子宮内膜症

Case study level Ma
Endometriosis management in secondary care
2010/09/09
子宮内膜症
臨床薬物情報学研究室
5年 小林亜由美
患者背景
[患者] 39歳 Mrs DS
[主訴]
• 背中の痛み
• 吐気
• 左側の下腹部痛
• 体重が12.7kg減少し、働くことができない
[以前患者から得た情報]
• 不規則な月経:5~7日間の出血
• 中等度の月経困難症
• 性交疼痛症はなし
• 妊娠はしていない(挙児希望なし)
患者背景
[診断]
超音波検査やCTスキャンより、卵巣チョコレート嚢胞
[治療]
• 腹腔鏡下手術
• GnRHアゴニストのadd-back療法
→2ヵ月後、腰痛、のぼせ、冷え、めまいの症状
→根治手術
(腹式子宮摘出術+両側卵管卵巣摘出術)
Add-back療法:
エストロゲンを投与することで、GnRHアゴニストの副作用である骨塩量の減少を抑える
Problem list
#1 子宮内膜症
#1 子宮内膜症
S) 背中の痛み
吐気
左側の下腹部痛
体重が12.7kg減少し、働くことができない
O) 超音波検査やCTより、卵巣チョコレート嚢胞と診断
→腹腔鏡下手術
→GnRHアゴニストのadd-back療法
→根治手術
(腹式子宮摘出術+両側卵管卵巣摘出術)
A) 卵巣と子宮を摘出したことより、子宮内膜症の再
発の心配はない。
しかし卵巣を摘出したことで、更年期様の症状が
出でくる可能性が高いため、ホルモン補充療法を
受ける必要があると考えられる。
P) 術後の経過観察
ホルモン補充療法
– エストロゲン単独投与
エストラーナ 1枚 隔日貼付
1) 子宮内膜症とは
子宮内膜組織に似た組織(子宮内膜様組織)が、子宮腔
以外の場所に生じて、疼痛や不妊などを引き起こす疾患
好発部位
腹痛、卵巣、Douglas窩
好発年齢
性成熟期(特に20~30歳代)
(エストロゲン依存性の疾患のため)
発生機序
子宮内膜移植説や体腔上皮化生説など
→いまだ解明されていない
子宮内膜移植説:
子宮内膜剥離組織が月経血とともに卵管を通じて腹腔内へ流出し、腹膜に生着、増殖する
という説。
体腔上皮化生説:
腹膜がなんらかのきっかけで子宮内膜に変化(化生)して子宮内膜が発症するという説。
内膜症が好発する場所
(1) 卵巣の内側、表面
(2) 子宮と直腸の間のダグラス窩と呼ばれる部分
(3) 子宮の筋肉の間(これは特に腺筋症とよばれる)
(4) その他、子宮や直腸表面の腹膜など
子宮内膜症の病態
2) 子宮内膜症の症状
主な症状
• 月経痛: 月経を重ねるたびに痛みが増強
市販の鎮痛剤を服用しても痛みが十分とれ
ない
• 骨盤痛: 月経時以外でも下腹部痛、腰痛が持続
• 性交痛
• 排便痛
• 不妊
3) 子宮内膜症の診断
• 膣・直腸双合診
• 経膣超音波検査
卵巣チョコレート嚢胞の診断に有用
• MRI,CTスキャン
卵巣チョコレート嚢胞と卵巣腫瘍との鑑別に有用
• 腹腔鏡検査
特に不妊を主訴とするケースではこの検査を選択
• 血液検査
CA125値 30U/mL以上
4) 子宮内膜症治療の目的、方法
疼痛の軽減、不妊の改善が重要
• 薬物治療
– 低用量ピル
– 低用量ダナゾール療法
– ジェノゲスト (黄体ホルモン)
– GnRHアゴニスト
• 手術治療
– 保存手術:病巣除去、癒着剥離 (主に腹腔鏡下手術)
– 根治手術:単純子宮全摘術+両側付属器切除術
挙児希望のない患者に対して行う
5) ホルモン療法の作用機序
ホルモン療法
GnRH : ゴナドトロピン放出ホルモン, LH : 黄体形成ホルモン,
FSH : 卵胞刺激ホルモン
6) ホルモン療法の投与制限、副作用
副作用
低用量ピル
妊婦または妊娠している可 浮腫、体重増加
能性のある患者には禁忌。 肝機能障害
低用量ダナ
ゾール療法
原則投与4ヶ月
血栓症の既往歴のある患
者は禁忌。
妊婦または妊娠している可
能性のある患者には禁忌。
妊婦または妊娠している可
能性のある患者には禁忌。
原則投与6ヶ月以内
妊婦または妊娠している可
能性のある患者には禁忌。
ジェノゲスト
GnRHアゴ
ニスト
男性化症状(にきび、
体重増加など)
血栓症
不正出血
更年期様症状(のぼせ
など)
骨塩量減少
7) ホルモン療法における注意点
ホルモン療法は子宮内膜を短期に一時的に緩和するだけ
• 月経があるうちは、再発、進行する可能性が必ずある
ことを伝える
• 子宮内膜症は根治手術を受けるか、閉経する以外は、
1回の治療が終わっても、経過観察は欠かさずに行う
ことが大切
参考文献
• 井上裕美ら監修 「病気がみえる vol.9 第2版」
メディックメディア 2009年
• 可世木久幸監修 「STEP 産婦人科① 婦人科」
海馬書房 2009年
• 北原光夫ら編 「治療薬マニュアル2009」
医学書院 2009年
• 持田製薬株式会社HP 「子宮内膜症」
http://www.mochida.co.jp/naimakusho/index.html