猫と犬の感染症とワクチン

猫と犬の感染症とワクチン
日本臨床獣医学フォーラム
石田先生 の講義
やまだ動物病院
獣医師 山田 賢次
狂 犬 病

病因
・狂犬病ウイルス(Family Rhabdovirlaea)

感染源
・感染動物唾液
・感染動物脳神経系組織
狂 犬 病

感染経路
・咬傷
・感染動物(アライグマ、スカンク、コウモリなど)による咬傷
・刺激性攻撃ー異常行動ではない。怒らせた、恐怖など
・非刺激性攻撃ー狂犬病を疑う異常行動
・非咬傷
・粘膜との感染源の接触、外傷性皮膚
・生ウイルスワクチンでの発症例あり
・単なる接触性では感染は起こらない
・感染動物の血液、尿、便はウイルス陰性
狂 犬 病

疫学
・1981年以降アメリカでは猫の感染例が犬
を上回る
・人間への感染源で最も多いのはコウモリ
・21/36 例 (1980-1971)
狂 犬 病

1996年のアメリカにおける感染例
・野生動物 7124例
・アライグマ
・スカンク
・コウモリ
・キツネ
・飼育動物 674例
・猫 266例
・牛 131例
・犬 111例
・小型野生動物
・リス 24例(1971-1994)
狂 犬 病

病理発生
・潜伏期
・若い猫では短い
・CNS近くや末梢神経の豊富な部位の
感染では短い
・暴露ウイルス量が多ければ短い
・短いもので9日、長いもので1年
・通常は4-6週
狂 犬 病

発症
・よく鳴く(声の変化はある場合と無い場合)
・目の様子(きびしい表情、うつろな目、神経質)
・元気消失、食欲消失
・後肢弛緩性麻痺、不全麻痺
・脱力、協調性運動不能
・転帰
・発症後 8-10日で死亡
・治療
・禁止
狂 犬 病

診 断
・迅速な生前診断法はない
・脳すべてを冷蔵(非冷蔵)で提出
・間接蛍光抗体法でウイルス抗原を検出
・アンモン角の病理でネグり小体検出
狂 犬 病

隔離
・National Association of Public Health
Veterinarians
・”Compendium of Animal Rabies Control” 1997
・猫による人間の咬傷事故
・米国ではワクチン接種、非接種で異なる
・ワクチン接種猫は10日間観察
・この間ワクチン追加は禁止
・神経症状がみられた場合安楽死、剖検
・非接種猫は安楽死、剖検
狂 犬 病

野生動物による猫の咬傷事故
・感染が疑われる動物に咬まれた場合
・ワクチン接種猫にはワクチン追加接種
・飼い主のもとで外に出さず4-5日間観察
・非接種猫は安楽死、剖検か
・または6ヶ月の隔離
・ワクチン接種後1ヶ月で帰宅可
トキソプラズマ症

病因
・Toxoplasma gondii (球虫類寄生虫)
・感染源
・感染動物由来の組織(豚など)
・組織内のシストの接種
・経口感染
・経口
・疫学
・ほぼすべて温血動物に感染
・猫科のみですべての生活環が見られる(感染性オーシスト排泄)
トキソプラズマ症

病理発生
・潜伏期
・猫は通常発生しない
・発症
・腸管からリンパ、血液に侵入
・肺や肝臓内で壊死巣形成
・元気消失、食欲消失、肺炎、ブドウ膜炎、網 膜出血
・転帰
・一部は死亡
・多くは回復
トキソプラズマ症
・診断
・X線(肺)、血液化学検査(肝酵素)
・IgM抗体の検出(感染から3ヶ月)
・IgG抗体の検出(感染から4週間以降)
・クリンダマイシンへの反応
・細胞診による虫体検出
・治療
・クリンダマイシン
25mg/kg bid, po 3W
トキソプラズマ症

公衆衛生
・抗体陽性の猫は以前にオーシストを排出した可能性
・猫は便中にオーシストを感染後3週間しか排出しない
・したがって再度放出する可能性は低い
・オーシストは排出後24hたって感染力をもつように
・オーシストは70℃ 10分間の加熱で死滅
・人間の感染は生肉由来が主体
トキソプラズマ症

公衆衛生
・正常人は免疫の上昇で、虫体は組織内シスト形成(無症
状)
・HIV感染者では時に問題を起こす
・妊娠中の初感染で虫体は胎児感染
・妊娠中に猫を飼っても、便の始末しても通常の注意で危
険無し
・抗体を持った人は感染の危険無し
・抗体陰性の人は、土、生肉には注意
・HIV感染者の発症は以前のシストの再活性
・猫のい飼育とHIV感染者の発症には相関性はない
猫ひっかき病

