コロラド州で法律相談等を活用するための具体的説明

コロラド州で法律相談等を活用するための具体的説明
別の資料では、家庭法や家庭内問題等を含んだ「保護命令・離婚・監護権・養育費」等の申請
手続きを一通り説明しました。ご承知いただけたかと思いますが、離婚や監護権の手続きは、
大変複雑で、実際の書類で使われる法律用語を覚えるだけでも、英語を母語としない日本人に
は不安であり、なおかつ厄介な作業になることは想像に難くありません。弁護士を介さずに自
らの力で申請を行うこととは可能です。しかし、もし記載事項に記入ミスや漏れがあった場合、
裁判所ではすぐに拒否され、さらに出直すなど、余計な手間や時間がかかってしまうものです。
人によっては、裁判所に提出するたびにミスを指摘され、そのたびに何度も出直し裁判所の往
復を 8 回も繰り返し、離婚の手続きに 1 年以上の歳月を費やしたものの、それでも決着が付か
ず、その後やむなく弁護士を雇ったら数か月で決着がついた、といったことも実例としてあり
ました。
そういった事情から、また、法的手続きを取られる日本人の方の主張がきちんと裁判所に伝わ
り、納得のいく結果を得るためにも、経済的な負担はあるにしろ、やはり弁護士を雇うことが
妥当であるかと思われます。
裁判所に申請するにあたり、いくつか気づいた点をご紹介いたします。
裁判所と申請手続きについて
1. 離婚や監護権など法的な手続きを行う場合、必ず裁判所を通して行われます。しかし、
裁判所に申請書を提出するといっても、それがすぐに離婚裁判になるわけではありませ
ん。アメリカでは、裁判所外離婚(extra-judicial divorce)の制度がないため、合意離婚
や協議離婚であっても、裁判所を通し、判事による書類の確認とサインが必要になるの
です。離婚ケースは、申請後、必ず双方で話し合う機会(initial status conference)が設
けられ、そこで決着が付かない場合に協議の場(Mediation: 第三者の専門家を介した話
し合い)が設けられ、それでも決着が付かない場合に離婚裁判へと移っていきます。金
銭面では合意したけれど、養育プランで合意に至らない、またその逆である場合でも、
離婚に係るすべての要件(離婚内容、監護権、養育、面会交流等)を取り決めない限り、
判事は離婚の判決を下すことができません。
2. またコロラド州は、離婚申請は無過失離婚(No-Fault Divorce)制をとっており、離婚に
至る理由を特に提示する義務はありません。ただし、監護権や面会交流の取り決めにつ
いては DV の事実やこれまで親としての子との関わり方が十分に考慮されます。州法で
は、できる限り母親の権利と父親の権利を同等に扱うことが、「子供にとっての最善
(The best interest of the children)」の環境であると信念におくからです。たとえ相手の
浮気が原因であっても、裁判所からそういった理由は問われず、離婚に関して片親に有
利に働くとは限りません。一方の親を残し、子供を連れて州外または国外に移動するこ
とは、相手の同意を得、なおかつそれが子供にとって最善の方法であるという妥当な理
由を添えない限り、裁判所で判事の承認を得ることは難しいでしょう。離婚し夫婦が別
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れた後も子供の生活に支障のないよう、子供を取り巻く環境の変化は最小限にとどめよ
うとすることが裁判所の最大の目的とみるからです。また特に、コロラド州において、
いまだ同性婚は認めていないものの、シビル・ユニオン(同性カップルの法的保護)は
州法で認められています。このため、どちらの性が親として適任か、または有利である
かという議論はしません。母親だから、肉親であるから、ということだけを理由として
挙げることは、あまり合理的ではなく、その理由で単独監護権を勝ち取ることは難しい
ということを念頭に置いてください。むしろ、「自分は親としてこれまでにここまで子
供の養育に関わっている」という具体的な証拠(Credible Evidence)を提示しなくてはな
りません。コロラドの裁判所が提供している離婚申請手続きにも特に「面会交流
(Visitation)」という表記がなく、むしろ「養育時間(Parenting Time)」という用語使
いに拘ることからも、片方の親に単独的に監護権を譲る措置には消極的なことがうかが
えるでしょう。
3. 判事(Judge または Magistrate)は、法に基づき判断を下します。法廷では、判事に逆ら
うことや、感情で一方的に話を進めようとする行為は慎まなければなりません。また、
法廷で泣くこともあまり好ましいことでもありません。常に冷静な判断で、判事の指示
に従ってください。どんな進行途中であろうと、離婚の手続きは、精神的にかなりこた
えるものです。離婚の手続の期間、また離婚成立後もしばらく環境が整うまでの間は、
カウンセラーなどのメンタルケアを受けることをお勧めいたします。また、夫婦の間に
子供がいる場合、子供の精神的負担は大きいものです。特別な自覚症状がなくとも、遊
戯療法などを通じて子供の心理を把握できるカウンセラーに相談したり、サポートグル
ープに参加することをお勧めいたします。
その他手続きに関わる関係者について
Mediator:離婚手続で協議が必要になった場合に、二人の仲介役となり、話しを進めていく調
停人です。これは、カウンセリングやコミュニケーションを専門する職種で、ケースに関与し
ない全くの第三者が担当します。調停を行う場所は調停人のオフィスや弁護士事務所、または
裁判所内の別室で行われることもまれにあります。当事者の二人が協力し合い、建設的に話し
合っていけるのであれば、こうした専門家を介する必要はありません。調停人にかかる費用は、
当事者の二人が負担します。
日本語のできる弁護士を雇うことは重要か?
