★柱のケイは最低 292H(断ち落とし含)で文字の多いときはナリユキでのばす★ 環境を通し, 主体性を尊重した指導実習についての一研究 最近 5 カ年の後期指導実習における学生の学び 大西道子・秋山ゆみ子 Ⅰ.はじめに 少子化に端を発し,教員の資質向上が今ほど求められている時代はないであろう。 戦後日本が追い求めてきた経済・科学・文化等の発展が成熟期に入り,その陰で犠牲にされてしまったことの 矛盾が表面化してきたことも否めない。 子どもの育ちの領域 がその1つである。文部科学省は平成 13年に幼児 教育振興プログラムを策定し,その中で 幼稚園教員の資質向上について 自ら学ぶ幼稚園教員のために の 調査報告を出している。そこで幼稚園教員の資質向上の意義や幼稚園教員として求められる資質と専門性を提言 している。 幼稚園教員に求められる専門性の最初に 幼児を理解し,活動の場面に応じた適切な指導を行う力をもつこ と をあげ具体的には,まず 幼児を内面から理解し, 合的に指導する力,具体的に保育を構想する力,実践 力,…… としている。 そのために養成 の新設・必修化 ではどの部 を受け持つことが出来るであろうか。 中央教育審議会の 教員として必要な資質能力の最終的な形成と確認 教職実践演習(仮称) に基づき,文部科学省は 2010年度入 学生より教職課程に 教職実践演習(仮称) を新設・必修化した。学生同士が教員と子どもに かれて模擬保育し て実際の保育現場を模した情況を体験する・グループ討議・事例研究等の授業が必修となる。すでにいくつかの 養成 では 2006の中央教育審議会答申を受けて模擬授業のプログラム開発と授業実践の試みがなされている(梅 垣 2006,和田・ 本 2009など)。しかし幼児を理解し, 模擬世界の体験だけではむずかしい。土谷 合的に指導する実践力にはシュミレーション的 の調査によれば, 新任保育者たちは現場に出て学生時代の履修科目 で役立ったものに,ほとんど全員が教材研究をあげているが……生きた幼児と実際に向き合ってこそ,その時々 に教材の必要性が出てくるもの であるとし,実際の子どもと向き合ってこその大切さを強調する(下線は筆者)。 このことは,実践知の概念 保育実践の中核をなすのは子どもの発達の事実と保育内容,子どもの相互関係を踏ま えて 刻々に判断し行動する 力 ること ,砂上他等がいう 保育が状況に応じた保育者の即興的な行動によるものであ に共通する。 本学では開講以来,附属幼稚園との 流を密にし,1年次には観察学習を中心に,2年生になると参加実習, 指導実習を通年授業として組み込んできた。その目的・内容・方法・効果については単年度単位では日本保育学 会(第 48回大会・第 60回大会・第 61回大会)で述べてきた。 本稿ではこの授業の過去5年間に実施してきた附属幼稚園における指導実習を核においた後期授業の実習内容 を整理し,学生の学びを 察する。 短期大学保育科の2年生後期という時期は,いわゆる免許状・資格取得のための各5単位の教育実習,保育実 習は終了しており,就職活動が同時並行で始まっている時期である。現場に入って子どもとどう関わったらよい か,遊びを沢山知っておかなければ……,ピアノが弾けなければ……,手遊びが出来なければ……,等々技術的 なことの不安で一杯になってくる。しかし残り半年で 今 学生時代に学習すべきことは,現場に入った時,何を ポリシーとして子どもと向き合うのか,筆者らは,その原点とすべきことを子どもと接する中から見つけ出すこ との重要性を認識する実習。そして浜口 が言うように とらわれない目 で子どもを見ること , 子どもが過去 から現在まで育ててきた顕在的・潜在的有能性 を,保育の場で体験できる実習。実践の中で子どもと向き合いつ つ,子どもから学ぶ体験の積み重ねになる実習となることを意識して学生と関わっている。 指導案作成にあたっては,子どもの主体性を尊重し,子どもが活動しやすくなる援助の役割に重点を置いてい る。何故このことが重要なのか,このように関わるとは,実際にどういう風に関わることなのかを実践を通して, 実感として掴み取るための実習になることをねらいとして進めている。 学生が主体的に計画をたて,実施した子どもとのかかわりの中から 子どもとは…… を発見し,子どもが主体 的に活動できたかどうか,それは何故か,を追及し,子どもとの関わり方のポリシーを習得している様子をレポー トにおける記述から 察していく。 ★次頁にもノンブル枠あり★ Ⅱ. 方法 この実習形態は, はじめ にでもふれている通り,附属幼稚園との連携により実施されている。2日間(午前中, 8時 30 ∼11時 30 )園全体を借り切り学生の半数が実習者,もう半数が観察者となり,園全体をひとつのテー マの世界とし,その世界で園児全員と遊び体験する指導実習である。本稿は過去5年間(平成 17年度∼平成 21年 度)の実習内容を実習指導案と実習後の振り返りレポートに記述されたエピソードをもとに 1. 対象:本学保育科2年生 平成19年度 平成17年度 103名 平成20年度 109名 平成18年度 109名 察した。 95名 平成21年度 106名 2. 析資料: ①実習指導案(平成17年度∼平成21年度) グループごとに指導担当者(筆者)をまじえ話し合い,作成されたもの。 ②レポート課題 計画(話し合いを含む)の段階,実践の段階,振り返り(ビデオ編集と発表を含む)の段階を思い起こし, 保育者として特に大切にしたい内容を具体的にエピソードで挙げ,その理由も述べなさい。 Ⅲ. 結果と 察 1. 過去5年間の後期実習内容 過去5年間の後期実習内容を整理したものが表1∼5である。整理にあたり,主な活動・つなげる存在・なり きり言葉・各クラスの環境構成と内容・実習生の演じた役割・主な材料に 類した。環境構成と内容の項目の1 日目の内容は2日目にもほとんど継続・発展されている為2日目には記入していない。 環境を通し, 主体性を尊重した指導実習についての一研究 表 1平成 17年度後期実習内容 実習日 平成 17年 10月 26日・27日 大テーマ (H17a) 宇宙∼宇宙人と仲良くなろう∼ 平成 17年 11月9日・10日 (H17b) アボリン島を探検しよう 主な活動1日目 園全体がアボリン島になっている。島の中を探検する。 園全体が宇宙になっている。宇宙の各星で自由に遊ぶ。 物知りじいさんの木がアボリン島の伝説,宝探しのヒン 宇宙人と 流し仲良くなる。 トなどをお話する。 主な活動2日目 各星で自由に遊ぶ。宇宙人の星が落ちたことを知り協力 前日の続きの探検をする。アボリンがお別れパーティー して星を作る。ロケットに乗って地球に帰る。 を開きみんなで踊る。 つなげる存在 宇宙飛行士 物知りじいさんの木・ほしがり岩 場を共有するなりきり言葉 宇宙語 ∼ピポ アボリン語 ∼アボ 宇宙ステーション 探検本部 小テーマ ホ ー ル 1日目 宇宙 ・望遠鏡・放送局・宇宙飛行士訓練所 2日目 緊急事態発生(宇宙人の星が落下) 小テーマ 年 少 A 各 ク ラ ス の 環 境 構 成 と 内 容 1日目 クッキー工場・お菓子工場・マシュマロプール 2日目 オーブン設置 大きなお鍋で料理する。 ラクガキの星 1日目 2日目 夢ロケット作り・パズルの復元 1日目 2日目 さかさ工場(さかさまの町作り) 風の星 1日目の継続,発展 アボリン沼の物知りじいさんの木 1日目 星面着陸・風星人の広場(扇風機の風) 物知りじいさんの木(各お部屋の伝説を話す)・アボリン 沼 2日目 ロケット制作 1日目の継続,発展 不思議の星 アボリン崖 1日目 宇宙の動物園・マジックボックスで宇宙怪獣をやっつけ のぼり崖(探検パートナー人形を作り崖を登る)・崩れ崖 ろ‼・星くず集め・不思議生物をつかまえろ‼・マジッ (崖の一部を取り外したり花をとったり) ・崖滑り(崖を滑 クショー り下りる感覚を体験) 2日目 不思議な宇宙 崩れ崖が崩れる。 せいぎの星 アボリン洞窟のほしがり岩 1日目 せいぎのバッチ作り・訓練と事件解決(不思議の星で 逃 げ出した水の生物をつかまえよう 宇宙ステーション 宇 宝探し・ほしがり岩(星を見たことのない岩)とお話をす 宙ステーションを救え お菓子の星 みんなでいちごを見 る。 つけよう ) 2日目 1日目の継続,発展 小テーマ 年 長 C アボリン川(迷路) たくさんなーれ・雨あがって虹・さかさになーれ・トマー 迷路(入り口→川の中→岩→あやしい所→ワニ→ナマズ ト 生 ・虹の橋・鏡 →パイプ→巨大できれいな魚) 小テーマ 年 長 B 狩り(動く動物を狙う) さかさまの星 小テーマ 年 長 A アボリン村 ラクガキパズル・自由にラクガキの壁・惑星(球体)にラ 住居・料理スペース・狩り(的あて)・何でもなる木の実 クガキ 取り・バンブーダンス 小テーマ 年 中 B アボリンの森 勇気の出る探検道具(パワーアップする服と帽子, 不思議 が見える望遠鏡, 暗闇が怖くなくなるライト) ・探検の足跡 小テーマ 年 中 A 湖が自然災害でなくなり復元する。 