プラスチ・ 材料砂爵動特性の 誠験法と評価締果 ノ 〈〉 安田 武夫* 2−4.機械的性質の試験・評価方法(4) ①硬さとは プラスチックではこのような方法は使用できない が,塗料塗膜の硬さや積層板(化粧板)などの表面損 傷の難易の度合いを測定する方法にマルテンス(Mar. 物質に外部から局部的な力(集中荷重)を短時間に tens)硬さ試験法,ビアバム(Bierbaum)硬さ試験法 加えて,そのときに示される物質の変形度合から変形 などがある。 に対する抵抗の大小を判断してこれを一般に”硬さ” いずれもダイヤモンド圧子を使用し,その引っかき としている。硬さ(hardness)という機械的特性は他 傷の大きさで硬さを判定している。ビアバム引っかき の特性のようにこれを絶対的な数値として求めるより も,材料(樹脂の種類,成分など)や加工条件の相違 硬さ試験法はASTMD一ユ526に規定された方法で,ダ イヤモンド圧子の上に錐りをのせ,試料の表面に溝を による機械的特性(この場合は変形への抵抗)の相違 切らせるようにして試料を横に動かし,試料面にでき の比較として利用されている。 た溝幅を測定して硬さを求める1〕。 鋼材の場合には硬さの数値とその引張強さがかなり 2)反発硬さ 反発硬さの代表的なものとしてはショア(Shore 2−4−9.硬 さ よく比例的関係を保つので,硬さをもって鋼材の強さ を代表させることもあるが,プラスチックのような粘 弾性物質ではそのような関連性は期待できないので, hardness)硬さがあ乱これは・測定物の表画に一定 重量の鋼球を落下させ,その跳ね上がり(反発)高さ 特殊の場合を除いて,一般には重要な物性としては扱 をもって硬さの尺度としている。 われていない1〕。 この方法は測定物に傷を残さず,また測定機の構造 ②硬さの測定方法 も簡単なのでどこでも行える点が特徴であるが,プラ 硬さの試験法としては,つぎの三種類に大別される。 スチック材料には便用されていない。 1)引っかき硬さ 3)押込み硬さ 特定の硬さの物質を使って材料の表面を引っかいて 傷をつけ,その傷のつき方(傷の長さ,幅,深さなど) 鋼球やダイヤモンド角錐(かくすい)などの圧子を で硬さを表したものを引っかき硬さ(scratchhard. neSS)という。この方法ではもっとも原始的な方法であ 面にできる窪みの大きさの度合いを表す方法である。 測定すべき試料に一定圧力で押付け,そのときに試験 この方法は,プラスチック材料の硬さの測定方法で るが,古くから行われているものにモー ス硬さ(Moh’shardness)がある。これ 表1 ロックウェル硬さに関する諸項目 は柔らかい石からもっとも硬いとされて いるダイヤモンドにいたるまで10種類 硬さ算出式(mm〕 基準荷重(N〕lkgf} ロツクウェル硬さの記号 スケニル 試験荷重(N){kgf} 圧 子 の鉱石を使い,目的物の表面に引っかき 傷を与えて判断する方法である。 R HRR 串TakeoYASUDA,安田ポリマーリサーチ研究 L HRL M HRM 所所長 〒168−0082東京都杉並区久我山4−24−7 Vo1.5ユ,No.10 径12,700mm の鋼球 98.07{ユO} 588.4{60} 130∼500免 径6,350mm の鋼球 980,7{1001 177 スケールについて,以下のように記して 表2デュロメータのタイプ ’ 1 ■ タイプ デュロメータ 硬さの記号 HDA A いる。 “ロックウェル硬さ”は,圧子を用いて, 試験荷重 圧子 硬さ算出式(mm) (mN〕19fl まず基準荷重を加え,つぎに試験荷重を 549+75.12(100∼40免) 図1 100∼40免 {56+7.66(!00∼40免)} 加え,ふたたび基準荷重に戻したとき, ここに, HDD D 444.83(100∼40刎 図2 前肇2回の基準荷重における圧子の浸入 乃:窪み深さ {45.36(100∼40免)} 深さの差から求めた値である。