を嗅いだときの心理的効果評価の比較検討 若野貴司、藤岡真実、嶺井 毅

モミオイルの「香り」を嘆いだときの心理的効果一制面の比較検討
若 野 貴 司 藤 岡 真 実 2 嶺 井 毅 3 ・ 松 居 勉 4 浅野房世 2
1石川病院
2東京農業大学農学部バイオセラピー学科
3いずみ病院
4セコムフオート側
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V
A
S
),
アロマセラピー,唾液中クロモグラニン A (
C
g
A
),ナラテイブな評価,
V
A
S
),ストレス緩和
視覚的アナログ・スケール (
はじめに
呈する声もある(今西, 2
0
0
8
)。
そこで,本研究では,まず評価手法の選定と組み合
人間の心理的変化を評価する手法としては,アン
わせ方法を検証することを主とした。香りに対する心
ケート調査などの主観的評価が多く用いられてきた。
理的効果の検証には,まず主観的評価を主軸としそ
しかし,主観的評価にも客観性が必要として,研究者
れを補完するものとして生理的指標を活用するべきで
は香りの臨床効果を評価するにあたり,生理的指標を
はないかとの仮説を立て,検証することとした。検証
客観的な指標として用いる傾向が多くなった(童間・矢
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c.)の木から
方法として,モミ (
999;川端, 2000;笹部・渡辺, 2
0
0
6
)0
部
, 1
抽出,精製したモミオイルを吸入させ,主観的評価と
しかし生理的指標を用いたアロマセラピ一関連の研
してアンケート調査,生理的指標として唾液中クロモ
究論文では,コントロールや倫理的配慮を行いながら,
グラニン A (
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nA :以下 CgAと
被験者数を確保することが困難であるためか,統計処
略)の測定,被験者の主観に基づく心理評価として視
理を行うほどの被験者数が得られないことが多い。
覚的アナログ・スケール (
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e:以下
これらの事情から,臨床試験に関する科学的根拠は
VASと略)を用い,それぞれの検証結果から,香りに
十分であるとはいえず,アロマセラピーの科学的根拠,
よる気分変化を評価する手法として, どの程度に有用
研究デザイン,研究法,評価法の選定に対して疑問を
性をもつかを検証した。
なお本研究は,経済産業省「地域イノベーション創
出研究開発事業.地域資源活用型研究開発事業」の中
2ω9年 9月 3日受付 2
0
1
0年 2月 2
6日受理.
人間・植物関係学会雑誌 1
0(
1
):
1
8, 2
0
1
0
. 論文(原著)•
で規定された日本産アロマの中で安定供給が可能でか
つ安全性が確保されたモミオイルの効果を測定する調
査として実施したものである。
存する J といわれている(谷田貝, 2005)。
以上のことを踏まえ,アンケート方式(選択回答,自
由回答)によって,
方 法
i
)香りそのものに対するイメージ,
i
i
)香りから想起される場所, i
i
i
)香りから想起される
v
)幼少期の原風景と香りのイメージ
場所のイメージ, i
1.調査指標選択の理由とそれらの特徴
の連動,
1) CgA(
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yChromograninA)
りのイメージを表すには,共通した表現が望まれる(谷
v)その香りの用途, vi)感想,を尋ねた。香
唾液からの検出が可能であり,精神的ストレスを評
田員, 2005)ことから,選択回答で用いた言葉は,香り
価しやすく,また侵襲性が少ないとみられる CgAを
の百科事典(谷団員, 2005)に掲載されている匂いの質
生理的指標の検証手法とした。
を表す代表的用語や匂いの表現を参考とし,アンケー
CgAは,交感神経の刺激により唾液中に漏出するた
め
,
ト用紙を作成した。
i
)検査時の侵襲性が少なく,採取が容易で頻回に
実施できること,
i
i
)ストレスに対する反応が迅速であ
るが,運動ストレスには反応しないこと, i
i)微細な精
神的ストレスでも鋭敏・特異的に反応しストレス源
2
. 調査方法
1)実験実施法と対象者
20 名の被験者(男 10,女 10,年齢 20~60 歳,平均
の除去によって,速やかに CgA値が減少することな
年齢男 25.4歳,女 3
2
.
