基本から学ぶSEO(検索エンジン最適化)(全12回) 第1回:検索エンジンの向こう側のヒトを考える 執筆:益子 貴寛(株式会社サイバーガーデン) 「基本から学ぶSEO(検索エンジン最適化)」では、SEOの考え方や取り組み方を解説します。第1回は「検索エンジンの 向こう側のヒトを考える」。検索エンジンを使っているのも人間、ホームページを見て行動を起こしてくれるのも人間です。 検索エンジンの動向や技術的な視点だけでSEOをとらえないようにしましょう。 ホームページの利用者との関わりや、自分たちが伝えたいコンテンツとの関係を中心に、SEOの基本的な考え方を解 説します。 SEOでは「ヒト」を理解しようと努めることが大切 SEO(Search Engine Optimization)は「検索エンジン最適化」といわれる、ホームページの集客施策のひとつです。 SEOで大切なのは、実際に検索エンジンを利用している「ヒト」をイメージすることです。「検索エンジンに最適化する」と いうよりも、「検索エンジンを使っているヒトに最適化する」のがSEOの中心です。 インターネットユーザーは「知りたい」「買いたい」などの意図をもって検索エンジンを使っています。このような利用者の ニーズに寄り添い、どうしたらよいかを考え、ホームページを改善しましょう。 利用者がどのような言葉で検索し、ホームページに来たのか。その要望に足るコンテンツが提供できているのか。そもそ も、自分たちのホームページが検索エンジンで見つけやすい状態にあるのか。検索エンジンの向こう側で、実際に使って いる「ヒト」を起点に考えることが、SEOでもっとも重要です。 SEOでは「検索エンジンに最適化する」というよりも、「検索エンジンを使っているヒトに最適化する」という意識が大切。 露出、訪問、成果、満足の4ステップとSEO ホームページと利用者との関わりには、露出、訪問、成果、満足という4ステップがあります。このうち、SEOが貢献できる のはどの部分かを考えていきましょう。 露出、訪問とSEOの関係 露出について、関連するキーワードで検索したときに、自分のホームページが結果画面で上位に表示されれば、ひとま ず露出が多い状態といえます。 ただし、ホームページを露出させる場所は、検索エンジンだけではありません。プレスリリースや新着情報を発信する、リ スティング広告やネットワーク広告を出稿する、フェイスブックやツイッターなどにこまめに投稿する、メールマガジンを発 行するのも、露出を増やすのに有効です。 インターネットの手法だけでなく、チラシの配布、看板の設置、タウン誌への出稿、営業的な手法や、予算規模が大きけ れば新聞広告、雑誌広告、交通広告、テレビCMの出稿など、リアルでの周知もはかれます。 SEOは、そのホームページと個々のページを検索エンジンが評価するプロセスがあること、その評価は基本的に長い目 で見て変化することから、広告やクチコミのような短期的な効果は期待できません。短い期間に露出を大きく増やすなら ば、広告、クチコミ、インターネットによらない方法を選ぶのが賢明です。 それでもなお、ホームページの運営上、なぜSEOへの関心が長らく高いかといえば、中長期にわたる持続的な効果が期 待できること、きちんと習慣づけて運営すれば、ホームページが露出する機会を生み出しつづけてくれることが理由です。 露出の次のステップ、訪問との関係はどうでしょうか。 訪問にもSEOが大いに関係します。そのホームページが検索結果で上位に表示されても、ページタイトルや説明文が不 適切であれば、利用者が訪問してくれない(クリックやタップをしてくれない)可能性があります。露出の仕方が、訪問す るかどうかという利用者の心理に大きく影響するということです。 訪問につながるように、露出の「質」を高めること、具体的には、関連キーワードで検索し、結果画面での表示を確認して みて、いっそう適切な内容に改善するのがよい方法です。 成果、満足とSEOの関係 成果を専門用語で「コンバージョン」といい、問い合わせ、資料請求、商品の購入、サービスの契約など、利用者が目に 見えない顧客(潜在顧客)から目に見える顧客(顕在顧客)に変わったことを指します。文字どおり、潜在顧客から顕在 顧客に「転換」したという意味です。 SEOが成果に直結するかというと、なかなかむずかしいといえます。SEOによって検索結果での露出を増やし、ひいては 訪問を増やせますが、そのあとの成果につながるかどうかは、ホームページのコンテンツや顧客対応によります。