LIPH 遺伝子変異を認めた先天性乏毛症の 1 症例 P1-36 A case of autosomal recessive hypotrichosis with a mutation in LIPH gene 沼田 早苗 1,2 、濱田 尚宏 1,2、原田 なをみ 2,3,4、大平 智子 2,3、渡邊 順子 2,3、芳野 信 2,3、下村 裕 5、 橋本 隆 1,2 1 久留米大学 医学部 皮膚科・久留米大学 皮膚細胞生物学研究所、2 久留米大学病院 遺伝外来、3 久留米大学 医学部 小児科、4 熊本保健科学大学 助産別科、5 新潟大学大学院医歯学総合研究科 遺伝性皮膚疾患研究室 【背景】Localized autosomal recessive hypotrichosis(LAH; MIM#s 607903, 604379, 611452)は、非症候性の稀な先天性 毛髪疾患である。頭髪の無毛または乏毛を認め、眉毛、睫毛、体毛は欠如する場合から正常に存在する例まで様々である。本 症の原因遺伝子としては、DSG4(desmoglein 4) 、LIPH(lipase H ) 、P2RY5 (purinergic receptor P2Y, G protein-coupled, 5)などの報告がある。 【症例】症例は 29 歳の女性。生下時より頭部乏毛があり、現在は前頭部および後頭部にわずかな毛髪を有するのみである。 また、眉毛、睫毛、体毛の欠如はなく、その他の症状も認めていない。18 歳時に当院皮膚科を受診し、先天性乏毛症と診断 されていた。今回、子供への遺伝を心配し、遺伝相談を希望にて自主来院した。両親・同胞に同様の症状は認めず、家族歴に 特記事項なし。 【経過】結婚や挙児についての不安が強く、遺伝性のものならば遺伝子検査を受けたいとの希望があった。当院皮膚科で臨床 症状の再評価を受け、頭髪のみの症状であることを確認した。十分な事前カウンセリングの後、LIPH、P2RY5 の解析を行った ところ、P2RY5 には変異を認めず、LIPH に c.736T>A (p.Cys246Ser)のホモ接合変異を認めた。検査後のカウンセリングでは、 同変異の日本人のアレル頻度は 3/200 であること、常染色体劣性疾患のためパートナーが保因者でなければ罹患児をもつ可能 性は低いが、希望があればパートナーの検査が可能であることを伝えた。 【考察】先天性乏毛症を経験し LIPH の変異を同定した。常染色体劣性遺伝性疾患であるものの、同定された遺伝子変異のキ ャリアは比較的高頻度であることから、カウンセリングを行う上で遺伝子変異解析は有用であった。
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