6歳)に,実験への配慮事項を記
どの特徴をもっ O
載した実験計画書を配布し書面での同意を得たうえ
しかし日内変動については,先行研究報告数や例数
が少なく,未だ確証は得られていないものの,基準レ
ベルの存在が示されている(岡村ら, 2003)0
2)VAS (VisualAnalogueScale)
で
, 5日間連続して同じ時間帯にモミオイルの香りを
吸入させた。
実施内容は第 I表に示すとおりである。
Table1
. Scheduleo
fexperimen
.
t
2
0
0
6
),鴨下障害(品川ら, 2001),ファシリテーター養
第 1表.吸入実験実施表
目 5日
目
作業手旗
1白
目 2日
目 3日
目 4日
1.問診,血圧・脈拍・
O
O
O
O
O
体温測定
2
. 唾液採取(一回目) O
O
3
. アロマ吸入 (
3分)
O
O
O
O
O
4
. 唾液採取(一回目) O
O
5
. 安静 (
1
0分)
O
O
O
O
O
6
. 唾液採取(二回目) O
O
7
. VAS
測定
O
O
8
. 血圧・脈拍・体温
O
O
O
O
O
測定
9
. アンケート
O
成講座の理解度(保坂, 2008),音楽による快・不快(安
2)香りの選択と吸入方法
VASは,香りに誘発される主観的な症状を客観的
に評価する尺度として用いた (Carlsson,1983; 日本
緩和医療学会がん癖痛治療ガイドライン作成委員会,
∞
2000;田遺, 2 6;田中, 2005)0 本来はがん患者の痛
みの評価法の一つで,
I
左端:全く痛まない (
0
)Jから
「右端:予測される中で最も痛い (100)J を両端とする
100mmの水平な直線上に患者自身の痛みのレベルに印
をつけさせ, Ommからの長さを測定するものである
が,これまで高齢障害者の主観的健康感(板子・潮見,
田・古井, 2008)などを評価する尺度として応用され,
日本国産の 6種類の樹木から抽出された精油のうち,
一定の成果がえられている。そこで,本研究でも香り
アロマオイルとしての安全性が確認できたモミオイル
の晴好・慣れ・不快感の尺度として用い,その適用の
を選定した。希釈度は一般的に 1~2% とされており
可能性を検証した。
(ティスランド・パラシュ, 2005),事前にすべての被
3
)アンケート調査
験者にパッチテストを行い検証したうえで 1 %濃度と
ナラテイブ評価としてアンケート調査を実施した。
個人の思考や経験は,
しばしば言葉によって語られる
した。
マイクロピペットで 1 %のモミオイル 50μlを滴下
I
語り手(患者)
J と「聞き手(医師 )
Jの
した櫨紙を紙テープでマスクの内側に貼り付け(吉田・
聞に橋をかける働きを持つものである(グリーンハル・
後藤, 1999)3分間吸入させた。マスクは無臭で,鼻孔
が,言葉は,
ハーウイツツ, 2001)。このため,香りの晴好のよう
な「個人の感じ方」やそれに間接的に影響を与えてい
ると考えられる「情報Jを判断することに適している
反面,どの物語を引き出すかは,聞き手の力量にかかつ
てくる。
さて,香りについては,一般的には「悪臭 Jを除け
ば.1何の匂いかJを言い当てることができないものは,
“不快"と受け取られ,その匂いに対する好き・嫌い(ま
たは快・不快)は,連想されたその匂いの「対象物に依
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.
1.Scenesd
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eexperimen
.
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第 1図.吸入実験実施状況.