なお,圧 〔備考〕①デュロメータ硬さのI硬度の差に対応する窪み深さの差は,0,025mm 〔備考〕①デュロメータ硬さのI硬度の差に対応する窪み深さの差は,0025mm 子の種類,基準荷重,試験荷重および硬 である。 さ算出式は表1による。 ②通常のデュロメータでは,表の硬さ算出式によって得られるデュロメー “スケーフレ”(SCa工e)は,ロックウェル タ硬さの数値をデュロメータの硬さ指示装置から読み取ることができ 硬さにおける圧子の種類,試験荷重およ る。 び硬さ算出式の組み合せに固有の硬さ記 ㎜〕 号を設け,これをスケールという。スケ mm〕 ールの内容は表1による。 プラスチックの種類に応じて,表1に 示す圧子の寸法・荷重の大きさを使い分 けるようになっているが,特定の形状・ 基準面 加圧基準面 \ 図1 タイプAデュロメータの圧子 図2 寸法の試験片を準備する必要はない。硬 さの表示は試験に使用したスケールの符 号を必ず添記して,たとえば,ロックウ ェル硬さM115,R90などのように表示 タイプDデュロメータの圧子 フレーム・スクリュ 上部調整わじ インジケータ 負荷用ぱね プランジャピンケ」スおよぴ7レ_ム カパー・スクリュ ー ピン レパ_ ② .ロック・ナット スプリング・スり一プ l1 下部調整わじ . 脚 圧子カバ■ 1■! ストツプ・一」ング 圧子 スプ,jング 図3バーコル硬さ計の構造蝸〕 はもっとも一般的なもので,これに属するものには, ブリンネル硬さ,ロックウェル硬さ,ビッカース硬さ などの試験法がある。 する。この試験法の特徴は,試験機の目 盛によって硬さが表示され,直読することができ,計 算を必要とせず,また,測定が簡単で時間も速い点に ある。このほか,柔らかい軟質ポリエチレンから硬い メラミン樹脂にいたるまで広範囲の材料に応用できる などの利点がある。 5)デュロメータ硬さ(Durometerhardness) デュロメータ硬さ(略号:H・)は,ASTMD−2240 に規定されているが,JIS K7215■1眺6−3〕(プラスチック のデュロメータ硬さ試験方法)に取り入れられている。 この規格では用語の定義でデュロメータ硬さ,タイプ について以下のように記している。 “デュロメータ硬さ”は圧子を用いて,窪み深さに対 応して変化する試験荷重を試料に負荷し,生じた窪み またこのほか,硬質の針を圧子として便用するもの 深さ危から求めた値である。なお,圧子の種類,試験 に,デュロメータ硬さ,バーコル硬さなどの試験法が 荷重および硬さ算出式は表2による。 あり,これらは針入度試験法と呼ぱれている’〕。以下に 具体的方法について述べる。 また,デュロメータは圧子の種類,試験荷重の組み合 せごとに固有の名称があり,その名称を‘‘タイプ”と 4)ロックウェル硬さ(Rockwell hardness) いう。タイプの内容は表2による。なお,各タイプで ロックウェル硬さ(略号:H。)は,熱可塑性樹脂な 使用される圧子を図1,2に示す。タイプAは,比較的 らびに熱硬化性樹脂の硬さの測定に広く使用されてお 軟質のプラスチックに使用され,タイプDは比較的硬 り,ロックウェル硬さ試験機を使用する方法である。 この試験方法は;JIS K7202■1臼95・2〕(プラスチックの ロックウェル硬さ試験方法)で規定されているもので ある。この規格では用語の定義でロックウェル硬さ, 178 質のプラスチックに使用される。 ’この試験法でも特定の形状1寸法の試験片を準備す る必要はない。 試験方法は,針状圧子.