お菓子の星 小テーマ 年 少 B 連絡塔・泉・寝床・焚き火・探検隊訓練(暗号ゲーム)・ 木の実採りゲーム 1日目の継続,発展 お話の星 アボリンの山道 1日目 シンデレラ ガラスの靴を探そう → 魔法 いに 変身 どろ道(ポリ袋に小麦 粘土を詰め床に固定)・トンネル だ ・桃太郎 桃太郎になりきって鬼退治 → 登場人物に (段ボール)・切り株(座ったり跳んだり)・じゃり道(新聞 なりきろう ・おむすびころりん おむすび作ろう迷路 → 紙を小さく丸めたものを敷き詰める)を歩く おむすび探そう迷路 2日目 1日目の継続,発展 実習生の演じた役 宇宙人(各星人)・宇宙飛行士 主な材料 1日目の継続,発展 探検隊員・アボリン(原住民) ・物知りじいさんの木(声) ・ ほしがり岩(声) 段ボール・新聞紙・発泡スチロール・カラービニール袋・ 段ボール・新聞紙・発砲スチロール・廃材(トイレットペー 画用紙・折り紙・小麦 ・すずらんテープ・廃材(空き箱,パーの芯,ラップの芯,紙袋,トレイ,包装紙,空き箱 空きカップ,果物ネットなど) など) 大西道子 秋山ゆみ子 表 2平成 18年度後期実習内容 実習日 平成 18年 10月 26日・27日 (H18a) 平成 18年 11月 15日・16日 (H18b) 大テーマ 冒険者になって7つの島を冒険しよう‼ 時間旅行者になって,過去や未来の時代を旅行しよう 主な活動1日目 前日各保育室に冒険隊から 7つの島を発見したので一 緒に冒険をしてくれる仲間を探している という手紙が 届く。各保育室は不思議な島になっている。ホールは冒 険の拠点で海や港, が設置されている。園児は冒険者 として7つの島を探検する。 前日,タイムトラベル会社から手紙が届く。ホールはタ イムトラベル会社, 各保育室は様々な時代になっている。 園児は旅行者になってその時代の人々の生活の様子を見 たり体験したりして遊ぶ。 主な活動2日目 登園すると や各島は海賊に荒らされ,占領されている。 島民が大切にしているタカランの木になっていた宝も海 1日目と同様の時代だが各時代何かしらの変化がある。 賊にとられている。冒険者は島民と力を合わせ宝を取り 戻す。 つなげる存在 海賊のかしら 場を共有するなりきり言葉 キンキラキラキラ 小テーマ ホ ー ル 自由港 (海・ タカランの木(島の宝)・魚釣りの海・冒険者の 上の橋 2日目 海賊に荒らされる・宝探し 各 ク ラ ス の 環 境 構 成 と 内 容 2日目 宝が隠されている。 2日目 海賊とダンス勝負 1日目 ロープゲーム お星様の島 宇宙時代 お星様の丘 星ひろい・ お星様工場 星座づくり・ 星だ 宇宙言葉 ∼ピピ を う。UFO の部品集め,部品作り ま工場 星だまづくり・星の子探し (なくしたねじ,UFO の壁作り,操縦ボタン作り) 星の子を助けてあげよう (ドクロ落とし)・宝探し 宇宙人と友達になろう。 魔女の島 原人時代 1日目 魔法の薬づくり・魔女の食卓・魔法の練習(ほうきで飛ぶ, 土器作り・調理・落ち葉の肥料・壁画描き 手品)・壁にお絵かき 2日目 海賊から宝を取り戻そう マンモス出現 変身の島 原人時代 1日目 各島にちなんだ衣装・アイテムの制作 2日目 変身的あて・アイテムどーれだ?服から見つけ出せ (宝 マンモス出現 探し) 小テーマ お祈り・マンモスの鳴き声・石転がし グルグル島 ピラミッドの時代 1日目 迷路・キャンプごっこ(テント,焚き火など) 占い婆さんに占ってもらう・ぴらジャングル・自由の壁・ 新聞砂漠 2日目 海賊が落とした宝物 宝探し・太陽の秘密 小テーマ 年 長 B カウボーイの時代 1日目 小テーマ 年 長 A のぞき見の術 音楽の島 楽器コレクターの家(楽器に触れる)・楽器職人(楽器制 拳銃づくり・射的・コイン探し 作)・ダンサーの家 2日目 年 中 B 忍者時代 1日目 小テーマ 年 中 A タイムマシーン・思い出カメラ作り 忍者言葉 ∼なり を う。 とび越えの術(ピョンピョンな お菓子作り・カバン作り・お菓子ロボでパワー注入・キャ り)・忍び足の術(こっそりなり)・すいとんの術(もぐる ンディーの池 なり)・忍者先生の講習 小テーマ 年 少 C タイムトラベル会社 タイムパス取得の為の訓練(ハンドルン,鏡にうつるん・ ・海の 歩いててくてっくん)・タイムバス・トラベル社員ごっ こ・思い出アルバム作り お菓子の島 小テーマ 年 少 B たーいむ じゃんぷ‼ ,冒険の拠点) 1日目 小テーマ 年 少 A 占い婆さん ポン 修行の島 ちょっと昔のお部屋 1日目 ごうごう川・かしこくパズル・アップダウンパズル・わっ 伝承遊び(けんだま,お手玉,おはじき,折り紙,あやと くら洞窟 り,ダルマ落とし)・紙芝居・ぶんぶんごま・絵描き歌 2日目 冒険者や島民が課題をクリアしたら海賊は宝を返す。 実習生の演じた役 島民・冒険者・海賊のかしらと海賊たち 主な材料 パチンコ的あて 占い婆さん・トラベル会社の社員・お婆さん・紙芝居や さん・忍者・カウボーイ・原人 段ボール・新聞紙・発砲スチロール・紙コップ・カラー ゴミ袋・折り紙・ビーズ・毛糸・布・廃材(ペットボトル,段ボール・新聞紙・発砲スチロール・ぼたん・毛糸・紙 トレイ,空きパック,牛乳パック,卵パック,リングプ コップ・廃材(空き容器,トレイ,空き箱,牛乳パックな ル・あき缶)自然物(どんぐり,ななかまどの実,落ち葉,ど) 草など) 環境を通し, 主体性を尊重した指導実習についての一研究 表 3平成 19年度後期実習内容 実習日 平成 19年 10月 18日・19日 大テーマ (H19a) 平成 19年 11月7日・8日 選んで遊ぼう 主な活動1日目 様々な材料を いクラスごとに制作活動をする。自 好きなクラスの活動を選び遊ぶ。 主な活動2日目 1日目の遊びを継続・発展 で 各クラスがからだに関する内容でテーマを決め制作,遊 びを子どもたちが選び活動する。 1日目の遊びを継続・発展 つなげる存在 各クラスにより有り 各クラスにより有り 場を共有するなりきり言葉 なし 各クラスにより有り 段ボールの町 森のうんどうまつり 小テーマ ホ ー ル 1日目 様々な形態の段ボール(箱, つぶした, 切り込みを入れた, 森の 囲気の中で動物たちと運動遊びをする(バンブー, 丸,三角,四角に切り抜いた等)を い自由に遊ぶ(重ね 牛乳パックの平 台,相撲,木の的当て,サッカー,どっ る,積み上げる,乗り物を作る,つなげてトンネルにす ちボールゴール,ボール遊び) る,基地,家お店など) 2日目 1日目の続き,発展 小テーマ 年 少 A 各 ク ラ ス の 環 境 構 成 と 内 容 2日目 1日目の続き・牛乳パックで大きなお風呂作りお風呂 1日目と同じく楽器作り。魔法 いと1日目に作った楽 ごっこ・バイキンマン登場(バイキンの弱点を探し 夫な 器を い踊ったり手拍子でリトミック,最後に演奏会 体になる) 2日目 1日目の継続,発展。家を 場,仲良しになり遊ぶ。 おばけの国 楽器演奏・ダンス・王様登場し音楽会開催 カレーライスを作ろう 1日目 2日目 パーティーの飾りつけ 1日目の継続 ケーキ作り ばけのダンス 大泥棒もパーティーに仲間入り お 大鍋でカレー作り・サラダ・ご飯作り・みんなで盛り付 け食べる さくら島 みんなでホネホネくんになろう 1日目 で探検,嵐に遭い遭難,さくら島につく。嵐で家など パズル制作・パズル遊び・ぐにゃぐにゃダンス・骨作り・ が壊された島民たちと力を合わせ家などを作る 恐竜の骨発見・骨の役割等を知る。 2日目 新聞紙等で食べ物,遊ぶもの,生活に必要な物を作り島 1日目の続き・骨探し・ぐにゃぐにゃマンからの手紙・ の生活を楽しむ。 も直し幼稚園に戻る。 シャキっとダンス ドリームキッチン ニャンデレラ国 1日目 ニャンデレラ姫の 生日プレゼント作り・衣装屋・お菓 紙芝居 ごきげんの悪いコックさん 料理作りを楽しみ 子屋・ア クセサリー屋・武 器 屋(つ な げ る 存 在―探 偵 パーティー。森のコックさんからお手紙 ニャームズ) 2日目 森のレストランに環境構成 くまさんからの注文の大き プレゼントが怪盗ニャットに盗まれたので,もう一度プ なピザとケーキ作りをする。 レゼント作り。盗まれたプレゼント探し。 ざわざわ森のポックル村 宇宙人と遊ぼう 1日目 嵐が来てA組にポックル村が飛んでくる。