2
までの距離が保たれる立体型で,オイルそのものの香
葉を,香りの百科事典(谷田貝, 2005) を参考に a~f
りを嘆ぐことが出来る不織布製のものを使用した(第
をプラス群, h~l をマイナス群, gを香りの原体験,
l図
)
。
m はその他の表現と設定し, 1
3種類の言葉を挙げた。
3
)実験積場の整備
また,香りから連想する場所やその場所に対するイ
実験環境の整備は, CgAを用いた先行実験(大津,
メージがより想起きれやすい設問を設定した。また,
2
0
0
5
)に準じた。実験中,関係者以外の実験室立ち入り
香りから想起された場所と自然環境に関連があるかを
を禁止し,静寂を保てるように努め,被験者に負荷を
みるため,被験者の出身地を問うた。最後に,その他
与えないように配慮した。
)
。
の感想などの自由回答欄も設けた(第 3図
4) CgA測定用の唾液の採取
結果および考察
唾液の採取は,開発者が指定する三点測定法に従い,
吸入実験の前と直後,また安静 1
0分後の合計 3回,初
日と最終日に実施した。採取方法は,専用容器にセッ
1
. 各指標の結果
トされた脱脂綿を被験者が 1~2 分噛み唾液を浸み込
1) CgAの数値変化
ませ,その脱脂綿を容器に入れた。採取後の容器は保
CgA量の変化は,測定値の個人差が大きいため,各
冷した状態で株式会社矢内研究所に送付し定量検定
被験者の吸入前の値を 1
0
0として変化率で示した(第 2
を依頼した。
表)。生理的指標の取扱いについては,年齢などのばら
5)VAS測定
つきも大きく,傾向をみるにとどめざるを得なかった。
VASの評価項目は,質問 a
. 嫌い・好色質問 b
.
初日は吸入直後に上昇した者 1
4名,下降した者 2名
,
気になる・気にならない,質問 C
. 不快感ある・不快
顕著な変化のない者 4名であり,被験者の大多数に上
感ない,の三つとしいずれも前者を左端,後者を右
昇がみられた。次に最終日は,吸入直後に上昇した者
端とした。測定は初日と最終日のみ行った。質問 aは
1
2名,下降した者 7名,顕著な変化のない者 l名であ
モミオイルの香りへの曙好を問うもの,質問 bはモミ
り,初日よりも下降した人数が増加した。
オイルの香りに対する慣れの程度を問うもの,質問 C
CgAで顕著に表れたのは, 5日間の実験参加によ
はモミオイルの香りに対する不快感の有無の程度を問
)
。
うもので、あった(第 2図
る被験者の精神的ストレスであった。すなわち,初日
VAS:このアロマの香りについて,あてはまりそうな所に斜
トレス反応と考えられる。また最終日には,香りに対
線を入れて下さい。
質問a.
嫌い
質問 b
.
気になる
に,多くの被験者の CgA値が上昇している O これは,
初めて吸入する未知のアロマオイルに対する正常なス
好き
する慣れを生じて CgA値は低下すると予想されたが,
吸入前値は初日のそれより上昇していた。この上昇傾
質問 C
. 不快感ある
気にならない
不快感ない
向は,香りに対する慣れはあっても,連日,決められ
た時間にくることの緊張感・疲れも加味されたことを
第 2図.吸入したア口マに関する V
AS.
示している。
以上のことから, 5日間の実験によるストレスが
6
)アンケートの実施
CgA値には顕著に表れていた。最終日の,吸入後
F
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.2
.VAS油田,tf
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da
r
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.
最終日の最後に,香りを言葉で表現するアンケート
表に記入させた。香りの感性やイメージを表現する言
CgA値が下降した者が 7名いたが,これは,香りによ
る抗ストレス効果よりも,
I
実験が終了する」ことに対
する安堵感と考えられる。実験初日の吸入前値よりも,
香りに対するアンケート調査
1.この香りを言葉で表現すると,どのような香りですか?
a
. やさしい b
. やわらかい C. 甘い
d
. さわやか e
. 落ち着く
1.良い感じ
g
. 懐かしい h. むかむか
しきつい
J
. すっぱい k
. じめじめ
1
. 青臭い
m
.その他
最終日の吸入後値が下降している者は 3名いたが,こ
の 3名には香りによる抗ストレス効果が示唆される。
2) VAS値の変化と動向
各質問の VAS値 (mm)は第 3表のとおりである O い
ずれの質問についても吸入試験後の平均値は上昇した
が,数値のばらつきと標準偏差を見ると,個人差が大
2
. この香りを場所に例えるとつ
0
0として変化率
きいので,各被験者の吸入前の値を 1
3
. それはあなたにとってどのような場所ですかっ
a
. いつも居たい,落ち着く
b
. たまに恋しくなる
C. 自分では好んで滅多に行かない
で示した。
平均の標準誤差内の変化を「変化なし Jとしてみる
d
. 嫌な思い出がある
と質問a
. 好みでは,上昇した者 1
0名,下降した者
e
. その他(
4
. その他,何か感想があれば書いてください。
F
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.3
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.
