フランス最新法令情報 - TMI総合法律事務所

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フランス最新法令情報
(発行日:2012 年 8 月)
皆様には、日頃より弊事務所へのご厚情を賜り誠にありがとうございます。
お客様のフランスビジネスのご参考までに、
「TMIフランス最新法令情報」をお届けします。
記事に関するご質問がございましたらご遠慮なく弊事務所へご連絡ください。また、今後
取り上げるテーマについてのご要望もお寄せいただけましたら幸いです。
目次
1. 2012 年の補正財政法案の可決
2. セクシュアルハラスメントの新たな定義の導入
3. 家賃の修正の上限に関する法改正
4. 法定最低賃金(SMIC)の改定
1. 2012 年の補正財政法案の可決
2012 年 7 月 31 日、フランスの国民議会(下院)は、2012 年の補正財政法案を
可決した。同法律は、憲法院の審査(一部を除き合憲の判決)を経て、8 月 17
日に官報に掲載された。同法律の一連の増税策により、72 億ユーロの追加の歳
入と 15 億ユーロの支出の凍結が見込まれる。
同法律により企業に適用される主な措置には以下のものがある。
-
2012 年 10 月 1 日から実施が予定されていた付加価値税(TVA)率の 1.6%
引き上げが撤回された。
-
従業員の残業代(補足勤務時間及び超過勤務時間[1])にかかる社会保障料の
雇用主負担金の免除が、2012 年 9 月 1 日以降廃止される(但し、従業員数が
20 名未満の中小企業における雇用主負担金については廃止の対象から除外
される)。さらに、補足勤務時間及び超過勤務時間にかかる所得税の免除が
2012 年 8 月 1 日以降廃止される。
さらに、ストックオプションの付与又は無償株式の付与については、受益者(従
業員及び経営幹部)の所得に社会保障料が課されるが、その税率が 8%から 10%
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に引き上げられる。同じく、雇用主の社会保障料負担は 14%から 30%に引き上
げられる。
従業員の貯蓄制度(épargne salariale)、利益分配金(intéressement)及び利益参
加(participation)などの措置についても、雇用主の利益分配金固定負担率(forfait
social)の負担が 8 %から 20 %に引き上げられた。
2. セクシュアルハラスメントの新たな定義の導入
2012 年 7 月 31 日、セクシュアルハラスメントに関する改正法案が、国民議会で
最終的に可決された[2]。
当該法案は、5 月 4 日に憲法院によって犯罪の成立要件が正確性を欠くと判断さ
れ廃止されたセクハラ罪を復活させるもので、フランス刑法典 222-33 条にセク
ハラの再定義が行われた。セクハラの新たな定義により、セクハラ罪は、性的
な意味合いを持つ発言又は行動の反復、及び、「性的な脅し」により成立しう
る[3]。
セクハラ行為は、2年の禁固刑、及び 30,000 ユーロの罰金が課される(加重情
状がある場合には、3年の禁固刑及び 45,000 ユーロの罰金)。
なお、憲法院が刑法典 222-33 条を廃止する判決を下したことにより、2012 年 5
月 5 日以前に有効であった定義に基づいてセクハラ罪に該当し、最終的に判決
が出ていない全ての行為は公訴の対象とならない。
3. 賃料の変動の上限の設定
賃貸借関係の改善を目的とする 1989 年 7 月 6 日の法律第 18 条に基づき、政府
はデクレ(政令)により、賃料のレベル及び変動がフランスの他の地域と比べ
て異常な状況にある地理的ゾーンにおいて、住居の再賃貸借又は賃貸借契約の
更新の際の賃料の変動の上限を設定する権限を持つ。
先の大統領選における公約の一つとして掲げられていたため、政府は当該権限
を使って 2012-894 号デクレを発令し、空き物件の賃貸借又はデクレの付属書類
にリストされるコミューン(市町村)について、賃貸借契約の更新の際の賃料
の変動の上限を設定した。
但し、デクレは、工事の実施の場合、再賃貸借又は賃貸借の更新については元
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の賃料が低く評価されていた場合において、この上限を免除する規定を設けて
いる。これらの場合でも、値上げの額については自由に決定することはできな
い。
また 、 紛争の場 合には、 賃貸人と賃借人は、県の和 解委員会( commission
départementale de conciliation)に訴えることができる。
このデクレは、2012 年 8 月 1 日に発効した。
4. 法定最低賃金(SMIC)の引き上げ
法定最低賃金(SMIC)の引き上げに関するデクレ(政令)が 2012 年 6 月 29 日
に官報に掲載され、2012 年 7 月 1 日から SMIC が2%引き上げられた。
引き上げ後の時間当たりの最低賃金額(税込)は、9.40 ユーロ(2012 年 1 月 1
日の改定後は 9.22 ユーロだった)となった。また、法定労働時間 35 時間の最低
月額は 1 425.67 ユーロ(税込)になる(2012 年 1 月 1 日の改定後は 1 398.37 ユ
ーロであった)。
[1] 超過勤務時間は、フルタイムの従業員が、法定労働時間の 35 時間を超えて
行った労働時間で、割増賃金又は代償休暇、及び残業時間が年間枠を超えた場
合に義務的代休を付与する義務が発生する。他方、補足勤務時間は、パートタ
イムの従業員が、労働契約に定められた労働時間を超えて行った勤務時間であ
る。
[2] セクシュアルハラスメントに関する 2012 年 8 月 6 日の法律第 2012-954 号
[3] 刑法典第 222-33 条「セクシュアルハラスメントは、他人に対し、反復して、
性的意味合いを持つ言動又は行動を強制し、(言動又は行動の)下劣な又は侮
辱的な性格のためにその者の尊厳を侵し、若しくはその者にとって威圧的、敵
対的又は侮辱的な状況を作り出す行為である。」
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デヴィ ル ドゥサール
パリ弁護士会所属弁護士
東京弁護士会登録外国法事務弁護士
[email protected]
千田 多美
パリ弁護士会所属弁護士
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