たとえ ば、商品やサービスのアピールの仕方、説明のていねいさ、問い合わせへの回答の親切さなどにかかっています。 検索エンジンから訪れるのは、その会社の商品やサービスを深く知らない、利用したことがない人がほとんどです。心理 的な壁が高く、成果につながるアクションをすぐには起こしてくれません。このような意味でも、SEOは成果との関連性は 強くありません。 また、リアルの店舗への訪問をうながす場合は、ホームページだけでは直接的な成果を生み出せません。住宅や自動車 の問い合わせや見積もり、化粧品の無料お試しセットの申し込み、インテリアのカタログや資料請求などは、ひとまずホー ムページでのコンバージョンといえますが、ビジネス上はあくまで中間的な成果にすぎず、最終的な成果はもっと先にあ ります。 最後に、満足との関係はどうでしょうか。 実際にその会社の商品やサービスを利用し、満足したかどうかなので、SEOとの関連性はほぼなくなります。SEOという よりも「リピーター(お得意さん)になってもらえるか」という観点から、改善をはかることになるでしょう。 なお、検索結果での露出の段階で「内容が適切でなかった」というネガティブ要因としては、成果や満足にSEOが関係 するといえます。「あるキーワードで検索し、そのページが上位に表示され、期待を抱いて訪問してみたが、コンテンツが 充実していなかったり、ニーズにマッチしていなかった」となると、よい印象を抱いてもらえません。この点からも、検索結 果での適切な露出と、利用者のニーズを考えたコンテンツの提供のために、SEOに取り組む必要性が理解できます。 SEOは、露出、訪問、成果、満足という4ステップの最初のほう、露出と訪問に深く関わる。成果と満足とはあまり関係しないが、検 索結果での適切な露出、利用者のニーズを考えたコンテンツの提供など、露出から満足にいたるまでの利用者の感情を害さな いために、SEOが役立つ面がある。 当然、自分たちが「伝えたいこと」という軸が必要 ここまで、利用者の視点でSEOを考えてきました。もうひとつ、あらためて考えたいのは、自分たちにできること、取り組ん でいること、伝えたいことはなにかです。 商品やサービスにどのようなこだわりを持ち、どのような工夫をし、どのようなお客さんに買って(または使って)もらいた いのかを明確に示すことが大切です。コンテンツの軸は当然、これらの内容になるはずです。 そのうえで、利用者のニーズに寄り添うこと、たとえば、 ● ● ● ● 自分たちにしか通じない専門用語を多用しているので、平易な言葉に変える 検索結果での露出が、そのページの実態をあらわしていないので、修正する 利用者の訪問キーワードからニーズを汲みとり、コンテンツづくりに活かす ホームページの構成をわかりやすくし、使いやすさを向上させる といった改善を行うことが大切です。 さきほどの4ステップでいえば、コンテンツづくりは「成果」の達成が目的です。たくさん露出し、多くの人に訪問してもらっ ても、成果の達成は約束されません。また、露出や訪問につながるさまざまな取り組みは、買って(または使って)もらい たい商品やサービスと、伝えたいコンテンツがあってこそです。 自分たちの思いだけでは、コンテンツがひとりよがりになってしまったり、利用者に伝わりにくい表現、物足りない内容な のに、それに気づかない恐れがあります。SEOの観点からさまざまなを改善を行うことで、より多くの利用者にコンテンツ を届けると同時に、成果を達成する可能性が高められます。これが、冒頭に書いた「検索エンジンを使っているヒトに最 適化する」というSEOの意味です。 ホームページのコンテンツの軸は、自分たちが「伝えたいこと」。さらに、SEOの観点から、利用者が求める内容を提供したり、表 現を工夫することが大切。このような取り組みによって、利用者の増加、成果の増加が期待できる。 まとめ SEOは、 ● ● ● 中長期的に 新規顧客への 露出を増やす ための取り組みです。 検索エンジンの向こう側で、実際に言葉を入力している「ヒト」をイメージしましょう。露出だけが増えればよいのではなく、 そのあとの訪問や成果につなげるには、コンテンツの再考はもちろん、利用者のニーズを理解しようと努めることが不可 欠です。 これまではSEOにあまり関心がなかった自治体、病院、社会福祉など公益性の高い事業でも、SEOの必要性が認識さ れはじめています。SEOという言葉を使うかどうかは別として、検索エンジンの利用者に配慮することで、利用者が求め る情報に到達しやすくなるからです。 