押し花等が、3301.11~90
には食品に用いられるもの等が、3307.41には宗教儀式用お香が、3307.49には消臭剤、脱臭剤が、
3307.90には脱毛剤及び化粧品の一部が含まれている。
(注2) ポプリとは、ドライフラワーに芳香オイルを添加したもの。
(2) 市場動向
芳香用品市場はここ20年ほどで形成され、年率10%近くの成長を続けてきたが、ここ数年は安定成長期に入ってい
る。近年は芳香(空間に芳香を付与するもの)に消臭(臭気を化学的作用などで除去又は緩和するもの)をプラスした芳
香消臭用品が主流であり、部屋やトイレのいやな臭いを分解して消すと同時に、エッセンシャルオイルなどで天然のか
すかな香りを発散するものが多い。従来の室内用芳香用品等に加え、ポプリ、お香、アロマキャンドルなどさまざまな素
材・形態の商品が販売されている。
最近はリラクゼーションやヒーリングを目的に、生活のなかで積極的に香りを楽しむ人が増えており、音楽やファッショ
ンと同じように、ライフスタイルや好み、流行に合わせて、多種多様な香りが求められるようになっている。エッセンシャル
オイルを使ったアロマテラピー(注)の愛好者も年々増加し、癒しや心地よい空間を消費者に提供するモノ・サービスが相
乗効果で市場を拡大している。
(注) 芳香療法とも呼ばれ、天然純度100%のエッセンシャルオイルの芳香成分がもつ自然の薬理作用で、精神的ストレスや肉
体的不調を癒す民間の自然療法である。海外では医療行為(メディカルアロマテラピー)もしくは代替医療の一手段として
定着している国もあるが、日本ではアロマテラピーは医療行為とは認められていない。
部屋用とトイレ用を合わせた芳香消臭用品の市場規模は600億円程度と推定され、その90%を小林製薬(ブランド
名:消臭元など)、エステー化学(同:消臭力など)の2社が二分しており、大日本除虫菊、アース製薬、白元、花王など
が残り10%を競い合うという状況にある。これに加えて、P&Gの「ファブリーズ」が先陣をきって開拓したスプレー式布用
消臭用品市場(カーテンなどのインテリアファブリックや帰宅時に背広などの衣類に振りかけて、タバコやペット、室内の
化学物質の臭いを消すもの)が100億円を超える規模に拡大し、第3のカテゴリーに成長している。P&Gは2005年9月
に「置き型ファブリーズ」を発売して室内用芳香用品市場に新規参入し、ファブリーズの強力なブランド力で市場を活性
化するものと期待されている。
【室内用芳香用品】
室内用芳香用品はリキッド・ゲルタイプ(据置型)、スプレータイプ、アロマタイプ(素焼きの陶器や容器にポプリを入
れ、エッセンシャルオイルを添加する)、そして電動タイプ(プラグ式、乾電池式、アロマランプ)に大別される。市場の
主流を占めるのはゲル状(ソフトビーズやジェルタイプを含む)やリキッド状のものを、おしゃれな透明の容器に入れて
消臭効果をアピールする据置型であり、徳用の大型ボトルには再生プラスチックを使用し、容器の簡素化・軽量化を打
ち出している。香りはラベンダー、グレープフルーツ、ローズ、ペパーミントなどが中心であるが、最近は新しい香りを期
間限定で発売したり、容器のデザインや使い方に工夫をこらして新しい付加価値を提案するものも目立ち、例えば、円
盤形で粘着性樹脂により窓や鏡に貼るタイプや吊り下げタイプも登場している。
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エステー化学が2003年4月に発売したプラグ式電子消臭芳香器(商品名:マイナスイオンプラグ)は、製品をプラグ
に差し込むと本体から森林や水辺の香りとともに約5万個のマイナスイオンを放出して、リラックス効果、酵素による新
陳代謝活性化を与えるという画期的な製品で、300円~500円が主流の芳香用品市場で、1,300円という高価格にも
かかわらず、好調に売れている。その後も、エッセンシャルオイル配合の4タイプ(付け替え用)や、コンセントのない場
所にも移動可能な電池式(マイコン制御の小型ファンを搭載)を発売し、電動タイプのラインナップを強化している。ま
た、花王が玩具メーカーのバンダイと共同開発した商品は、人気アニメのキャラクターをモチーフにした電池式芳香器
で、スイッチを入れると左右に揺れながらキャラクターの耳がパタパタと動いて香り(ローズマリー、カモミールの2種)を