病因
・Bartonella hensalae (グラム陰性菌)

感染源
・猫の一過性菌血症
・歯肉炎から口腔内に菌が出現
・グルーミングにより爪につく
猫ひっかき病

感染経路
・猫によるひっかき、または咬傷から人間が感染
・猫間の感染はノミの可能性
・ノミから人間が感染する可能性は低い
・ノミ糞と傷口の摂取では感染が可能
猫ひっかき病

疫学
・米国の猫飼育頭数5700万に対して
人間で年間22,000例の発症報告
・無症状のものはそれ以上に存在
・猫の抗体陽性率は場所により異なる
(最高50%)
・最高41%の猫が菌血症を持つ
猫ひっかき病

病理発生
・発症
・猫は通常発症しないで自然治癒
・人間ではリンパ節腫大、発熱
・転帰
・ほぼすべての人間で回復
・時にAIDS患者では重大な疾患(細菌性血管腫)
猫ひっかき病

診断
・蛍光抗体法またはELISAによる抗体検出
・細菌培養は5%Co2下血液寒天培地で最長56日かかる
・PCRが可能であるが検査機関では行なわれて いない。

治療
・ドキシサイクリン、エリスロマイシン、ペニシリン
・シプロフロキサシンなどが人間でやや効果あり
・猫では治療効果は知られていない
猫ひっかき病

公衆衛生
・子猫の感染が多いので咬ませないように注意する
・万一子猫から感染しても、子猫の感染は次第に無くなる
・野良猫、外猫に咬まれないようにする
・ノミのコントロールを行なう
・猫に人間の傷口を舐めさせない
・HIV感染者でもこれらの注意で猫を飼ってもよい
・室内飼いのノミのいない成猫ならより安全
Q 熱

病因

感染源、感染経路
リケッチア(Coxella burnetti)
・ダニが関与
・牛、羊、猫、犬、カラスなどが菌を運ぶ⇒吸入感染
・猫が流産した場合には、この病原体が排泄されている
可能性
Q 熱

病理発生
・人間ではインフルエンザのような症状が続く
・通常は2週間くらいで自然に治る
・免疫低下の人間では重い病気を併発することも
有る
Q 熱

症状 (人)
・頭痛、発熱、筋肉痛
・下痢、関節痛、紅斑
・肺炎、肝炎
Q 熱


診断
・血清学的診断
治療
・テトラサイクリン
・クロラムフェニコール
・エリスロマイシン
・トリメトプリムサルファ
皮膚糸状菌


病原
・Microsporum canis (98%)
・Microsporum gypseum
・Trycophyton mentagrophytes
感染源、感染経路
・土壌中に存在
皮膚糸状菌

症状
・脱毛、紅斑、丘疹
・人間では典型的な輪癬

診断
・病毛の顕微鏡検査
・サブロー寒天培地による培養

治療
・毛刈り、シャンプー、薬浴
・抗真菌薬(イトラコナゾール)
・グルセフォフルビンはFIV感染猫には禁忌
猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)

病原
・ヘルペスウイルス科
・Feline herpesvirus-1 (FHV-1)

感染源
・感染猫の涙、唾液、鼻汁

感染経路
・接触感染、人間の手

潜伏期
・3-4日
猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)

病理発生
・発症から3-4日(感染後6-8日)で症状ピーク
・症状は急性のくしゃみ、眼鼻分泌液など
・細菌感染の合併症がなければ急性経過は終了(感染後12日まで)
・終結後キャリアーになりやすい(神経節に潜伏)

診断
・臨床症状
猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)

治療
・猫インターフェロン
・1MU/kg sc または微量点眼点鼻
・抗生物質
・消毒にはアルコール、洗剤など有効
猫カリシウイルス感染症(FCI)

病原
・カリシウイルス科カリシウイルス属
・Feline callcivirus

感染源
・感染猫の涙、唾液、鼻汁

感染経路
・接触感染、人間の手

潜伏期
・約3日
猫カリシウイルス感染症(FCI)

病理発生
1)上部気道型
2)潰瘍形成型
3)肺炎型
4)腸管感染型
5)子猫跛行症候群
6)流産
・通常は急性経過で10-14日の経過で治療
・重篤は肺炎で死亡するものもある
・終結後、口峡部持続感染がある
猫カリシウイルス感染症(FCI)