第 3図.アンケート用紙.
3
3名,顕著な変化のない者 7名,質問 b
. 慣れでは,
上昇した者 8名,下降した者なし,顕著な変化のない
2名,質問 C 不快感では,上昇した者 8名,下降
者1
戸
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ヘ川
FF戸、話、戸
睦
噌
タ'調〆調J調〆調r戸,、迎賓〆明/測〆切J抑〆升〆
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一終一48227833621606848030一7±1一増
c一 最 一 6 7 5 9 7 7 3 7 9 7 7 6 9 9 7 9 8 m 9 E 一 7 - 一 を
BF
﹂
一
HH
質一一一一以
ー日一一・・7一れ
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2
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F
一彰一7239623567245767:8一割
一也-108521161174a590.6388一1+一4一日
-4t41a斗41白uda斗FD一nU4lqOの4qdqo--41内t-4f
安一-11341-9一12一内
lt
駅一一一一回
一日一一65一範
ユ一終一52240150653796143376一9±a一の
酌一最一68657755974339899984一62一差
劃一一一一誤
幽一一
一
一
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i
日一99538292740381488942一M±7一様
a
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ω
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F
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2
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M
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F
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B-長
F
ρoro-- 白 血盲
陪
嶋一
A
月一00811818491052800223一8+一9一一日和
問
6
-“ 一 a 4 6 G 4 8 6 1 9 3 3 4 0 3 3 7 9 4 8 5 一 幻 お 一 、 刻
印叫一変一1-53354-1一一'吸
町出一一一一メ日
酌恒一川一後一16312941963417866146一93一九4
酬は一郎一一一一叩一
,
2
AJ
貴
x100. 一,ノ,、は,
Z変化率=(吸入後一吸入前)+吸入前
2
3
.9
2
4
.2
J j。
一九一ι5ρ 。
ι522261jJ31iiι3一7±qJ一-月
ω円出劃一ι
一山一吸一7882m9mm 幻 4 n m 2 引 5 5 2口 6U一円6一nu2
SRi-
百第一
± 土 土
平均±標準偏差
質問a.好み
最 終 日 変 化 率Z
それ以上を増加(メ).それ以下
州国一m一明一位位ロおり
糾邸花町mm一ぉ±花一和明
幻
苅引お
蜘 湘 一 眠 一 6 a 5 m 位 9 6 u n 2 引 ぬ 2 m a E Z 吃 58一a5-mu 晩
m 川一
一前も月
男男男男男男男男男男女女女女女女女女女女
国ほ一入た
a高二一 吸 し 引
曲目配
d定 一 ト 三 万 率
問測一徹てヒ
M
4
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F
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D
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4
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4
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t
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正
内
4
内
d
a
陶酔一明比例
h C一 = 、 後
一率ベ前
e表 一 ヒ aAnkununuFEF-RUHH1・JUVRHELM聞 M刊のHvpznunRRwTl
平均±標準偏差
初日
性別
年齢
被験者
1
0
3
2
2
.
1
2
0
7
7
9
1
6
.
5
1
3
.
7
5
1
.
3
7
5
.
2
1
2
8
3
7
8
3
5
.
4
1
9
.
2
5
6
.
4
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2
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0
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3
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.
1
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6
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6
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.
6
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1
.
4
5
±
9
8
.6
6
N 2一 割 減 期
Table3
.Measuredv
a
l
u
e
so
fVAS.
第3表.VAS測定値 (mm).
'
、ーは上記と同様.
ノ
,
実験前後の
変化率 Y
性別
年齢
被験者
を減少(、)として示したもの.
