LATEX ALLERGY OASフォーラム2008

LATEX ALLERGY
OASフォーラム2008
第13回ラテックスアレルギー研究会
2008年7月27日(日)
テーマ「手術室・ICUでのラテックスフリー環境」
特別講演
“オーストラリア皮膚科医からみたラテックスアレルギーの最新情報”
Dr. Rosemary Louise Nixon, BSc(Hons), MBBS, MPH, FAFOM, FACD
産業皮膚科教育研究センター
モナーシュ大学、メルボルン
大会長 :
宮坂勝之(長野県立こども病院院長)
会
長野県立こども病院 南会議室(2F)
場:
最寄り駅:JR松本駅
最寄りIC:中央高速長野道豊科
写真は長野県立こども病院全景です
一般演題募集
締切
2008年5月9日(金)
ラテックスアレルギー・OASに関する一般演題を募
集します。演題名、演者名(フリガナ)、所属、抄録
(800字以内)、ご連絡先を下記の大会事務局まで
電子メールの添付文書でお送り下さい。
参加費 3000円
詳細は大会ホームページをご覧ください。
第13回ラテックスアレルギー研究会大会事務局
国立成育医療センター 総合診療部
赤澤 晃 (担当:坂本)
[email protected]
http://www.latex.jp/
松本駅から
松本空港から
長野道豊科インターから
タクシーで20分 3000円弱
車で30分
車で約5分
JR大糸線豊科駅から
3.2km
JR篠井線田沢駅から
3.8km
JR中央西線 新宿-松本間
特急で約3時間
JR中央西線 名古屋-松本間
特急で約2時間
JR篠井線乗り換え 田沢駅下車
JR大糸線乗り換え 豊科下車
タクシー等をご利用ください
ラテックスアレルギー・OAS フォーラム 2008
第 13 回日本ラテックスアレルギー・OAS 研究会の開催にあたって
第 13 回日本ラテックスアレルギー研究会
会長 宮坂 勝之
長野県立こども病院 院長
食品や環境問題が様々な形で話題にされる昨今ですが、その双方にかかわる
ラテックスアレルギーに対する社会的な認知はまだ十分でないと感じていま
す。医療関係者でも“手袋による皮膚かぶれ”だけでなく、様々な食物との交
差感作アレルギーがあることや、致命的なショックの原因となることを知らな
い人は多そうです。アレルギーハイリスク者の多い病院では、現状でも想像以
上にラテックス製品に溢れており、特に手術室や ICU などの環境改善は、将来
の安心な社会に向けて重要な課題です。
ゴム素材として極めて優れたラテックスは、代替となる多くのプラスティッ
クが石油由来であるのに対し環境に優しい物質です。そしてその中に含まれる
特定のタンパク質が抗原として作用する機序も解明されつつあり、その低減、
あるいは除去技術を取り入れた素材への切り替えが環境と経済性を考慮した
上での選択肢になっています。
本研究会では、専門家間でのラテックスアレルギーの防止、治療の最先端の
討論に加え、一般社会の認知度も高め、住みやすい環境作りにも貢献したいと
思います。信州は、アボカドやバナナこそ採れませんが、そば、くり、りんご
など食物アレルギーの原因食物に事欠きません。しかし都会に比べ、喘息も含
めアレルギー患者は少ないのではないかと密かに思うほどの環境の良さがあ
ります。その信州でも、一番魅力的な時期にこの研究会を開催し皆様にご参集
いただけることは幸せです。
会場の長野こども病院は、中央線松本駅、中央高速長野道豊科インターに近
く、お城や温泉、上高地、美ヶ原、わさび園、ちひろ美術館、そして安曇野カ
ントリーゴルフ場をはじめとした沢山のリゾート資源を手近に堪能できます。
この機会を、皆様の学問と健康増進の機会にしていただければ幸いです。
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参加者へのお知らせとお願い
Ⅰ.会期
2008 年 7 月 27 日(日)
9:00∼16:30
Ⅱ.会場
長野県立こども病院
〒399-8288
長野県安曇野市豊科 3100
TEL(0263)73-6700
FAX:(0263)73-5432
松本駅から
タクシーで 20 分 3000 円弱
松本空港から
車で 30 分
長野道豊科インターから
2.3km(車で約 5 分)
JR 大糸線豊科駅から
3.2km
JR 篠ノ井線田沢駅から
3.8km
JR 中央東線 新宿−松本 間
特急で約 3 時間
JR 中央西線 名古屋−松本 間 特急で約 2 時間
JR 篠ノ井線乗り換え田沢駅下車
JR 大糸線乗り換え 豊科駅下車
タクシー等をご利用下さい
-2-
抄
録
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集
- 14 -
一般演題 I
座長
内藤
徹
(福岡歯科大学 総合歯科)
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1. 出産処置中のアナフィラキシーショックを契機に診断に至った、
ラテックス-フルーツ症候群の 1 例
猪又直子、井上雄介、前田修子、桐野実緒、池澤善郎
横浜市立大学 皮膚科
【症例】29 歳女性。1999 年(21 歳時)より手術室看護師として勤務。既往歴
にアトピー性皮膚炎あり。現病歴は、勤務当初よりパウダー付ラテックス手袋
の装着時に局所に膨疹が出現していたため、自己判断でパウダーフリー手袋を
使用していた。2006 年、バナナを摂取後、鼻閉、両眼瞼腫脹、両上肢や体幹に
膨疹が出現した。2007 年、第一子を出産中に、術者がパウダー付ラテックス手
袋(トリフレックス○R)を装着し、局所麻酔下に会陰切開を施行した。20 分後、
両大腿内側に膨疹が現れ、急速に眼球浮腫、呼吸苦、血圧低下も出現した。ア
ナフィラキシーショックが疑われ、エピネフリン皮下注とステロイド静注にて
数時間後に軽快した。局所麻酔薬アレルギーの疑いにて、産科から当科紹介受
診となった。また、出産後、アボガドや栗、パッションフルーツを摂取した時
にも 1 時間以内に両眼瞼浮腫と膨疹が出現した。血液検査では、血清総 IgE 値
57IU/ml、CAP-RAST はラテックスが class3、アボガド、バナナが class2 であ
った。プリックテスト(SPT)ではトリフレックス○R
抽出液、non-ammoniated
latex、クリ、アボガド、キウイ、バナナ、パッションフルーツが陽性で、ガ
メックス○R抽出液は陰性であった。さらに rHev b 1,3,5,6.02, 7,8 を用いて
SPT を実施し、Hev b 6.02 のみ陽性であった。一方、局所麻酔薬の皮内試験は
陰性であった。以上より、職業性のラテックスアレルギーと診断した。また、
食物アレルギーは、Hev b 6.02 と食物クラス I キチナーゼの間の交叉反応性に
よるラテックス-フルーツ症候群と推察した。
【考察】自験例は医療従事者であったが 6 年間も診断に至らず、アナフィラキ
シーショックを経験してようやく診断された。ラテックスフリー化されていな
い施設ではいまだに新規発症例が存在するものと推察され、今後も院内対策や
職員への啓発が継続的に実施されることが重要であると考えた。
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2. ラテックスーフルーツ症候群を伴う特発性側弯症の手術例の経験
町田正文、福田健太郎、山岸正明
国立病院機構村山医療センター 整形外科
今回われわれは LFS を見逃し麻酔導入直前に麻酔科医に指摘され、手術を延
期しラテックスを含まない製品を用いて手術を行い、LA 症状を誘発せずに治療
できた症例を経験したので報告する。
症例:45 歳、女性。主訴:腰痛、右下肢痛
既往歴:20 歳時、馬蹄腎にて手術を受けた。27 歳時出産後、バナナを食べた
直後に咽頭違和感、嘔吐、全身蕁麻疹などのアナフィラキシーを呈したので、
以後バナナの摂取を避けていた。35 歳時にアボガドを食べてアナフィラキシー
ショックを起こし、原因不明のまま救命処置が行われた。37 歳時にはキウイを、
40 歳時には冷麺を食べ、下痢・嘔吐を起こした。30 歳時、指輪、ゴム製手袋
による皮膚症状があり、皮膚科にて接触性皮膚炎と診断された。
現病歴:11 歳で Cobb 角 36°の側弯変形を指摘され、前医にて Milwaukee 頚・
胸・腰・仙椎装具を 3 年間、その後 Boston 装具を1年間装着したが治療を中
止し放置した。38 歳時より腰痛が出現したため前医を再受診するも、治療の必
要がないとのことで経過観察となる。しかし腰痛が徐々に増強し、2006 年 11
月 9 日当センターを受診し、手術目的にて 2007 年1月 18 日入院した。X線上
T12-L4 の Cobb 角 50°の側弯変形があり、腰椎前弯は消失していた。入院後、
栗を食べ顔面紅潮、眼瞼結膜の充血を呈したが、経過観察にて軽快した。1 月
22 日手術を予定していたが、麻酔導入直前に麻酔医より既往歴から LFS を指摘
