平成19年度 全国保健所長会研修会 「健康格差社会と保健所に求められるもの」 健康格差研究は地域保健・公衆衛 生施策にどのように貢献するか? 国立保健医療科学院 疫学部 福田 吉治 まず、健康格差とは? Social inequalities in health • refer to health disparities that are judged to be unfair, unjust, avoidable, and unnecessary, • and that systematically burden populations rendered vulnerable by underlying social structures and political, economic, and legal institutions. [N Krieger. J Epidemiol Community Health, 2001] 健康格差とは? 「格差」に関連する言葉 Social inequalities in health (健康にお ける社会的格差)とは、 • unfair(不当)で、unjust(不公平)で、 avoidable(回避的)で、unnecessary(不 必要)な、そして, 較差 • 背景となる社会構造、政策的、経済的、 法的制度によって傷つきやすくなった 人々に負担を与える健康の違い。 不平等 Difference Disparity 格差 Inequality 不公平 Inequity 本日、お話しすること 1.「健康格差」研究の紹介 2.健康格差のその後 本日、お話しすること 1.「健康格差」研究の紹介 1)地域を単位とした研究 2)個人を単位とした研究 3.健康格差と公衆衛生施策 3)地域要因の健康影響 4)健康格差の経年変化 地域を単位とした研究 • 研究デザイン:地域(都道府県、二次医 療・保健所圏、市区町村)が単位。 Eological study(生態学的研究、地域 相関研究) Deprivation index (困窮指標) 良い 悪い 男性SMR 低い 高い • 利 点:データの利便性から比較的容易 • 欠 点:厳密には、地域要因の影響か、 個人要因の影響か、わからない。(= Ecological fallacy) r = 0.50 地域の社会経済水準と死亡率の関連:市区町村 [Fukuda Y et al., Public Health 2007;121:163-73のデータより] 困窮指標(Deprivation Index)と 標準化死亡比(SMR)、市区町村、男性 Deprivation index(困窮指標)と 年齢調整死亡率:都道府県、2000年 500 450 400 350 300 r = 0.64 (p<0.001) 250 0 5 10 -10 -5 0 (← less deprived) 15 20 25 5 10 15 (more deprived →) 女 性 2.1 Standardized mortality ratio 年齢調整死亡率︵ 人口十万対︶ 年齢調整死亡率︵ 人口十万対︶ 男 性 200 175 150 125 r = 0.43 (p<0.01) 100 0 5 10 -10 -5 0 (← less deprived) 困窮指標 15 20 25 5 10 15 (more deprived →) 1.8 r = 0.50 (p<0.001) 1.5 1.2 0.9 0.6 0 5 -20 -15 10 -10 困窮指標 15 -5 20 0 地域の社会経済的要因と健康:死因別 (1993−98年、女) 2 2 死亡率比 不慮の 事故 自殺 1.8 脳卒中 1.4 1.6 1.4 1 がん 0.8 0.6 死亡率 1.2 Injury Suicide 1.2 Stroke 1 Cancer 0.8 Q1 (高) Q2 Q3 Q4 収入・教育指標 35 15 [Fukuda Y et al., Public Health 2007] 地域の社会経済的要因と健康:死因別 (1993−98年、男) 1.6 30 10 Deprivation index [Fukuda Y et al., Public Health 2007;121:163-73] 1.8 25 5 Q5 (低) (注)市区町村を社会経済インデックスにより5分位に区分し(Q1:最 も高い∼Q5:最も低い)、各群の標準化死亡比(SMR)を算出。 [Fukuda Y et al., Int J Epidemiol 2005;34:100-9] 0.6 Q1 (高) Q2 Q3 Q4 収入・教育指標 Q5 (低) Fukuda Y et al., Int J Epidemiol (in press) 東京都の平均寿命(順位)の年次推移 医師数(産婦人科・小児科)と乳児死亡率 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 10 平均寿命の順位 小児科医 13.80 - 40.62人/10万人 乳児死亡率との相関係数 • 産婦人科:- 0.55 • 小児科 : - 0.61 • 産婦人科+小児科:- 0.71 10 20 男 産婦人科医 2.47 ‒ 14.27人/ 10万人 女 乳児死亡率(出生1000対) 1992∼2001年の平均 4.10∼4.77 3.45∼4.10 2.80∼3.45 2.15∼2.80 1.50∼2.15 30 40 Urban Penaltyの進行? [今井, 伊藤, 吉田, 他. 産婦人科・小児科医師数と周産期指標との関連性ー第二次医 療圏における医師不足による周産期提供の提供ー. 日本医事新報 2005;4246:28-32] 図:今井博久氏(国立保健医療科学院)提供 地域を単位とした研究の結論 • 社会経済的状態が悪い地域は死亡 率が高い。 本日、お話しすること 1.「健康格差」研究の紹介 1)地域を単位とした研究 • 死因による異なる関係性。 2)個人を単位とした研究 • 気になる特徴 – 都市型不健康の進展 3)地域要因の健康影響 – 医療格差の影響は? 4)健康格差の経年変化 個人を単位とした研究 世帯収入と喫煙:男性 1.7 個人レベルの因果関係は個人レベルの分析で 2.0 個人の社会経済指標 1.5 個人の健康指標 – – – – 横断研究 縦断研究 死亡 疾病罹患・有病 自覚的健康度 生活習慣 オッズ比 3.0 0.5 Q1 Q2 Q3 0.0 Q4 18-24 年齢階級 25-40 Q5 40-54 煙 1.29 *** 0.99 運動不足 1.42 *** 不健康な食生活 2.0 1.28 *** ストレス Q1 Q2 (低) Q3 0.0 Q4 18-24 年齢階級 25-40 Q5 40-54 世帯収入 高 過剰飲酒 1.6 1.0 低 [Fukuda Y, et al. Ann Epidemiol 2005;15:365-72] 喫 3.5 2.4 1.0 世帯収入と健康リスク行動:男性 世帯収入と喫煙:女性 4.0 オッズ比 – 収入 – 学歴 – 職業 1.3 1.3 0.94 世帯収入 (高) [Fukuda Y, et al. Ann Epidemiol 2005;15:365-72] 1.15 ** *** 3.14 健康診断未受診 ** p<0.01, *** p<0.001 0 1.0 2.0 3.0 調整オッズ比 (注)収入により5群に区分し、最も高い群に対する最も低い群の調整オッズ比 [Fukuda Y, et al.. BMC Public Health 2005;5:53] 世帯収入と健康リスク行動:女性 喫 2.03 *** 煙 1.24 *** 運動不足 不健康な食生活 1.64 *** ストレス 3.0 年齢調整オッズ比 1.28 *** 過剰飲酒 1.26 *** 3.0 2.0 調整オッズ比 (注)収入により5群に区分し、最も高い群に対する最も低い群の調整オッズ比 0 p = 0.04 学 歴 2.5 大学 2.0 1.5 高校 p = 0.84 1.0 中学 0.5 2.23 *** 健康診断未受診 *** p<0.001 学歴と高脂血症 1.0 0.0 男性 女性 [Nishi N, Makino K, Fukuda H, Tatara K. Effects of socioeconomic indicators on coronary risk factors, self-related health and psychological well-being among urban Japanese civil servants. Soc Sci Med 2004;58:1159-70] [Fukuda Y, et al. BMC Public Health, 2005] 学歴と死亡率(16715名コホート研究,男) 学歴と糖尿病 学 歴 3.0 大学 2.0 高校 p = 0.73 中学 1.0 0.0 男性 女性 [Nishi N, Makino K, Fukuda H, Tatara K. Effects of socioeconomic indicators on coronary risk factors, self-related health and