広げる。一方、小林製薬が2004年春に発売した「芳香ガーデン」は花のつぼみをイメージしたおしゃれな容器に布製
の小花をあしらったデザインと、ヨーロッパのガーデンをイメージした香り(ラベンダー、ローズ、カモミール、ハーブ、ヒ
マワリ)で、若い女性の支持を集めている。このように芳香用品市場では各社が新しい視点から新製品を市場に送り出
して成功しており、今後も拡大の余地はまだ大きいとみられている。さらに最近のペットブームを反映して、ペットの臭
いの消臭用品も需要拡大が見込まれている。
【自動車用芳香用品】
自動車用芳香用品は据置き型で、ガラス容器入りのリキッドタイプが圧倒的に多く、芳香だけでなく、タバコなどの消
臭効果、カビや雑菌等の臭いを元から絶つ脱臭効果をうたった製品も多い。購買者層は若者が中心であるため、室内
用に比べ容器のモデルチェンジが速いといわれ、最近は灰皿に入れるビーズ状の芳香用品や、ぬいぐるみのマスコッ
トタイプのものも見られる。自動車用芳香用品には、フェロモン入り、新車の香りなどユニークなものが含まれる。自動
車用芳香用品でも室内用大手メーカーの子会社(エステーオート)がトップシェアを有し、その高い知名度を生かして
業績を伸ばしている。
【エッセンシャルオイル】
エッセンシャルオイルは植物の花、つぼみ、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などさまざまな部位で作られる芳香物
質(エッセンス)を蒸留法などで抽出した天然純度100%の抽出液である。もともとはアロマテラピー(芳香療法)に基づ
いて作られたものであるが、ポプリの香り付けとしても用いられ、フレグランスオイル、ポプリオイル、アロマオイルなどの
名称で販売されている。このほか、エッセンシャルオイルは飲料や菓子などの加工食品に添加する天然香料(フレー
バー)として、また芳香用品・化粧品などに香粧品香料(フレグランス)として幅広く用いられ、オレンジオイルは住宅
用・台所用洗剤の洗浄成分としてもよく利用されている。
20~40代女性を中心にエッセンシャルオイルに対する関心および需要が確実に拡大しており、自宅でアロマポット
やアロマランプに、その日の気分で好みのエッセンシャルオイルを垂らして芳香浴を楽しんだり、浴槽や洗面器のお湯
に垂らしてアロマバスでリラックスする、あるいはエッセンシャルオイルで手作りの化粧品を作るなど、さまざまな利用法
が広がっている。
【アロマキャンドル】
アロマキャンドルはエッセンシャルオイルを加え、火を灯すとほのかに香りが広がるローソクである。日本でアロマ
キャンドルが一般に認知されるようになったのは僅か5~6年前で、輸入品も含めて一気に市場が拡大したが、現在は
年間15%程度の安定した伸びを続けている。多彩な形状・カラーのキャンドルに火を灯すだけで、香り、色、柔らかな
灯火が楽しめる(視覚と嗅覚の相乗効果が得られる)ため、アロマテラピー初心者やギフト用として需要を拡大している。
バラや桜の花びら、ハート形などのアロマキャンドルを水に浮かべるフローティングタイプ、浴槽にぷかぷか浮かべるバ
スタイプ、おしゃれな器に入ったアロマグラスキャンドルは、特にギフトや販促用として人気が高い。秋冬に需要が集中
しがちだったキャンドルが、癒し系商品として日常生活のなかに取り入れられるようになるにつれて、売上の季節変動
が徐々に縮小してきているのが最近の特徴である。アロマキャンドル単品としてよりも、エッセンシャルオイル、ポプリ、
インセンス(お香)など、関連商品とのトータル提案で消費者の使用シーンを広げていることが奏功している。
カメヤマ、東京ローソク製造、ペガサスキャンドルなどアロマキャンドル市場をリードするメーカーは、さまざまな新製
品を続々投入し、さらなる普及拡大を図ろうとしている。人気の香りはラベンダー、ローズ、カモミールなどハーブ系が
中心であるが、オレンジやアップルなどのフルーツ系や桜、ヒノキ、ユズ、白檀など和の香りも注目されている。
【ポプリ】
ポプリとはドライフラワーにエッセンシャルオイルや合成オイルで香り付けしたものである。素材となるドライフラワーに
は花だけでなく果実なども用いられ、インテリア性が高くアロマテラピー効果も楽しめるため、最近急速に人気が高まっ