され、1月 29 日に手術を延期しラテックスを含む製品を排除した状態での矯
正・後方固定術を施行した。術中・術後 LA 反応はみられなかった。本例にお
いては、問診から得られた情報から LFS を疑うことの重要性を痛感させられた。
医療事故が増加している現在、LA の正しい知識を普及することが LA の予防に
つながると思われる。
- 18 -
3. 周術期に口腔アレルギー症候群を呈する患者における原因食物と
ラテックス特異的IgE抗体発現度の比較
下雅意学 1)、池田浩己 2)、伊良波浩 1)、畑埜義雄 3)、榎本雅夫 4)
日本赤十字社和歌山医療センター 麻酔科 1)
日本赤十字社和歌山医療センター 耳鼻いんこう科 2)
和歌山県立医科大学付属病院麻酔科学教室 3)
NPO 日本健康増進支援機構
4)
ラテックスアレルギーは周術期において重篤なアレルギーを起こす疾患の
一つである。手術室においてはできるだけラテックスを含まない製品に変更す
る必要があるが、その費用対効果と材質の問題があり、すべての製品をラテッ
クスフリーにすることは難しい。そこで周術期におけるラテックスアレルギー
患者をできるだけ正確に把握する必要がある。今回我々は、術前診察時におい
て口腔アレルギー症候群(OAS)を呈する患者に対し、ラテックス特異的 IgE
抗体を測定し、原因食物数とも比較したので報告する。
対象:方法:2004 年 3 月から 2008 年 1 月の期間中に、全身麻酔下手術患者
20,941 人の問診表で口腔アレルギー症候群を認めた 176 人を対象とし、口腔症
状を誘発する食物(メロン、クリ、バナナ、キウイ、アボカド、トマト、パイ
ナップル、グレープフルーツ、イチゴ)、ゴム製品による症状、アトピー性皮
膚炎(以下 AD)
、アレルギー性鼻炎(以下 AR)、気管支喘息(以下 BA)の有無
を問診した。また術前にラテックス特異的 IgE 抗体価を CAP-RAST で測定し、
抗体価の有無で 2 群に分け、口腔アレルギー症候群を呈する食物の総数を比較
した。統計処理はχ2 検定、Mann-Whitney 検定、Student-t 検定を用いた。表
記は中央値(25-75%)
、あるいは平均±標準偏差で行った。
結果:2 群間においてバナナとメロンに対する OAS の有無で有意差(p=0.003、
0.003)を認めた。また、ゴム製品による症状、AD、AR、BA の有無では有意差を
認めなかったが、総 IgE 値、好酸球数、および口腔アレルギー症候群を呈する
総食物数に有意差(p=0.018、0.018、0.006)を認めた。
まとめ:術前診察時にバナナとメロンに対する OAS を認めたり、総 IgE 値、
好酸球数、口腔アレルギー症候群を呈する食物の総数が多い場合、ラテックス
特異的 IgE 抗体価が上昇している可能性が高く、ラテックスセーフティーの環
境を準備することが重要であると考える。
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- 20 -
一般演題 II
座長
柴田
瑠美子
(国立病院機構福岡病院
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小児科)
- 22 -
4. ラテックスゴム手袋による接触皮膚炎の1例
角田孝彦
山形市立病院済生館 皮膚科
51歳男性。3年前から製薬会社の無菌室でラテックスゴム手袋をつけて仕事
をしている。
仕事をはじめて1年ぐらいして両手に湿疹がでるようになった。ふだんはMe
di−GripPFを使っている。2,3日でも仕事をしないと湿疹は少しよ
くなる。ニトリルゴム手袋はややいいが密着性がない。これまで食物で蕁麻疹
なく、りんごやバナナを食べて口の中がかゆくなることもない。花粉症はない
という。
IgEは881IU/ml。特異的IgE
クラスはラテックス0、バナナ1、スギ花粉3。
プリックテストでラテックス(−)
、バナナ(−)
。
パッチテストでMedi−GripPF(+)、ラテックスシート(+)
、
バナナ(−)、Thiuram
mix(+)、PPD Black
rubb
er mix(−)、Mercapto mix(−)、
Dithiocarbamate mix(+)
。
ラテックスの即時型アレルギーの報告は多いが、遅延型アレルギーの報告は意
外に少ない。
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5. ラテックスとシリコンアレルギーが疑われた患者の麻酔経験
大浦由香子、福山達也、秋山さやか、野本華子、
北岡良樹、田村和美、宮尾秀樹
埼玉医科大学総合医療センター 麻酔科
昨今、ラテックスフリーの麻酔科関連の道具が増えてきた。しかし、ラテック
スフリーの商品の素材まで、理解している人は多くないのではないか。今回ラ
テックス、シリコンアレルギーが疑われた症例に対し、苦労した症例を経験し
たのでここで、報告する。症例.30 歳女性、子宮外妊娠にて腹腔鏡下卵管摘出
術の緊急手術の申し込みがあった。本人の話で、シリコン、ラテックスアレル
ギー、アスピリン、抗生剤アレルギーがあった。製品の素材がわからないもの
があったため、一時は脊椎麻酔にて開腹手術を考慮したが、シリコン、ラテッ
クスフリー製品を揃えられたため、予定通りの手術となった。麻酔はプロポフ
ォール、マスキュラックスにて導入、維持は笑気、酸素、セボフルラン、フェ
ンタニルにて行う。術中特に問題なく、抜管して退室となる。今回の経験より、
麻酔科は、麻酔、手術に使う製品の素材を知っといたほうが、いいと思われた。
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解説講演 I
座長
松永
佳世子
(藤田保健衛生大学 皮膚科)
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ラテックス-フルーツ症候群 up to date
矢上晶子
国立成育医療センター研究所 免疫アレルギー研究部
ラテックス-フルーツ症候群とは、天然ゴム製品が原因である即時型アレル
ギーのラテックスアレルギー患者の一部が、ある種の植物性食品に対しても同
様の症状を起こす現象を指す。この症候群は、花粉症に伴う食物アレルギー症
候群と同様の発症機序(クラス2食物アレルギー)で引き起こされると考えら
れている。原因となる果物や野菜は種の枠を越えており、非常に幅広い食品が
現在までにリストアップされている。臨床症状としては、摂取後の口腔内違和
感やピリピリ感などの口腔内症状から全身性蕁麻疹やアナフィラキシーショ
ックなどの重篤な全身症状を呈する場合まで様々である。
現在までに 13 種の蛋白質がラテックスアレルゲンとして正式に登録・命名
されており、その多くがゴムの木の生体防御に関わる蛋白質である。生体防御
蛋白質は進化の過程でその構造がよく保存されている。したがって、ゴムの木
の生体防御蛋白質に感作された患者は、他の植物が作り出す、構造が類似した
生体防御蛋白質に対しても即時型アレルギー反応を起こし得る。実際、生体防
御蛋白質の一種(pathogenesis-related protein(PR)-3 ファミリー)である
クラスⅠキチナーゼが、アボカドやクリ、バナナといった植物性食品に含まれ
る重要な交叉反応性アレルゲンであることが明らかにされている。クラスⅠキ
チナーゼは、主要なラテックスアレルゲンの一つであるヘベイン(Hev b 6.02)
に相当する構造単位を N-末端部に含んでおり、このヘベインに類似した部分構
造が、抗ヘベイン IgE 抗体に対するエピトープを提供する。そのため、ヘベイ
ンに対して感作が成立した患者はこの酵素を含む様々な植物性食品に交叉反
応を示す可能性が生じる。この他にも、Hev b 7 や Hev b 8 などもラテックス
ーフルーツ症候群の原因となるため、医師はラテックスアレルギー患者に対し
てラテックスーフルーツ症候群について適切な生活指導を行うことはとても
大切である。
今回の講演では、ラテックスーフルーツ症候群における交叉反応性の機序や
現在までに明らかにされた交叉反応性抗原について概説したい。
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特別講演
座長
宮坂
勝之
(長野県立こども病院)
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An Australian Dermatologist's Perspective
on Latex Allergy and Update on Latex Use in the Operating Room
Dr. Rosemary Nixon
Dermatologist and Occupational Physician, Occupational Dermatology
Research and Education Centre, Skin and Cancer Foundation Victoria,
Melbourne, Australia
