電気自動車用急速充電所の拠点と充電器の数 ~交通需要の粗密を考慮

Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6
電気自動車用急速充電所の拠点と充電器の数
~交通需要の粗密を考慮した道路種別の検討~
Number of Quick Charging Stations and Their Quick Chargers for Electric Vehicles
- A Case Study Considering the Traffic Density of the Road Type 小 田 拓 也 *・ M u h a m m a d A z i z
Takuya Oda
・ 三 谷
**
Muhammad Aziz
崇
**
Takashi Mitani
・ 渡 辺 陽 子
・ 柏 木 孝 夫
**
Yoko Watanabe
**
Takao Kashiwagi
(原稿受付日 2016 年 5 月 13 日,受理日 2016 年 10 月 14 日)
In order to promote the spread of electric vehicles, a quick charger needs to be arranged. For suitable arrangements, it is
necessary to examine the functions of quick charging stations. The aim of this study was to grasp the required numbers of
chargers in quick charging station. First, the future total demand of quick charging was estimated using the actual use data of
existing charger. Then, the demand was distributed by traffic volume into the charging stations which classified 30 roads.
Finally, the required number of charger in quick charging stations was estimated considering the results of wait-time and
cost-and-benefit analysis. As results, it was estimated that the thousands of quick charging station needs two or more quick
chargers in one charging station.
1.はじめに
10,11,12)にも関連が生じる可能性がある.
EV の導入拡大のためには,将来の急速充電所のあるべ
電気自動車(Electric Vehicle,EV)の走行可能範囲を拡大
するため,急速充電器(Quick Charger,QC)を備える充電
き姿を示してこれを目指す必要がある.著者等はこれまで,
所(Charging Station,CS)の設置が推進されている.EV の
実際の QC の利用履歴を用いて将来の CS の待ち時間を解
電欠回避(燃料切れに相当)や行動範囲の拡大には,QC を
析する 13)と共に,この結果を用いて充電器の増設に関する
分散して配置する必要がある.一方,QC の設置にも経済的
費用便益を評価 14)してきた.本報では,CS と,CS に整備
な制約があるため,適切な配置計画が必要となっている.
する QC の器数を区分して考慮することにより,QC 配置
先行研究でも,電欠回避のために QC を分散して配置す
計画に関する一考察を示す.
ることを基本として,地理情報システムやエージェントベ
ースシミュレーションを用いた検討 1,2,3)がある.一方,QC
2.研究目的と概要
の利用頻度が増加すると,分散配置とは異なる対応が必要
図 1 左上に示した充電器の利用実態の把握を起点とし
になる.すなわち,分散して設置された QC の各々に待ち
て,将来の急速充電需要と急速充電器(QC)の必要数を,
行列をつくるより,QC を集約して 1 つの行列をつくるほ
俯瞰的に示すことを目的とする.そのため,将来の急速充
うが,QC の利用率を向上させることができると共に平均
待ち時間を短縮できる
4).在庫管理の視点で充電サービス
の待ち行列解析を行った先行研究
5)もあるが,電池交換型
の EV を対象としている.同時充電が必要となるような利
用頻度の高い CS6)では,駐車スペース 7)だけでなく配電網
や CS の電力容量 8),契約電力低減のための蓄電池併設 9)な
QCの
利用実態
EVの
普及数
乗用車の
利用実態
CSの
待ち時間
EVの
充電頻度
道路種別
走行キロ
充電器の
必要数
どの新たな課題が発生する可能性がある.更には,EV の走
行経路や利用予約,普通充電を含めた種々の利用サービス
将来の
EV普及台数
将来のCS利用頻度とQCの必要数
*東京工業大学
先進エネルギー国際研究センター
〒152-8550 東京都目黒区大岡山 2-12-1-I6-25
*E-mail : [email protected]
**東京工業大学 先進エネルギー国際研究センター
〒152-8550 東京都目黒区大岡山 2-12-1-I6-25
図1
急速充電需要の推定フロー
第 34 回エネルギー・資源学会研究発表会の内容をもとに作成
されたもの
7
Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6
表 1 急速充電器の利用履歴データ諸元
項目
値および備考
期間
2012 年 1 月 1 日~2013 年 11 月 25 日
充電所数
127 箇所
充電器数
127 器(対象期間末月)
利用回数
93,839 回
充電電力量 平均 8.8 kWh/回
充電時間
平均 27.5 分/回
図2
電の総需要を推定すると共に,道路種別の交通量に応じて
急速充電需要を分配することで,道路種別の急速充電需要
これらが計 19 の都府県に分散して配置されていることを
の発生回数を求める.更に,前述の待ち時間解析により得
確認した.また 2013 年 11 月時点では,QC が複数台設置
られた QC の必要数を当てはめることで,国内の急速充電
されたという報告はない.履歴にも,1 つの CS に 2 器の
所が備えるべき充電器数について推定した.
