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「当日瓦版」鳴川肇様PDF

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∼ SEEDS BOOKS 当日瓦版∼
第一セッション: 一の座
セザール・ハラダ (活動家・アーティスト)
第三セッション: 兆の座
プログラム
(エンジニア)
藤野 真人 創の座
平田
石黒 浩 (ロボット学者)
オリザ (劇作家/演出家)
小林 光一 (棋士)
第四セッション:
佐藤 康雄 (消防士/元東京消防庁警防部長)
(自律ロボット研究者)
淺間 一 開発者)
(惑星科学者)
中村 智樹 (Authagraph
鳴川 肇 第二セッション: 風の座
古川 柳子 (メディア研究者)
辻野 晃一郎 (企業家)
(チョコレート伝道師)
パトリシア・サイ 蛯名 健一 (ダンスパフォーマー)
鳴
川
肇
Session 01 SPEAKER # 1
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鳴川ともうします。どうぞよろしくお願いします。
普段わたしは建築のデザインとかプロダクツデザインとかをしてきているわけなんですが建築家っていうのは
自分が設計した建物がどう見えるかというものを透視図法というのを使ってえがくわけです。その投影法に興
味を持ちまして長い間研究を続けてきました。
中世ヨーロッパ列強は赤道付近に興味があった
今日は私が中心になって長い間研究開発をやってきまして作りました世界地図をご紹介します。さっそくです
がオーサーグラブと名付けましたこの世界地図をご覧いただこうと思います。このような長方形の枠の中に六
つの大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、それからこれが一番大
事なんですが他の地図図法では無視されたり大きなゆがみを含んでいた南極大陸の大きさが極力正しい状態で
さらに形を均等にゆがみを分散させることで非常に正しく描かれている地図となっています。これによります
と大きなグリーンランドという島が、やっぱり大きいけれどオーストラリアよりずっと小さいんだとが正しく
表現できる利点があります。これまでの長い歴史の中でどういう世界地図があったかということを簡単にご説
明さしあげます。
そもそも球体を長方形にぴたっと正確に書き写す数学的完全解というのがあり得ない訳なんです。それ故にさ
まざまなひとがいろんな世界地図を作ってきた訳なんですがみなさんも一番なじみのある世界地図はどれかと
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いうと、これですね、メルカトール図法といいます。長方形に世界がピタッとおさまった世界地図です。今ご
覧になっているプロジェクターの形、これ長方形ですよね?パソコンのモニターも長方形だし、メモ用紙も長
方形です。情報というのは長方形にピタリと収まっているそういうフォーマットですのでこの世界地図のよう
に地球一個分を長方形に予価分なくというのは非常に優れているポイントなんですが、一方で南極大陸は東西
に引き延ばされ、肥大化して描かれてしまったり、グリーンランドがオーストラリアよりもあたかも大きいよ
うな誤解を生んでしまう、そういった欠点があります。
一方でこの世界地図は1569年に発明された地図なんです。その時代南極大陸というのは発見されていませ
んでした。ですから当時の世界観はここから上の世界、しかも北極付近も寒いだけでなにも興味のある物はほ
とんどない、サンタクロースは例外なんですが、それ以外興味のあるものはほとんどなくって当時ヨーロッパ
列強が興味を持っていたのは銀や香辛料が穫れる植民地付近だったんです。植民地は当時ずらりと赤道に並ん
でいた訳でしてメルカトール図法によれば赤道付近の地理というのは非常に正確に表現されていたわけです。
つまり当時の世界背景を考えますとメルカトール図法というのはほぼ完璧な地図図法だったんです。
北極海を挟んだ東西冷戦
いっぽう20世紀に入りまして我々も海外旅行に行きますよね?長い大陸間を横断する長いフライトをする際
に例えば東京の成田を飛び立った飛行機がブラジリアへ行くのになんでヒューストンに行くんだろう?ヒュー
ストン経由するんだろう?まるで回り道をしているように映ってしまう。このような問題点も現れてきた訳で
す。その問題点に対してさまざまな解決案も出てきているわけです。そのなかでもっとも優れている世界地図
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の提案というのが1946年にアメリカのバックミンスター・フラーという人が発明したダイマクションマッ
プという地図があるんですけれども、この地図によると六つの大陸の地図がすべて正確に描かれてます。形も