Since 1993 I have personally assessed over 3500
patients referred to the Occupational Dermatology
Clinic with dermatitis for patch testing, predominantly
from dermatologists but also from allergists, general
practitioners and occupational health and safety
personnel. In each case it is important to try and
identify all the factors contributing to an individual’s
skin
condition.122
patients
(3.5%)
have
been
diagnosed with latex allergy contributing to their skin
rash, and for 59 it was the primary diagnosis.
We diagnosed our first case of latex allergy in 1993, then none until 1997 when
8 cases were diagnosed. The peak year for diagnosing latex allergy was 2002,
when 20 cases were diagnosed. Since 2004, reactions have stabilised at 11-13
cases yearly. In the early years there were several health professionals who
were highly allergic to latex and who needed to change their jobs, but
fortunately in recent times we have not seen such severe cases.
Latex allergy occurred predominantly in healthcare workers but also in those
working in the food industry, hairdressing and in trades, often because of the
inappropriate use of powdered latex gloves. We have cautioned against the
use of latex gloves in food handling, and reported a case of anaphylaxis in a
highly latex allergic individual who ate food prepared by a latex glove-wearing
food handler. In addition we undertook an intervention study in a popular
Victorian food market to reduce the use of latex gloves. Hairdressers, who in
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our experience have high rates of atopy, should also avoid latex gloves.
On the other hand, we have observed several instances of healthcare workers
exposed to bodily fluids whom in their efforts to avoid latex gloves, have worn
vinyl gloves which may not provide appropriate protection from infectious
agents. These nurses predominantly worked in the aged care sector where
there are less resources available.
We have recently reviewed all cases of occupational contact urticaria seen in
the clinic, from 1993-2004. Those with occupational contact urticaria including
latex allergy were much more likely to be atopic (p< 0.001). In recent years we
have found that assessing IgE levels has been a useful measure. All patients
who wear disposable or reusable rubber gloves are routinely assessed with a
RAST test to latex and total IgE level. Not surprisingly, we have noted that
those with high IgE levels are more likely to develop positive RASTs to latex.
While allergy to cornstarch is rare, we recently reported a case of a nurse who
appeared to react to cornstarch in her disposable gloves: both latex and nitrile,
powdered and non-powdered. She was allergic to corn. It was found that it is
possible for cornstarch to be present in small quantities in some brands of
“powder-free’ gloves. Cornstarch powder used as a donning agent in latex
gloves is known to be an allergen carrier and can enhance latex
hypersensitivity. In addition, the amount of latex protein that binds to glove
powder is not just related to protein levels in the gloves, but other factors
relevant to the manufacturing process or the properties of the powder itself.
Recent research regarding the use of latex gloves, particularly in the operating
theatre, will be reviewed. This includes findings that while nitrile and latex
gloves both had similar gross dexterity, fine finger dexterity was increased in
latex gloves. Nitrile gloves had higher puncture resistance to a steel probe
(0.8mm diameter), but latex gloves were more resistant to a dental injection
needle (0.45mm diameter). It was also commented that latex gloves have the
ability to reseal themselves. Additionally, it was reported that surgical gloves
- 32 -
release lower quantities and larger sizes of latex allergen containing particles,
less likely to be respirable than the smaller sized particles on powdered
examination gloves.