QC が設置されている事を疑うデータは含まれなかった.
2.1 記号および添字
つまり本検討では,1 箇所の CS に 1 器の QC が設置された
【記号】
QC
急速充電器(Quick Charger)
CS
QC を備えた充電所(Charging Station)
場合の充電履歴を用いて,複数台設置の要否を検討したも
のである.尚,当該期間の QC の国内普及数は約千から二
千器であり,127 器は国内の 5 %程度に相当する.
UMQC QC の月毎の利用回数,回/月
3.2 待ち時間からみた充電器の数 13)
NMQC QC の設置数,器
表 1 の利用履歴を用いて,図 2 に示す待ち行列問題とし
UMEV EV 1 台あたりの月別の QC 利用回数,回/月/EV
NEV
EV の国内普及台数,台
UDCS
CS の日別の QC 利用回数,回/日/CS
TK
走行キロ台,km・台
D
CS の配置間隔,km
L
道路延長,km
てモデル化し,充電需要を充電時間と到着間隔の 2 つの確
率密度で示した.更に得られた確率密度を用いて,充電サ
ービスに関する将来の待ち時間を求めた.この待ち時間に
対して許容待ち時間を仮定することで,CS の利用回数が 7
回/日以上になると,QC を 1 器から 2 器へ増設する必要
があることを示した.なお許容待ち時間には,QC 利用者の
【添字】
all
国内総数
ref
表 1 に示す 127 器の QC
i
道路種
急速充電サービスにおける待ち時間の推定
90 %以上が, 10 分以下の待ち時間になる事を想定した.
また QC を 3 器に増設する必要が生じる利用回数を別
途,同様に検討した.概ね 30 数回を超えると,前述の許
容待ち時間を超えるため,QC を増設する必要があると考
えられた.QC を並列に設置することにより,QC の利用率
3.急速充電所の利用回数と充電器の数
が向上する.このため 2 器から 3 器に増設しなければな
著者等はこれまで,将来の急速充電所(CS)が備えるべ
らない状況は,前述の 7 回/日の 2 倍より大きい値になる.
き急速充電器(QC)の器数を明らかにするため,既存の急
3.3 充電器増設の費用便益 14)
速充電所の利用履歴を図 2 で示す待ち行列モデルに適用し
前節で示した許容待ち時間とは異なる視点で増設の条件
て解析し,待ち時間と費用便益の観点から考察を行った.
を示すため,利用者の待ち時間と QC の設置および運営の
この概要を以下に説明する.
経費を社会コストと見なして,費用便益について検討を行
3.1 利用履歴の概略
った.その結果,QC の利用回数が一日当たり 13 回を超え
本研究では,176 器の QC で実施された約 15.1 万回の
ると,待ち時間の増加による社会コストの増大が,QC の増
充電履歴の提供を受けた.不適と考えられる履歴を下記の
設の経費を上回ることを示した.
手順で除いた.はじめに目的地充電を多く含むと考えられ
同様に,QC を 3 器に増設すべき利用回数を推定すると,
る商業施設 48 器と,実験用の QC であることが疑われる
概ね 35~40 回程度になると考えられた.