診断
・臨床症状

治療
・猫インターフェロン
・1MU/Kg scまたは微量点眼点鼻経口
・抗生物質
・消毒にはアルコール、洗剤無効
・次亜塩素酸ソーダ、ホルマリンなど有効
猫汎白血球減少症

病原
・パルボウイルス属ネコパルボウイルス
(猫汎白血球減少症ウイルス)

感染源
・感染猫の便

感染経路
・接触感染、人間の手
・経鼻、経結膜、また経口

潜伏期
・2-10日
猫汎白血球減少症

臨床症状
・白血球数は4日までに4000以下に下降
・多くは軽微の症状または無症状
・最初の症状は発熱(40℃以上)
・嘔吐
・下痢は不規則
・妊娠の最後の1週または生後9日までに感染した猫
*小脳形成不全に起因する運動失調
猫汎白血球減少症
診断
・症状ならびに白血球減少
 治療

・猫インターフェロン ・・・iv 脱水が激しい
・抗生物質:クロマイまたはアンピシリン+ゲンタマイシン
・消毒にはアルコール、洗剤無効
・次亜塩素酸ナトリウム(0.175%=32倍希釈)で10分以内に
死滅
・ホルマリン(4%)でウイルスは10分以内に死滅
猫免疫不全ウイルス(FIV)

病原体
・レトロウイルス科レンチウイルス属
・猫免疫不全ウイルス
・Feline Immunodeficiency Virus : FIV
猫免疫不全ウイルス(FIV)
・1986年米国カリフォルニア州ベタルマ
・猫の多頭飼育家庭
・サンフランシスコから導入の猫が羅患
・同一ケージ内でAIDS様疾患の多発
・猫Tリンパ球指向性レンチウイルス(FTLV)の分離
・1987 Pedersen et al
猫免疫不全ウイルス(FIV)

感染
・感染源
・血液
・血清
・血漿
・脳脊髄液
・唾液
猫免疫不全ウイルス(FIV)

感染
・接触水平感染
・他のウイルスに比べ伝播の効率は悪い
・3年間の同居感染
・1/15 例で感染が成立
・0/31 例で感染が成立
猫免疫不全ウイルス(FIV)

感染
・交尾による異性への感染はあっても少ない
・新生子期の感染はまれ
・非経口的接触すると容易に感染
・咬傷が最も効果的な伝播様式と考えられる
猫免疫不全ウイルス(FIV)

疫学
・アメリカ
・カナダ
・ヨーロッパ
・南アフリカ
・日本
・中国
・台湾
・オーストラリア
・ニュージーランド
・南米
猫免疫不全ウイルス(FIV)

疫学
・過去の保存血清ー最古の陽性例
・ヨーロッパで1975-1976年
・オーストラリアで1972年
・アメリカ/日本で1968年
猫免疫不全ウイルス(FIV)

疫学
・猫の一般集団(健康猫)のFIV感染率
・スイス
・北米
・NZ
・日本
1%以下
1-5%
9%
12%
・イタリア
12%
猫免疫不全ウイルス(FIV)

疫学
・外猫と内猫の比
・日本
・アメリカ
19:1
7.2:1
・性差
・雄猫の感染は雌の2倍以上
猫免疫不全ウイルス(FIV)

A,B,C,D,E のサブタイプ

A,Cは他のものに比べ病原性が高い
猫免疫不全ウイルス(FIV)

日本
A-Dまでの4つ


アメリカ
A,B
カナダ
B,C
オーストラリア
A
猫免疫不全ウイルス(FIV)

FIV感染症の臨床病期分類
・Ishida, Tomoda ,1991
・急性期 (AP)
・無症状キャリアー (AC)
・持続性全身性リンパ節腫大 (PGL)
・AIDS関連症候群 (ARC)
・後天性免疫不全症候群 (AIDS)
猫免疫不全ウイルス(FIV)

感染後2週から最大1年程度
・発熱
・リンパ節腫大
・周期性白血球減少症
・下痢
猫免疫不全ウイルス(FIV)
急性期 (AP)
・幼若動物

・激しい細菌感染
・細菌性過急性腸炎
・細菌性肺炎
・死亡例あり
猫免疫不全ウイルス(FIV)

無症状キャリアー (AC)
・急性期後臨床症状消失
・持続性に抗体陽性、ウイルス分離陽性
・持続期間
・平均2-4年位またはそれ以上
無症状キャリアー (AC)の発症

