現 代 オーディオ 四 方 山 話

現 代 オーディオ 四 方 山 話 第1版 2011.6
第2版 2012.4
目次
prologue
前書き
1.オーディオ趣味
オーディオは趣味か? 音質向上をめざすのがオーディオ趣味
2.音質の良し悪しは難しい
写真は残る、音は一瞬
3.いじれることがオーディオ趣味には必要、そのための装置選び
名機はいじることが出来ません
ス ピーカ、アンプ、真空管アンプの音は良い?
プリアンプ、パッシブプリアンプ、CD プレーヤ、ネットワークオーディオ
スピーカケーブル、電源ケーブル、家庭用電力送配電、電力のアース、
オーディオのアース、 リスニングルーム、接点不良、聴力検査
4.音楽ソースのいろいろ
CD、SACD、レコード、ネット配信、DVD
5.オーディオで気になる技術と用語
デジタル、LP の音、お袋の味、蕎麦屋のカレーライス、ビットレート、Canon コネクタ(XLR)と平衡回路、
負帰還、 デシベル、ダイナミックレンジと階調数、量子化の方法、オーバーサンプリング、ジッター、
1ビットプロセッサーとマルチビットプロセッサ 、アンプのクラス、シングルアンプとプッシュプルアンプ、
ダンピングファクタ、スピーカマグネット、雑音、プロ用・放送局用、 装置の接続(入出力インピーダンス)、
位相のずれ、フォノモータ、回転むら、ダイナミックバランスとスタティックバランス
6.オーディオに必要な性能を知る
オルソン博士の提案、音の強さは0d B が0.2 μ ヘクトパスカル、
MarantsPM5003(2万4千円)の性能は、JBL4348(75万円)は市販アンプで鳴るか、
アンプの価格は出力で決まる、アンプの感度と最大出力は無関係
7.オカルト化したオーディオ批判
未知の物がある、コード・ケーブル、デジタル、いわしの頭、錯聴
音が良くなる、それ本当ですか
8.これからのオーディオシステムの構成はこうなる
パソコン、インターネット、AV との融合
9.レコードのデジタル化はこうすれば出来る。
圧縮・伸長(Code-Decode) デジタル音楽の形式(フォーマット)
10.パソコンはオシロスコープや周波数発生器になる
11.補足説明
アンプの構成とデジタル
Prologue
マニオ これから秋葉原に行くけど一緒に行かないか
治作 今度は何を買うんだい。
マニオ スピーカーケーブルよ。
治作 そんなの秋葉原まで行くこと無いじゃないか。
マニオ 秋葉原じゃないと無いの。そん所そこらにあるものと違うんだよ。音の良いのは1m1万円以上するのは
ざらさ。お前は何使ってんの。
治作 おれは普通の電気コードさ。
マニオ それじゃ話にならないな。秋葉原で良く勉強するんだな。
<秋葉原>
治作 ウワ!ずいぶん色々あるね。えらい値段の高いのやら、太いのもあるね。
店員 スピーカーケーブルをお探しですか。今はどんなのをお使いですか。
マニオ ○○のケーブルだけどもう少し潤いが欲しくて。
店員 そうすると相当良いものでないとご希望の音にはなりませんね。ご予算は。
マニオ 5 万円くらいだけど。
治作 ええっ、そんなに高いの買うの。
店員 そうしますと、××はいかがですか。表皮効果を考慮した多線巻きの構造になっていて、電流による磁界
の影響も押さえられています。今良く出てます。4mなら 4 万 8 千円でご予算に入ります。
治作 表皮効果、磁界の影響、聞いたこと無いなあ。スピーカーコードじゃ音は変らないと思うな。
店員 スピーカコードによる音の違いは高級な装置になると良く分かるのは今や常識です。
治作 へえ・・・
<マニオ宅>
マニオ 太くてアンプの端子に着けにくいな。
治作 ニッパーで先を切って細くしてやろうか。
マニオ とんでもない。なんとか着けるよ。
マニオ ウワ!すごい音だ。バイオリンの音が潤いのある音になって、そこで弾いているようじゃないか。
治作 そうかな。前とあまり変らないようだけど・・・・
マニオ 微妙な音の違いが分からないようじゃオーディオが趣味なんて言えないぜ。
治作 ・・・・・
<一月後のマニオ宅>
来客 すごい装置だね。さっそく聴きたいな。
マニオ とっておきの CD を掛ける。鳴り響く交響曲
来客 いい音だね。迫力あるよ。
だけど、高音がもう少しスカッと出れば良いね。ちょっとベールをかぶっているようだ。
あれ、君はスピーカーコードに××使っているの。それって、先月の S 誌で低音は良いけど高音は少し癖
があるって○○先生が書いてたよ。
前のスピーカーコードはどうだったの、聴かせてみて。
マニオ しぶしぶ元のコードに付け替える。
来客 やっぱりね。すっきりした高音で、全体に落ち着きのある音になったな。僕はこっちの方が好きだな。
マニオ ・・・・・
日曜に秋葉原にスーパーツイータとスピーカケーブルを探すマニオの姿が見られたのは当然であった。
これを読んで思い当たる方には是非一読して欲しいです。また、その予備軍の方や、これからオーディオをやっ
て見たいと思って専門雑誌を読み始めている方にも目を通して欲しいと思います。
デジタル時代のオーディオ趣味について考えてみました。
前書き オーディオ雑誌やオーディオ入門書は製品の紹介や予算にあった組み合わせの記事が多くを占めています。
入門用はどれ、中級用はどれ、なにそれのスピーカと相性の良いアンプはこれなどという記事です。そして、そこ
には技術や理屈の説明がほとんど無く、メーカーや販売店の宣伝本に近い内容で私には物足りません。また掲
載されている製品の中にはオカルト的な技術根拠の無いものも多く含まれています。一方インターネットで交わ
されている議論を見聞きすると、専門的な知識を持った人が参加していますが、音質への影響は微々たる物で
はないかと感じることがしばしばあります。広い道からそれ、細い脇道に迷い込んでいるように思います。
そこで、自分で現代的で常識的な趣味のオーディオの本を書いてみました。先人が研究して到達した技術知
識と現代のインターネットやデジタルの技術をミックスすると、アマチュアのオーディオはこれで良いのではでは
ないかと考えてみたのです。そのなかで日ごろ疑問に感じていたことや自分でも確かめたかった技術上のあれこ
れを明らかにしてみました。ただし、私の興味のあるところだけ取り上げているので、体系的にまとめたものでは
ありません。そういう意味で「四方山話し」というタイトルにしました。ここに書いたことに同感してくれる方がいれば
うれしく思います。特にオーディオ専門誌などを見ていろいろ音質向上を試行錯誤している方の目に止まればと
思います。
個々の記述レベルはその分野の専門家にとっては低レベルと思いますが、この程度であっても、ここに書い
た全体を知っている方は少ないと思います。また、オーディオや電磁気学などの初歩は前提にしていますので、
まったくの入門者にはすこし難しいかもしれません。
私は大学三年生の頃からオーディオに興味を持ちました。1966年くらいで世の中がオーディオブームに
なっていたこともありますが、電気工学を勉強していたことも大いに関係あります。回路の勉強には実際に作って
みることが役に立ちます。実際全波整流回路などは常識的な知識になりますし、真空管にかける電圧が具体的
にどのくらいかなどが実践的知識として得られました。教科書だけでは体得できなかったと思います。
はじめに作ったオーディオ装置はコーラルの8 A 7という20cmフルレンジのスピーカを自作の箱に入れました。
20mm厚の合板を材木屋で切ってもらいました。高さ60cm幅40cmくらいのものでした。アンプは6BQ5PPで
10Wくらいです。出力トランスはタンゴのオリエントコアを使用したものです。プレーヤはニートのモータとトーン
アームとカートリッジが一式セットになっているもので箱は自分で作りました。
出来上がったものに青江三奈のデビュー曲「恍惚のブルース」のレコードを掛けてみたら、これがなかなか
生々しく、下宿の友人もほめてくれる音が出ました。学生のお小遣いで作ったので、お金は大して掛かっていま
せんが、褒められて一層オーディオに興味を持つきっかけになりました。研究室にオシロスコープなどはありまし
たので、あれこれいじっては効果を確認したりしていました。
ボリュームやセレクタを通すだけで波形はなまってしまうなども知りました。
就職してお金が使えるようになると、身分不相応なものにも無理して手を出すようになり、結局その頃手に入
れた JBL のスピーカユニットなどが現在も私の最高級品になっています。1970年代の終わり頃に鳴っていた音
が私の最高の音だったようです。30歳台から50歳台の20年間がオーディオ趣味の空白期間でした。装置に電
源スイッチを入れない期間も10年くらいありました。この間もまったく興味がなかったわけではなく、本屋でオー
ディオ雑誌の立ち読みをするくらいはしており、業界や技術の動向はおよそ掴んでいました。
さて、20年のブランクの間に何がおきたかというと、最大の事件はオーディオブームは過ぎ去ってしまい、マイ
ナーな趣味になってしまったことです。そして、ハイエンドオーディオと称する金に糸目をつけない方向と、そし
て、アクセサリと称する技術根拠のないオカルト的な方向に行ってしまったことです。
もっと大きいことはコンピュータの普及で音楽がインターネットで売買され、パソコンで加工や管理がされるよう
になったことです。携帯音楽プレーヤの Ipod は iTunes という音楽管理とネット音楽購入のパソコンソフトと連動
する大掛かりな仕組みになっています。もはやオーディオもインターネットやパソコンやデジタル技術抜きには考
えられなくなりました。
アナログでなければ潤いのある音は出ないと主張するのはフィルム(銀塩)写真でなければ出せない色合いが
あるとデジカメを拒否する人に似ています。これから合理的なオーディオを目指そうとすればデジタルを勉強し、
積極的に活用することが重要と思います。そもそも、純粋にアナログで成り立っている音楽ソースはもはや手に
入りません。大金持ちが演奏家を呼んでスタジオでアナログ録音する以外手はありません。
私は趣味を再開するに当たり、装置を買い換えたりして音質を追求するオーディオ趣味ではなく、パソコンな
どを出来るだけ利用し、新しい方向を目指そうと思っています。以下に日ごろ思っていることなどを記述し、オー
ディオ趣味の方の参考に供したいと思います。私は写真も趣味の一つなのでところどころで対比させて理解の
助けにしています。
私はオーディオ技術の専門家ではありませんが、電気工学や自然科学の基礎知識はありますので、技術につ
いての記述内容は基本的に正しいと思っています。そう言うものの専門書やインターネットを見ていくつかの記
述は修正しました。音響機器とその使い方(理工学社)、 ラジオ回路集(低周波増幅器編)(オーム社)、イン
ターネットの Wikipedia は特に参考にしました。また、今2010年時点での私の知識に基づいています。
1.オーディオ趣味
オーディオは趣味か?
趣味には頭を使う囲碁将棋、体を使うゴルフやテニス、手先を使う工芸などいろいろなタイプがあります。これ
はほんの一例であって、挙げればいくらでもあります。いずれにしても、勉強したり、練習したり、研究したりする
ことにより、少しずつ強くなり、上手くなりしていくのが楽しいのです。自分の目指すところ、あるいは頂上を目指
して少しずつ歩いていきます。
大金が必要な趣味もあります。骨董や絵画の蒐集は代表的です。これも歴史を勉強し、意味のある蒐集をする
必要があるし、真贋を見分ける力を養う必要もあります。大金を積んで名品を手に入れて自慢したいということだ
と成金趣味というものでしょう。
さて、オーディオはどうなのでしょう。ステレオ黎明期の 1950 年代から 1960 年代くらいまでは努力すれば
上手くなる趣味の分野でした。オーディオがはやる以前、今から 50年位前は大きな会社が製品化するようなも
のではなかったのです。
愛好者は部品を買って自分で作るしかなかったのです。作るには技術書を読んで、勉強しなければいけま
せんでした。当時の技術書は現在のオーディオ本よりはるかに高度です。だからオーディオは難しかったので
す。勉強すればするほど良い音が出せたのです。
ブーンというハム音はフーンくらいに小さくなり、最後はシューという気にならないホワイトノイズだけに改善出
来たのです。 1970 年代以降は専門家が設計し、工場で製造する工業製品になっていて、現在は素人が口出
しするようなレベルのものではありません。価格に対する完成度が高いのです。アマチュアが高性能の装置を作
れる時代ではありません。
研究が進み、完成度の高い成熟した工業製品になってからは買った装置で音は決まってしまうといって差し
支えありません。努力しようにもやりようがないのです。装置をコードでつなげばそれでおしまいです。そこで、評
論家と称する人があれはどういう音がするとか、どのアンプとどのスピーカは相性が良いとか悪いとか雑誌に書
き、マニアはそれを頭に叩き込んで、お金を貯めてはグレードアップに走ります。
オーディオは音楽情報をCDなどで買って再生するだけの狭い趣味であることが写真趣味と較べるとはっきり
します。デジタル写真は撮影からプリントまで自分で出来ます。画像処理で色調やコントラストを調整し自分のイ
メージに近づけることも出来ます。それと較べると、オーディオは録音 ( 撮影 ) の部分がありません。しかも再
生でもいじることが出来ません。電源を入れてボリュームを上げ下げするだけです。創造性が無く、何もすること
が無いのです。
もう一つのオーディオの特徴は音の良し悪しがはっきり分からないことです。絵や写真の上手い下手もはっき
りしない所がありますが、とにかく作品をはっきり見ることが出来るので、評価しやすいと言えます。音は一瞬にし
て消え去り、耳に留めて置くことは出来ません。評価の難しいゆえんです。ということは、頂上を目指す途中の道
標もはっきりしないのです。
良い音を出すためのHow to本が少ないのはオーディオ趣味がそれほど難しく無いことを示しています。
色々勉強したり、練習することも無いのです。お金を出して買ってきた装置で音は決まってしまうからです。有名
メーカの製品であれば高価な装置ほど概ね音が良いということです。車を買って乗るのと変わりありません。
趣味というものは何か努力して上手くなろう、良いものを作ろうというものです。
買ってきて置くだけではつまらないのです。これでは趣味になりません。
そこで今ある装置で何とか音を良くできないかという願望とそれを商売にしたい人の合作というべき物が出てき
ました。それが音質改善グッズです。
アクセサリーと称するケーブル、コード、コンセントの類、今や専門の雑誌まで出ています。
オカルトグッズと言えるCDの帯電除去装置、CDをクリーンにするシート、場を制御する装置の類、こういうもの
に効果抜群とか特選とか書いて雑誌に紹介する評論家がいます。
過剰品質のダイキャストで固めたCDトランスポータ、スーパーツイータ、SACDの類、マニアの要求にメーカー
が悪乗りしていると思います。
こういうものはいくら勉強しても理屈が分かりません。音を悪くするとは言いませんが、良くなる根拠が見つかり
ません。音質改善に結びつかないので趣味になりません。
少しでも勉強と努力が実を結ぶ趣味の世界に戻るにはどうしたらよいかということです。
(1)出来るだけ自分の手の入った装置を作る(改善の楽しみを味わう。自作すれば部品交換により音質向上が
期待できます。)
(2)オーディオに必要な技術や性能数値を知る(過剰な投資を避ける。とんでもグッズを買わない)
(3)デジタル音楽情報の加工、編集をする(勉強により音楽情報の利用が広がる)
(4)パソコンを利用する(音楽管理ソフトを使えば、例えば音楽ライブラリーのリスト作成が出来ます)
このような趣旨で本書を書いています。
大金を出さないと頂点に近づけません。しかもそれ以上にすることは出来ません。そして、おかしなオカルト道に
迷い込みます。そうではなく、頂点でなくても色々工夫する趣味に戻ればよいのです。
オーディオ趣味は音楽鑑賞趣味とは違います。音質向上をめざすのがオーディオ趣味です。
ポケットラジオやCDラジカセでも音楽を楽しむことは出来ます。聴く人が曲がどのようなものか知っているから
です。言い換えれば脳で聞いているのです。空気を振るわせるスピーカから出る音で感動しているわけではあり
ません。こういうのはオーディオ趣味ではありません。やはりスピーカが揺るがす空気振動ではっとする生々しい
音が聴けるかどうかが実用と趣味の分かれ道でしょう。
ミニコンポはどうでしょうか、美空ひばりなどのボーカルやバイオリンは生々しく聴けるかもしれません。しかし、
オーケストラの大編成が生々しく再生できるとは思えません。楽器が分離してハーモニーになるか、コントラバス
の低音が聴こえるか、大きな音が歪まないか、これをクリアすることは出来ないと思います。スピーカが小さいの
が致命的です。結局、単体のコンポーネントの組み合わせが必要で、特にスピーカは大きさが必要です。アン
プやCDプレーヤーはベーシックなものでも趣味のオーディオの世界に入れると思います。
オーディオ趣味はどちらかというと音楽より装置の方に重心があります。蒸気機関車の音や祭りの太鼓の音
を録音再生して生々しいと喜ぶ人もいます。しかし、再生はやはり音楽が主体ですから、音楽が少しでも良い音
になるよう改善する努力がオーディオ趣味でしょう。そういう意味では改善の余地の無い、いじれる所の少ない
装置は面白くないのです。
大型液晶画面のTVが売れています、技術も日進月歩です。高価なものもあれば廉価なものもあります。廉価
なものを買ったら画面が歪んでいたり、色がおかしかったり、鮮明でなかったりするでしょうか。普通の人は何の
問題も感じないはずです。しかし、高価なものと並べて比べれば違いが分かるかもしれません。4倍速のTVは
残像が少ないかもしれません。真っ黒さも言われてみれば違うかもしれません。所詮その程度の違いです。
AV雑誌で評論家が点数をつけても、点数ほどの差が分かる人は少ないでしょう。
ブラウン管TVは姿を消しましたが、画質が悪いので液晶に替わったのではありません。むしろ残像や明暗比
(ダイナミックレンジ)では現在もブラウン管を越えていないといわれています。実際画像モニターはブラウン管
式が続きました。大型にすると大きく、重いということです。アンプの真空管と半導体の話に似ています。
耳は目ほど鋭敏ではないのでオーディオではもっと差が分からないでしょう。曖昧な音質を云々するのですか
ら、何とでも言えるし、これでよいのかと不安も生じるわけです。将棋や囲碁のプロにはアマチュアは高段者で
あっても百回やっても一度も勝てません。生の演奏会にはどんな高額のオーディオセットを持ってきてもかない
ません。しかし、アマチュアが将棋や囲碁を楽しめないのかといえばそんなことはありません。高段者はもとより
ザル碁であっても楽しくて仕方の無い人は大勢います。しかし、本当の面白さは戦略や戦術のぶつかり合いが
無いと味わえません。闇雲に打ったのでは分からないでしょう。オーディオも客観的に見て碁の形になっている
程度の質が無ければ趣味のオーディオとは言えません。
今日のマニアと称する人はスピーカーケーブルや電源ケーブルなどアクセサリと称するものに大金を使い、
それを交換して音が良くなったとか言ってます。機器の内部がいじれないので、そういうことしか出来ないのです。
理屈では何の効果も望めないようなことなので、常識的なオーディオ趣味ではありません。
2.音質の良し悪しは難しい
音の良し悪しを明確に感じ、表現することが出来ません。それゆえ、根拠の無い改善策が沢山あり、惑わし、
惑わされます。
オーディオ雑誌に評論家が製品を評価して特選とかベストバイとか書いています。この人たちは常に色々な
製品を試聴していますので参考になる情報と思います。しかしながら、数多くの製品の中からなぜその製品を試
聴したり、推薦したりするのかと考えると、持ちつ持たれつの雑誌社やメーカ、商社との関係を思わずにいられま
せん。雑誌や商品が売れるように書くことが必要です。便宜を計らってくれる会社に厳しい評価をすることは出