4
した者 2名,顕著な変化のない者 1
0名である。
特に顕著だったのは,質問 b
. 慣れの変化率にみる
標準偏差のばらつきであった。この結果から,吸入濃
その他
度の最適性は個人によって感じ方が大きく異なること
が示唆された。また,三つの質問に対する回答パター
ンは,第 4表に示すように 1
1通りもあり,被験者の
陵味な心理が反映されていた。以上の結果. VASはあ
くまでも主観的評価指標であり,個人差が大きいので,
客観的指標として用いるのは困難であるとみられる。
a
.好み
ノ
メ
b慣れ
ー
c
.不快感
ー
ノ
ノ
一メ、メメ
ノ
メ
ノ
メ
一、¥述、
胤
一5 3 3 2 1 1 1 1 1 1 1
Table4
.Changep
a
t
t
e
r
no
fVASchang
,
陪 r
a
t
e
.
第 4表.VAS変化率の変化パターン.
メ
ノ
メ
ノ
森 (
5
)、森林、林、
針葉樹林、木工細工
の作業場、草原、香
りの強い草花や木の
ある場所、家 (
2
)
F
i
g
.4
.Plaα*>r
郎 副e
dbythearoma
.
第 4図.香りから想起される場所.
した質問への回答は,具体的な場所が挙げられていた
ことが興味深い。匂いにはその匂いと結びついた過去
3)香りに対するアンケートの結果
の経験を想起させる(谷田貝. 2
0
0
5
)が,モミオイルの
質問 lの香りを言葉で表現する選択回答で一番多
香りが,“何かしらの思い出"を連想させる香りであっ
かった言葉は「さわやか J
I
懐かしい J
であり,次いで「落
たことが考えられる。また.1懐かしい J
に対し「家J
I実
ち着く」が多かった。「甘い J
IむかむかJ
Iすっぽい J
Iじ
家」と答えた被験者が 2名いた。出身地は北海道と東
めじめ J1
その他Jを選択した者は無く,プラス群とマ
京都であった。「家 J1
実家」が何を指しているかは本
イナス群の選択数を比較すると,前者が 1
2
. 後者が 6
調査では不明であるが,自然環境だけでなく,家具や
であり,プラス群の表現を選択した者の方が多かった
家材の香りなどを想起させた可能性がある。
次に.1この香りがあれば良いと思う場所Jの質問は,
(
第 5表
)
。
「トイレ (
1
1
)J
. 次いで「寝室(5)J
.1
玄関(4)J
.1
公
次に,香りから想起される場所,イメージを探る手
立てとして,香りから想起される具体的な場所を問う
共の場 (3)J
.1
リビング(1)J,
た。それに対して. 1
森 J1
草原 J1
林Jなどの自然環境
の中(1)J,
や植物のある場所を指す回答が多く,最も多い回答は
1
学校・職場(1)
J1
車
1
自分の部屋(1)
J であった。この結果か
らは,一般的に「香り」は. 1
消臭」というイメージが
「
森Jと「たまに恋しくなる Jで、あった(第 4図)。後者
高いことを示唆している。
の質問に対する回答は. 1
自分からは滅多に行かない」
自由記述の感想については
2
0名中 5名の回答があ
1
5日間やると慣れて悪く恩わなくなり
が2
.1
嫌な思い出がある」が Oであり,全体に香りに
り,それらは
対してポジテイブなイメージが得られた。
ました J1
落ち着きました J1
最初はいやな臭いだ、った
「香りを場所で例えると?Jという,あえて抽象的に
被験者
E
F G
H
J K L M
O
Q
R
S
T
選択数
4目 白
Jwqu-Ru-nu 司Lnunuqu-nu
U 民
•
•
•
•••••
••• ••••••
•
•
•
•
•
•
• •
•
••
quA﹃
C
p
-
5
B
N
2
2
) やさしい
プラス群 (
やわらかい
甘い
さわやか
落ち着く
良い感じ
原体験 (
6
)
懐かしい
マイナス群 (
5
) むかむか
きつい
すっぱい
じめじめ
青臭い
その他 (
0
)
その{也
A
8を追うごとに慣れました J1
森林を連想する香
・
一
表現する言葉
D
要素別(数)
・
一
Table5
.E
x
p
r
e
s
s
i
o
n
sf
o
rt
h
earom
a
.
