TMI 中国最新法令情報 ―(2014 年 9 月号)

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TMI 中国最新法令情報
―(2014 年 9 月号)―
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皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。
お客様の中国ビジネスのご参考までに、「TMI 中国最新法令情報」をお届けします。記事
の内容やテーマについてご要望やご質問がございましたら、ご遠慮なく弊事務所へご連絡下
さい。バックナンバーについては、弊事務所のウェブサイトに掲載させていただきますので、
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目次
一.中国最新法令
1. 中央法規
(1) 企業情報公示暫定条例
(2) 企業経営異常名簿管理暫定弁法
(3) 企業公示情報抜取検査暫定弁法
(4) 工商行政管理行政処罰情報公示暫定規定
(5) 国家税務総局による「営業税から増値税への徴収変更における越境課税サービスの増
値税免税管理弁法(試行)」の再公布に関する公告
(6) 全国人民代表大会常務委員会による北京、上海、広州における知的財産権法院の設置
に関する決定
(7) 国外投資管理弁法(2014 年)
二.連載
中国企業法実務/第六弾:知的財産権
(第 8 回
不正競争防止法による保護)
三.中国法務の現場より
外国人就労管理の厳格化(北京)
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一.中国最新法令(2014 年 8 月中旬~2014 年 9 月中旬公布分)
1.中央法規
(1) 企業情報公示暫定条例 1
国務院
2014 年 8 月 7 日公布2
2014 年 10 月 1 日施行
① 背景
昨年末に公布された会社法の改正及び同改正に伴う会社登記制度の一連の改正により、
中国では長期間にわたって実施されていた企業の年度検査制度3がなくなり、同制度の代
わりとなる企業情報の公示制度が構築されつつある。国家工商行政管理総局により公布
された「国家工商行政管理総局による企業年度検査業務の停止に関する通知」 4に伴い、
同局の各地の支局は、有限責任会社、株式有限会社、非公司企業法人、パートナーシッ
プ企業、個人独資企業及びその支店、中国で経営活動を営む外国(地区)の企業及びそ
の他経営単位について、2014 年 3 月 1 日から企業年度検査の業務を停止した。
従来の企業年度検査制度の改革の一環として、国務院は、2014 年 8 月 7 日に「企業情
報公示暫定条例」(以下「暫定条例」という。)を公布し、同暫定条例の公布を受け、国
家工商行政管理総局は、同年 9 月 2 日に「国家工商行政管理総局による『企業情報公示
暫定条例』の徹底実施に関する問題の通知」5を公布した。暫定条例及び通知に基づいた
企業情報の公示を監督・管理する新制度の今後の運用を興味深く注目していきたい。
② 主な内容
暫定条例によれば、企業は、毎年 1 月 1 日から 6 月 30 日までの間に、企業信用情報公
示システムを通じて会社登記機関に前年度の年度報告を送付し、かつ公衆に公示しなけ
ればならず(第 8 条第 1 項)、期限内に年度報告を公示せず、又は工商行政管理部門が命
じた期限内に関係する企業情報を公示しない、若しくは企業公示情報で真実を隠し、虚
偽の情報を公示した場合は、工商行政管理部門が当該企業を経営異常名簿に載せ、企業
信用情報公示システムで公衆に対して開示するとされている(第 17 条)。
また、暫定条例では、企業の年度報告には、以下の内容を含むと定めている(第 9 条
第 1 項)。
(a) 企業の連絡先住所、郵便番号、連絡先電話番号、電子メール
(b) 企業の開業、営業停止、清算等の存続状況に関する情報
(c) 企業が投資し、設立する企業、持分購入の情報
1
《企业信息公示暂行条例》(国务院令第 654 号)
「企業情報公示暫定条例」の公布日は 8 月 7 日であるが、実際に公表されたのは 8 月 23 日であるため、
今月号の中国最新法令で紹介する。
3
「年度検査」は、毎年 3 月 1 日から 6 月 30 日までの間に行うとされ、年度検査の実施にあたっては、年
度検査報告書、年度貸借対照表、損益計算書、営業許可証の副本等を提出し、検査に合格すると営業許可
証に合格の押印がなされることとされていた(改正前の「会社登記管理条例」59 条、60 条)。
4
《国家工商行政管理总局关于停止企业年度检验工作的通知》(工商企字[2014]28 号)
5
《国家工商行政管理总局关于贯彻落实<企业信息公示暂行条例>有关问题的通知》(工商外企字[2014]166
号)
2
2
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(d) 企業が有限責任会社又は株式有限会社の場合、その株主又は発起人が引き受けた
出資額又は払込出資額、出資時期、出資の方法等の情報
(e) 有限責任会社の株主による持分譲渡等の持分変更に関する情報
(f) 企業のウェブサイト及びオンライン経営に従事する場合のオンラインショップの
名称、URL 等の情報
(g) 企業の従業員数、資産総額、負債総額、対外的な保証・担保、所有者権益の合計、
営業収入合計、主要業務の収入、利益総額、純利益、納税総額に関する情報。
さらに、暫定条例では、以下の情報に該当する事実が発生した日から 20 営業日以内に、
企業信用情報公示システムを通じて公衆に公示しなければならないと定めている(第 10
条)。
(a) 有限責任会社の株主又は株式有限会社の発起人が引き受けた出資額又は払込出資
額、出資時期、出資の方法等の情報
(b) 有限責任会社の株主による持分譲渡等の持分変更の情報
(c) 行政許可の取得、変更、更新に関する情報
(d) 知的財産権の質入れ登記の情報
(e) 行政処罰の情報
(f) その他法に従い公示すべき情報
(2) 企業経営異常名簿管理暫定弁法 6
国家工商行政管理総局
2014 年 8 月 19 日公布
2014 年 10 月 1 日施行
① 背景
上記(1)で紹介した「企業情報公示暫定条例」が定める企業経営異常名簿について、国
家工商総局は「企業経営異常名簿管理暫定弁法」(以下「暫定弁法」という。)を公布し
