Δ―Y 変換

Δ―Y 変換
あとさん 電験1種合格 技術士(電気・電子部門)
1.電気回路網の計算法
複雑な電気回路網を解く場合は、次のような
様々な計算法を用いて解くことができる。
1、キルヒホッフの法則による計算法
2、網電流による計算法
3、重ね合わせの理による計算法
4、鳳-テブナンの定理による計算法
5、星形・三角結線の変換による計算法
電力系統においは、Y 結線やΔ結線が多く使
用されており、上記5のΔ―Y 変換法や Y―Δ
変換法を使用することにより容易に電気回路を
解くことが出来る。そのため、電験3種の試験
において、この変換法を用いる問題がよく出題
されている。この講座でΔ―Y 変換法や Y―Δ
変換法を確実にマスターしてもらいたい。
2.Δ―Y 変換法の解説
(2-1)三角結線と星形結線
図1に示すような電気回路を星形結線回路
(以降、Y 結線という)という。また、図 2 に
示すような電気回路を三角結線回路(以後、Δ
結線という)という。
a,b,c,に流れ込む電流が互いに全く等しい。
言い方を変えれば、それぞれの端子間のイン
ピータンスが互いに等しければ等価回路といえ
る。
(2-3)Δ-Y 変換公式の算出
Δ結線とY 結線のそれぞれ2 端子間のインピ
ータンスが等しいとして公式の算出を行う。
①端子 A,B 間のインピータンスは、R1 と R2 の
直列回路となる。また a,b 間のインピータンス
は、r1 と(r2+r3)の並列回路となる。両イ
ンピータンスが等しいので、
次の式が成立する。
R1 + R2 =
r1 (r2 + r3 )
・・・・・・式(1)
r1 + r2 + r3
②端子 B,C 間及び b,c 間のインピータンスが等
しいため、次の式が成立する。
R2 + R3 =
r2 (r1 + r3 )
・・・・・・式(2)
r1 + r2 + r3
②端子 C,A 間及び c,a 間のインピータンスが等
しいため、次の式が成立する。
R3 + R1 =
r3 (r1 + r2 )
・・・・・・式(3)
r1 + r2 + r3
{式(1)+式(2)+式(3)}÷2より
変換
R1 + R2 + R3 =
r1r2 + r2 r3 + r3r1
・・・・式(4)
r1 + r2 + r3
重要公式
(2-2)等価回路になるための条件
図1と図2が等価回路となるためには、次の
条件が必要である。
2 つ回路の端子 A,B,C、及び端子 a,b,c,に等し
い電圧をくわえたときに、端子 A,B,C と端子
式(4)-式(2)より・・・・ R1 =
r1r3
r1 + r2 + r3
式(4)-式(3)より・・・・ R2 =
r1r2
r1 + r2 + r3
ため1Ωとなる。
ゆえに、下図のような等価回路に変換できる。
r2 r3
式(4)-式(1)より・・・・ R3 =
r1 + r2 + r3
重要公式
上記はΔ-Y 変換公式と呼ばれ、一見複雑な
電気回路の合成抵抗等を求める場合によく使わ
れる公式である。計算過程は別として、本公式
は確実にマスターしよう。
(2-4)公式の覚え方
R1 の変換値を例にとって、公式の覚え方を考
える。図3に示すように、Δ結線の中に Y 結線
を描く。
R1 を挟む抵抗
r1r3
R1 =
r1 + r2 + r3
R1 を囲む抵抗
図3の R1 に注目すると、r1,r2,r3 の抵抗に周り
を囲まれており、隣り合う抵抗 r1, r3 の間に挟
まれている。
(囲まれるのは手を取り合うため、
和で+イメージし、挟まれるは、積で×と考え
て式をイメージする。
)
図(3)
※電験3種においては、Δ結線の抵抗のr1、