AC期の猫11頭
・2年間観察
・病気の進展は 4/11例
・年間発症率
18%
猫免疫不全ウイルス(FIV)

持続性全身性リンパ節腫大 (PGL)
・持続期間は2-4ヶ月
・PGLと同時に他の感染症を発現するのも
あり
猫免疫不全ウイルス(FIV)

AIDS関連症候群 (ARC)
・PGL期に引きこもる
・発症猫の平均年齢は約5歳
・PGL
・慢性口内炎
・慢性上部気道疾患
・慢性化膿性皮膚疾患
・原因不明発熱
・体重減少
・軽度から中程度の貧血
猫免疫不全ウイルス(FIV)

後天性免疫不全症候群 (AIDS)
・ARCに続く病気
・著名な削痩
・貧血、あるいは汎血球減少症
・細胞性免疫不全を示唆する日和見感染または
腫瘍
猫免疫不全ウイルス(FIV)

後天性免疫不全症候群 (AIDS)
・抹消血CD4陽性T細胞数
・200μl未満
猫免疫不全ウイルス(FIV)

免疫学的変化
・リンパ球数の減少
・AC期からARC期にかけては正常範囲内
・AIDS期では著明に減少
・CD4+/CD8+比は低下
・CD4+T細胞は感染初期から除々に低下
・AIDS期には著明な減少 (<200μl)
・CD8+T細胞は感染初期には低下しない
・AIDS期末期に低下
猫免疫不全ウイルス(FIV)

免疫学的変化
・体液免疫
・初回免疫にTリンパ球依存性抗原(ヘルパーT細胞必
要)に対する抗体産生能は低下
・すでに免疫が出来ているものには影響されにくい
・無症状キャリアーにFVR-CPワクチン接種で抗体上昇が見られる
・Tリンパ球非依存性抗原に対する抗体産生能は影
響されない
猫免疫不全ウイルス(FIV)

感染猫に見られる疾患
・約半数が口腔内、とくに歯肉、歯周組織、
頬、口峡部または舌の慢性進行性感染
猫免疫不全ウイルス(FIV)

感染猫にみられる疾患
・慢性呼吸器感染症
・発症猫の約1/4に見られる
・慢性気管支炎
・細気管支炎
・肺炎
・鼻炎
・結膜炎
猫免疫不全ウイルス(FIV)

感染猫に見られる疾患
・皮膚および外耳道も慢性感染症
・全身性の疥癬症
・デモデックス症
・慢性の膿瘍
・慢性膿炎
・膀胱炎、尿路感染症
・神経症状
・FIV陽性発症猫の約5%
猫免疫不全ウイルス(FIV)

診断
・抗体の検出により行なわれる
・スクリーニング
・市販のELISA
・確認検査
・感染細胞を抗原とした蛍光抗体法
・精製ウイルス抗原でのWB法
・3ヶ月齢以前では抗体検査を行うべきではない
・移行抗体の問題
猫免疫不全ウイルス(FIV)

治療
・AIDS期の猫
・対症療法
・補助療法
猫免疫不全ウイルス(FIV)

予防
・感染猫との接触を絶つ
・室内飼育
・新規導入時の検査
・ワクチン
猫免疫不全ウイルス(FIV)

公衆衛生
・FIVは猫を宿主とする猫固有のウイルス
・FIVは人間に感染しない
・FIVは抗原的にも遺伝子レベルでも
HIVとは異なる
猫伝染性腹膜炎(FIP)

病原
・コロナウイルス科コロナウイルス属
・猫伝染性腹膜炎ウイルス (FIPV)
感染
・低病原性コロナウイルスげ経口経鼻感染
・通常は一過性感染で終結、抗体価下降
・低病原性コロナウイルスから突然変異でFIPVが個体内
で発生
・免疫系の異常が発病の条件
猫伝染性腹膜炎(FIP)

病理発生
・ウエットタイプ
・液性免疫の亢進
・免疫複合体(Ⅲ型アレルギー)
・血管炎
・ドライタイプ
・細胞性免疫の一部異常
・肉芽腫性病変からなる結節性病変
(Ⅳ型アレルギーー)
猫伝染性腹膜炎(FIP)

臨床所見
・発熱
・胸水または腹水(ウエットタイプ)
・腹腔内腫瘤(ドライタイプ)
・腎の変形(ドライタイプ)
・眼病変
・中枢神経症状
猫伝染性腹膜炎(FIP)