ている。ポプリは香りが薄れた時はオイルを足して香りを強めたり、オイルを代えて別の香りを楽しむこともできる。ポプ
リや香り付けの用のエッセンシャルオイルは、輸入品が主流である。ポプリの素材となるドライフラワーもほとんど輸入品
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で、日本のメーカーは、これに日本人の嗜好に合った香りや色を調製して製品化している。発売当初はこの使い方が
浸透していなかったためか、ポプリだけが売れていたが、現在ではポプリとともにエッセンシャルオイルを購入する消費
者も増えている。これらは中小輸入業者が取り扱っている場合が多く、専門店が海外のメーカーから直接ポプリとエッ
センシャルオイルを一括して輸入販売している場合もある。
【インセンス(お香)】
お香は、アジアでは伝統的に使われているが、日本でも仏事等の宗教儀式に用いられるのが一般的である。さらに
近年は芳香用品として香りを楽しむアメニティータイプのお香が新しい市場を形成している。香木(原材を小さく割って
香炉で炊いて用いるもの)、線香、印香(線香の一種で干菓子状のもの)等は、古くから香道、茶道の儀式で使用され
ていたものがあるが、従来のお香にはない、鮮やかな色彩や香りのお香(インセンス)で、リラクゼーションとしての香り
を楽しむものが次々と登場している。他の芳香用品に比べると市場に占める割合はごく僅かではあるが、数年前から
若い人にも購入が広がり、売れ行きが伸びている。なお輸入品ではフランス、英国、米国からインテリアフレグランスと
してのインセンスが輸入されている。インドやASEANを主産地とする沈香(伽羅)、白檀といった香木は、日本でお香
や線香を作る上で欠かせない原料であり、お香として製品で輸入されるものも主に宗教儀式用のお香として利用され
るが、これをエスニックな香りとして楽しむ人もいる。
国内最大手の日本香堂は、新しいリラクゼーションとしてのインセンスをギフト商材として確立すると同時に、フランス
のインテリアフレグランスブランド「エステバン」の輸入総代理店としてヨーロッパの香り文化を日本に導入し、独自の香
り文化市場を築いた功績により、「東京インターナショナル・ギフト・ショー2004」で、ギフト市場の発展に貢献した企業
として毎年1社選ばれる「Gift of the Year 2004 Award」を受賞した。
(3) 日本の流通・取引慣行
【室内用・自動車用芳香用品】
室内用・自動車用芳香用品は流通経路が確立しており、室内用はスーパーを中心にチェーンドラッグストア、薬局・
薬店、コンビニエンスストア、ディスカウントストア等で販売され、自動車用は自動車用品専門店やホームセンター等で
売られている。
図表1 室内用・自動車用芳香用品の流通経路
海外メーカー
輸入代理店
国内メーカー
卸売問屋
小
売
店
室内用: スーパー、薬局、薬店、コンビニエンスストア、
ディスカウントストア
自動車用: スーパー、ディスカウントストア、
ホームセンター、自動車用品専門店
消 費 者
【ポプリ、アロマ関連製品】
ポプリ、エッセンシャルオイル、アロマキャンドル等は主に百貨店の専門コーナーや専門店で販売され、都内の百貨
店では国内外の10ブランド前後、500種以上のエッセンシャルオイルや関連商品を揃えている。市場の拡大とともに、
近年は生活雑貨店、インテリアショップ、ホームセンター、ディスカウントストアなどにも販路が広がっている。また、メー
カーや輸入業者、専門店の多くがインターネットでそれぞれの商品の詳細や使い方を説明するサイトを設けて、オンラ
イン販売を行っており、今後ますます増加すると考えられる。なお、お香は仏事用の製品を中心に市場が形成されてき
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たため、以前はアメニティータイプのインセンスもそのルートで販売されていたが、最近はポプリ、エッセンシャルオイル
など他の芳香用品と一緒に、関連商材の1つとして取り扱われるようになっている。
図表2 ポプリ、アロマ関連製品の流通経路
(海外)メーカー
輸入代理店
国内メーカー
卸売問屋
輸入品
国産品
百貨店、専門店、生活雑貨店、
園芸店、ホームセンターなど
通信販売(ネット販売を含む)