第 5表.香りに対する表現 (
n
=
2
0
)
.
けど.
r
りではあったが,自分の好みではない J すごくいい
① 盃
CgA/VAS
香りで,ずっとかいでいたかったです」であった。選
択回答だけでは得られない,個々の香りに対する好み,
慣れなどの心理的変化が,より具体的に表れた。
02
1) CgA
アンケートの結果と CgAの変化で,明らかな関連
坦学側︿回口
2
. アンケートを主軸とした評価指標の考察
4
性が見られたのは .
2
0名中 1名であった。アンケート,
VAS. いずれにおいてもポジテイブに回答し,かつ,
6
2
0
嫌い
自由記述で「すごくいい香りで,ずっとかいでいたかっ
4
0
6
0
80
1
0
0
好き
VAS(mm)
0
.
6
9
. 吸入後 2
1
.
3
7と
をみてみると,初日の,吸入前 2
町出
たです。」と応えた被験者 N である。 N の CgA変化
G同!V
AS
②
数値はほぼ変動なし,最終日の吸入前 1
7
.
8
9
. 吸入後
4
1
2
.
0
0と下降し,抗ストレス効果が示唆された。
CgAは微細な精神的ストレスで鋭敏・特異的に反応す
るという特徴があるため 複雑な心理状態が働く状況
下では,何がどのように影響しているかを裏付けるこ
04
化には,明らかな関連性や規則性が見出せなかった。
坦垣則禍︿国 O
その他の被験者では,アンケート結果と. CgAの変
4
とが難しい。今回の実験でも,第 6表にまとめたよう
6
なストレス要因が存在していると考えられるが,それ
気になる
o
2
0
4
0
6
0
80
VAS(mm)
一初最一
Cg
A
ノ VAS③
的ストレスをみるには,有効であろう。しかしスト
一
口
同
一
一日終一
r
CgAは「痛い J 辛い j などの,ネガテイブな精神
一
・
・
一
らが結果にどのように影響しているかは,わからない。
1
0
0
気にならない
4
レス援和効果を検証する際には,微細なストレスに鋭
敏に反応することが,データの判断を難しくしている。
する可能性の方が大きい CgAは,実用的とはいいが
04
r
このことから. 香り」の心理的効果を測る指標とし
ては,制限が多く存在するかぎりは,その部分に反応
堪学制md司回。
実験には多くの制約が必要となるので,被験者への精
神的負荷がかかることは否めないからである。
4
6
たい。
o
2) VAS
アンケート調査から VASを考察してみると. 気に
なる」という言葉に対して. 興味・関心をそそる Jと
いう「ポジテイブな気になる」と. キツイ,嫌だ」と
いう「ネガティブな気になる」が存在した。
同じく. 気にならない」という回答も. 心地よくて,
不快感がない」という「ポジテイブな気にならない」と,
「ほとんど香りがしない」という香りの濃度に関する物
r
r
r
r
r
不快感ある
2
0
4
0
6
0
80
VAS(mm)
1
0
0
不快感ない
F
i
g
.6
.Changeso
fs
a
l
i
v
a
r
yCgAl
e
v
e
lf
o
reachVASon百r
s
tday
andl
a
s
td
a
y
.
第 6図.初日と最終日の CgA分泌量と VASの変化.
理的なものがあった。
VASとアンケートの結果から,被験者の心理がおよ
そ以下の六つに分類できると推察された。 i)嫌いだ
が,慣れればあってもかまわない。 i
i
)どちらかといえ
Table6
.P
o
s
s
i
b
l
es
t
r
e
s
s
o
r
sr
e
司e
c
t
i
n
gt
ot
h
ev
a
l
u
eo
fCgA.
第 6表. CgA値に反映されると考えられるストレス要因.