た。暫定弁法では、経営異常名簿に掲載される条件、名簿に載せられた場合の影響及び
対応等について詳細に定められている。
② 主な内容
暫定弁法では、県レベル以上の工商行政管理部門が、①「企業情報公示暫定条例」第
8 条が定める期限内に年度報告を公示しない場合、②「企業情報公示暫定条例」第 10 条
に基づいて命じた期限内に関係する企業情報を公示しない場合、③公示された企業情報
に真実を隠し、虚偽の内容を含む場合、④登記された住所又は経営場所に連絡を取れな
い場合のいずれかに該当する企業を経営異常名簿に載せなければならないと定めている
(第 4 条)。
また、暫定弁法では、工商行政管理部門が企業を経営異常名簿に載せる場合に、その
決定を行うものとし、決定には企業名称、登記番号、名簿掲載の期日、事由及び決定を
下した機関の情報を含まなければならないとされている(第 5 条)。経営異常名簿に載せ
られた企業は、その日から 3 年間公示義務を履行した場合、工商行政管理部門に同名簿
6
《企业经营异常名录管理暂行办法》(国家工商行政管理总局令第 68 号)
3
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の記載を削除するよう申請できるとされている(第 10 条)。
(3) 企業公示情報抜取検査暫定弁法 7
国家工商行政管理総局
2014 年 8 月 19 日公布
2014 年 10 月 1 日施行
① 背景
2014 年 8 月 7 日に公布された「企業情報公示暫定条例」を受け、国家工商行政管理総
局は、企業の情報公示の監督管理、企業が公示した情報に関する抜取検査の法的根拠を
明確にすることを目的とし、同暫定条例、
「登録資本登記制度改革案」等の行政法規及び
国務院の関連規定に基づいて、更に「企業公示情報抜取検査暫定弁法」
(以下「暫定弁法」
という。)を公布した。
② 主な内容
暫定弁法は、国家工商行政管理総局及び省、自治区、直轄市の工商行政管理局が公平・
規範化の原則に基づいて、企業の登記番号等の番号を無作為に抽選し、管轄区域内の 3%
以上の企業を抜き取って検査名簿を作成すると定めている(第 4 条)。また、当該抜取検
査について、範囲を限定しない抜取検査(条件を限定せずに、無作為に抜取検査を実施
する企業の名簿を作成すること。)と範囲を限定する抜取検査(企業類型、経営規模、業
界、地域等の条件を限定した上で抜取検査を実施する企業の名簿を作成すること。)の二
種類に分けている(第 5 条)。
また、暫定弁法では、工商行政管理部門が、企業が公示した情報の抜取検査を実施す
る際に、書面検査、実地検査又はネットワーク上の監査等の方法を使用することができ
るとされ、抜取検査を実施する際に会計事務所、税理士事務所、法律事務所等の専門機
関に委託することができると定めている(第 8 条)。
さらに、暫定弁法では、工商行政管理部門が抜取検査を実施する際に、企業が「企業
情報公示暫定条例」が定める期限内に年度報告を公示せず、又は工商行政管理部門が命
じた期間内に関係する企業情報を公示しない、若しくは公示された情報に真実を隠し、
虚偽の内容を含む場合に「企業経営異常名簿管理暫定弁法」に従い処理すると定めてい
る(第 12 条)。
(4) 工商行政管理行政処罰情報公示暫定規定8
国家工商行政管理総局
2014 年 8 月 19 日公布
2014 年 10 月 1 日施行
① 背景
2014 年 8 月 19 日に国家工商行政管理総局が公布した「工商行政管理行政処罰情報公
示暫定規定」
(以下「暫定規定」という。)は、今年 10 月 1 日から「企業情報公示暫定条
例」と同時に施行されることになる。暫定規定は、全 22 条から構成され、工商行政管理
部門による行政処罰の原則、範囲、内容、手続、監督制度等について定め、工商行政管
7
8
《企业公示信息抽查暂行办法》(国家工商行政管理总局令第 67 号)
《工商行政管理行政处罚信息公示暂行规定》(国家工商行政管理总局令第 71 号)
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理部門が一般的な手続を適用して行った行政処罰の決定に関係する情報について公示す
る旨を定めている。
暫定規定の公布・施行は、当局による市場の監督管理手法の改革、企業信用制度の確
立及び当局による法令執行の透明度の向上等の面でポジティブな意義を有している。と
りわけ、商取引や企業買収等活動において、これまで以上に相手企業やターゲット企業
の信用力、コンプライアンス等に関係する情報をより容易に入手できるため、取引先の
信用調査、商取引の効率化に資する非常に便利な制度であると多方面から評価されてい
る。
② 主な内容
ア
情報公示の範囲
今年 6 月 4 日に公布・施行された「国務院による公平な市場競争の促進及び正常な
市場秩序の維持に関する若干の意見」9では、法律・行政法規等に別途定めがある場合
を除き、市場監督管理部門が一般的な手続に基づいて下した行政処罰の決定又は行政
処罰の決定の変更日から 20 営業日以内に、案件主体の情報、事由、処罰の根拠及び処
罰の結果を開示し、法執行の透明度及び公的機関の信用力を高めることとされている
(第 19 条)。上記若干の意見の同規定に対して、暫定規定では、工商行政管理部門が
一般的な手続に基づいて下した行政処罰の決定の関係する情報は社会に公示しなけれ
ばならず、公示情報には主に行政処罰の決定文書及び行政処罰情報の要点を含むとさ
れている(第 2 条)。また、暫定規定では、行政処罰情報の要点には、行政処罰の決定
文書の番号、行政処罰を受ける当事者の基本情報、違法行為の類型、行政処罰の内容、
行政処罰の決定を下した行政機関の名称及び日付を含むと定めている(第 3 条)。
イ
情報公示の例外
暫定規定では、公示される行政処罰に関する情報は、国家秘密を漏えいし、国家安
全、公共安全、経済の安定及び社会の安定に危害を及ぼしてはならないと定め(第 5
条)、また、営業秘密に関わる内容及び自然人の住所(経営場所と一致する場合を除く。)、
連絡先、身分証明書番号、銀行口座番号等の個人情報を削除しなければならないと定
めている(第 6 条)。
ウ
情報公示の方法
暫定規定によれば、工商行政管理部門が法に従い登記した各種企業、個人事業者、
農民専業合作社等について一般的な手続を適用して下した行政処罰の決定の関連情報
は、企業信用情報公示システムを通じて公衆に公示する(第 9 条)。また、同暫定規定
によれば、第 9 条が定める企業信用情報公示システムで公示する情報以外の一般的な