2. 貿易動向
(1) 日本の輸入動向
品目の定義で示したように、芳香用品が分類されるHS番号の中には芳香用品以外の品目が数多く含まれる
(0603.90、0604.10、0604.99にはドライフラワー、押し花等が、3301.11~90には食品に用いられるもの等が、
3307.41には宗教儀式用お香が、3307.49には消臭剤、脱臭剤が、そして3307.90には脱毛剤及び化粧品の一部が含
まれている)。そのため、芳香用品の輸入動向に関する正確な統計は明らかにならない。ただし、業界では次のようにい
われている。
室内用・自動車用芳香用品の製品としての市場では国産品が大半を占めている。しかし、容器や原料の一部を輸入
し、国産の素材と組み合わせて製品化し、国産品として流通している場合が多い。また、香りや容器に特徴のある製品
の輸入は増加しているようで、輸入品には欧米のスプレータイプのものや、フランス製で顆粒状の芳香用品を砂の替わ
りに用いた砂時計型もある。また、香りもハーブ系のエッセンシャルオイルを用いたもの、フィトンチット(森林の芳香成
分)を含んだものなど、ナチュラルな香りに特徴がある。また、近年は中国やタイ・ベトナムアなどアジア諸国から低価格
品の輸入も増えているようである。
一方、ポプリ、エッセンシャルオイルは輸入品が中心で、近年は需要の増加で輸入が拡大している。ポプリの素材とな
るドライフラワーもほとんど輸入品で、特に米国からの輸入が多い。これは大規模なハーブ農園が米国西海岸にあるた
めである。最近は同様の理由からオーストラリアからの輸入も増加している。エッセンシャルオイルについては、その大
半を輸入品に依存しているが、食品や化粧品・洗剤、医薬品原料など多様な用途に利用されているため、アロマテラピ
ーや芳香用品に限定したエッセンシャルオイルの輸入は明らかにならない。全体としては価格が安く、用途範囲の広い
オレンジオイルの輸入量が圧倒的に多く、ブラジル及び米国からの輸入が中心である。このほか、グレープフルーツ、レ
モン、ペパーミントは米国、ラベンダーやジャスミンはフランスや英国、ペパーミントオイルやサンダルオイル(お香や線
香の原料となる白檀からとれる精油)はインドから主に輸入されている。
アロマキャンドルについても市場には輸入品もかなり多く出回っており、米国、フランス、ドイツなど欧米諸国から、フラ
ワーブーケ、フルーツ、ケーキ、アイスクリームなど、さまざまなデザインのカラフルなアロマキャンドルが紹介されている。
また、マレーシアから輸入されるアロマキャンドルはヤシオイル100%の自然オイルでパラフィンを含まないため、ほとん
どススが出ず、消した後にツンとした香りも残らないことから、環境と人にやさしいキャンドルとして消費者に受け入れられ
ている。
3. 対日輸出における留意点
(1) 日本における輸入時の規制・手続き
芳香用品の輸入に際しては、エアゾール式の製品の場合は「高圧ガス保安法」、ポプリ等の場合は「植物防疫法」、ま
た、ポプリ、エッセンシャルオイル、お香などに用いる植物の種類によってはワシントン条約に基づき「外国為替及び外
国貿易法」によって規制を受ける。
(注) エッセンシャルオイルを飲料や菓子などの加工食品に添加する天然香料(フレーバー)として輸入する場合には、「食品衛
生法」の規制を受け、肌に直接塗布することを目的とする場合には化粧品として「薬事法」の規制を受ける。しかし、アロマテ
ラピーに使用する精油や、芳香剤・化粧品・などに香粧品香料(フレグランス)として用いるものは、雑貨として取り扱われ、特
に規制はない。
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B-7. 芳香用品
1) 高圧ガス保安法
芳香用品のなかでエアゾール製品の輸入に際しては高圧ガス保安法の規制を受ける。この法律は高圧ガスによる
災害を防止し、公共の安全を確保する目的で定められているが、ガスの力で噴射するエアゾール製品の輸入は同法
の適用を受ける。ただし、家庭用エアゾール製品はガスの量や取り扱い等からみて危険性が少なく、同法の規制の対
象にならない「適用除外」(容器内容量1リットル以下、内圧0.8Mpa以下等)に該当する場合がほとんどである。輸入す
る際には、「適用除外」規定に適合していることを証明する「試験成績書」の提示が必要とされる。