来ません。そもそもどこが改良されたかなどの情報もメーカから提供されます。改良版が出るたびに格段に良く
なったように書きます。そうするとこの何十年の間にものすごい音質向上があったかのように思いますが、昔の
マッキントッシュやJBLを聴いてみれば、それらは依然として魅力ある音なのです。
要するに業界全体が商売にプラスになるように雑誌は出来ていると思えば良いのです。そう思って読み、自
分の知識に照らし合わせて判断すれば、あれもこれもと買い換えることはないのです。 私は購入する時はこうい
う記事を大いに参考にしています。自分では多数の製品を試聴することは出来ません。
写真は残る、音は一瞬
写真とオーディオは機材自慢が多い点でよく似ています。しかし、決定的に違うのは写真は残るので、 A と
B を較べることが出来ます。写真の真ん中は歪がないけれど周辺は丸みを帯びている、周辺が暗くなっている、
看板の文字がぼやけているなど見れば分かります。こうすれば写りが良くなると主張した場合、本当かどうか誰
でも確かめることが出来ます。言われなくては分からないようなわずかな違いも言われれば気が付きます。言わ
れても分からなければ、効果は無いといわれてもしかたがありません。カメラに鉛を張ったら写りが良くなったと
か、レンズの接点を磨くと画質が鮮明になったなどという話は聞いたことがありません。論より証拠で分かるから
です。
一方、オーディオは音が瞬時に消えてしまいます。再現性や比較が困難です。だから何とでも言えます。出
た音を録音して、AとBの波形やスペクトルの違いを分析したり、優れたな装置で聴き比べればある程度は分か
ると思いますが、どうでしょう。
オーディオ評論家という職業は日本だけだそうです。この人たちは製品の物理特性などを測定することなく
定義の不確かな用語を使って雑誌に美辞麗句を並べます。
それを読んだマニアが大金を払って買い換えます。民生用の音響機器が時代と共にそんなに良くなってきたか
を考えてみると、この人たちがほめてきたことがあてにならないことが分かります。
音響機器は何十年も前に十分な音質に達していたのです。真空管は半導体に替わりました。音が良いから
ではありません。寿命が長い、小型軽量、OTLで電気特性の良いものが作れる、などが商業的に良かったので
す。コンピュータなどと違い、オーディオに限れば真空管で良かったのです。産業の発達過程で半導体デバイ
スのほうが商売上有利になったのです。もっと言えば真空管はオーディオ以外に使い道がなくなったので、大
メーカとしてはそんなものは作っていられなくなったのです。
スピーカもJBLやALTEC、TANNOY全盛時代の製品は構造も、素材も素晴らしく、箱の作りも惚れ惚れす
るようなものでした。もちろん音も素晴らしかったのです。現在、これにトータルで匹敵する製品は見当たりませ
ん。
左がタンノイオートグラフです。こんな凝ったもの良く作りました。右がJBLオリンパスです。
キャビネットの木工が内容を表す芸術的な出来栄えです。
音質をどう評価するかは大きな問題です。原音再生は出来ないので、できるだけ心地よく、聴きやすい音に
まとめようというのが欧州の態度といってよく、タンノイ、クオードなどが代表的です。これは普段演奏会などを聴
いている人たちが多いという事情を反映していると思います。米国は原音再生に向かって肉薄しようとしました。
アルテック、JBL、マッキントッシュなどが金に糸目をつけず、物量を投入して製品化したスピーカやアンプは聴
く前から圧倒される雰囲気を持っていました。日本にはもちろん両派がいたわけですが、どちらかと言うと原音
追求と思います。ただ、貧しかったので米国のような製品は作れなかったということです。これは70年代くらいの
話で、昨今は事情が変っていると思います。
音の良し悪しはメータで表示できるものではありません。絵画や写真が良いかどうか言うのが難しいのと似て
います。非常に優れているものは誰でも分かります。駄目なものも分かります。その中間は難しいのです。
装置の良し悪しを測定で判断するか、試聴して判断するかということですが、測定値を良くした上で、試聴結
果も良くするのが妥当でしょう。測定値は一定のレベルに達していればそれ以上追求しても試聴結果が良くなる
ものでないことが実験的に分かっています。問題は試聴結果です。音が聞こえないとか、びり付くとか、極端に
悪ければ誰でも指摘できますが、一定のレベル以上であれば良し悪しを判別して表現できるでしょうか。非常に
難しいと思います。音の左右の広がり、奥行き、すなわち立体的に聴こえるか、多数の楽器がそれぞれ分離して
聞こえるか、ハーモニーが聴こえるか。高い音から低音まできれいに聴こえるか、無制限に音が伸びる躍動感が
あるか、人の声が自然か、などがありますが、程度を表す表現が難しいです。評論家がいろいろな表現をするた
め、読む方は右往左往してしまいます。オーセンティック( authentic :本物の)などと外国語で書かれても、読
者は何のことか分かりません。グルメ番組の味の表現みたいなものです。いくらほめてもラーメンはしょせん
ラーメンの範囲でしかないはずですが、言葉のマジックでそれ以上の素晴らしい食べ物のように思わせることも
出来ます。
写真機用のレンズは光量や分解能を測定します。単位の幅に何本の線が区別できるか、歪みや周辺光量の
低下も調べます。光学的な性能に差がありチャート(色々なパターンが印刷されている)を撮影すると目で確か
められます。しかし、風景や人物などの写真を撮影してみると人間の目には性能差が良く分からないのです。そ
れで、ライカのレンズは柔らかく味があるなどと言うのはオーディオと同じです。ただし、目は耳よりはっきり見分
けることが出来ます。
音の奥行き感とか帯域の広さなどと個々の項目に分解して点数をつけても難しく、結局、試聴している音楽をそ
のままずっと聴いていたいと思わせる装置が良いものという気がします。
3.いじれることがオーディオ趣味には必要、そのための装置選び
90点オーディオの楽しみ方
オーディオの頂点を目指して長年大金を使って頑張っている人がよく雑誌に紹介されています。国内、海外
を問わず名機と言われるものを揃え、リスニングルームも整えています。それでもなお改善に意欲を燃やしてい
ます。頂点に近づくほど改善には多額のお金が掛かります。
ここではそれほどお金をかけず、楽しむにはどうしたらよいかをテーマにしたいと思います。それには90点で
よしとする事です。これで金銭的ハードルは桁違いに下がります。
100人からのオーケストラの演奏を紙一枚のスピーカから出そうというのは土台無理な話です。どんなに頑
張っても、原音再生は出来ません。コンサートを聴きに行く人は100人ものオーケストラの弦楽器、木管楽器、
金管楽器などの出す音がスピーカの紙一枚から再現できるなんてはじめから思わないでしょう。そのとおりで、ど
んなにお金をかけてもコンサートホールを再現できません。
しかし、ほうふつとさせる、それらしく再現することは出来ます。紙一枚のスピーカで大オーケストラをそれらし
く再現できることを不思議に感じないといけません。しかも妥協するレベルを少し低くすれば費用は大いに安く
済みます。それでも音質は十分満足できます。
オーディオ趣味ではいじることが出来ることが大きな要素です。何か改善できないか、工夫したいと思うのは
当然ですが、その時何がいじれるかです。
音はオーディオ装置全体の成果物です。装置全体の出来栄えで音質は決まります。アンプだけ見ても構成
する部品は最も簡単なものでも100点以上あるでしょう。半導体プリメインアンプなら数百点はあるでしょう。トラ
ンジスタや FET 、真空管などのアクティブ素子、抵抗、コンデンサーの類のパッシブ素子、電源トランス、出力ト
ランスなどの大型、重量物、そしてボリューム、スイッチ、ピンプラグ、スピーカ端子、フューズボックスといった小
物もあります。配線材、プリント基板、半田といったものもあります。シャーシやケースもあります。装置間をつなぐ
コードやケーブルもあります。さらに、どのような回路にするかもありますし、半田付けや配線引き回しもあります。
CD プレーヤやスピーカも部品点数は多いです。音質の良し悪しはこれらの総合的な結果ということです。
オーディオ装置の音は大なり小なりそれぞれのパーツに依存しています。すると、そのうちの一つを交換して
音が変ることは原理的にあります。どのパーツがどれだけ音質に影響しているかということを統計学的に求めよう
とすると、パーツをひとつずついろいろな種類のものに交換しては、多数の人が試聴して評価する必要がありま
す。パーツの数が多すぎてとても現実には出来ません。そこで、個々のパーツの性能を検証するアプローチを
することになります。そして問題が大きいと思われるものに着目します。例えば、出力トランスです。この周波数
特性を測定すればオーディオ領域ですら平坦ではありません。抵抗の周波数特性を測ればはるかに広帯域に
平坦です。そこで、出力トランスがかなりネックであることが分かります。電源トランスも容量が小さいと、大音量時
に電流が供給不足になって、性能が出ません。電源トランスも重要であることがわかります。オーディオ技術の
長年の経験で音質に影響の大きいパーツはほぼ分かっています。ピンプラグやスイッチは新品では電気的性
能差は出ないといってよいでしょう。こういうものは経年変化で優劣が出てきます。難しいのはCR類です。電気
的測定ではほとんど差はないと思います。しかし、フィルムコンデンサーがオイルコンデンサーより音が良いとか、
いや○○会社の何に限るとか色々な説があります。マニアの心を掴んでいるメーカはカタログに ××のコンデン
サー使用などと書いています。コードやケーブルもパーツのひとつですから、原理的には音質に影響が少しは
あります。しかし、気にするほどの差は無いでしょう。それは単体の電気的測定値に差が見られないことから言え
ます。CR類など効果のよく分からないものを交換するのはコストが余りかからなければ試してみるのも楽しみの
一つです。コンデンサーなどはいくら高くても数百円です。もし効果があればめっけものです。
市販品を買って使う場合は内部のパーツはいじれないので、CD、アンプ、スピーカの三つのパーツでオー
ディオ装置は出来ていることになります。これを買い換えない限りは音質向上が出来ません。お金が掛かります。
それもままならないとすると、コードやケーブル、はては壁コンセントなどに一縷の望みをかけることになります。
残念ながら、これらの電気的測定結果に差異は無いでしょうから、何万円もかけるのはやめたほうが良いです。
ケーブルやコードは1000点もある装置の一つのパーツでしかありません。ケーブルを交換することと、コンデン
サーをひとつ交換することは音質にとって同じようなものです。したがって、出来るだけ自分の手の入った装置
にしておけば、安い費用で改善する可能性が無限といってよいくらいあり、面白いのです。
ここのところをもう少し詳しく「オカルト化したオーディオ批判」の項で記述しますのでご覧ください。
名機はいじることが出来ません。もし素人がいじったらそんなものは買い手がつきませんから、下取りも難しく
なります。故障しても保証を受けられません。丸ごと取り替えるとまた大金が要ります。それで、スピーカーケー
ブルだの電源ケーブルといったいじれるものに凝り始めることになります。残念ながらこれは科学的根拠に乏し
く、効果があるとは思えません。何かしたい思いを満たしてくれるだけです。90点オーディオは科学的根拠のな
いことをしません。その分コストが低くなります。そして名機を使わず、なるべくいじれるようにし、改善の楽しみを
満たします。
3.1 スピーカ
自作すればいじるところが増えます。といってもスピーカユニットは作れないので、ユニットは購入することに
なります。最近はユニットを販売するメーカは少なく国産ではフォスター電機しかないと思います。台湾などの海
外製品もあるようですが性能は分かりません。出来るだけ大きな箱を作り、なるべく大きなフルレンジスピーカを
着けると失敗はありません。密閉箱にしたり、穴を開けてバスレフにしたりできます。バスレフのダクトに吸音材を
入れると特性が変化し、完全にふさげば密閉箱になります。高音の質を上げるにはツイーターを追加しますが、
ネットワークを作ったりして楽しむことが出来ます。さらにスコーカをつけて3ウエイに出来ます。ただし、自作で
はメーカ品を凌ぐものはまず出来ないです。そこで、メーカは作らないようなもの、例えば、大型のフロアタイプ
や無指向性スピーカなどにチャレンジするのが面白いと思います。どんな物もある周波数に共鳴します。固有
振動数と言います。スピーカはその周波数をf0と言います。仕様書には必ず記載されています。音になりませ
んので、この周波数以下は再生できないと考えた方が良いです。
日本放送規格(BTS)はスピーカ測定の箱として高さ120cm、幅90cm、奥行き60cmの密閉箱を決めてい
ます。これは相当大きいです。16cmくらいのスピーカでもこういう箱に入れるとびっくりするくらい低音が豊かに
なり、雰囲気のある音が出ます。スピーカシステムの市販品を購入する時はなるべく能率の良い大型のものを選
んだ方が良いです。その方が低音が自然で、小出力アンプでも対応出来ます。アンプを自作する時は軽量で
安価にできます。
スピーカは紙を振動させ、空気中に粗密波を放出し、それが、人の耳に伝わり音として聴こえるわけです。紙
の振幅が大きければ大きな音として聴こえます。紙の振動周期が短ければ高い音として聴こえます。ここで重要
なのはスピーカの紙の面積です。普通は円形なので、直径で表します。大きな面積のものと小さいものを比べる
と、大きい紙が押しのける空気の量と同じ量を小さい紙が実現するには振幅を大きくしてやらねばなりません。
丈夫な紙が必要です。そういう紙は重く、動かすには大きなエネルギーが必要です。すなわち、能率が低いで
すから、大きなアンプが必要になります。
16cmと38cmのスピーカは面積5.6倍違います。38cmの紙が1mm動くなら16cmは5.6mm動かなくて
は同じ大きさの音は出せません。一方、高い音を出すには細かい振動が必要です。大きい紙を細かく動かすの
は途中が変形したりして難しいのは容易に想像できます。高音には小さいスピーカーが有利ということです。大
口径のスピーカは高い音をツイーターに任せれば高音から低音までカバーできます。最近のスピーカは口径の
小さな物を小さい箱に入れて、大きく振幅させています。能率が低いため大出力アンプを必要とします。大口径
スピーカなら10Wのアンプでよく、アマチュアが作りやすいアンプです。
スピーカの構造
コーン紙
コーン紙
ボイスコイルとボ
ビン
この下に強力な
磁石があります。
リード線
エッジ
弾力のあるダンパー
はボイスコイルボビン
を支え、コーン紙に
振動を伝えます
エッジを貼り
付けます
この隙間にボイスコイ
ルボビンを差し込み
ます。
この隙間に強力な磁
石による磁場があり
ます。
ダンパーを貼り
付けます
3.2 アンプ
自作するなら真空管の方が容易です。テスターだけで作成できるものもあります。特にキットなら失敗はない
でしょう。メインアンプとプリアンプは独立させる方が配線が混み合わず、作りやすいです。それにメインアンプか
らの雑音を拾うことがありません。特にレコードを聴く人はRIAAイコライザも内蔵させるべきです。真空管は許
容入力が大きく取れます。数mvのカートリッジでもピークは100mVに達しますが、真空管は容易にクリアできま
す。メインアンプは10Wもあれば家庭では十分と思いますが、余裕を見るなら30Wクラスが適当でしょう。それ
以上はコストもかかり、重量もあります。余裕のあるトランスを使っておけば、パワーアップの改良などは容易にな
ります。
半導体アンプは回路が複雑でアマチュアには難しいです。ヒータを使わず、常温で動作することがかえって
温度補償回路を必要とし、また、出力トランスが不要で回路に直接スピーカを接続できるメリットは反面、異常時
にスピーカを守る保護回路を必要とします。このようにして、半導体アンプは複雑になります。
自作で大変なのはケースやシャーシの穴あけ加工です。なるべく加工済みのものを使うのが便利です。キット
はこの点心配ありません。
市販アンプなら国産有名メーカを選べば間違いありません。もちろん半導体アンプです。入門用で構いませ
ん。あまり高価なものを買っても違いが分かるか疑問です。
ついでに世の中の常識をひとつ紹介します。現在最もよく使われている技術や材料を使うのがコストパフォー
マンス(価格対効果)を高める秘訣です。家を建てるのにプラスター(石膏)ボードと壁紙でなく昔の塗り壁にす
るには大金が必要です。昭和30年代、プラスターボードの出始めは高価でした。塗り壁は安普請とは言いませ
んが、特に良いとは思われていませんでした。最近は通気性や接着剤によるアレルギーの問題から、塗り壁が
見直されています。しかし、今更技術者もいなければ、材料もありません。ですから工事費が掛かります。
この話で行くと現在は半導体アンプがコストパフォーマンスが高いということです。真空管アンプを作るには
部品が少量生産になっていて割高です。500V耐圧のアルミ電解コンデンサは一つ2千円も3千円もしますし、
国内メーカのカタログに見当たらなくなりました。真空管アンプは組み立てラインを作るほど沢山売れないので
熟練工の手作業になり、コストが掛かります。そういう意味で、現在は半導体アンプを購入するのが無難というこ
とです。自作は自分の工賃が只ということや、見てくれにお金が掛からないので、コストパフォーマンスは少し向
上します。
自作アンプならいじるところに困りません。抵抗、コンデンサーは種類が多く、R,C,Lなどの電気特性(数
値)は同じでも、熱雑音などの物理特性は同じとは限らず、音質に影響する可能性はあります。回路図では記
号で示され抽象化されていますから数字が同じなら同じ機能と考えてしまいます。一般にはそれでよいのです
が、厳密には実体のある物ですから物理的な構造や、材料が異なるので、物理特性が異なる可能性があります。
価格が安いので交換してみるのも一興です。出力管も接続によってパワーの大きい五極管、音質の良い三極
管などに簡単に変更できます。ボリュームやセレクタなど使用するパーツにもグレードがありますから、お金が出
来たら高級品に変更するのも良いでしょう。高級といっても音質より耐久性に違いがありそうです。真空管自体
にも製造メーカにより多少の違いがあり、差し替えて楽しむことが出来ます。また、互換性のある真空管に変更も
可能です。
自作する場合はいじりやすくするのが重要です。機能も回路も出来るだけシンプルにします。半田付けもから
げることなく、すなわち真空管ソケットにCR類をつけるときに穴を通した後に先端をねじって取れにくくするなど
はしっかりして良さそうですが、修理したり、改造する時はパーツが取りにくくて困ってしまいます。半田が熔けた
時にパーツを引っ張ればするっと取れるほうが良いのです。しっかりつけることは当然です。半田の種類によっ
て音質が変るといった議論があるようですが、それこそ微々たる影響でしょう。半田の量がわずかであること、部
材どうしが接触するので抵抗は半田だけによるものではないからです。脇道からさらに田んぼの畦道に迷い込
んだような話です。
部品もそれほど多くないので、プリント基板を使わず、ラグ板を使って空中配線すれば丈夫で、改造も容易に
なります。プリント配線より電流容量が大きく、抵抗も少ないです。
いじることを考えて部品の配置に余裕を持たせるなども必要です。小さいケースにごちゃごちゃ押し込めないこ
とです。ラジオの高周波と違い、オーディオは多少配線が長くなっても性能にあまり影響ありません。市販アンプ
の大半にリモコンが付いています。赤外線リモコンと思いますが、こういう無線装置を内蔵して雑音発生源にな
らないのでしょうか。非常に細かいことを言う割にはこういう点は気にしないのも面白いです。
真空管アンプの音は良い?