面積もほぼ正しい地図になっています。
この地図が発明されたのは1946年ですのでちょうどアメリカとソヴィエトが冷戦をはじめた時代だったん
です。アメリカとソヴィエトが実は東西対立ではなくて、北極海を挟んで対立しているというのを非常にわか
りやすく表現しているという点でも大変優れている地図です。ところがこの地図は大陸のレイアウトを優先さ
せてしまったために、海の形、たとえば太平洋を表現しようとすると三つの領域に分断されてしまう欠点を抱
えています。異常気象を起こすようなエルニーニョのような海流を矢印で描こうとすると、海流の動きが分断
されてしまう、という欠点があるわけです。
つまり、さまざまな地図が提案されてきている訳ですが、ふたつのグループに分類出来ることがわかったわけ
なんです。長方形に世界を収めようとすると大陸が歪んでしまう、歪みをなおそうとすると地図自体がギザギ
ザになってしまう。ということから今回私が提案している世界地図というのはメルカトール図法のように長方
形におさまりつつ、ダイマクションマップのように大陸の面積がただしいという地図を開発しようと言う目的
で地図をつくりました。
具体的にどうやって地図投影をやってこの地図を作ったか、というのをアニメーションを使って説明します。
まず地球があります。地球を96等分します。これは96等分でも600等分でも等分数がおおければおおい
ほど良いのですが、この説明用には96等分した物を使います。一個一個の細長い三角形の白いラインで区分
された三角形が全体の96分の1を保っているという面積を保ちながら一度心射投影というのを行っておにぎ
り状の形に書き写します。もう一度こんどは平射投影という投影方法をつかって正四面体というものに書き写
そもそも球体を長方形にぴたっと正確に書き写す
数学的完全解というのがあり得ない訳なんです
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す訳です。その間面積は保った状態で投影を行う訳です。そうしますとあらゆる立体の中で正四面体はハサミ
をいれて切り開くとこのような長方形の展開図がえられます。その特徴を利用して切り開きますと縦横比が
1:√3の面積比の正しい世界地図ができるという仕組みになっています。1:√3はほぼ9:16なのでハ
イビジョンのモニターにほぼぴったり納まるというポイントがあげられます。
次にこの世界地図は各辺の中点を回転軸に180度ずつ回転させて行くと縦横斜めに地図情報がすべて繋がっ
た状態でシームレスに並べることが出来ます。そこから今度は横長の地図を切り取ることも出来ます。さらに
ブラジルが右端ですがブラジルを中心にするためにビューワーをスライドさせたり菱形、正三角形に変形させ
て、南極を中心にした世界地図ですとかアフリカを中心とした世界地図ビューワーをスライドさせてあらたな
世界地図を切り出すことが出来る。
このように四角い枠をスライドさせたり方向転換させたり世界地図の形自体を長方形や菱形に変形することに
よってさまざまな角度からみた世界観というのをつぎつぎに提供できるという特徴をもった世界地図というの
を今回考えだしました。
このオーサグラフという投影方法をつかった世界地図によりますとたとえばオゾンホールがぽっかりあいてい
る南極上空のオゾンホールの形状といったものの大きさや形が非常にわかりやすい状態で表示出来ます。また
東京発ブラジリア行きの飛行機が「ああ、またヒューストンを経由するんだな」ということが正しく表現出来
る、というような利点があります。
もちろんこれは球体を情報系に書き換えるための方法ですので、何も今の地球の海岸線を表現するために使う
ことに限定されるわけではなくて、例えば地球は大陸移動を繰り返して、大陸は移動しているんですが、6億
年前から現在までの大陸の移動する姿というのをオーサグラフを使って、分かりやすく表現することもできま
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す。もうすぐここにインドが現れてくるんですけれども。これですね。インドがマダガスカルと今分かれまし
たね。で、インド洋を泳いでユーラシア大陸に激突してヒマラヤができたというような地質学的なテーマに沿っ
たものを非常にわかりやすく、ビジュアル的に表現することができる。というような提案をすることができま
す。
未来の地図
そもそも我々が住む球面世界というのは、どちらにどれだけ歩いて行っても行き止まりのない世界ですよね。
ですので今回この地図をなぜ平面充填できるようにしたかというと、我々の住む世界というのは、大昔の人た
ちは無限平面上にあると誤解したように球面世界と無限平面というのは非常に良く似ているわけなんですね、
幾何学的に。ですので、タイリングして平面充填することで、行き止まりのない世界というのを、どれだけ2