ストレス要因
実験環境
CgAの採取
)Jの吸引濃度
「
香1
「香り jの好み
生理的反応
誘発されるイメージ
人工的な「香り」体験
そのイ也
ポジティブ
興味・関心・好奇心
興味・関心・好奇心
ネガティブ
日時の制約・噌好品の摂取
コットンを噛む不快感
適度
低い・高い
好き
嫌い
不快感ない
不快感ある
過去の良い体験
過去の嫌な体験
「香り Jそのものに違和感
「香り Jだけを楽しみたい
ホルモンの日内変動・体調など
6
ば好きだが,いつもは嫌いである。 i
i)別に嫌いという
きた香り"ではなく,実験空間でのその瞬間だけの試
ほどではないが,いつもは嫌いである。 i
v
)生理的に受
材として扱われるにすぎない。これは香り「成分」に
けつけない。 v)香りは嫌いだが,想起されるもの(場
対する,身体反応ともいえるかもしれない。
i)香りは嫌いではないが,
所・人)のイメージは良い。 v
以上のことを考えると,長年にわたり体得されてき
イメージするもの(場所・人)と異なるから好きではな
い。などである。
た性格や曙好が影響する気分変化は,対象者数を増や
今回の調査では. VASは人の好み・慣れ・不快感な
きるとはいえない。香りによって心理的変化の起こる
して統計処理をしても,生理的指標の有効性を判別で
どを計測するには不適であると考えられた。緩和ケア
プロセスを辿り,その真意をいかに探るかを検証する
のように,辛い「痛み Jを抱えた患者が,その痛みを
方が,より適切にその影響を評価できると考えられる。
r
取り除いて欲しいと願っている状況下では. 痛み」の
明確な評価基準があるが,香りによる心理的変化のよ
描 要
うな暖昧な概念を計測するには個人差が大きすぎる。
質問の仕方,明確な基準,質問する側とされる側の共
鎮静効果, リラックス効果などのストレス軽減や快
通概念を要するため,今回のようにアンケート調査を
適性向上効果があるといわれるアロマセラピーに,モ
補完する形で用い,どの程度の有用性があるかを検証
ミの木から抽出したモミオイルを用い,香りの主観的
したうえで,用いることが望ましい。
評価としてナラテイブなアンケート調査を実施し,ま
た生理的評価法として唾液中クロモグラニン A (CgA)
まとめ
と,主観的評価の客観化として用いられる VASの測
定を実施した。その結果,アンケート調査からは香
香りの心理的効果を評価するには,アンケートによ
りに対する多様な評価を引き出すことができた。また
る調査が最も侵襲性がなく,かつ,香りにより想起さ
VASは,アンケート結果を補完するものとしてある程
れたイメージやそのイメージに対する晴好などを判断
度有効であるが. CgAは,他のストレスにも鋭敏に反
できる。逆に,これらの意識や思考が働かない場合に
応するため,香りの心理的効果を測る指標としては適
は 香り Jによる心理的効果は期待できない。つまり,
していないことが示唆された。
r
.
香りを嘆ぐことによって働いた意識や思考,その一連
生理的指標による被験者への精神的ストレス,実験
の流れから得られた感情を自分の「言葉」にすること
コントロールによる制限などを考慮すると,香りの心
が,最も「香り Jに対する評価を表していると考えら
れる。
理的効果を評価するには,今回実施した三つの評価法
生理的指標を用いて香りの心理的効果を検証するに
の中で,アンケート調査などの主観的評価法であるナ
ラティブな検証法が適していると考えられる。
は,実験環境(温度・湿度・静寂).方法(材料・道具の
選定).被験者への制限事項(タバコ・コーヒーなど曙
謝 辞
好品の制限)など,実験を行うにあたっての条件が多す
ぎて本来の目的には対応できない。
本研究は平成 1
9年度地域資源活用型研究開発事業を
実際,実験条件そのものがストレスにつながること
受託したオークピレッジ株式会社からの委託を受け実
が CgAの結果で示された。したがって. 香り Jの効
施したものである。 5日間の実験にご協力くださった
果を評価するにあたっては,実験環境下で行うよりも,
東京農業大学農学部バイオセラピー学科の学生諸君な
普段の環境下で「香り」に対するイメージを想起させ,
らびに事務職員の方々に心から感謝の意を表したい。
r
ナラティブ(語り)を引き出す方が,適切であろう。な
ぜなら,ナラテイブな方法では,被験者に精神的負荷
引用文献
を与えず,かつ,実用性のある「香り Jの心理的効果
を把握できると考えられるからである。
「香り Jによる気分変化とは,その人本人が「香川
を認識しこれは何の香りに似ているか,過去に似た
ような香りがあったか, どのような記憶と繋がるか,
思考をめぐらしその「香り」を判別しようとする意
思が働くことが,香りによる気分変化の評価となる。
香りとは,時期,場所,状況など,香りが発生する
自然環境もしくは,その香りを感じられる本来の空間
でなければ,香りの評価に繋がらないのではなかろう
か。つまり,実験における香りの提供は,いうなれば“生
7
C
a
r
l
s
s
o
n
.A
.M.1
9
8
3
.Assessmento
fc
h
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n1
6
:
8
7
1
01
グリーンハル. T
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B
. ハーウイツツ. (斎藤清二・山
0
01.ナラテイブ・ベイ
本和利・岸本寛史監訳). 2
スト・メディスン:臨床における物語と対話.東京.