を測定すべき材料面に押付け プラスチックス 口;ンクウェル 警・・ スーパー7イシャル N’硬さ (HRi5N〕 93 90 85 807570 ロックウェルA硬さ (HRA〕 85 80 75 7065 ロックウェルC硬さ (日RC〕 65 60 50 40 30 20 O 10 20 30 定時閲1s) ブリネル概さ 400300200 100 (HB) 図4 フェノール樹脂成形材料のバーコル 硬さと測定時間との関係≡帥 ショア硬さ 90 70 50 {HS) 30 ユO (HV) ビッカース硬さ 900 700 500 300 呂O 汕 60 轡 図6言式験可能な硬さ範囲と各種硬さの閥係 拶が 価c 〆 、 40 [ < 20 Ioo 6)バーコル硬さ(Barcol hardness) 図3に示すような構造のバーコル硬さ計を使用する もので,原理的には前項のデュロメータ硬さとよく似 O.51 2 3 4 5 6 7 てい乱この硬さ計は3種類のものがあるが,その一 つであるG/zJ934−1型はASTM D−2583−67に規定 硬化時聞(min〕 図5エポキシ樹脂成形材料の硬化時間 されている。バーコル硬さ計はたんに材料の表面硬さ とバーコル硬さとの関係2帥 の測定に使われるだけでなく,熱硬化性樹脂成形品の ると,ぱねの力によって,圧子の先端が材料面に食い 硬化時における表面硬さを測定してその硬化度(rate 込むので,この分量を圧子に直結した目盛板によって of cure)の測定の尺度とするのに利用され,成形材料 読み取る。 の硬化の遅速や成形条件の適否の判断などの資料とし もちろん,この場合,圧子の食い込みが小さいほど 硬さは大きいことを示すわけである。この方法は測定 たとえば,図4は各種のフェノール樹脂成形品を金 機が小型で取扱いが簡単なので誤差が多いことはまぬ 型から取り出した後に一定時間ごとに測定したバーコ がれない。 ル硬さである。また,図5はエポキシ樹脂成形材料を て役立たせることができる。 表3各種プラスチックの硬さ 樹 脂 メラミン樹脂 ロックウェル硬さ M ポリアセタール 100∼115 飽和ポリエステル’ M 90∼115 (紙積図,綿布積層) ショア硬さ R !20 HIポリスチレン 95∼120 (木粉充壊) フェノール樹脂 ロックウェル硬さ ボリフェニレンオキサイド (ガラス繊維布積層) フェノール樹脂 樹 脂 110∼!25 (α一セルロース充壊) 不飽和ボリエステル ショア硬さ R 68 115∼ユ23 117 20∼70 ナイロン 100∼120 ABS樹脂 108∼113 硝酸繊維素プラスチック 95∼115 ポリプロピレン 85∼ユ10 エポキシ樹脂(注型晶〕 80∼ユ10 酢酸繊維索プラスチック 34∼125 ポリメタクリル酸メチル けい素樹脂 85∼105 ポリ三ふっ化塩化エチレン 75∼95 80∼100 超高分子量ボリエチレン AS樹脂 80∼90 硬質塩化ビニル樹脂 高密度ポリエチレン D65∼85 D60∼70 GPボリスチレン 65∼80 (ガラス繊維横層〕 40・ ボリ四ふっ化エチレン D50∼65 ポリカーボネート 115∼125 中密度ポリエチレン ポリフェニレンスルフィド ポリスルホン 121∼122 低密度ポリエチレン D50∼60 D41∼46 120 軟質塩化ビニル樹脂 A40∼100 69 (中條澄1プラスチックス,46(台),ユ17(1995〕〕 Vol.5ユ,No.10 179 表4と図8に各種プラスチックの 表4各種プラスチックの引っかき硬さ(Bierbam) 引っかき硬さ 材料名 熱 硬 化 性 熱 可 塑 性 セ化 ノレ 口合 1 平均圧力 (mm) φ珊(㎏/mm) としては,熱硬化性樹脂の方が熱可 O,13∼O.12 20∼22 塑性樹脂より引っかき硬さが高い傾 向にある。