In a study on the failure rate of 11,118 surgical gloves after use, non-latex
gloves were significantly more likely to fail (8.4%) than latex gloves (6.9%). The
main reason for failure of latex gloves was length of use (more than 6 hours).
Finally it was recently reported in Singapore, that whilst only 11% of surgical
gloves had levels of latex allergens thought to be high enough to cause
symptoms in sensitised persons, 83% of examination gloves exceeded this
level.
Statistics
Severe cases
Anaphylaxis
Hairdressing
Food handling
Atopics-IgE
OR-David Koh, cornstarch, glove characteristics, theatre
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(和訳)
オーストラリアの皮膚科医からみた
最近のラテックスアレルギーの知見と、手術室でのラテックス使用
ニクソン ローズメリー
皮膚科医、産業医
ビクトリア皮膚・癌財団 職業性皮膚疾患教育研究センター
オーストラリアビクトリア州、メルボルン市
私は 1993 年以来約 25 年間、パッチテストの目的で職業性皮膚疾患診療所に紹
介された 3,500 名を越える患者の評価に関わってきた。テストの紹介元は主に
は皮膚科医であるが、アレルギー科医、一般開業医、そして労働安全関係者も
含まれていた。依頼された全ての患者で、個々人の皮膚の状況に影響するあら
ゆる要素を同定しようとする努力が重要であった。その中の 122 名(3.5%)の患
者で、皮膚発疹にラテックスアレルギーが関与していると診断され、その半数
近くの 59 例ではラテックスアレルギーが主診断であった。
私たちが経験した最初のラテックスアレルギー症例は 1993 年であった。第 2
例目は 1997 年であったが、その年には 8 例が診断された。その後 2002 年にピ
ークを迎えたが、2004 年からは毎年 11∼13 例で横這いの状態である。最初の
頃は、極めて強いラテックスアレルギーのため転職しなければならない患者も
何人かいたが、最近ではそれほど強いラテックスアレルギー患者は少なくなっ
た。
ラテックスアレルギーは、主には医療従事者の問題であるが、食品製造産業関
係者や理・美容関係者、そして貿易関係者にも見られ、大多数は不適切なパウ
ダー付きラテックス手袋の使用によるものである。私どもは、食品処理作業者
のラテックス手袋使用に警告を与えたが、それはラテックス手袋を着用した作
業員によって調理された食物を食べた、極めて強い反応を有するラテックスア
レルギー患者が、アナフィラキシーショックをおこした症例を経験し報告した
からである。加えて、食品処理関係者のラテックス手袋の使用低減を目的とし
て、有名なビクトリア市場(メルボルンにある南半球最大の青空食品マーケッ
- 34 -
ト)で介入研究も行った。私どもの経験では、理・美容師がアトピーを持つ頻
度は高いが、彼らもラテックス手袋の使用を避けるべきである。
その一方、何人かの医療従事者が、患者体液への暴露を防ぐためにラテックス
製品の代わりにビニール製品を使用し、ラテックスへの暴露は避けられたもの
の、病原体からの防護が適切に行えなかった事例も経験している。それらの事
例の看護師は、主には十分な資材が利用できない老人介護担当者であった。
最近、私どもの診療所が過去 11 年間(1993 年から 2004 年)に診察した接触性蕁
麻疹の検討を行ってみた。ラテックスアレルギーを含む接触性蕁麻疹は、アト
ピー性である場合が多かった(p< 0.001)。そして最近では、IgE レベルの評価
が有用だと考えている。使い捨てあるいは再使用可能なゴム製手袋を使用して
いる全ての患者でラテックスに対する RAST 値と総 IgE 値の測定をルーチンに
行っている。当然のことながら、IgE 値が高値である患者では、ラテックスに
対する RAST 値も高かった。
コーンスターチ(トウモロコシ由来の澱粉)に対するアレルギーは少ないが、
私どもは最近、使い捨て手袋に用いられたコーンスターチに反応したと思われ
る看護師の症例を報告した。ラテックス製でもニトリルゴム(ブタジエンアク
リロニトリル共重合体)製であっても、そしてパウダー付きでも、パウダーフ
リーでも反応がおきた。この看護師は、コーンスターチにアレルギーがあった。
そして調べてみると、メーカーによっては“パウダーフリー”であっても、微
量のコーンスターチが付着していることが分かった。ラテックス製手袋の着用
時の滑りを良くする目的で使われるコーンスターチは、抗原となる可能性があ
り、またラテックスへの過敏性を増強することでも知られている。加えて、手
袋に用いられるパウダーと結合するラテックス蛋白は、手袋に含まれるタンパ
クの量だけでなく、手袋の製造処理工程や、パウダー自身の性状とも深く関わ
ることが知られている。
最近の、特に手術室でのラテックス手袋使用に関する研究について考察したい。
手術時に問題となる、手袋の操作に関しては、大きくはラテックス製とニトリ
ルゴム製では差異はないものの、微細な指先の操作性はラテックス製でより向
上する。ニトリルゴム製は、スチール製ゾンデ (直径 0.8mm) に対して破れに
- 35 -
くいが、ラテックス製は歯科用注射針 (0.45mm) に対して穴があきにくく、一
旦開いた穴も再び閉じやすい。加えて、外科用手袋が遊離するラテックス抗原
含有粒子は、量が少ない上にサイズが大きいことから、サイズが小さいパウダ
ー付きの診察用手袋の場合より浮遊吸入されにくいとも報告されている。
外科用手袋 11,118 の使用後の破損率(穴があいたり、破れたり)を調べた研
究では、ラテックス製手袋の破損率が 6.9%であったのに対し、非ラテックス製
手袋では 8.4%と有意に高かった。ラテックス製手袋の主な破損理由は、長時間
使用(6 時間以上)であった。最後に、ラテックスに感作された患者に症状を
もたらすレベルのラテックス抗原量を調べた最近のシンガポールからの報告
であるが、外科用手袋では 11%がそのレベルを超えていたに過ぎないのに対し、
診察用手袋では実に 83%がそのレベルを超えて、高かった。
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解説講演 II
座長
赤澤
晃
(国立成育医療センター
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総合診療部)