2) 植物防疫法
外国からの病害虫の侵入を防止するため、植物防疫制度を設け植物検査を実施している。ポプリを輸入する際に
は、植物防疫法に基づいて、定められた海港または空港において、輸出国政府の植物検疫機関が発行した植物検査
証明書を添えて、所轄の植物防疫所へ届け出て検査を受けなければならない。検疫病害虫の付着がない場合は、合
格証明書が発行される。病害虫の付着があった場合は、くん蒸または廃棄等の措置がとられる。
図表3 植物防疫法に基づく輸入検査(検疫)手続き
輸 入 検 査 の 申 請
(輸出国の植物検査証明書の添付)
輸入検査
検疫病害虫が付着している場合
消毒実施
積戻し・廃棄
検疫病害虫が付着していない場合
合 格 証 明 書
通関手続き
3) 外国為替及び外国貿易法(輸入貿易管理令)
絶滅のおそれがあり、保護が必要な野性動植物については、ワシントン条約に基づき、外国為替及び外国貿易法
(外為法)の輸入貿易管理令により輸入が規制されているものがある。ポプリ、エッセンシャルオイル、お香のうち、対象
になる植物を含むものは、同法の規制を受ける。2005年1月から沈香がワシントン条約に基づく規制対象(付属書Ⅱ)
に加えられたので注意が必要である。その他の具体的な品目、詳しい手続きについては所轄官公庁に問い合わせの
こと。
(2) 日本における販売時の規制・手続き
芳香用品のうち、エアゾール式の製品は「高圧ガス保安法」、「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」、
また芳香用品の成分によっては「消防法」の規制を受ける。部分的な装飾として特殊なもの(例:らん科の花など)を使用
している場合には、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」の規制を受ける可能性
がある。詳細は環境省 自然環境局 野生生物課へ照会のこと。なお、医薬品的な効能効果を標ぼうした場合には「薬
事法」の規制を受けることになるので注意が必要である。
その他、容器包装に関して、識別表示については「資源有効利用促進法(資源の有効な利用に関する法律)」の規制
を、再商品化については「容器包装リサイクル法(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律)」の
規制(一定の小規模事業者は適用から除外)を受ける場合がある。対象となる容器包装、特定事業者の範囲、表示方
法など、詳細は下記所轄官公庁に問い合わせのこと。
1) 高圧ガス保安法
エアゾール式の製品を販売する場合は、同法に基づいた注意表示をしなければならない。(⇒(3) 表示規制)
2) 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律
健康被害を防止するため、成分に塩化ビニル、メタノール等を含むエアゾール式の芳香用品は、同法によって規制
を受ける。具体的には、これら有害物質の含有量、溶出量、または発散量等について基準が定められており、これに
適合しなければならず、不適合品の製品の販売、授与(又はそれを目的とした陳列)を行ってはならないとされている。
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B-7. 芳香用品
3) 消防法
エアゾール製品に用いられる原液が、消防法に定められた成分(引火性のあるもの等)を含む場合、含有成分名、
注意(例:火気厳禁等)、含有量の表示、またその数量によっては、運搬や貯蔵等に関して所轄の消防署の許可が必
要になる。詳細は所轄消防庁に問い合わせのこと。
(3) 日本における販売時の表示規制
1) 法律に基づく義務表示
① 高圧ガス保安法
芳香用品のうち、エアゾール式の製品は「高圧ガス保安法」により、エアゾールの種類に準じて表示すべき事項(使
用上、保存上、使用後の注意など)および文字の大きさ等の表示方法が定められている。
<表
示
例>
火気と高温に注意
高圧ガスを使用した可燃性の製品であり、危険なため、下記の注意を守ること。
1. 炎や火気の近くで使用しないこと。
2. 火気を使用している室内で大量に使用しないこと。
3. 高温にすると破裂の危険があるため、直射日光の当る所や火気等の近くなど温度