しかし,たとえば,ナイ フェノール樹脂整形品,黒 ユ7∼22 メラミン樹脂横層板 28∼32 O.010∼0,009昌 32∼37 ポリエステル フタ}レ酸アリルCR39 10∼15 0.Oユ7∼O.014 !2∼17 15∼40 O.014∼0.O09 17∼46 メタクリル樹脂IA 17∼19 O.014∼O.013 17∼22 ロンのように熱可塑性のエンプラで あるがメラミン樹脂と同等の硬さを 示すものもある。「硬さ」試験で,測 硬質塩化ビニル樹脂 9∼10 0,018∼O.017 10∼12 ポリスチレン 塩化ビニリデン樹脂 9∼ユ1 O.018∼O.Oユ7 10∼13 定方法により,このような結果が出 5∼9 O.024∼O.018 6∼ユO たのは,硬さを実際に測定するとき ニトロセルロース 8∼16 O.0!9∼O.014 9∼19 セルロースアセテート アセチルセルロース ス物 引っかき硬さを示すI〕・5〕。全般的傾向 引っかき溝幅 エチルセルロース 板 ガ ラ ス 10∼20 4∼19 5∼8 700∼800 0.Oユ7∼0.012 O.027∼O.013 O.024∼0.019 O.0021∼0,001。 にかかる応力の作用機構が異なるた 12∼23 めである。 5∼22 6∼9 したがって,たんに「硬さ」によ る材料選びをするような場合は,測 810∼925 定方法も十分に考慮して行う必要が ある。 金型温度を変えて成形したもののバーコル硬さを示 これまでの取り上げた機械特性では・一定速度でゆ す1〕。 っくり外力がかけられる引張特性,曲げ特性,圧縮特 ③各種プラスチックの硬さの比較 性などを最初に取り上げ,若干項目の前後はあったが, 初めに,各種の硬さ試験法で試験可能な硬さ範囲と 続いて,短時間に衝撃的に外力が加わる衝撃特性を述 各種硬さの関係を図6に示す4〕。 べてきた。これからは,外力が長期的にかけられるも また,表3に各種プラスチックの硬さを,図7に一 部のプラスチックのロックウェル硬さと温度の関係を 2−4−10.クリープ特性 示す5〕。表3でみると,ロックウェル硬さのスケールは ①クリープとは 異なるが,各種熱硬化性樹脂の方が,エンプラを含め 一定の外力が長期問かけられ,材料の変形が時間の た熱可塑性樹脂よりロックウェル硬さが高いことがわ 経過とともに増加していく現象をクリープ(creep)と のについて述べていきたい。 かる。 温度特性では,結晶性樹脂のナイロンが融点付近ま O.22 で,ロックウェル硬さが高い水準で維持していること 0,20 がわかる。 0.ユ8 0,16 120 一“‘∼ 80 、.・、 ナイロン 目 昌 、\㌧ヘダ/フ1/ 40 x 0 ∵二㌻ −40 −80 0,14 メラミン樹脂化粧板 0,12 (パンライトL〕 ポリカーポネート 聾 寧 ツ や ナイロン 0.ユO 塩化ビニル樹脂 o O.08 0,06 0,04 並ガが ダイフロンu/4.D.20k菩荷重〕 ポリプロビレン{1μ■D.2帆g荷重〕 −200 真鍛A 路錬 −120 −160 紳 銅 0.02 ポリフロン{1/4■D.20庄呂荷重) 20406080100120ユ40160180200 0 1002003004005006007㏄800 針荷重(g〕 温度{℃) 試験機:束洋テスタ製ダィヤモンド針引っかき硬さ計 180 (山口:材料試験,工0(12〕,1,ユ5(工962〕 引っかき遼度:1.3om/畠 図7 ロックウェル硬さと温度 図8種々のプラスチックの引っかき硬さ朋〕 プラスチックス 4 ク スプ1」ング G ミ 」_ 白 目 ■ or一 一 一 十 「 □ 十 一 白 一 ^ 詮 糊 ト 」 ^ 芯 寧目掛一 i “ 」一 ←_ δ一令、 sr ) o 急に引張ると ゆっくリ引張る スプリングだ とダッシュポッ ……B C け伸ぴる トだけ伸ぴる (a〕 (b) (o〕 「「 ハ島\貝 図10弾性と粘性(マックスウェルの 官=一 D 模型)肪〕 図11粘弾性体の4要素模型 (a〕荷重をかける前 (b〕荷重をかけた瞬間 (c)± 時間 後 図9クリープ変形 ッシュポットBの制動作用のため徐々に時間をかけ て変形させられる(第ニクリープ期間)。