1 器の,計 49 器の QC を除外した.次に,充電時間が 0
3.4 急速充電所における充電器の必要器数
または 120 分以上あるいは充電電力量が 0 kWh の約 2
本章で示した二つの解析事例を元にして,図 3 に,CS が
千回分の履歴を除外した.結果として, 127 器の約 9 万
備えるべき QC の数を示す.利用回数が増加するにつれて,
回の充電履歴(表 1)を対象として評価した.
必要な QC の数が増加することを示している.QC を 1 器
127 器が都市部等の特定の地域に集中していないことを
から 2 器に増設すべき目安は,3.2 節では 7 回/日,3.3 節
確認するため, CS の名称が得られた 91 器の所在を調べ,
8
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図3
充電所の利用回数と充電器の必要数
図4
では 13 回/日だった.評価手法により結果は若干異なるも
EV と QC の普及量の変化
のの,以降の検討では,利用回数は 10 回/日を超えると 2
器, 35 台を超えると 3 器以上が必要になることを想定す
る.
尚,表 1 に示した 127 の QC のうち,最も利用回数の
多い高速道路のサービスエリアの QC 利用回数は 7 回/日
だった.週末に限れば 11 回/日だった.この事から,CS に
おける複数台同時充電が必要になりつつあることがわかる.
4.EV 1 台当たりの急速充電回数
国内の急速充電需要の総数を推定するため,EV 1 台当た
りの急速充電器の平均利用回数を求める.
4.1 推定手法
図 4 には,EV の普及台数
15,16)と
QC の設置数
17)を,そ
れぞれ月別に示した.次に,表 1 に示した QC の利用履歴
図5
と式(1)を用いて,国内の QC の利用回数を求める.
𝑈𝑈𝑀𝑀𝑄𝑄𝑄𝑄𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎
𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝐶𝐶𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎
=
× 𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝐶𝐶𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟
𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝐶𝐶𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟
EV 普及台数と推定した急速充電回数の比較
ので,各プロットは年月が経つにつれて X 軸の右側に移動
する.Y 軸は,評価期間でばらつきはあるものの,概して
⋯ (1)
増加傾向にある.X 値と Y 値の比は,EV 1 台あたりの月
ここで UMQC は QC の月毎の利用回数(回/月)を,NMQC
別の QC 利用回数 UMEV を意味する.これを式(2)で示
は当該月時点の QC の設置数(器)を示しており図 4 から
す.図中の直線から評価期間中の UMEV は,おおむね 2~
与えた.また添え字の all と ref はそれぞれ国内総数と評価
3 回/月/EV の程度であると推測した.
対象の QC(表 1)を示している.式(1)は,表 1 に示した
𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈 =
127 の急速充電器の利用回数が,国内の他の急速充電器の
利用回数に等しいことを仮定して,UMQC を求めている.
𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝐶𝐶𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎
𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁
⋯ (2)
図 5 から利用回数に関する経年の変化傾向を読み取るこ
ここで, 127 器の QC の設置時期はそれぞれ異なるほか,
とは困難だが,EV 利用者にとって経路充電は少ないほう
設置後も故障や修理で利用できない状況もある.ここでは
が移動時間の短縮となり望ましいこと,普通充電の環境が
月に 1 回以上の利用がある場合に,当該 QC が稼働してい
整うに従って急速充電の必要性が低下すること等を勘案す
るとみなした.
ると,QC の利用頻度は今後,減少する方向にあると考えら
4.2 急速充電器の平均利用回数
れる.これを勘案して後の検討では,将来の UMEV として
前節で求めた月毎の利用回数𝑈𝑈𝑀𝑀𝑄𝑄𝐶𝐶𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎𝑎 を図 5 の Y 軸に与
2 回/月/EV を与えた.