何もなくなっ UFO から落ちたピポリン星人登場,仲良くなるために た村を て直す。(つなげる存在―小人) 宇宙グッツ(アンテナつきの冠・杖)や服を作る。 2日目 1日目で制作した家などに装飾,カーテンを 囲気,調理などしてごっこ遊び 小テーマ 年 長 B ってごっこ遊び。おかみ登 おばけ作り・大泥棒登場で大きなおばけになって退治し 野菜収穫・おなかをすかせた旅人登場好物のカレー作 よう。明日のお楽しみパーティーを予告。 り・料理コーナー・お皿作り・冷蔵庫・畑 小テーマ 年 長 A ブレーメンの音楽隊 1日目 小テーマ 年 中 B 3匹の子ブタと一緒にレンガの家を作ろう おおかみにわらの家と木の家を壊された3匹の子ブタと ロバからの手紙で廃材や貝 を い音楽会の為に楽器作 一緒にレンガの家作り(牛乳パック,空き箱など) 家具 り(マラカス・ギター・笛・カスタネット・太鼓など)衣 作り(椅子,テーブル,かまどなど) 装作り(つなげる存在―動物たち) 小テーマ 年 中 A ピーマンマンとお家を作ろう 1日目 小テーマ 年 少 C 1日目の遊びを発展 音楽の魔法 いを助けよう‼ 廃材を利用して楽器作り。音楽の魔法 いから明日お礼 ピーマンマンと仲間の野菜たち(トマト君,だいこんさ に行くとの手紙が届く。 (つなげる存在―音楽の魔法 い) ん,など)とお家作り・家具作り・野菜のお面作り 小テーマ 年 少 B (H19b) からだであそぼう い夜の おもちゃの世界 UFO に見える目印作り。 宇宙歩き 地球歩き 操 の表現遊び。迎えに来てピポ帰る。 電波体 運動村を作ろう‼ 1日目 おもちゃ工場。入口を変身トンネルに,通るとおもちゃ ストラックアウト・ダンベル・ボーリング に。仲間を作りおもちゃの町。(つなげる存在―工場長) 遊びに挑戦 2日目 1日目の継続,発展。最後に工場長が 人間の世界に戻っ ても,ここで作った仲間たちを持って帰って一緒に遊ん 魔女に勝つ為にそれぞれの遊びをバージョンアップする でね。 実習生の演じた役 主な材料 魔女が現れ ピーマンマン・トマト君・バイキンマン・ロバ・グニャ 3匹の子ブタ・おばけ・大泥棒・島民・コックさん・小 グニャマン・宇宙人ピポ・ニャンデレラ姫・怪盗ニャッ 人・おもちゃ工場の工場長と工員 ト・探偵ニャームズ・魔女 段ボール・新聞紙・カラーごみ袋・すずらんテープ・廃 材(牛乳パック,空き箱,フイルムケース,空パック,ト レー,など)自然物(どんぐり,ななかまどの実,落ち葉 など) 段ボール・すずらんテープ・毛糸・アルミホイル・割り 箸・木の実(どんぐり,くるみ,まつぼっくり, )廃材(牛 乳パック,ラップの芯,新聞紙,空容器,たまごパック など) 大西道子 秋山ゆみ子 表 4平成 20年度後期実習内容 実習日 平成 20年 10月 30日・31日 (H20a) 平成 20年 11月 12日・13日 (H20b) 大テーマ 宇宙 ぐるんぱのようちえん 主な活動1日目 宇宙になっている園全体の中で好きな遊びを選び,自由 に遊ぶ。終りにホールに集合し,今日1日何をして遊ん だか振り返り,宇宙の呪文〝ピロリンピロリンピロピロ リン" を唱え明日につなげる。 前日に各クラスで ぐるんぱのようちえん の読み聞か せ。ぐるんぱ幼稚園になっている園全体の中で好きな活 動を選び遊ぶ。終りにホールに集合し明日へ興味を持つ よう声掛けをおこなう。 主な活動2日目 1日目と同様に宇宙で遊び,最後に子どもたち自身がロ 1日目と同様にぐるんぱ幼稚園で遊び最後に子どもたち ケットになり,呪文を唱えながらジャンプして幼稚園に は絵本の世界から抜け出してぐるんぱ幼稚園からO幼稚 戻る。 園に帰ってくるという設定で絵本を閉じ終了。 つなげる存在 宇宙の大王 ぐるんぱ 語尾に ∼っぴ 呪文 ピロリンピロリンピロピロリン 場を共有するなりきり言葉 (楽しくなーれ) 小テーマ ホ ー ル 宇宙ステーション 1日目 2日目 なんでもみえーる(アイテム) 年 少 C 1日目 2日目 1日目継続,発展 2日目 ダンスパーティー ぐるんぱの大きなピアノ 1日目 2日目 各星に落としてしまった巻物 忍者の心得 を探す 音符探し・楽器作り(ブンブンギター) ブギウギ星 ∼音楽に合わせて体を動かそう∼ ぐるんぱの大きなくるま 1日目 身近な物(バケツ,植木鉢,お菓子の缶など)をならして 車工場( はたらくくるま BGM )・車作り・給油タンク・ みよう・フワフワ(ゴミ袋にシュレッターをかけた紙)踏 洗車機・運転 んで感触や音を楽しむ 2日目 お祭り・演奏 郵 車 警察の星 ∼宇宙警察になろう∼ ぐるんぱのなんでも郵 屋さん 1日目 警官グッツ作り(手錠,鉄砲とケース,星のバッチなど) ・ 郵 屋さん(帽子, つくり, お手紙書き, 切手つくりコー 訓練(輪投げ,ストラックアウト)・パトロール・迷子案 ナー,配達,大きなはがき) 内 2日目 指名手配犯のポスター・積極的にパトロール 食いしん坊の星 ∼宇宙レストランを作ろう∼ 落した手紙や切手のないはがき探し ぐるんぱの大きなお皿 1日目 レストランをオープンさせるために道具(食器,調理器 大きなお皿に模様付け・動物に合わせたお皿つくり 具)作り・装飾・コック帽・エプロン作り 2日目 料理作り・ちらし配り 小テーマ 年 長 B お茶会・配達 宇宙にんにん星 宇宙忍者の修行 スターロード(星渡りの修行)・モコモ ピアノ工場・エプロン作り(ピアノ工場の工員用)・園歌 コトンネル(雲くぐりの修行) ・ビュンビュン手裏剣(手裏 ぐるんぱようちえんだぞー ・ピアノ部品組み立て(立体 剣の修行)・ロケットジャンプ(高跳びの修行)・はちまき パズル) 作り 小テーマ 年 長 A ぐるんぱの大きなビスケット 1日目 小テーマ 年 中 B 靴探し・感触コーナー・靴作り ポリリンダンスパーティーの星 宇宙の服作り(服,ブレスレット,カチューシャ)・宇宙 お菓子屋さん・お菓子作り・大きなビスケット作り(帽子 ダンスの練習 作り) 小テーマ 年 中 A ぐるんぱの靴 ぽ にょボール・ラ ス タ ピーヤ・パ ヤ パ ヤ・スーパーイ 靴屋さん(ぐるんぱの靴, 足型とり, 靴の絵合わせゲーム, リュージョン(体を って遊ぶ,浮いている感じ,作って お店の壁面飾り) 遊ぶ) 小テーマ 各 ク ラ ス の 環 境 構 成 と 内 容 トンネル 子どもの星 小テーマ 年 少 B ぐるんぱ幼稚園の大きな園 ロケット・星へ続く道(段ボール,積み木,フラフープを 開園準備の為未完成な砂場を完成させる・ぐるんぱを洗 い,自由に道を作る)・宇宙の広場(黒いビニール袋で おう・遊具(すべり台,池) 宇宙空間,のぞき ,飛び出るしかけあり) 小テーマ 年 少 A 語尾に ∼パオ ペタペタの星 昨日の夜に雨が降りお皿に水がたまった ぐるんぱのおうち お部屋のお掃除(はたき,ちりとり,ほうき,雑巾)・バ スで各部屋をまわり地図つくり 1日目 ペタペタ星の飾り付け・看板作り・ペタから探し 2日目 ペタペタダンス・ペタペタゲーム(ペタペタくんの命令, ぐるんぱになる(お面,しっぽ,名札作り) まねっこゲーム) 実習生の演じた役 宇宙の大王・地球人・にんにん星人,ブギウギ星人など 主な材料 ぐるんぱ・皿や・車や・郵 ノ職人 や・靴や・お菓子や・ピア 段ボール・新聞紙・画用紙・小麦 粘土・毛糸・カラー 段ボール・色つき新聞紙・ごみ袋・毛糸・すずらんテー ゴミ袋・紙コップ・割りばし・すずらんテープ・廃材(・ プ・布・廃材(シュレッターをかけた紙,トイレットペー 牛乳パック,ペットボトル・,ひも,空カップ,シュレッ パーの芯,ラップの芯,卵ケース,空き箱など) ターにかけた紙など) 環境を通し, 主体性を尊重した指導実習についての一研究 表 5平成 21年度後期実習内容 実習日 平成 21年 11月5日・6日 (H21a) 平成 21年 12月 10日・11日 (H21b) 大テーマ 世界旅行を楽しもう‼ ようこそ魔法の国へ‼ 主な活動1日目 各クラスがいろいろな国(エジプト・ブラジル・イギリ ス・オーストラリア・中国・インド・ハワイ)になってお 入国証をつけ好きな場所で遊ぶ。 王子様の魔法の発表会, り自由に旅行する。ホールは日本で明日の国自慢コンテ 魔法を失敗し絵本の中に王様を閉じ込めてしまう。 ストの開催準備をする。 主な活動2日目 魔法の呪文 マジカルピリカ と言って入国し好きな場所 前日と同じく各国に旅行し国自慢コンテスト出場の為の で遊ぶ。絵本に入った王様を助ける。王子様の魔法で幼 ダンスなどを楽しみ,コンテストに出場する。 稚園に戻る。 つなげる存在 世界大統領と小鳥のピーコ 魔法の国の王様と王子様 場を共有するなりきり言葉 各国の挨拶など。