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地域包括ケアシステム構築の成果と課題
尾道方式と ICT
NEC 山田:それでは定刻になりましたので、NEC ランチョンセミナーを開始させて頂き
ます。私は司会進行を務めさせていただきます、NEC 医療ソリューション事業部事業部長
代理をしております山田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日は本大会の
テーマある持続発展する医療の未来に超高齢社会への医療対応において、医療から介護ま
で含めた地域包括ケアシステムが重要になるという風に考えてございます。そこで、本日
は広島県尾道地域の地域包括ケアシステム構築に関しまして、特定非営利活動法人天かけ
るの佐野様、伊藤様からご講演を頂きます。ご講演に先立ちまして、講師の先生のご略歴
をご紹介申しあげます。まず最初に佐野弘子様です。佐野弘子先生は 1981 年京都女子大学
短期大学部を卒業後、コンサルティング会社に勤務をされました。2006 年 4 月財団法人医
療情報システム開発センターMEDIS-DC に入られ、プライバシーマーク付与認定審査室、
医療情報安全管理推進部、ICT 推進部 CIO 支援課などをご歴任され、主任研究員として活
躍されました。並行して、2008 年 4 月からは総務省 ASP・SaaS 普及促進協議会医療福祉
情報サービス展開委員会副主査、2011 年 3 月からは特定非営利活動法人天かける地域医療
担当理事。そして 2012 年 6 月一般社団法人医療情報安全管理監査人協会副会長、本年 6 月
からは会長にご就任されています。引き続きまして、伊藤勝陽(かつひで)先生です。伊藤先
生は 1972 年 3 月に広島大学医学部医学科をご卒業されました。1989 年 5 月から 2009 年 3
月まで広島大学医学部教授、広島大学医学部附属病病院放射線部 部長。2006 年 4 月から
2009 年 3 月まで広島大学医学部医師会会長。広島県医師会常任理事。2009 年 4 月に広島
大学医学部名誉教授になられ、同 4 月に JA 尾道総合病院院長代行。2010 年 4 月同病院院
長。2012 年 4 月に同病院参与に就任されております。また、2011 年 3 月より特定非営利
活動法人天かけるの理事長としてもご活躍されています。それでは佐野様、伊藤様よろし
くお願いいたします。
佐野先生:皆様こんにちは。山田様ご紹介をありがとうございます。それでは佐野より地
域包括ケアシステム構築の成果と課題、尾道の方式と ICT につきましてご報告をさせて頂
きます。まず、少しこの天かけるという名前についてご紹介させて頂きたいと思います。
尾道地区には瀬戸内海の島で生口島(いくちじま)というのがございます。こちらは平山
郁夫画伯の生誕の地でありまして、美術館がございます。そちらに天かける白い橋
瀬戸
内しまなみ海道という大作が収蔵されているのですが、平山郁夫先生の絵は楼蘭ですとか
シルクロードの関係、地名ずばりというお名前が多いですけれども、たまたまこの文明と
瀬戸内の美しい自然が融合することを願ってということで、天かける白い橋というのが描
かれています。そういった心意気に少しでもあやかれればということで、色んな医療従事
者と患者さん、また当然地理的な島嶼部山間僻地を抱えた地域でございますので、そうい
ったところの架け橋に何かお手伝いができなかと、NPO 法人の名前として掲げさせて頂い
ております。
次に本日は、私たちが 2 年余り取り組みました地域医療介護連携のなかで いろいろと
直面いたしました問題点・課題について、目的の共有、それから同意の取得、また安全性
という点、それから個人情報保護の問題・資金確保と安定的な継続に向かっていくつか今
も踏み越えつつあるハードルについてご紹介をさせて頂きたいと思います。
対象地域でございますが、2 次医療圏としては、三原市・尾道市。広島県のちょうど東側
になります。福山市の隣はもう岡山県境でございます。そのなかで 離島も抱え、世羅町・
三原市の奥の方ですと山間部、そういった地形、日本全国どこにでもある地形といえばど
こにでもある地形でございます。そういったどこでも抱えている医療のドクターの少なく
なっている現状、高齢化が進んでいるという現状の地域でございます。
現状といたしましては、離島山間僻地がございますので、全国の、それから県平均より
高齢化が非常に進行しております。我が国の高齢社会の課題というものを 10 年前からすで