r2、r3 を全てrとする場合が多いため、Y 結
線に変換すると、R=r/3 のように3分の1
の単純な公式になる場合が多い。
(2-5)公式の活用例
次の図のような電気回路の合成抵抗を求めて
みよう。
3Ω
1Ω
3Ω
3Ω
a
3Ω
3Ω
1Ω
3Ω
b
上図の点線で囲んだ部分はΔ-Y変換できる。
変換した後は、単純に直並列回路として計算す
ればよい。Δ結線の抵抗が全て3Ωなので、Y
結線に変換すると、公式により3分の1となる
1Ω
a
1Ω
1Ω
1Ω
1Ω
1Ω
1Ω
1Ω
b
これを解けば、答えは 3.5(Ω)となる。
この問題は、電験3種で実際に出題された問
題であるが、Δ-Y 変換公式を使えば上記のよ
うに容易に解くことができる。しかし、Δ-Y
変換公式を知らなければ、大変難しい問題とな
る。公式は確実に記憶しておこう。
3.Y―Δ変換法の解説
(3-1)等価回路になるための条件
Δ-Y変換の場合は、インピータンスにより
条件式を導き出したが、Y-Δ変換においては
アドミッタンスで考えた方が計算が容易となた
め、アドミッタンスを使うことがポイントとな
る。
図4のようにY結線をΔ結線に変換する場合
を考える。
Y 結線とΔ結線が等価回路であれば、
各端子間のアドミッタンスが等しいため、2端
子を短絡して、他の1端子間のアドミッタンス
も等しくなければならない。
変換
図4
(2-3)Δ-Y 変換公式の算出
①図4で端子 A,B 間及び a,b 間を短絡し、C~
A・B間及びc~ab間のアドミッタンスが等しい
と仮定して公式を算出する。
C~A・B 間は、R3 と(R1 のR2 の並列回路)
との和がインピータンスになるので、アドミッ
タンスは、この逆数がとなる。ゆえに
R1 + R2
1
とな
=
R1 R2
R1 R2 + R2 R3 + R3 R1
R3 +
R1 + R2
る。
また c~ab 間は、r2 とr3 の並列回路とな
るので、2つの逆数の和がアドミッタンスとな
②同様に図4の端子B,C間及びb,c間を短絡し、
A~B・C 間及び a~bc 間のアドミッタンスが等
しいと仮定すると次の式が成立する。
よう。
(3-3)公式の覚え方
Δ-Y 変換公式と Y-Δ変換公式は、なんと
なく似ているため、2つ公式を混同してしまう
場合がある。記憶力に自信がある人は両式とも
確実に丸暗記しよう。しかし、記憶力に自信が
ない人には次の覚え方をお勧めする。
Δ-Y 変換公式のパターンを確実に覚えてお
き、Y-Δ変換式の場合は、インピータンスの
代わりにアドミッタンスに置き換えて、公式を
算出する。
Δ-Y 変換公式の基本パターンは次である。
R2 + R3
1 1
・・・式(6)
+ =
r1 r3 R1 R2 + R2 R3 + R3 R1
r1r3
R1 =
r1 + r2 + r3
る。つまり
1 1
+ となる。
r2 r3
上の2つの式が等しいため、
次の式が成立する。
R1 + R2
1 1
・・・式(5)
+ =
r2 r3 R1 R2 + R2 R3 + R3 R1
③同様に図4の端子C,A間及びc,a間を短絡し。
B~C・A 間及び a~bc 間のアドミッタンスが等
しいと仮定すると次の式が成立する。
R1 + R3
1 1
・・・式(7)
+ =
r1 r2 R1 R2 + R2 R3 + R3 R1
{式(5)+式(6)+式(7)}÷2より
R1 + R2 + R3
1 1 1
・・式(8)
+ + =
r1 r2 r3 R1 R2 + R2 R3 + R3 R1
式(8)-式(5)の逆数より
r1 =
R1 R2 + R2 R3 + R3 R1
R3
R1 を挟む抵抗
R1 を囲む抵抗
