第48次海外電設視察団報告書 は じ め に 社団法人日本電設協会は,平成14年9月24日から10月 5日までの12日間英仏伊3ヵ国に,PFI事情視察,業界 団体交流,コージェネレーションシステム視察を主な 目的とした第48次海外視察団を派遣した。 社団法人日本電設工業協会では国際交流を担当する 広報委員会において実施計画,準備が進められた。ま た,5月中旬に参加者募集を開始し,8月23日に参加申 し込み説明会が開催された。 浅野広報委員長を団長とする総勢13名の視察団は, 9月24日,新東京国際空港において結団の後イギリス,イタリ ア,フランス3カ国歴訪の旅に出発した。 ロンドンではPFIプロジェクトにより建設中のブロムレー病 院を視察,その後,英国電設協会を訪問,ミラノではミラノ ガス社のテクノシティプラントを視察,その後,ベリネリ社 のチーズ熟成用保管倉庫氷蓄熱システムを視察,ニースでは ニース・コートダジュール国際空港の最新設計が取り入れら れた空港電気設備における安全対策を視察した。以下は,そ の詳細報告である。 団 編 成 団 長 浅野 俊郎 ㈱弘電社 団長補佐 一瓢 秀次 三栄電気工業㈱ 寺田 義之 ㈱寺田電機製作所 報告書取材・作成班(◎=幹事 ○=副幹事) 1班(ロンドン:ブロムレー病院 英国電設工業協会担当) ◎市川 弘康 千代田エンジニアリング㈱ ○伊藤 正博 川北電気工業㈱ 一瓢 秀次 三栄電気工業㈱ 日 程 佐原 節信 ㈱きんでん 寺田 義之 ㈱寺田電機製作所 中野 勝廣 東海電設㈱ 2班(ミラノ:ベリネリ社 ミラノ市エネルギー公社/ ニース:ニース・コートダジュール空港担当) ◎大沢 賀美 新生テクノス㈱ ○神森 邦夫 ㈱雄電社 菅谷三樹生 ネグロス電工㈱ 傍島 嘉浩 日本電設工業㈱ 並木 勝由 大栄電気㈱ 矢島 敏雄 日本ユニシス㈱ 1.ブロムレー病院および英国電設協会訪問∼PFI事業の現状視察∼ 日 時 2002年 9月 25日(水) 場 所 ロンドン郊外およびロンドン内 イギリスという呼び名は日本での通称であり、正式には グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国(Uni ted Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)と呼ばれています。 本国は、グレートブリテン島(イングランド、スコットラ ンド、ウェールズの三地方からなる)、アイルランド島北 部マン島および海峡諸島から構成され、国土面積は24万 4100k㎡と日本の約65%、人口は約5800万人で 日本の半分に当たる。 成田を出発してから12時間後、ヒースロー空港に無事 到着し、翌日の25日にはPFIプロジェクトにより建設 中のブロムレー病院を見学し、その後、ロンドンの英国電 設協会(ECA=The ElectricalCont ractors´Association)にて、PFI の現状について説明をうけた。 1.1ブロムレー病院の見学 対応者 NHS(National Health Survice)Trust GRAHAM A GODDARD 氏 NHS Trust KEVIN HOWELL 氏 TWC(Taylor Woodrow Construction) PFIによって、病院を建設する民間建設会社 CHRIS STAPIES 氏 目的とするブロムレー病院は、ロンドンの南東 約30 Kmに位置し、大ロンドン(Great London) とケント(Kent)の境にある静かな街(Bromle y)に建設中でありました。当日は、地下鉄ストの煽りで 自動車渋滞に巻き込まれ、約1時間遅れの到着となった が、昼休みを返上して親切に対応していただいた。 1.1.1 PFIによる病院建設の概要 PFI(Private Finance Initi ative)は、1992年に英国で始めて導入され、公 共施設等の設計建設、維持、運営に民間の資金およびノウ ハウ等を活用し、公共サービスを民間主導で行う手法であ る。 今回のPFIプロジェクトは、全体として155M£(約 300億円)を投じて、この地区にあった四つの古い病院 を統合した新しい救急総合病院(Bromley Hos pitals)を建設し、30年間の民間運営による良質 な医療サービスを提供する計画である。もちろん、ベット 数の増加や救急車、救急患者の受入体制の効率化など病院 としての機能アップには十分な配慮がなされている。全体 のスケジュールは次のとおりである。 (1)1995年 基本案の成立 (2)1998年11月∼1999年 4月 GPハ ウス精神科計画 (3)1999年10月∼2000年 4月 精神科 完成 (4)2000年 5月∼2002年12月 救急総 合病院の建設 (スタッフ2500人、ベッド数 525床) (3) 民間による運営の契約期間が30年と長く、 将来像が描けない。 (4) さまざまなリスクを民間に委ねるため、全体 のコストは高くなる。 1.1.3 主な質疑応答 Q1 民間が銀行より融資を受けることに対する、国 の保証はありますか? A1 保証なし、あくまで民間企業のリスクとなる。 写真ー1 NHS Trust側からの説明 Q2 PFIによって建設された病院で働く人の身分 は変わりますか? A2 医療サービスに関する医師および設備管理者の 身分は変わらず、公務員のままである(英国 の医療はすべて国費で賄われ、関係者は公務 員)、また、給食・掃除・メンテナンス等の サービスは外部委託されます。 Q3 1995年に基本案ができてからスタートま で、3年もかかっているが、その最大の理由 は? 写真ー2 ブロムレー病院の完成予想図 (5) 2003年 1月∼2003年 4月 スタッ フの移動(総合病院への受入れ) (6) 2003年 4月∼2004年 外溝工事の完成 1.1.2 病院側から見たPFIの長所と短所 NHS Trust側からは次のようなPFIの長所と 短所の説明があったが、概して、今回のPFIプロジェク トの成功に強い自信をもっているように思われた。 A3 PFIの初期のケースであり、不慣れなため いろいろな問題の発生とその調整に手間取っ たこと、さらに、調整中に、保守党から労働 党に政権が移り、契約内容の確認に時間がか かった。一般的に、PFIプロジェクトにお いては、スタートまでにかなりの時間がかか ります。 Q4 PFIの導入に、皆さんはどんな評価をして いますか? A4 地域の企業活動が活発となり皆んなは歓迎し ている、特に、医療関係においては、すべての面 でうまく行っている。ただし、労働組合は反対 している。 <長 所> (1) 国に資金がなくとも、一度に大きな施設を建設 することができる。 (2) 設備、運営及びサービスにおいて、より良質な ものを提供することができる。 (3) 保守、点検は民間会社の担当。従って、医療ス タッフのリスクが軽減し、病院での本来の仕事に 集中できる。これが前述の良質な医療サービスに もつながる。 (4) 民間企業の新分野への進出により、仕事量の増 大とともに地域の活性化に役立つ。 <短 所> (1)計画から実施まで、時間と費用がかかる。 (2)自分らの設備ではなく、自由に変革できない。 写真-3 Trust側に質問する視察団 1.1.4 建設現場の見学 安全靴、ヘルメット、安全ジャケットを身につけ、建設 現場に向かった。私たちが、電設業の専門業者である ことからして、次のプロセスで、電気設備を中心に現 場案内をしていただいた。 (1) 予備発電設備を伴った、電気系統図の説明 (2) 受電設備、配電設備の見学 (3) ナースセンタ、各病室の見学全体的にスペース を十分にとり、ゆったりとした建設現場の印象 をうけた。 (2) 会員の資格と報酬の向上 (3) 有益な新技術の奨励 (4) 労働に対する公正な報酬の確保 今や、個人経営から大会社まで含め、会員会社が2 000以上、全体の年間売上が40億£(約8000 億円)を記録する協会になっている。電気技師の技術 レベルは高く、給与水準も平均以上である。 1.2.2 PFIについての説明 1990年のはじめ、保守党政権のとき、PFIや PPP(Public Private Partn ership)が導入された。PFIは、公共施設で も民間が資金を提供し建設する手法で、民間に建設、 運営、保守等のリスクを負わせるものである。一方、 PPPは、公共と民間の役割分担をより重視し、ハー ド(建設等)中心ではなく、ソフト(運営サービス) だけの場合でも民間に委託する方式で、PFIより広 義の意味で使用される。 主な対象物件は、道路、鉄道、地下鉄、病院、学 校、刑務所および防衛施設等である。 写真-4 建設現場見学前のミーティング <PFIのプロセスと問題点> (1) 準 備 PFI事業のEC地域への公募により、コンソーシ アム(SPV=Special Purpose V ehicle)が建築、運営、保守方や、資金の調 達、契約期間後の処置等を検討し、基本案を作成す る。 (2) 入札−落札 コンソーシアムの基本案を評価して、最優秀案を選 定する。 