に直面している地域でございまして、数字的にもすでに高齢化率は 23 年の統計ですけれど
も30%。今はもう35%に近づこうかというところでございます。主要 4 疾病の患者数
はやはり県平均より高くなっています。ここには高齢化率とも切っても切り離せない現状
があります。また尾道市内の高齢者の中で 1 人暮らしの世帯それから高齢者の夫婦、色々
の介護状態であるという状況が半数以上の世帯数になっております。その方々を対象に介
護保険の高齢者福祉アンケートをとっておられるのですけれども、そのなかでどこで老後
をすごしたいですかという質問がなされています。やはり自宅で。在宅要介護者の多くは
引き続き自宅での生活を希望されている。こいった現状がございます。それとは別にそう
いった問題を解決するといいますか、何がしか支援できることが ICT であるのではないか
ということで、少し指標をつくって現状を分析しております。
これは地域連携標準化整備度と銘打っておりますが、元々は病院に電子カルテをどんな
ふうにしたらうまく入れられるか、入れやすさというような指標・環境要件のような前提
要件をピックアップしております。
たとえばこの白い帯。たとえば急性期病院であれば DPC の対象病院となっておれば、か
なり標準化という意識があるのではないか、それを地域連携に置き換えてみますと、地域
包括ケアという概念がその地域にあるかどうか、多職種で例えばカンファレンスを実施し
ている。カンファレンスという概念はないけれども準備中であるというようなところ。そ
れとキーになりますかかりつけ医を患者さんがもっているかどうか、かかりつけ医がいる。
まあ70%以上の住民がかかりつけ医もしくはホームドクターという概念がありますよと
いうような指標。そういった点ですね。あと例えば連携時の申し送りのルール化・運用約
束ができているか。そういったことが明文化されてお互いの共通認識となっているかなど、
そういった指標をあげております。
また地域の薬剤師さんが在宅訪問の服薬指導を実施できているか。過去に病院の薬剤師
さんが薬局から出て、病棟で患者さんのそばにでかけたというところと同じようにそれを
地域に置き換えてみますと、非常に貴重な資源である薬剤師という医療専門職が地域の各
家庭にでかけて在宅での訪問服薬指導という動きがとれているかどうかというのは地域包
括ケアの1つのキーになる点でもございます。
こういった指標をある切り口で並べておりますのがこの図なのですけれども、地域連携
の推進の進捗度と銘打っています。1つには高額医療機器の共同利用の推進状況があるか
どうか。この青い枠でつけておりますのが、尾道の現状なのですけれども、高額医療機器
を共同で使おうという 2 つの急性期病院がございまして、どちらもかなりの整備がなされ
ていますので、そういった意識は非常に高い地域です。それから地域の医療機関から病院
への紹介率の平均。またその逆さまですね病院から地域医療機関への逆紹介。このあたり
の意識付けというのも非常に高くなっております。足りないという点ではやはりお薬手帳
の記載率という紙での状況のなかでバラつきがある。もしくは医療機関の機能分化という
点でまだ分化が確実に確立される過渡期といったところでしょうか。
これは地域連携の成熟度でございます。もちろん ICT が入る以前の話という風に考えて
頂き、マニュアルなり手作業なりでできているかどうかということなのですが、まず地域
包括ケアという概念は 20 年前から非常に着々と医師会で進めてきておられます。それから
先程のかかり医。この数字が非常にキーとなるかと思うのですが、70%以上の住民がア
ンケートをとりますとかかりつけ医をもっていますという風に答えて下さいます。そこが
1つ大きな点かと思います。また地域医療臨床研修の実施をしている。受け入れとして地
域医療を頑張っていこうというお医者さん、Dr.もコメディカルも含めてですが、非常に研
修が盛んでございます。ICT を導入する以前に地域連携ということに取り組むにあたって
の課題となることは比較的順調に消化されている地域でございます。そういった環境の中
で地域医療・介護を含めた全体の成熟度。
また同意取得に関しての手順というのを少し考えてみた表でございますが、総務省の実
証事業を 2 年間させて頂きまして、1 年目のとりくみの時には非常に小さく真ん中の方にな
っているのですが、例えばシステムそのものの参加率というのは 3 分の1少しぐらいでし
た。それから同意については個別で同意をとる。包括で同意をとる。患者さんからこのシ
ステムに参加しますよという意思表示を明確にしておいた方がいいだろうとうことで、個