psychological well-being among urban Japanese civil servants. Soc Sci Med 2004;58:1159-70] 年齢、喫煙、飲酒、 職業を調整 年齢調整オッズ比 p < 0.001 相対危険度 4.0 2.0 ** 最終学歴 1.5 18歳以上 *** 16,17歳 * 15歳以下 1.0 * p<0.05 **p<0.01 ***p<0.001 0.5 総死亡 総死亡 がん がん 循環器疾患 呼吸器疾患 循環器 疾患 呼吸器 疾患 外傷 外傷 [Fujino Y, Tamakoshi A, Iso H, et al. for the JACC study group. A nationwide cohort study of educational background and major causes of death among the elderly population in Japan. Prev Med 2005;40:444-51] 個人を単位とした研究の結論 • 社会経済的地位(収入、学歴)は、 – 不健康な生活習慣 – 生活習慣病 – 自覚的不健康 – 死亡 に関連。 • ただし、疾病・性別などによる違いがあり、 複雑か。研究成果の蓄積が必要。 地域要因の健康影響 • 個人要因を調整しても、地域要因は影 響するか? (=Contextual effects:脈 絡影響) • 主な地域要因:社会経済的要因(平均 収入、失業率など)、収入格差、ソーシャ ル・キャピタル、など 本日、お話しすること 1.「健康格差」研究の紹介 1)地域を単位とした研究 2)個人を単位とした研究 3)地域要因の健康影響 4)健康格差の経年変化 健康リスク行動に対する地域の一人当たり 収入の調整オッズ比:マルチレベル分析結果 男性 喫 煙 過剰飲酒 運動不足 不健康な食生活 ストレス 健康診断未受診 0.89 1.03 1.05 1.09 1.44 ** 1.49 ** 女性 1.93 1.49 0.79 1.12 1.43 1.75 ** *** ** * *** *** * p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.001 • マルチレベル分析の応用 (注)居住地域(都道府県)の一人当たり収入が100万円上昇すること に対する、不健康な生活習慣を持つオッズ比 [Fukuda Y, et al.. BMC Public Health 2005;5:65] Social Capital 米国における年齢調整死亡率と収入格差の関係 Age-adjusted mortality rate 1020 960 900 840 780 単位=州 720 660 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 収入格差指標(Robin Hood Index) • 「ソーシャル・キャピタル」、「社会関係資本」 • 定義=調整された諸活動を活発にすること によって社会の効率性を改善できる、信頼、 互酬性の規範、ネットワークといった社会組 織の特徴 (Putman) • 類似概念=collective efficacy(地域や共同 体の効力感)、social integration/cohesion (社会結合・結束) • 地域の指標 (Kennedy, Kawachi, et al. BMJ, 1996) ソーシャルキャピタルの測定例 年齢調整死亡率と社会的信頼感の関係(米国、州別) • 信頼感について質問 • 一般に、人は信頼できますか? • 互酬性について質問 • 人は、他の人の役に立とうとすると思いますか? • 代替の指標 • 一人当たりの地域グループ・団体数 • 選挙における投票率 • 新聞購買率 など Age-adjusted mortality rate 1020 960 900 840 780 720 660 5 10 15 20 25 30 35 40 45 「ほとんどの人はチャンスがあればあなたを利用しよう とするか」に対する「はい」と答えた人の割合(%) (近藤. 2004) (Kawachi, et al. Am J Public Health, 1997) 「収入格差の大きな地域は不健康」 のひとつの理由 収入格差の拡大 Social Capitalの低下 健康水準の低下 県別収入・収入格差の 自覚的不健康に対するオッズ比 収入(中央値) 1st quarter (低) 2nd quarter 3rd quarter 4th quarter (高) 