また,途中で 呼んでいる。図9はクリープ現象を説明するものであ 負荷を除いたとき,非回復ひずみ量を決定するのが, る。最初,長さムoの物体に荷重ハを加えるとまず初 ダッシュポットDの役割である固〕。 期変形(弾性変形)を生じるが,時問の経過とともに このようにクリープ変形は時間とともに増加してい 変形がさらに増加し,f時問後にはクリープを加えて くものであるから,クリープ特性を表すには,ある温 総計∠〃の変形(全ひずみと称する)が生じる。 度における変形量一荷重時間もしくは,応力一荷重時 金属でも同様にクリープ現象が観察されるが,プラ 間などをもって比較されるほか,クリープによって破 スチックの場合比較的低温で,しかも大きな変形を生 断したときの応力の大きさ,すなわち,クリープ破壊 じるのが特徴である。このようなクリープ現象を起こ 強さなどが使われる。このクリープ現象と次節で述べ す理由は,プラスチック材料の特徴である粘弾性的性 る応力緩和現象などのような物質の粘弾性的な挙動を 質によるものである。 扱う学問をレオロジー(Rheo1ogy)と呼ぶが,レオロ 粘弾性的挙動の説明にほ,スプリング(弾性)とダ ジーはこのほかにも物質の流動や変形などの解説にも ッシュポット(粘性)の組み合せが用いられるが,スプ 利用され,プラスチックの物性の研究には非常に重要 リングとダッシュポットを直列に組み合わせたマック な科学である。 スウェルのモデルとこれらを並列に組み合わせたフォ このようにクリープ特性は材料の長時間的な耐久性 ークトのモデルが粘弾性モデルの基本とされている。 しかし,実際には,これらのモデルだけで粘弾性的 の一つを示すものであって,プラスチック製品を設計 する場合にはとくに心がけておかなけれぱならない。 な挙動を表すことはできないので,これらのモデルを 短時間の静的試験によるデータだけを便用して設計す いくつか組み合わせて使用する。図10は,マックスウ ると,恩いがけない支障を生じることがあるので十分 ェルのモデルによって荷重をかけたときの弾性的な挙 検討しておくことが大切である。 動と粘性的な挙動の違いを説明するものである。すな ②クリープの測定方法 わち,急に荷重をかけるとスプリングだけ伸びて,弾 クリープの測定方法は,JIS K7ユ15■19酬(プラスチ 性的挙動をするが(図10(b)),ゆっくりと荷重をかけ ックの引張クリープ試験方法)とJIS K7ユ161’9畠7・8〕プ ると,ダッシュポットだけ伸びて粘性的挙動をするこ ラスチックの曲げクリープ試験方法)に規定されてい とを示している(図ユO(c))1〕。 る。 図11はいわゆる4要素モデル(Burgersmode1)に 詳細は原典を参照したして頂くこととし,ここでは よるクリープ現象の説明である1〕。 その概要について記す。なお,両者は外力のかけかた まず,負荷をかけた瞬間的な変形は主にばねAで対 応する。これが,第一クリープ期間に対応する,さら は異なるが操作的には同様である。ここでは,引張ク にばねCも変形しようとするが,並列につながれたダ Vo1.51,No.10 リープについて記九また,試験結果の算出式などの 考え方は引張クリープは引張特性と,曲げクリープは 18ユ る場合は,その材料の引張降伏強さまたは引張強 表5クリrプひずみ測定のタイムスケジュール 単 位 測定時問 さの10∼90%の範囲で7個以上の応カレベルで nユin 1, 2, 3, 4, 6, 12, 18, 30, 42 試験を行う。 (C)単純に材料間の比較などをする場合には,ク 1,2,3,5,7・10・20・30・50ペアP・1OO・200・300・ h 500,700,1.OOO リープ限度が1,000時間でクリープひずみが 備考 1,OOO時間以上クリープ試験を行う場合には,1ヵ月に1回以上測 定を行う』もし,クリープひずみが不規則に変化するような場合に 0.01(1%)のクリープ限度で求める。この場合の 応カレベルの数は,1,O00時間で0.01(1%)のク は,上記スケジュールより多く測定する。 リープひずみが生じるであろう応力付近で3個以 上が望まレい。 曲げ特性と同様である。しかし,クリープ試験でのみ ・クリープひずみ測定 算出される結果もある。 試験片に試験荷重を加え終えた瞬問を試験開始時間 参考のため一部の用語(引張クリープ)を紹介する。 とする。試験片のクリープひずみを自動記録しないと ・クリープひずみ:試験片に試験荷重を加えた結果, 任意の時間が経過したとき生じるひずみ。 きは,表5に示すタイムスケジュールで測定するのが 望ましい。 ・クリープ弾性率:応力とひずみとの比。 ・クリープ破壊強さ:試験片に試験荷重を加えてか ら,一定時間に破壊を生じる応力 ・クリープ限度:試験片に試験荷重を加えてから,一 定時問にある規定されたクリープひずみを生ずる応 計算は,以下のとおりである。 ・応力は,次式によって算出する。 F σ=1 ここに,σ:応力(Mpa!(kgf/mm2) F:試験荷重(N)(kgf) 力。 ・クリープ破壌時間:試験片に試験荷重を加えてから λ:試験片の原断面積(mm2) ・クリープひずみは次式によって算出する。 破壊するまでの時問。 ・クリープ限度時間1試験片に試験荷重を加えてか ら,ある規定されたクリープひずみに達するまでの時 問。 .・クリープ回復:クリープ試験において試験荷重を除 き,任意の時問が経過した後のひずみを,試験荷重を 除く直前のクリープひずみから差し引いたひずみ。 試験操作のうちで重要と思われる項目は,以下のと おり。 /。一ゐ εF z。 ここに,ε。1クリープひずみ z。:試験荷重を加える前の標線間距離 (mm) パ負荷後任意の時間経過後の標線問距離 (mm) ・クリープ弾性率は次式によって算出する。 σ EF一 ε’ ・試験応カレベルの数 (・)クリープひずみを測定する場合 ここに,凪:クリープ弾性率(MPa)(kgf/mm2) 1)線型粘弾性領域の大きな材料に対しては,3個 試験結果の表し方は以下のとおり。 以上の応カレベルとする。 ・クリープひずみ一時問線図’ 2)線型粘弾性領域の小さな材料に対しては,5個 ・クリープひずみ一時問線図は,横軸に経過時問を対 以上の応カレベルとする。 数目盛で,縦軸にクリープひずみを等間隔目盛でとっ (b)クリープ破壊強さおよびクリープ限度を測定す て,応力ごと’に図12のように描く。 ク リ ク. リ 応 プ ひ 力 ず み プ 破 壊 強 さ 経過時間(b) クリープひずみ クり一プ破壊時聞ω 図12 クリープひずみ一時間線図 図13等時応力一クリープひずみ線図 図14 クリープ破壊線図 182 プラスチックス 2.5 PPO ボリアセタール ス’{ン ㈱ポリ㌻鼻 3.O 2.O 耐熱ABS樹脂 “ ) 1.5 ポリカーボネート ぐ ? 52.O 紅 6 1.O ポリスルホン 刈 醐 (繊維応力].5㎏fノ皿m呈〕 木雌材フェノニル樹脂 迂 £ 々 0,5 20−2ゴC,60山70%RH 荷 重 エポキシ樹脂 I.o ジアー」ルフタレート樹脂 皿 1,㎝02、㎝03I0004,OO05.㎝06,OO07,㎝O畠,㎝09,OOO1O,OOO (注〕23℃,空気中,引張応力=21kま/mm2 図15各種プラスチックの引張クリープー時間一線図帥〕 応 力(MPa〕 ガラス繊維基材フェノール樹脂 0 200 400直OO畠O01,O叩1,別Oi,伽1.