手続に基づいて下された行政処罰の決定の関連情報に関しては、ポータルサイト又は
専門サイト等で公示する(第 16 条)。
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《国务院关于促进市场公平竞争维护市场正常秩序的若干意见》(国发[2014]20 号)
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(5) 国家税務総局による「営業税から増値税への徴収変更における越境課税サービスの増
値税免税管理弁法(試行)」の再公布に関する公告 10
国家税務総局
2014 年 8 月 27 日公布
2014 年 10 月 1 日施行
① 背景
2013 年 5 月 4 日に、財務部、国家税務総局により公布された「全国において交通運送
業及び一部の現代的サービス業の営業税から増値税への徴収変更試行の税収政策の通
知」11の施行を受け、国家税務総局は、更に同年 9 月 13 日に「営業税から増値税への徴
収変更における越境課税サービスの増値税免税管理弁法(試行)」12を公布した。かかる
管理弁法は、免税の手続、根拠及び企業の責任を明確化し、免税政策の確実な遂行等の
点で大きな役割を果たしてきた。
また、現在において鉄道運送、郵政業及び電信業は既に営業税から増値税に変更して
徴収する試行の範囲に入っており、越境サービスの免税範囲も拡大しつつある。上記免
税管理弁法(試行)が公布された後、各地の税務機関及び対象となる範囲内の業界から
提起された改正意見に基づいて、国家税務総局は、2014 年 8 月 27 日に「営業税から増
値税への徴収変更における越境課税サービスの増値税免税管理弁法(試行)」(以下「管
理弁法」という。)の内容を補足・改善して再公布した。
② 主な内容
改正前の管理弁法に比べ、改正後の弁法では、輸出貨物に対して提供する郵政業サー
ビス、デリバリーサービス及び電信サービスが越境サービスの免税範囲内に追加され、
それぞれのサービス業務の定義が明確化された(第 2 条第 5 項、第 10 項第 1 号、同項第
2 号)。
また、改正後の弁法では、納税者が香港、マカオ、台湾に関係する課税サービスを提
供する場合においても、管理弁法で別途規定がある場合を除き、管理弁法の適用を受け
ると明確に定めている(第 11 条)。
(6) 全国人民代表大会常務委員会による北京、上海、広州における知的財産権法院の設置
に関する決定 13
全国人民代表大会常務委員会
2014 年 8 月 31 日公布
同日施行
① 背景
中国における知的財産権の法的保護は、中国司法制度上の長年の弱点であるとされて
おり、知的財産権侵害の案件数は非常に多いものの、権利者の合法的権利と利益は十分
な法的保護を受けていないと国内外から指摘されている。最高人民法院の統計データに
10
《国家税务总局关于重新发布《营业税改征增值税跨境应税服务增值税免税管理办法(试行)》的公告》(国
家税务总局公告 2014 年第 49 号)
11
《财政部、国家税务总局关于在全国开展交通运输业和部分现代服务业营业税改征增值税试点税收政策的通
知》(财税[2013]37 号)
12
《国家税务总局关于发布<营业税改征增值税跨境应税服务增值税免税管理办法(试行)>的公告》(国家税务
总局公告 2013 年第 52 号)
13
《全国人大常委会关于在北京、上海、广州设立知识产权法院的决定》
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よると、2013 年に全国の法院が受理した各種類の知的財産権関係の一審案件の合計数は
100,800 件であり、そのうち刑事事件は 9,331 件、民事事件は 88,583 件、行政事件は 2,886
件となっている 14。日常の商取引及び日常生活において、知的財産権関連の事件やトラ
ブルが非常に多く、特に中国市場経済の中心部とも言われる北京、上海、広州の各地人
民法院は相当な割合で知的財産権関連の事件を審理しているが、各地法院における審理
基準が統一されていないこと等の問題点が以前から指摘されている。
本決定の公布は、中国の現行裁判制度に大きな影響を与えることとなり、北京、上海、
広州における知的財産権法院の設置は、各地法院による審理基準の違い等の問題を解決
し、知的財産権専門分野の裁判官の資質の向上に資するものと考えられ、中国政府によ
る知的財産権分野への本格的な取り組みと知的財産権保護の決意が窺える。また、知的
財産権分野の学者によれば、北京、上海、広州における知的財産権法院の設置は、知的
財産権上訴法院の設置の前段階であり、今後の中国における知的財産権に対する法的保
護の高度専門化、専業化を意味し、同分野における司法制度及び司法実務の大幅な改善
を期待できるとのことである。
② 主な内容
本決定によれば、知的財産権法院は、特許、植物新品種、集積回路設計、技術ノウハ
ウ等の専門技術の第一審知的財産権民事案件及び行政案件を管轄し(第 2 条第 1 項)、国
務院行政部門の裁定又は決定に異議がある場合の第一審知的財産権授権に関する権利確
認の行政案件は、北京知的財産権法院が管轄する(第 2 条第 2 項)。
また、本決定によれば、知的財産権法院が所在する市の基礎法院の第一審著作権、商
標などの知的財産権の民事及び行政判決、裁定の上訴案件は、知的財産権法院が審理す
る(第 3 条)。知的財産権法院の第一審判決、裁定の上訴案件に関しては、知的財産権法
院の所在地の高級人民法院が審理する(第 4 条)。
(7) 国外投資管理弁法15
商務部
2014 年 9 月 6 日公布
2014 年 10 月 6 日施行
① 背景
2013 年 11 月 12 日に公布された「中共中央による改革の全面的拡大に関する若干の重
要問題の決定」16では、
「企業の対外投資を拡大し、企業の対外投資の主体的地位を確立
し、渉外関係の投資の審査体制を改革する。」と定められている。その後、国務院が同年
12 月 2 日に公布した「政府審査の投資プロジェクト目録(2013 年)」17では、国内企業
が国外で投資して企業(金融企業を除く。)を設立するプロジェクトで、センシティブな
国及び地域、センシティブな業界 18に関係する場合は、商務部の認可が必要とされ、そ
14
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16
17
18
