社会福祉事業の発展を願う要望書

2016 年 12 月 6 日
厚生労働大臣
塩崎 恭久
様
社会福祉事業の発展を願う要望書
きょうされん 理事長 西村 直
東京都中野区中央 5-41-18
TEL 03-5385-2223
4階
FAX 03-5385-2299
時下、ますますご清栄のこととお慶び申しあげます。日頃より、障害福祉の向上にご理解
ご高配を賜り、厚く御礼申しあげます。
さて、本年7月に厚生労働省に設置された「我が事・丸ごと
地域共生社会実現本部」に
て示された社会福祉事業は、今後求められる課題について、地域での縦割りの弊害をなくし、
横断的にワンストップでニーズに応える姿を描いています。しかし、その実は、諸課題に対
してボランティア頼み・寄付金頼み・社会福祉法人の内部留保頼みとなっています。
また、「福祉などの公的サービスと協働」とあるように、憲法 25 条が示している、社会福
祉に対して第一義的に持つべき国の責務を、
「公的サービス」でない部分では放棄する内容と
見受けられます。その中で、社会福祉法人の役割を自助・共助に組み込み、国の公的保障が
及ばない部分の中心的役割を担うよう検討されています。社会福祉法が本年3月に改正され
ましたが、本来は法改正の前に、あるべき社会福祉事業等の検討がなされるべきでした。
改正社会福祉法は平成 29 年度より本格的に実施されます。同法は、社会福祉法人会計基準
の特性を理解しないままに“社会福祉法人が多額の内部留保をため込んでいる”という見解、
ごく一部の「理事長の法人の私物化」を取り上げたバッシング、そして、
「社会福祉法人への
課税」等の検討がされる中で成立しました。
同法に関する国会審議では、内部留保の定義や実態が明確にされない中、あらたに規定し
た「再投下可能財産」のうちの「社会福祉充実残高」の定義を立法後に政省令で定めるとし
て、立法段階で全体像が見えないままに成立をみました。社会福祉法人のガバナンスの強化
が制度化されましたが、
「理事長の社会福祉法人の私物化」の実態を調査せず、行政の指導監
査の実態も検証されないまま、係る問題点を探ることなく、公益法人改革に合わせて成立さ
れました。同法が示す理事等の賠償責任に関しては、社会福祉事業の公的価格は厚労省が定
めており、資金使途の限定もあり、そもそも経営責任は限定的であり、法人関係者の意見を
参考に検討すべきでした。社会福祉施設職員退職金手当共済制度に関しては、福祉人材確保
の促進を示しながら公費助成の廃止が行われました。法の人材確保の目的とは逆行の結果を
見る懸念があります。
また、未だに明らかにされていない社会福祉法人の社会福祉充実残高の計算式の係数(自
己資金比率・借入金比率・補助金比率、等)を恣意的に変更すれば、
「我が事・丸ごと」の財
源が隠れ予算のように生み出されることとなる懸念があります。
日本の社会福祉事業の発展と社会福祉法人の果たすべき役割のさらなる向上を願って、以
下のことを要望します。
記
⒈ 社会福祉法人のガバナンスに関して、その実態を調査し、問題点の有無を検証し、あわせ
て社会福祉法人の経営責任・賠償責任のあり方を当事者・関係者を交えて再検討すること。
⒉ 社会福祉事業の向上には人材確保と専門性向上がなくてはなりません。そのため、常勤換
算方式と日払い方式を見直し、報酬単価を上げること。
⒊ 社会福祉施設職員退職金手当共済制度を復活すること。
⒋ 障害者自立支援法違憲訴訟の基本合意にもとづいて、障害者の福祉サービスの利用料は原
則、無料とすること。
⒌ 社会福祉法人に対し、あらたに義務化される「地域における公益的なとりくみ」を見直し、
生活困窮者への支援など、現行施策の対象となっていない諸課題は、公的制度の拡充で対
応すること。
⒍ ①「再投下可能財産」は社会福祉事業と職員処遇の向上に運用する旨、徹底を図ること。
②内部留保の定義は、公益法人の会計基準との整合性を検討し、会計上、耐えうるものに
すること。
③「再投下可能財産」の使途は社会福祉法第 61 条に則して、自主性を損なわないこと。
④「社会福祉充実残高算定」が運用される場合、計算式と係数は変動可能なものにしない
こと。また、自己資金比率は再生産可能な数値にすること。
⒎ 営利企業が社会福祉事業により得た資金は、社会福祉事業以外に使用してはならない旨の
規制を行うこと。
⒏ 社会福祉法人や社会福祉事業に課税をしないこと。
以上