ユニバーサルデザインへの気づき

ユニバーサルデザインへの気づき
∼ユニバーサルデザインを身近なものとするために∼
2005 年 12 月 8 日(木)
ユニバーサルデザイン出前セミナー(島根西部)講演
島根大学 正岡さち助教授
【講演内容】
1. 導入
・ 一般の母親として、また趣味のマラソンを通して困った経験を伝えていくことで、
まちが改善されていけばよいと考えている。
・ ユニバーサルデザイン(以下 UD)の整備効果は非常に大きい。
・ UD を「導入すること」と「導入しようとする姿勢」は違うものであり、まずは UD
の必要性を実感することが大切である。
2. クイズ
① 小学生向け付録のなぞなぞ:台所にいる母親が「赤い本とってきて」と子供に言うと、
子供は緑の本を持ってきた。そのとき初めて母親が気づいたこととは?
→子供は赤色と緑色の区別ができない赤緑色覚障害児であった。
② テレビ番組のクイズ:10 階建てのマンションに住んでいる子供が、行きは 1 階までエ
レベーターで降りるが、帰りは 6 階までエレベーターを使い、7 階からは階段で家に
帰る。その理由とは?
→通常 10 階建てのマンションであると、エレベーターの操作盤は 1∼5 階、6∼10 階
の 2 列で並んでいる。子供は一番下にある 6 階のボタンまでしか背が届かなかった
から。
3. UDに対する実感
・ 大学の授業のレポートで、ある学生が、高齢者や障害者の話を挙げて UD の大切さ
を教えられても自分には実感が持てないと書いていた。
・ 高齢者や障害者が使いやすいものは、健常者にとっても使いやすいことをなんとな
くは分かっているが、実感ができないのが現状である。
4. 至る所にあるバリア
・ 人間は、自然と自分が使いやすいものは他人にも使いやすいと、自分中心に物事を
考えがちである。
・ 社会空間は一般男性が使いやすいよう整備されている。
・ 妊娠中や子供連れ、マラソンでひざを怪我した際、和式トイレや階段、手すりの設
置位置など至るところに様々なバリアがあることに気づいた。
・ 子供と一緒に歩くことで気づかされるバリアも多い。
・ UD の効果を実感するには、健常者が様々なバリアについて知ることが重要である。
5. UD教育のための試み
・ 車いす体験、高齢者体験、アイマスク体験については、障害者がどのように感じて
いるか知ることは大切であるが、偏見を持った人や未熟な人にとっては一歩間違え
ると障害者をかわいそうなどと思い、自分と区別してしまう恐れがある。
・ バリアが身近にあることをわからせるため、授業では上記体験に加えて妊婦体験、
松葉杖体験、ベビーカー体験もあわせて実施している。
6. ハードとしてのUD、ソフトとしてのUD
・ ハード整備を行えばそれで終わりではなく、どう使うかが重要である。
・ バリアの分類には、①物理的バリア、②制度的バリア、③文化・情報面でのバリア、
④意識上のバリアがある。現在は、主に①物理的バリアについて整備されているが、
例えばバスの乗り降りを手伝うなど、④意識上のバリアを取り除くことで対応でき
るバリアもある。①と④どちらも解消されないと本当の UD 化とは言えない。
・ ハード整備の前に、意識のバリアを取り除くことが重要である。
7. 生かされていないUD
・ 大学構内の多目的トイレは、障害者専用という意識が学生にあり、誰も使わないた
め現在は物置になっている。
・ 障害者用駐車場に健常者が駐車している。
・ このような活かされていない UD を有効にするためには、市民の意識の向上が必要
である。
8. 私が見る「松江のまち」
・ 歩いたり走ったり、自転車に乗ったりしてまちを移動すると、自動車を使うことを
標準として整備されていることに気づく。
・ まちづくりを行う際には、実際に歩いてみて計画を行って欲しい。また、子供や高
齢者、障害者など様々な立場の人と一緒にまちを視察することでシュミレーション
体験よりも有益な意見が得られると思う。
9. 見える障害、見えない障害∼様々な形のUD
・ 同じ分類の障害を持っている人でもそれぞれ状況は異なる。また、複数の障害を持
っている人もいる。
・ 障害者というと車いすのイメージが強いが、実際は目に見えない障害を持った人も
多い。
10. 身近にあるUD
・ 携帯電話「5」ボタンの突起、超低床バス、デパートのエレベーター、シャンプー
ボトルの凹凸、テレホンカードの切り込みなど、身近なところに UD は広がってい
る。
・ 少しずつ UD が導入され、徐々に社会へと広がっていくような社会づくり、意識付
けが大切である。
11. 最後に∼言うは易し、行なうは難し
・ UD は全ての人が使いやすいものと言われているが、具体的なものを指すではなく、
“全ての人が生活しやすい社会を形成する”という目標に向かい推進していく思想
そのものであると考えている。
・ 全ての人に UD の意識があればより良い社会になっていくのではないか。