中国 ニイハオ インド ナマステ 魔法の呪文 マジカルピリカ 小テーマ ホ ー ル 2日目 コンテスト 年 少 C ハワイ みんなで踊ろう 衣装作り(腰みの)・ポンポン入りの宝箱が開く 中国 ホアンイン 魔女の不思議な畑 2日目 新聞紙で帽子作り 野菜の子ども達作り インド インドの美味しいカレーを作ろう‼ くすりの森 1日目 カレー音頭を踊る場所・カレー作りコーナー・王様とカ 魔法の薬作り・大鍋で作る薬(くじ引きで薬の素) レーパーティ 2日目 衣装作り コロコロコロリン(ボーリング)・元気のない木のための 薬つくり イギリス アリスの世界 1日目 ゴルフに見立てたクロケーゲーム・小麦 (お菓子作り)・トランプドミノ遊び 2日目 不思議ダンス 魔法の衣装やアイテムを作って遊ぼう 粘土でお茶会 マント・帽子・ブレスレット作り・ステッキを作り呪文 を唱えて魔法の練習 1日目の継続,発展 オーストラリア カンガルーの国オーストラリア マジカルピリカ 動物にな∼れ 1日目 カンガルーのポケットの中の体験・ダンス・(カンガルー チビレッポ作り(だっこちゃん型の個人用動物)・動物変 の赤ちゃん制作,赤ちゃん探し) 身の魔法の練習・変身鏡 2日目 カンガルーの衣装制作・カンガルージャンプ レッポの卵を協力して孵化 エジプト 完成させようピラミッド お菓子工場へようこそ 1日目 お菓子作り(泡クリーム,クレープ,あめ,クッキー, 迷路・壁面修復(貼り絵)・お面作り・ツタンカーメンゲー シュークリーム, ドーナッツ)(ドーナッツゲーム(大鍋に ム(ツタンカーメンのまねっこ) ドーナッツを投げ入れる) 2日目 民族衣装(巻きスカート)作り・ツタンカーメンダンス・ 巨大ケーキ作り ツタンカーメンクイズ 小テーマ 年 長 B 湖の中から呪文の文字が見つかる できるかな?中国の技に挑戦だ 中国雑技団〝ちょうせんじゃー" のメンバーになって技 を え練習する。(平 台でバランスポーズ,紙皿で皿回 空とぶネギ・おばけネギ・巨大野菜作り し)・ぶんぶんごま作り 小テーマ 年 長 A お花を咲かせるゲーム・湖(新聞 1日目 小テーマ 年 中 B ちっちゃくなっちゃう,魔法の森 2日目 小テーマ 年 中 A ハワイアンダンス 1日目 小テーマ 各 ク ラ ス の 環 境 構 成 と 内 容 呪文を言ってから入国 実習生は,ハメハメハ一家に扮する。ハワイアンダンス・ 実習生は森の小人たち 海遊び(魚釣り)・トロピカルジュース作り プール)・お守り作り 小テーマ 年 少 B 色々な村で教わった魔法を披露しよう 1日目 小テーマ 年 少 A 国自慢コンテスト ∼集まれ世界のお友達∼ コンテストの会場作り・飾りつけ・ゲートの装飾・国旗 お城の広間と 魔法のテスト・魔法の力を上げる運動 作り・提灯・扇子作り(ポスター作り) (落ちない新聞紙) ブラジル ブラジルでサンバを踊ろう 1日目 カーニバルで う冠作り・ダンスの振り付け (カーニバルを開催する為の鍵探し) 2日目 楽器作り 実習生の演じた役 世界大統領・小鳥のピーコ・各国の人 主な材料 魔法のお天気研究所 案,練習 お天気マークを作って,お天気タワーを作ろう・明日の お天気なあに?(的あて) 魔法のてるてる坊主を作ろう 魔法の国の王様・王子様・魔法 魔女 い・魔法の森の小人・ 段ボール・新聞紙・発砲スチロール・布・綿・毛糸・フェ 段ボール・新聞紙・発泡スチロール・カラービニール袋・ ルト・爪楊枝・お湯・でんぷんのり・石鹼・ストロー・ 画用紙・折り紙・小麦 粘土(小麦 ,塩,水,サラダ油) ・ カラービニール袋・輪ゴム・廃材(チラシ,ペットボトル, すずらんテープ・紙皿・廃材(空き箱,空きカップ,牛乳 トレイ,包装紙,空き箱,牛乳パック,落葉,果物の皮, パック,など) など) 大西道子 秋山ゆみ子 ⑴テーマについて 表 1∼5のテーマの欄に示すように,10回の実習は,各回ごとに実習学生全員で掲げる大テーマとそのテーマを 中心に各部屋(ホールと7クラス)ごとに小テーマを設定して進められた。各大テーマをみると 宇宙 系2回(H17 a・H20a), 冒険(探検) 系2回(H17b・H18a), 旅行 系2回(H18b・H21a), 魔法 系(H21b), 絵本の世界 (ぐるんぱのようちえん)(H20b), 選んで遊ぼう (H19a), 身体で遊ぼう (H19b)が各1回であった。これらは ほとんどが現実とは違う世界のことである。また一見現実的な世界のテーマも小テーマをみると,多くが,お話・ 魔法・宇宙といった内容が盛り込まれ,結果的には まだ見ぬ世界 小テーマは大テーマに もう1つの世界 になっている。 って如何に子ども達と楽しくねらいを達成していくかの具体的内容である。場の構成 は宇宙,魔法の世界,未来の国,過去の時代,昔話の世界,絵本の世界,森,海,洞窟等のもう一つの世界での 遊びの展開である。これを魔女,忍者,魔法 い,宇宙人……といった超能力者の登場の助けを借りて,ある意 味で なんでもあり 的な非現実的な(ファンタジー・夢)世界に合理性を与えている。さらに実際には,幼稚園の ごっこ遊びでの衣装作りやおうちの再現,野菜収穫ごっこ,いろいろな乗り物,音楽,お菓子作りやお料理コー ナー,子ども達の大好きなゲームや大型遊具での遊びといったごく身近で興味深く,日常的な題材を取り入れ, もう1つの世界にリアリティをもたせており,その世界での活動を子どもたちのものにしているといえよう。 ⑵2日間続きについて 学生が指導実習を経験できるのは,せいぜい半日∼1日である。ここでは2日続きのカリキュラムを と,実習においては2日だからこそ見えてくる子どもの えるこ え方や行動の仕方に接すること,そこでの保育者の役 割に気付くこと,一瞬一瞬が発達の流れの中にあることを自覚することが大きなねらいである。内容は,表1∼5 での2日続きの項に見られるようにどの場合も1日目から2日目につながっており,継続だったりなんらかの変 化(現れる・助ける・なくなる・壊されるなど)を起こしてストーリー性を持たせていることが ねらいを学生がどう受け止めているか,エピソードから 2. エピソードの かる。これらの 察する。 析 実習のねらいに直接つながり,その達成に効果的であると判断した表1∼5の項目内容(テーマ・主な活動・つ なげる存在・場を共有するなりきり言葉・環境構成と内容・実習生の演じた役・主な材料)に 学びとして取り上げたエピソードを通して (エピソードにある下線は って,主に学生が 察する。 察につながる内容として筆者加筆) エピソード1 H17b アボリン島を探検しよう アボリン島の中を自由に探検するという内容で 2日間の保育 という,時間の意味を実感することができま した。私は,年中B組で アボリン沼の物知りじいさんの木 というお部屋でアボリンとして実習をしました。 1日目子どもたちはおじいさんの木に対して根っこでたたいたり,蹴ったりして,おじいさんの木をボロボロ にしてしまいました。私はこんな状態が2日目もまた起こるのだと思っていましたが,2日目は1日目の反省 をふまえ,私たち実習生も改善策を話し合い,おじいさんの木に絆 膏を貼ったり,スピーカーの位置を変え たり①,もし子どもたちが乱暴なことをしても, やめてー など叱ることをしない② ようにしようなどと決めま した。(中略)2日目は驚いたことにあまり叩いたりする子はいなくなっていました。それどころか,おじいさ ③ んの木の顔を見て,本当にお話をしているように接する子が増えていました。 (中略)2日間という時間は,子 どもたちを環境に慣れさせ,安心させるという意味を持っているのではないかと思いました。2日目にはおじ いさんの木がいるという環境に慣れ,アボリン島という世界に入り込めたからこそ,おじいさんの木とお話を 楽しむことができるようにまでなったのではないかと思いました。 察> 1日目の実習を終え,振り返りをし,子どもたちの乱暴な行為に対して〝困った行為" と捉え改善策を真剣に 検討した様子が伺える。 この顔のついた木を よいもの というより 変なもの と そのなかで,日頃保育理論として学んでいる〝叱る前に子どもの行為に 環境を通し, 主体性を尊重した指導実習についての一研究 えてしまったのかもしれない。 って子どもの気持ちを える" という 子どもへの接し方の実践(下線②)の基本を試みた結果である。実習生自身が1日目の実習後振り返りをすること によって え出された案である。単に どうしてこんなことになったのか , みんなのしたことはよかったのか と反省を促す声がけ・ガムテープで修理する・新しく作りかえる等でなく,ストーリーとして必然的に起こりう るような子どもが納得できる策である(下線①)。