診断
・臨床所見
・非再生性貧血
・血漿タンパク濃度の上昇
・ポリクロナールガンモパチー
・胸・腹水の検査
・高タンパクで細胞の少ない炎症性浸出液
・肉芽腫性病変
猫伝染性腹膜炎(FIP)

FIP抗体検査
・抗体価は通常400以上で多くは非常に高い
・400以下のものでも少ないが存在する
・抗体検査は診断に必須なものではないし除外も
困難
猫伝染性腹膜炎(FIP)

治療
・胸・腹水除去
・ステロイド
・2mg/kg sid po より漸減
・インターフェロン
・1MU/kg eod sc より漸減
猫伝染性腹膜炎(FIP)

予防
・猫コロナウイルスフリーの郡では起こらない
・子猫を4週齢で隔離すると猫コロナウイルスフ
リー となる
・猫コロナウイルス陽性猫を家に中に入れない
犬パルボウイルス

1978年に最初に発見
パルボウイルス科
 パルボウイルス属
 犬パルボウイルス(CPV)

犬パルボウイルス

小型のDNAウイルス
・核内封入体形成
・分裂の盛んな細胞で増殖

エンベロープを持たない
・エーテル、クロロフォルム耐性

遺伝子構成は単純
・大きな抗原性変異なし
・2型⇒2a, 2b型
犬パルボウイルス

強力なウイルス
・pH3で安定
・60℃1時間安定
・無効な消毒剤
・アルコール
・石炭酸
・クレゾール
・逆性石鹸
・第4級アンモニウム塩
犬パルボウイルス

パルボウイルスに有効
・次亜塩素酸ナトリウム32倍
・4%ホルマリン
・ホルマリンくん蒸
・1%グルタールアルデヒド
・煮沸
・紫外線
犬パルボウイルス

強力なウイルス
・環境中では数ヶ月以上生存
・全世界への急速な広がり
・靴についても高層階へ運ばれる
・院内感染に注意
犬パルボウイルス
・感染経路: 経口、経鼻
・感染源: 糞便
・リンパ器官で最初に増殖
・次にウイルス血症
・小腸粘膜の陰窩上皮に感染
・骨髄細胞にも感染
・心筋
・血管内皮
犬パルボウイルス

疫学的特徴
・処女地では激しい感染
:流行病
・多くの個体が抗体を保有する:地方病
・現在は世界各地で地方病性に存在
・ほとんどの犬は不顕性感染
犬パルボウイルス

感染犬中
・罹病率 20%以下
・死亡率 1-5%以下
・パルボウイルス感染来院犬中
・死亡率 10-90%とかなり高い
・一部の繁殖犬舎や収容所
・高い罹病率、死亡率
犬パルボウイルス

激しい発症の要因
・年齢
・ストレス
・品種
・ドーベルマン
・ロットワイラー
・ブラックラブラドールレトリバー
・腸内細菌
・寄生虫
犬パルボウイルス

発症:最初の症状
・通常感染後48時間
・元気消失
・衰弱
・嘔吐
・下痢
・後に食欲消失
・発熱は一定しない
犬パルボウイルス

白血球減少症
・2000μl以下もよくある
・リンパ球減少が激しい
・次に好中球減少が激しい
犬パルボウイルス

回復
・感染後5-7日の抗体産生と平行
・軽度発症の犬は1-2日で自然回復
・中等度発症の犬は補助療法にて3-5日で回復
・下痢・嘔吐持続するものは予後が悪い
犬パルボウイルス

過急性感染
・発症後24時間程度で死亡するもの
・幼犬に多い
・8週齢以下で感染したものは心筋炎の
場合あり
犬パルボウイルス

鑑別診断(急性胃腸炎)
・ウイスル感染
・犬ジステンバー
・犬伝染性肝炎
・犬コロナウイルス
・犬ロタウイルス
犬パルボウイルス

鑑別診断(急性胃腸炎)
・細菌感染
・レプトスピラ
・キャンピロバクター
・サルモネラ
・寄生虫感染
・コクシジウム
・ジアルジア
犬パルボウイルス

鑑別診断(急性胃腸炎)
・出血性胃腸炎
・腸閉塞。腸重積、腸捻転
・薬物中毒
・急性膵炎
・急性腎不全
・アジソン病
犬パルボウイルス

迅速診断
・糞便中のウイルス抗原の検出
・陽性ならば診断的
・陰性でも否定できない
・発症後3日以上は抗体産生
・腸内抗体がウイルスと結合
犬パルボウイルス

血清診断
・HI抗体の測定
・抗体産生は感染から4-7日後より
・ペアー血清で抗体価に上昇を示さなければ
無意味
・だだし発症が典型的で発症後3日以上経過して
10240倍以上なら診断的
犬パルボウイルス
・中和抗体
・時間がかかり実用的ではない
・蛍光抗体、ELISA抗体検査
・1回だけの抗体検出は無意味
・IgM抗体を検出できれば診断的
犬パルボウイルス