長い間議論があります。万人が納得する結論はありません。若い人で、真空管を知らない人はなんとなく神
秘的に見える真空管アンプの音が良さそうに思えるかもしれません。また、半導体アンプに飽きた人も今となっ
ては珍しい真空管アンプに期待するのではないでしょうか。どちらもピンからキリまでありますからひとまとめに優
劣を言う事は出来ません。現在では高品質のものはどちらを聴いても区別が付かないだろうと私は思います。し
かし、私が今買うなら有名メーカの半導体アンプを買うでしょう。音質と価格がバランスしていて、アフターサービ
スも安心できるからです。有名メーカは真空管アンプから撤退して久しくなります。現在の真空管アンプのメーカ
は国内、国外を問わず小規模な企業が細々とやっているので、素人は近づかない方が良いです。自分で修理
できる技術があれば別です。また、真空管というだけで中味が期待出来そうも無いものも多いです。
技術的に見てどちらが優れているかを見てみます。1950年代が最も真空管アンプが盛んな時期で、いろい
ろのメーカがしのぎを削っていました。1960年代になって、トランジスタアンプが実用化され、1970年代には
トランジスタアンプ一色になりました。
真空管時代には真空管アンプの音が良いとは思えませんでした。それは日本が貧乏だったからです。真空
管そのものは直線性の良い素子で良かったのですが、真空管は内部抵抗が高く、スピーカを鳴らすためには
出力トランスが必要です。トランスの周波数特性は低域、高域が減衰するかまぼこ型になります。安価なものは
この周波数特性が狭帯域です。可聴周波数全域に性能を高めるには磁性体や巻き線に工夫を凝らす必要が
あり、重量のある高価なものになりました。マッキントッシュなどは贅沢なトランスを付けましたが、貧乏な日本で
はそのような高級なトランスは一般商品には付けられなかったのです。さらに、真空管はヒータが必要でこれを
交流点火すると50hzのハムが避けられません。雑音面でも問題があったのです。最近は高級品はダイオード
で直流点火するので問題は無くなりました。物量を投入すればマッキントッシュのように高音質の真空管アンプ
は存在していたのです。日本でも、ラックスやサンスイの高級品は評価されていました。
真空管に不満を持っていた私ら貧乏人にとってトランジスタは救いに思えたのです。トランジスタは内部抵抗
が小さくスピーカを直接つなげるから高価な出力トランスがいらないからです。常温で動作するのでヒータもいり
ません。メーカにとっても魅力があります。軽量で小型に出来るので輸送コストが下がる。トランジスタは真空管
より寿命が長い、故障が少ない。当時は真空管は消耗品です。いつか切れることは常識で、電球を交換するよ
うなものです。そして、出力トランスが無ければ、極めて広帯域の周波数特性を持つアンプが出来る。これは真
空管アンプに対する最大のアドバンテージになったのです。しかし、トランジスタの出現で、いきなり真空管アン
プの音質を凌ぐものが出来たのではありません。1960年代にSONYが高級トランジスタアンプを発表して、よう
やく音質面で真空管と並ぶものが出来たのです。トランジスタには弱点があります。素子としてみると真空管より
直線性が悪いのです。これを補うためにNFBをかけますが、いくら電気特性が良くなっても、NFBのかけすぎ
は聴感テストでは良い結果を得られません。そこで、色々な回路技術によって音質を高めてきました。トランジス
タより直線性の良いFETなども最近は多用されています。常温で動作するということはまた、室内の気温の変化
にも影響を受けるということなので、温度保証回路なども必要になります。真空管のように300Vも500Vもかける
ことが出来ません。したがって、ダイナミックレンジの面で不利です。不利な点をカバーするために回路は複雑
になりました。そして、回路はICなどのチップになりましたので、アマチュアには真似が出来にくくなりました。
真空管アンプには出力トランスが必要で、これが広帯域性能のネックになっていますが、一方でスピーカを
直流的にショートしているメリットが言われています。すなわち、非常に低い周波数のスピーカの不要な振動に
はブレーキが掛かるということです。ふらふら動かないで締まった低音が期待できるということです。このような技
術の歴史的経過を考えると、日本も裕福になったので、現在十分お金をかけて作られたものは真空管も半導体
アンプも聴き分け出来ないだろうということです。
以上は主としてパワーアンプの話です。プリアンプに限ると、真空管プリアンプには弱点が無いといって良い
でしょう。明らかにダイナミックレンジは真空管が有利ですから、自作でもメーカー製プリアンプを凌ぐものが出
来る可能性があります。
電力増幅管は出力管の方が適切。
スピーカを鳴らすにはスピーカのコーン紙を動かすほどの振動を与えなければなりません。この力はエネル
ギーです。音楽信号を扱っている限りエネルギーは必要ありません。アンプは最後に信号に比例したエネル
ギーをスピーカに送り込む必要があります。この最後の段を出力段と言います。エネルギー不生不滅というよう
に電力が増幅することはありません。出力管へは直流電流が送られていて、これを入力信号に従って増減させ、
それをスピーカに送り込んでいます。信号を扱っている真空管には数m A の電流しか流れませんが、スピーカ
を鳴らす真空管には数十ミリアンペアの電流を流すので、これを出力段といいます。電力は増幅できないので
出力管と呼ぶのが適切と思います。これは雑談です。
現存の真空管メーカはロシア、中国、東欧にあります。
ポピュラーな真空管が無くなってしまう心配は今のところありません。旧ソビエトは電子技術の遅れもあり、最
も近年まで真空管を研究開発してきた国です。軍用品もあり、その性能は現在も評価が高いのです。中国、東
欧は米国や日本の真空管から撤退したメーカの製造ラインを買い取り、生産しています。ただし、技術者まで連
れ帰ったわけではないので材料やノウハウの面でオリジナルの品質を保っているかは疑問を持たれています。
真空管消費国は米国が圧倒的に多いそうです。これも雑談です。
左は出力管6L6GC(GT管)、中央は電圧増幅管6AQ8(ミニチュア管)、どちらもロシア製です。
右の小さいのは電圧増幅用FET 2SK369(東芝)です。
3.3 プリアンプ 以前はレコードのイコライザと低音、高音の音質調整、そして入力切替が主な機能でした。
CDが中心になり、レコードを聴かない人も増えイコライザが省略されているものも出てきました。また、音質調整
が省略されているものも多くなっています。左右の音量バランスまで省略されているものもあり、そこまで簡略化
できるか疑問です。たとえアンプの左右音量バランスが正しくても、スピーカーやカートリッジの左右バランスが
完全とはいえません。むしろ、多少は違っているのが普通です。
真空管で自作するのは容易です。電源も小さいので軽量に作れます。許容入力も大きいのでクリップ感のな
いのびのびした音が出せます。ただし、RIAAイコライザーは入力が数mVですから、雑音には注意が要ります。
ハム雑音などが残れば使い物になりません。入力部は電源から遠ざけるとか、一点アースを守るとかですが、そ
れは専門書を勉強してください。
3.4 パッシブプリアンプ 聞き慣れない装置ですが、トランジスタや真空管のようなアクティブ素子の使われていないプリアンプのことで
す。パワーアンプはCDプレーヤの出力レベルで最大出力まで出すように設計しています。そこで、レコードを
聴かないのなら増幅目的のプリアンプは不要です。増幅素子としてのトランジスタとか真空管は不要になります。
しかし、入力切替や音量ボリュームは必要です。この機能に限定して作られているのがパッシブプリアンプです。
回路は簡単なので安価に出来そうですが、10万円以上するのが普通のようです。いくら良いパーツを使ったに
しろ、首を傾げてしまいます。こういうものこそ難しい知識は不要で、自分の必要とする機能のものが作れますか
ら、自作に適しています。
3.5 CDプレーヤ
安いものも高いものも音質に大差はありません。その構成は大きくは読取機構(トランスポータ)と読み込んだ
デジタル情報をアナログに変換する電子回路(DAC)の二つです。読取機構はパソコンについている光学読取
装置と機能は同じです。音楽より正確性を要求されるデータを扱うパソコンの安価な光学読取装置でも問題な
いのです。この部分は音質的な差に現れません。耐久性は別です。
DACは重要で音質に差が出る可能性があります。デジタルデータから元のアナログ信号を再現できることは
数学的に証明されていますが、電子回路で実現できるかは別です。だから色々なDACがあるわけです。ただ、
この部分は一般のメーカは作らず(作れず)、ほとんど特定の会社から仕入れています。TI社が買収したバーブ
ラウンのブランドが有名です。高級品から普及品までありますが、どんな高価なチップも千円くらいですから、何
十万円もするDAC製品は外観が素晴らしくても、音質が価格の分まで良いとは言えないでしょう。DACはAV
製品、計測器、パソコン等にも使われていますが、いずれもそれほど高価な製品はありませんから、オーディオ
の世界が特殊と言えます。
一万円程度の国産DVDプレーヤを使っても構いません。これらはCDはもちろん、MP3やWMAなどの圧
縮形式も扱えますから便利です。DACの性能が気になる人はデジタル出力端子の出ているものを買って、
DACは別に用意すればよいです.LSIに凝縮されているDAC機能は自作は無理です。CDプレーヤに関して
は素人が自作したり、いじる余地がありません。防振材を貼り付けたりしても無駄と言うものです。飛んだり跳ね
たりしても平気なCDウオークマンはそんなことは何の役にも立たないことを証明しています。
3.6 レコードプレーヤ
ニッチな装置になったので高性能でリーズナブルな価格の製品は2,3種類しかありません。必要な人は今
の内に買っておいた方がよさそうです。単体モータは販売していません。単体トーンアームはとんでもない値段
がついているし、カートリッジも数万円するのはざらです。
これからレコードやレコードプレーヤを買うのはナンセンスです。
3.7 オープンリールやカセットレコーダ もはや必要なしです。というより新品はありません。厳密に言うと現時点でカセットデッキは SONY が一機種
だけ販売しています。FMエアチェックはパソコンで出来ますし、生録は携帯型のデジタル録音機があります。
これを使わなくなったため。許容入力の実体験をする機会が無くなり、妙なことをいう人が増えてしまいました。
自分で録音しようとすれば最大音量の時、録音レベルが最大、すなわちメータが許容電圧を越えないようにレ
ベル調整します。プロはリハーサルなどで最大音量を確かめています。すなわち、記録媒体の性能一杯を使う
のがノイズが少なく、ダイナミックな音を録音するこつです。デジタル録音でも同じことです。量子化にいくつビッ
トを使うかは最大音量と何の関係もありません。フルビットが最大音量に割り当てられるだけです。
3.7.1 リニアPCMレコーダ
リニアは圧縮形式でないWAVE形式の高音質で録音できることを言ってます。数年前は10万円もするもので
したが、今は2,3万円になりました。マイク内蔵で非常に小型なので生録する音源のある方にはお勧めします。
音質はかなり良いです。
アナログ入力端子のあるものはアンプの出力(REC OUT)を使えばデジタル録音が出来ます。
レコードもパソコンを使わずデジタル化できます。ただし、曲名をつけたり、不要部分の削除などをするにはパソ
コンのお世話になります。
3.8 FMチューナ
FM放送局がたくさん出来ましたが、若者向きのDJがほとんどです。エアチェックするような番組はNHK
FMくらいしかありません。メーカも力をいれていませんが、NHKが高音質で受信できる環境であれば一台持っ
ていても悪くありません。NHKFMは2012年東京スカイツリーに送所信が替わります。
2011年9月、NHKがFM,AMをインターネットではじめました。電波状況によらない安定した放送が受信
できます。一部のコンテンツは権利関係から放送しないとのことです。適当なソフトを使うとエアチェックも出来ま
す。チューナの役割は風前のともし火です。
3.9 AD( Analog Digital)変換機能付きレコードプレーヤ プレーヤ自体の質はあまり期待しない方が良いのですが、レコードのデジタル化を簡単にしたい人のため最
近作られています。USB端子があり、これをパソコンに繋いで使うもの(SONY)と、USB端子にメモリを差し込
むとこれに書き込んでくれるもの(DENON)があります。後者がより簡便です。レコードに限らずアナログ音源を
デジタル化する方法は別項で説明します。
3.10 ネットワークオーディオ、USBオーディオ、オーディオ用DAC
この一二年急速に普及し、専門の雑誌がいくつか出てきました。光ケーブルでネットワークが高速化されたこ
と、パソコンなどの高性能化などのインフラ向上を背景にしたものです。
これまでのデジタルオーディオはiPodに代表される携帯音楽プレーヤが主流でピュアオーディオとしては認
められてきませんでした。それはMP3などの圧縮フォーマットを使わざるを得なかったことと関係します。メモリ
が高価であったり、低速回線ではコンテンツの購入に時間が掛かってしまうからです。インフラの高性能化に伴
いCDを凌ぐようなコンテンツが扱えるようになり、にわかにピュアオーディオの流れが変ったのです。
ただし、レコードやCDと違って発展途上であり、技術や使い勝手が確立しているとは言えません。
どんなことに注意したらよいか、勉強したことを紹介します。
各メーカで発売した製品を見るとAMFMチューナ、RIAAイコライザ、プリメインアンプを一つにまとめた百
貨店のようなONKYOのネットワークオーディオがありますが、ここでは従来の機能は考えないことにします。
ネットワークオーディオ装置はパソコンの一部を取り出したものといえます。パソコンのサブセットです。そして、
一般のパソコンよりオーディオに関する機能が高品質に出来ています。パソコンを扱えない人でも使えるように
なっている装置と思えばよいです。パソコンでもオーディオパーツを高品質なものに交換したり、外付け出来ま
すのでパソコンを使っても音質の向上は出来ます。
USBオーディオやDACはネットワークオーディオ装置の構成品になりますので、一緒に説明します。
ネットワークオーディオの機能は大雑把には次のようなものです。
①LAN(無線も)接続機能
インターネットやLAN上のHDDなどとつなぎます。
②選曲機能
曲名リストなどを表示して選びます。
ディスプレイやメモリが貧弱ですと日本語(漢字)の表示が出来ないものもあります。
③曲のダウンロード、あるいはラジオなどのストリーミング受信
④曲の演奏、すなわちデジタルアナログ変換(DAC)
この辺りの機能はパソコンと同じです。
もう一つはLAN経由でなく、この装置にUSB,あるいは光ケーブルや同軸で直接デジタル入力する機能を
備えています。これもパソコンと同じです。ただし、パソコンにはデジタル入力はありません。
パソコンに無いのはDLNAという家電製品をネットワークで操作する機能です。
テレビや録画機、エアコンなどの家電製品をネットワークにつないでいろいろなことをしようとして決めた規格
です。ネットワークオーディオではスマートフォンからネットワークオーディオを操作するといったことです。もちろ
んソフトは必要です。同様にパソコンがネットワークオーディオを操作することも出来ます。
音質面から見ますと、デジタル音楽情報の質がまず問題です。CDは階調数16ビット、サンプリング周波数
44.1khzですから、それ以上なら申し分ないといえます。もっとも、演奏や録音が悪ければ論外で、大昔のレ
コードをデジタル化した音源などは演奏はともかく、音質は期待できません。
USBにはUSB1.0、USB1.1 、USB2.0、USB3.0があります。主として伝送速度の違いがあります。
今までのUSBオーディオ機器は1.0が使われてきました。最近の高音質を目指したUSBオーディオ機器はU
SB2.0を使用します。
そして、更にUSBオーディオにはクラス1.0と2.0があります。階調数とサンプリング周波数により、限度が
設定されています。24ビット、192khzといった高音質はオーディオクラス2.0の規格です。この規格をクリアす
るにはUSB2.0対応の装置が必要です。
このUSBオーディオ2.0をサポートするOSは今のところMACだけです。 Windows は対応していません。
したがって、USBオーディオメーカは
Windows 用にドライバーソフトを自社開発しています。ネットワークオー
ディオやUSBオーディオを購入する場合はこのドライバーが付属しているかどうかで、装置がUSBオーディオ
クラス2.0対応の高音質を目指した製品か判断できます。ドライバーソフト開発はなかなか大変なので、小規模
な会社では出来ません。そういう会社の製品がいくら高音質をハードで提供しても、 Windows では能力が発
揮できません。
単体のUSBオーディオでは電源がUSBバスパワーのことがあります。筐体の小さなものはそういうものです。
この供給電圧は数ボルトしかありません。したがって、ダイナミックレンジが大きくありません。外部電源を使う製
品の方が音質は期待出来ます。
もう一つは伝送方式です。USBにアイソクロナス伝送があります。正確性よりリアルタイム性を重視するため
再送しません。正確性の保証はありません。USB外付けHDDとパソコンのやり取りのように機器間でデータ
チェックを行いながら伝送する方式のほうが安心感があります。
データ伝送方式を明らかにしたり、ブロック図にメモリバッファがあるものはこういう方式です。
方式や数値で音質が決まるわけではなく、階調数やサンプリング周波数を聞き分ける事はCDレベル以上で
は至難と思います。と言いつつ、技術上の最高という観点で2012年3月時点のネットワークオーディオ製品を
見ますと、すべてクリアしているのは国産ではパイオニアN-50だけと思われます。規格だけの性能なら現在の
最高峰です。
ネットワークオーディオの発展により、かつてCDがレコードを駆逐したように、今度はCDが駆逐されそうです。
年々CDの売上が減って、ネット購入が増えていますが、それが加速されるでしょう。
やたら高価なCDプレーヤが不要になるのは喜ばしいですが、DACやUSBオーディオにも首をかしげるよう
な高価なものが次々現れるのもどうかと思います。これらはすべていくつかのLSIと電子部品で構成されます。
そんなに高価なパーツはないのです。物としてはパソコンの世界になってきています。
パソコンではインテルなど2,3社が能力別に数種類のCPUを提供しています。パソコン雑誌ではこれらのベ
ンチマークテストを行なって発表しています。ユーザは予算と用途を勘案してパソコンを選びます。TI社では
DACのLSIを何種類か販売しています。高性能から一般普及品まであるはずです。その差はどういうものか、
DACやUSBオーディオでもベンチマークテストが出来るはずです。オーディオ装置に組み込まれた途端に感
覚的な話になってしまうのが残念です。
また付加価値的な機能として平衡回路にしてキャノンコネクターで接続したり、真空管を出力回路に入れたり
しているものもあります。音質的な効果は望めなくても、こうして高価にしたものを欲しがる人がいるのです。
パソコン用のUSBDACは安く、Roland,ONKYO,Creative - Mediaなどが提供していますがどれも2万円
以下です。
3.11 Cannonコネクターを使うような音響機器
アマチュアには必要ありません。装置が平衡回路で構成されています。プロがスタジオなどで長い線を引き
回すような使い方をする場合に外れにくいとか雑音が乗りにくいということで必要なのであって、家庭には無用
です。
3.12 アクセサリ
アクセサリと称する一連の商品があります。スピーカーケーブル、電源ケーブルなどです。こういったものは
90点オーディオには無用です。高価な完成品を買った人はいじれる場所が限られます。装置の外に出ている
部分だけです。何かしたいという欲求と商売人の思惑が一致したということでしょう。音質向上の理論的裏づけ
のないものばかりですし、じっさい聴いても良く分からないものばかりです。高価なものほど音質が良いということ
になっていて、店員は客の予算を聞いて、一番高価なものを勧めます。客も同様でお金が出来ると買い換えて
しばらく満足する。こういうことの繰り返しになります。スピーカを購入すると同梱されているコードがあります。こう
いうものを使ったのではとりあえず鳴るだけで、どうしようもないなどと雑誌に書いてあります。本当でしょうか。自
社の製品の評価を落とすようなことをメーカがするでしょうか。それとまったく逆の話がカメラにあります。デジタル
一眼カメラは本体だけでなく、レンズ付きセットとしても売ることが多いのですが、このセットは本体価格に少し上
積みしただけのお買い得な価格になっています。このセットのレンズは十分な性能を有しています。なぜなら、
きれいに撮れた写真を見て、ユーザは更に広角やマクロレンズが欲しくなるからです。メーカはそれを期待して
いますから、安くても十分なものを提供するわけです。プリンターを購入すると高級フォト印刷用紙が同梱されて
います。これで印刷してきれいなら、その印刷用紙を買ってもらえるようになります。そのようなわけで、音の悪い
機材が同梱されることはないと断言します。
スピーカーケーブル
スピーカーケーブルは抵抗が大きいと電流が流れにくくなるので音質に悪い要因になります。また、線間の
容量(コンデンサー)があると高周波は流れるので減衰します。ただし、オーディオの周波数は20Hz~20Khz
で、線の長さも2、3mですから、抵抗や容量が問題になるほどの大きさかが判断になります。家庭用のコンセン
ト延長ケーブルを測定してみました。3mで容量1500ワットのものです。直流抵抗0~0.1 Ω 、静電容量は
660pFでした。660PFは20Khzでは12 kΩ に相当します。二本のケーブル間は12k Ω の抵抗で繋がって
いることになります。ケーブルの 0.1Ω と較べてこの抵抗に信号が漏れ流れる量は微々たる物です。これならア
ンプとスピーカを直接繋いだ(ケーブルはない)のも同然です。スピーカーケーブルは20芯、30芯の電灯線で
かまわないというのが私の結論です。電灯線は片線にメーカ名がプリントしてあるので極性は分かります。
高額スピーカーケーブルには表皮効果を云々するものがあります。表皮効果は電流が導体表面に集中して
流れる現象を言いますが、それはMhz以上の高周波の世界です。オーディオ周波数では何の心配もありませ
ん。導体表面も中心もほとんど変りません。
アンプの中を開けて出力の回路を見てみれば、スピーカ端子につないでいる線はケーブルマニアが卒倒す
るような何の仕掛けもない細い線です。距離が短いので、もちろんそれで十分なのです。第一太い線では狭い
シャーシの中は配線できません。
1m何万円のスピーカーケーブルを買っても、アンプの出力にはスピーカ保護用のリレーがあり、これを通し
てスピーカに電流が流れます。アンプに異常があればスピーカへの電流を遮断するためです。また、スピーカ
端子から箱の内部のスピーカユニットやネットワークにつなぐ線はどうでしょう。そういうことも知らないと表面的な
対処だけでは片手落ちということです。
電源ケーブル
家庭用アンプには電灯線で十分です。かつて名機といわれたアンプにも普通の電灯線が使われています。
アンプの電源用コンセントに何万円も出す人がいます。しかし、アンプの電源回路では入り口にヒューズが入っ
ていて、このガラス管に封入された100円もしないヒューズを電流は通らざるを得ません。ヒューズは異常時には
すぐ切れなくてはいけないので太いものなど使えません。4アンペアフューズでも細い線です。おまけに鉛、錫、
銅のマニアが嫌いな合金です。
部分的にいくら贅沢しても全体の性能が良くならないのは常識です。一点豪華主義ではだめです。
高価なコンセントやノイズ除去装置 電力を浄化するというコンセントなども無用です。アンプの電源にはもともと雑音除去の仕組みが組み込まれ
ています。電源回路には大容量コンデンサーが使われています。商用電源からの雑音はこのコンデンサーに
流れてしまい、音楽信号に混入しません。高級な電源回路にはチョークコイルを使ったものもあり、一層電源か
らの雑音をブロックします。そのような仕組みを二重にするようなものです。電力浄化の仕組みも明らかでなくブ
ラックボックスなのもいかがわしいです。
壁埋め込みコンセントの材質をセラミックにしたりして数千円もするものがありますが、なぜこんなのが必要な
のかとても理解できるものではありません。カタログを見ると制震効果とありますが、壁埋め込みコンセントが振動
するのでしょうか。振動するならどのような振動でしょうか。そして、それが音にどういう影響を与えるのでしょうか。
その説明が無い限り無用の長物です。
電力会社に頼んで庭に専用の柱上トランスを設置してもらったら豪快な音になったという雑誌の記事を読ん
だことがありますが、にわかには信じられません。50アンペアも使えるようになっている家庭の電力容量で何が
不足でしょう。エアコンや洗濯機を動かす力があるのに、スピーカの紙すら動かないのでしょうか。
どうしてもやりたい人は電池駆動はいかがでしょうか。深夜電力で蓄電池を充電すれば外部から電力線を
通ってくる雑音はまったく無関係になります。それを
AC100V に変換すればよいです。電力会社も、屋内配
線も、コンセントもいりません。すべて自分でコントロールできます。そう言えば電池駆動の高級CDウオークマン