入札までに多くの時間と費用がかかって(24ヶ 月、全体投資額の5%)いるので、落札できなかった コンソーシアムには大きな損失となる。国に費用の支 払いを訴えているが、その訴訟にも、弁護士や経理士 への費用や時間がかかり、大きな社会問題になってい る。 国は、この状況を知っていて、何もしない。 写真-5 建設現場での説明をうける浅野団長 (3) 契約−建設 1.2 英国電設協会での説明 対応者 会 長 MARTIN J WODE 氏 副会長 CHARLES Mc KINNON 氏 1.2.1 EACの概要 EACは、イングランドとウェールズ地区の電設業者 の 協会であり、スコットランドは別の協会に属して る。 EACは、1901年に創設され、会員に対し次のこ とを行ってきた。 (1) 適切な規格に基づいた安全で均一な電気工事 の指導 指名されたコンソーシアムは、建設会社や他の会社 (運営、保守を担当する)と契約を結ぶ必要がある が、法的拘束力を配慮し、責任分担を明確にすること が大切で、大変な仕事である。 (4) 運 営 民間会社による運営期間は、20∼30年と長期で あるが、期間をどれだけにするかは、大変むずかしい 問題である。運営や保守には、費用がかかりリスクも 大きい。しかし、その逆に、大きな利益を生むチャン スでもある。 (5) 契約期間終了後 期間終了後は、契約の更新か、延長か、廃棄か、またその 時になって決めるか、いろいろな選択肢があるが、どんな 扱いをするかは、最初の契約で明確にしておくことが必要 である。 <PFIの特徴> (1) 今まで、民間企業ではできなかった分野の仕事 ができ、仕事の範囲がひろがった。 (2) より良質なサービスが提供でき、受ける側に歓 迎される。 (3) 契約したコンソーシアムや建設会社には、お金 や仕事が約束され、事業が安定する。 (4) 計画からスタートまで、時間と費用がかかる。 (5) 全体の設備投資額は高くなる。 (6) 民間会社のリスクは増大する。 英国における建設会社の仕事は、浮き沈みが激しく不安 定だあったが、PFIの導入により、それが緩和された。 しかし、建設会社の傘下にある機械業者や電気業者に、利 益が偏る傾向は否定されない。 今までのところ、PFIの特徴を総合的に見ると、うま く活用されていると思う、特に、病院については、国がコ ントロールしていたときよりも、多くの面でかなり良く なっている。(いままでは、大きな資金を投入してもうま く行かない方が普通であった。) しかしながら、民間会社によって運営される契約期間が 20∼30年と長期で、最終結論は出ていない。今後、P FIが良い方向に進むのか、悪い方向かは、正直なところ わからない。 1.2.3 主な質疑応答 Q1 コンソーシアムが建設工事の発注をするとき、 分割発注か、一括発注か? A1 建設する会社への一括発注となる。 Q2 建設会社の下請として電気業者が入るようにな ると、利益確保が難しくなるのではないか? A2 英国では、一括発注するのが、必ずしも建設会 社だけとは限らない。大手の電設業者が受注し てその下で、建設会社を使うこともある。従っ て、必ずしも一括発注が、電設業界にとって不 利とはならない。 Q3 PFIプロジェクトが拡大すると、公共事業と 比べて民間事業のコスト削減が強力に打ち出さ れ設備業者としては、利益が減少するのではな いか? A3 そんなことはない。従来、公共事業は山・谷が あり、極めて不安定であった。また、仕事量そ のものも少なかった。ところが、PFIによ り、仕事量が増大し、安定的に仕事がくるよう になった。確かに、利益率は下がったが、トー タルでは利益額は増加している。 Q4 民間会社が運営する契約期間は長い。その間 に、組織なり、機能なり、建物なりが陳腐化 し変革する必要が生じた時、どこが主体とな り、どのようにするのか? A4 それは、すべて最初の契約の時に決めておく ことになる。変革時に最初のコンソーシアム より、良いアイデアを持ったコンソーシアム が出てきたときはそれを替えることも考えら れるが、それもすべて最初の契約次第でる。 Q5 PFIの比率はどのくらいですか? A5 正確なところはわからない病院関係は10 0%、学校関係は約50%と増加傾向にあ る。 Q6 協会の活動のなかで、一番の障害になってい るものはなにか? A7 労働組合である。長い間、協調路線を歩んで きたが、組合の指導者が変わり、考え方が自 己本位となり何かにつき対立している。 (地下鉄ストを思い出し、ロンドンの人々は、 不満を募らせているようだ) まとめ 英国において、PFIが導入されてから10年が経過 した。