中華人民共和国最高人民法院司法統計データ:http://www.court.gov.cn/qwfb/sfsj/
《境外投资管理办法(2014)》(商务部令 2014 年第 3 号)
《中共中央关于全面深化改革若干重大问题的决定》
《国务院关于发布政府核准的投资项目目录(2013 年)的通知》(国发[2013]47 号)
国外投資における「センシティブな国及び地域」及び「センシティブな業界」とは、通常、投資活動を
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の他の場合は、中央政府が管轄する企業については商務部に対する届出、地方企業につ
いては省レベルの政府に対する届出が必要とされている。上記の決定及び目録の公布を
受け、商務部は、「国外投資管理弁法」を改定し、2014 年 9 月 6 日に公布した。
新しい「国外投資管理弁法」は、2009 年版に比べて大幅に改定され、条文の内容は従
来の 7 章 41 条からスリム化され、認可が必要な国外投資の基準の明確化、認可対象範囲
の縮小、認可期間の短縮、届出手続の明確化等の面において従来の管理弁法より合理化
されている。同管理弁法の公布により、中国国内企業の国外投資活動はより容易に行う
ことができ、国内企業の国外投資活動が一段と拡大していくことが期待できる。
② 主な内容
改正後の管理弁法は、5 章(総則、届出及び認可、規範及びサービス、法的責任及び
附則)の全 39 条から構成されている。
管理弁法第1章(総則)では、立法の根拠、用語の定義及び管轄部門等を定めるとと
もに、企業による国外への投資は自主的に決定し、自ら利益を享受し損失を負担するこ
とが初めて明文化された。第 2 章(届出及び認可)では、届出及び認可の範囲及び手続
について定めている。第 3 章(規範及びサービス)では、改正前の一部のサービス内容
を維持しつつ、企業による社会責任の履行、環境、労働者保護、企業文化の確立、現地
との融合等の内容が追加されている。第 4 章(法的責任)では、企業が虚偽の資料等を
もって不正な手段で届出の手続を行い、
「企業国外投資証書」を取得した場合の処罰措置
が追加されている。第 5 章では、中央企業の定義を明確化し、改正前の第 39 条に相当す
る国外再投資に関連する規定は第 3 章に移行された(第 25 条)。
管理弁法では、商務部及び省レベルの商務主管部門が企業の国外投資の状況により、
届出又は認可管理を行うとし、企業による国外投資がセンシティブな国及び地域、セン
シティブな業界に関わる場合は、審査による管理を実施することとし、それ以外の国外
投資は届出制度で管理すると定めている(第 6 条)。
また、管理弁法では、商務部及び省レベルの商務主管部門は「国外投資管理システム」
を通じて企業の国外投資活動を管理し、届出又は認可を取得した企業に対して「企業国
外投資証書」を発行すると定め(第 8 条第 2 項)、企業が同証書を受領した日から 2 年以
内に国外投資を実行しない場合、当該証書は自動的に効力を失い、投資活動を再開する
ためには届出又は認可を再取得する必要があることを定めている(第 16 条)。
(莊凌云・中国弁護士)
行う際に慎重な判断を要する一定の国・地域及び業種のことをいう。
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二.連載 中国企業法実務
第六弾:知的財産権(第 8 回/全 8 回)
第1回
2014 年 2 月号
発明専利(特許)①
第2回
2014 年 3 月号
発明専利(特許)②
第3回
2014 年 4 月号
外観設計専利(意匠)
第4回
2014 年 5 月号
実用新型専利(実用新案)
第5回
2014 年 6 月号
商標 ①
第6回
2014 年 7 月号
商標 ②
第7回
2014 年 8 月号
著作権
第8回
2014 年 9 月号
不正競争防止法による保護
第8回
不正競争防止法による保護
1.概要
本連載の第 8 回では、中華人民共和国反不正当競争法(以下「中国不競法」という。)に
ついて紹介する。中国不競法は、1993 年 12 月 1 日に施行された法律であり、
「社会主義市
場経済の順調な発展を保障し、公正競争を奨励、保護し、不正競争行為を制止し、事業者
及び消費者の合法的な権益を保護する」ことを目的としている。中国不競法は、商標法や
専利法のように知的財産に対して一定の権利を付与してその保護を図るのではなく、一定
の不正競争行為を類型化して、これを規制することによって知的財産の保護を図る法律で
ある。
昨今、日系企業が不正競争行為によって損害を被る事例や、従業員が商業賄賂の当事者
として処罰を受ける事例が発生しており、中国不競法を理解することが日系企業の中国ビ
ジネスにとって必要不可欠と考えられる。
2.不正競争行為の類型等
中国不競法においても、日本の不正競争防止法と同様に不正競争行為が類型化されてい
る。もっとも、中国不競法と日本の不正競争防止法とでは、不正競争行為とされる行為の
内容に相違がある。以下、中国不競法における不正競争行為の類型を概観したうえで、日
系企業との関係で特に問題となりうる類型について、その具体的内容を説明する。
(1) 不正競争行為の類型
中国不競法において、不正競争とは、事業者が中国不競法に違反してその他の事業者
の合法的な権益を侵害し社会経済秩序を攪乱する行為をいう19。そして、中国不競法は、
不正競争行為の具体的な類型を以下のとおり規定している。
19
中国不競法第 2 条第 2 項
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表1
不正競争行為の類型
不正競争行為の類型
根拠条文
第 5 条各号
【誤認混同惹起行為等】
以下の不正手段を用いて市場取引を行い、競争相手に損害を与える行為
x
他人の登録商標を盗用すること
x
知名商品の特有な名称、包装若しくはデザインを使用し、又は知名商品
の名称、包装若しくはデザインを使用して他人の知名商品と混同させ、
購入者に当該知名商品であるかの誤認をさせること
x
他人の企業名称又は姓名を使用して公衆に当該他人の商品であるかの
誤認をさせること
x
商品の上に品質認定標識、優秀著名標識など品質標識を偽造して盗用
し、又は原産地を偽装して公衆を誤解させる商品品質に係る虚偽表示を
すること
第6条
【公共企業等による公正な競争の排除】
公共企業又は法により独占的地位を有している事業者が、他人に対して自ら
が指定する事業者の商品を購入させ、他の事業者の公正な競争を排除する行