収入格差(ジニ係数) 1st quarter (小) 2nd quarter 3rd quarter 4th quarter (大) 非調整 調 整a 1.33 (1.20-1.47) 1.15 (1.07-1.24) 1.15 (1.05-1.25) 1.00 1.14 (1.01-1.30) 1.03 (0.94-1.13) 1.03 (0.94-1.14) 1.00 1.00 1.00 (0.92-1.10) 1.07 (0.98-1.18) 1.14 (1.02-1.27) 1.00 1.00 (0.91-1.11) 1.03 (0.93-1.14) 0.90 (0.77-1.04) 性、年齢、婚姻状態、過去1年間の健康診断受診、個人収入を調整 [Shibuya K, Hashimoto H, Yano E. Individual income, income distribution, and self rated health in Japan: cross sectional analysis of nationally representative sample. BMJ 2002;324:16-9] a 地域におけるソーシャルキャピタルと 抑うつ尺度得点の関係 42.5 ソーシャルキャピタルが高齢者の主観的健康 感・幸福感の低下に与える影響:オッズ比 抑うつ尺度得点 42.0 主観的健康感 主観的幸福感 の低下 の低下 r = 0.668 R2 = 0.445 41.5 41.0 ソーシャルキャピタル・スコア a 0.923 * 0.844 ** 40.5 * p<0.05, ** p<0.01 40.0 「一般的信頼感」「互助的規範」「他人への不信」「ネットワー ク」「新聞の購読」より因子分析を用いて算出:範囲 -3.58∼1.66 a 39.5 15 20 25 30 35 40 「近所の人はお互いに助け合う気持ちがある」 と答えた人の割合(%) [本橋、金子、山路.ソーシャル・キャピタルと自殺予 防.秋田県公衆衛生学雑誌 2005;3:21-31] (注意)オッズ比は、個人の性、年齢、所得、婚姻状態を調整済み。下記論文 の結果をもとに発表者が算出 [市田、吉川、平井、近藤、小林.マルチレベル分析による高齢者の健康 とソーシャルキャピタルに関する研究.農村計画論文集 2005;7:277-82] 地域要因の健康影響研究の結論 本日、お話しすること • 収入の高い地域(=都市域)ほど、 不健康な生活習慣を持つ。 1.「健康格差」研究の紹介 1)地域を単位とした研究 • 絶対収入は、収入格差より、自覚的 健康との関係が明確である。 2)個人を単位とした研究 • ソーシャルキャピタルは健康に影響 してそう。 4)健康格差の経年変化 平均寿命の低下!? 2004年 3)地域要因の健康影響 2005年 Slope Index of Inequality (SII) 85.59 88 女性 85.49 84 82 78.64 男性 80 68 78.53 78 76 1960年 都道府県別男性 67 平均寿命︵ 年︶ 平均寿命︵歳︶ 86 66 1.86 65 64 63 74 62 72 0.0 70 19 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 一人当り収入(順位をもとに0∼1に) 80 85 格差拡大 90 ? 95 2000 5 平均寿命の低下 SII = 1.86 / 65.2 (平均)×100 = 2.85 都道府県平均寿命と一人当たり所得の関連: Slope index of inequalityの時系列変化 本日、お話しすること Slope index of inequality 6 1.「健康格差」研究の紹介 格差拡大? 4 男性 2.健康格差のその後 2 3.健康格差と公衆衛生施策 女性 0 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 -2 [Fukuda, et al. BioScience Trend, 2007] 東京都の平均寿命(順位)の年次推移 平均寿命の低下!?その後 平均寿命の順位 10 男 20 女 平均寿命︵歳︶ 0 1 85.59 88 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 86 2005年 2006年 85.81 女性 85.49 84 82 78.64 男性 80 79.00 78.53 78 76 74 30 72 70 19 40 Urban Penaltyの進行? 80 85 格差拡大 90 ? 