病理診断
・小腸絨毛の萎縮
・腸陰窩細胞の変性、壊死、再生
・核内封入体
・リンパ系組織壊死、または再生像
・骨髄の破壊、または再生像
・心筋炎型では心筋の変性壊死、封入体
犬パルボウイルス

治療
・対症療法・補助療法
・輸液
・抗生物質
犬パルボウイルス

抗生物質
・嘔吐・腎障害がない場合
・アミノグリコシド系経口投与
・細菌叢細菌の血中侵入とエンドトキシンショック予防
・ネオマイシン
・ゲンタマイシン
・カナマイシン
犬パルボウイルス

菌血症が疑われる場合
・ペニシリン
・アミノグルコシド
・大量 IV 投与
犬パルボウイルス

その他の治療
・猫インターフェロン
・1MU/kg iv sid
・エンドトキシンショック
・コルチコステロイド
・低血液量性ショック
・血漿、全血輸液
・嘔吐 制吐剤
・下痢、腸運動抑制注意
犬パルボウイルス

血清療法
・高力価抗体を含む血漿 1.1-2.2ml/kg は
有効
・だだし発症3日目以降は患犬は抗体産生
を
行っている
・子犬に対する血清移入は予防効果あり
犬ジステンパー
・犬のウイルス病で最も多い
・感染を経験していない犬はごくわずか
・3-6ヶ月齢の幼若に多い
・罹病率25-75%
・症例中死亡率50-90%
犬ジステンパー

病原
・パラミキソウイルス科
・モルビリウイルス
・人間の麻疹ウイルスに酷似
・大型のRNAウイルス
・エンベロープを持つ
・通常の消毒や熱で失活
・冬は環境中で生存可能
犬ジステンパー

ワクチンの株と日本の株
・かなり形は違うが聞いている
・アザラシにもある
犬ジステンパー

感染
・エアロゾル
・分泌液
・病原性
・血清型は1つ
・病原性は株で異なる
・不顕性感染を起こす株
・脳炎を起こす株
・内臓に親和性のある株
犬ジステンパー

免疫抑制
・潜伏期にウイルスはリンパ節で増殖
・免疫抑制が起こると急性発症
・症状の多くは細菌二次感染
・トキソプラズマ
・コクシジウム
・他のウイルス
・マイコプラズマ
・免疫が勝ると発症せず
・ただし一部は遅れて脳炎
犬ジステンパー

潜伏期間
・通常は14-18日
・4-7日目に一過性変化
・白血球減少症
・発熱
犬ジステンパー

発症
・発熱
・結膜炎
・鼻炎
・咳
・嘔吐
・下痢
・食欲廃絶
・脱水
・体重減少
・衰弱
・フットパッド角化
犬ジステンパー

粘液膿性鼻分泌液
・細菌二次感染の合併
・Bordetenella bronchiseptica
・皮膚の発疹
・膿疱に発展
・腹部に多い
・免疫病変
・予後は比較的良好
犬ジステンパー

急性脳炎症状
・間代性筋痙攣
・ガムを噛むような発作
・協調不能
・運動失調
・知覚過敏
・硬直
・発声
・恐怖反応
・失明
犬ジステンパー

遅発性神経症状(亜急性)
・不顕性感染回復後
・数週から数ヶ月
・犬は免疫を持っている
・脳内ウイルスは脳血液関門で守られる
犬ジステンパー

遅発性神経症状(慢性)
・多発巣状壊死
・除々に進行
・4-8歳の犬に見られる
・協調不能
・後肢麻痺
・威嚇反射消失
・斜頚
・顔面麻痺
・全身発作はなし
犬ジステンパー

遅発性神経症状(慢性)
・「老犬」脳炎
・稀な進行性疾患
・6歳の犬に見られる
・視力障害
・威嚇反射消失
・知能障害
・沈鬱
・性格変化
犬ジステンパー

診断
・臨床徴候
・白血球封入体
・リンパ球減少症
・抗体はあまりあてにならない
・回復犬の抗体はワクチン接種犬より
低いことがある
・IgM, IgGを測れば回復犬を検出可能
犬ジステンパー