がCDプレーヤとして最高?という評論家もいましたね。商用電源からの電源回路のノイズがないという理由で
す。
スピーカの足
これは意味があります。床に直接置くと低音が下に回りこまなくなるので増強されます。また、スピーカの振動
が床に伝わる可能性があります。耳の高さまで持ち上げて聴くのが良いですが、台は丈夫で振動しないようなも
のであれば、高額の台を買う必要はありません。小型のスピーカは設置場所に困るという皮肉なことも多いです。
トールボーイ型がはやっているのは設置が容易ということによるのでしょう。
3.13 家庭用電力送配電 壁コンセントや電源ケーブルを考える人はその前に変電所から送られてきた電力がどのように家庭に引き込
まれ、配電盤を経由して壁のコンセントに来ているかを知るべきです。家の中の配線が普通の電灯線なのにどう
して壁コンセントからアンプまで特別に考える必要があるのでしょうか。それなら家の中の配線からやり直さない
といけなくなります。あるいは電力会社のケーブルもだめかもしれません。自家発電しかなくなります。
柱上トランスの変電所側(一次側)には6600Vの電圧がかかっています。家庭側(二次側)は100Vですが、
最近は三線式が多く、中点と両端はそれぞれ100V、両端間は200Vのものが多くなっています。例えばエアコ
ンで同じ能力なら200V用の物は電流が半分になります。発熱が少なくなります。ブレーカが飛ばなくなると言っ
ても良いです。中点が地面に接地されていています。
ブレーカは電力会社から受電したところに一つ、そして、部屋毎とかいくつかの系統に分電するので、系統毎に
付けられています。こうすれば、電気器具が一つショートしても家中が停電することはありません。ブレーカはバ
イメタルを使用した一つ千円くらいのスイッチです。劣化もあります。電圧が下がるような不具合が生じる可能性
があります。どれだけ電源ケーブルに凝ってみてもブレーカは必ず通ります。壁コンセントなど考える人にブ
レーカを点検整備する人がいるでしょうか。触るには第二種電気工事士の資格が要ります。
柱上変圧器からの
3線式200V引き込み。
中点は白線です
配線ルート毎に
ブレーカ
家庭の配電盤
電流ブレーカ、漏電ブレーカ、ルートごとの
ブレーカの順に設置
アース
線
電柱に沿ってアース線が地面に接地されています
家庭用電力は交流なのでプラスマイナスの区別はありません。電気器具はプラグの向きを考える必要はあり
ません。ところで柱上トランスの変電所側(一次側)には6600Vの電圧がかかっています。家庭側(二次側)は
100Vなので感電してもびっくりする程度で済みます。
もし、変圧器の劣化などで一次側の電気が二次側に漏れたとします。すると家庭内のコンセントに6600Vな
どの高電圧が入ってきます。これに電気器具を繋げば、故障するし。感電すれば死亡事故になります。そこでト
ランスの二次側(家庭側)の一方の端子は地面にアースされています。三線式では中点がアースされています。
万一高電圧が漏れても電流はアース(地面)に流れて家庭のコンセントには流れません。ついでですが、洗濯
機などの電気器具に必ずアースしてくださいと書かれています。これは洗濯機のモータなどの回路が故障して
洗濯機のボディに電流が流れた時にアース(地面)に電流を逃がし、人が触っても人体に電流が行かないように
するためです。流れやすい金属線と巨大な地球(導体)を電気が流れて、電気の流れにくい人体はほとんど流
れずに済むということです。
なお、最近の水道管は鉄などの金属ではありません。塩化ビニールなどです。水道はアースになりません。
柱上トランスは家庭側の一方がアースされていますが、家庭のコンセントはそのアース側が分かるようになっ
ています。これは何のためでしょうか。アースされている側をコールド、されて無い側をホットと言います。電気器
具がホットとコールドを意識して作られていれば、スイッチはホット側につけます。電気器具のプラグが差し込ま
れていてもスイッチが切れていれば電気器具の内部に手を入れても感電することはありません。しかし、コール
ド側にスイッチが付いていればスイッチを切っていてもホット側には電圧がかかっており、触れば感電する恐れ
があります。すなわち電力のアースは感電対策です。
オーディオ装置の音質に電力のホットとコールドが関係するでしょうか。アンプの場合一番大きな導体である
シャーシをアースとします。これをゼロ電位として配線します。シャーシのわずかな距離にも若干の抵抗があると
すると電位差が生じるのでアース線はまとめてシャーシの一箇所に落とします。これが一点アースです。電磁誘
導を嫌い最短で配線する高周波回路と違い、多少配線が長くなっても一点アースによる雑音排除を選んでいま
す。オーディオ装置のアースは信号の経路です。電源トランスの一次側はアースを取りませんが、二次側は整
流回路につながり、生成された直流のマイナス側がシャーシにアースされます。さて、電源トランスの一次側の
電源プラグに極性があるでしょうか。ありませんね。交流ですからどちらでも同じです。このような一般的なアンプ
の電源プラグに極性はありません。コンセントの向きで音質が変ると主張する人がいますが、その理屈はありま
せん。
3.14 リスニングルーム これはお店に行っても売ってないものです。お金を出しても買えません。高価な装置をそろえても、良い部屋
がないと意味がありません。オーディオを趣味としたければここから手をつけないといけないでしょう。新たに部
屋を作るとすれば、装置とは桁違いのお金が掛かります。小さな音しか出せない環境であれば、どんな高価な
装置も宝の持ち腐れになります。言い換えれば小さな音ではどんな装置で聴いてもあまり変りません。リアルな
音は実演に近い音量でないと出ません。家人や隣人から苦情が来るようではオーディオは楽しめません。そこ
で、どんな部屋であれ、まずは遮音が必要です。遮音が十分出来れば、後は残響時間を調整するとか、工夫で
きることが沢山あるはずです。普通の人はそれほど広くない家具のある部屋で聴きます。ガランとした物の置い
ていない広い板の間でもなければ、遮音が出来たら、後はせいぜいカーテンや絨毯で音響処理をするくらいで
はないでしょうか。高価な屏風のようなものが売られていますが、そのようなものを置いてみても気のせい程度で
しょう。細かいことを気にしても、部屋の音響測定をするとがっかりするような欠陥がしばしばあるそうです。音響
測定器の無い人が試行錯誤するのは無駄です。
世の中には人心を惑わすおかしなことを言う人もいます。低音はリスニングルームの広さが何平米以上ないと
出ないと言うのもその一つです。ではカーステレオや耳の穴しか空間のないヘッドフォンでは低音は聴こえない
のでしょうか。そんなことがないのは経験上誰も知っています。でも信じてしまう人も多いのです。音は空気の疎
密波ですから空間が広くても狭くても伝わります。
3.15 接点、接触不良
端子、スイッチ、ボリュームには接触不良の問題が付きまといます。音質についてどんなに細かいことを論じ
ていても、自慢の装置に接触不良があったら何にもなりません。RCA端子、入力切替ロータリースイッチ、ボ
リュームの可変抵抗器など問題を含んでいそうなものはたくさんあります。自作する時になるべく機能を絞って、
シンプルにするのは問題発生箇所を減らすことにもなります。
CRE556 などはかえって状況を悪くすると雑
誌に書いてありますが、私の経験では高価な接点復活材よりむしろ効果があります。錆で固着したボルトナット
などへの効果を見ると、接点の錆にも効果を期待して良いのではないでしょうか。この種のものが効果があるか
は論より証拠で、経時変化を測定すれば簡単に結論が出ると思います。こういうことこそ雑誌で発表してほしい
ものです。私自身も機会を作って観察したいと思います。もちろん部品の交換修理が基本です。
3.16 聴力検査
一般的な聴力検査では 125Hz ・
250Hz ・
500Hz ・ 1,000Hz・ 2,000Hz・ 4,000Hz・
8,000Hz の
7周波数を調べます。年とともに高い方も低い方も聴こえなくなってきます。この程度の高音、低音も聴こえにくく
なるのですから、スーパーツイータのお世話になる必要はなさそうです。まして補聴器が必要になればどうでしょ
う。まだ着けてないので分かりませんが。
若者が公園にたむろすのを防ぐため17khzの音を出す装置があります。30歳以上の人はこれが聴こえない
ので平気ですが、若者はなんだか知らないが不快に感じるそうです。
4.音楽ソースのいろいろ
フルトベングラーは当初レコードをまったく評価しなかったそうですが、晩年は音質向上を認め、関心を持っ
たそうです。一世代若いカラヤンはオーディオを評価し、CDの規格作成にも関与しました。LPやCDのビジネ
スに大いに係わりを持ちました。機械式の蓄音機の音が最高などと言う人もいますが、それは別の趣味と思いま
す。
1960年代後半からの38cm 2トラックオープンリールを使った録音は頂点を極めていたといってもよく、そ
れをCD化したものは十分良い音です。音楽史上有名な古い録音もありますが、さすがにそのようなはCD化し
ても音質は期待できません。それはCDのせいではありません。
4.1 CD
家庭にパソコンが普及するとは想像できなかった1970年代に規格が検討され、作られたもので、1982年に
製品が出てきました。1995年に Windows95 がリリースされパソコンとインターネットが飛躍的に普及する十三
年も前のことです。今から考えると不満があるのは止むを得ません。曲名や演奏者名の情報もありません。デジ
タル音楽情報を解読しながらリアルタイムでアナログ再生する前提で仕様が決められているので、読み取りエ
ラーがあれば補正しながら再生します。音楽鑑賞には問題ないにしろ、金融ネットワークで使われるような完全
な誤り訂正の仕様ではありません。当時のマイコンや半導体メモリの性能と価格を勘案して作られた仕様です。
このことから読み取りエラーの少ないと称する、きちがいじみた高額のCDプレーヤが後を絶たちません。また、
一枚十万円もするガラス基板の音楽CDが現れたりします。
その後、規格はそのままですが改善された所もあります。CDウオークマンは歩きながら、あるいはジョギング
しながら聴くのですから、CDプレーヤにとって安定して読むのが難しいのです。そこでCDウオークマンはリア
ルタイムでなくバッファーメモリにある程度ため込んでから再生を始めます。遅延時間は2,3秒と思います。先
読みしてエラーがあれば再読み込みする時間がありますから、ジョギングしていても大丈夫なのです。このような
考え方は一般のCDプレーヤにも今は適用されていますから、CDの読み取りエラーなど実用上は考えなくても
良いのです。
CDはレコードの欠点を克服するため、多くの英知を集めて作られた優れものですが、コンピュータが普及す
る前の規格だから重箱の隅をつつかれます。音質は音楽家や専門技術者が検討を重ねて規格を作ったので
十分です。レコードのほうが良いなどと主張する人の理屈はとても理解できるものではありません。真に受けない
方が良いです。かつてのレコードにはどれだけ欠点があり、どんなに苦労していたか忘れています。
CDの欠点は音質ではありません。一般家庭にパソコンが普及したり、どんな製品にもコンピュータが組み込
まれる以前の規格だったため、音楽以外の情報が何もありません。曲名、演奏家などの基本的な情報もありま
せん。あるのは演奏時間だけです。当時はパソコンが普及していなかったので、情報をつけても見ることも出来
なく、意味なかったのです。今となってはこれは欠点です。最近CDの予備エリアに音楽情報を書き込んである
ものが出てきたようです。しかし、音楽会社がCDに書き込むことと、それを読み込んで表示できるCDプレーヤ
が必要です。
これより後に出てきたデジカメはシャッター速度をはじめ、カメラで設定した情報がすべて記録されています。
その情報を利用している人はあまりいませんが・・・。
もう一つは先に述べたように誤り訂正能力がやや低いことです。低いといっても音質には問題が無いのです
が、その対策として、べらぼうに高品質のトランスポータが製品化され、高額で売られています。無用の長物で
す。CD-ROMと同じ誤り訂正の規格にしてしまえばこのような製品は霧消するのですが、そういう動きは無い
ようです。
現在iTunesをはじめネットで配信される音楽情報には曲名、演奏者などが付いているのは常識です。
CDDBというサイトからCDの情報がインターネットで提供されています。これはCDの演奏時間をキーにして
データーベースを検索してくれます。当初はボランティアが音楽情報を入力していました。数十万のCDが登録
されました。現在はフリーのサイトと商業サイトがあります。演奏時間だけがキーですから、まれには複数のCD
がヒットします。どれかは検索した人には分かるので致命的ではありません。たとえばiTunesでCDを読み込む
と自動的にインターネットのCDDBを検索して、CDには記録されていない曲名などを取り込んでくれます。ユー
ザはこの工程を意識しないのでCDにこのような情報が書かれていると誤解しやすいです。
ところで、多数のCDはレコード作成の元となったマスターテープや、それがないものは現存しているレコード
から作られています。CDの規格がいくら良くても元の録音品質に依存していることは明らかです。こういうCDの
音が悪いと言ってもそれはCDのせいではありません。
最後にもう一度繰り返しますが、デジタルでは媒体が何であるかは問題ではありません。フラッシュカードや
USBメモリを洗ったり、電磁界を掛けたりする人は一人もいません。なぜCDだけそんなことをする人がいるので
しょうか。 パソコンやインターネットでデジタルが当たり前の今の人たちと、CDが始めてのデジタル経験であっ
た人たちの理解の差かもしれません。
4.2 SACD 頂点を目指す人はSACDなどを持ち出します。しかし、聴覚の研究から可聴周波数は20hz~20khzと分
かっています。CDの規格もそれを踏まえて決められました。だから40khzまで延ばしたSACDなど無用の長物
です。第一、楽器の高音もそんなに高くないし、マイクロフォンもSONYの60万円もするものも18khzくらいしか
拾えません。
ということは元の情報に存在していないということです。これはスペクトル分析すればすぐ分かることです。同じ音
楽ソースでCDとSACDを作ったものがあります。これをスペクトル分析したら、まったく同じで20khz以上の信
号はなかったと書いた記事を読みました。元のソースに20kh以上がなく、同じソースなのですから同じスペクト
ルに決まっています。驚く方がおかしいのです。それでもSACDの方が音が良かったそうですから不思議です。
楽器や音声は100Hzから5Khzくらいです。周波数帯域よりは元の録音が音質に留意していたかどうかが問題
です。
4.3 レコード
既に持っている人は捨てることなく聴けばよいですが、これから買うのはナンセンスです。
レコードの欠点を完全に克服しようと出てきたのがCDだからです。メカニカルな振動を電気に変換して聴くのは
さまざまな欠点がありました。ほこりや傷が付きやすい、針が磨耗する、モータの振動をカートリッジが拾う、外径
と内径で特性が異なる等です。レコードはニッチになりましたので、プレーヤやカートリッジは驚くほど高価になり
ました。このような世界にこれから入る必要はありません。
私が小さい頃、蓄音機が家にありました。ピックアップは鉄針でぜんまいを巻いてレコード盤を回転させます。
音はラッパから出ますので完全なメカ物です。この後真空管とスピーカを使った電蓄に発展したのですが、レ
コードに画期的な発展をもたらしたのは両耳効果の研究により実用化したステレオ録音・再生です。当時は立
体音楽などとも言いました。モノラルと較べると格段に臨場感が高まり、魅力的でした。レコード盤も6分くらいし
か録音できなかったSP盤から、30分くらい録音できるLP盤が開発されました。最初にステレオLPが発売され
たのは1957年です。現在アナログの音と言われているのはこのステレオLP盤のことです。オープンリールやカ
セットのテープもアナログですが、音に厳しい人にはカセットは物足りなく、オープンリールは音源(音楽テープ)
が少なく、巻いたり、戻したり、扱い勝手が悪く、ポピュラーではありませんでした。
LPレコードをステレオにするためにいろいろな方法が考えられましたが、結局45・45方式と呼ばれる一本の
溝で左右の2チャンネルを録音する方式に一本化されました。45度のV字の内周側と外周側に右と左が割り当
てられ、振幅に応じた溝が掘られました。再生するカートリッジは二つの発電機構を持ち、上下左右の振幅から
左右のチャンネルを分離しますが、いかんせん一本の溝なので、完全に分離することは出来ません。左右の音
が混ざるクロストークが避けられませんでした。
Lpは長時間録音を可能にするために音溝の幅を出来るだけ小さくする工夫をしました。すなわち、相対的に
低音を小さい音で、高音は大きい音で録音したのです。この周波数特性はRIAA、アメリカレコード工業会規格
と呼ばれています。再生する場合はその逆の周波数特性をもつアンプが必要です。このアンプをイコライザーア
ンプと言います。CDが普及するまではプリアンプにイコライザーアンプは必須でした。現在はレコードを聴かな
い人もいますのでイコライザーの無いプリアンプも見かけます。RIAAの規格どおりの周波数特性を持つ電子回
路は色々な回路が発表されましたが、それだけ難しいと言えます。ちょうど現在DACに色々な工夫が試みられ
ているのと似ています。ステレオLPは大いに普及しましたが、メカ物であることに変わりは無く、針とレコード盤が
接触するための劣化が避けられず、ほこりや傷も付きやすいため、同じことを言う人を壊れたレコード盤などと例
えられてしまいました。
アナログレコードにまつわる細かな欠点
トラッキングエラー 、 インサイドフォース
レコードの欠点の一つは針先の方向とレコード盤の溝の方向が一致しないことです。トーンアームの根本が固
定ですから、厳密には一つの溝に対しては一致させることが出来ますが、その溝の内周、外周ではわずかにず
れます。これをトラッキングエラー角と言います。トーンアームの長さを長くするとずれる角度は小さく出来ます。
その場合、こんどはトーンアームの質量が増加して動きの悪い物になる恐れがあります。トーンアームの形状を
S字状にするなどの工夫をしたものもあります。
このトラッキングエラー角の問題を抜本的に解決するのがリニアトラッキングプレーヤです。これはアームの根本
を固定しません。レールの上を移動して常にレコード盤の溝と針の方向を一致させます。メカだけでは無理で
モーターを制御してアームの位置を移動します。針は真っ直ぐ引っ張られますから、インサイドフォースも発生し
ません。
この夢のようなリニアトラッキングレコードプレーヤはテクニクス(ナショナル)や日立が製品化しました。一般のレ
コードプレーヤより高価でした。
結構な仕組みですがアームとしての基本性能が一般のトーンアームと較べて劣るのではないでしょうか。それに、
カートリッジも固定で、交換などで音の変化を楽しみたい人には向いていません。トラッキングエラーにしろイン
サイドフォースにしろ、原理的にマイナス要因であるのは分かりますが、聴感上問題あるかと言えば、あまり無い
というのが実感です。この辺りがプレーヤの主流になれなかった理由でしょう。
レコードの無音溝と摺動ノイズ
レコードのデジタル化をリニアPCMレコーダでして驚いたことがあります。16ビット、44.1khzで録音したので
すが、モニターでは耳に聴こえないノイズがPCMレコーダにはかなりのレベルで表示されます。これは何かと観
察しましたが、レコードの無音溝をレコード針が摺動するノイズなのです。
今でもレコード愛好家は沢山います。摺動ノイズはほとんど耳で聴くことは出来ません。問題ないのです。でも、
メータには現れます。これだけはっきりした雑音もさして気にならないのですから、細かい問題は推して知るべし
ですね。
細かいことを言うと音にマイナスの要因が多々あったのですが、その割には高級なプレーヤを注意深く調整、
操作すれば十分良い音で聴くことが出来ました。安物のプレーヤで聴いていた人には良さが分からなかったと
思います。CDになって敷居はぐんと低くなり、安価な装置でも良い音で聴けるようになったためCDはLPを駆
逐しました。難しいオーディオの知識も不要となり、ついでにオーディオブームも駆逐してしまったのは皮肉です。
1960年代の大卒初任給は2万円前後ですから、一枚2千円のLPは今なら、1万円、2万円に相当するものでし
た。宝物のように大事にしていたものを捨てることはありませんが、欠点の多いLPをこれから買うのは技術のトレ
ンドからはずれているし、プレーヤも高額なのでお勧めできません。
4.4 ネット配信 パソコンはどんどん利用すべきです。インターネットを利用して音楽配信を受けたものはパソコンのメモリにい
くらでも入るといって過言ではありません。しかも、曲名、演奏家など多くの情報がつきます。音楽管理ソフトでは
自在に曲を選択し、演奏することが出来ます。アップル社のiTunesなどが有名です。レコードからCDになって、
随分保管スペースが小さくなりましたが、パソコンではとうとう収納場所が見えなくなりました。コピーしておけば
故障時も回復できます。
ONKYOの高音質配信は24ビット、96KhzというものでCDの規格を越えるものです。更に LIN はマスター
レコード品質をうたい24ビット、192 K hzで配信しています。ただし、そこまでの必要があるかは疑問です。パ
ソコンで管理している曲をパソコン内蔵のスピーカや PC 用アクティブスピーカなどで聴いていたら何にもなり
ません。出来るだけ良いDACを使っているUSBオーディオデバイスでパソコンからデジタルの音楽情報を取り
出し、アナログに変換します。それをオーディオ装置に入れればよいのです。音楽情報にONKYOの場合は著
作権保護(DRM)が付けられています。自分のパソコンでしか使えません。不便です。そのためか2010年7月
に DRM無しの配信もはじめました。iTunesにも著作権保護は付いていますが
ONKYO より緩やかと思いま
す。いずれにしろ一旦アナログで再生し、それをデジタルに変換して保存すれば、多少音質は劣化しますが自
由に使えます。音質劣化は原理的にあるということで、実際は気にならない程度に出来ます。
以上はダウンロードして自分のパソコンに取り込んで聴くのですが、
Naxsos Music Library はストリーミン
グサービスです。選曲してラジオのように聴きます。月額2千円程度です。
ベルリンフィルがデジタルコンサートホールという定期演奏会を生中継するサービスを提供しています。これ
はハイビジョン画面付です。年会費2万円強です。日本とドイツは時差が
8 時間ありますので、日本では朝
の3時頃から始まります。録画したライブラリも提供されますので、朝が苦手な人もサービスを受けられます。
4.5 DVD 、ブルーレイ
オペラは舞台や衣装が見ものですからDVDが最適です。オーケストラも指揮者や演奏者が見えるのが自然
です。これからDVD(ブルーレイも)の時代が来ると思います。
これまでに説明した音楽ソースや装置の組み合わせで十分生々しい音が聴けます。歌手の息遣いやピアノ
の鍵盤を叩く力強い音も再現できます。近所から苦情の来るような大音量も出ます。 では、頂点を目指している人の音と同じかというと、聴き比べれば差はあります。それがどれほどのものかという
のが問題です。頂点を目指している装置で聴いても、ベースの低音が本物と同じかというと首を傾げてしまいま
す。無理な低音を出すくらいなら、低音が減衰する90点オーディオの方が自然で、聴きやすいということもあり
えます。大金を投じてその程度かということが往々にしてあります。
5.オーディオで気になる技術と用語
オーディオは奥深いと言いますが、その電気回路や電子回路は技術的に見ると何も難しい所はありません。
世の中はギガHz(10の9乗)とかテラHz(10の12乗)の時代です。キロHz(10の3乗)などなんでもありません。
しかし、メカニズムの部分はそう簡単ではありません。レコードプレーヤには力学的な問題があり、良く分からな
いことがありました。トーンアームやカートリッジの挙動は今でも分からないままなのではないでしょうか。
CDになったのでこの部分は問題なくなりましたが、スピーカはまだ力学的な問題を抱えています。コンピュータ
でシミュレーションできる時代になりましたが、小さな箱の中の空気とスピーカーの紙の振動がどうなるか、まして
ダクトが開いていれば一層複雑な動きになるはずです。
やはり難しいのはスピーカでしょう。原理の異なるものの出現が待たれます。
5.1 デジタル
オーディオ評論家と称する人でも、相当オーディオに詳しい人でもデジタルについてはおかしなことを書い
たりしています。通信や情報処理技術者のように普段の仕事でデジタルに接していないからでしょう。通信や情
報処理ではデジタルのままで扱われます。例外は電話の音声です。
オーディオの場合は最後にはアナログ変換しないと音として聴くことが出来ません。ですから、オーディオで
はデジタルだけでは済まず、必ずアナログとセットです。デジタル単独の音質は言うことが出来ません。デジタル
の音楽は単なる符号に過ぎません。コンピュータ技術者や通信技術者はデジタルだけ扱っています。彼らの常
識は「デジタルで扱われている間は情報に劣化や紛失がないと断言してよい」ことです。これがアナログとの決