最終評価は確定されてないとはいえ、病院や学校 などを対象にして、ますます、増加傾向にある。特に、 医療関係は、いままでの国の経営のまずさもあってPF I導入の評価は高いようである。 わが国においても、公共部門の財政支出の抑制はさけ て通れず、民間事業者の有する機動性、効率性を事業に 生かそうとする傾向にあり、PFIの位置付けは、ます ます重要になってくると思われる。しかしながらわが国 には、他国に例のない強力なゼネコンが存在すること や、PFIの導入を投資金額の削減目的にすることな ど、英国と大きく異なる状況があります。 安易な英国式PFIの導入は、多くの企業の勝 ち組と負け組の選別を促し、日本経済を混乱させ る要因にもなり兼ねません。わが国に適した、そ して日本全体の活性化を促進する公正で透明性の 高いPFIでなければならないと、今回の視察で 強く感じた次第です。 2.ミラノガス電気株式会社(AemGas) 日 時 2002年9月30日(月)10:00∼12:30 場 所 ミラノ 市 対応者 ミラノアエムガス電気株式会社(AemGas) Ing.MICHELE SPARACINO 氏(ディレ クター) Ing.STEFANO ERCOLI 氏(プロジェクト マネージャー) 2.1AemGasについて ミラノアエムガス電気株式会社(AemGas)は、3年前 ミラノ市営から民営化され現在の持株比率は51%を市 が保有し49%を民間が保有している状況である。来年 からはさらに民間に放出を予定している。またイタリア 株式市場では上位30社に位置しており、ミラノ市だけ でなく、市郊外地区にもサービスを提供している。 ミラノ市の都市構造の一部となりそれによって京都議 定書で義務付けられた省エネ対策に対応し、環境への影 響を少なくする成果を達成するようなコジェネレーショ ン発電所を実現した。 現在AemGasは異なった技術を特徴とする2箇所 の発電所を運営している。それはターボガスによ り複合エネルギーを発生させるテクノシティプラ ントと、8サイクル吸熱モータによるコージェネ レーションを実現したファモゴスタプラントであ る。 ファモゴスタ地区は、2001年に運用され、全 体で70MWを供給しており、遠隔地であるが、テ クノシティーより遠隔監理されている。 今回このうちテクノシティープラントを視察さ せていただいた。 2.3 テクノシティープラント視察 2.2 事業について AemGasは電気、ガス、通信、冷温水供給等のサービ スを行っている。イタリアでは10年前に国民投票により 原子力発電が中止されているため、水力発電および各地 に分散化したCGS が必要になってきた。 写真-6 ミラノアエムガス社の関係者に挨拶される浅野 団長 テクノシティー・CGS・プラントは地域冷暖房プ ラント展開をめざすAemGas 提案の代表的な例であ る。この地域冷暖房プラントは新規建設地(40%) を含む合計エネルギー1300000mc と推測される現 代生活に必須なエアコン需要を満たすことができ る。 写真-7 テクノシティープラント全景 写真-8 中央配電盤 2.3.1 CGSの構成 CGS グループは2機の単サイクルガスタービンで 構成され、1機につき4.8MWの出力で、総電力は9.6 MWになる。これは23kVの電圧で電力ネットワーク に供給されている。発電機の燃焼熱はそれぞれの回 収ボイラに送られる。ボイラは圧力5バール、温度約 150 ℃で水蒸気を作りその総熱は17 MWtになる。 補助透熱性オイルバーナ2機は蓄熱システムで設定 された熱量、合計34MWtに増大される。プラントには 1機につき4.6MWfの冷却力を持つ吸収冷却エンジン2 機とそれぞれ2.5MWfの出力をもつ圧縮冷却エンジン3 機があり、計17MWの冷却力が利用可能である。 2.3.2 地域冷暖房システム 回収ボイラでできた水蒸気は吸収冷却グループを 通じて、冬季には地域暖房用の温水の供給に使わ れ、夏季には地域冷房用冷水の供給に使用される。 同時に衛生的な温水は年間を通じて供給される。プ ラント内に熱蓄積システムがあることで機能がより 高まりそれによりネットワークからの熱の要求ピー クをカバーし、最大需要時の適切な電力生産を維持 している。 2.3.3 排水ネットワーク 温水は95℃、冷水は5℃で季節に応じて単一ネット 写真-9 発電システムの見学 ワークで配水され、また衛生的な温水は75℃ で専用の ネットワークで供給される。