p
p
.
6
11.金剛出版
書間臣治・矢部博興 1
9
9
9
. ヒパ油芳香曝露条件下
における健常人の CNV変化.臨床脳波 4
1 (6):
3
4
7
3
5
0
.
保坂隆.2
0
0
8
. グループ療法のファシリテーター養
成講座の実際と意義緩和医療1O(1
):
5
6
61
.
今西二期. 2
0
0
8
. アロマセラピー.医学のあゆみ
品川
2
1
4
):
6
9
1
6
9
6
.
(
7・8
板子伸子・潮見泰蔵. 2
0
0
6
. 高齢障害者に対する VAS
を用いた主観的健康感に関する調査.理学療法科
学2
1(1
・
)3
1
3
5
.
川端ー永. 2
0
0
0
. アロマセラピーの臨床応用.医学の
あゆみ 1
9
2
(9
):
9
0
9
9
1
4
.
J
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S2
4
(2
):
3
9
0
3
9
4
.
隆・青山繁・永長周一郎・大関豊岳・角保徳.
2
0
01.脳卒中患者における摂食味下の自己評価な
らびに機能評価と ADLとの関連.第 7回日本摂食・
膜下リハビリテーション学会:9
0
.
田中桂子. 2
0
0
5
. がん患者の呼吸困難のマネジメント.
。
3
.
(株)ソフトナイン.大阪.
田遺豊.2
0
0
6 日常診療における痛みの評価法痛
みと臨床 6(3):
5
7
.
日本緩和医療学会がん察痛治療ガイドライン作成委員
テイスランド, R
. .T.バラシュ(高山林太郎訳).
0
0
0
. E
v
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eに則っ
会(編). 2
2
0
0
5
. 精油の安全性ガイド(上巻). p
p
.
8
,1
2
6
1
2
7
.
たがん寒痛治療ガイドライン. p.
l5
. 真輿交易(株)
医書出版部.
0
0
5 合成ヒノキチオール (HT)の一過性
大津隆一. 2
吸引がヒト唾液中のクロモグラニン A (
CgA)お
よび免疫グロプリン A (
I
g
A
)分泌に与える影響.
自律神経 4
2(
6):
3
3
7
3
4
3
.
フレグランスジャーナル社.東京.
安田恭子・古井景. 2
0
0
8
. 元気が出る音楽の聴取と
気分誘導効果の検討ーストレス反応と音量の違い
に着目して心身医学 4
8
(9):
8
2
7
谷田貝光克(編). 2
0
0
5 香りの百科事典. p
p
.
5
9
5
5
9
7
.
丸善東京 6
0
4
6
1
1
岡村麻里・笹栗健一・槻木恵一. 2
0
0
3
. 唾液クロモグ
吉田倫幸・後藤英理. 1
9
9
9
. 前頭部脳波を指標とした
ラニン A によるストレスレベルの臨床効果.神奈
香りによる睡眠効果の検討(1).日本味と匂学会
川歯学 3
8
(4):
1
8
7
1
8
9
.
誌 6(
3):
4
7
3
4
7
6
.
笹部哲也・渡辺恭良 2
0
0
6
. アロマ治療(緑の香川.
8