為
第7条
【行政権力の濫用】
x
政府及び所属部門が行政権力を濫用して、他人に対して自らが指定する
事業者の承認を購入させ、他の事業者の公正な競争を排除する行為
x
政府及び所属部門が行政権力を濫用して、他の地方の商品が地域内の市
場に参入し、又は地域内の商品が他の地域の市場に参入することを制限
する行為
【商業贈収賄】
第8条
事業者が賄賂の手段を用いて商品を販売又は購入する行為
第9条
【虚偽宣伝】
x
事業者が広告その他の方法を用いて商品の品質、成分、性能、用途、生
産者、有効期間、産地などに対し公衆に誤解を与える虚偽宣伝を行う行
為
x
広告事業者が明確な又は知りうべき状況の下で虚偽の広告を代理、設
計、製作又は公布する行為
第 10 条
【営業秘密の侵害】
20
以下の手段を用いて営業秘密 を侵害する行為
x
窃盗、誘引、脅迫その他の不正手段を用いて権利者の営業秘密を獲得す
ること
20
公衆に知られておらず、権利者に経済的利益をもたらすことができ、実用性を有し、権利者が秘密保持
措置を講じた技術情報及び経営情報をいう(中国不競法第 10 条第 3 項)。
10
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不正競争行為の類型
x
根拠条文
不正な手段を用いて獲得した権利者の営業秘密を披露、使用し、又は他
人に使用を許諾すること
x
取り決め又は権利者の営業秘密保護に関する要求に違反して保有して
いる営業秘密を披露若しくは使用し、又は他人に使用を許諾すること
【不当廉売】
第 11 条
競争相手を排除する目的で原価を割る価格で商品を販売する行為
21
第 12 条
【抱き合わせ販売】
購入者の意思に反して商品の抱き合わせ販売を行い、又はその他の不合理な
条件を付して商品を販売する行為
第 13 条
【懸賞景品付き販売】
以下の態様での懸賞景品付き販売行為
x
懸賞の存在を偽り、又は意図的に内定者に懸賞を得させる詐欺的手段を
用いて懸賞景品付き販売をすること
x
懸賞景品付き販売の手段を利用して品質の悪い商品を高価格で販売す
ること
x
一等の金額が 5,000 元を超える抽選方式による懸賞景品付き販売をする
こと
第 14 条
【信用棄損】
虚偽の事実をねつ造・流布して競争相手の商業名誉又は商品信用を侵害する
行為
第 15 条
【入札談合】
x
入札談合によって入札価格の引上げ又は引下げを行う行為
x
入札者と入札募集者が結託して公正な競争を阻害する行為
(2) 日系企業との関係で特に問題となりうる類型の具体的内容
上記の不正競争行為に係る各類型のうち、日系企業が知的財産権を侵害される類型と
して特に問題となりうるのは、誤認混同惹起行為規制 22、企業名称使用行為規制 23及び営
業秘密の侵害規制 24である。また、日系企業が中国不競法違反に留意しなければならな
い規制として商業賄賂規制 25が挙げられる。以下、これらの類型の具体的内容について
21
但し、以下のいずれかに該当する場合には不正競争行為とみなされない。
・新鮮又は生鮮食品を販売すること
・有効期限が切れようとしている商品又はその他売行不振の商品を売りさばくこと
・季節性の値下がり
・債務弁済、転業、営業停止等により値下げして商品を販売すること
22
中国不競法第 5 条第 2 号
23
中国不競法第 5 条第 3 号
24
中国不競法第 10 条
25
中国不競法第 8 条
11
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説明する。
① 誤認混同惹起行為規制(中国不競法第 5 条第 2 号)
中国不競法第 5 条第 2 号では、
「知名商品特有の名称、包装、装飾を許諾を得ずに使用
し、又は知名商品に類似する名称、包装、装飾を使用し、他人の知名商品と混同させ、
顧客にその知名商品と誤認させる」行為が不正競争行為とされている26。そして、
「知名
商品」 27とは、「中国国内 28において一定の市場知名度 29 を有し、関連公衆に知られてい
る商品」をいう30。
「中国国内において」知名度を有することが要件とされていることか
ら、日本で知名度を有していたとしても、中国で市場知名度を有していない商品は「知
名商品」とは認められないこととなる。また、「知名商品」の認定に際しては、「当該商
品の販売時期、販売区域、販売額及び販売対象、宣伝を行った継続時間、程度及び地域
範囲、知名商品として保護を受ける状況等の要素」が総合的に考慮される 31。なお、不
正競争防止に係る各地方の条例において、知名商品の認定基準が規定されている例もあ
る。
② 企業名称使用行為規制(中国不競法第 5 条第 3 号)
中国不競法第 5 条第 3 号では、勝手に他人の企業名称又は姓名を使用して公衆に当該
他人の商品であるかの誤認をさせる行為が禁止されている。この点、「企業名称」には、
中国国内企業だけでなく、外国企業の名称についてもこれを商業的に使用する場合には
これが含まれる。また、企業名称を登録する行為も中国不競法の規制対象となる32。
さらに、公衆に誤認を与えるような企業名称は登録することができないことから 33、
本来であれば著名な企業名称を冒用した企業名称は登録できないはずであるが、実際に
は企業名称の冒用は依然として大きな問題として存在している34。
③ 営業秘密の侵害(中国不競法第 10 条第 3 項)
営業秘密として保護されるためには、「公知でないこと」「権利者に利益をもたらすこ
とができ、実用性を備えていること」「権利者が秘密保持措置を講じていること」「技術
情報及び経済情報」という 4 つの要件を具備している必要がある 35。これらの要件の定
義は以下のとおりである。
26
日本の不正競争防止法と比較すると、商品等表示の周知性ではなく、商品自体の周知性が要求されてお
り、また、使用対象を特有な名称、包装、装飾に限定している点で日本の不正競争防止法第 2 条第 1 項第 1
号の要件と異なる点に留意する必要がある。
27
「知名商品」に該当するか否かは、個別の案件ごとに認定されることから、一度認定されたとしても、
必ずしもそれ以降の案件でも認定を受けられるとは限らない点に留意する必要がある。
28
全国レベルの周知ではなく、一定の地域での知名度で足りる。
29
一般大衆における知名度ではなく、当該商品に関連する経営者、消費者の間での知名度を考慮する。
30
「最高人民法院による不正競争の民事案件の審理における法律適用の若干問題についての解釈」(法釈