両ネットワークともポリ ウレタンのフォーム(泡を固めたもの)とポリエチレ ンシースで断熱し埋設された2重パイプで供給されてい る。 2.3.4 大気中への排気 大気汚染防止のためプラントはすべて天然ガスを燃 料としている。そのため二酸化硫黄(SO2)は最低限の 値である。またAemGasは一酸化窒素(NOx)の排気の少 ないガスタービンと統合バーナを使用しているので大 気への影響は最小限に抑えている。 2.3.5 保守管理 電力と熱の発生施設は適切な容量での運転、そして 機械の野寿命を短くする停止・運転の繰り返しの回数 を少なくすることに特に注意が払われた。ターボガス エンジンの定期点検は30,000時間ごとのオーバーホー ル、毎週の概観検査と重要な部分の定期的な検査を実 施している。 まとめ 広大な面積の(地域)でのCGSシステムの運用で 成果がでており参考になりました。関係者の方々に感 謝致します。 3.ベリネリ社(Berneri spa) 日 時 2002年9月30日(月)15:00∼16:30 場 所 ミラノ市 対応者 ベリネリ社 GIORGIO GIORGIO BERNERI 氏 BERNERI 氏 (ベリネリ社 オーナー) (ベリネリ社 オーナー) 3.1 チーズ熟成用保管倉庫氷蓄熱システム 構成は、アイスタンク(蓄熱タンク)1機、No.1, 2,3フリーザ計3台からそれぞれの部屋用に冷水を送 り、外気を冷気に変換し3部屋に供給している。容量は 467kW。 フリーザNo.1は、倉庫、No.2は保存庫1、No.3は保存 庫2となっている。 冬季は1台、夏期は3台運転をする。視察時No.1は、運 転、No.2は深夜、No.3は10時から14時の必要なときのみ 運転状態となっていた。フリーザNo.1からの冷水を冷気 に変換し倉庫天井ダクト約1mφ程度の管から放出し倉 庫全体を冷やしている。No.2、3は冷水をいったん外部 に持っていき、外気を取り入れて冷やして天井ダクト約 1mφ程度の管から放出している。また、チーズ保存庫 は、支柱150×50の中の空洞をリターン(排気)として 床から天井まで約500mmの間隔で、20mm程度の孔が 開いている。これにより保存庫内を均等の温度に保つよ うにできてる。 全体として電気代を30%コストダウンしている。今回 倉庫として使用しているが、同システムを事務所で採用 すれば、50%のコストダウンになるとのことであった。 写真−10 チーズ熟成保存倉庫で、視察者のメンバー (中央はベリネリ社オーナー) 4.ニース・コートダジュール国際空港/空港電気設備における安全対策について 日 時 2002年10月1日 13時30分∼ 場 所 ニース・コートダジュール国際空港内 対応者 Vincent LEBEGUE氏(保守部門マネージャー) Thierry BAUDUIN氏(技術開発部門長、技術サービス管理者) 4.1 ニース ニースはビジネスと観光が中心の首都である。生 活の質の高さと、国際的なトレードショーや会議を 開催でき世界的に有名になっている。,人口52万人 のニースは、コートダジュール最大、フランスで5 番目に大きい都市である。 ニース・コートダジュール国際空港はフランスで No.3の空港で1957年に開設された空港であ る。 コートダジュールとは紺碧の海岸という意味だそ うで空港から5kmにわたり砂利の海岸線が広が り、並行して遊歩道兼サイクリング道が走り、すで にピークは過ぎているがまだ日光浴をしたり、泳い だり、ビーチバレーをしたりとまさしく地中海に面 したリゾート地の空港であり、港等があるにもかか わらず水はあくまで青く澄みきっている。 丘にはエルトンジョンやションコネリーなどの有名 人の別荘なども数多くあり閑静なリゾート地という感 じでホテルの中にはカジノなども併設されている。 このような地域にあるため海岸を埋め立てた海上空 港で航空機よる騒音は一切なくまた独立国モナコにも 近く(車で1時間ほど)金持ちは空港からモナコまでヘ リでいくとのこと。 13時30分に空港ターミナル内で待ち合わせ、空 港内警察へ行き、一人づつパスポートと引き換えに バッジを受け取る。やはり空港内施設に入るというこ とで警護はかなり厳しい。 写真ー11 セキュリティーについての説明を受ける 4.2 施設概要 空港施設の電気設備ということで安全第一を考慮 したシステムであり、写真撮影等も厳しく制限され る。 空港は1957年に開港しているが現在の設備は1996 年に更新されたものである。 空港は午前1時∼4時まではターミナル施設は停止 するが、空港施設は24時間稼動している。 