治療
・対症療法
・抗生物質
・猫インターフェロン
・2M/head iv sid
犬伝染性肝炎

原因
・犬アデノウイルスⅠ型

伝搬
・感染犬の尿中ウイルス
・経口感染
犬伝染性肝炎

典型例
・潜伏期最大で7日
・発熱
・元気消失
・呼吸器・消火器系症状
・腹痛
・粘膜出血
・ブルーアイ
犬伝染性肝炎

診断
・肝腫大
・肝酵素上昇
・肝生検で封入体
・ペア血清による抗体価
犬コロナウイルス感染症

原因
・犬コロナウイルス
犬コロナウイルス感染症

病原性
・若齢犬の下痢に関与
・Mochizuki et al, 1997
・抗体陽性率 44%
・ウイルス分離率
下痢症例の8%
・遺伝子検出
下痢症例の16%
・CPVとの混合感染
CPV例の9%
犬コロナウイルス感染症
猫コロナウイルスとの関係
 犬コロナウイルスと猫コロナウイルスとの
組替え

ワクチネーションの原理



動物が感染から自然に回復するならば、同じ状
況をワクチンでも作り出せるのではないか?
ワクチン免疫は自然獲得免疫と同等になること
はあっても、超えるものではない
ワクチンの抗原は自然感染の状態に近ければ
近いほど免疫は高いものになる
ワクチンが正当化されるとき
1、その感染症は重大なものか?
 2、ワクチンはその病気、死亡に対して
予防効果があるか?
 3、製造者にとっても、獣医師にとっても
経済的に見合うか?

ワクチネーションに影響する因子
・母子免疫
・初年度最終接種時期
・免疫系の発達
・接種間隔
・健康状態
・抗原の種類
・接種経路
・アジュバンド
・免疫反応性
・追加接種
・副作用
ワクチネーションに影響する因子

母子免疫
・なぜ複数回数接種が必要か?
・確実に免疫を賦与するために
・移行抗体による干渉
・ワクチンはいつ効くのか分からない
移行抗体による干渉

抗体が十分にある場合
・感染しない
・ワクチンは干渉される
感染が成立するがワクチンは効
かない暗黒のウィンドウ

暗黒期間の長さ=ワクチン株の弱毒化の程度

暗黒のウィンドウ
・ジステンパー
・パルポ
数日ー1週間
1-2週間
ワクチネーションに影響する因子

免疫系の発達
・4-6週移行
・3-4ヶ月で成熟
ワクチネーションに影響する因子

接種間隔
・毎週行えばといういうものではない
・最低でも3週はあけた方がよい
ワクチネーションに影響する因子

健康状態
・初年度か追加か?
・妊娠中か?
・どの程度の病気か?
・投薬は?
ワクチンに関する疑問

すべての症例にうつべきか?
・原則としてそうすべき
・メリットとデメリットを判断
・重篤な疾患ではデメリットがあると判断すれば
うたない
・外科疾患で入院の場合はうつべき
初年度接種

糞便中に寄生虫
・接種する

先天性疾患
・通常は接種

感染発症を思わせる症状
・接種しない
追加接種

病気の治療を優先
・重い老齢疾患
・接種しない
・外科疾患など
・必要に応じて
妊娠動物




多くのワクチンは安全
しかしなにかあったら困る
生ワクチンは胎児に感染の可能性
妊娠後期の接種はあまり意味はない
投薬中

プレドニゾロン
・通常量なら接種可能

コンビネーション化学療法
・接種しない
ワクチネーションに影響する因子

ワクチンの中の抗原量
・個体の大小に関わらず同じ物を使用して いる
・ある最低量をすれば効くと考えられている
・1ドーズを分割すると効かない可能性
ワクチネーションに影響する因子

アジュバンド
・生ワクチンはサイトカイン反応をおこす
・不活化ワクチンは局所でサイトカイン反応を起
こさない
・アジュバンドが必要
・コンポーネントワクチン
・不活化ワクチン
・アジュバンドが副作用を起こす
ワクチネーションに影響する因子