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ラテックスアレルギーの予防の重要性
近藤陽一
国立成育医療センター 手術集中治療部
現在手術室で使用するさまざまな物品の添付文書にラテックスフリーと明
記してあるものが増加している。 ラテックスアレルギーではない通常の症例
ではラテックスを含む製品を使用して、既往歴や術前アレルギー検査でラテッ
クスアレルギーが疑われる症例に限ってその時だけラテックスフリー製品を
使用するという考え方が一般的である。しかし特定の症例にかぎり特別な製品
を準備するには、症例の同定という困難な問題がある。
小児では気管支喘息が多いこともあり、我々の施設では定時手術の前に麻酔
科とアレルギー科の双方で術前アレルギーチェックを行っている。
アレルギーチェックを目的とした問診表を全例チェックし、異常があればアレ
ルギー科の術前外来を受診し、必要な検査(特異的 IgE)や治療を行ってから
手術にのぞむようにしている。ラテックスに対する特異的 IgE が陽性またはラ
テックスアレルギーを示唆する既往歴があれば、ラテックスアレルギーとして
扱う。
しかし術前アレルギーチェックを過去に受けてラテックス特異的 IgE が陰性
であっても、その後たびたび手術を受けてラテックスに感作され、開腹手術中
に外科医の手袋によるアナフィラキシーショックを起こした症例や、緊急手術
で術前アレルギーチェックを行わなかったためアナフィラキシーショックを
予知できなかった症例を経験したため、術前アレルギーチェックの限界を感じ
るようになった。
小児では繰り返し手術を受けることが多いし何回手術を受けたらラテック
スアレルギーとして扱うか、二分脊椎や尿路奇形すべてをラテックスアレルギ
ーとみなすべきかどうかも明らかでない。ラテックスに対する特異的 IgE の有
無がすなわちラテックスアレルギーかどうかの問題も解決していない。ラテッ
クスに対する特異的 IgE を検査するための採血が子供に与える負担や検査に要
するコスト(特異的 IgE の保険点数はシングルアレルゲンあたり110点)も
無視できない。
以上の点を考慮すると、術前に漏れなくラテックスアレルギーの有無をチェ
ックするよりは、あらゆる手術患者にラテックス製品を使用しないという根本
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的な予防策が望ましいであろう。ラテックス(含有手袋)に暴露される機会の
多い歯科医、外科医、麻酔科医、手術室看護師にラテックスアレルギーが多い
ことはよく知られているので、
「感作を減らす」
「職業病の予防」という観点か
ら手術室からラテックス製品を排除する試みは意義あることと思われる。
国立成育医療センター手術室では2002年の開院以来可能な限りラテッ
クス製品の排除を試みてきたので、その概要を紹介する。
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一般演題
III
座長
大畑
(長野県立こども病院
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淳
麻酔集中治療科)
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6. 院内手術部を対象としたラテックスアレルギーに関するアンケート調査
前田修子、猪又直子、繁平有希、井上雄介、廣門未知子、池澤善郎
横浜市立大学 医学部 皮膚科
【背景】近年、ラテックスアレルギー(LA)は減少傾向にあり、医療従事者の
認知度も向上したものと考えられている。昨年、当院看護師が出産時にラテッ
クスゴムによるアナフィラキシーショックを発症した。この症例の発生を契機
に、院内の LA 対策を見直す必要性があると考えた。
【目的】今回、我々は、医療従事者、特に周術期管理に関わる医療従事者(手
術室看護師、麻酔医師、皮膚科医師、外科系医師)を対象に LA やラテックスフルーツ症候群(LFS)についてアンケート調査を行い、それら疾患に対する
認知度を評価した。
【方法】手術部看護師、麻酔科医師、皮膚科医師、外科系医師(任意)を対象
に、質問紙によりアンケート調査を実施した。
【結果】回答(回答率)は、手術室看護師 24 例(100%)、麻酔科医師 11 例(100%)、
皮膚科医師 18 例(78%)
、外科系医師 14 例であった。アンケート調査では、
「LA
を知っているか」は、「聞いたことがある」を含め、医師、手術室看護師とも 100%
であった。しかし、「LA のハイリスク群を知っているか」は、麻酔科医師と皮膚
科医師はほぼ 100%であったが、手術室看護師 54%、外科系医師 43%であった。
「LFS について知っているか」は、手術室看護師 59%、麻酔科医師 82%、皮膚科医
師 94%、外科系医師 57%であった。
「LA の自覚症状があるか」は、手術室看護師
58%、麻酔科医師 45%、皮膚科医師 17%、外科系医師 43%であり、そのうち精査
を実施していたのは、手術室看護師 10%、医師は全科とも 0%であった。
【考察】調査結果からは、LA や LFS についての認知度は麻酔科医師と皮膚科医
師は高いが、看護師や外科系医師は LA という疾患名は知っているものの、LA
や LFS について詳しい知識や対処法については周知されていないことが推察さ
れた。
今後、職員の移動などを考慮すると、医療従事者へ LA に関しての知識を普及
するために、定期的な説明会の開催などを通して継続的な啓発が必要であると
考えられた。
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7. ラテックスアレルギーによるアナフィラキシーショック症例での,
電子麻酔記録 PaperChart の有用性
杉本由紀*、中尾正和、松本千香子、白石成二、小村智子、
撰
圭司、渡邊愛沙、吉田研一
JA 広島総合病院 麻酔科
*現)広島大学病院 麻酔疼痛治療科
術前問診でアレルギーが疑われず、術中異常低血圧となった症例を経験し、麻
酔管理と術後の症例検討を行う際に電子麻酔記録(PaperChart;神戸海星病院
麻酔科越川正嗣の開発によるフリーウェア)の有用性を認識したので紹介する。
症例は 71 歳女性、大腸癌に対して低位前方切断術が予定された。術前診察で
はアレルギーの既往もなく、大きな全身合併症はなかった。初回の麻酔管理で
は、気管粘膜下腫瘍に伴う挿管困難を認め、その原因検索のため手術を一度中
止とした。精査で腫瘍は石灰化のみで悪性所見を認めなかったため、14 日後に
再度手術計画された。2 回目の麻酔導入はビデオ喉頭鏡 GlideScope による気管
挿管で ID 5.0mm を使用した。執刀までは著変無かったが、腹腔内操作開始直
後に収縮期血圧が 40 に低下し脈拍は 110 に上昇した。昇圧剤等で対応したが
循環動態が安定せず手術を一時中断し、腸管牽引症候群、心疾患、ラテックス
アレルギーなどの鑑別診断と同時にラテックスフリー手袋、尿道留置カテーテ
ルへ交換した。手術中止を検討したが、家族の希望で循環動態が安定した後に
手術を再開した。術後は集中治療室に入室したが、合併症無く経過した。術後
