◇はじめに 日本整形外科学会は 10 月 8 日を『骨と関節の日』と定めました。 『ホネ』の『ホ』は十と八にわ けることができ、また 10 月 10 日の体育の日にも近いことが、記念日を十月八日と定めた理由です。 ヒトが毎日健康で働くことができる源は、健康な内臓はもちろんですが、背骨・手・足などの全身 の運動器官を造りあげている骨・関節・筋肉・靭帯・腱・脊髄・神経などがうまく働いてくれること にあります。 今日はロコモティブシンドローム(和文:運動器症候群)の話です。 整形外科の行っている医療 を少しでも知っていただき、骨と関節を中心とした体の運動器官の健康が、体の健康の維持にいか に大切かを伝えられる市民公開講座としていきたいと考えています。 ◇「健康とはなにか」 健康とは、Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity 『 病気でないとか、弱っていないということではなく、 肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること 』 (日本 WHO 協会訳) ◇健康寿命とは 健康寿命とは、心身ともに健康な状態で『 いきいきとした日常生活 』を送れる期間のことです。 平均寿命と健康寿命の間には、男性で約 9 年、女性で約 13 年の差があります。 健康寿命都道府県別ランキングにおいて福島県は、女性 74.09 歳、男性 69.97 歳で総合 24 位。 (厚生労働省科学研究「平成 22 年および平成 25 年 都道府県別健康寿命平均寿命」 ) ◇要支援・要介護になった原因 自立度の低下や寝たきり、つまり要支援・要介護状 態は健康寿命の最大の敵です。そしてその要因の第 1 位は「運動器の障害」だということをご存知でし たか? 要介護や寝たきりは、本人だけでなく家族など周囲 の人にとっても大きな問題になります。 自分のみならず、あなたの大切な家族や友人などの ためにも運動器の健康を維持ましょう。 (平成 25 年 (人口ピラミッドの変化 厚生労働省 国民生活基礎調査より) — 平成 24 年中位推計 ) (高齢者の増加と多様なパターン — 全国高齢者 20 年の追跡調査 —) ◇ロコモティブシンドロームと要介護状態 ここでロコモに関与する言葉 を紹介します。まずはロコモと 合併していることの多いメタボ リックシンドローム。メタボに なり腰痛や関節痛で動けなくな るケースも多く注意が必要です。 次に近年テレビでもよく聞かれ るサルコペニア。いわゆる加齢 性筋肉減少症が、要介護への原 因と指摘されています。もっと 新しい概念では、フレイルとい う言葉があります。要支援・要 介護状態の前段階として多くの 対策が考えられています。 ◇不健康キーワード 動かないでいると、ますます筋力は低下していき、また一段と動かなくなる・・・結果、寝たきり、 座りきりへの道一直線の負のスパイラルが形成されてしまう。 そして、高血糖や高血圧、脂質異常が徐々に糖尿病や脳血管障害、心筋梗塞などに進行していくこ とを「メタボリックドミノ」と呼びますが、運動器においても同じように「ロコモティブドミノ」が 存在します。 ロコモティブシンドロームを放置していると症状は徐々に悪化、ついには歩行障害や転倒・骨折・ 寝たきりの道を歩み、より豊かな老後、穏やかなる死を迎えることが難しくなってしまうのです。 フレイル(frailty)は「虚弱」と日本語で訳され、 『加齢に伴って不可逆的(元に戻らない)に老 い衰えた状態』という印象を与えてきました。しかし、“frailty”は、「しかるべき介入(食事や運動 など)によって、再び健常な状態に戻ることができる」という、可逆性が含まれています。 ◇ロコモ度テスト(別紙参照) ①移動機能を確認するためのテストです。 ②「立ち上がりテスト」 「2 ステップテスト」 「ロコモ 25」の 3 つのテストから成っています。 ③結果を年齢平均値と比較し、年齢相応の移動 能力を維持しているかを判定します。 ④年齢相応の移動能力に達していない場合、将来 ロコモとなり得る危険度が高いと考えられます。 ロコモ度 1 「移動能力の低下が始まっている」=定期的な運動やバランスのとれた食事に気 を付けましょう。 「移動能力の低下が進行している」=悪化傾向や痛みのある場合には、整形外科 ロコモ度 2 専門医の受診を考慮しましょう これは、震災後の福島県の状況や県南地域の不健康生 活を示唆しながら、当法人で作り上げた医療・介護・ 健康増進事業すべてに通ずる基本的な考え方です。 大地ともいえる基盤はメンタルの安定と心の健康であ り、そのうえで第一に来るのは食事です。 運動なしの栄養管理のみでは強い体は作れません。こ の両輪が必須であり、それを補うのが薬の存在です。 ※食事からバランスの良い栄養を摂ることは大切です。 しかし、それ以上に、家族や親しい人たちと一緒に食 卓を囲んだり、盛り付けや器などを工夫をして、食事 を楽しむ事が良いことです。 ◇「最新情報」体は食べた物でできている 筋肉の若さを保つ必要ビタミン D を半年間摂ったところ12% も筋力が増加していた! (Musc’e strength.funct D in older women.Aging Clin.オランダ) ◇ロコモ川柳(in 佐賀県) ・ ロコモには ならぬならせぬ 家族の目 ・ その一歩 ロコモを防ぐ ・ 脱ロコモ 日々の運動 ・ 靴下を 立って履けない 第一歩 コツコツと ロコモかな ・ ロコトレで 伸びる背中と 健康寿命 ・ 運動と 食事で倒す メタロコモ ・ メタボさん 貴方とだけは サヨナラよ (ロコモより) ◇おわりに 今回は、ロコモティブシンドロームとはどういったものかということを踏まえながら、ロコモ度 をチェックする方法や、予防するための体操・運動について紹介しました。 中高年者になって顕在化する運動器の障害。手足の運動、体の移動は意思の表明でもあり、社会参 加の一つの手段です。ロコモの考えは、人の運動、移動を可能とし、その人らしい人生を支援するこ とだと考えています。 「まだまだ若いから…」などと油断せず、少なくとも自分のロコモ度はしっかりチェックして、も し不十分であれば、これからしっかり予防体操などの対策をしていきましょう。 皆さんの健康が基礎となり、より一層の地域の笑顔と元気を心より願っています。 ご清聴ありがとうございました。
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