I NFORMA TION WIND OW できることから着実に。 小さなことを見逃さず、 大きな事故を未然に防ぐ。 医療法人 芳越会 ホウエツ病院 徳島県美馬市脇町大字猪尻字八幡神社下南130-3 昭和63年開設の医療法人芳越会林病院を前身とし、平成 8 年、ホウエツ病院を開設。地 津田祐子看護部長 域密着型の病院として救急医療の中核となり、 良質な医療・福祉サービスを提供するべく、 機能的で活力あるチームケアを実践する。健康増進、疾病予防、リハビリテーションなど を精力的に行うことで、地域住民の信頼を得ている。診療科目数13科。職員数85人。 ベッド数65床 (一般病棟37床うち亜急性期入院医療管理料10床+回復期リハビリテー ホウエツ病院では平成14年にISO 9001( 国際標準化機構)の承認を 取得した。現在は、病院機能評価 の認定を目指して、さまざまな活 動を行っている。院内感染対策も その一環として、感染対策委員会 のメンバーを中心に実践してい る。実行に際して他の職員の理解 と協力を得やすい環境にあること は、小規模病院ならではの利点だ。 感染対策につながる出費はなるべ く惜しまないという柔軟な対応も とられており、小さな改善を積み 重ねることで病院の安全、安心を 守っている。 4 ション病棟28床) 、稼働率93.6%。平均在院日数13∼14日。年間手術件数 (入院手術 のみ) 45件。 作業療法士、管理栄養士、薬剤師、 執行部として権限をもつ 感染対策委員会 ホウエツ病院では全職員が何らか 事務など12名で構成されている。 異動などの機会に一部のメンバーが 他の委員会メンバーと入れ替わるシ の委員会に関わっている。感染対策 ステムがとられており、結果的に、 委員会もそうした委員会の 1 つだ。 多くの職員が院内感染対策に携わる 委員長である消化器外科の十亀徳先 ことができる。 生は、その他に、互いに関連性があ 感染対策の実践状況について、ま る褥瘡対策、輸血、手術の各委員会 ず、津田祐子看護部長に総体的なお も受け持っている。感染対策委員会 話を伺った。衛生管理面で徹底させ は、臨床検査技師の佐藤剛生さんと てきたことには、ナースキャップ、指 看護師の佐藤智恵子さんを副委員長 輪、時計を身につけないこと、処置、 として、以下、看護師、理学療法士、 採血、注射時に手袋を着用すること、 ▲ ▲十亀 徳 感染対策委員長 ウエブサイト上に各委 員会のページを設け、 感染に関するデータや 委員会で決まった事柄 などもそこに掲載す る。職員は院内LANを 通してそれらを見るこ とができる ▲佐藤剛生・佐藤智恵子感染対策副委員長 各種委員会活動 看護師 医 局 介 護 リハビリテーション 各種委員会 薬剤科 栄養管理 放射線科 事 務 ▲林院長自らによる院内ラウンドで、ガウンや水回りの管 理状況などをチェック ▲ 臨床検査科 人工呼吸器の回路は 安全性と感染対策と を考え、 2 色にして 間違いが起こらない ようにしている ISO・病院機能評価委員会 NST委員会 個人情報推進委員会 医療事故対策・防止委員会 感染対策委員会 褥創対策委員会 症例検討委員会 サービス改善委員会 学術・教育委員会 接遇委員会 美化委員会 医療ガス安全管理委員会 労働安全管理委員会 レクリエーション委員会 広報・IT委員会 手荒い消毒液を各病室前に設置する や人工呼吸器回路を使用。吸引でた 点滴に入れる薬液を溶解するときは ことなどがある。 まった廃液もボックスのまま捨てら 1 人の患者さんに 1 つの器具で完結 「感染対策委員会は執行部として れる。酸素ボンベの水は酸素吸入用 させる。点滴セットも閉鎖式のもの 権限をもっているので、何かが決め の使い捨て滅菌水を使用。もちろん、 を使い、感染を最小限に抑えるよう られたら、皆それに従うことになっ ガーゼや綿球も 1 つずつ包装されて にしている。 ているのです。それについては皆の いるものを使っている。 理解と協力が得られています」 「再使用はせず、完全に 1 回ずつ 「ベッド数の割には、ディスポー 廃棄することで患者さんに良好な環 ザブル製品の使用度は高いと思いま 境を提供しています。コストは掛か す。 3 ∼ 4 年前ある県の講習会で、 りますが、そうした部分への投資は 同院が特に力を入れてきている対 尋ねられたディスポーザブル製品を 基本的に惜しみません。