14 日目のラテックス皮内反応は強紅斑を示し特異的 IgE が陽性であったため、
ラテックスによるアナフィラキシーショックと診断した。
手書き麻酔記録では急変時には処置が最優先されるため記録は乱雑で不正
確となりやすい。自動麻酔記録では処置に集中できて記録もデータの記載漏れ
もなく正確に記載されるため、本症例でも術後の症例検討が容易であった。本
症例での経験により単に麻酔科医の手抜きと誤解されることもある自動麻酔
記録の有用性を再認識できた。
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8. 手術室でのラテックス環境
山科元範、大畑 淳、阿部世紀、笠井正志、椎間優子、市野 隆
長野県立こども病医院 麻酔集中治療科
長野県立こども病院は開院 15 年の比較的新しい施設であるが、ラテックス
フリー環境に整備されていない。手術室内や、手術器材で、ラテックス製品が
使用されている現状を報告する。
手術室で使われている製品で、開院から非ラテックス製品は麻酔患者呼吸回
路、マスク、自己膨張式バッグ(アンビューバッグ)、エアーウェイ、導尿カ
テーテルなどであった。その後、非ラテックス製品に変えたものは、リザバー
バッグ、ジャクソンリース回路、胃瘻チューブ、最近では点滴確保用の駆血帯
などであるがまだ完全ではない。血圧測定用のカフの一部にラッテクスが使わ
れているものも存在している。一番問題なのは外科用手袋で、ラッテクス製品
パウダー有り、ラッテクス製品パウダーフリー、非ラテックス製品と3種類の
製品が使用されている。最近はパウダーフリーの使用が増えているが、非ラテ
ックスの使用は少ないのが現状である。またネラトンカテーテル、輪ゴムなど
も手術中に使用されている。また手術室で使用している日用品にもラテックス
製品がある。
手術室でラッテクス製品を除くことも重要であるが、手術室のみならず病院
全体での取り組みが必要であると考える。
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- 46 -
一般演題
IV
座長
斎藤
博久
(国立成育医療センター研究所 免疫アレルギー研究部)
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9. グローブの対アレルギー安全性に関する最近の状況
中出伸一
有限会社 G&A
演者はゴム新素材研究会からラテックスアレルギーフォーラムの活動を通し
て、グローブの対アレルギー性能改善状況の把握に努めて来た。
現在、医療分野向けグローブの対ラテックスアレルギー性能は大幅に改善が進
んだと判断される。一部に対ラテックスアレルギーの改善にのみ目が行き、ゴ
ム薬品の残渣による接触皮膚炎への配慮の欠けた製品もあったが、それらも改
善されつつあると見ている。さらに新しい素材の適用で対アレルギー性能だけ
ではなく、蒸気透過性が良く長時間着用しても蒸れない理想的なグローブの登
場も期待可能となりつつある。しかしながら、医療用でも歯科で常用されてい
るパウダータイプのラテックスグローブや他の一般向けグローブでは目を背
けたくなる製品も横行している。近年、低価格品販売店が独自ブランドでの展
開力をつけたことも一因と思われる。さらに最近ラテックスアレルゲンを含ま
ないと信じて来たニトリル製グローブから、高レベルの溶出蛋白質が検出され
る事態に直面して、困惑している。原因追求を継続しているところではあるが、
工程での汚染を考えざるを得ないケースが多いと推定している。これら最近の
状況を紹介し関係者の注意を促したい。
加えて演者が、数年来試みて来たラテックス製品のアレルゲンの簡易分析法に
ついて紹介する。グローブなどのラテックス製品の安全性について、その判定
を委ねられることが多いが、その際に問題になるのは、分析費用の高さと結果
の出るのに時間がかかる事である。
一般に、ゴム製品を構成する物質は多様であり、正確な分析は難しい。しかし、
製品が危険であるかどうかの判定は、必ずしも正確な分析を必要としない。
ゴム製品の中でもラテックス製品の多くは極めて単純な配合が採用されて
おり且つ使用する薬品類も限定されている。ゴム製品に知識のない分析技術者
が分析する場合に較べて、充分な知識を持ったプロはより簡単な手段で安全性
を判定し得る。実例に基づき紹介する。
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10. リグニン関連物質のラテックスアレルギー・アトピー症状の
抑制効果について
古藤田香代子
一橋大学市民社会教育センター
ラテックスアレルギーは、ゴム製品に使用されるゴムの木の抽出物が原因で
発症すると言われている。同様にリグニンも樹木等から得られたものである。
しかし、ゴムの抽出物は木の表面を傷つけて樹液を採取することから、光合成
によって得られる木の成分(栄養分)である。一方、リグニンは細胞と細胞を
接着させている成分である。何故、背骨のない木が重力に逆らって立っていら
れるのか。その答えがリグニンの接着力である。
このように同じ木の抽出物でも、機能によって異なることを知っていただき
たい。樹木には樹皮のすぐ内側にある内樹皮(師部)が根から水分を吸い上げ、
葉のクロロフィルが光と CO2 を利用して光合成を行い、生成した糖分が流れて
いる。いわば生物の根幹の部分を成している。その内側には形成層という活発
に細胞分裂して成長している層がある。それに対して、木の中心部の細胞(辺
材)は殆ど活性力がなくなっている(水酸基が一つを除いてメチル化している)。
皆さんは年老いた木の体を支えるため、コンクリートが木の空洞に詰めてある
のを見たことがないだろうか。師部さえ傷つかなければ木は生きていけるので
ある。
しかし、中心部の細胞は決して死んではいない。虫がついて穴が開きそうに
なると、精油がその穴を塞いでしまうこともある。この精油は樹種によって異
なるが、いずれも強い抗菌性成分や芳香成分を何種類も有しており濃度が濃い
ため、アロマテラピーではかなり薄めて使用している。また、精油がプラステ
ィックの可塑剤になることが分かってきた。数%濃度を混練すると粘弾性が高
まることも立証できた。すなわちゴムほどではないが粘弾性を持たせることが
できるのである(共有結合による三次元綱目構造ができるため→現在緩やかな
抗菌成分を有する歯科材料を開発中)。
このような機能や樹皮を傷つけて採取する方法などを総合して考えると、ゴ
ムの成分は精油由来のものが含まれているのではないだろうか。ラテックスア
レルギーの原因物質が生体防御たんぱく質との見解があるそうだが、生体防御
物質(精油由来成分)とたんぱく質(光合成由来成分)と分けて考えられない
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だろうか。何故ならゴム成分(cis−ポリイソプレン)の構造式[(C5H8)n]には
N が含まれていないからである。むしろ、濃縮過程でたんぱく質がペプチド結
合、または二重結合の部分に付着した可能性がある。また、製造工程で硫黄を
使用する(架橋する)ことで、広い温度範囲で軟化しにくい弾性材料に加工し
ているそうだが、そのこともアレルギーの原因と推定できないだろうか。(但