石001,700 贈’聞(h〕 PP0:ポリ7エニレンオキサイド(アメリカGE社製品) 繊維応力:ファイバーストレス=曲げ応力 図16種々のプラスチック材料等の曲げクリープー時間線図1.j 500 一100時聞ひすみ 1,5㎝口宮iOO.洲Po〕 ■■一一〇.01時間ひずみ ざ ぐ ト 6 ト 400 デルリン1,500p畠iOO.畠MPo〕 中衝蝶^BS樹脂 、 諦 去 、、 〆 吋 由■ ヘ ミ〆 車 3㏄ セルコン ポり力一ポネート × 200 1卜 附F500P亘i 3・2喧OP昌i122.5MP日〕 ‘22.酎C.3.4MP丑〕 H へ } ヘ { o 2 〕 × 1ト H l へ \ 工oo } ナイロン25%HH,茗,OOOp昌i{20.7MPa〕 O O lO 1OO ’ 1,OOO 1q,OO 時間(h〕 塩ヒ AS ポィート 図18各種プラスチックのモジュラスと一時聞線図 ユ 2 3 4 応力(kg/mm里〕 図17各種熱可塑性樹脂のクリープ等時応用クリープひずみ 線図 き方をし,クリープ破壊強さの代わりにクリープ限度 をクリープ破壊時問の代わりにクリープ限度時問をそ れぞれ用いる。この場合,規定されたクリープひずみ ・クリープ弾性率一時間線図 を明記しなけれぱならない。 クリープ弾性率一時間線図は,クリープひずみ一時 ③各種プラスチックのクリープ特性 間線図の代わりに用いることがある。クリープひずみ 図15,16は各種プラスチック材料に対する引張り, の代わりにクリープ弾性率を用いる。 曲げ荷重によるクリープー時間線図の例である’〕。ま ・等時応力一クリープひずみ線図 た,図17は,各種熱可塑性樹脂の等時応力一クリープ 等時応力一クリープひずみ線図は,クリープひず み一時問線図から・同じ経過時間に対するクリープひ ずみを各応力ごとに読み取り,縦軸にクリープひずみ 線図および,表6は,その結果得られたクリープ破壊 を等問隔目盛で,縦軸に応カを等間隔目盛でとって, 定数であるm〕。また,図20は,各種プラスチックのク 時間ごとに図13のように描く。 ・クリープ破壊線図 ひずみ線図,図18は,エンプラのクリープ弾性率一時 間線図9〕,図19は,各種プラスチックのクリープ破壊 リープ変形と温度の関係を示すものである9〕。 クリープ変形は当然のことながら,材料の種類や強 クリープ破壊線図は,横軸にクリープ破壊時間を対 化材の有無などの影響を受ける。また,荷重(応力) 数目盛で,縦軸にクリープ破壊強さを等間隔目盛で取 が大きく,荷重時間が長いほどそして周囲温度が高い って,図14のように描く。 ほど増加し,また,周囲の雰囲気によっても影響され ・クリープ限度線図 る。なお,この関連ρデータは膨大な量であり,たと クリープ限度線図は,クリープ破壊線図と同様な描 Vol.51,No.10 えば参考文献9)に多くのデータの紹介がある。また, 183 表6材料固有のクリープ破壊定数酬 POM PF 9 5 コ昌 ポ 材 料 ー、生{牢一・一 、 PF PC ≡≡ こご二4___断 為4 只3 ABS POM PP へ 岨舳■i−1一 。一.一詞」」}㌍一一一一、. 僅 2 o PP 軌 (㎏f・mm■2〕 榊 〃 6.34 0.03 0.005 6.57 O.27 0.041 3.76 O.18 0.048 7.30 O.42 O.058 3.72 O.33 O.089 “ 106 10空 10ヨ 10’ 105 破壊時閥三。(昌) 図19各種プラスチックの引張クリープ破壊曲線ト引 詮 料10 e 睡20 控 830 宙× {.