が 40 度以上となる所に置かないこと。
4. 火の中に入れないこと。
5. 使い切って捨てること。
高圧ガス:使用するガスの種類 (ガスの名称を表示する)
② 消防法
同法に基づき、消防法で規制を受ける製品は以下の通り表示を行うよう定められている。
内容量が300ml以下:
危険物数量および注意事項(火気厳禁等)
内容量が300mlを超え500ml以下: 危険物数量、注意事項(火気厳禁あるいは同一意味文言)および危険物の通称、
危険等級、水溶性
内容量が500mlを超える:
危険物の品名、化学名、危険等級、水溶性、注意事項(火気厳禁)、危険物の数量
③ エアゾール製品に関する条例に基づく表示
エアゾール製の芳香用品に関しては自治体の条例により注意事項の表示が義務づけられている場合がある。
例:神戸市条例 「逆さまにして使用しないでください」
④ 資源有効利用促進法
同法に基づき、一定の容器包装については分別回収促進のための識別
表示をすることが義務づけられている。個包装、ラベル、外箱などに紙やプラ
スチック製包装材を使用した場合、容器包装の1ヵ所以上に決められた様式
で識別マークを表示する必要がある。
(表示例)
外 箱
ラベル
2) 法律に基づく任意表示
芳香用品に関して法律に基づく任意表示は特にない。
3) 業界自主表示
① 芳香消臭脱臭剤協議会自主基準に基づく表示
芳香消臭脱臭剤協議会では、一般消費者の用に供される芳香用品等について製品の有効性および安全性等の
品質確保のための自主基準を設け、品名、用途、成分、内容量を枠囲いで、その他使用期限、使用方法、注意事項、
製造番号、業者名(住所、電話番号)を記載することを定めている。また自主基準に適合した製品には適合マークを添
付している。
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B-7. 芳香用品
適合マーク
<表 示 例>
品 名:
用 途:
成 分:
内容量:
芳香剤
室内用
香料、非イオン界面活性剤
安息香酸ナトリウム
125 ml
使用期限:○○○
使用方法:○○○
使用上の注意:○○
○○○株式会社
住所: 東京都千代田区○○○町 1-2-3 電話: 03-0000-1234
製造番号: 000000
問い合わせ先: 芳香消臭脱臭剤協議会
TEL:072-641-5965
http://www.houkou.gr.jp
② (社)日本エアゾール協会自主基準に基づく表示
(社)日本エアゾール協会では、表示に関する自主基準を設け、エアゾール製品に注意事項の表示記載を定めてい
る。なお、これらの表示は容器等の一箇所にまとめて記載してある場合が多い。
<表 示 例>
使用上の注意
○
暖房器具 (ファンヒーター)の周囲は、温度が上がり破裂する危険があるの
で置かないで下さい。
○
捨てるときには、火気のない戸外で噴射音が消えるまでボタンを押し、ガス
を抜いてください。
問い合わせ先: (財)日本エアゾール協会
TEL:03-3201-4047
http://www.aiaj.or.jp
③ (社)日本アロマ環境協会の認定表示
(社)日本アロマ環境協会では、アロマテラピーに使用するのに適したエッセンシャルオイルを選ぶ上で必要な基本
情報(ブランド名、品名、学名、抽出部位、抽出方法、生産国(地)または原産国(地)、内容量、発売元または輸入元)
及び使用上の注意事項を正しく分かりやすく表示し、同協会に確認書(薬事法・PL法の遵守及び商品の品質管理の
徹底を図り、企業モラルを遵守する)を提出したエッセンシャルオイルブランドを「表示基準適合精油」として認定する
制度を設けている(エッセンシャルオイルの品質認定ではない)。2005年6月現在、国内外の34のブランドが認定を受
けている。
問い合わせ先: (社)日本アロマ環境協会
TEL:03-3538-0681
http://aromakankyo.or.jp
(4) 新規参入時の留意点
最近の日本では人々の香りへの関心が確実に高まっている。市場には国産品・輸入品を問わず、多種多様な芳香
用品が導入され、人気商品の動きも激しい。日本市場に新規参入するに際しては、日本人の生活文化、香りに対する
ニーズ、最近の売れ筋動向ををよく知る必要がある。最近は香り成分だけでなく、生活の中のインテリアとしての提案、