95 2000 5 平均寿命の低下 都道府県平均寿命と一人当たり所得の関連: Slope index of inequalityの時系列変化 本日、お話しすること 6 Slope index of inequality 社会的格差の拡大? 1.「健康格差」研究の紹介 4 男性 2.健康格差のその後 3.健康格差と公衆衛生施策 2 女性 0 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 -2 [Fukuda, et al. BioScience Trend, 2007] 健康格差研究は公衆衛生施策に どのように役立つか? 生活習慣に関する疫学研究 (アラメダ郡研究) ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ 睡眠時間を7∼8時間とること 朝食を食べること 間食をしないこと 喫煙をしないこと 禁酒または節飲酒 適度な体重 規則的に運動すること Belloc NB, Breslow L, et al. 生活習慣に関連した疫学研究からの示唆 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 10. 喫煙しない。できればやめる。できなければ節煙。 フルーツと野菜を含むバランスよい食事を。 運動する。 ストレスを管理する。例えば、受け流したり、リラッ クスの時間を作る。 飲酒するなら、適度に。 日光をさけ、子どもを日焼けから守る。 安全な性生活を行う。 がんのスクリーニングをうける。 道路では安全に。交通規則を守る。 救急処置を学ぶ。ABC = airways, breathing, circulation. 社会疫学の定義 健康状態の社会内分布と社会的決定要因 を研究する疫学の一分野 The branch of epidemiology that studies the social distribution and social determinants of states of health Donaldson, 1999 社会疫学研究からの示唆 1. 貧しくなるな。できればならない。できなければ貧しい 期間を長くしない。 2. 貧しい親を持たない。 3. 車を持つ。 4. ストレスが多く、低い報酬の仕事をしない。 5. 湿気が多く、質の悪い家に住まない。 6. 外国での休日や海水浴に行く余裕を持つ。 7. 仕事を失ったり、失業したりしない。 8. 失業、退職、疾病や障害になったら、あらゆる保障を受 ける。 9. 混雑した道路や汚染源となる工場の近くに住まない。 10.ホームレスになる前に、保護施設や収容施設の申請 書の記入方法を学んでおく。 Dave Gordon, 1999 健康格差研究は公衆衛生施策に どのように役立つか? 1. 2. 3. 4. 較差 は地域診断の基本 地域力 は地域保健の鍵 マーケティングアプローチ の必要性 健康の社会的決定要因 への提言 市区町村別健康寿命 市区町村別健康寿命 (男性) (女性) [Fukuda, et al. BMC Public Health 2005,5:65] 男性大腸がん 標準化死亡比(SMR) 1998-2002 [Fukuda, et al. BMC Public Health 2005,5:65] 男性乳がん 高死亡率地域 SMR(全国死亡率=1.00) [厚生労働研究がん臨床研究報告書、2007より] (SMRはベイズ推計値) [Fukuda Y, et al. Int J Health Geographic 2005] (空間スキャン法による) 女性乳がん 標準化死亡比(SMR) 1998-2002 女性大腸がん 高死亡率地域 SMR(全国死亡率=1.00) [厚生労働研究がん臨床研究報告書、2007より] (SMRはベイズ推計値) 男性肺がん 標準化死亡比(SMR) 1998-2002 [Fukuda Y, et al. Int J Health Geographic 2005] (空間スキャン法による) 男性肺がん 高死亡率地域 SMR(全国死亡率=1.00) [厚生労働研究がん臨床研究報告書、2007より] (SMRはベイズ推計値) [Fukuda Y, et al. Int J Health Geographic 2005] (空間スキャン法による) 健康格差研究は公衆衛生施策に どのように役立つか? 1. 2. 3. 4. 