もちろん、日本語の話せる弁護士を探すことが可能であれば、それに越したことはないのです
が、話す言語を基準に弁護士を見つけることはなかなか至難の技かと思われます。また、DV 被
害者や子供が虐待を受けて離婚に至るケースの場合、刑事法、移民法、そして家庭法と、法律
が複雑に絡まるため、取り扱う専門弁護士がそれぞれ変わってくる可能性も大いにあります。
日本語が可能かどうかを問うよりは、むしろ、弁護士が1)その手続を行うカウンティ―(郡)
裁判所関係者と精通しているかどうか、2)こちらの言い分に深い理解を示し、前向きに主張
2
できる、押しの強い弁護士か、3)土壇場に強く、逆境でもてきぱきとこなすことができるか、
などを判断基準で探すことも一つの手だてでしょう。弁護士との相性も大いに影響します。ほ
とんどの弁護士は、初回の相談は無料で受け付けておりますので、弁護士を雇うか雇わないか
決める前に、一度相談してみることをお勧めします。また、弁護士に書類のチェックをしても
らうことも有効でしょう。
弁護士会のサイトから、コロラドに登録している弁護士を探すことができます。
Colorado Bar Association:http://www.cobar.org/directory/
また、英語を苦手とする利用者のために、裁判所では通訳者をリクエストすることができます。
また、場所によってもまちまちですが、裁判所で通訳者を手配できない場合、個人で見つけた
通訳者を同伴できるよう、事前に裁判所の許可を得ることも可能です。
コロラド州裁判所に登録の通訳者に関する情報:
http://www.courts.state.co.us/Administration/Custom.cfm?Unit=interp&Page_ID=117
裁判所経験者の話によれば、裁判の手続は非常に早く淡々と行われ、判事の言っていることが
聞き取りにくい場合もあるので、通訳者を付けることが安心感につながるそうです。逆に日本
語を話せる弁護士をつけるよりは、その方が有利に働いたとおっしゃっていました。
弁護士とのやり取りは、メールだったり、また弁護士のオフィスに出向き、一対一で話し合う
など、比較的時間も取れますし、わからないことがあれば聞き返し、丁寧な説明を求めること
もできますが、法廷では判事にそういうことを求めることができません。法廷では誰もが少な
からずプレッシャーを感じるものです。そのために言語サポートがより重要だったと報告者は
述べていました。
弁護士を雇うことが経済的に困難な人のために
どの州でも無料で法律相談に応じる団体や、裁判所内でもそういったサービスが設けられてい
ます。また、DV などの被害に合った方には特に被害者支援団体がそうしたサービスを提供して
います。一般向けと DV 被害者向けの法律相談窓口をご紹介します。
1.一般離婚法律相談
Colorado Legal Services
低所得者層のための法律相談や法律講習会などを無料で提供しています。コロラド州内主要市
に事務局があります。各事務局の住所や連絡先は、下記のウェブアドレスから見つけることが
できます。(注)民事裁判のケースのみであり、刑事法は扱っていません。DV などの被害に合
った場合は、下記2.の各窓口をご参照ください。
http://www.coloradolegalservices.org/
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Rocky Mountain Immigrant Advocacy Network (RMAIN)
国外退去問題などで移民法に関わる方々への相談を受け付けています。
http://www.rmian.org/
3489 W. 72nd Ave., Suite 211, Westminster, CO 80030
303-433-2812
2.DV 被害者向け相談窓口
Project Safeguard (Legal Advocacy for Victims of Domestic Abuse)
DV 被害者への裁判支援やシェルターの手配、法律相談など、全面的な協力とサポートを提供し
ています。必要に応じて、通訳者の手配も可能です。
http://psghelps.org/
Adams County: 303-637-7761
Arapahoe County: 303-799-3977
Broomfield County: 720-865-9159
Denver County: 720-865-9159
Victim Advocates at the Office of the Denver District Attorney
デンバー市(および郡)の提供する DV 被害者のためのサポートプログラム。法的な手続きや
カウンセリング費用の負担など、被害者が一日も早く回復できるよう、さまざまサポートを提
供します。
http://www.denverda.org/DA_Programs/victim_info/victim_advocates.htm
お問い合わせ:720-913-9000 またはメール [email protected]
Boulder County Domestic Abuse Prevention Project
ボルダ―市(郡)の提供する、家庭内虐待の被害者向けの情報案内
http://www.bouldercounty.org/family/seniors/pages/emergencyhelp.aspx
Colorado Springs Police Department Victim Advocacy Unit
コロラドスプリングス市警の提供する被害者向けのプログラム (VAP)。被害届を出した方が必要
なサポートを受けることができます。
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http://www.springsgov.com/Page.aspx?NavID=4391
719-444-7777 またはメール [email protected]
Colorado Organization for Victim Assistance
犯罪被害者への法的手続きやメンタルケアのサポートなど、総括的な援助を提供しています。
http://www.coloradocrimevictims.org/about-cova.html
90 Galapago St., Denver, CO 80223
303-861-1160
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