別の同意をしていましたので、現場には若干負担が高かったのですが、取り組みがまだ認
知されていない頃なので、慎重にという風に進めました。2 年目になりまして、例えば、広
報をしていくなかで民間、いわゆる民間立の方が一生懸命広報をしている。プラス公立病
院の参加によって市でもある程度このシステムを広報して下さる。また説明の主体という
点では、個別に医療機関だけが対面でお一人お一人に説明をしてくということプラス、地
域の方針としてどのくらい地域でも広報ができるかどうか、というような指標を合わせま
して、少し全体的に膨らみをもってきているので、順調な方向に向いているかと思います。
ただ同意については、いまようやく、因島という地域があるのですが、歩いていてれば全
員が顔が分かるというような文化といいますか、地域でございますので、そこに改めて一
回一回手書きで情報を診療所の先生に診てもらうよというのをわざわざ書かなくても医師
会としての方針なので、そのように扱わせてもらいますという意思表示をはっきりとさせ
て、どうしても嫌な方は申し出て下さいというようないわゆる包括的な同意というのを始
めておりますので、少し数字が上がってきている状態です。
地域連携の戦略といいますか、手続き・サポート・支援という考え方でいきますと、で
きるだけ上から何か物を言うというのではなく、あくまで連携と共助というのを前提とし
ている地域ですので、できるだけ持ち場での自分たちのモチベーションとしていい医療を
したい、そのために色々な ICT を使っていこうかということを常に話し合いながら協議会
を通じて進めてきております。
包括ケアシステムのカギといいますか、よく聞かれます、比較的短い期間で順調に立ち
上がったねということを言っていただける中で、鍵はなんですかという質問をよく受けま
す。その時にはやはり顔が見える多職種の連携。IT を使いますと人と関わらずに仕事がど
んどん進んでいくのが1つのメリットであると言われることもございます。でも大前提と
してやはり顔が見える多職種の連携がある。そのために各種研修会を頻繁に行ったり、色
んな医療の部分も介護の部分も含めて双方多職種が顔を合わせられるような機会が非常に
多いです。その後、必ず情報交換会がございます。ウエイトはどちらがどちらという所は
ございますけれども、必ずそのまま情報交換会でざっくばらんにお話しができる環境があ
る。また病院スタッフとの連携と書いていますが、地域医師会と病院スタッフで、急性期
病院と地域の医師会が非常に密に連携をとれている場合と、なかなかそうではないケース
がございます。そこをつなぐのが、やはり退院前のケアカンファランス、それからデスカ
ンファランス。そういった所が非常にキーになってきているかと思います。それから医療
と介護の連携、かかりつけ医の先生と介護関係者との連携も非常に厚く、介護と医療は元々
一体のものだからという言葉が合言葉のようにみなさん口にされます。在宅で暮らしてお
られて、医療にかかわっていない高齢者がほとんどないという現状を見た時に、介護と医
療というのは元々一体のものであるという考え方。それから情報共有。今は退院カンファ
ランス。以前 ICT が導入される前は退院カンファランスという点につきましては、事前準
備に対して地域医療連携室が大変な労力を要しながら、双方の情報を当日集め、もしくは
前日整えてお話しをしていく。退院カンファランスは限られた時間15分という時間の中
で行いますので、状況確認に時間を使わないように、事前に状況が把握できるという点で
は ICT の連携が非常に役立っているのではないかと思われます。地域のコーディネーター。
今回は NPO がその役割を果たさせて頂いているのですけれども、ざっと2次医療圏だけで
も組織としては、20 以上の方が関わられます。市が合併していて広域にわたって1つの市
になっていても、医師会・薬剤師会それから介護関連の協議会などがそれぞれもともとバ
ラバラの状態で、そこは統一されていないです。ですので、関係各所という 2 次医療圏の
中で薬剤師会からはじめ協議会に集まって頂いきたい関わる方々というのは、20 以上にざ
っとなります。そうすると中立の立場でどこかが事務局を引き受けないと、なかなかこと
をすすめていくのが難しい。医師会の事務局さんが持たれている場合もあると思いますが、
必ずしも医師会だけではなく、何でも言える気楽な場所という感じでとらえております。
少しこの絵を見て頂きたいのですが、これは尾道の夜景です。尾道水道がございまして、
迎島という尾道側から前の島の方に見た月影の写真ですけれども、この写真1つでですね、