[2007]2 号)(以下「不正競争解釈」という。)第 1 条第 1 項
31
不正競争解釈第 1 条第 1 項
32
不正競争解釈第 6 条第 1 項
33
企業名称登記管理規定第 9 条第 2 項
34
各地方の工商局が企業名称の登録を所管しているうえ、登録を拒絶するための法律要件が曖昧であるこ
と等から、不正な企業名称登録が認められてしまうものと考えられる。
35
中国不競法第 10 条第 3 項
12
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表2
営業秘密の要件
文言
「公知でないこと」
定義
当該情報が公開されているルートからでは直接入手すること
ができないこと
「権利者に利益をもたらすこ
当該情報が確定的な応用性を備えており、権利者に現実的若
とができ、実用性を備えてい
しくは潜在的な経済利益又は競争上の優位性をもたらすこと
ること」
ができること
「権利者が秘密保持措置を講
秘密保持契約の締結、秘密保持制度の確立及びその他の合理
じていること」
的な秘密保持措置を講じていること
「技術情報及び経済情報」
設計、工程、製品調理法、制作技術、制作方法、管理ノウハ
ウ、顧客名簿、商品供給先情報、生産販売戦略並びに入札募
集・応募の最低基準価格及び入札書の内容等の情報
上記のとおり、ある情報が中国不競法上の営業秘密として保護されるためには、秘密
保持契約の締結その他の秘密保持措置を講じていることが必要である。そのため、対外
的にビジネス上重要な秘密情報を開示する場合には必ず秘密保持契約を締結することが
肝要である。また、社内においても秘密情報の保持を担保するための制度を確立するこ
とが重要である。
④ 商業賄賂規制
中国不競法で不正競争行為とされる「事業者が賄賂の手段を用いて商品を販売又は購
入する行為」とは、具体的には、経営者が商品の販売又は購入のために、財物又はその
他の手段により相手方の会社又は個人との間で贈収賄を行うことをいう。日本では、賄
賂という言葉からは公務員に対する利益供与が想像されるが、中国不競法においては、
賄賂の相手方が公務員であることは要件とされていない点に注意する必要がある。
賄賂の目的物となる財物の意義については、販促費、宣伝費、援助費、科学研究費、
労務費、コンサルタント費、コミッション、費用の精算等のいかなる名義をも問わず、
相手方に対して提供する財物をいうとされている36。また、
「その他の手段」とは、各種
名義での海外旅行等、財物以外の利益提供行為をいう。
日本では様々な接待によってビジネスを円滑に進めるという文化があるが、中国にお
いてもそのような行為が一切禁止されるというわけではない。もっとも、その内容によ
っては、商業賄賂に該当してしまうおそれがある。そこで、適法な贈与(便益の提供を
含む。)と不正競争行為たる贈賄との区別が重要となるが、最高人民法院・最高人民検察
院が制定し、2008 年 11 月 20 日に施行された「商業賄賂刑事事件の処理における法律適
用の若干問題に関する意見」第 10 条では、それらの区別について次の判断基準を定めて
いる。
36
「商業賄賂行為の禁止に関する暫定規定」第 2 条
13
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x
財物の受渡しが発生した背景(双方の親族関係、交友関係の有無並びに過去の交流の状
況及びその程度等)
x
受け渡された財物の価値
x
財物の受渡しの理由、時期及び方式、財物提供者から受領者に対する職務上の請託の有
無
x
受領者が職務上の便宜を利用して提供者のために利益を図った事実の有無
残念ながらかかる基準だけで具体的な事案における適法・不適法の事前判断を行うこ
とは難しいが、実際に財物等を取引相手等に提供する前に、これらの基準を念頭におい
て検討を行うことは必要かつ有益であると考えられる。
(3) 侵害対応
① 行政上の救済手段等
中国不競法に違反する事実が疑われる場合、権利者は、違反行為地、違反構成商品の
製造・販売場所を所管する工商局等の監督検査部門に対し、申立てを行うことができる。
監督検査部門は、自ら又は申立てを受けて、当該商品の製造・販売場所に対して立入調
査を行い、必要に応じて不競法違反を構成すると疑われる商品を押収することができる
37
。
違反行為者に対する処罰の概要は、以下のとおりである。
表3
不正競争行為に対する処罰の概要
行為類型
罰則
根拠条文
他人の登録商標を盗用し、勝手に企業
商標法、産品品質法の規定に従った処
第 21 条第 1 項
名称又は他人の姓名を使用し、品質認
罰
定標識、優秀著名標識等の品質標識を
偽造又は盗用し、原産地を偽装して商
品の品質を公衆に誤解させる虚偽表示
を行った場合
第 21 条第 2 項
勝手に知名商品の特有な名称、包装、
【必要的処分】
デザインを使用し、又は知名商品と類
違法行為の停止
似の名称、包装、デザインを使用して
違法所得の没収
他人の知名商品と混同させ、購入者に
【情状に応じた任意の処分】
当該知名商品であると誤認させた場合
違法所得の 2 倍以上 3 倍以下の過料
営業許可の取り消し
【犯罪を構成する場合】
37
監督検査の主体は原則として工商局であるが、一定の業種については専門性のあるその他の行政機関が
担当することもあり得る(中国不競法第 3 条第 2 項)。
14
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行為類型
罰則
根拠条文
刑事責任の追及
贈賄による商品の販売若しくは購入又
【必要的処分】
第 22 条、商業
は商品の販売若しくは購入時の賄賂の
違法所得の没収
賄賂行為の禁
収受
【情状に応じた任意の処分】
止に関する暫
1 万元以上 20 万元以下の過料
定規定第 9 条
【犯罪を構成する場合】
刑事責任の追及
公共企業又は法により独占的地位を占
(独占事業者に対する処分)
めている事業者が他人に指令して特定
【必要的処分】
の事業者の商品を購入させて他の事業
違法行為の停止
者の公正競争を排除する行為
【情状に応じた任意の処分】
第 23 条
5 万元以上 20 万元以下の過料
(当該特定の事業者に対する処分)
【必要的処分】
違法所得の没収
【情状に応じた任意の処分】
違法所得の 2 倍以上 3 倍以下の過料
虚偽宣伝行為
(宣伝を行った事業者に対する処分)
第 24 条第 1 項
【必要的処分】
違法行為の停止
違法行為の影響を除去する命令