え, X 軸には当該月の電気自動車の普及台数 NEV(図 4)
を与えてプロットした.EV の普及台数は増加傾向にある
9
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交通センサスから,道路延長𝐿𝐿𝑖𝑖 の総計は 19.3 万 km とな
表2
道路種 i の内訳と充電所の配置間隔 D
道路種 i
国道
主要県道
道路状況
一般県道
高速道路
6 区分
主要市道
一般市道
DID(商業地域除く)
DID(商業地域)
沿道状況
他市街地
5 区分
平地部
山地部
D(km)
45
20
る.走行キロ台𝑇𝑇𝑇𝑇𝑖𝑖 には小型車区分の値を与えた.小型車区
分には乗用車と小型貨物車が含まれるが,2005 年度の旧調
査では小型車区分に占める乗用車の TK の割合は 76 ~
79 %だった.本検討では,この割合が道路種により大きく
変化しないことを仮定した.
道路種 i は,表 2 に示す通り,文献 17)を参考にして道路
6 区分と沿道 5 状況の計 30 区分を与えた.
急速充電の利用回数 UMEV には,前述のように図 5 を基
に仮定した 2 回/月/EV を想定した.
CS は,道路に対してある一定間隔で配置されることを想
定した.文献 20)では,平成 26 年度末の高速道路上の 100
5.交通センサス対象道路における急速充電需要の推定
km 毎のガソリンスタンド数が 2.3 箇所であることを示し
道路種別の交通需要の粗密を考慮して,平均的な CS の
ている.高速道路上で,CS はガソリンスタンドと同等程度
利用回数を推定する.更に,求めた充電需要に対して 2 章
の間隔で配置されることを想定し, 45 km 毎とした(表 2)
.
で示した QC の必要数を与えることで,将来の CS が備え
他の一般道路は,文献
るべき QC の数を明らかにする.
CS 設置間隔が 6~28 km であったこと考慮して,20 km 毎
5.1 推定手法
に CS が設置されることを想定した.
将来,乗用車の一部が EV に代替される事を想定する.
EV の普及台数をパラメータに与える.2020~2030 年の
そのため急速充電需要は,乗用車の交通量に比例して増減
普及目標等を勘案して, 700 万台, 200 万台, 100 万台
することを仮定する.可観測な交通量として道路交通セン
を与える.また比較のため,2014 年度末の EV 普及台数で
サス 18)の走行キロ台を与え,3 章で求めた UMEV を,式(3)
ある 5.6 万台も与えた.
を用いて代表的な仮想の CS の一日当たりの充電需要
𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑖𝑖 に分解する.
𝑇𝑇𝐾𝐾𝑖𝑖
𝐷𝐷𝑖𝑖 𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁𝑁 × 𝑈𝑈𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀𝑀
𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑖𝑖 =
× ×
∑𝑖𝑖 𝑇𝑇𝐾𝐾𝑖𝑖 𝐿𝐿𝑖𝑖
30
3)の「幹線連絡道路優先ケース」で
5.3 推定結果と感度分析
各道路に配置される急速充電所の平均利用回数𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑈𝑖𝑖 を
式(3)により求め,利用回数の多い道路種が左端から順に配
⋯ (3)
置されるよう並び替えたものを図 6 に示した.
ここで UDCS は急速充電所の日別の QC の利用回数(回
図 6 の右端は 9413 箇所となる.想定した CS の配置間
/日/CS)を,TK は走行キロ台(km・台)を,D は CS の配
隔を元に交通センサスの対象道路のすべてに CS を配置す
置間隔(km)を,L は道路延長(km)を,i は道路種を,
ると,約 9000 箇所の急速充電所が必要になることを示し
それぞれ示している.
ている.図 6 の左端は高速道路となる.続いて国道,市道,
式(3)の右辺第一項は,道路交通センサス対象道路にお
県道の利用回数が高い.これらはすべて DID 地区に属する
ける道路種 i の交通量の比を示している.第二項は,道路
区間であり,交通量に比例して充電需要が増加した.図 6
種 i に配置された CS の数の逆数である.第三項は,3 章で
で,X 軸が 1500 箇所より多い CS は,沿道状況が平地部,
求めた UMEV を用いて一日当たりの国内の総利用回数を
山地部,その他市街部などの非 DID 地区となる.CS の多
示している.
くは,非人口密集地に配置されることがわかる.