私たちが取り組みなのかで、非常に印象深い言葉を聞かせて頂いた言葉がございますので、
少しご紹介をさせて頂きたいと思います。
『窓を開ければ、月影が見えて、漣の音が聞こえてくるような気がする。向こうには造
船所の喧騒の音が聞こえ、その明かりがビロードのようなに波場に移っている。子供たち
が大きくなってもう家をでてしまったけれども、ガラガラと開く玄関の扉。もういいお腹
がすいた。何かない?バタバタいうような音がまさに聞こえるような気がする。この潮風
は毎日匂いを嗅いできたとはいえ、気持ちがいいもんだね。住み慣れた我が家であり、使
い慣れた古びた茶箪笥がある。敷居を超えるのにも杖を使ってよっこいしょっと。情けな
い話ではあるのだけれども、私はやっぱりここで生きたい。
』そういった在宅での最後・生
活を望まれる方々に私たちが何ができるか、というのが目的であります。
その共有に対してあるきっかけというのがございまして、尾道には2つの急性期の病院
があります。そのうちの1つ JA 尾道総合病院が新病院ということで、2 年半前にグランド
オープンしております。その時に尾道方式を作られた、片山元尾道市医師会長から新病院
の今日いらしております開院時の院長である伊藤理事長の方に電子カルテを入れるのであ
れば、ぜひ開院を期に市民病院が以前から医師会と連携をとっているように、開示をして
ください。これ医師会からの依頼でございます。ここが尾道の最たる特徴なのかもしれな
いですが、より高度ないい地域連携をしたいので、情報開示をして共有という環境を作っ
てほしい。という申し出がありました。もう1つにはですね、筒井孝子氏、国立医療科学
院の研究員でありますが、尾道の医師会の講演会にいらっしゃいまして、尾道方式といわ
れる地域包括ケアシステム、診療報酬にも大きな影響を与えてきた地域ではありますが、
今後もう 1 歩伸びて頂くためには、ICT がなければもうだめですね。ということを言われ
ました。それを聞いた時に、ICT というツールが一個なければこれだけの尾道方式と呼ば
れた在宅での非常に手厚い支援がこれ以上伸びないという、それはなんなんだろうという
ことを考えました。そこには医療と介護・生活・住まい・予防というもの一体としてとら
えそのサポーターとしてのチームが全て地域包括ケア・情報の共有というものを手掛ける
ことが大事なんだということに行きついております。
この共有意識はですね、あれども現実をそこに向かって体を動かしていくのというはな
かなかに大変でありまして、2010 年 6 月に地域医療 ICT 連携検討員会。これは医師会の中
で元々あった委員会をこのように名称に改変して頂いて、開始をいたしました。そして 1
年 2 年といろいろとございますけれども、19 回 20 回目で安定稼働を見たという形になり
ます。それで月 1 回ペースで会を重ねてまいりましたけれども、その間には色々な準備会
や文化会。色々なトライアルのために会合は頻繁に行っておりますが、20 回という努力と
いいますか、集まるという、キーマンがそれだけの回数この ICT に向かってという所が目
的の共有・先生方がよくお使いになるインフォームドコンセントですね、この言葉という
のは何も患者さんに向かってだけではなく、こういったプロジェクトを立ち上げる時にも、
最初の 1 年くらいは説明と同意を得るという協議会であったような気がします。
それとは別に同意取得というのがどこでも地域連携のネックとなりやすいということで、
地域のシステムに対する認知度、先程も円の蜘蛛の巣のグラフをお見せしましたようにシ
ステムに対する認知度が上がってくれば、成熟度があがってくれば、もう包括同意いわゆ
る黙示的に意思表示をさせて頂いて、最終的には拒否したい方だけがちゃんとその権利を
行使できるという形が残れば一番いい状態かなと。最初、先生方に対面で患者さんから同
意をとってくださいということをお願いしますと、非常に負担が大きいです。ですので、
地域である程度認知度が上がり、その環境が成熟すれば、最後は黙示的に包括的な事前同
意にもっていけるのではないかなという風に考えております。
そのためには患者さんに説明資料。やはり言葉でお話しすることと、お手元に持ってい
ただく資料、パンフレットのようなものも作っています。最終目指すものが、安心とそれ
から質のネットワークなのですよということを十分に分って頂くこと。それからやはり無
駄をなくすという点では、同じ検査を 2 回もしないで済みます。それから薬の重複につい
て早く見つけて、リスクも防げますよ。たくさんの方が見守るという環境が作れるという
ようなことをご説明しております。