し、N が含まれている樹脂成分は毒性やアレルギーに対する注意が必要であ
る。)
リグニン関連物質は光合成に関わる成分ではないので、アレルギー源にはな
らないと考えるが、抽出方法や 2 次変化を抑制せずに放置したものは、ゴムの
濃縮過程と同様の結果になる可能性も否定できない。そこで安全性の観点から
電子欠損部分を全て不活性化し、架橋が出来ないように工夫したところ、アト
ピーやラテックスアレルギー初期の炎症が抑制できる事例が現れている。
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11. 日常生活に危険がいっぱい
∼ラテックスアレルギー患者の立場から∼
園部まり子、長岡 徹
特定非営利活動法人 アレルギーを考える母の会
当会にはアレルギー疾患で悩む患者・家族などから日々、幅広い内容の相談
が寄せられる。その中からラテックスアレルギーによって生じる日常生活上の
問題を報告し、「ラテックスフリー」へ向けた課題を考える。
患者は日常生活の中で様々なエピソードを経験している。風船をなめて口の
周囲に発赤、靴底を持って靴を履いた後に口の周囲に蕁麻疹が出現、素足に運
動靴を履いたところゴムベルト部を中心にアトピー性皮膚炎が悪化、園のプー
ルで他の園児のゴーグルに接触して蕁麻疹が出現、ゴムチップを敷き詰めた園
庭で素足のまま水遊びを行いアトピー性皮膚炎が悪化、この保育園では「天然
で健康にいい」という理由で、園児全員が天然ゴム草履を履くことになったと
いう。また、ズボンのサスペンダーのゴムで蕁麻疹が出現、子ども用のマスク
を使い汗でひものゴム成分が染み出して耳切れに。歯科検診時には、ラテック
スの手袋を外してもらったものの洗わないままの手で口内を触れられ唇と歯
茎が腫れた、家族の「腰痛ベルト」を不用意に使用し、咳、鼻汁、頭痛、悪心、
下痢などの症状に襲われ救急受診したなどのエピソードが起きていた。
こうした事態を招かないために患者が危険を回避するのはもちろんだが、医
療関係者、学校(園)関係者、関係業界に対するラテックスアレルギーの啓発
などを通じ、危険が少なく感作をおこさない生活環境を作っていく必要がある。
例えば、資源リサイクル・安全対策の一環として、廃タイヤのゴムチップを園
庭に敷き詰め、学校では机に廃タイヤを再利用したゴムラバーを張り付けてい
る取り組みなどは、危険であるばかりか新たな感作を生む可能性が高いのでや
めるべきだと考える。あらゆるゴム製品代替品の開発も求められる。
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一般演題
V
座長
大矢
幸弘
(国立成育医療センター
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アレルギー科)
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12. スパイスアレルギーの4例
∼原因抗原に関する解析と共に∼
原田
晋 1)、松永亜紀子 2)、森山達哉 3)
はらだ皮膚科クリニック 1)、神戸労災病院皮膚科 2)、近畿大学農学部 3)
スパイスアレルギーの4症例を供覧する。全症例共にセリ科のスパイスが原
因であると診断したが、通常セリ科スパイスによるアレルギーはクラス2およ
びクラス1の両者の機序によって発症しうる。前者は、ヨモギを主体に時にシ
ラカバやハンノキなどといった花粉類との交叉反応性により発症に至る。セロ
リやニンジンなどのセリ科の野菜類とも交叉性を示しうるため、
mugwort-birch-celery-spice
syndrome
や
celery-carrot-mugwort-spice
syndrome などといった名称が用いられている。臨床症状は、通常は口腔内徴候
に留まるが、時には全身性蕁麻疹やアナフィラキシーを呈する場合もある。一
方後者は、主として調理人などでスパイス自体の吸入を続けているうちに感作
をきたし、発症に至る場合が多い。臨床症状は、喘息やアナフィラキシーなど
といった比較的重篤な症状をきたしやすい。その原因抗原は両者間で異なって
おり、クラス2アレルギーの場合には Bet v1 および Bet v2 に加えて、約 60kDa
とのより大きな分子量を有する抗原が birch-celery-mugwort syndrome の交叉
反応性をになう第3の抗原であると考えられている。一方、クラス1アレルギ
ーでは 様々な分子量の多数のバンドの検出が報告されており、一定の見解は
認められていない。自験症例においても、臨床経過からはクラス1の機序が疑
われた症例とクラス2の機序が疑われた症例とが存在していたが、immunoblot
の結果は必ずしも既報告との一致は認められなかった。本邦ではスパイスアレ
ルギーの報告は未だ稀であるが、今後花粉類の抗原性の多様化に伴って、特に
クラス2スパイスアレルギー症例も増加傾向を示すのではないかと危惧され
る。
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13. 2004 年 4 月∼2008 年 3 月の間にラテックスアレルギーを疑い、
皮膚テストを施行した 27 例のまとめ
山北高志 1)、稲葉弥寿子 1)、中川真実子 1)、佐野晶代 1)、安部正通 1)、
中澤有里 1)、矢上晶子 1),2)、松永佳世子 1)
藤田保健衛生大学皮膚科 1)
国立成育医療センター研究所 免疫アレルギー研究部 2)
【対象】2004 年 4 月∼2008 年 3 月の間にラテックスアレルギーを疑い、皮膚
テストを施行した 27 例(性差は男性 4 例、女性 23 例、平均年齢は 31.3±13.8
歳)。
【職業】医療関係者が 14 例(51.9%)を占めていた。その内訳は看護師が最多
で 9 例(33.3%)
、歯科助手 2 例(11.3%)、検査技師、薬剤師および管理栄養士
が各 1 例(3.7%)であった。
【既往歴】アトピー素因を有する症例が 17 例(63.0%)を占めていた。また、
手術の既往のある症例は 4 例(14.8%)であった。
【症状】接触部位に限局した蕁麻疹のみが最多で 17 例(63.0%)
、全身に及ぶ
蕁麻疹が 5 例(18.5%)
、全身症状を伴う蕁麻疹が 3 例(11.1%)
、ショックにま
で至った症例が 2 例(11.3%)だった。
【原因物質】ゴム手袋が最多で 21 例(77.8%)、中心静脈カテーテル、ゴム風
船、指サック、水着のゴム、自転車のハンドルが各 1 例(3.7%)であった。
【検査方法】1)血液検査①血清中の総 IgE 値②ラテックス特異 IgE 抗体
(CAP-FEIA 法)2)皮膚テスト①当科で作成したゴム手袋の抽出液および天然ゴ
ムラテックスシート粗抽出液(RRIM600)を用いたプリックテスト②スクラッ
チテスト③装着試験(1 指)④装着試験(全指)
【血液検査】血清中の総 IgE 値は中 央値 62.4IU/ml(7.9∼4930IU/ml)であっ
た。また、ラテックス特異 IgE 抗体が class 2 以上であった症例は 27 例中 12
例(44.4%)だった。
【皮膚テスト】プリックテストおよびスクラッチテストは 27 例中 7 例(25.9%)