あるいは、SEOの取り組みが不足していることで、利用者が検索エンジンでそのホームページを見つけられず、求める情 報に容易にアクセスできない状況も考えられます。SEOはビジネスに必要というだけではなく、広くインターネットユーザー が、情報にスムーズにアクセスするための、あらゆるホームページに必要な取り組みといってよいでしょう。 現実的な問題として、検索エンジンによる評価基準の変更というリスクも、一方で考えておかなければなりません。ホー ムページへのアクセス経路として、検索エンジンの割合が大ききければ当然、リスクが高い状態といえます。リピート、 クチコミ、広告などほかの経路の充実を同時に目指しつつ、あるいは、次の段階でのアクションプランとしつつ、SEOに 取り組むことをおすすめします。 最後に、読みものとして楽しみながら、SEOの考え方が身につく記事を紹介します。 住太陽さんの「三人の弁護士」 http://www.searchengineoptimization.jp/the-three-lawyers 独立したばかりの弁護士3人それぞれが、どのようにホームページを運営し、仕事の獲得につなげていくかを、たと え話としてわかりやすく説明しています。SEOとリスティング広告の対比や、誤った方法による機会損失の発生は、 多くの業種業態に共通する話として、たいへん示唆に富んでいます。続編で「ネットショップを始めたい」「ホームペー ジを売れる営業マンにする」なども公開されています。 松尾茂起さんの「沈黙のWebマーケティング ─Webマーケッターボーンの逆襲─」 http://www.cpi.ad.jp/bourne/ 劇画風の魅力的な構成とテイストで、SEOを含むウェブマーケティング全体の知識が学べます。SEOの考え方だけ でなく、デザイン、文章ライティング、戦略思考など幅広い話題が扱われており、自分の立場と登場人物を重ねて読 むと、いっそうの実感をともなって読み進められます。 また、大手検索エンジンであるGoogleが、SEOについてどのように考えているかを知るために、次の資料にも目を通し ておくとよいでしょう。 Googleの公式ドキュメント「検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド」 http://googlewebmastercentral-ja.blogspot.jp/2010/09/seo.html Googleが公開している無償のPDFです。2010年に更新された資料で、やや古さを感じますが、SEOでは「ユーザー と検索エンジンの双方にやさしいサイトを」というGoogleの基本姿勢がわかります。技術的な内容やツールに関す る解説も含まれるので、自分のレベルに合わせてたまに見返してみるとよいでしょう。あわせて、 ウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)を参考にしましょう。 第2回では、検索結果画面の中身を解説します。ホームページが検索結果画面でどのように露出するか、自然検索と広 告エリアの区別、ウェブ検索以外の検索(画像や動画など)を理解しましょう。 益子 貴寛(ましこ・たかひろ) 株式会社まぼろし 取締役CMO/株式会社サイバーガーデン 代表取締役 https://maboroshi.biz/ http://cybergarden.jp/ 1975年、栃木県宇都宮市生まれ。早稲田大学大学院商学研究科修了。 Webサイトのコンサルティング、企画・設計、制作業務、教育、執筆活動に従事。社団法人 全日本能率連盟登録資格「Web検定」プロジェクトメンバー。元・金沢工業大学大学院 工学研究科(東京・虎ノ門大学院) 知的創造システム専攻 客員教授。 主な著書に『Web標準の教科書』(秀和システム)、『伝わるWeb文章デザイン100の鉄則』(同)、『現場のプ ロから学ぶXHTML+CSS』(共著、マイナビ)など。 2013年5月、企画・構成から監修、執筆まで総合的に関わった書籍『ウェブの仕事力が上がる標準ガイドブッ ク 2 Webデザイン 第2版』(共著、ワークスコーポレーション)が発売。 Copyright 2017 はじめてWEB All Rights Reserved. http://hajimeteweb.jp/
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