イオン交換樹脂 - Thermo Fisher Scientific

イオンクロマトグラフ データシート テクニカルチップ
No.0020T_0910YS
イオン交換分離(その 1)
イオン交換樹脂
イオンクロマトグラフィーの分離法として主にイオン交換が用いられていますが、原理がわかると測定目的に合
った分離の調節やカラムの選択に役立ちます。そこでイオン交換分離の原理を数回に分けて説明します。1 回目
はイオンクロマトグラフィー用カラムに充填されているイオン交換樹脂についてです。
イオン交換樹脂は、基材表面をイオン交換基で修飾したものです。イオン交換樹脂の性質は、基材の材質、基
材の大きさ(粒子径)、基材自体にあいている小さな孔(ポーラス)、イオン交換基の種類、イオン交換基の結合様
式、イオン交換基の数などによって変わります。基材は、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリレート、
ポリアクリレート、ビニルアルコールなどのポリマーが主ですが、一部にはシリカが用いられています。樹脂の直径
は 5-13μm 程度です。図 1 に弊社の代表的な樹脂の例を挙げます。A はマイクロポーラス(微細孔)型の基材表面
にイオン交換基を結合した数十 nm の微細粒子(ラテックス)を配しています。ラテックスは、十分な分離を得られる
よう、イオン交換基の数(イオン交換容量)を多く結合させるための工夫のひとつです。ラテックス型の樹脂は基材
からの距離が近いため、疎水性の基材の影響を受けやすいのが特長です。B はスーパーマクロポーラス(巨大
孔)型で表面にラテックスを配しています。イオン性の弱い成分がポーラス内を通過することで十分に保持されま
す。C はマクロポーラス(大孔)型で、基材に直接イオン交換基を結合させています。直接イオン交換基を結合させ
ると、十分なイオン交換容量が得られないため、図 2 のように、枝を伸ばしてその各先端にイオン交換基が結合し
たグラフト型にしています。枝を伸ばすことによって基材からの距離が遠くなるため、疎水性の基材の影響を受け
にくい樹脂にすることができます。
A. マイクロポーラス
B. スーパーマクロポーラス
C. マクロポーラス
図 1 イオン交換樹脂
ラテックス(表面
にイオン交換基)
基材
A. ラテックス型
グラフト(先端に
イオン交換基)
基材
B. グラフト型
図 2 イオン交換基の結合の違い
陰イオン交換基には第 4 級アンモニウム基が用いられますが、アルキル基の部分をアルカノール基に変えたタ
イプもあります。アルカノール基にすると樹脂表面の疎水性が低下するため、水酸化カリウムのような溶出力の弱
い溶離液を用いても十分に分離できます。陽イオン交換基には、スルホ基、カルボキシル基などがあります。スル
ホ基に比べカルボキシル基は保持が弱く、1 価と 2 価の陽イオンの一斉測定に適しています。
近年の多成分一斉測定のニーズにより、分離をより細かく調整できるよう、イオン交換樹脂の疎水性を抑えたり、
交換基を増やしたり、交換能の低いイオン交換基を結合させるなど、イオン交換樹脂にもさまざまな工夫が施され
ています。