次元で忠実に再現できるかという試みとして、この世界地図を作っています。
こういう地図を作っていろいろなテーマの地図を私の方でも製作しているんですが、スライドさせたり回転さ
せたりというようなことは、皆さんにぜひ体験してもらって、どういう地図の特徴があるということを経験し
てもらいたいわけなんですね。そこで今年の1月に、日本科学未来館が大規模な地図アーカイブを作ってくだ
さったんですが。ジオパレットという世界地図のアーカイブにこのオーサグラフ世界地図を採用してください
ました。未来館と制作チームの方々が収集した600ものテーマで、例えばインターネット利用者といった文
化的なテーマの地図ですとか、AIDS による死亡者数といった保険や衛生、それから日射量といった自然
科学に関する地図などを自由にブラウズしていただいて選んでもらって、そこから気に入ったもの、例えば離
行 き 止 ま り の な い 世 界 と い う の を、 ど れ だ け 2 次 元 で
忠実に再現できるかという試みとして、この世界地図
を作っています
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婚率という地図もありますね。それをオーサグラフを使って表示していただいて「色」
「パターン」更に「透
明度」を変えてもらって、自分の好きな色合いにカスタマイズした世界地図を作っていただけるようなサービ
スになっています。
これ、なんで透明度を変えられるかということに拘ったかというと、1枚の地図を重ねるだけではなくて、例
えばですが、世界で一番幸せな国はどこだろうかと考えた時に、色々なパラメータの地図を何枚も重ねあわせ
ていく、そこで浮き彫りになる色合いから、この国はもしかしたら、とても住みやすくて、世界一幸せな国か
もしれないと言うような、新たな考え方の地図を視覚化することができるという際に、透明な色を重ねあわせ
て色合いを調整することができる。
ですので、この場合、識字率が高くて、離婚率が低くて、失業者数が少なくて、平均寿命が非常に長い。とい
うような、そういうものが、世界で一番住みやすい国の基準になるんじゃないかなと。コメントを書いて、地
図を作って、それをアップロードして他のユーザーたちのコメントをもらうとか意見を交換する。というよう
な楽しみ方ができる。そういうようなサービスになっています。
もちろんオーサグラフですので、中心を変えて、違う視点から世界を見たり、例えばヨーロッパ地域はどうなっ
ているだろうか?とかノルウェー、スイス、オーストリアがオレンジ色が濃いので、結構、幸せな生活ができ
る国なんじゃないかな?とか、そういうことを考えたり、ズームアウトして方向転換をして、スライドして、
また方向転換をしてスライドさせて、普段とは違った世界の見方をできる世界地図。それに対してコメントを
書く。世界で一番幸せな国はどこかという例を挙げましたけれど、これは日本科学未来館のほうで、このよう
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な抽象的なんですけれども、すごく難しいお題を月に一回ですとか出して行って、それに対してユーザーが自
分で考えた考えをコメントに書いたりこういう地図を作ってアップロードして、お互いの意見交換をすると。
そういうようなサービスになっています。ですので是非使ってみてください。
日本科学未来館では、このように自然テーマですとか、世界の統計データというのを大量に収集して下さいま
して、この大規模な世界地図のアーカイブを作ってくださったんですけれども、それだけではなくて、いま私
が興味を持っているのは、世界史のテーマなんですね。例えば1475年から500年間の間、様々な冒険家
が大航海をしてきました。コロンブスが西回り、ヴァスコ・ダ・ガマが東回りで、インドを目指した時代の大
航海の軌跡というのを一枚の地図に表現することがオーサグラフだと可能です。
さらにマゼランやエルカノが世界を1周したとしても、キャプテンクックが自分の生涯で3回に分けて世界を
3周したとしてもオーサグラフ世界地図というのは全方向につなぎあわせていってシームレスに地理情報を拡
張することができますのでこのようにキャプテンクックの軌跡というのを一筆書きでトラッキングしていくこ
と が で き ま す。
(地図をさしながら)ここでキャプテンクックは実は死んでいるのですがハワイで、でもその
あと乗組員たちが戻ってきました。そのような新しい方法で世界史を表現することができるのではないかと
思っています。もちろん一つのテーマだけではなくて、世界史すべてを一望できるのではないかという考えの
もとにこういう世界地図も作ってみました。
紀元前1300年から50年ごとの世界の状況をオーサグラフ地図で縦長のものですがつくりまして、時系列
にずらーと並べていった。そういう世界地図をつくりました。こうして、1300年から2007年までの