定的な違いです。媒体がCDであれ、DVDであれ、紙カードや紙テープであってもです。また、伝送経路が古
い電話線であれ、光回線であれ、海底線であれ、マイクロ無線であれ、間にサーバーが入って一時蓄積されよ
うと情報は間違いなく伝わります。これが否定されたら、金融、流通などの社会システムは成り立ちません。
アナログの情報劣化の典型は昔の長距離電話の聞きにくかったことです、現在でもアマチュア無線の声は聞
きにくいです。
TV 画面のゴーストなども典型です。
オーディオの世界でも音楽がデジタルで扱われる間は情報劣化はありません。ガラス基板のCDを10万円出
して買っても無意味です。CDをきれいに洗おうが、電磁界を掛けてみようが何の意味もありません。CDから
レーザーピックアップが0か1かを読み取れればよいのです。もし読み取れなければ再読み取りなどをして、それ
でもだめなら媒体の異常となります。そのようなCDは壊れた
CDです。同じように光リンクケーブルやUSBケーブルに大金出しても何の役にも立ちません。音楽より大切な
会社のビジネスで使用するLAN用光ケーブルやUSBケーブルも普通の市販しているものです。RCAタイプの
オーディオケーブルはアナログなのでメーカ品を選ぶのが無難です。
TV放送がデジタル化されます。受信した映像情報に読めないものがあると画面に欠落が起こります。電波
状態が悪いとこのようになります。まったく受信できない状況であれば、受信できない旨
TV にエラーメッ
セージが出ます。アナログ放送なら見にくくても欠落はしません。TVは銀行システムのように厳密である必要が
なく、TV局が情報を再送してくれるわけでないので、こうなっていますが、実用上もこれでよいのです。
CDも似たような処理をしています。音楽CDはお金を扱っているわけでないので、厳密なエラー処理は不要
という思想で作られています。また、規格が出来た時点では今日のようなコンピュータの普及は予想できません
でした。だから、読み取りエラーがあっても実用上十分なエラー処理をして音楽を途切れさせないようにしていま
す。マニアと称する人はそのようなエラー処理が発生しないよう、読み取り段階でエラーがないよう媒体と読取装
置の完全をめざそうということでしょう。実際それでどれだけ読み取りエラーを防ぐことが出来たのか、調べること
は出来るのに、調べず、データを出しません。そのような努力は労多くして功少ないのです。実用上意味のない
ことでお金をかけても効果はありません。そういう意味では今日のインターネットとパソコンを使用する音楽配信
は1ビットたりともエラーのない音楽情報を得ることが出来ます。
デジタルデータは劣化しないことを最大の特長として説明しました。実はデジタルにはもう一つ重要な効能が
あります。それは、デジタル情報は加工することが出来ることです。データを間引く圧縮処理により情報量を削
減するとか、音量のノーマライズ(ダイナミックレンジの拡張)、ノイズ除去、編集、フェードイン・フェードアウト等
など様々なことが出来ます。これはデジタルデータ(符号)を分析、処理することにより実現しています。地デジT
V放送は映像も音声も圧縮して電波の帯域を有効に使用していますが、その映像の鮮明さはアナログTVをは
るかに凌ぐことは多くの人が実感しています。
デジタルとアナログの音質
スタジオで2ch、38cmのテープレコーダで録音したテープを持ってきて再生したら、それが最高の音質かも
しれません。アナログです。問題は音楽愛好家がそのようなものを手に入れることが出来るかということです。出
来ませんね。多くの音楽愛好家に配るにはコピーしなければなりません。磁気テープはコピーを繰り返せば、元
の波形は崩れてきて、音は劣化してしまいます。マスターテープを元にレコードのマスター盤を作り、プレスして
レコードを作っていましたが、工程毎に少しずつ元とは違ってきます。その上、レコードは外周と内周で線速度
が違ったり、針と盤が機械的に接触するために生ずる様々な問題を抱えていました。その割には高級な装置と
細心の取り扱いにより立派な音が出ていたのは不思議といっても良いでしょう。今でも愛好者がいるゆえんです。
LP の音、お袋の味、蕎麦屋のカレーライス
一流レストランや本場の味ではなくても、慣れ親しんだものには代えがたい味があります。LPには様々の欠
点がありましたが、欠点も含めた音に慣れ親しんでいます。欠点の少ないCDの音には何か物足りないものを感
じる人がいても不思議でありません。LPが最高と言う人はこのような人かもしれません。
録音時にデジタル化したものはコピーや加工しても音楽情報は劣化しません。デジタル化によるわずかな音
質低下があるとしても、多くの音楽愛好家が手にするCDなどのデジタル音楽情報は原盤と同じと言えます。非
接触型のCDプレーヤなどはこれまでのレコードよりはるかに簡便に良い音が得られたのです。だからレコード
はCDに駆逐されたのです。デジタル情報はコピーしたり配信しても劣化がありません。繰り返しますが、デジタ
ルの美点はこれに尽きます。
デジタル音楽情報は符号です。耳で聞くには必ずアナログに変換します。デジタルのままでは音楽になりま
せん。このデジタル情報をアナログに変換した以降はこれまでのアナログの世界です。アナログで問題になって
いたことはすべて問題になります。ノイズ、ダイナミックレンジ、歪・・・などです。
デジタルアンプはアナログアンプとは動作原理がまったく異なります。D級とも言いますがアナログアンプの
A,B,C 級とは関係ありません。D級はデジタルアンプであることを示す以外の何物でもありません。効率が良い
のでカーステレオなどには以前から使われていました。カー用品店に行けば小さなカーステレオが
20W*2 と
か 30W*2 とかで驚きます。しかし、音質はイマイチでしたのでオーディオには使われませんでした。
AV アンプが
70W*5 などと大パワーなのに少し大きい筐体で、重量もそれほどでないのはデジタルアン
プを採用しているからです。近年は SONY や ONKYO のようにオーディオアンプに採用している会社があり
ますから音質も良くなっていると思います。
デジタルアンプはアナログの音楽情報を一旦デジタル化します。そしてスピーカに出力するところでアナログ
に変換します。すなわちPWM(パルス幅変調方式)はLPF(低域通過フィルタ)を通すことによって、音楽として
聴こえるようになります。LPF回路はL(コイル)とC(コンデンサー)で構成されるので、スピーカのコイルも回路
の一部になります。言い換えるとスピーカにより特性が変ることになります。実用上問題はないようですが、何か
気になります。デジタルアンプがアナログアンプより音質的に優れる原理的要素はありません。
5.2 ビットレート これも、混同しやすい用語です。通信やコンピューターでは一秒間に何ビット転送するかということです。しか
し、映像や音声の圧縮データでは1秒間のコンテンツをどれだけの情報量で表すかということです。MP3のよう
な圧縮データでは伸長されたデータとしてどのくらいに相当するかははっきりしませんが128kb
/ sはCDと
ほぼ同等と言われています。
Cdは44.1khz、16ビットですから、ビットレートで表現すれば700kb / sと言うことになります。ビットレートが
低ければ音質は低下するのは当然です。インターネットのラジオ放送はリスナーのパソコン性能でいくつかの
ビットレートを選択できるものもあります。
5.3 Cannonコネクター(XLR)と平衡回路
最近の高価なアンプなどに平衡回路をうたうものがあります。
平衡回路は電話局から家庭の電話機に配線されている対線が代表的です。対線を使うと電磁誘導などの外来
ノイズは二本の線にほぼ同じ大きさに乗りますが、二本の線間ではノイズは現れません。
これが平衡回路の利点です。
ノイズを受けやすいかどうかということですから、信号線が長い距離では平衡回路が有利になりますが、家庭
の一室の中では効果はありません。信号線とアース線(シャーシ)を使った普通の不平衡アンプなどで問題あり
ません。放送局でマイクケーブルなどを長く引くような場合には有効なので、プロ用ということです。接続に使う
のがロックが掛かり、はずれにくいXLRというコネクターです。スタジオのように延長してもはずれる心配がありま
せん。米国
ITT キャノン社(ITT Cannon社)の製品名です。日本のキャノンとは関係ありません。このコネ
クターを使うと格好が良いのでマニアが使いたがりますが、音質には関係ありません。このコネクターは信号だ
けでなくUSBのように電力を送ることが出来るので、電力の必要なコンデンサーマイクロフォンを使う放送局で
はXLRコネクターを使います。高い電圧が必要であれば多接点のものを使い、信号と電力を分離して使います。
ちなみに USB は4端子で、外側2端子が電力線。内側2端子が信号線です。
5.4 負帰還(ネガティブフィードバック)、無帰還
アンプの出力信号を入力に戻すことをフィードバックをかけるといいます。講堂などで先生がマイクを持ち話
をするとスピーカから出た音がマイクに入ることがあります。すると先生の声 + スピーカの音がマイクに入るので
大きな音になる、これを繰り返すとスピーカから馬鹿でかいピーという音になって何を言っているのか分からなく
なります。これをハウリングと言いますが、電気では発振したといいます。これがプラスのフィードバックです。こ
れは、戻された信号がプラスされるので正帰還といいます。逆にマイナスに作用すれば発振しません。これを負
帰還といいます。
アンプにはよく負帰還が使われます。アンプは可聴周波数帯域ではどの周波数でも増幅率などの電気的性
質が同じであることが望ましいのです。しかし、実際はフラットなアンプにならないので負帰還の技術を使って平
坦に近づけています。なぜ平坦になるのでしょうか。
それは「増幅率が負帰還量に依存し、元のアンプの増幅率に依存しない」という理論的な結果があるからです。
負帰還量は帰還回路に純抵抗を使うため周波数に依らず一定です。元のアンプの増幅率は低音や高音が下
がっていてかまぼこ型の周波数特性を普通持っています。これが無関係になるのだから負帰還アンプは理論上
周波数特性がフラットになります。ついでに歪みや雑音まで負帰還量に従って減少することも計算上導かれま
す。
したがって市販のアンプはすべて負帰還が掛けられ、すばらしい周波数特性を示しています。
このように理論上、紙の上では良いこと尽くめの負帰還ですが、アンプの実物はコンデンサーが使われたりし
て帰還量が周波数によって変化し(位相回転)、場合によっては正帰還に働いてしまうこともあります。こうなると
発振が起こり、アンプやスピーカを破損することもあります。可聴帯域外で発振が起これば知らないうちに壊され
てしまいます。負帰還技術については一つの技術分野をなしているほどです。
また、実際の音にどのように作用するかですが、掛けないと元気な暴れ者、掛けるとおとなしい優等生と言っ
た世の中の評価です。負帰還のかけすぎは音質にはマイナスというのもほぼ定説です。
そこで、アンプの裸特性を出来るだけ良くし、負帰還は少なめに掛けるのが一般的です。美人の薄化粧が厚化
粧に勝るというよく使われる例えになります。
無帰還をうたい文句にしている製品もあります。素肌美人ということです。ところで、瞬間的とはいえ出たはず
の音の一部が元の信号に戻ることが聴感上影響しないのか私は気になります。
5.5 デシベル
基準の何倍かを対数表示するものです。この数値には物理的な意味を持つものと、そうでないものがありま
す。音の大きさを表すデシベル(フォン)は0デシベルが0.2 μ ヘクトパスカルと大気圧の単位ヘクトパスカル
で定義されています。ですから、数値だけで実際の大きさの音が分かります。話し声は60dB,電車の通過する
ガード下は100dBなどと測定されています。
0dBは無音ではありません。人間が聴くことの出来る最小音ということになっています。
それより小さい音は- ××d B となります。無響室といえども0dB以下にするのは至難だそうです。
一方アンプの利得のように入力と出力の比の場合は単に何倍の増幅率かが分かるだけです。入力信号のゼ
ロデシベルが何Vの信号か規定されていないからです。
Cdの音量階調は16ビットで作られますから、約6万階調です。これを96デシベルという人がいますが物理的
な量とは関係がありません。大音量が表せるかどうかとは無関係です。音の大きさのデシベルと混同している人
がいます。スピーカの出力は前面1mの位置で、規格に合ったマイクロフォンを使って測定します。この基準値
(ゼロデシベル)は先に示した数値と同じです。スピーカの能率は1Wを入力した時にどれだけの大きさの音が
出るかをデシベルで表示します。もし、オーケストラの最強音が客席で120dBとすると。スピーカの1m前で
120dBでるようにアンプのボリュームを上げれば、演奏会で聴くのと同じ大きさの音が出たことになります。
5.6 ダイナミックレンジと階調数(ビット深度) これはよく混同されます。ダイナミックレンジはJISなどの公式な定義が無いまま使われています。定義を考え
ないとだめです。音の世界ではどれだけ小さい音から大きい音までだせるか、その幅の大きさとこれまでの常識
どおりにここでは定義します。小さい方は雑音の大きさで決まります。雑音と区別がつかないような小さな音は出
ているかどうか分かりません。大きい方はマイクや録音アンプ、記録媒体、そして再生機器の許容入力、最大出
力によって決まります。ダイナミックレンジは大きいほどリアルと言えます。
階調数(ビット深度)はオーディオで言えば量子化するとき使うビット数のことで、どれだけきめ細かくデジタル
化するかということです。デジタル化では音の強さを何段階にも区切ってコード化します。CDでは16ビット使っ
てコード化しますので、約6万段階です。これは階調数です。音の解像度を表すと言っても良いです。24ビット
使えば更に細かく出来ますが、聴いて違いが分かるかという問題があります。
白黒写真は芸術性の高い表現が出来ます。これをファクシミリで送ると受信者は変な写真が送られてきたと
思うでしょう。なぜならファクシミリは白と黒の二種類の表現しかなく、その間のグレイが表現されていません。だ
から写真は不自然になります。階調表現を1ビットで表しているということです。(高級な G4FAX はグレイが出ま
す)白黒写真のように黒と白の中間の灰色が表現できるのがグレイスケールです。何段階で表現するかが階調
数です。階調表現が豊かとか言います。映像や画像でダイナミックレンジは目もくらむような明るさとかすかな星
の光の差ということになります。最大輝度と最小輝度の差です。明暗比、コントラスト比といいます。
映像ディスプレイには画素数、コントラスト比が示されています。一方、デジカメでは画素数だけカタログに表
記されています。これは画像のきめ細かさを表していますが、コントラストに影響する撮像素子の光の許容入力
は示されていません。同じサイズの撮像素子では画素数を大きくすると反比例して許容入力は低くなり、階調表
現が乏しくなるので書きたくないのです。これでは片手落ちです。
ちなみに一眼レフデジカメによく使われている撮像素子は APS-C サイズといって16,7mm
* 23.4mm
です。コンパクトデジカメは4.6mm * 6.2mmといった小さいサイズです。面積は APS-C の7%しかありませ
ん。これが同じ1000万画素ですから階調表現に大きな差が出てしまうのは自明です。実際高画素のコンパクト
デジカメの写真はつまらない平板な印象を受けます。ユーザーはもっと賢くなければいけないのです。
レコードは平均的な音量が溝の振幅5cm / sとなるようにカッティングされます。交響曲では平均2.5cm /
sくらいで、最大振幅は
1 5cm / sくらいだそうです。レコードの最弱音と最強の比率は理想的には50デシ
ベルが目標ですが、実際はそれよりかなり低いそうです。大きな振幅は溝の幅(深さ)を広く必要とするので演奏
時間が短くなります。また、カートリッジ(針)もそんな大振幅に対応するのは難しいということです。
最近ネット販売される高音質音楽は24ビットのものがあります。このビット数が多ければ大きな音まで録音、
再生できると勘違いしている人も多くいます。これはデジタル情報を作るときにどれだけきめ細かく階調分けでき
るかということですから、最大音量を表すものではありません。音量の大きさを表すデシベル(フォン)と混同して
います。例えば、オーケストラの最強音は120dB(フォン)、また、人間の耳は140dB(フォン)を聴くことが出来
る。それなのに、CDは96dBの音しか出せない。性能が足りない。こういう間違った理解です。CDの96dBは
16ビットで表すことの出来る階調数、2の16乗を対数表示しただけです。もちろんオーケストラの最強音をCD
に記録することは出来ます。
階調数(ビット深度)をダイナミックレンジとしている本も多く見受けます。最大と最小の差という定義によるもの
と思います。この定義ではビット深度を深くすればいくらでもダイナミックレンジが大きくなります。これまでオー
ディオで使われてきた概念ではありません。
AD変換器(チップ)はオーディオだけに使われるものではありません。気温や湿度など多くの種類のアナロ
グ情報がセンサーを使って入力されます。AD変換器にはいろいろのタイプがありますが、その性能は横軸に
周波数、縦軸にビット数(ビット深度)の図上に表されます。高周波の必要なオシロスコープとか繊細な音質を求
めるオーディオとか用途によって選びます。いずれにしろAD変換機の縦軸のビット数は解像度として説明され
ています。ビット数が多ければ高温まで測定できるなんてナンセンスです。オーディオだけダイナミックレンジと
言うのは無理です。
レコードで考えるとダイナミックレンジはカッティングされた音溝の振幅の大きさです。これが広いものほどダイ
ナミックレンジが大きいのは自明です。さて、その音溝の幅は連続しています。階調数(ビット深度)は無限大と
考えても間違いではありません。でも、ダイナミックレンジが無限に大きいとは誰も言いません。事実、振幅が連
続であることとダイナミックレンジと関係ありません。
少ししつこくなりますが、階調数(ビット深度)をダイナミックレンジとするなら物理量と結びつけて考えて欲しい
です。いったい一つの階調は何ボルトなのでしょうか、あるいは音圧で言うといくらなのでしょうか。16ビット、ある
いは24ビットがすべてONの時はいくらなのでしょうか。
オーケストラの録音を考えてみます。マイクから入力される電圧が最小音量40dB時に1mV、最大音量100
dB時に1Vと仮にします。演奏のダイナミックレンジ60dBがそのままマイクを通して録音機に入力される場合で
す。この時、最大音量1V時にフルビットがONになるようにゲインを調整すると16ビットであれ、24ビットであれ
最大音量100dBが録音できます。
入力0mVがフルビットOFFとすると最小音量1mVは16ビットでは約6万階調の下から65番目の階調になり
ます。すると、16ビットにしろ24ビットにしろ1番から10番のビットはOFFで、11番から16番のビットがONになり
ます。ビット深度24なら17ビットから24ビットは値があるかもしれません。しかしそれは16番目のビットがONに
なるかどうかの非常に小さい値です。16ビットでは表すことの出来ない微小な音の違いを表したということです。
コンサートホールやスタジオで0dBに近いような騒音レベルは考えられません。30dBから40dBくらいの騒音が
あります。音楽の最弱音も40dBくらいなので、弱音の録音は問題ないといえます。それよりはマイクやマイクア
ンプ、録音機の許容入力レベルが問題です。どれだけの大音量をクリップしないかです。ダイナミックレンジは
大音量にどこまで耐えるかということで決まるということです。
ところで、CDの階調96dBと較べると、階調が連続しているアナログレコードは無限大の階調数と言えるから
CDより音が良いと主張する人がいます。前段は間違いとは言えないものの、後段は賛同できません。実際聴い
てみればそんなことはないことが分かります。それに、最近の録音は1970年くらいからPCM録音、すなわちデ
ジタル録音になっています。元がデジタルですから、レコード優位の材料として説得力はありません。
USBインター
フェイス
水晶発振器
12MHZ
DAC
バーブラウン2704
オペアンプ
USBDACの内部
ダイナミックレンジ
10 V
120d B
オーケストラの最
強音fff
100 W
10 V
最大聴取
レベル
100d B
フルビット ON
16、24 bit
平均聴取
レベル
75d B
音圧
40d B
オーケストラの最
弱音ppp
フルビット
OFF
40d B
30d B
会場騒音
noise
noise
noise
CDプ
レーヤ
の出力
プリアン
プの出
力
noise
室騒音 +noise
0d B 以下
演奏会場
CD
録音
0d B 以下の無音に近い状態は無響室でも実現が難しい。
・ TV モニタの水平発振周波数15 . 7khz
・ TV カメラの三脚雲台のモータ450hz
・照明ランプ100hz
こういうものまで対処してどうにか0d B を実現したとの報告があり
ます。0d B は0,2 μ ヘクトパスカル
0d B といった無音の場所にいると、耳鳴りのような高い音を感じ
たりするそうです。
パワー
アンプ
の出力
スピーカ
の出力
ダイナミックレンジを最小音圧と最大音圧の
差であるとすると、各装置が十分な能力を
持っていれば、最大聴取レベルの100d B く
らいと部屋と装置のノイズ40d B くらいの差
の60d B くらいになります。
一般家庭ではこんなものと思われます。部屋
の騒音や装置のノイズが大きいと CD に記
録された小さい音は聞き取れなくなり、静か
な出だしの音が聴きとれないかもしれません
。
指揮者の故レオポルドストコフスキーは。録音やオーディオに造詣の深かった人ですが、楽譜のfff(最強音)は100d B, pp
p(最弱音)は40d B と言っていたそうです。するとオーケストラのダイナミックレンジは
60d B ですが、メータはある時間の平均値を示すので、瞬間的な最大音はもう少し大きく120d B くらいのようです。
5.7 量子化の方法 16ビット 24ビット
サンプリングした電圧はAD変換器で定めた最大電圧の半分と比較されます、それ以上であれば1、それ以
下であれば0とします。次にそのまた半分と比較されます、同様に1,0が振られます。16回繰り返した所で止め
れば16ビットで符号化されたといいます。更に進めて24回で止めれば24ビットで符号化したことになります。す
なわち、より細かく階調化したことになります。それが耳で聴いて分かるかは疑問ですが。ともあれ、どこまで大き
い音を記録できるかとはまったく関係はありません。
5.8 オーバーサンプリングとかジッター
難しい技術用語がカタログに出てきて一般の人には理解できません。なにやら良さそうだという風に読めます。
デジタルで記録された情報からどのようにして音楽を作るのか、ざっと見ます。CDの記録面にレーザー光をあ
て、その反射の有無で0,1を判断します。読み取った一区切りをバッファーメモリに書き出します。この時エラー
チェックをして、もしエラーがあれば、決められた方法で訂正します。元の情報とは違う可能性があります。ここま
でがトランスポータの役割です。
次に、このバッファーを読み出しその情報から音の大きさを決めます。そしてクロックに合わせて音を出します。
CDサンプリング周波数は44.1khzですから、1msに200回くらいの間隔で音を出します。このような高い音は
耳には聞こえません。この音をローパス(ハイカット)フィルターに掛けると音楽が浮かび上がってきます。ラジオ
局は音声を590khzと言うような高周波に混ぜて電波として発信します。ラジオのアンテナが受信するのは590
khzと言った高周波ですから、人間の耳では聞こえません。ラジオは高周波カットのフィルターを通すことによっ
て、もとの音声を取り出します。これと類似の技術です。
オーバーサンプリングは1msに200回の間隔を400回、800回と細かくすることです。元の情報より細かくな
るわけではありません。なぜこのようなことをするかですが、ローパスフィルターの設計が容易だからです。これ
が、オーバーサンプリングです。
ジッターはクロックの揺らぎによって、正しい間隔で音が作られなかったことによる歪みのことです。クロックは
水晶発振器を使用しています。現在の時計はほとんど水晶発振器を使っていて、千円の時計も10万円の時計
も一年に何秒という精度です。CDプレーヤのカタログにはジッターを減少などと良く書いてあります。細かいこと
をさも大問題のもののように言うのは人心を惑わすものです。パソコンの CD-ROM ドライブでさえ、ちゃんと読
み取っています。ちなみにパソコンのCPUは3GHzくらいのクロックに同期してすべての素子が動作しています。
オーケストラのメンバーが指揮者の指揮棒に合わせて演奏するようなものです。
現在のコンピュータは汎用大型機からパソコンまですべて素子はクロックに合わせて動作しています。これを
同期式(シンクロナス)コンピュータといい、今世の中にあるコンピュータはすべてこの方式を採用しています。
パソコンで使用する3GHzは 3*10 の 9 乗です。CDのサンプリング周波数は44.1KHzですから 4*10 の 4
乗です。10の5乗、すなわち10万倍も低い周波数です。10万円もしないパソコンでもこんな高速のクロックを使
い正確に動作しています。CDのクロックなどなんでもありません。温度変化などで若干の誤差は出るとしても、