最終的には明示的な同意という点では、サインを頂く。ただ都度都度、掛かる場所が増
える度に同じものを説明して、同じものに署名をもらうというのは、とても患者さんにも
負担がありますので、尾道では包括チームというのがございまして、在宅の包括チームは
そこのどこかのかかりつけで 1 枚とっていただいたらもうその連携での 7・8 人、もしくは
20 人かかっている方々皆様には診て頂くことにしますねという風にお願いをしています。
安全性についてですが、システムを使うのはいいけれども、安全なのかという話が必ず
出ます。そのときには
やはりガイドラインに準拠した情報通信の安全管理というものを
行っていますということで、そのレベルを明確にさせて頂いております。
システムの選択は当初から不安なく安定的に稼働させるということを目指しますので、
パッケージのシステム。ベンダコントロールも含めて予算の中で最大のコストパフォーマ
ンスを目指すというのが大事だと思います。
個人情報の保護。流出するのは実はサイバー攻撃ですとかテロですとか、そういったも
のではほとんどなく、実際に起きている事故というのは手元で触っている人の不注意から
起きている事故が大半でありますので、そこの所はハンドブックなどを作成しまして、分
かりやすくユーザに説明をし、研修を続けております。
情報公開の範囲は 23 年度からの範囲という点では、病名・症状に始まり、追加されたリ
クエストが非常に多かった点では内視鏡の画像やレポート・文書の在宅介護の継続や緊急
入院に必要な情報をほぼ開示しているという現状です。
実際にご覧になった点では当初文書類が多いのかと思いましたら、やはり画像検査結果。
注射は薬剤師さん薬局の服薬指導に非常に役に立つということで、注射のニーズも多かっ
たです。
また機関別閲覧目的というのを見ますと、症状把握というのが医療系では当然圧倒的に
多いのですが、やはり介護施設では、ADL の把握と症状把握というのが半々になっていま
す。
こういった内容についてですね、基幹病院の方から提出されて、もっと契約としてしっ
かりした方がいいのんじゃないか、細則として作ったほうがいいんじゃないかという基幹
病院から出ました内容ですが、実は開示内容以外については、もう当たり前のことであり
まして、信頼関係があれば特に明文化しなくても大丈夫なんじゃないですかという内容が 2
番から 7 番大半であります。
ただ開示内容については、これからまだまだ議論をしていくべきことは多いということ
で、いつだれがどのようにどんな情報を共有して、活用していけばいいのかというのはま
だ検討段階であります。全てを常に閲覧できるのが一番いいんじゃないかという動きもも
ちろんありますし、患者さんからの開示請求があれば開示するんだけれども、日常診療の
中では、かかりつけ医などが、翻訳家としてですね通訳として脇にいた状況でご一緒に見
てというほうが良いんじゃないかという意見もあります。でもカルテというのは著作権を
持つ医療機関、それから保存義務。それから患者さんは自分のものですから、もちろん共
同所有物この部分での難しさからどう扱うべきかというのは時間をかけて課題解決してい
くべきと考えております。
ここで DVD で実際の取り組みを広報用にまとめておりますので、ご覧頂きまして、後半
伊藤理事長の方にお願いをいたします。
―DVD 上映―
伊藤先生:それでは後半を伊藤が話をします。総務省と内閣府の特区の予算をもらったの
で初期費用というのはそちらからでました、そういった意味で、お金の面は心配しなくて
良かったのですが、この 3 月で実証事業が終わりました。実証事業が終わるとそれを継続
していくということで、また費用が発生しています。開示施設では 9 万 8 千円月々なんで
すが、閲覧施設では 980 円月々ということで、年間全部合わせると 400 万円弱になります。
上に宮城県でのネットワークをあげていますけれども、ランニングコストが年間 3 億から 4
億という風に書かれているのですが、システム選択ということで、この程度の費用でまか
なえるのではないかという風に思っています。もちろん宮城県は全県下ということで、天
かけるは 2 次医療圏とういことでちょっと違いがあるわけですが、広島県は 7 つの 2 次医
療圏となっています。各診療所に電子カルテを全部配るとかそういったことをすると 5 億
くらいかかるかなという風に思っていました。7つありますから5×7の 35 億かかるかな
ということで宮城県の 40 億とあまり変わらなくなるとは思うんですが、それにしてもラン
ニングコストの違いというのはずいぶん違うなというふうに思っています。