その点、管 策の 1 つに、ディスポーザブル製品 すべて使っていたのは当院だけだっ 理部の方たちの理解があるので大変 の使用がある。素手でつい行ってし たという、ちょっとした自慢話もあ 助かります。スタッフも安心して使 まいがちなちょっとした処置に際し るんですよ」 えますし、患者さんにも、衛生的な ディスポーザブル製品の使用 ても、必ず使い捨ての手袋を着用す また、MRSA専用備品としての る。呼吸器がついた病床では、ディ 血圧計、体温計、聴診器などは 1 患 スポーザブルの気管内吸引チューブ 者ごとの個人対応を実践している。 物をつかっているのだという安心感 が伝わるはずです」 5 ▲感染対策委員会のミーティング この日は十亀委員長が手術中のため林院長が代行 客観的な目で現状を把握し 改善する 院内ラウンドは毎月 1 回、基本的 ▲NSTチェアマンの石井真理子先生 各種委員会の相談に応じている るようにする。その他、MRSA対 スクの高い患者さんがいる場合は、 応基準作成、家族指導資料の準備、 部屋の内外にアルコール消毒剤を設 職員教育マニュアル作成なども、副 置し、処置後の素早い対応を心がけ 委員長を中心に行われている。 るなど、細かい点に配慮した対策を にメンバー 2 人が交代で受け持って 「現在、当院では、病院機能評価 行う。チェック項目は、廃棄物処理、 の認定に向けて準備をしています。 処置台・水回り・リハビリ室などの 以前は、感染対策に関しては自己満 十亀先生を中心に精力的に最新情報 清掃・整理、手指消毒の徹底 (消毒 足的なチェックだったのですが、他 を入手し、年度ごとに課題を決め、 液使用状況確認) 、針廃棄、ガウン 者評価が入ることによって、不足な 地道な取り組みを重ねてきた。特に、 や布製品の管理、検査時の手袋着用、 点が客観的にわかるようになりまし スタッフが若いので柔軟な姿勢で新 感染者用医療機器の管理などの状況 た。リキャップ禁止や水回りの清掃 しい対策に取り組めるのが強みだ。 で、 3 段階で評価する。 など、それによって解決したものも 上層部も理解を示し、良いと言われ ラウンドの結果は毎月のミーティ あります。手洗いについては、ブラッ ることは積極的に導入を許可してい ングで報告し、徹底されていない事 クライトで洗い残しを確認できるの る。人間関係が上手くいっているの 柄については、事故対策委員会も介 で、それを使って勉強会を行い、手 も、大病院ではないことのメリット 入したうえで、原因の究明・改善策 指洗浄の大切さを再認識しました。 だろう。何事にもポジティブな姿勢 を検討し、各部署にフィードバック 仕事をしていく上で気がついた点は で話し合うことができ、結果的に、 する。MRSAの人数を毎月調べて 積極的に委員会で検討し、全体へ発 楽しく仕事ができる環境だという。 いるので、その発表もミーティング 信しています」と佐藤さん。 の席で行い、その分析・対策を話し 合う。院内LANが完備しており、 月ごとの感染状況の変化などは全職 講じている。 同院では、感染対策委員長である 「とにかく焦らないことですね。 他の施設が素晴らしいことをやって 小規模病院ならではの 協力体制 いるからといって、それを当院でそ のまま導入しても、上手くいくとは 体力が衰えている高齢の患者さん 限りません。できることから少しず が多いので、いったんなくなった菌 つ改善していくのが当院の基本姿 看護協会のマニュアルをベースに が同じ患者さんから出たりすること 勢。大きな事故が起きてたくさんの し、実践を通して同院に合った形に もある。それを極力防ぐには、やは 損失を抱えることのないよう、日々 作り直す作業が進められている。改 り手袋の着用、手洗い徹底、清掃の の業務の中で、小さな問題点を見逃 訂マニュアルはコンピューター内に 徹底など、基本に立ち戻って対策を さないことが大事だと思います」 ファイル化し、必要なときに見られ 再確認することが大事だ。感染のリ 員が見ることができる。 感染対策マニュアルについては、 6 ▲1985年に建てられた林クリニック。 ホウエツ病院とはLANでつながって おり、情報を共有できる。感染対策 も同様に行っている
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