安全性や環境に対する配慮も重要になっている。
安全性や有効性に対する消費者の目も一層厳しくなっており、原材料にさかのぼった安全確保、表示に対する科
学的根拠が求められる。特にエッセンシャルオイルについては、天然純度100%のものだけに限られるにもかかわら
ず、流通のいずれかの段階で異物が混入したり、アルコールや化学香料などの添加物が入っているものをエッセン
シャルオイルと呼称しているケースが見受けられる。これらをアロマテラピーに使用した場合、正しい効果が期待できな
いばかりか、心身に悪影響を及ぼす場合があるので、厳重な注意が必要である。なお日本では、製造物の欠陥により
人の生命、身体または財産に害を及ぼしたことが証明された場合、製造業者等の損害賠償責任について定め、被害
者の保護を図る「PL(製造物責任)法」が制定されている。輸入品の場合は輸入者がその責任を負うことになるので、
品質管理はもちろん取扱説明書・注意表示等に留意することが必要である。
(5) 関連品目の留意点
芳香用品の関連品目としては、石鹸や香水があげられるが、これらは輸入販売時に「薬事法」の規制を受ける。
(6) 関連法規制の所轄官公庁
高圧ガス保安法
経済産業省 原子力安全・保安院 保安課
TEL:03-3501-1511 (代)
http://www.nisa.meti.go.jp
ASEAN 輸出業者のためのマーケティングガイド
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B-7. 芳香用品
植物防疫法
農林水産省 消費・安全局 植物防疫課
TEL:03-3502-8111 (代)
FAX:03-3502-3386 (直通)
http://www.maff.go.jp
外国為替及び外国貿易法
経済産業省 貿易経済協力局 貿易管理部 貿易審査課
TEL:03-3501-1511 (代)
http://www.meti.go.jp
有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律
厚生労働省 医薬食品局 審査管理課 化学物質安全対策室
TEL:03-5253-1111 (代)
FAX:03-3593-8913 (直通)
http://www.mhlw.go.jp
消防法
消防庁
TEL:03-5253-5111 (代)
http://www.fdma.go.jp
各都道府県消防庁
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律
環境省 自然環境局 野生生物課
TEL:03-3581-3351 (代)
FAX:03-3581-7090 (直通)
http://www.env.go.jp
FAX:03-3597-9535 (直通)
http://www. mhlw.go.jp
薬事法
厚生労働省 医薬食品局 審査管理課
TEL:03-5253-1111 (代)
資源有効利用促進法/容器包装リサイクル法
経済産業省 産業技術環境局 リサイクル推進課
TEL:03-3501-1511 (代)
http://www.meti.go.jp
環境省 廃棄物・リサイクル対策部 企画課 リサイクル推進室
TEL:03-3581-3351 (代)
FAX:03-3593-8262 (直通)
http://www.env.go.jp
4. 日本の関税・消費税
(1) 関 税
芳香用品の関税率は品目により異なり、概略は次頁の図表4のとおりである。なお、事前に関税分類や関税率を確認
する場合、税関に対して口頭・文書・Eメールで照会を行ない、回答を受けることができる「事前教示制度」を利用すると
便利である。
http://www.customs.go.jp
問い合わせ先: 税関ホームページ
【特恵関税制度】
特恵受益国から芳香用品を輸入し、特恵関税の適用を受けようとする場合には、特恵受益国の税関などが発給する「特恵
原産地証明書」を添付する必要がある(総価額が20万円以下の場合は不要)。詳細は財務省 関税局へ確認のこと。なお、
アセアン諸国の関税率適用状況は以下のとおりである。
適用税率
LDC特恵税率
一般特恵税率
日星協定税率
WTO協定税率
国 名
ミャンマー、カンボジア、ラオス
タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム
シンガポール
ブルネイ
(2) 消費税
(CIF+関税)×5%
5. 関連業界団体
・(財)日本エアゾール協会
TEL:03-3201-4047
http://www.aiaj.or.jp
・芳香消臭脱臭剤協議会(小林製薬 (株) 研究開発カンパニー気付)
・(社)日本アロマ環境協会
ASEAN 輸出業者のためのマーケティングガイド
112
TEL:072-641-5965
http://www.houkou.gr.jp
TEL:03-3538-0681
http://aromakankyo.or.jp
B-7. 芳香用品
図表4 芳香用品の関税率
税
HS番号
品
名
切花及び花芽 (生鮮のもの及び乾燥し、染色し、漂白し、染み込ませ又
はその他の加工をしたもので、花束用又は装飾用に適するものに限る)
1. その他
90
植物の葉、枝その他の部分
(花及び花芽のいずれも有しないものに限る)
0604
草、こけ及び地衣 (生鮮のもの及び乾燥し、染色し、漂白し、染み込ませ
又はその他の加工をしたもので、花束用又は装飾用に適するものに限る)
1. こけ及び地衣
10
精油(かんきつ類の果実のものに限る。)
3301
1. ベルガモットのもの
11
2. オレンジのもの
12
3. レモンのもの
13
4. ライムのもの
14
5. その他
19
精油 (かんきつ類の果実のものを除く。)
1. ゼラニウムのもの
21
2. ジャスミンのもの
22
3. ラベンダー又はラバンジンのもの
23
4. ペパーミント(メンタ・ピペリタ)のもの
24
5. その他のミントのもの
25
(1) ペパーミント油(メンタ・アルヴェンスィスから採取したものに限る)
1) 政令で定める試験方法による総メントールの含有量が全重量の
-011
65%を超えるもの
2) その他のもの
-019
基本
WTO
協定
率
特恵
0603
(2) その他のペパーミント油
-020
(3) その他のもの
-030
6. ベチベルのもの
26
7. その他のもの
29
(1) ベイ葉油、カナンガ油、けい皮油、シトロネラ油、丁子油など
-100
(2) 芳油
-220
(3) その他のもの
-230
8. レジノイド
30
9. その他のもの
90
調製した室内防臭剤
3307
室内に芳香を付けるため又は室内防臭用の調製品 (宗教的儀式用の香
気性の調製品を含む。)
アガバティその他の香気性の調製品で燃焼させて使用するもの
41
その他のもの
49
その他のもの
90
-010 油、脂又はろうをもととした調製品
-090 その他のもの
暫定
日星
協定
A
無税
(無税)
5%
3%
無税
無税
無税
3.2%
3.2%
(無税)
(無税)
(無税)
(3.2%)
(3.2%)
無税
無税
無税
3.2%
3%
3.2%
(無税)
(3.2%)
2.2%
(3.2%)
無税
無税
無税
無税
(無税)
9.6%
9%
3.2%
3%
無税
(3.2%)
2.2%
(無税)
無税
2.5%
3.2%
無税
無税
(無税)
2.2%
(3.2%)
(無税)
(無税)
6.6%
4.6%
5.4%
3.9%
無税
無税
5.8%
6%
4.8%
4%
無税
無税
無税
A
A
A
A
A
5.4%
*無税
無税
無税
A
A
無税
無税
A
A
A
注1) 特恵欄の「*無税」は後発開発途上国(Least Developed Countries)にのみ適用されることを示す。
注2) 日星協定(シンガポールを原産地とする貨物にのみ適用)欄の「A」は、協定の効力発生の日(2002年11月30日)
から関税が撤廃されたことを意味する。
注3) 税率は原則として、日星協定税率、特恵税率、WTO協定税率、暫定税率、基本税率の順に優先して採用される。
ただし、特恵税率は法令で定める要件を満たす場合に限られ、WTO協定税率はそれが暫定税率又は基本税率よ
り低い場合にのみ適用される。表の見方の詳細については日本関税協会発行「実行関税率表」などを参照のこと。
ASEAN 輸出業者のためのマーケティングガイド
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