安定継続というのはこれまで、顔の見える連携というのが尾道では既にできていました。
これは退院ケアカンファランスというのが後押しするものです。在宅にいた患者さんが急
性期病院に運ばれます。ある程度治りましたら、これは回復期・リハビリであるとか、在
宅にまた帰るといったことですね。そういったことをされるということですが、その時に
必ず退院前のケアカンファランスというのが行われています。また最近では急性期病院か
ら自宅に帰った患者さんに対して、見守りカンファランスというのも行われるようになっ
ています。これは急性期病院での尾道方式の一番の特徴といわれるケアカンファランスの
写真ですけれども、これは私のいたJA尾道総合病院で、こちら側が病院側、病院主治医・
在宅主治医側となっております。主治医それぞれいまして、ここに患者さん及び患者さん
家族がいます。司会は病院のMSWがします。そして看護師がいて、隣に緩和ケアの医者
がいて、それから管理栄養士、それから薬剤師。そういった人たちが一堂に会して患者に
対して退院したらこちら側の人がみんな面倒を見ますよということを患者さんに伝えると
いうことです。患者さんは非常に安心して退院できるということになります。お昼休みの
時間みんな忙しいので、在宅の先生方は、午後の時間は往診にでかけます。その往診まで
の時間をこれに費やしているということになります。
これは去年の 4 月から 11 月までのケアカンファランスの数です。診療報酬の点数がつい
たものだけをあげておりますが、これだけでも約 600 回ぐらいありますが、因島医師会は
診療報酬以外のものも合わせて 1000 回はやっていると言っています。だから恐らく、全部
合わせれば 2000 ぐらいやっているのではないかと思います。
これは参加施設です。現在 128 施設が天かけるに参加しています。尾道医師会の参加率
は 46%、薬剤師会は約 3 分の 1 参加しています。ここに丸印がついているものが、開示の
できる施設です。こちら側の丸印は介護の開示ができる施設です。
私のいた病院の紹介・逆紹介のリストを上位 30 位まで挙げてみました。この網かけた所
が今回天かけるに参加している施設です。全体の数、紹介者数・逆紹介数は 1 万 5 千くら
いなのですが、この上位 31 施設だいたい 45%くらいここであります。天かけるの参加率で
すが、55%近くです。上位の参加施設だけということ、この 31 施設というのは全体の尾道
にあるクリニックの 25%に過ぎないのですが、参加率は 5 割近くになっていると言えます。
これは後方支援病院です。尾道には 24 施設あるわけです。24 施設しかないという言い方
もできるのかもしれませんが、そのうちこの網掛けの所の 13 施設 54%が参加してくれてい
るということで、かなりのパーセントに人が入ってくれているということですが、紹介・
逆紹介の数は約 7 割という数になっています。7 割の人が回復期の病院を介して在宅へ向か
ったり、少し診療所・ほかの介護施設に向かっているのかと思います。
これは昨年 4 月から今年の 2 月末までのログの件数を見たものです。ここで増えていま
すが、ここまでがだいたい 1 年目で、2 年目の実証実験の時に医師会が号令をかけていただ
いて、たくさん加入したということで、このログの件数が増えています。2 つ目のここの増
えているのはもう 1 つの基幹病院である市民病院が開示施設となったことです。
両方の病院での同意の取得の数です。これが最初から開示施設である JA 尾道総合病院。
これが後から出てきた尾道市民病院です。両方合わせると、だいたいここにあるような件
数で、1 月に110いくつの数になるわけですが、1 日平均 3 から 5 ぐらいの同意者数を得
ています。現在 9 月末くらいで 2000 を超えていると思います。
これは市民へのアンケートです。24 年の 5 月に我々の病院の病院祭を行いました。その
時にアンケートをとったものですが、先程、佐野さんが話したようにかかりつけ医をもっ
ているというのが 77%です。8 割弱。これは尾道らしさを表していると思います。それか
ら今行っている天かけるが広がってほしいかというと、ほとんどの人が広がってほしいこ
とだという風に言ってくださいました。費用はどういう風にすればよいか 8 割の方は病院
もしくは医療機関もしくは行政が支払うべきだろうという意見でした。
半年後にまた尾道市民健康祭というのがあったのですが、そこでも同じような質問をし
ました。費用負担ですが、同じような費用負担。天かけるに関しては 8 割以上の人が参加