実際次の日,子ども達はアボリン島の物知り爺さんの木を やさ しい存在 として楽しく関わったのである(下線③)。学生たちはその日の実践を振り返り,それを次の日の実践に 活かしたことで,子どもがこの世界でスムーズに行動できたことを体験したエピソードである。2日続きの実習 の中で学生たちが導き出した方法であり,学びの体験事例と言えよう。 エピソード2 H18b 時間旅行者になって,過去や未来の時代を旅行しよう 1日目のタイムバスの切符売り場の時には,自 は社員であって子どもたちは今は旅行のお客様だというこ とを意識して子どもたちと接していったことで, 最初は世界に入りきれていなかった子どもも どこに行けばタ イムバスに乗れるのかしら? とちょっとお姉さんなしゃべり方をしてきたり しゃいんさーん と呼んでくれ たりと①,タイムトラベルの世界でのごっこ遊びを自 なりに楽しんでいる様子がたくさん見られました。2日 目では,タイムマシーンに乗って遊ぶ子どもたちに声を掛けていたのですが,(中略)子どもたちは自 たちか ら タイム事故がおきちゃ大変‼ といってゆっくり運転を始めたり②,お友達同士でよびかけあったりしてい ました。 ガソリンがきれちゃいましたか? とタイムマシーンで座り込んでいる子へ声を掛けると,自 から コーンのところまで行って ガソリン入れてくださーい と言い出していつのまにかコーンがガソリンスタンド に変わっていっていたり③,子どもたちが自 で 次○○ちゃんはガソリン屋さんになる と言ってガソリンス タンドの店員役の子がでてきたり④ と本当にちよっと手をかしてあげるだけで世界と遊びがどんどんと広がっ ていくことに驚きと喜びを感じました。 察> 1日目にいつもとは違う環境に子どもたちが興味を持ち,この世界を楽しんでいる。実習生自身がなりきるこ とでこどもたちもテーマの世界に入り込んできている(下線①)といえる。 2日目には(下線②③④)に見るように, 環境を子どもたち自身が作り出している姿が捉えられている。2日間の経過の中で子どもたちが え,遊びを展 開,発展させていく力を見せ付けられ感動している様子が伺える。まさに2日続きの実習だからこその体験であ り,昨日・今日・明日とつながりのある保育の大切さの体験であり学びと言えよう。 エピソード3 H20a ぐるんぱのようちえん ぐるんぱのすべり台では,子どもたちがいろんなすべり方ですべり,楽しんでいました。1日目の振り返り で,危険だから2日目は最初からルールを決め,すべり方を制限した方が良いという意見がありました。実際 に,年少組の女の子が年長組の男の子のマネをして立って滑り,バランスを崩し着地に失敗していました。し かし痛がっている様子もなかったのでしばらく様子を見ていると,すぐまた列に並び直し今度は転ばないよう 座って滑っていました。この様子を見て,子どもは一度失敗を経験すると,自 で えてその後から危険を回 避できることがわかりました①。そのような話し合いの結果1日目と同じようにルールを特に決めないことに しました。2日目,最初はルールもなかったのですが,いつのまにか子どもたちの中でルールができていき, 合図を出すようになっていました②。勿論安全を配慮することは保育者の仕事ですが,このように子ども自身が 気が付くのを待つことも大切③ だと感じました。 エピソード4 H20a ぐるんぱのようちえん 1日目,子どもたちが立って滑ってみたりと危険な滑り方があって私たちも 危ないよ と声掛けをしている のですが,子どもたちもヒートアップしていることもあり伝わらず少し苦戦していました。2日目の出来事な のですが, 子どもたちの方から そういうすべり方はダメ と言ったり スタート とルールを自然と作る子がでてきて,ストップ って言ってすべってもらったり,最後には オーライ オーライ と大きな声で腕を回 ④ しながら張り切ってくれました 。このことから,保育者がルールを決めるのではなく子どもたちの こうした らいいんじゃないか と言う えを入れていくことが大切であると思いました。 大西道子 秋山ゆみ子 察> エピソード3・4もエピソード1と同じように1日目の振り返りから(下線①), 2日目の遊びについて話しあっ た結果のエピソードである。すべり台の遊び方の危険性について話し合い,ルールを提示すべきか,このまま見 守るべきか討論した結果,子どもの自主性を尊重し,見守りながらそのまま遊びを続けることに決めた。2日目 には子どもたちが自発的にルールを決めたり,整理係の役割をとる子が現れたりなど,2日目ならではの展開が みられた(下線②④)。学生たちは,子どもたちの環境をコントロールして遊びを展開させていく力を実感できた と同時に子どもの えだす力を信頼して〝待つ" ことの大切さを学んだ(下線③)実習になったといえよう。 ⑶つなげる存在・なりきり言葉について 園全体をひとつの世界として遊ぶ時,その世界の一員になりきり,子どもを巻き込んでいくには各コーナー(小 テーマ)をつなげる役割になる 存在 や ことば が有効であった。表1∼5に示す つなげる存在 場を共有する なりきり言葉 は大テーマで共有する もの と ことば である。小テーマでは表1∼5の 実習生が演じた役 や 環境構成 でごっこを展開させている。以下のエピソードでその様子を 察する。 エピソード5 H.18b 時間旅行者になって,過去や未来を旅行しよう 忍者時代では ござる を言葉の最後につけていましたが,それをつけることによって子どもたちは忍者にな りきっていて,忍者のポーズをしたまま飛び越えの術をしたり,手裏剣で夢中になって遊んだりと世界に入り 込んでいました。 エピソード6 H18b 時間旅行者になって,過去や未来を旅行しよう 私は宇宙人として語尾に ピピ をつけて子どもたちと接していました。そして UFO のボタン作りの時に こ れは何のボタン ピピ? と聞くと これは怪獣が出てくるボタンだ ピピ と言ってくれました。 宇宙の世界に 入り込むために, 〝実習生がなりきること" これはすごく大切だと思いました。 エピソード7 H18b 時間旅行者になって,過去や未来を旅行しよう 私たちは〝ピラミッドことば" を取り入れ子どもたちに伝えていきました。意外にも子どもたちにピラミッ ドことばが浸透しておりピラミッドの世界に親しんでくれていました。他にも私たちが語尾に ∼ピラ という 言葉をつけて話していると子どもたちも真似をしたり,ターイムジャンプ と言って時間旅行をしていたりと, 視覚的・感覚的だけでなく,言語的にもごっこ遊びをもりあげることができるとわかりました。 エピソード8 H21b ようこそ魔法の国へ‼ 私は,魔法の国の王子様の役をやっていたのですが,1日目のまとめで王様を絵本の中に入れてしまうとい う設定だったので,わざと間違えて マジカルピリカ を マジカルピカリ といいました。すると次の日私に会 う子ども達は 何で魔法間違えっちゃったのさー 魔法の言葉はマ・ジ・カ・ル・ピ・リ・カ など教えてくれ る子が多々いました。1日目ならまだしも,1度現実の世界へ戻っている子ども達が,園に入って来ただけで, 魔法の世界へまた戻ることができていました。 察> エピソード5にみる ござる 言葉で簡単に忍者気 になってごく自然に忍者行動をとっている様子がわかる。 エピソード6・7・に見る ターイムジャンプ と唱えることで,各コーナー間での遊びがつながり,時間旅行 の意識づけになっていた。 ∼ぴら ことばでピラミッド時代のごっこ遊びが, ∼ぴぴ で宇宙人になったつもり で UFO ごっこが展開できた実感が伺える。エピソード8ではつなげる存在の王子様となりきり言葉の マジカル ピリカ で子ども達が魔法の世界に入っている様子がわかる。 またエピソード9の占い婆さんの役割もまた各コー ナー間をつなげている様子が 環境を通し, 主体性を尊重した指導実習についての一研究 かる。 ⑷環境構成について 表 6モノ環境の 類と具体例 操作可能な環境構成 H17a 宇宙 ・望遠 H18a 海の上の橋 H19b 畑・冷蔵庫・大 H20b 洗車場・給油 鏡・放送局 タンク・ガソリンス H18b タイムマシー 鍋・ ン・宇宙 ・パソコン タンド 固定された大型環境構 H17b 物知りじいさ H18b ピラミッド・ H20b ぐるんぱのす H21a 迷路 成 ん の 木・ほ し が り マンモス べり台 岩・崖すべり 未完成な環境構成 H18b UFO の壁 H19a トンネル H20a ロケット H21a 壁面修復 H19b 恐竜の骨・目 H20b 大皿・ピアノ 印の塔 子どもたちがテーマをよりイメージしやすく,自発的に遊びを展開していくために多くの環境構成が ている。