国内道路の実延長は約 120 万 km で,交通センサスの対
図 6 には,図 3 を参考にして,QC の必要数を併記した.
象道路はこの 2 割に満たない.本検討では交通センサスの
EV 普及台数が 200 万台の時,高速道路上の CS では 61~
対象道路だけに CS を配置することを想定するため,全交
237 回/日/CS の充電需要が発生した.また本図から,671 箇
通量に対する交通センサスのカバー率が重要となる.文献
所では QC が 3 器以上必要になること, 4544 箇所では QC
19)は,自動車燃料消費量統計年報を基にした道路全体の乗
が 2 器以上必要になる可能性のあることがわかる.
用車の交通量と,交通センサスの乗用車区分の走行量を比
図 6 には,EV 普及台数(NEV)の増減が CS の利用回数
較し,カバー率が 78.2 %であることを示した.CS は幹線
に与える影響について感度分析を行った結果を併記した.
道路に配置することが望ましいことも考慮すれば,交通セ
EV 普及台数が増減すると,本図のプロットは上下に移動
ンサスの対象道路に CS を配置すること事は,概ね妥当な
する.NEV が 700 万台の時,
グラフの左端は 831 回/日/CS
想定だと考えられる.
に,NEV が 100 万台の時,同値は 119 回/日/CS だった.
5.2 利用データとパラメータ
EV 普及台数が 700 万台にまで増加すると,交通センサ
10
Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6
図6
EV 普及台数(NEV)が急速充電所(CS)の利用回数(UDCS)に与える影響
ス対象のほぼ全ての道路で,QC が 2 器以上必要になるこ
表3
とを示唆している.3 器以上が必要になる CS は約 4 千箇
CS と QC の数(NEV=200 万台)
CS 数
(箇所)
QC 数
(器)
QC/CS
全沿道
190
768
4.0
小計
190
768
-
DID(A)
410
1,116
2.7
DID(B)
580
1,340
2.3
他市街部
956
1,917
2.0
平地部
3,915
6,321
1.6
山地部
3,362
3,364
1.0
小計
9,223
14,058
-
9,413
14,826
-
道路区分
所だった.EV 普及台数が 100 万台の場合でも,高速道路
では 3 器以上が必要になるほか,1542 箇所の CS で複数
高速道路
台同時充電が必要になる.複数台同時充電が必要な急速充
電所は,高速道路と一般道路の DID 地区が占めた.
図 6 には,2014 年時点の EV 普及台数である 5.6 万台を
与えた場合の利用回数も併記した.この場合の左端に位置
する高速道路の利用回数は約 7 回/日/CS であり,図 3 に示
した高速道路の実際の利用回数とよく似た結果が得られた.
一般道路
(国道,
県道,
市道)
表 3 は,EV の普及台数が 200 万台の場合の道路種別の
QC 数を示している.表内の QC/CS には,道路種別の QC
総計
数と CS 数の比を記した.表 3 から例えば,高速道路には
注)A:商業地域,B:商業地域を除く
190 箇所の CS に,計 768 器の QC が設置され,各 CS に
と図 6 の Y 軸の値は単純に 1.5 倍の値を取る.
設置される QC 数は平均で 4.0 器となることがわかる.
一般道路の DID 地区には計 990 の CS が配置されるが,
6.おわりに
実際には DID 地区では道路が密に配置されると考えられる
ので,CS 数は表 3 に示した値より少なくなる可能性があ
電気自動車の普及のためには,将来の急速充電所が備え
る.この地域の充電需要に変化がなければ,QC/CS の値は
るべき機能について検討する必要がある.この基礎情報と
2.3~2.7 より高くなることが予想される.平地部や山間部
して,充電所の利用頻度を俯瞰的に把握すると共に,充電
には,計 7277 の CS が配置される.本検討では CS を 20
所に設置すべき充電器の器数を把握することは有益である.
km 毎に配置することを想定したが,平地部や山間部の配置
本報では,国内の交通センサスの対象道路を対象として,
間隔が 20 km より長くなると,
表 3 に示す CS 数は減少し,
これらの道路に配置される急速充電所の一日当たりの急速
CS 毎の急速充電需要は増加するため,QC/CS の値も増加
充電器の利用回数を求めた.この結果に対して,別途,待
することが予想される.