で陽性を示した。陰性であった 20 例のうち 1 例は装着試験 4 時間後に皮疹を
確認し、遅発型反応と診断した。また、1 例はゴム手袋のパッチテストが陽性
だったため、接触皮膚炎と診断した。その他の 18 例は装着試験まで施行し、
問題ないことを確認した。
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14. 小児におけるフルーツアレルギーの検討
吉田幸一 1)、成田雅美 1)、堀向健太 1)、佐塚京子 1)、大石 拓 1)、
後町法子 1)、萬木暁美 1)、野村伊知郎 1)、赤澤 晃 2)、大矢幸弘 1)
国立成育医療センター 第一専門診療部 アレルギー科 1)
国立成育医療センター 総合診療部 2)
【目的】近年、花粉症に伴う野菜や果実に対するアレルギーが成人例を中心に
多くの報告がされている。今回我々は、小児においてフルーツ抗原に対しての
感作状況を検討した。
【対象・方法】2006 年 1 月∼2008 年 5 月に当院でフルーツ抗原に対する SPT
を行った患児を対象とした。陽性例に他のアレルギー合併疾患との関連を検討
した。SPT は主に Prick to prick で行い、判定は陰性、擬陽性、陽性、強陽性
の 4 段階で判定した。
【結果】SPT は 130 例のべ 240 回行い、何らかのフルーツ抗原に陽性か強陽性
を示したのは 68 例であった。平均年齢 5.27 歳(1 歳∼13 歳)
、男児 46 例、女
児 22 例であった。
合併疾患は喘息 20 例(31%)、アトピー性皮膚炎 45 例(66%)、
花粉症 14 例(21%)、食物アレルギー(フルーツは除く)50 例(74%)であっ
た。ラテックスに対して特異的 IgE 抗体測定または SPT を行った 35 名のうち
10 名(29%)が陽性であった。陽性抗原はバナナ 23 例、キウイ 16 例、トマト
15 例、リンゴ 8 例、パイナップル 5 例、マンゴー5 例、アボガド 3 例、ぶどう
3 例、その他 17 例であった。
症例が多かったキウイとバナナについて特異的 IgE と SPT について検討した。
キウイ、バナナともに SPT 強陽性の症例で特異的 IgE が高値になる傾向がみら
れた。しかし、キウイは特異的 IgE が 2 UA/ml 以上を示す SPT 陰性および擬陽
性例がなかったのに対し、バナナは特異的 IgE が 9 UA/ml 以上を示した SPT 陰
性例、擬陽性例がそれぞれ 1 例みられた。
【考案と結論】小児では、バナナ、キウイ、トマトの順に感作をうけている症
例が多く、SPT の結果と特異的 IgE 抗体価の関係はフルーツの種類によって異
なる傾向が認められた。今後は、経口負荷試験などにより実際の症状との関連
を精査する必要があると思われる。
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15. ラテックスアレルギーに加えてシリコンアレルギーが疑われた患者の
看護を経験して
鈴木眞理子
埼玉医科大学総合医療センター 中央手術部
【背景】A 病院では、過去にラテックスが原因と思われる、術中のアナフィラ
キシーショックを経験し、これをきっかけに 2005 年医師、看護師を対象にラ
テックスアレルギーに関する現状調査を行った。その結果をふまえ、アレルギ
ー問診票の変更やパウダーフリー手袋の導入、手術室のラテックスフリー製品
の一覧表の作成など、ラテックスフリーな環境作りを進めることが出来てきて
いる。このような経過の中でアレルギー素因の多い患者の緊急手術を経験した
ので、以下に報告する。
【症例】30 歳代女性、子宮外妊娠のため 2007 年 2008 年の 2 回いずれも緊急手
術を受けることとなった。術前の患者の自己申告により、アレルギーにはシリ
コン、ラテックス、メロン、しょうゆ、アスピリン、抗菌薬、気管支喘息があ
った。
1 回目の手術では、ラテックスフリー製品の確認をし、更にシリコン製品を
排除して、環境を整え、手術が行われた。術中、術後もアレルギー症状はなか
った。アレルギーの診断が出来ないまま退院となった。約 1 年後アレルギーの
確定診断を受けていないまま、2 回目の手術を受けることとなった。1 回目の
手術と同様に手術環境を整え、アレルギー症状を呈することなく周術期は経過
した。
【結論】患者からアレルギーの自己申告のあった場合、アレルギーの診断を行
うことが必要である。また、ラテックスアレルギーに対して対策を整えていた
ため、シリコン製品の抽出が容易であり、手術麻酔に関連する物品の材質をあ
らかじめ知っておくことで、緊急手術にもスムーズに対応することが出来た。
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MEMO
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過去の研究会一覧
第1 回
飯倉洋治
(昭和大学医学部小児科学)
東京 1996.11.9
第2 回
中村晃忠
(国立医薬品食品衛生研究所)
東京 1997.7.8
第3 回
早川律子
(名古屋大学医学部環境皮膚科学)
名古屋 1998.7.18
第4 回
斎藤博久
(国立小児病院小児医療研究センター)
東京 1999.7.24
第5 回
池澤善郎
(横浜市立大学医学部皮膚科学)
横浜 2000.7.8
第6 回
松永佳世子 (藤田保健衛生大学医学部皮膚科学)
名古屋 2001.7.20
第7 回
宮坂勝之
(国立成育医療センター手術・集中治療部)
東京 2002.7.14
第8 回
横田 誠
(九州医科大学歯科保存学第2講座)
福岡 2003.7.20
第9 回
赤澤 晃
(国立成育医療センター総合診療部)
東京 2004.7.25
(三田市民病院皮膚科)
兵庫 2005.7.24
第 10 回 原田 晋
第 11 回 柴田瑠美子 (国立病院機構福岡病院小児科)
第 12 回 秀 道広
福岡 2006.7.23
(広島大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学) 広島 2007.7.29
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第 13 回日本ラテックスアレルギー研究会
広告協賛・協力企業一覧
(敬称略、順不同)
株式会社アンセル・ヘルスケア・ジャパン
安曇野市商工会
アストラゼネカ株式会社
大塚製薬株式会社
小野薬品工業株式会社
株式会社プロミクロス
グラクソ・スミスクライン株式会社
大鵬薬品工業株式会社
田辺三菱製薬株式会社
マイラン製薬株式会社
ファディア株式会社
アステラス製薬株式会社
エーザイ株式会社
キョーリン製薬株式会社
サノフィ・アベンティス株式会社
帝人ファーマ株式会社
万有製薬株式会社
カーディナルヘルス・ジャパン228株式会社
株式会社ジェイエスエス
株式会社ジェイ・エム・エス
東レ・メディカル株式会社
松吉医科器械株式会社
有限会社G&A
有限会社長野映研
株式会社上條器械店
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