大きく人的環境とモノ的環境があるが,モノ的環境を年度別に な環境構成"(その環境を自 なりに えられ 類すると表6のようになる。 〝操作可能 い,なりきって遊ぶことのできる環境), 〝固定された大型の環境構成"(操 作して遊ぶというよりは,環境に触発されて,イメージをふくらませ,∼のふりをしたり,∼に見立てたりして 遊びが展開される環境) 〝未完成な環境構成"(子どもたちが一緒に作り出していける教材を多く含んだ環境)の3 つに大別される。それとは別に入口・壁面・天井の飾りや照明の工夫など,その世界がイメージし易くなるため の 囲気づくりがある。環境を通して行う保育の体験をエピソードで 察する。(人的環境は役割の取り方の項で 察する) エピソード9 H18b 時間旅行者になって,過去や未来を旅行しよう エジプト時代に子どもたちが来るとまず わぁ と言ったり, 黙って立っている子がいたりと, 巨大ピラミッ ド① の存在に驚き,ピラミッドという印象を強く受けているなと感じました。子どもたちに 占い婆さんが中に いるよ と伝えると,未知の空間へワクワクしながら入っていく子や, 〝入りたい,けどちょっと怖い" という 藤と闘いながら中へ入っていく子,Nちゃんは,他の子よりも怖がり,入ろうとしなかったりと様々な子ど もたちの姿がありました。この様々な子どもたちに対し実習生は怖がっている子には〝優しい" 占い婆さんが いるよ と〝優しい"を強調したり,ワクワクしている子には どんな占い婆さんだろう と好奇心を増すような 声掛けをしたり②,またビデオを見てわかったことですが,占い婆さんは,元気で活発な子どもたちには,少し 意地悪というか,課題を高く設定したり,怖がっている子には,優しい口調となっていました③。例えば宇宙時 代で えるねじを取りに来た大勢の子どもに ねじは今3つしか渡すなと,この占いの玉に書いておる。お友達 と協力して持っていける子にだけこのねじを渡そう④。と言うと,年長さんが年少さんの手を取り一つのねじを 一緒に運んでいく姿を見ることができました。これらを通し,子どもたち一人一人様々な姿や気持ちがあり, 保育者はそれをよく理解した上での対応が大切であるということを改めて気づきました。(中略)巨大ピラミッ ドがあったり,中に占い婆さん⑤ がいたり,新聞紙砂漠があったりといつもとお部屋の様子が違うことにより子 どもたちは時代旅行の世界に引き込まれていました。 察> 文 章 無 理 や り 切 っ て ま す 固定された大型の環境構成(下線①)の事例である。エピソードの筆者はエジプト時代コーナーの実習生の一人 として子どもたちの環境への反応や自 も含めた実習生の子どもたちへの言葉掛けや接し方を細かく捉えている (下線②③)。 占い婆さん はピラミッド時代に入り込んで興味津々の様子の子ども達をさらに他の時代の部屋へ の興味へとつなげる役割(下線④)をとっていることがわかる。大型の環境構成は子どもたちに人気はあるが,や やもするとテーマパーク(遊園地)的になりがちではある。実習生自身も環境の一つ(下線⑤)となり子どもたち一 人一人に った対応に発展させているところが,テーマパークとの違いの1つであると える。 エピソード 10 H18a 冒険者になって7つの島を冒険しよう‼ 私たちはわざと橋をくっつけておかないで,パズルのようにとったりつけたり出来るように置いておきまし 大西道子 秋山ゆみ子 た。すると何も声掛けをしていなくても橋は渡るだけではなく,作りかえることができると子どもが気づき橋 をくっつけたり色々な方向に行けるように新しい橋を作ったり① と工夫していました。 察> 操作可能な環境構成のエピソードである。海に見立てた青シートの上に長方形の段ボールを橋に見立てられる ように,たくさん置いておいた。組み立て可能な環境に触発されて を通して子どもたちが自発的に遊びを 意・工夫する子どもたちの姿に接し,環境 え発展させる保育を体験しているといえよう。 エピソード 11 H20a 宇宙 初めから完成したものを子どもたちに提供するのではなく,未完成のものを子どもたちと一緒に作り上げて いくという姿勢を大切にしていきたいと思いました。私はロケットの担当で実際に子どもたちと一緒に作って いたのですが,子どもたちは予想外の段ボールの積み方をしたり,望遠鏡を真似して作って,ロケットの壁に くっつけたり② と子どもたちの発想がたくさん詰まったロケットができあがりました。子どもが発想して作っ たものから, に新しい発想が生まれたりして,発想力・表現力が育まれると感じました。 察> 未完成のロケットを子どもたちと作り上げていく活動の中で,子どもたちの自由な発想が生まれ,実習の大き なねらいのひとつである 環境構成が子どもたちを触発して,子どもたちが主体的,自主的に活動できること が 達成できた事例である。 エピソード 10,11は,操作可能な余地を沢山含んだ環境構成の中で,子ども達が 子どもなりにものに向かう 力 を発揮する様子を実感し(下線①②), 環境を通して行う保育 が子どもの発達につながることを実践から 学んでいるといえよう。 ⑸役割のとり方について ごっこの世界を展開しているこの実習での人的環境は,ごっこの世界の外側の立場でのふるまいと内側でのふ るまいがある。内側のふるまいについて具体的にどんな役割をとったかは,表1∼5の 実習生が演じた役 に示 す通りである。ここでは両者を人的環境として論ずる。 与えられた短期間の中で,子どもたちをテーマの世界に巻き込むには実習生自身がその世界に入り込み,楽し むことが大切であり,そのためには⑶で述べているように,テーマの世界の人・動物・物などになりきることが 効果的と言える。また子どもたちが主体的・自主的に活動するために実習生の言葉掛けや関わり方が大きく影響 する様子をエピソードを通して 察する。 エピソード 12 H17b アボリン島を探検しよう‼ 2日目の朝,ホールのアボリンの湖の水がなくなっている,どうしようと,まず実習生が探検隊になりきり ました①。ホールに来た子どもたちは, 大変だ,魚が死んじゃう と水のある場所を〝物知りじいさん"に聞 きにいったり,全速力で園内を駆け回って探していました②。そして一人の男の子が アボリンの泉に水があっ たぞ と息をきらしながら言い,まわりの子どもたちは そうか か? と自 たちで じゃあこの網ですくったらいいんじゃない え,必死に水を持って来ました。子どもたちに こうしよう 前に,子どもたちが自 から ∼をしたい ∼しよう ∼をして などと呼びかける と思えるようなきっかけをつくることが私たちの役目 だと感じました。 察> 2日目の効果ともいえるが,子ども達は探検隊の言葉にすんなり巻き込まれ,幼稚園全体のコーナー間のつな がりを理解して(下線②),その後は子ども達がどんどん話を進め行動している様子が かる。実習生は環境の1 つとしての役割を取り(下線①)この実習の大きなねらい 環境を通して行う保育の実践 の中で主体的に活動する 子ども達を実感しているといえよう。 環境を通し, 主体性を尊重した指導実習についての一研究 エピソード 13 H18a 冒険者になって7つの島を冒険しよう‼ 私たちのグループの〝修行の島" は,実際はすごく簡単なすぐに出来てしまう活動が多かったのですが,実 習生の声掛け一つで子どもたちのやる気を引き出したり,おもしろいと思わせることができました。例えば, 川を飛び越える時も すごいね,すばやく川を飛び越えられたね 飛べるんだ。すごい力がアップしているね ② ゲームでも がんばって,もう少しでとどくよ ① や何度もジャンプしている子には そんなに などの声掛けをしました。またタンバリンにジャンプして叩く すごい高くジャンプできたね と声をかけると,得意げな嬉し い顔が見られました。声掛け一つで子どもの気持ちを揺さぶったり,やりたい,楽しいという気持ちになるの だということを学べました。 察> いつものお部屋に水色のすずらんテープを川のようにおいただけであり,跳ぶといっても技術的には簡単な内 容であるが,修行の場という設定とそのごっこの世界にいることが,そこに大きな川がイメージでき, 如何にも 難しい修行をこなしているつもり にさせることが出来ている例(下線①②)といえる。 子ども達は想像の世界にい るからこそ凄い所を飛んだり渡ったりしているふりを楽しめるのだ,と実感できている。 津守が言う, イメージとは 知覚を歪曲し,見えないものを見る力 である。大人には見えないものを子どもは 見ている。