したいという風に言ってくださっています。
もう少し市民の人に知ってもらいたいということで、このストラップ。同意して頂いた
患者さんにこのストラップを配っています。また連携して下さっている施設に関してはロ
ゴマークを配布しました。また先程見て頂きましたビデオ。これを広報のツールとして流
してもらっています。
病院では、1つの急性期病院では電子カルテというのがきっちりあるわけですが、地域
全体を1つの大きな病院として、考えるというとこういった絵となるのですが、救急車で
急性期病院に運ばれてきて、それから回復期、それから在宅といった生活期、医事期とな
るわけですが、こういう急性期に関しては、ほとんどの病院、公的病院が多いので、電子
カルテというのはお持ちだろうとはおもうのですが、先程の我々の尾道の後方支援病院、
網掛けの所がありましたが、どの施設も電子カルテを持っていないですね。それが非常に
ネックということで、これは尾道での状況をここに表にして、信号表示のように青・黄・
赤にしていますが、これは全国的にも同じことが言えるんじゃないかという風に思ってい
ます。回復期の電子化率が非常に低いということが地域包括ケアのボトルネックになって
いるというふうに考えています。
1 人の人が生まれてから死ぬまで、平均寿命とか健康寿命とかいった言葉があります。男
性の場合は健康寿命が 73 歳で、亡くなられるのが 80 歳ですが、7 年。女性の場合は 10 年
健康でなく余生を送られるということになります。この期間をできるだけ短く。健康寿命
を長くするためには、ここの情報をできるだけ取り入れて、こちら側に組み込んでいくと
いうことがこれから必要になるという風に思っています。70 歳以上は人口の 1 割にしかな
いのも関わらず、国民医療費の 3 分の 1 を占めている。2025 年には 2 割が高齢者で、医療
費が過半になるだろうと言われています。ぜひここの情報をなんとかしたいというふうに
思っています。
先程の表 2 つを 1 つにしたのがこれです。患者さんの状態と生活している時、こういう
ことで、包括ケアというのを考えてみました。地域包括ケアシステムというのは医療だけ
ではなく、介護・住まい・予防、生活支援を住み慣れた地域で提供することで最後まで暮
らしていけることです。また、年寄だけに限定した取り組みではなくて、障碍者・子供含
め地域の全ての住民を含めた仕組みであるという風に理解をしています。
ということで、今は介護、そういったところにどのようなシステムを作ればいいかとい
うことで、この 1 年、来年の 3 月ぐらいまでシステム作りを今始めています。医療では医
学的に治すということが根幹にありますが、介護では ADL・QOL そういったものに主眼が
あります。
全体を見てみると、問題点があります。急性期病院が 1 患者 1 カルテになっていますが、
地域全体で 1 患者 1 カルテとなることが望ましいと思いますし、かかりつけ医と急性期病
院、介護とそれぞれのかかりつけ医、そういったところの双方向の情報共有ができないか。
こういうものを目指して、今新たなものを作ろうとしています。幸い NEC とマイクロソフ
トがこれから手伝ってくれるということなので、何かいいものが次年度までできるのでは
ないかという風に思っています。
全体のまとめです。まず顔の見える多職種連携が必要だということです。それをまず最
初に地域連携システムを構築しようとする場合、まずこれを最初に作ればいいという風に
思っております。医師同士が連携する。それから地域医師会と病院が連携する。これは病
院側から医師会に対してこういうケアカンファランスやデスカンファランスをしますよと
いうことで、お互いの顔を知るということが非常に大事だと思っています。また、予防と
いう観点から行政と連携というのが非常に必要になってくるという風に思っています。こ
れまだ行政ときちんとできていないので、今後はこの行政ときちんと連携していきたいと
いう風に思っております。情報共有に関してはシステム作業、先程話がありました、どう
いうものをシステムを選択すればよいか、そのシステム選択によってこういう費用をある
程度抑えることができるという風に思います。地域協議会を重ねることによって、地域を
きちんとコーディネートできる。大学病院では医療情報部というのがあって、ある程度病
院の情報をコントロールしていると思うのですが、地域全体のコントロールを誰がすれば
いいかというのをその地域の中で考えて頂ければという風に思います。それから広報、市
民への広報も非常に大事だという風に思っています。
甚だ簡単ですが、ご清聴ありがとうございました。