【情状に応じた任意の処分】
1 万元以上 20 万元以下の過料
(広告事業者に対する処分38)
第 24 条第 2 項
【必要的処分】
違法所得の没収又は過料
第 10 条に違反する営業秘密の侵害
第 25 条
【必要的処分】
違法行為の停止
【情状に応じた任意の処分】
1 万元以上 20 万元以下の過料
第 13 条に違反する懸賞景品付き販売
第 26 条
【必要的処分】
違法行為の停止
【情状に応じた任意の処分】
1 万元以上 10 万元以下の過料
38
明らかに虚偽であることを知り、又は知りうべき状況の下で虚偽の広告を代理、設計、製作、交付した
場合に限られる。
15
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行為類型
罰則
入札談合によって公正な競争を排除し
【必要的処分】
た場合
落札の無効
根拠条文
第 27 条
【情状に応じた任意の処分】
1 万元以上 20 万元以下の過料
以上のとおり、不正競争行為に対してはその類型に応じた処分が規定されている。も
っとも、被侵害者の立場からすると、これらの処分によっては、侵害を停止させること
ができるにとどまり、既に被った損害を回復することはできない。
したがって、被害の回復に関しては、後述する民事上の救済手段を利用することとな
る。
② 民事上の救済手段等
不競法違反行為に対しては、民事訴訟を提起して、当該行為の差止め及び損害賠償請
求等を求めることができる 39。損害賠償額の算定が困難な場合には、権利侵害者が権利
侵害期間に権利侵害によって得た利益が権利者の損害額とされる。また、侵害を受けた
権利者がその合法的な権利を侵害した不正競争行為を調査するために支出した適正な費
用は侵害者の負担とされている。
(4) 中国不競法による保護の実例
最後に、商標法では保護されない範囲について、中国不競法で保護された事例 40を紹
介する。本件は、フランス企業がある商品に係る外国語名称を商標登録したものの、そ
の外国語名称に対応する中国語名称を商標登録していなかった場合に、当該商品の中国
語名称が中国不競法第 5 条第 2 項にいう知名商品の特有の名称に該当するか否かが問題
となった事案である 41。以下、その概要を説明する。
① 事案の概要
フランス企業である SOCIETE CIVILE DE CHATEAU LAFITE ROTHSCHILD(以下
「LAFITE 社」という。)は、「LAFITE」という名称の商標(商品分類は第 33 類「アル
コール飲料(ビールを除く)」)を中国において登録していた。そして、LAFITE 社は、
2006 年に中国市場に参入して以降、
「LAFITE」の中国での名称を「拉菲」と定め、中国
国内において同社のワインに関するプロモーション活動を行い、当該ワインを流通させ
ていた。そして、LAFITE 社のワインについては、中国の検索サイトでも相当数の関連
記事が掲載されている状況にあった。
他方、金鴻徳公司は、2009 年 9 月 28 日及び同年 10 月 29 日に国家工商行政管理総局
商標局に「拉菲世族」及び図形標識の商標登録を出願し、国家工商行政管理総局商標局
39
中国不競法第 20 条
湖南省高級人民法院(2011)湘高法民三終字第 55 号民事判決
41
当該事案では、その他の争点も複数存在するが、今回は不競法との関係で特に重要と思われる点に絞っ
て紹介する。
40
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は、2009 年 10 月 26 日及び同年 11 月 11 日に、それぞれ登録出願受理通知書を発行した。
金鴻徳公司は、外包装に「取扱業者:深セン市金鴻徳貿易有限公司」、
「LAFITE-FAMILY」、
「拉菲世族子爵 2007 干紅葡萄酒」等と表記した箱入りのワイン等を製造していた。
また、湖南生物医薬集団健康産業発展有限公司(以下「生物医薬公司」という。)は、
金鴻徳公司から、同社が製造した拉菲世族シリーズの商品を購入し、これを消費者に対
して販売していた。なお、この際、生物医薬公司は、金鴻徳公司からフランスの拉菲世
族酒庄有限公司の中国独占総代理である授権証書、
「拉菲世族」及びその図形標識の商標
登録出願受理通知書、拉菲世族シリーズ商品の衛生証書の提出を受けていた。
このような状況下で、LAFITE 社は、金鴻徳公司及び生物医薬公司に対し、商標の使
用停止、不正競争行為の停止、損害賠償、新聞等への声明掲載による悪影響の払拭を求
めて訴訟を提起した。
② 判決の要旨
ア
知名商品該当性
LAFITE 社が生産した「LAFITE」ワインは、中国のワイン市場において比較的高い
知名度を有しており、中国不競法にいう知名商品として認定できる。
イ
「拉菲」が「LAFITE」ワインの特有の名称であるか否か
「拉菲」は「LAFITE」の文字の直訳であり、LAFITE 社は、その製品において中国
語の「拉菲」を「LAFITE」ワインの名称として実際に使用しており、自社の宣伝資料
及びウェブサイトにおいても「LAFITE」ワインを「拉菲」ワインと呼称している。ま
た、国内の関連媒体及び百度百科、維基百科等の中国語のウェブサイトが「LAFITE」
ワインを取り上げるときは、一致して「LAFITE」ワインを「拉菲」と呼称し、
「LAFITE」
ワインを「拉菲」以外で、またその他の中国語の名称を使用した証拠はない。このた
め、「拉菲」は事実上「LAFITE」ワインという知名商品に唯一対応する中国語呼称で
あり、商品の出所の識別力を有しており、「LAFITE」ワインという知名商品の特有の
名称であると認定する。
ウ
誤認混同
金鴻徳公司は、そのワイン商品に「拉菲世族」の文字を際立たせて使用したが、か
かる文字は「拉菲」の 2 文字を完全に含んでおり、
「拉菲」の文字がかかる組み合わせ
文字の主な識別及び呼称部分を構成していることから、両者は類似している。金鴻徳
公司は許諾を得ず、同一の商品において無断で他人の知名商標に類似した商品名称を
使用し、他人の知名商品との混同をもたらし、購入者にその知名商品と誤認させた。
エ
損害賠償額
双方当事者はいずれも権利侵害者が権利侵害により得た利益及び被権利侵害者が被
った損失を証明することができないため、原審法院が法定の方法により本件の賠償額
を確定したことは正しい。具体的な賠償額について、原審法院がかかる権利侵害行為
による損失を併せて、商標及び知名商品特有の名称の知名度、権利侵害の状況、主観