それは子どもの遊びによって見えるようになる。 を褒める言葉がけについても,ただ 凄いね 的な言葉をつけて れる大人 を実証している場面といえるだろう。また子ども うまくできたね すてきだね 等と紋切り型にならないよう,具体 子どもの気持ちに届くよう心がけている様子が伺える。 実習生は 脇からそれを確かにしてく (それとは子どもの行為)の役割を担い,子どもの自信につなげている。 エピソード 14 H18b 時間旅行者になって,過去や未来を旅行しよう 魔女の島 はごっこ遊びを楽しむというのがテーマの中にありました。私は部屋の は魔法 囲気などで子どもたち いになりきれると思っていたのですが,ある女の子が 魔女はそんなしゃべり方じゃないよ い 短大の先生 ② ① と言 と呼んできました。まわりを見てみると,子どもたちは魔女婆さんのことだけを 魔女ばぁ と呼んでいました。魔女婆さんの役割をとっている実習生は ∼じゃよ と語尾にまで気を ③ って話していて, このことが子どもたちが魔女の世界に入り込みやすくしている要因の一つだと思いました。言葉掛けで子ども たちの意識の持ち方はだいぶ変わってくるのだとわかりました。 察> 魔女言葉を って ∼になりきっている実習生 と い切れない実習生 の子どもの反応の差(下線①②③)を学 生自身が実感として受け止めていることが伺える。 エピソード 15 H18b 時間旅行者になって,過去や未来を旅行しよう 私が心がけていたことは,子ども自身が 今,自 が何を作っているのか がちゃんとわかるように言葉掛け をすることだった。子どもがただ 紙コップにクレヨンでお絵かき に思われては実習の意味がなくなってしま う。そのことを意識して,私は これは UFO につけるスイッチだよ。 私はバクダンスイッチを作ったよ。 ど んなスイッチを UFO につけようか。など言葉掛けすると子どもたちはもくもくと紙コップに絵を描き にじ スイッチ ももスイッチ おかしスイッチ 火のスイッチ 水のスイッチ など様々なスイッチを作った。 実習 生が設定した遊びを,子どもたちにちゃんと理解してもらい,制作に取り組むことはあたりまえにおもえるか もしれないが,大切なことであり,そのために適切な言葉掛けが大切だと思う。 察> この実習では UFO 作りを意識できるような言葉がけを 見立てのことば (下線)で工夫している様子がわかる。 クラスの壁がなく,幼稚園全体が1つのテーマでの遊びであり,子ども達は実習生が作る環境構成と役割,言葉 がけの中で内容を掴み取り,その世界に入っていくことになる。子どもと向き合いながら,言葉がけに工夫し, 大西道子 秋山ゆみ子 その重要性を認識している。下線のような ことば の 用は,実習生のモノローグとして 用するのも効果があ りそうである。 エピソード 12∼15で見られたように,役割の取り方は役になりきって(服装やことば いや動作で)行動する・ 子どもに働きかける・∼に見立てる言葉がけの工夫・場の状況の見立て・制作状況の見立て・制作物の見立て等 を子どもに働きかける形で進めていくこと,それが出来るかできないかで子どもが楽しむ様子の違いを実感して いるといえよう。実習生はごっこの世界の役割を通して子どもたちに寄り添い, 知覚では見えないものを見る 力 を充 に発揮する子ども達との出会いを体験しているのである。 ⑹教材について 環境構成にあたり,学生たちは材料の調達,制作の工夫,お金をかけずしかも効果を上げる環境構成を ければならない。材料は廃物利用を奨励しているが,学生の えな ってみたい素材も取り入れていこうという基本理 念がある。これはただ単にリサイクルや節約だけがねらいではなく 廃材からこんなものができた という驚きは 発想の転換の重要性の気づきであり, 造性,想像力の育成につながると えている。また授業で学ぶ新しい教 材の実践化や開発など教材研究にもなっている。エピソードを通じて具体的に 察する。 エピソード 16 H19a 選んで遊ぼう キッチンで料理をするというテーマだったので冷蔵庫やガスコンロ,オーブンをあらかじめ私たちで作って 準備しておくことにし,それを段ボールで作りました。形は私たちなりに本物のように作ったのですが(中略) あきらかに段ボールという感じがでていたので大 夫かなと心配しました。しかし話し合った結果子どもたち が段ボールでこんなものも作れるのだと気づいてくれたらいいのではないかということになりました。本物 そっくりに作るのもいいかもしれませんが身近なもので作ることにより,見立てることが出来たら楽しいので はないかと えました。 当日, 冷蔵庫がいっぱいになってもう物が入らないからと実習生と一緒に新たに段ボー ルで冷蔵庫を作った男の子がいてとても嬉しく感じました。 察> 段ボールはこの実習のなかで材料として新聞紙・空容器などと共に,もっとも活用される素材である。この事 例はその段ボールを段ボールと かりながら活用をすることを意識して置いた。 知覚的にはダンボールであるが, 子どもたちは,そこに冷蔵庫が見えているのです。子どもたちがふりをして遊ぶのに実物そっくりではなくても 十 にイメージをふくらませて遊ぶことができる(下線)ということを体験できたものと えられる。 エピソード 17 H20b 宇宙 ペットボトルに木の実や石をいれるマラカスの制作をした。中に入れる物をたくさん用意したので子どもた ちは何度も色々な音の鳴るマラカスを作っていた。(中略)自然の物を 作れるんだ ったので木の実や石で音の鳴る玩具が という発見ができたと思う。 実際にナナカマドを持って これなぁに? と聞いてきた子がいて ナ ナカマドっていう木の実だよ。これはカラスのご飯なんだよ。と教えると そうなんだ 日とってくる ① 木になってるんだ。今 と言いナナカマドにとても興味を示してくれた。このような子ども自身で発見できることを 大切にして制作などを えていきたいと思う。また牛乳パックでギターを作って置いておくと, これは何で 作っているの? と聞いてくる子がいて 牛乳パックだよ。というと, えー⁉牛乳パック?すごーい‼ 料を知り,身近な材料を ② と材 っていると知り喜んでくれた。子どもたちにとって身近な物での制作活動すること がイメージ活動を活発にしていることをいつも頭に入れておこうと思う。 察> 身近な素材(自然物を含む)の活用は,子どもたちにとって それならできる 持って行動しはじめる様子につながっているのがわかる。学生は自 を持つ(下線①),そして自 やってみたい とリアリティを たちが準備した材料に子どもが興味や関心 たちの遊べるものに変身することへの純粋な驚き(下線②)を示す子どもたちにであ う。身近な材料の変容が発想の転換の面白さや取り組み意欲を刺激することの体験につながったといえよう。 環境を通し, 主体性を尊重した指導実習についての一研究 ⑺全体的 察に代えて 幼児とのかかわりの基本 幼稚園教育の基本は環境を通して行うものであり,教師は幼児の主体的な活動が幼児一人一人の行動の理解と 予想に基づき,遊びを通して 合的にその活動を豊かにすることを求められている。本実習はこの基本をねらい とし,保育者の専門性に適った子ども理解とかかわりへの接近である。これまで記述してきたエピソード 加えて子どもの主体性の尊重と学生のかかわりの学びに焦点を当てたエピソードで 察に 察する。 お集まりの時間になってもまだ今の遊びをつづけたい子どもへの関わり エピソード エピソード 18 H17a 宇宙 2日目に全クラスの子どもがホールに集合してフィナーレをするという時に,一人の女の子が小麦 粘土に 集中していて, 実習生が ホールでこれから楽しいことが始まるみたいだよ。と声掛けしてもそれを全く気にせ ず,遊びを続けている子がいました。私は何度もホールへ行くような声掛けをしましたが,それでもダメだっ たので, そのクッキーを作ったら,オーブンで焼こうか。と声掛けすると,それに応じてくれて,4,5個型 抜きをしたクッキーを持ってオーブンの所まで行き,中へ入れて二人で数を数えて 5 になったら チーン と 鳴らして 出来たよ。と言うと少し嬉しそうにしてくれました。次に じゃあ,袋に入れたら完成だね。と言っ て袋に入れて渡すとさっきまで何を言っても動じなかったのに満足げに袋をポケットへ入れてホールへ行って くれました。 その時,最初はホールでのフィナーレには出てほしかったので行くようにすすめていたけれど,一度 え直 してその子が最後までクッキー作りを楽しめるように接する事が出来て本当に良かったと思っています。 