ち時間解析から得られた利用回数毎に求めた充電器の必要
台数を重ね合わせることで,国内の充電所が備えるべき充
なお,図 6 および表 3 は,図 5 で求めた UMQC の影響を
電器の器数を具体的に示した.
強く受ける.ここでは UMQC を 2 としたが, 3 を与える
11
Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6
その結果,EV の普及台数が 200 万台の時,国内の 4500
箇所の充電所で 2 器以上の急速充電器が,特に高速道路や
8)
阿部 政紀, 斎藤 浩海, 配電ネットワークの電圧制約
DID 地区などの 670 箇所では 3 器以上の急速充電器が,
を満たす EV 急速充電器の使用可能台数決定法, 電気
それぞれ必要になることを示した.
学会論文誌 B, 133-8(2013), 654-663.
本検討では,設置場所が明らかでない 127 の急速充電器
9)
Aziz M., Oda T., Ito M.; Battery-assisted charging system for
の利用履歴を用いた.乗用車の用途により急速充電器の利
simultaneous charging of electric vehicles, Energy, 100
用形態は異なると考えられ,地域差の生じる可能性がある.
(2016) 82-90 太田 豊; 電力システムと電気自動車の協
また,EV の走行可能距離(現在:200km 程度)は増加する
調, 電気学会論文誌 B, 133-6(2013), 497-500.
10) 太田 豊; 電力システムと電気自動車の協調, 電気学会
ことが予想され,将来の充電行動は変化する可能性がある.
更には,充電需要が単に道路種別の走行キロ台に比例して
論文誌 B, 133-6(2013), 497-500.
増減すること,急速充電所の配置間隔が全国一律であるこ
11) 清水 太朗, 國府方 久史, 松本 修一, 川嶋 弘尚; 道路
とを想定した.説明因子として交通量を採用することは妥
勾配などを考慮した電気自動車の最適経路問題, 社会
当であると考えるが,都市の交通圏,平均走行速度,普通
技術研究論文集, 8 (2011), 53-59.
充電の普及など,考慮すべき要因はほかにも多数あること
12) 池上 貴志, 矢野 仁之, 工藤 耕治, 荻本 和彦, 負荷平
が考えられ,今後の課題としたい.
準化による発電燃料費低減を目的とした電気自動車の
多数台充電制御効果の評価, 電気学会論文誌 B, 133-6
謝辞
(2013), 562-574.
本研究を進めるにあたり,日本ユニシス株式会社から急
13) 小田 拓也, Muhammad Aziz, 三谷 崇, 渡辺 陽子, 柏
速充電器利用履歴の提供を受けた.また本研究の一部は,
木 孝夫, 急速充電所における混雑の実態と充電器増
次世代エネルギー・社会システム実証事業「次世代サービ
設の効果:-高速道路サービスエリアの利用履歴を用い
スステーションにおける蓄電・充電統合システムの研究開
た検討-, 電気学会論文誌 B, 136-2(2016),198-204.
14) 小田拓也, アズイッズ ムハンマッド, 三谷崇,柏木孝
発」および JSPS 科研費 JP16K06210 の助成を受けた.
夫; 電気自動車の利便性を考慮した急速充電器の増設
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電気自動車導入に向けた基本解析機能構築―, 電力中
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7)
届出外排出量の推計方法等に
関西電気自動車普及推進協議会; 駐車場への普通充電
課 題 に つ い て ; http://www.zenken.com/kensyuu/
設備の普及促進に関する検討
kousyuukai/H27/617/617_mizuno.pdf ( ア ク セ ス 日 :
報 告 書 , 2013;
http://www.kepco.co.jp/sustainability/kankyou/keva/pdf/ke
2016.7.23)
va01.pdf) (アクセス日:2014.11.17)
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