免疫反応性
・ロトワイラー
・パルボワクチンへの反応が悪い
・その他のローレスポンダー
ワクチンの回数
生ワクチンは1回で免疫ができる
 不活化は2回以上必要

・追加は1回でよい

破傷風ワクチン(人間)
・5年に1回
ワクチンに関する疑問

いつから効くのか?
・一概にはいえない
・そのワクチンが効くという保証はない
・効く状況ならば一般に1週間後から
・病原体毎に異なる
ワクチンに関する疑問

糞便検査で寄生虫卵
・身体検査後、獣医師の判断で接種すべきであ
る
・免疫が完全に抑制されるような寄生虫感染は
ほぼない
副作用

アレルギー反応
・5000頭に1頭くらい
・顔が腫れる
副作用

免疫介在性疾患
・IHA
・ITP
副作用

アジュバンド
・急性反応
・慢性反応
・接種部位肉芽腫
・線維肉腫
・犬の肉芽腫反応は多くない
・猫の線維肉芽腫は5000頭に1頭くらいの可能性
猫の線維肉腫

ワクチンも1つの原因ではあるが
・注射全般が原因
・猫の反応が大きな原因
・放置するのも問題
接種部位の硬結

肉芽腫反応

1ヶ月以内に硬結が続いている場合
・再接種せず
・経過観察
・続く場合は2ヶ月以内に切除
肉芽腫の外科的切除
水平マージン 3cm マージン
 深部マージン 3cm マージン

・浸潤のない正常の1層を切除
・正常筋膜切除は2cmに相当
・正常筋膜切除は3cmに相当
犬の5種/8種混合ワクチン
全ての犬に必要なコアーワクチン
 ジステンバーウイルス
 パルボウイルス
 アデノウイルス (呼吸器/肝炎)

移行抗体の問題を回避する



親や子供の顔を見ても分からない
移行抗体が沢山あればワクチンは効かない
移行抗体がなければ感染の危険
・来院したらまずワクチンを接種
・12-14週まで接種をくりかえす
・3-4週に1回
ワクチン接種時の注意

インフォームド・コンセント
・初年度は数回接種
・次年度からは追加接種
・接種当日は激しい運動、シャンプーを避ける
・場合によっては軽い症状が見られる
・発熱
・元気消失
・食欲低下
・長く続けば病因に連絡
犬の5種/8種混合ワクチン
使い方の例
 追加接種 (5種または8種)

・1歳齢誕生日に1回
・以降随時
人医領域と獣医領域の違い
・人間:最良のプロトコール確立
・動物:頻回にうって、毎年追加
現在の小動物ワクチン推奨事項の起源

初年度シリーズと毎年接種
・Synopsis of Vaccination Procedures for Dogs
・JAVMA 162:228-230.1973
・Canine Infectious Disease Report
・JAVMA 156(12).Part1,1970




CDV
Lepto
ICH
猫
毎年追加
毎年追加
推奨なし
推奨なし
現在の小動物ワクチン推奨事項の起源

Canine and Feline Immunization Guideline
・JAVMA 195:314-317, 1989
・(AVMA委員会報告:著者名匿名)
JAVMA 195:314-317, 1989
1回目
2回目
3回目
追加
CDV
6-8w
10-12w
14-16w
12M
ICH
6-8w
10-12W
14-16w
12M
CPV
6-8w
10-12w
14-16w
12M
Lepto
10-12w
14-16w
ー
12M
Rabies
12w
64w
ー
12-36M
Corona
6-8w
10-12w
12-14w
12M
毎年の追加接種は必要か?

多分ないだろう
・病気にかかるとリスクは毎年下がる
・大人になると動物のライフスタイルは違ってる
・多くの生ワクチンはかなり強力
・一生で行かなくとも長い間予防効果
免疫の持続期間

本当の持続期間はこれらのものではない
・ワクチンの能書
・AVMAの推奨事項


生ワクチンの免疫持続は不活化より長い
初年度シリーズが行われていれば以降の感染
は極めて稀
猫の3種混合不活化ワクチン
免疫の持続期間と追加時間
 攻撃試験での防御は7年半持続
・コーネル大学、Scott博士の研究
・Scott,F,W, and Gelssinger,C,M
・Am.J.Vet.Res. 60,652-658,1999

猫の3種混合不活化ワクチン



免疫の持続時間と追加接種
個体の免疫の意味ではほとんど必要ない
集団免疫の意味で抗体を上げておくのがよい
ワクチンに関する疑問

なぜ新しいワクチンプログラムが出現したか?
・人間にならった接種方法
・ワクチンの性能改善
・ワクチンの副作用の回避
・ワクチンに頼った動物医療からの脱却
新しいワクチンプログラム


アメリカの新しい動きは日本に定着するか?
まず大切なのは
・来院集団にまずワクチンを正しく接種すること
・非来院集団を病因に来院させワクチンを接種すること
・ワクチン以外にも健康動物が来院する理由を教育する