一40 ク 冒邑 弩§ 2040 6080100120 ε’ 温度(℃) 図20 クリープ変形と温度の関係 つ一、〕目 一 、 材料メーカーにもデータの蓄積があるの 十 一 で,必要な際には,各材料メーカーに問 漢 い合わせるとよい。 料 ㌣ 」。膏 」。 ( ( ミ個 r 1 蝸 二陰 長時間荷重を受ける状態で使用される 場合(とくに常温より高い温度の場合) l1二 「■ミ 「■ミ運 ○ ハ1 二// (荷重減少〕 (a〕荷重をかける前 (b)荷重をかけた直後 (C)!時間後 (灘講菰) 図21応力緩和現象 には,短時問の破壊強さの値よりも,ク リープ破壊を起こす応力以下で使用する ようにしなければならないことはもちろ んのことである。 2−4−1ユ.応力緩和 前述のクリープは,外力(応力)を一 定としてその変形量(ひずみ)の大きさ と外力を加える時問の関係を間題とした ものそあるが,ここで述べる応力緩和 (StreSSre1aXation)は,その反対に,変 形量を長時間一定に保っておいて,これ と釣り合う応力と荷重時問との関係を問 題にするものである。 物体にある一定の変形を与えてそのま Gl まの状態を保たせておくと,荷重を加え た直後にはその変形量に対応する応力を 示すが,時間の経過とともに,その応力 〃1 は減少する傾向を示す,このように,長 時問一定のひずみを受けているうちに物 図22マックスウェル粘弾 体内部の物理的変化によって応力が減少 (a)荷重を (b)荷重を (oい時間後 性モデルによる応力緩 (緩和)していく現象が応力緩和である。 かける前 かけた直後 (応力緩和〕 和現象の説明 図21は,これをモデル的に示したもの 184 プラスチックス で,また,図22はマックスウェルの粘弾性モデルによ って応力緩和現象を説明したものである。図に示すよ うに,弾陸(スプリング)はある時問後には,完全に 1日状に復する一方,粘性(ダッシュポット)による抵 ま 抗は減少し,応力が緩和(減少)して釣り合っている 只 控 願 蝋 図23 ボリカー 状態が示されている。図23は,ポリカーボネートにつ いての応力緩和の一例であって,最初に与えられた応 ボネツト「ユ 力が時間の経過とともに減少していく様子がわかる。 ーピロン」の ■ なおこの図では,最初の応力の値を100%としてプ 引張応力 1.0 緩和訓〕 時 問(h) ロットしてある。図のように高い温度の場合ほど応力 緩和が顕著に進行している1〕。 〈参考文献〉 1)「成形加工技者のためのプラスチック物性入門」廠恵章利,本 吉正信共著,1996年1月31日第3版第1刷発行,日干凹工業 新聞社 2)JIS K7202■19舶(プラスチックのロックウェル硬さ試験方 法) 3)JIS K7215’1雪冊(プラスチックのデュロメーター硬さ試験方 法〕 4)「実用プラスチック用語辞典」1989年9月10日改定第3版監 修:永丼進,編纂,大阪市立工業研究所プラスチック課,発行, ㈱プラスチックス・工一ジ 5〕「プラスチック・データブック」p.152,旭化成アミダス㈱/「プ ラスチックス」編集都共編,㈱工業調査会ユ999年12月1日 初版第1刷 6)「プラスチック読本」p.31,大阪市立工業研究所,プラスチッ ク読本編集委員会,プラスチック技術協会共編,1992年8月 15日改定第18版㈱プラスチックス・エージ 7)JIS K71庁”朋(プラスチックの引張クリープ試験方法〕 8〕JIS K7116■]明7(プラスチツクの曲げクリープ試験方法〕 9〕「プラスチック・データブック」p.126,旭化成アミダス㈱ノ「プ ラスチックス」編集部共編,㈱工業調査会1999年12月1日 初版第1刷 10)「プラスチック成形加エデータブック」p.44,㈱日本塑性加工 学会編,昭和63年3月25日初版第ユ刷日刊工業新聞社
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