的故意及び権利保護のために支払った必要な費用等の状況を総合し、金鴻徳公司の
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LAFITE 社に対する賠償額を 30 万元と決定したことは不当でない42。
③ 解説
本件で LAFITE 社は、「LAFITE」ワインの名称について、「LAFITE」という名称につ
いては商標登録を行っていたものの、これに対応する中国語名称「拉菲」については商
標登録を行っていなかった。そのため、金鴻徳公司が「拉菲」という名称を用いてワイ
ンを販売する行為については、商標法で対処することができなかったという点に特徴が
ある。
本件では、そのような場合であっても①外国語の登録商標を使用した商品が中国不競
法上の「知名商品」に該当し、②被告が使用していた中国語名称と当該知名商品の外国
語名称とが唯一の対応関係にある場合には、中国不競法第 5 条第 2 号によって保護され
ることが示されたといえる。商標法で保護されない範囲について中国不競法を根拠に知
的財産の保護が図られた例として、本件は参考になると考えられる。
但し、このような立証は容易ではない場合も多いと考えられることから、日系企業が
中国で商標登録を行う際には、日本語や英語の名称だけでなく、中国語の名称について
も商標登録を行うべきである。
[応用編]中国不競法の改正
中国不競法は、1993 年の施行以来、一度も改正されていない法律である。同法制定時
には、中国には独占禁止法が存在していなかったこともあり、談合、抱き合わせ販売、
不当廉売といった独占禁止法の分野に係る条項も中国不競法に規定されている。もっと
も、中国でも 2008 年 8 月 1 日に独占禁止法が施行されており、中国不競法において独占
禁止法関連の条項を規定する意義は乏しい状況になっている。また、その他の条項につ
いても、多くの点で時代に即していない状況となっている。
そのため、中国政府は、現在、中国不競法の改正に向けた作業を行っている。2003 年
の第 10 回全国人民代表常務委員会では、中国不競法の改正が 5 年立法計画に組み入れら
れ、2013 年の全国人民代表常務委員会では、中国不競法の改正が速やかに作業を行う必
要のある事項とされている。
現時点では、中国不競法の具体的な改正時期は明らかになっていないが、同法は知的
財産に関する重要な法律であり、その改正が日系企業の中国ビジネスの現場にも影響を
及ぼすことは必至であると考えられるため、その動向に今後も注目する必要がある。
(中城由貴・弁護士、李成慧・中国法顧問)
42
生物医薬公司については、原審において、金鴻徳公司から購入した商品が権利侵害商品であると知りな
がら購入した証拠はないとの理由から、商標法及び不正競争解釈第 17 条第 1 項に基づき、賠償責任を負わ
ないとされている。
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三. 中国法務の現場より
外国人就労管理の厳格化(北京)
北京市は 9 月 15 日、外国人の就労管理を厳格化する「北京市外国籍人員雇用活動の一
層の強化に関する通知」を発表した(http://zhengwu.beijing.gov.cn/gzdt/gggs/t1367461.htm)。
同通知は、北京市内で就業する外国人の資格条件を明確化するとともに、外国人を使用
する事業者に対して就労管理の強化を義務付けており、日本人を含む「外国籍人員」を雇
用している日系企業の運営に少なからぬ影響があると思われるため、ここで紹介したい。
まず、同通知は、北京市内で就業する外国人に対して、①健康で、犯罪記録が無く、年
齢が 18 歳~60 歳であること、かつ②学士又はそれ以上の学位(大卒以上)及び関連業務
における 2 年以上の職務経験を有すること、という条件を課している。これらの条件には、
例外(北京市が経済や社会の発展のために緊急に必要だと認めた人材は制限を緩和できる
等)が設けられているものの、年齢・学歴・職務経験が条件を満たさない外国人の場合、
就業証の発行・更新が認められない可能性があるため、注意が必要である。
次に、同通知は、外国人を雇用する事業者に対して、①労働契約(契約期間 5 年以下)
を締結し、社会保険に加入すること、②労働契約書、パスポート写し、就業証写し、有効
な臨時住宿登記票、国外の無犯罪記録証明書、出退勤記録、社会保険料納付記録、給与支
払記録等をまとめた人事関連書類(「档案」)を作成・管理すること、③外国人が事故や事
件に遭遇した場合の緊急対応策を作成し、事故等の発生時には直ちに人力資源社会保障局、
外事弁公室、公安、教育委員会等の関連部門に報告すること、の各義務を課している。
さらに就業証に関して、①事業者は労働契約の解除・終了日から 10 日以内に就業証の
抹消申請を行うこと、②外国籍人員が勝手に離職し 15 日を超えても連絡が取れず、さら
に 10 日間の期限を設定した公示をしても連絡が無い場合は、人力資源社会保障局に就業
証の抹消申請を行うこと、③就業証の更新時には、期間満了前 60 日以内に更新手続申請
を行うこと、④外国籍人員の就業ビザ、就業証が紛失・毀損・盗難にあった場合、又は事
業者の登記情報、外国籍人員居留許可の登録事項に変更が発生した場合、事業者は 10 日
以内に申請手続を行うこと、といった義務を定めている。
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同通知によると、これらの義務に違反した場合は、関連法規に基づいて処罰を受け、ま
た、事業者の対応が不十分な場合には北京市人力資源社会保障局等の関連部門によって、
法定代表者の面談・改善の督促・管理の強化等の処分がなされる旨が規定されている。
同通知が発表されてからまだ日が浅いため、現時点では日系企業が同通知に基づく指導
を受けた等の情報は入手していないが、今後同通知に基づいて監督・取締りが強化される
ことが予想される。北京市に所在する企業におかれては、事業者に課せられている各義務
を把握したうえで、日々の業務において遵守するよう、ご注意されたい。
(野中信孝・弁護士)
TMI 中国最新法令情報―2014 年 9 月号―
発
行:TMI 総合法律事務所
監
修:何連明・外国法事務弁護士
編集主幹:山根基宏、中城由貴・弁護士
発 行 日:2014 年 9 月 30 日
20
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