短時間のCD再生などで問題になるか自明と思います。精度の高い水晶発振器をおごった所で耳には分から
ないと思います。
5.9 1ビットプロセッサーとマルチビットプロセッサー
DACの方式に1ビットプロセッサーとかマルチビットプロセッサーとかカタログに書いてあっても大半の人が優
劣を論じることが出来ないし、大半のメーカが両方の方式を採用しているので気にしないで良いと思います。
CD は16ビット構成ですが、どのビットがONかOFFか調べるのに順番に調べていくのが1ビットプロセッサー
です。各ビットから一斉にON,OFF報を受け取るのがマルチビットプロセッサーです。意味はそういうことです
が、音質の優劣は無いそうです。私にはもちろん分かりません。1ビット
ΔΣ 方式などもカタログに出ています。
デジタル化の方式ですが難しい計算式の分からない私には理解できません。しかしこういうものは純粋に技術と
して学会や業界で討論されています。良いものであれば採用され、改良されていきますから我々が心配しなくて
も良いものです。
MP3 などの圧縮技術も色々ありますが同様です。
5.10 アンプのクラスには
A 級、 B 級、 C 級などがあります。
入力と出力の間に正比例の関係があれば歪みはありません。真空管にしろ、トランジスタにしろ入力と出力が
正比例しているかと言うとそうではありません。正比例していることを直線性(リニア)とも言います。簡単に言えば
直線性がよいのは三極真空管、五極真空管、トランジスタの順です。三極真空管の人気が今でも高いのは直線
性が良く、アマチュアでも良い音のアンプを作れるからです。素子の直線性の良い所だけ使うのがA級アンプで
す。非直線部分まで使うのがB級、C級です。音質を求めるオーディオではB,C級は採用できません。
二つの素子を電気的に反対に動作させるのがプッシュプルという方式です。この方式では非直線部分をお
互いの素子が打ち消しあうようになります。一部の非直線部分まで含んでいるのでAB級と称していますが、ほと
んどの製品が現在このAB級プッシュプル方式を採用しています。非直線部分まで使用しますので、一つの素
子を使うより二倍以上の出力が得られます。A級アンプは素子の直線性の良い所だけ使うのですから、大きな
出力は出しにくいのですが、原理的には理想的といえます。しかしながらAB級と聴き比べて分かるかどうかは
定かではありません。方式だけでは音質は決まらないでしょう。
5.11 シングルアンプとプッシュプルアンプ
単発と双発プロペラ飛行機の比較です。単発機はプロペラの回転が一方向のため機体が真っ直ぐになりに
くく、操縦も難しく、設計も難しいそうです。双発機は二つのプロペラの回転が逆になっているために、力学的に
バランスがとれ直進性が良く、操縦も、設計も容易だそうです。もうアンプの説明と関係のあることが察せられたと
思います。
シングルアンプの出力トランスには真空管に流す直流電流が流れています。これにより出力トランスの磁性体
は一方向に磁化されます。完全に磁気飽和すれば音は出なくなりますから性能の良いシングルアンプには大
型の出力トランスが必要になります。
プッシュプルアンプは二つの真空管に出力トランスを通して直流電流が流れますが、逆向きの電流のため磁
場の方向が逆向きで打ち消され、磁性体が直流磁化されないで済むようになります。したがって比較的小さな
出力トランスで済みます。
シングルアンプは回路が簡単で調整するような所もありませんが、このようなデメリットもあります。真空管愛好
家にはシングルアンプが最高と言う人もいますが、高性能にするにはそれなりの物量が必要です。ちなみにタム
ラ製作所のシングルアンプ用出力トランスは8W用で一つ4万5千円もします。古今の著名な真空管アンプはす
べてプッシュプルを採用しています。
プッシュプルアンプは二つの素子が電気的に反対に動作するのですが、双子のようにまったく特性の揃った
ものでないとひずみを打ち消すようになりません。同じ型番の素子であっても少しは特性が異なりますから、素
子を一つ一つ測定し、特性の揃ったものをペアにして販売しています。二つの素子を電気的に反対に動作させ
る回路や経年変化で動作がずれた時に同じにするための調整回路が必要になるなど、回路は複雑になります。
なお、シングルアンプは直線性の良い真空管でしか実用になりません。
5.12 ダンピングファクター
スピーカの制動力を示しています。スピーカは電流を流すと振動して音を出します。電流を流さず手で振動
させようとすると抵抗を感じるはずです。これはモーターと発電機の関係と同じです。モータは電流を流すと回
転します。電流を流さず手で?回転させれば抵抗がありますが電流が流れます。どのくらい抵抗があるかの目
安としてスピーカの抵抗をアンプの内部抵抗で割り算した値をダンピングファクターとします。アンプの内部抵抗
が低いほど抵抗、すなわち制動が強くなります。アンプからの音楽信号以外の影響を受けなくなるということで
す。アンプと繋がない状態ではダンピングファクタはゼロですからスピーカはふらふら動きやすくなっています。
車でいえばクラッチが切れた状態です。アンプの内部抵抗だけでなくスピーカコードにも少し抵抗がありますか
ら、厳密にはそれも含めて計算することになります。但し測定すれば分かりますが、2,3mのコードでは計算に
影響するほどの抵抗はありません。真空管の場合、内部抵抗は数キロ
Ωもあります。スピーカの抵抗をアンプ
の内部抵抗と同じにすると最大出力が得られることは計算で出ます。しかし、数キロ Ωのスピーカを作ることは
出来ません。16 Ωとか8Ωです。こういうスピーカを真空管の出力に繋いでも蚊の鳴くような音しか出ません。
そこで出力トランスが使われます。トランスの一次側と二次側の巻き線比によってそれぞれから見た抵抗(イン
ピーダンス)が変ります。スピーカから見たアンプ側の抵抗が16 Ωや8 Ωに、逆に、アンプ側から見たスピー
カの抵抗が数キロ Ωになる巻き線比のトランスを介してアンプとスピーカを繋ぐことにより効率よくスピーカは動
作します。トランスは電圧を変換するためだけでなくインピーダンス変換としての役割もあります。8 Ωのスピーカ
につながるアンプの内部抵抗が8
Ωとするとダンピングファクターは1です。アンプには普通負帰還がかけら
れているため、アンプの内部抵抗は低くなり、10くらいのダンピングファクターになります。
また、トランスにつないだスピーカは直流ではショートしています。すなわち非常に低い周波数領域ではダン
ピングファクターが極めて大きく、制動力が高いということです。半導体アンプは内部抵抗が低く8 Ωなどのス
ピーカを直接繋ぐことが出来ます。8
Ωよりもっと低いスピーカを作ればもっと大きなエネルギーを取り出すこ
とが出来ます。とはいうものの半導体自身が大出力に耐えるものかどうかが問題です。また、スピーカの抵抗を
下げることはボイスコイルの巻き線を少なくすることですから、能率が悪くなります。
ダンピングファクタがいくつなら良いのか10程度なら十分とも言われています。大きければ音が良いことにはな
りません。電灯線を使ったとしてもスピーカコードの抵抗は2~3mではほとんどゼロですからダンピングファク
ターに影響しません。
5.13 スピーカマグネット
スピーカは紙の中心部の筒に巻いた銅線に電流を流し、磁界の力で振動させ音を出します。強力な永久磁
石が使われます。長らくアルニコ系の磁石が使われてきました。これはアルミニウム、ニッケル、コバルトの合金
です。しかしコバルトは希土類金属で調達が難しくなってきました。現在はフェライト系磁石がほとんどです。こ
れは酸化鉄の粉末を型にはめ焼結したものです。
セラミック、磁器です。化学的に安定しています。コバルト系に較べると磁力が弱いので大型にする必要がある
のが弱点ですが、粉末なのでいろいろな形に成型することが出来る特徴があります。今でもアルニコ系の人気
が高いのですが、設計が適切なら性能的には変らないと思います。
5.14 雑音
色々な種類があります。部屋の外から入ってくる車などの騒音、室内のエアコン、パソコンの冷却ファンなど
から発生している騒音。外部から入る高圧送電線などの電磁波、工場のモータなどから電力線を伝わって来る
雑音。さらに、オーディオ装置から発生している雑音があります。レコード再生ではモーターの振動を拾ってし
まったり、レコード盤の傷で出るスクラッチ音などがありました。
アンプであればボリュームを最大にしてかすかに聞こえるハムやホワイトノイズが残留雑音です。雑音の発生源
がボリューム回路の前段にあればボリュームを上げると大きくなります。
ボリューム回路より後段であれば一定で変化はありません。例えば無信号時に5mVの雑音が観測され、信号を
入力すると5Vの出力があれば雑音は信号の千分の一です。デシベル表示するとー60dBです。これがS/N
比です。ノイズは小さい方が良いに決まっていますが、現在の製品でS/N比が問題になるようなものは無いで
しょう。
CDの場合、デジタル化では音の大きさを約6万段階にします。非常に小さな音楽信号から符号化しようとす
ると、雑音まで拾ってしまいます。
デジカメで暗い場所で撮影する際、撮像素子の感度をISO1600等にあげます。すなわち、わずかな光まで
撮像素子で拾うことにします。ところが、デジカメには電子回路が使われていて、電流により回路や素子は熱を
持ちます。熱雑音が発生します。これが撮像素子に受光して、画像情報に取り込まれます。このような写真を仔
細に観察すると、ところどころにしみのようなものを見つけることが出来ます。これがデジカメ写真のノイズです。
感度をISO100などに低く設定すると微小な光は拾わなくなり、このようなことはなくなりますが、階調の幅が大き
くなるので、低い階調のデータが多く暗い画面になります。明るい場所、すなわち光がたっぷりあれば撮像素子
にたくさんの電気が溜まるので、大きな階調まで使うことになり明るいきれいな写真になります。
音楽の場合、平均的に大きな音で収録出来れば、コード化するときに大きな階調まで使え、ノイズの少ないク
リアな音になります。
楽器が大きな音で鳴っている時雑音は目立ちません。しかし、静かな場面になると音楽に雑音が混じるよう
になります。サンプリングするときどのレベルを最低にするのでしょうか。雑音が混じらないように雑音より大きな
音のところを最低にすると、小さい音楽が消えてしまいます。コンサートでは非常に弱い音で始まる曲もあります。
演奏会に行けば指揮者や奏者の動きもあり、始まったことが分かります。CDやLPでは装置の雑音や部屋の騒
音で分からないことがあります。部屋や装置の雑音は低いに越したことはありません。
5.15 プロ用、放送局用
プロ用とはいつでも安定した一定の性能を発揮できるものです。丈夫でラフな取り扱いにも耐えると言った条
件もあります。家の中で細心の注意を払って操作するならもっと音質の良い製品があるのは当然です。 NHKで
使っているから音質が最高とは言えないのです。
カメラでもプロ用があります。報道カメラマンなどが使います。台風や、砂嵐のなかでも写らなければいけませ
ん。それで防塵、防滴処理がしっかりされて、重量もあります。また瞬間を捉えるため合焦速度も速く、高速連写
も必要ですからモーターも大きく、バッテリーも大容量です。これが、三脚を立てて風景や花を撮る人に必要で
しょうか。そういう人は雨が降ったら大事なカメラが濡れないように撮影などしません。フィルム(銀塩)写真はレン
ズとフィルムで写りは決まります。デジカメもレンズと撮像素子で決まると言ってよいでしょう。カメラボディはプロ
用も一般用も写りは変りません。でも、重いプロ用を持っている人が多いのです。 CANNON コネクターなどを喜
ぶのも同じようなものです。
5.16 装置の接続(入力・出力インピーダンス)
プリアンプとメインアンプをつなぐなど、装置と装置を接続する場合の留意点です。インピーダンスは交流で
の抵抗です。直流ではC(コンデンサ)は開放、L(コイル)は短絡(ショート)でR(抵抗)だけ考えればよいのです
が、交流ではRだけでなく、CもLも周波数によって、電気の流れに影響を与えます。これがインピーダンスです。
(1)最大電力を得るには前段の装置の内部抵抗(出力インピーダンス)と同じ大きさの負荷を使えば良いのす。
これは負荷抵抗 X 電流の二乗が最大になる負荷抵抗を求める問題で、一見簡単そうですが結構難しい数学
で得られる結論です。パワーアンプとスピーカの関係が典型的な例です。真空管アンプの内部抵抗(出力イン
ピーダンス)は
5kΩ 程度あります。これに 8Ω のスピーカ(入力インピーダンス)をつないでも音は出ません。
真空管アンプは出力トランスを使って出力インピーダンスを
8Ω にしています。これによりスピーカは最大の
エネルギーをアンプから受けることが出来ます。トランジスタアンプの出力インピーダンスは非常に小さく、 8Ω
や 6Ω といったスピーカを直接接続しパワーをもらうことが出来ます。
(2)電力(エネルギー)でなく電圧(信号)を効率よく受け取るには数式を使わずとも、直感的に分かりますが、入
力インピーダンスが前段装置の内部抵抗(出力インピーダンス)より十分大きければ良いのです。プリアンプとパ
ワーアンプの接続が良い例になります。メインアンプの入力インピーダンスが大きければ電流は流れず、前段の
装置(プリアンプ)から出る電圧
( 信号 ) そのものを入力することが出来ます。真空管そのものはグリッドとカ
ソードが開放なので抵抗は無限大です。ただし真空管として機能するにはグリッドには直流電圧が必要で、カ
ソードと100k Ω くらいの大きな抵抗でつなぎます。したがって、真空管アンプの入力インピーダンスは大きく、
前段がどんな装置でも問題ないことになります。FETも入力インピーダンスが高いので問題ありません。トランジ
スタはどうかということです。これは回路によって異なりますが、入力インピーダンスはあまり低くならないように設
計されます。最近は初段はFETを使っている場合も多いので、問題ないと思います。結局、メーカは入出力イ
ンピーダンスを意識しているので、私たちはあまり気にしなくても良いです。
真空管のプリアンプにトランジスタのメインアンプをつなぐときに多少注意がいる程度です。
5.17 位相の問題 同じ周期と振幅を持つ二つの波があって、それがずれていると位相が進んでいるとか、遅れていると言います。
三相交流発電機で発生する電気は3本の電線で送電します。その電圧はひとつの電線を基準の0度とすると、
他の電線は120度、240度ずれた電圧を示します
V=Asin(ωt+θ)
で θが0度,120度、240度です。 θを位相角と言います。
オーディオで問題にされるのはまずアンプです。アンプの左右チャンネル間で位相のずれがあるかどうかです。
複雑な回路を通って出てくる出力電圧は入力電圧と位相のずれはあると思います。しかし、音楽の信号(波形)
がすべて同じ位相のずれであれば、音質に影響しないのは当然です。
問題があるのは左右のチャンネルで位相がずれている場合です。これは使用パーツの精度によってはずれる
可能性がありますが、実際に問題になった例を知りませんので、多分大丈夫です。
次はスピーカです。左右のスピーカから出てくる音に位相のずれがあると音質に影響します。これもスピーカ自
体が左右で位相がずれていることは聞いたことがありませんので心配ありません。
しかし、スピーカ端子とアンプの出力端子のプラスマイナスを間違えると位相は180度ずれます。一方のス
ピーカの紙が前に出て、空気を押しますが、他方のスピーカの紙は引っ込んで、折角押し出した空気を吸い込
んでしまいます。すなわち、空気の波は発生しません。これは低周波で顕著になります。高い音は直進しますの
でこのような現象は分かりにくくなります。スピーカ端子の接続ミスをしなければ、位相の問題を気にする必要は
まずないでしょう。
しかし、ウーファーとツイータの位置関係などにこだわる人も多いです。ちょっとしたことにも神経質になっていま
す。そんなに位相が大切か考えてみました。
オーケストラの演奏者の左右の広がりは20mくらいあります。聴取者の位置は更に前後左右に広がっており、
高低差もあります。まったく同時刻に複数の楽器が鳴ったとしても聴取者の位置に音が届くのは時間差がありま
す。音速が毎秒340mとすると10m距離が違っていれば30msの時間差になります。1Khzの周波数であれば
30波ずれています。これは位相角どころの話ではありません。
しかし、コンサートホールのどの席で聴いても音がずれているなどと感じることは出来ません。席によって音が変
ると感じるのは直接音と壁などに反射する音の比率などが変るからです。前の方の席では直接音が強く聴こえ
るし、後ろの席では相対的に間接音が強くなります。
コンサートホールの設計では残響音の長さをどうするかなどが重要で、それによって出てくるホールトーンが評
価されます。
このように位相を考えるとスピーカの設置を神経質に決めることに意味があるかということになります。また、ス
ピーカのウーファとツイータの位置関係もそんなに厳密に決められるのだろうかと思います。
これから後は過去の話で、おさらいです
5.18 フォノモータ
はじめはインダクション(誘導)型、そして、シンクロナス(同期)型へ、最後にダイレクトモータへと変りました。
インダクション、シンクロナスともに構造はほぼ同じで回転子を囲んだコイルからの磁気が電源周波数に合わせ
て回転すると、中の回転子が一緒に回る仕組みです。前者の回転子にはコイルが巻かれていて、これによって
誘導された磁力が同期して回転します。後者は回転子に磁性体が使われ、これが磁気の誘導を受け回転しま
す。回転数は電源周波数に依存します。レコードの回転数33rpmよりは相当速い回転なのでプーリなどで減速
させて使います。ターンテーブルへの回転伝達はアイドラーまたはベルトを使います。ベルトは柔らかいので
モータの振動を吸収してくれるのが利点です。反面、劣化しやすくたるんだり、長期ではぼろぼろになったりしま
す。ダイレクトモーターは電子制御で回転数を33rpmにしたものです。低速なので振動が少ないこと、アイド
ラーやベルトが要らないのが利点です。現在はプレーヤの需要があまりないので高価なダイレクトドライブモー
タは使われず、誘導モータとベルトの組み合わせが多くなっています。
5.19 回転むら
ターンテーブルは一定速度で回転しなければいけません。しかし、色々な要素があって、実際はすこしゆら
ぎます。これが、回転むらです。0.2%以下であれば人は感じないことが分かっています。
ダイレクトドライブターンテーブルは電子制御でこの回転むらが極小に収められています。これは例えると車
の速度を一定にするためにアクセルとブレーキを頻繁に踏むことによって実現しているようなものであり、実際に
乗った人は乗り心地がいいとは感じません。それよりは多少速度にむらがあってもゆったりしたペダル操作をす
る車の方が乗り心地が良いのです。ターンテーブルで言えば慣性質量の大きいものが速度変化が少ないので
望ましいということです。しかし、重ければそれを支える軸受けがしっかりしていなければいけないし、強力な
モータでなければいつまでも回転速度が上がりません。強力なモータは振動が大きいなど問題は波及するので、
実用上どこまでするのが妥当かということになります。そういう意味ではかつての高性能のプレーヤは
1.5 ~
2.0 kg程度に収まっています。最近は新製品はほとんど無く、出るのは簡便なものと趣味性の高い物に極端
に分かれてしまいました。性能数値を気にする人も少なくなりました。
5.20 ダイナミックバランスとスタティックバランス
トーンアームにはスタティックバランスとダイナミックバランスという針圧を掛ける方法に二種類あります。水平
に置かれているレコード盤に対してトーンアームも水平になっていて、重りで針圧を掛けます。これがスタティッ
ク型のトーンアームです。これは重力に対して水平であることが前提ですので、水準器などで水平を確保する足
の調節などがプレーヤに付いています。 一方、レコード盤とトーンアームの位置関係がプレーヤを斜めに置いても変らないのがダイナミック型トーン
アームです。これはバネで針圧を掛けます。極端にはレコード盤が垂直になっても良いのですが、その場合は
レコード盤が落下しないようきちんとターンテーブルに押し付けられる構造になっています。どちらが良いのか一
概には言えないと思いますが、世の中に現在あるのはスタティク型だけです。レコード針はレコードの面の回転
により引っ張られます。トーンアームの根本は動かないので、針はレコード盤の中心に向かおうとします。これが
インサイドフォースです。これを打ち消すのがインサイドフォースキャンセラーで重りでアームが外周を向くように
する方式が多いです。
6.方式や性能数値をどう評価するか
オーディオに必要な性能を知る。楽器や声楽の音域はどのくらい。
デジカメでは画素数競争が行われています。コンパクトデジカメでも一千万画素は当たり前になっています。
薄型 TV の画面はフルハイビジョンで横1920、縦1080画素です。これは200万画素です。一千万画素のデ
ジカメの写真をこの TV で表そうとすると縦横二台にしてもまだ足りません。薄型液晶 TV を見てきれいだと
感心しているユーザが多いですが、小さなコンパクトデジカメの写真も表現できないことに気が付いていません。
これは逆に言うとコンパクトデジカメは必要のない画素数だと言うことです。せいぜいA4程度のプリントしかしな
いのですから300万画素もあれば十分なのです。画素数が多いとメモリーは使い、パソコン処理は時間がかか
り、メールに添付は出来ずと悪いことだらけです。1000万画素は宣伝用写真を撮ったり、展覧会に出品するよ
うな人しか必要ありません。 TV は動画が主体ですから静止画より多少甘くてよいことは事実ですが、要する
にユーザは本当のことを知らずに、数値や宣伝文句に影響されるということです。無知だからです。
ユーザの無知がメーカや販売現場を動かす悪循環を起こしています。
オーディオも同じです。数値がどのような意味があるかも知らず、数値で音質を期待したり、自慢したりするから
メーカも数値競争するわけです。ひずみ率が
0.01 %と
0.1 %のアンプが聞き分けられるでしょうか。周波
数特性が20khzまで平坦なアンプより100khzまで平坦なものの方が音質が良いのでしょうか。消費電力が
100Wのアンプが出力50W*2とはどういうことでしょうか。
ユーザが大きい数字を喜ぶのでミュージックパワーとか変な数字を作ってしまいます。
~40Hz
圧力を感じる帯域。強くすると耳に圧迫感を感じます。
40 Hz~80 Hz 強くすると音に重さを感じる帯域。強くしすぎるとクリア感が無くなり
ます。
80Hz~200Hz 質感を演出する帯域。弱いと力のない低音になりやすいです。
200Hz~800Hz もっとも重要な帯域。音の情報密度が濃く、暖かさと艶やかさを持た
せます。
800Hz~2KHz 音の芯に必要な帯域。音のバランスを整えます。
2KHz~5KHz 耳につく帯域。音のシャープさを出します。
5KHz~10KHz 音の華やかさ、明るさを出す帯域。弱くするとこもり感が出ます。
10KHz~
輝きに必要な帯域。不足気味でもあまり変化を感じないです。
この2表はインターネットから転載しました。後の表は定説とは言えませんが、面白いです。
目標を不必要に高めても効果の無いことは研究結果から明らかです。もはや人間には感知できないから
です。あることを改善しようとすれば、それに影響を及ぼしている要素を洗い出して、それぞれどのくらい影響を
与えているか調べる必要があります。品質管理でも同じ手法がとられます。オーディオで言えば音質に関係す
る要素に何があるかを調べます。そして、影響の大きい方から並べて、どこから手を付けるか考えます。影響の
大きいものが優先されるのは言うまでもありません。リスニングルームが最も影響が多いとしても、工事が大掛か
りになるので後回しにするなどはありえます。
少しの効果しかないのに大金投じて手当てするのは最悪です。
このあたりをオーディオマニアと称する人が理解しているか疑問です。技術に非常に詳しい方が議論してい
るのを見ると難しい専門用語を駆使して、だから問題なのだと結論付けています。しかし、それがどの程度の影
響を及ぼしているのかが問題です。はっきり言って針小棒大なことが多いのです。測定や計算で数字を出さな
ければいけません。
レコードの回転むらは数値的には結構ありましたが、聴いて分かるほどではありませんでした。
デジタル再生時のクロックの揺らぎ、ジッターはレコードの揺らぎと較べればいくらでもないでしょう。こういうもの
が聴いて分かるでしょうか。口角泡を吹いて議論していることがわずかのことであることに気が付かなければいけ
ません。
スピーカーケーブルの構造も同じです。世の中では表皮効果がどうこうもっともらしく言い、高価なケーブルを
ほめたりしています。オーディオ領域の周波数で表皮効果が何ほどの影響があるのでしょうか。表皮効果は高
周波、すなわち Mhz や Ghz を扱うアンテナ線などで問題になります。地デジやBSデジタルのアンテナ線に
電灯線を使ったら、せっかくアンテナで受信した電波がTVに行くまでに減衰して映りません。アンテナ工事に
は同軸ケーブルしか使いません。
せいぜい10khzや20khzのオーディオで扱う低周波ではほとんど表皮効果の影響はありません。線材の表面
も中心もほとんど変らなく電流は流れます。直系1mmの銅線で10khzですと、中心の電流は表面の98%くらい
です。3mくらいの電灯線では直流抵抗は0.1 Ω くらいしかありません。それが、10khzの交流でせいぜい0.