この体験を通して,子どもの気持ちを一番に える事と,その場の状況を把握し,その場に合った対応をす る① ことはとても大切なのだと実感し,これから保育をするうえでも常にこれを念頭に置いて頑張っていきた いと思っています。 エピソード 19 H17b アボリン島を探検しよう 〝アボリンの森"のお部屋で,アボリンの曲が流れて,周りの実習生が子どもたちにホールへ行くよう声を掛 けている中,まだ遊びを続けたくてお部屋に残っている2人の女の子がいました。私もその近くにいた実習生 も勿論その子たちに声掛けをし,最初は また後からでも出来るからね などという声掛けをしていましたが, 今,目の前のことを大切にする子どもたちには届かず,ホールで行われているアボリンダンスになかなか興味 を示してはくれませんでした。それを何度か繰り返しているうちに〝もし私だったらどんな言葉を言われたら 興味を持つのかな" と落ち着いて えてみることにしました。そして,私は女の子だし カワイイ という言葉 があったらきっと魅かれるだろうと思い,その女の子たちに 向こうのホールで,とってもカワイイダンスをし ているみたいだよ と声掛けしてみました。すると,途端にそれまでしていた遊びを止め,急いでホールの方へ と向かって行きました。 最初に言った また後からできるから という言葉は自 した。 〝自 たちの都合に合わせて出てしまった言葉だと思いま だったらどうだろう?"と子どもの立場に立ち,きちんと子どもの気持ちを理解しようとすること ② が大切なのだと感じさせられた出来事でした。 察> 上の2つのエピソードは実施日もテーマも実習生も異なるが,状況が一見とてもよく似ており,保育現場では よく直面する典型的場面といってもよいだろう。指導案通りに行動してくれない子どもとの関わりである。エピ ソード 18は今していることを優先させ満足いくまでやらせてあげた。エピソード 19はあの手この手で子どもの 興味をこちらの指導案の内容に向くよう言葉掛けの工夫をし,こちらの指導案にのせた。どちらも子どもの気持 ちを大切にして,理解して,子どもの意志決定で行動するように努力しているのがわかる。保育者としてどちら が正しいかを結論付けることは出来ない。砂上ら の片付けの研究でのベテラン保育者達の実践知にも符合して いる。その時の子どものあそび情況,発達,保育全体との関係的見通し等々,で対応が異なって当然である。そ こが保育の難しさであり, 保育の場の両義性 として保育者の専門性が問われる所でもある。とはいえエピ 大西道子 秋山ゆみ子 ソード 18では,子どものやりたいことを優先させ,子どもが満足した時,事も無げに大人の提案に って動き出 したように思われる。学生はその子どもの満足した心持を感じ,学生自身も子どもの気持ちを一番に えて対応 したことが結果的に,次の保育がスムーズに進行した体験となっており,保育者としての保育観の一端を掴んだ (下線①②)ように感じている。 見守り のエピソード エピソドード 20 H18b 時間旅行者になって,過去や未来の時代を旅行しよう UFO の壁作りをしている時に,どこにタイルを貼ろうか迷っている子がいました。私はずっとその子を遠く から見ていて,どこに貼るんだろう……? と思っていました。 長い間貼るところを迷っていて私はどこがピッ タリなのか からないんだ……と思い,タイルがピッタリはまる場所を教えようと近づいていきました。でも, その子の近くに寄り添って見ているうちに, 〝今,私が貼るところを教えてはいけない" ような気がしました。 ずっと傍で見守っていると,その子は自 でタイルがピッタリな場所を見つけて貼りました。私はその子に やったね,ピッタリだピピ‼ と声を掛けました。その子はとても笑顔になりもう一回やると,またクレヨン でタイルを塗り始めました。私はこの子と関わって教えることは簡単だが見守ってその子が一生懸命 えるこ とを大切にしたい① と思いました。 今でもこの関わり方や言葉掛けが正しかったかどうかは かりませんが,最終的にこの子が笑顔で遊んでく れたことは本当に良かったと思っています。私はこの経験から保育者として子どもの立場になって えてみる ② ことそして子どもの〝出来た" という喜びに共感できることが大切だと思いました。 察> 長い間迷っている子どもを見ると,つい援助の手を差し べたくなるのは実習生の経験ではごく普通である。 日頃授業では,子どもの自立の援助の仕方を学んでいるはずである。でもどこまで待つのか,その頃合は難しい。 待ちすぎるといやになったり,あきらめたりして,おもしろさや達成感につながらないと 子どもが自 えてしまう。津守の でし始めたことを大切にする。傍らで経過をみる。それを生かして私も何かをする。……肯定し, それをともに味わい,一緒に生きる。それが育つ場である。 とする実践に通ずる。 待つこと・見守ること・共感できること が保育の重要なポイントであることを体験し,発見できた(下線①②) 事例である。 この見守りの体験はエピソード1∼4,2日続きの故に発展できた子ども達の行動の項でも体験できている。 またこれら 20の事例は,実習後の振り返りで話題にしているものであり,2年生全体が共有したことにこの実 習の意義がある,と えている。 Ⅳ. 要約 本学保育科2年生が全員で実施した附属幼稚園における指導実習の最近5年間の内容の概要と実習で体験した エピソードを通して学生の保育者としての学びを 察した。 実習計画に当たって筆者らが出す条件は,幼稚園教育の基本を踏まえ,環境を通しての実習であること,幼児 の発達にかなった1人1人の子どもの主体性が尊重される内容となること,遊びが を充 合的に展開されること…… 慮することとした。 その結果,テーマの大半はファンタージーの世界でありそこで展開される内容は子どもの身近なリアリティを 含ませながら展開させる手法となっていた。さらに実習後の振り返りのエピソードから,子どもが自発的に取り 組もうとする姿は,2日間続きの実習であったことでみえてきたことが多かった。また1日が終わって振り返り その結果を2日目に反映させる振り返りの大切さの自覚につながった。うまくいかなかった遊びも2日という経 過の中で子ども達がルールを り出し展開させたことから,子どもの有能さを実感すると同時に, 添いつつ待つ こと の関わり方が如何に大切かを体験できていた。またもう1つの世界である ごっこ の指導計画は,子ども達 が人的・もの的環境に触発されてテーマの情況の中で楽しみ,遊びを展開する子どもの姿,実習計画通りにはな 環境を通し, 主体性を尊重した指導実習についての一研究 らなくても豊かな発想を発揮する子どもたち,目的に向って試行錯誤して達成感を得て生き生きと遊びを繰り返 す子ども,など主体性を発揮する子どもたちに接することにつながった。 以上 20のエピソードを通して, 現場で生の子どもとかかわる実習の中で, 学生たちが子どもの有能さを実感し, 学びとっていることを保育者の専門性に絡めて 察した。 謝辞 本研究は本学学生の為に実習の場を提供して下さっている附属幼稚園の子ども,諸先生の皆々様,さらに実習 体験をつぶさにレポートした学生諸姉の記録に拠るところが大きい。ここに記して感謝申し上げます。 [引用文献] ⑴文部科学省(2002) 幼稚園教員の資質向上について 自ら学ぶ幼稚園教員のために 幼稚園教員の資質向 上に関する調査研究協力者会議報告 ⑵文部科学省(2006) ⑶梅垣明美(2007) 教職実践演習の新設・必修化 中央教育審議会 保育者養成プログラムにおける模擬授業の効果について 浅井学園大学短期大学部研究紀 要第 45 ⑷和田 子 本しのぶ(2009) 保育実践知 教育プログラム開発に関する研究(2) 奈良佐保短期大学紀要 16 ⑸土谷みち子(1987) これからの保育者養成を 支える理論的背景についての一 ⑹砂上 察 える 学生時代に取り組むべき課題と教育(保育)実践活動を P 70-71 保育学年報 1987年版 保育者養成 日本保育学会 子・秋田喜代美・増田時枝・箕輪潤子・安見克夫(2009) 保育者の語りに見る実践知 の映像に対する語りの内容 ⑺浜口順子(1999) 析 保育学研究第47巻 片付け場面 第2号 日本保育学会 保育実践研究における省察的理解の過程 津守真他 人間現象としての保育研究(増補版) P 166 光生館 ⑻津守 真(2006.5) ⑼鯨岡 峻(1998) ⑽津守 真(2006.7) 前進のイメージ 幼児の教育 P 32-33 フレーベル館。 両義性の発達心理学 P 195 ミネルヴァ 天国からの種 幼児の教育 P 8 フレーベル館 大西道子 秋山ゆみ子
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