較差 は地域診断の基本 地域力 は地域保健の鍵 マーケティングアプローチ の必要性 健康の社会的決定要因 への提言 地域要因の健康影響 • 個人要因を調整しても、地域要因は影 響するか? (=Contextual effects:脈 絡影響) • 主な地域要因:社会経済的要因(平均 収入、失業率など)、収入格差、ソーシャ ル・キャピタル、など • マルチレベル分析の応用 社会 病理 健康 アウトカム 死亡率 暴力 犯罪 殺人 罹患率 自覚的 健康度 健康 関連行動 喫煙 食生活 個人要因 地域力 健康格差研究は公衆衛生施策に どのように役立つか? Social capital ご近所力 地域影響 1. 2. 3. 4. 較差 は地域診断の基本 地域力 は地域保健の鍵 マーケティングアプローチ の必要性 健康の社会的決定要因 への提言 ソーシャル・マーケティングとは? ¾ 人々の考え方や習慣を変革するプログラムを企画し、 実施し、管理するためのマネジメント技術 (『ソー シャルマーケティング:社会変革のための戦略』 コト ラー&ロベルト、1989) ¾ 対象集団の人々の個人的幸福と社会全体の幸福の 向上のために、対象集団の自発的な行動に影響を 与えるよう意図されたプログラムの計画・実施・評価 に、商業マーケティングの技術を適応すること (Andreasen, 1995) 諸外国における公衆衛生への応用 薬物乱用予防;飲酒運転予防;家族計画; 10代の妊娠予防;たばこ対策;心臓病予防;エイズ予防 ヘルスプロモーションに取り入れるべき マーケティングの主な原理 • ターゲットオーディエンスの設定:ターゲットの セグメンテーション(細分化) • 商品の開発 – ターゲットオーディエンスのニーズ、ウォ ンツ、コア価値に合わせた商品の定義、 パッケージング、ポジショニング • ターゲットオーディエンスと商品に相応しい チャネルの選択 Health Communication Wheel 10.改善するために フィードバックする 2.目標を設定する 9.効果を評価する アウトカム 評価 プロセス 消費者 評価 7.プロモーション計画 を作る 6.メッセージとマテリアルを 作り、事前調査を行う フォーマティブ 調査と評価 8.戦略を実践する 健康格差研究は公衆衛生施策に どのように役立つか? 1.背景となる情報を集める 3.対象者を分析し、 細分化する 4.メッセージ概念を明確に し、事前調査をする 5.コミュニケーションの チャンネルを選ぶ 1. 2. 3. 4. 較差 は地域診断の基本 地域力 は地域保健の鍵 マーケティングアプローチ の必要性 健康の社会的決定要因 への提言 オタワ憲章のヘルスプロモーション ヘルスプロモーションとは、「人々が自らの健康をコント ロールし、改善することができるようにするプロセスであ る」と定義され、健康は生きる目的ではなく、生きるための る」 資源であるとされています。 憲章では、ヘルスプロモーションを推進するための具体 的な活動方法として、 1 健康的な公共政策づくり 2 支援的環境づくり 3 地域活動の強化 4 個人技術の開発 5 保健サービスの方向転換 の5つがあげられ、健康を支援する環境整備を重視した 方向性が打ち出されています 健康格差は • ヘルスプロモーションの根源的問題 • 健康政策の最重要課題 なぜ、「健康格差」なのか? • 「健康日本21に基本概念と推進手法に関する 研究」(国立医療・病院管理研究所医療政策 部) • 健康都市に関する国際会議(1998年アテネ) • WHO健康都市と都市政策に関する研究協力 センター(東京医科歯科大学) 健康増進のヘルスプロモーションへの批判 犠牲者非難 Victim Blaming ライフスタイル 社会経済的要因 socioeconomic status ヘルスプロモーションのレベル The Solid Facts 健康の社会的決定要因 集団・社会 Population & Social グループ Group 個 人 Individual http://www.prof-tt-publichealth.com/pdf/solidfacts.pdf Healthy Cities (健康都市) ヨーロッパ健康都市プロジェクト (1986年∼) Commission on social determinants of health 健康文化都市事業 (1989年∼) 健康都市連合 Alliance for Healthy Cities (2003年∼) Safe Community http://www.who.int/social_determinants/en/ 最後に 健康格差は 地域保健・公衆衛生の原点
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