1001
Ω くらいになるだけで、誤差のうちです。抵抗やコンデンサーは測定機用などの高精度のものでない限
り、市販品は5%くらいの誤差のものがほとんどです。電解コンデンサーには30%もの誤差があることが仕様に
堂々と記述されています。
ケーブルの抵抗がそんなに心配なら、ほんの少し太い線を使うか、アンプとスピーカの距離を短くする方が良
いです。
サービス判のプリントしかしない人がデジカメの1000万画素がどうこう言っているようなものです。プリンター
は小さい印刷用紙ではインクが重なってしまうので過剰な画素を間引きしているのです。
音質を決める要素の直感的モデル
(私はこんな感じと思います。効果の小さいものに大金を使うのは無駄です)
6.1 オルソン博士の提案
オーディオは長い時間を掛けて研究されてきました。先人が努力して到達した知識を勉強せず、研究の裏づ
けの無いことを主張するのは止めてほしいものです。先人が到達したところから出発しなければ不合理です。
1950年RCAのH.F.オルソン博士は再生システム全体の性能がどうあるべきかという論文を発表し、その
後に大きな影響を与えました。その論文は家庭で聴くには周波数は40hz~15khzで十分というものです。これ
ですべての楽器の音域をカバーしています。また、音量は75dB(フォン)です。これは英国のBBC放送が多数
の試験者を使って調べた結果とも合致しています。それによると一般人の音楽聴取音量はほぼ75dBです。こ
れは平均値ですから、ピーク時には90dBくらいを想定しているようです。音楽家やミキサーはもっと大きな音で
80dBから90dBという結果です。人間の聴くことの出来る音の強さは140dBということですが、これは耳が痛む
くらいの強さですから、オーディオ装置がこんな大音量を出す必要はまったくありません。
オルソン博士は家庭で平均75dB程度の音量を出すためにはアンプの出力は6Wが必要と言ってます。当
時のスピーカの能率から求めた数値と思います。そして、具体的にアンプを作って示しました。これがオルソン
アンプです。4個の6F6真空管をパラレルPPとし10Wです。これなら余裕ということです。ちなみにNFBは使っ
ていません。75dBでは 0.75 %の歪みを感じますが、大音量では歪が2,3%あっても気にならないということ
も考慮されています。6Wというと小さいようですが、昭和40年代まで盛んに使われた30A5という出力管はシン
グルでは1W、プッシュプルで3Wくらいです。これでも、ステレオの音の苦情問題が当時もあったのですから、
10Wは相当ハイパワーなのです。
音量は音の強さ(音圧)をヘクトパスカルで表します。
大気圧は以前1000mmバールと言ってましたが、現在は1000ヘクトパスカルと言います。1Mmバールと
1ヘクトパスカルは同じです。音量は0.0002
μ バール、すなわち0.2
μ ヘクトパスカルの音圧を0d B に
設定しています。これは人間が聴くことの出来る最小音量です。無音ではありません。
人間の聴覚では周波数によって音量の感じ方が違います。低音や高音は大きな音圧でないと中音とは同じ
大きさで感じられません。1khzのある大きさの音と同じ大きさに聴こえるように低音から高音まで音量を変えて
プロットした曲線が有名なフレッチャーマンソン(FM)曲線です。その曲線の1khzの値をフォンと言います。
フォンの値は1khzの音圧(dB)と同じです。以前は騒音などの大きさにフォンを使っていたので、年配者には
フォンが馴染みがあり、ここではd B もフォンも同じようなものとして併記しました。
具体的な例として Marants PM5003 アンプの仕様を見てみます。
どの数字を見てもオルソン博士の目標を軽くクリアしています。これが実売2万4千円くらいで買えるのですから
驚きです。この金額だと自作ではケースとつまみくらいしか買えません。
ただし、消費電力が110 Wなのに出力が80Wとか110Wなのはいささか変です。また、フォノ許容入力110m
V はやや寂しいです。 Marantsの最高級品もあまり変らない仕様なのでこれで良いのでしょう。往年の真空管
式プリアンプ Marants7 は300mVと余裕があり、真空管のオーディオ用途での基本性能の高さが分かります。
PM5003 仕様
定格出力
(40Hz~20kHz 両ch同時駆動)
8Ω 負荷
40W×2
4Ω 負荷
55W×2
全高調波歪率 (40Hz~20kHz 両ch同時駆動、8Ω 負荷)
0.01%
出力帯域幅 (8Ω 負荷、0.06%)
10Hz~30kHz
周波数特性 (CD、1W、8Ω 負荷)
10Hz-50kHz (+0dB、-1dB)
ダンピングファクター (8Ω 負荷、40Hz-20kHz)
100
入力感度/入力インピーダンス
フォノ(MM)
2.2mV/47kΩ
CD、LINE、TUNER、
AUX/DVD、RECORDER
200mV/20kΩ
フォノ最大許容入力(1kHz)
110mV
RIAA 偏差(40Hz~20kHz)
±0.5dB
S/N 比
(IHF A ネットワーク、1 W 出力、8Ω 負荷)
消費電力(電気用品安全法)
フォノ(MM)
83dB(5mV 入力)
ライン入力
87dB(500mV 入力)
騒音の例
(単位:デシベル) 状況
130
最大可聴域
強度難聴
ほとんど分からない
120
110
100
90
高度難聴
耳に接しなければ大声が理解できな
80
い
70
中度難聴
電話の会話が不自由になる
60
50
軽度難聴
会議などの聞き取りが少し困難にな
40
る
30
(25)
正常
殆ど不自由ない
20
10
0
飛行機のエンジン
自動車の警笛(前方2m)
電車が通るときのガード下
大声による独唱、騒音工場
内
電車の車内
騒々しい事務所
静かな乗用車、普通の会話
静かな事務所
市内の深夜、図書館
郊外の深夜、ささやきの声
木の葉のふれ合う音
最小可聴音
インターネットから転載しました。
6.2 市販のスピーカとアンプによる計算
スピーカからどれくらい大きい音が出るかは能率と最大許容入力によって決まります。 JBL4348 (75万円)
は1W入力で95dB(95フォン)が出ます。最大入力が400Wですから、およそ122dBの大音量が出ることにな
ります。音圧を3dBあげるにはパワーが二倍必要です。これで計算します。オーケストラの最強音である120
dBが出せると言うことになります。ただし、その音質は分かりません。家でそのような大音量が出せるかも問題で
す。
つぎに、このスピーカを鳴らすアンプを考えて見ます。マランツPM-11S2(29万円)は200W
*2(4
Ω )、100W * 2(8 Ω )です。JBL4348は6 Ω なので150W * 2くらいです。すると116dBくらいの音量に
なります。但しこのアンプの消費電力は300Wですから、150W * 2はいささか心もとない数字です。DENON
のPMA-SX(63万円)は50w * 2(8 Ω )と控えめです。これで113dBくらいの音量になります。いずれに
しろ、最大規格値まで使おうとすると、アンプも巨大なものが必要になるということです。
ちなみにJISでは測定用アンプは被測定スピーカの最大許容入力の4倍の出力を要するとなっていますから、
1600Wのアンプが必要です。そんなアンプがあるのでしょうか。おまけに100時間の耐久試験が必要です。い
くらJBLでも400Wは本当でしょうか。
一般の家庭で聴くのにどのくらいの音量が必要かということですが、すでにオルソン博士やBBC放送の調査
で平均75dBという値が出ています。電車の通るガード下が100フォンと言いますから、それ以下で十分と思い
ます。それ以上出せるリスニングルームは特別に遮音が必要です。そうしないと、家族や近所から苦情が来るこ
とは必定です。そう考えるとハードルは一気に低くなります。こんな高価なスピーカやアンプをそろえる必要が無
いということです。
パワーアンプは10Wもあれば実用的に十分と言う計算になります。
スピーカの最大入力とアンプの出力が同じでないといけないと思っている人がいます。これは、今の説明に
あるように自分がどのくらいの音量を出すつもりかによります。小さい音でよければ、アンプの出力は小さくて構
いません。
JBL4348 を例にした音圧とアンプ出力との関係(市販スピーカの多くは能率88dB程度が多い)
JBL4348 からの音圧(d B、フォン)
140(人間の耳の限界)
137
134
131
128
125 122 (オーケストラの最強音)
512
119
116
113
110
107
104
101(一般家庭で許される最強音)
98
95 (JBL4348 の能率)
92
89
86
83 (録音プロの聴取レベル)
80
77
74 (一般人の聴取レベル)
71
68
65
62
59
56
53
256
128
64
32
16
8
4
2
1
0.5
0.25
0.12
0.06
0.03
0.015
0.008
0.004
0.002
0.001
0.0005
0.0003
0.0002
0.0001
備考
アンプの出力(W)
JBL 4348の最大許容入力400 W(これ
以上の大きい音は出ない)
MarantsPM-11S2 の最大出力
DENON PMA-SX の最大出力
電車の通るガード下
小型SPはもっと能率が低い
一般の人が音楽を聴く時の音量
静かな事務所
大きな出力の出るアンプは余裕がありますが、高価です。アンプの価格は出力で決まると言って過言ではあ
りません。トランスの容量やパワートランジスタの容量が大きくなります。あらゆるものが大型化すると言って良い
です。費用がかかります。そこで大音量を望まなければ出力の小さい、安いもので良いはずですが、なぜか品
質が落ちるのです。メーカが差別化するのです。安いものと、高いものの音質に変わりが無ければ高いものが売
れません。良い音を求めるには、お金を貯めて、次々に高価な高出力アンプに買い換えるようになっているの
です。自作するならその点の心配はありません。品質は同じで、出力を落とし、コストを下げることが出来ます。
アンプの感度と最大出力は無関係です。
ボリュームを少しまわすと大音量、すごいパワーアンプでしょうか。感度と出力の関係が分かっていません。9
時で大音量が出ても、10時では音が割れてしまうかもしれません。これは感度が高い、ゲインが高いのです。そ
の逆にボリュームを回しきってもまだ音量が上がり続けている。これは感度が低い、ゲインが低いのです。
7.オカルト化したオーディオ批判
あやしげな音質向上グッズ
オーディオ専門店に陳列してある音質向上商品や雑誌で音質向上すると紹介している物の多くは理論的に
説明できないし、客観的な評価の無いものがほとんどです。それを指摘すると分かる人には分かるということで、
否定するのも難しいのです。効果無しを証明するのは難しいですが、一方、効果ありを証明するのも難しいので
す。スピーカーコードによる違いは常識とか実証されたとかしばしば書いてありますが、それは科学的な実証で
はありません。実証する方法が科学的に意味あるものでなければいけません。統計的に意味のあるものにする
には膨大な労力と費用がかかります。NHKや
NTTのような大きな組織でないと難しいでしょう。彼等がやらないのは無意味と思っているからです。
車の燃費グッズをテストする自動車雑誌の記事がありますが、一般道や高速道路を何百キロ走ったところで、
科学的な実証にはなりません。グッズの有無以外の条件をまったく同じにすることはまず出来ません。運転を同
じにするのは難しいし、測定する日時による温度、湿度、風なども同じにするのは出来ません。実験施設の中で
ガスの燃焼実験や分析をしなければ科学的に意味のある結果は出ません。本当に燃費効果があると実証でき
れば権威ある学会誌に論文を掲載してもらえるでしょう。
それにしても、どう考えても常識から逸脱しているのです。こういう論争に加わっても益はありません。
一般の人が言葉だけ知っていて、中味は良く知らない科学用語を説明に使った製品はインチキと思えば間
違いありません。量子力学、波動理論、表皮効果、陽子、光子、イオン化・・・こういう類です。一般の人が何か
有難そうに思い、かつ分かりにくくするためです。カタログに効能書きだけで、使用部品や回路図が書いてない
ブラックボックスのようなものもインチキと思えば間違いありません。
特許をうたっている物もありますが、その特許が音質向上をもたらすとして取得したとは限りません。音とは何
の関係も無い可能性もあります。特許は内容が公示されますので秘密でも何でもありません。どのような内容か
書いてほしいものです。トランジスタなどの半導体の発展と量子力学は関係がありますが、トランジスタアンプの
カタログに量子力学だから音が良いなど見たことがありません。
①未知のものがある
オーディオは主に電磁気学、力学、生理学(聴覚)の知識で作られています。だからこれらの知識を基に音
質を追求するは当然です。既知の知識で判断してはいけないと主張するのはナンセンスです。未知の知識で
は考えようもありません。
②コードやケーブルによる音の違いは常識
銅線の純度が高ければ音が澄むという冗談のようなことを信じている人が現実にいることに驚いてしまいます。
半導体は不純物を取ったら半導体で無くなります。不純物の入っているトランジスタの音は雑音が多いのでしょ
うか、不純物が無ければ音が良いと主張するのは馬鹿げています。
そういう人でも絹糸で繋ぐと繊細な音が出、麻糸で繋ぐと力強い音が出るなどと主張する人はいません。アン
プが流そうとしている電流をそのままスピーカに流すのがコードの使命であるという電気の知識で行動していま
す。
表皮効果を言いますが、オーディオ周波数では導体表面も中心部も同じように電流は流れます。複雑な構
造のスピーカコードは無用です。コードがそんなに気になるならアンプをスピーカの近くに置けば良いだけです。
JIS( 日本工業規格
) や BTS( 日本放送規格
) ではスピーカの測定方法を厳密に決めています。駆動す
るアンプについても周波数特性や出力について規定があります。しかしどこを見てもスピーカーケーブルについ
ての記述はありません。それは常識的なケーブルでつなげば測定結果に影響しないからです。また、 1970 年
くらいの詳しいスピーカの本にもケーブルのことは一行も記述がありません。いつからそんなに大事になったの
か不思議です。
回路図や実装写真でこれらのコードやケーブルがどの部分か見てください。どのような物で良いか見当がつく
でしょう。
プリとメインが独立しているとここ
をRCAケーブルで結びます。
何万円も必要ですか。
メインアンプとスピーカを結ぶ線。離れて
いるとケーブルで結びます。何万円も必要
ですか。
プリメインアンプの実物はこんな配線です。これはプリント基板は一枚だけで、ほとんど空中配線しています。
パーツや線材が沢山あります。この線一本に何万円も掛けますか。写真の左下の青い線がスピーカ端子への
配線です。
③デジタルなのにCDの音が違う。デジタルは同じ音のはず、信用できない
オーディオマニアでもデジタルとアナログの決定的な違いを知りません。それはデジタルで扱っている限りは
情報の劣化は無いと断言してよいことです。もし保証されなければ、ネット販売や金融システムなど成り立たちま
せん。通信経路や記録媒体の種類にも依存しません。かつては紙テープや紙カードも使われました。
デジタル信号はアナログ変換しなければ音楽として聞けません。アナログ変換と以降のプロセスで音は変ります。
アナログに変換されてからはこれまでと同じ歪や雑音などの問題があります。デジタルだからと言って音は同じ
にはなりません。
デジタルのはずのCDプレーヤーに音の差があるのはデジタル信号を正確に読めないからだとダイキャストで
固めたようなメカニズムの高価なものがあります。CDは完全な誤り訂正をしないのでそこに付け込まれます。し
かし、それでどれだけ改善されたかのデータは見たことがありません。
④いわしの頭、がらりと音が良くなった
未知の技術を取り込むことは出来ませんが、偶然、あることをしたら音質が良くなったとします。本当に良く
なった場合は既知の知識でその原因は明らかになると思います。
やっかいなのは本当に良くなったか評価が分かれるケースです。その良くなった原因と主張するものが科学的
なようで、実際には音響学の常識からはずれていたり、データが無く判定できないものです。
アンプの上にたまたまコンクリートブロックを乗せたらがらりと音が良くなったという類です。
その原因はアンプ筐体の振動が抑えられたからであると主張します。しかし振動がどのようなものかは解析して
いません。また、振動がどこにどのような影響を与えているのか分かりません。定性的な話だけでなく、定量的な
分析が必要です。
蝙蝠ではあるまいし可聴領域外のツイーターを追加して音が良くなるはずがありません。どんな高価なマイク
も20khz以上の高音を拾うことは出来ないし、CDにもそんな周波数は含まれていません。無い音をどうして聴き
たがるのでしょうか。
音に関する脳科学
目に錯覚があるのは良く知られています。平行線なのに傾いて見えるとか、同じ大きさなのに一方
が大きく見えるなどです。最近の研究では錯聴というものがあることが分かっています。実際に出て
ない周波数が聴こえているような錯覚を起こしたりするということです。曲の一部の音が欠落してい
るのにあるように聴いてしまうということなどです。こういう研究が進むといろいろ応用できます。
音楽圧縮技術にはこういう研究成果が取り入れられています。どのような情報を捨てても影響が少な
いか、これが分かるから90%もの情報を捨てることが出来るのです。このような研究成果でオカル
トグッズを説明することは出来ません。念の為。
音が良くなる、それ本当ですか
音楽好きな人が装置に凝りだすことは良くあります。こういう人は技術は分からないので雑誌などの記事を頼り
にグレードアップして楽しんでいます。一般的に高価なものは音が良いので、このような楽しみ方はお金さえ出
せば出来ることで、特に勉強したり、工夫などする必要もありません。このような人が陥いりやすいのがオカルト
製品です。技術が分からないだけに、効果が望めないものが判断できないのです。はっきり分からない聴覚の
世界ですから、「変化」=「良くなった」と錯覚していると思います。
デジカメの写真はレタッチソフトで明暗、彩度、RGBなどを調整できます。少しいじると良くなったような気がし
ます。いろいろいじって、元の画像を見ると、それも良いかと思うこともしばしばです。音の変化もそういうことでは
ないでしょうか。レタッチソフトで調整する項目は画像の要素として理論的に分かっています。例えば光の三原
色であるRed,Green,Blueのそれぞれの強さで色は出来ていますから、その強さを変えれば画像の色彩は変
ります。レタッチソフトは有料もあればフリーもあります。いずれにしろ、簡単に色々いじれるし、お金もたいして
掛かりません。
これに対して音の場合は音質を決める要素がはっきりしません。誰もが認めるのは周波数特性です。電話の
通話品質の研究などで音質に影響することがはっきり分かっています。それとダイナミックレンジ、すなわち、最
大許容入力とか最大出力です。これが小さいと音が割れてしまうから音質に影響するのは自明です。もうひとつ
言えるのは過渡特性でしょう。立ち上がり、立下りが急峻で、だらだらしないことです。これは矩形波が正しく再
現できるかで分かります。入力と出力の違いを表すひずみ率も小さい方が良いことは当然です。しかしながら、
先ほどのレタッチソフトのように気軽にこの変化をオーディオ装置に与えるのは難しいです。
デジタル処理である程度可能になるかもしれません。周波数特性の変更はすでに製品化されています。
アンプの最大出力は小さくすることは出来ても、大きくして試すことは出来ません。許容入力も大きくして試すこ
とは出来ません。変化させる(装置の買替え)には大金がいります。
それに、滑らかさ、立体感、こういうものは物理的に何と関係するのか分かりません。
家電量販店のテレビ
家電量販店に行くと薄型TVがずらりと並んでいます。各メーカから販売のお手伝いが来ていますが、いかに自
分の会社のTVをよく見せるかに腐心しています。輝度を上げ、彩度を上げ、輪郭をはっきりさせます。ちょっと
見ると隣のTVより良さそうに見えます。普通のお客さんには良し悪しが良く分からないのです。パソコン用の
ディスプレイも沢山並べてあって、価格もピンキリです。これも良し悪しを見分けるのが難しいです。角度による
変化くらいは分かりますが、色空間となるとsRGBかAdobeRGBかなどは専門家でないと違いは分からないと
思います。
Panasonicのコマーシャルで女の子がデジカメ写真をデジカメで調整して喜んでいます。どれも明るく、派手な
写真に変っています。これが本当に良い調整なのでしょうか。映像、画像は変化させることは簡単ですが、良く
なったのかの判定は難しいです。こういった調整はお金も掛かりませんから、思い入れも無く、結果を客観的に
評価するのは容易です。
一方オーディオはどうでしょう。音を変えるには装置の買い替えという大変な判断が必要です。効果が無けれ
ば無駄なお金をかけたことになります。しかも、映像や画像と違って、調整項目とその効果の理論的因果関係が
はっきりしていません。ですから、雑誌を読んで評論家の意見を聞き、店員さんにも聞き、インターネットの口コミ
情報も調べ、期待の胸膨らませて清水の舞台から飛び降りるわけです。ですから、交換して出てきた音がちょっ
とでも変っていれば、大喜びで良くなったと思うのです。思わずにはいられない事情があるのです。しかしながら、
映像、画像の変化と同様、音の変化があっても、それが良い音になったのかどうかは難しいのです。
良くなったと喜んでいても、しばらくすると疑心暗鬼になります。また、雑誌の広告を見るようになります。この繰り
返しです。
「変化=良くなった」ではないのです。
理論的に分からないのに、おまじないのようなものを買ってきて、音が良くなったと思うのは、残念ながら気のせ
いだと言えましょう。