50年間の68枚の地図をつなぎあわせることで2300年間の世界の歴史を長方形で一望できると、何かの
いきさつを長方形で一望できるというような世界地図を作ってみました。これを使いますと例えばモンゴル帝
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国というのは史上最大の帝国だと言われていて、確かにでっかいのはでっかいなあと。たださっと現れてさっ
と消えてしまったので、それに対してローマ帝国というのはそこまで大きくないけど長い間継続したので繰り
返しこう現れてきます。そうすると世界史を通してみた場合にやっぱりローマ帝国というのは存在感があるん
だなあと。というように世界史を時系列も踏まえてビジュアルに表現することができるんではないかというよ
うな世界地図を作ってます。
これは12月に東京都写真美術館の方で公開する予定でして、いま制作に世界史の先生ですとか東大の比較文
化人類学をやっている学生さんとかに手伝っていただきながら今作っているところです。
早足でご説明してきましたけれども、ここまでくるのに15年、実はかかっているわけなんです。ひとつ気づ
いたのは世界地図をつくろうと思って投影法を研究しているときにはずっと幾何学の研究をしていたわけなん
です。特にハサミとセロテープを使ってチョキチョキしながらこういう模型をどんどん作ってきまして最終的
にはこういうふうに2段階に投影したものが正四面体になり、それを切り開くと長方形になるんだということ
を模型を作ったりしながら検証していったわけなんです。そのときに計算方法とかそういうものを常に繰り返
しているわではなくて、はじめにインスピレーションはこう指を動かしながら考えて、それが本当に正しいか
どうかというのを計算で実証するというプロセスでとにかく作ってきたわけなんです。一度、立体幾何学の探
求をして世界地図ができたと、そうすると今度はその世界地図を使って何を表現しようかという話に移ってい
くわけなんです。
そうすると今まで幾何学とデザインだけやっていたのにそれまでお付き合いのなかった人たちと例えば地学や
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地理それから地政学、世界史という人文社会系の面白い方々と一緒にお仕事をしながら、いろんな世界地図を
展開していくというような生活に変わってきたわけなんです。それがとても面白かったなと思っています。
球面世界というのは行き止まりのない世界でそれをどうやって平面に表現するかという世界地図なわけなんで
すが、今後も学問一個一個には垣根があって行き止まりがあるわけなんですが、この地図を使っていろんな分
野の人たちと分野をまたいで行き止まりのない学問の世界をつくりあげてその中で幅広く活動していくことが
出来ればなあと思っているところです。
私の発表はこれで終わりです。どうもありがとうございました。
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Authagraph 開発者
鳴川 肇
1971 年生まれ。芝浦工業大学卒。東
京藝術大学修士課程修了。1994 年か
ら幾何学理論の研究を始める。
VMX Architects、佐々木睦朗構造計画
研 究 所 を 経 て、2009 年 AuthaGraph
株式会社設立。同年、ICC「オープン・
スペース 2009」テーマ展示「ミッショ
ン G :地球を知覚せよ」において、
「オー
サグラフ」による世界地図を初公開。
オーサグラフとは“authalic”( 面積が
等しい ) と“graph”( 図 ) に由来し、陸
地の面積比と形状をほぼ正確に表記し、
海を分割することなく矩形の平面に収
めた画期的な図法である。
現在は、主に模型による立体幾何学的
検証を軸にアイデアを展開し、社会の
ニーズにどう応用できるかを探求しつ
つ、美術、デザイン、エンジニアリン
グの分野にわたり活動中。本年6月、
日本科学未来館による常設展示、
「ジオ・
コスモス、ジオ・パレット、ジオ・スコー
プ」において、基本設計、実施監修を
担当。1994 年、
「ゴールデン街の小劇
場」で JIA 卒業設計競技金賞、1996 年
にはサロン・ド・プランタン賞を受賞、
他受賞多数。
日本国際地図学会会員。桑沢デザイン
研究所、東京造形大学非常勤講師。日
本科学未来館アドバイザー。
『 一風兆創 - SEEDS BOOKS 』当日瓦版
平成 23 年 10 月 22 日発行
企
画:堀内一永 松島凡 伊藤弘雅
原 稿 製 作:TEDxSeeds 会議 2011 ボランティアチーム
デ ザ イ ン:今井俊志(株式会社大川印刷)
発
行:MEGASEEDS Inc. 合同会社
印刷・製本:富士ゼロックス株式会社
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