Y-Δ変換では、上記パターンにインピーッ
タンスの代わりにアドミッタンスを代入する。
1 1
R1 R2
1
=
1
1
1
r1
+
+
R1 R2 R3
r1 を挟む抵抗
r1 に囲まれる抵抗
上式を整理すると、
R3
1
=
r1 R1 R2 + R2 R3 + R3 R1
この逆数で、 r1 =
R1 R2 + R2 R3 + R3 R1
R3
式(8)-式(6)の逆数より
r2 =
R1 R2 + R2 R3 + R3 R1
R1
式(8)-式(7)の逆数より
r3 =
R1 R2 + R2 R3 + R3 R1
R2
重要公式
上記は Y-Δ変換公式と呼ばれ、一見複雑な
電気回路の合成抵抗等を求める場合によく使わ
れる公式である。Δ-Y変換公式と同様に、計
算過程は別として、本公式も確実にマスターし
※ 電験3種においては、Y結線の抵抗のR1、
R2、R3 を全て R とする場合が多いため、
Δ結線に変換すると、r=3Rのように3倍
の単純な公式になる場合が多い。
4.コンデンサのΔ-Y 変換
(4-3)コンデンサをΔ-Y 変換する
前項で、Δ-Y 変換公式と Y-Δ変換公式を
説明した。単純に考えると、1 個の抵抗値を R
R/3 となり、Y-Δ変
とするとΔ-Y 変換では3R
3R
換では R/3となった。
ここではコンデンサの場合を考える。3 相交
流回路においてはコンデンサが多く使用されて
いる。
図(6)のような3個の静電容量 C[F]のコン
デンサをΔ結線した力率改善用のコンデンサを
Y 結線に変換すると 3C となる。
コンデンサのΔ-Y 変換では、抵抗のように
3 分の 1(C/3)とならないので注意が必要であ
る。
3C(F)
3C(F)
3C(F)
図(6)
(4-3)変換の考え方
Δ結線のコンデンサ 1 個の静電容量が上図の
ように C(F)とすると、リアクタンスは1/ωC
となる。
(ω=2πf)
ゆえに、Δ-Y 変換公式により、Y 結線に変
換した 1 個のリアクタンスは 1/3 倍となるため
1/ωC÷3 となる。
リアクタンスが 1/ω3C であ
れば、これを静電容量に戻すと 3C(F)となる。
同様に、Y 結線のコンデンサ 1 個の静電容量
が C(F)とすると、Δ結線に変換すると C/3(F)
となる。
4.電源のΔ-Y 変換
3 相交流電源回路においては、Δ結線や Y 結
線が採用されている。電験 3 種の 3 相交流回路
の計算問題では、線間電圧から相電圧を求めた
り、相電圧から線間電圧を求める過程が大切と
なるので、電源のΔ-Y 変換は確実にマスター
してもらいたい。
(4-1)Y 結線の相電圧と線間電圧との関係
図(7)に示すように、電源の各相電圧のベ
クトルを Ea、Eb、Ec とし、線間電圧のベクトル
を Vab、Vbc,Vca とすと、
Vab=Ea-Eb
Vbc=Eb-Ec
Vca=Ec-Ea
の関係になる。
図(7)
上記3つの関係式をベクトル図で描くと、図
(8)の(a)または(b)ようになる。図からわか
るように、各線間電圧 Vab、Vbc,Vca は、それぞ
れの相電圧 Ea、Eb、Ec より 30°進んだベクト
ルとなり、線間電圧の大きさは
Vab=2×Eacos30=2×Ea× 3 /2= 3 Ea
したがって、線間電圧= 3 ×(相電圧)
となる。
図(8)
つまり、
1相の起電力が E のΔ結線を Y 結線に
変換すると図(9) のように1相の起電力が
E/ 3 となる。
また逆に、
1相の起電力が E の Y 結線をΔ結線
に変換すると1相の起電力が 3 E となる。
E/
E
E
E/
E/
E
図(9)
3
3
3