アクセサリと称するものがはやるのは、もはや素人がアンプやスピーカを作ったり、改造したりすることが難しく
なったことにもよると思います。市販アンプ一つ見ても素人が回路を理解したり、部品を交換することはまず出来
ません。雑誌にも回路の解説記事がありません。あっても読める人はほとんどいないでしょう。となると、音質向
上したくてもいじれる箇所は限られてしまいます。装置の表面に出ている箇所だけです。
マニアはメーカや評論家の飯の種に踊らされているということでしょう。
良心的な店員さん?が言うには「一つのアクセサリを長く使う人はいない、元に戻したらその方が良いような気が
するなどと、次々に交換する」ということです。良いお客様です。
8.これからのオーディオシステムの構成はこうなる
パソコン、インターネット、AV
現代はデジタルの時代です。積極的にパソコンやインターネットを使います。これからはデジタル音楽ソース
をどのように利用し、良い音で聴くかということになるでしょう。デジタル音楽ソース、流通ネットワーク、パソコンに
よる音楽ソース管理、デジタルアナログ変換機器、従来のアナログ音響機器(アンプ、SP)という構成になるで
しょう。デジタル情報は媒体やネットワークの伝送経路に関係なく誤り無く伝達される美点があります。これが否
定されるなら音楽情報より格段に正確が求められる金融ネットワークは存在しません。そのような理由で音楽再
生に最も重要な技術はデジタルアナログ変換になります。理論的にはサンプリング周波数の半分の周波数まで
完全に復元できることが証明されています。CDのサンプリング周波数が44.1khzであるのは人間の可聴周波
数が20khzであることを踏まえています。しかしながらこれはフーリエ級数を使って数学的に証明されているも
ので、電子回路として実現できるかは別問題です。このことはLPレコードのRIAAイコライザにいろいろの回路
が試みられたのと似ています。したがって、依然として正確なDACが求められています。最近はパワーアンプま
でデジタル化が進んでいるので、この場合はSPを含んだアナログ変換回路になります。すなわち、スピーカ自
体がDACの一素子となります。
21世紀初頭のネット配信の音楽は伝送速度が遅かったことや若者中心ということで、短い曲で圧縮度の高
いものが多く、音質はそこそこでした。携帯型音楽プレーヤが主な装置で、音質重視の人には魅力が無かった
し、デジタル音楽はこの程度と思わせていました。
最近はパソコンの性能向上や光ケーブルの普及など伝送速度の飛躍的向上などを背景に高音質な音楽配信
が始まりました。ONKYOは24bit、96khzというCDを凌ぐような高音質音楽配信を始めました。また、最近ベ
ルリンフィルがネット上にコンサートの実況中継を流すようになりました。これはH264というハイビジョン放送と同
じ規格を使っています。また、高額ですがピュアオーディオ用DAC製品が現れてきました。
スピーカを除けばメカニズム不要の音楽再生は高音質の製品が安価に提供できる可能性が高いのです。こ
れからはこのような仕組みの中で高音質化が進むでしょう。これが正常進化というものです。
8.1 AVとの融合
AV: Audio Visualはホームシアターで映画などを鑑賞することです。アクション物などが多く、音は楽器
というよりは人や車の走る音、飛行機の轟音、火器の炸裂音などといった衝撃音や低音が重視されています。
臨場感を高めるため中央と前後左右に5台ほどのスピーカを設置するのが一般的です。そのため、デジタルア
ンプを5台以上内蔵したアンプが多くなっています。音質よりも迫力重視です。
楽器の低音はパイプオルガンを除けば50hzくらいまでです。したがって、音楽CDには楽器としては20hz前後
の風圧のような音は含まれていません。録音現場の何らかの低周波が拾われていることは考えられます。AVに
録音されているものは楽器ではなく車の走行音だったり、地響きのような耳に聞えないような低音が含まれてい
ます。AVを迫力良く再生するには重低音再生が重要になります。アンプ内蔵の低音専用スピーカが売られて
いるのはこのような事情です。
ただし、その質はいささか疑問です。箱もスピーカ口径もあまり大きくないからです。高級オーディオ装置はカタ
ログどおりの低音が出るなら、AVでも真価を発揮するはずです。
AVアンプもだんだん音質が向上し、最近はピュアオーディオの領域に入り込んできました。
コンサートホールでは指揮者や演奏者を見ながら聴くし、ましてやオペラなどは舞台を見なければ何のことか
分からないでしょう。そうなるとAV装置で舞台やコンサートを鑑賞するのが自然ということになります。DVDでは
映像の角度を選択したり出来るのでオーディオでは考えられないことが出来ます。
不思議なことにAV製品は比較的安価です。それは合理的に考える人が多いからではないでしょうか。効果
のはっきりしないものに大金を掛けるようなことをしません。そして、コンピュータを駆使した内容になってきました。
DSP(Digital Signal Processing)は前方、後方などに送る音声信号を制御して立体感のあるSurround音
場を作り出します。また、スピーカから出る音をマイクで受信、分析して、部屋が最適な音になるよう制御するな
どという素晴らしいアイディアも普及価格の製品で実現しています。私自身はDVDをオーディオ装置の2チャン
ネルで見る程度なので偉そうに言えませんが、ハリーポッターでは大男の歩く音など大変迫力があります。
これから音質も更に向上すると思うので、AVには着目した方が良いでしょう。
9.レコードのデジタル化はこうすれば出来る
アナログの音源であるレコード、テープはデジタル化することが出来ます。そうすれば携帯プレーヤやカース
テレオで聴くことも出来ますので、使い道が広がります。パソコンにUSBオーディオデバイスを繋げば出来ます。
この製品はせいぜい1,2万円です。編集ソフトもついていますから随分安いといえます。パソコン関連の製品の
価格とオーディオ製品を比べると雲泥の差です。販売量が違うということですが、パソコン関連を購入する人は
合理的な判断をする人が多いのも理由ではないでしょうか。曲名などを付けることが出来ますので便利です。
手持ちのアナログレコードやテープをデジタル化すると音質が高まるなどと勘違いする人もいますが、そのよ
うなことは原理的にありません。元より良くなるはずはありません。ただし、ノイズ除去などの処理を施すと、聞き
易くなるというようなことはあります。デジタル化の作業は最低でも再生する時間は必要ですから、時間的には大
変です。CDのように倍速のリッピングは出来ません。しかし、編集したりするのが趣味と思えば、楽しい作業に
なります。
圧縮伸長(CODE DECODE)
デジタル音楽の形式(フォーマット)はいろいろあります。大別すると圧縮・非圧縮、そして、可逆・非可逆の組
み合わせです。圧縮した時に一部の情報を切り捨てる方式があります。そのような方式では完全に元に戻すこ
とが出来ません。こういうのを非可逆といいます。情報を捨てずに圧縮するのを可逆と言います。ロスレス
Losslessとも言います。音楽CDは非圧縮で可逆です。すなわちサンプリングした情報をそのまま記録していま
す。携帯音楽プレーによく使われているMP3形式は圧縮、非可逆です。CDとくらべるとデータ量は十分の一く
らいしかありません。逆に言うと、CD一枚に10枚分くらいの音楽が入ります。圧縮率を高めていくと音質は劣化
します。聴いて分からない程度に圧縮すればオーディオにも使えます。こまかく言えばこれらの圧縮データを伸
長してからDA変換するということになります。
可逆(ロスレス)
非可逆
(情報の間引きがある)
圧縮
WMA lossless
Apple lossless
非圧縮
CD-DA
WAVE
MP3
AAC
WMA
ATARC
これらの形式について少し触れます。MP3,AAC,WMAなどが有名です。音質にあまり影響のないように
音楽情報を間引くのですが、MP3などではおよそ十分の一に圧縮しても、十分な音質があると言ってます。
ビットレートを指定しますが1秒間にどれだけの情報を使って圧縮するかです。128kbpsとか256kbpsとか、情
報量が多くなれば音質も良くなるのは当然です。しかし、携帯型音楽プレーヤに使うにはメモリ容量を考えると、
適当な大きさを選ばなければいけません。
パソコンで管理する場合は容量は気にしなくても良いですから、音質を考えたビットレートを選べばよいです。あ
るいは、非圧縮形式を選ぶことも出来ます。256kbps以上なら非圧縮と音質の違いを聞き分けるのは難しいで
す。圧縮の方法、アルゴリズムはいろいろな方法があり、MP3,AACは学会や業界で検討した国際規格です
から理論は公開されています。MP3は動画規格(Moving Picture・・・)の第3層の音声の規格を意味してい
ます。
AACはAdvanced Audio Codingで文字通りMP3の改良を意味しています。地デジやBSデジタルの音声
に使われています。難しい数式が理解できなければ、その優劣をアルゴリズムから云々することは出来ません。
私も理解できません。そうなると、聴いて分かるかということになりますが、私にはまったく分かりません。世の中
ではそれらの音質の優劣談義がありますが、気にすることは無いと言って良いです。それよりは多くの機器やソ
フトがサポートしている形式を選ぶのがお勧めです。その方が用途が広がります。MP3は多くの機器やソフトが
対応しています。
アップルのIpodはAACがデフォルトで設定されています。マイクロソフトはWMAがデフォルトです。ATARC
はSONYの独自技術と言ってよく、他社では対応していないと思います。
さて、これまでDAC
(Digital Analog Converter) と言ってたのはCDをアナログに変換して再生する話が中
心だからです。レコードやテープをデジタル化するのは再生の逆のアナログからデジタルへの変換です。デジ
タル音楽フォーマットをつくるのでコード化と言います。録音、再生両方を合わせてコーデック( CODE
DECODE )と言います。パソコンはコーデックを内蔵しています。ただし、高忠実度を求めれば、高級なものに
交換するなり、外付けの USB オーディオ製品を購入する方が良いです。パソコン内は電源やマザーボードな
どから、かなり高い周波数の雑音が漏れているためオーディオのパーツを内蔵するのはあまり良くありません。
パソコンに内蔵させるコーデックの高級品は電磁シールド処理されています。
レコードプレーヤなどのアナログ機器をパソコンのライン入力につなぐとデジタル符号化して、バッファーにど
んどん書き込みます。パソコンの音楽録音ソフトは録音開始を指示すると定期的にこのバッファーから音楽情報
を読み込んで曲を MP3 などのデジタル音楽形式に編集します。もちろんどのような形式にするかは私たちがソ
フトに指示します。録音終了を指示すると題名やファイル名の入力促進メッセージを出します。そしてパソコンの
ハードディスクなどに書き込んで終わります。
このファイルをパソコンの音楽プレーヤソフトで読み出すと DECODE (DAC)が働きアナログに変換してくれ
ます。コーデックの付属ソフトは不要な部分の削除や曲のつなぎ合わせ、スクラッチノイズ軽減など多彩な機能
を持っています。このようなことが出来るのもデジタル化のおかげです。CDや携帯音楽プレーヤに出力も簡単
ですから、使い道がいろいろあります。ハードルが高そうに思えるのですが、実際にやってみればそんなことは
ありません。「百聞は一見にしかず」です。テープレコーダも
FM チューナも同じようにパソコンに取り込めま
す。
アナログをどのようにしてデジタル化するかです。一定間隔でそのときの音の大きさ(電圧)を測ります。その
値を記録します。非常に短い周期で測れば元の波形に近づきやすいことは想像できます。この周期をサンプリ
ング周波数といいます。サンプリング周波数の半分の周波数までは限りなく元の波形に戻せることが数学的に
証明されています。これが有名なサンプリングの定理でフーリエ級数を使って証明します。可聴周波数の20kh
zまで保証したければ40khzでサンプリングすればよいのです。CDのサンプリング周波数44.1khzの規格は
そのようにして決められたのですが、いささか中途半端な値です。これは当時デジタル録音に VTR を使ってい
た影響だそうです。そのサンプリング周波数が44.1khzだったので、それに合わせておこうということのようです。
当時の関係者の本に書いてあります。
音の大きさを記録する時に何ビット使うかですが、もちろん大きいほどきめ細かい階調が扱えます。CDは 16
ビットで書かれます。オーディオだけでなく、映像、画像などデジタル化に使うこのビット数を学術的にはビット深
度と言います。
数学で証明されても電子回路で実現できるかは別
数学的に証明されている完全な元のアナログ情報の復元ですが、これを電子回路で実現できるかは別問題で
す。そこにDACの優劣などが生じます。ただし、電子部品ですからDACのチップは最高級品でもべらぼうに高
価ではありません。
ところで、リニアPCMレコーダには外部入力端子が付いています。アンプのモニター端子とつなげばパソコン
無しでデジタル化できます。ただし、曲名などを編集するにはパソコンが必要です。
SoundBlaster(Creative Media 社 ) でのデジタル化
外部入力はレコードプレーヤから取り込むことを示しています
MP3 は取り込んだ音楽の出力フォーマットを示します
ビットレートは192kbsが指定されていることを示します
フォーマットやビットレートを指定する画面です
録音が終わると、ファイル名や曲のタイトルをつける画面が出ます
ノイズ軽減なども指定できます
取り込んだ音楽は不要部分の削除などの編集が出来ます
フェードイン、フェードアウトなども出来ます
10.パソコンはオシロスコープや周波数発生器になる
オシロスコープは最近デジタルが主流で、安価なものを除くとブラウン管式のアナログオシロはほとんど市場
から姿を消しました。デジタルオシロと同じ原理ですが、パソコンに内蔵しているオーディオコーデックを使用し
て波形をディスプレイに表示することが出来ます。本物のオシロそっくりの画面が出てくるソフトもあります。フ
リーソフトもあります。パソコンのコーデックは音楽用なので周波数が20hz~20Khzという制限はありますが、
オーディオなら問題ありません。
プローブの代わりにミノムシクリップなどで作った探針を用意すれば良いです。同様に波形発生器もあります。
サイン波や矩形波も出せます。ソフトなのでいろいろな機能をつけることが出来ます。
面白いのは周波数を次々に変えて周波数特性を自動的に測定する機能です。これを使うと、手間を掛けずに
周波数特性図が得られます。
専用のオシロスコープは最低でも20Mhz以上の広帯域になっていてプローブが必要です。デジタルオシロは
小型軽量です。価格は 10万円くらいからあります。
左がオシロスコープで、右が波形発生器です。いずれもフリーソフトです。
11
. 補足説明
「オーディオよもやま話が」難しく感じた方はこの説明を読んでみてください。まずアンプが各種音楽ソースを受
け取るインターフェースを理解してください。そしてアンプはスピーカを振動させる電気エネルギーをスピーカに
送り込んでいることも知ってください。次にデジタルは0と1に割り切っていて音楽性に欠けるとか、反対になにや
ら素晴らしい、ありがたい物と感じている方もいるようですが、難しく考えず、本質的なところを理解してください。
それはデジタル音楽情報は音楽の瞬間の音の強さを符号(数字)で表したもので、いろいろな過程を経ても情
報が変化しない仕組みを持っていることです。そして、耳で聴くには必ず符号を元の音楽に戻すアナログ変換
が必要ということです。今や演奏会に行かない限りデジタル技術の介在しないアナログだけの音は聴けない世
の中になっていることも知ってください。
<アンプの役割と構成>
アンプは一般に増幅器と訳されます。オーディオの場合はレコードプレーヤのカートリッジから発生する5mV
くらいの電気信号を1V程度に増幅するプリアンプとその信号に比例した電流をスピーカに送り込むパワーアン
プ(メインアンプとも言います)から構成されています。
パワーアンプはスピーカを振動させるエネルギーを送りこみます。10Wから100Wくらいです。そのため大型
で重量の重い装置になります。音楽を電気信号として扱うプリアンプはそれに比べて小型、軽量な装置です。レ
コードは低音を小さく、高音を大きくカッティングしているので、元のフラットな状態に戻す機能が必要です。そ
れをイコライザーアンプと称します。プリアンプにはイコライザーアンプも入っています。FMチューナは電波を
復調して音声にしますが、送り出しは1Vくらいになっています。テープレコーダもカセットも装置内にイコライ
ザーアンプを内蔵していて、送り出しは1V程度です。CDプレーヤはCDに記録されている符号を読み取って、
アナログ信号、すなわち音楽に変換します。その送り出しはやはり1Vくらいです。すなわち、レコードプレーヤ
以外はすべて1V程度で送りだされています。
プリアンプの役目は前述のレコードに対する機能の他、ソースを選ぶセレクタースイッチ、高音、低音を調整
する音質調整(トーンコントロール)、左右の音量バランス調整(バランスボリューム)、そして音量調整(ボリュー
ム)が基本です。プリアンプとパワーアンプが一台にまとめてあるのがプリメイン型と言われています。分かれて
いるのはセパレート型と呼びます。名機と呼ばれるようなものはすべてセパレート型と言っても過言ではありませ
ん。
アンプに接続される段階では音楽は
CDプレーヤを含めてすべてアナログになっています。オーディオ用の
アンプ(アナログアンプ)はそのままスピーカーに電流を送り込みますが、デジタルアンプというものがあります。
これはアナログの音楽をわざわざ一旦デジタルに変換してスピーカの直前でアナログに戻すものです。この方
式ではPWM(パルス幅変調)というデジタル方式が使われますが、非常に電力効率が良いのです。また、ノイ
ズに強いのでスイッチング電源を使うことが出来、トランスを使った大掛かりな電源は使わないで済みます。その
ためカーステレオやチャンネル数の多いAVアンプなどに広く使われてきました。ただ、音質上のメリットが無く、
オーディオには使われませんでした。最近ONKYOやSONYなどがオーディオにも使い出しましたので、音質
面の技術向上が進んだと思います。デジタルアンプというと先進的で高音質と思うかもしれませんが、それは誤
解です。同じデジタルでもデジタル音楽は重要、デジタルアンプは今の所無視でも構いません。
<アナログとデジタル>
CDが出現する前の音楽ソースはすべてアナログです。アナログの意味は耳で聴いたとおりの音の強弱に比
例した記録が媒体につけられているということです。レコードは盤に音の強さに比例した幅や深さで溝が掘られ
ています。カートリッジ(ピックアップ ) はこの溝を走って針の振動を電流に変換します。
テープレコーダは磁気テープに音楽の強弱に比例した強さで磁化します。磁気ヘッドがそれを電流に変換しま
す。ラジオ局はマイクの音声を電波に乗せ(変調)空中に放射します。ラジオはこの電波を受信し元の音声だけ
取り出します(復調)。アナログの特徴はもうひとつ、連続であることです。大きい音から小さい音まで区切りがあ
りません。この様なアナログデータは一見良さそうですが、コピーする度に少しずつ情報が変わったり、失われ
てしまうという劣化があります。レコードの溝をカートリッジがトレースして発電した電圧が溝の深さを忠実に表し
ているかどうか誰にも分からないのです。再生された音を聴いて素晴らしければ、きっとこのレコードに刻まれた
溝を正確にトレースしたのだろうと思うだけです。実際は少しは誤差があります。ですから、コピーするたびに情
報は劣化していきます。レコード盤の溝の状態を知ることが出来ないので、今再生した音(カートリッジが発電し
た電圧)が正しいか分からないのです。
CDはデジタルです。細かい時間間隔で出ている音の大きさを数字で表します。約6万段階に分けます。細
かい時間とは1ミリ秒の200分の一くらいです。CDを読み込んだときに正しくこの数字を読み込めたかどうか確
かめる情報も読込みます。それで何回読んでも間違いが起きません。ということはコピーしても劣化しないという
ことです。連続していない音楽情報では音が悪そうに思いますが、そんな心配はありません。必要な周波数帯
域の2倍の細かさでデータを取れば元の音楽が復元できることが証明されています。人間の可聴周波数限界は
20
khz ですから、CDは
44.1
khz で音楽データをとっています。この周波数をサンプリング周波数と
言います。CDに記録されているのは数字(符号
) ですから、このままでは音楽になりません。CDプレーヤは
読み取った数字からアナログの音楽を作ります。これがDAC(
Digital to Analog Converter) です。CD
に限らず、デジタルの音楽はすべてDACを通してアナログに変換されなくては人間の耳には聴こえません。D
ACはデジタルでは重要な要素です。繰り返しますが、重要なことはデジタルの情報はデジタルで扱われている
限り劣化がないということです。アメリカのサイトからインターネットで音楽を買ったとしても、少しも劣化することな
く自分のパソコンに取り込めます。アメリカの田舎の古い電話線や日米の長い海底線ケーブルを通ってきても大
丈夫です。デジタルの音楽情報は単なる符号データです。
レコード
プレーヤ
プリメインアンプ
5m V
イコライ
ザ
プリアンプ
チューナ
1V
1V
テレコ
セレクタ
スイッチ
1V
トーン
コント
ロール
左右音
量調整
メインボ
リューム
パワーアンプ
(メインアンプ)
デジタルアンプもあり
ますが音は?
1V
スピーカ
CD プレーヤ
1V
USB オーディオ
デバイス
アナログ
デジタル
インターネット音
楽配信