4.2.1 管理室(コントロールセンター) コントロールセンターに通され、監視システムの 説明が始まる。 空港設備のすべてをここで管理制御している。 24時間監視人が常駐し、監視体制を取ってお り、出力電力、異常等を監視し、異常箇所はここで 検知し、切換、遮断等をすべてコントロールセン ターで制御している。 監視システムはターミナルの施設と管制塔などの 空港施設とは別の監視システムを導入し、それぞれ の監視、制御を行っている。 4.2.2 電気システム ・受電/停電対応 電源はフランス電気より一般系と空港専用系の2 系統より受電している。 2系統とも停電すると発電機が起動し、電源供給 するシステムで日本でも重要な施設には取り入れら れているが、ここでの違いは発電機系統もターミナ ル系と空港施設系に分かれていることである。 ・ターミナル系電源 ターミナル系の発電機はG2,G3という呼称で 3,000KVAが2台並列運転するシステムで停電発生よ り3分後に電源供給する。 ただし、発電機が1台故障した場合は容量が足り ず、ターミナル内の照明等を1部停止するなどで対 処している(ちなみに視察時の出力は4.67MW であった。) 発電機の出力電圧は400Vで20000Vに昇圧して(発電 写真ー12 ニース・コートダジュール空港内の発電機 機室にトランスあり)、受変電側に供給し低圧盤には 再び400Vに減圧して供給している。 受変電トランスは4台設置され内1台はバックアップ 機として運用している。 ・空港施設系電源 空港施設系の発電機はG1という呼称で××××k VAが停電発生より9秒後に電源供給する。G1発電機 は不測の停電時は自動起動するが、雷で停電が予想さ れる場合は、人的に稼動させ停電に備える。また発電 機から商用電源への切換も人の判断で行う運用になっ ている(雷は多発するらしい)。 当然のことながら重要な機器についてはUPS (バッテリーという表現であったが)で停電対応をし ている。 G1系は最も重要な施設なのになぜ発電機が1台な のかと言う質問に「実は今夜もう1台増設し明日にな れば2台になっているという答えが返ってきた」 発電機用燃料タンクは3日間連続運転できる容量が あり、フランスではガソリンも軽油も価格はほとんど 変わらないため燃料はガソリンを使用しているとのこ と。 4.3 空調および水 空港施設で使われる水はすべて井戸水が使われてお り水道水はあくまで非常時のみとのこと。 空港内には40箇所の井戸があり工業水と生活水に 分けて使用している。 空港は埋立地であり海水が混じることはないのかと の質問に「井戸は70mの深さがありまったく心配な いとのこと」 暖房は1500kW × 3台のボイラがあり、8 0℃で空港内に供給しており 9月末から4月末くらいまで使用している。燃料は天 然ガスを使用しているとのこと。 このような空調システムについてもすべて電気と同 じくコントロールセンターで制御、監視されている。 この設備は2000年に導入され費用は30万ユー ロ。 ここは空港施設なので,安全運行を優先しておりと くにコージェネについては考慮していないとのこと。 まとめ フランスの電源供給状況を確認すると圧倒的に原子 力発電で80%、その他の20%はエコロジー発電 (風力、太陽電池)という状況である。 また、電気代においてもニース・コートダジュール 国際空港は格安に提供を受けており1KW/3円強 (0.026ユーロ)、一般家庭でも1KW/9円程 度と日本に比べてかなり安い。また、発電機等の導入 費用もかなり安価である。 さて、空港の設備であるが今まで述べたとおり安全 運行を重視した設備で空港系とターミナル系に分離さ れ、受変電設備も予備機を用意しているが、日本の金 融機関や通信系企業のセンターのように24時間/3 65日稼動をふまえて電気設備を全て2重化し,完全 バックアップするシステムまでには到っていない。 しかし、空港施設としては午前1時∼4時までは STOPするので、点検等も予備機に順次切り換え ていくことで対応できるので十分だと思われる。 また地域的に環境もよく地震、台風は皆無であ り、雷は結構多いらしいが、電線は地中埋設の為ほ とんど自然災害による停電は発生していないよう だ。 発電機も1996年に導入後停電による稼動は1 度もないとのことで日本との環境の違いは大きく、 障害対応ということでは結構楽観的に考えている様 子も見られる。
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