初心者でもわかる! 中国ビジネス担当者マニュアル ステップワン 中国の外貨管理・クロスボーダー人民元 編 監修・執筆 Mizuno Consultancy Holdings Ltd. 代表取締役社長 水野真澄 制作・販売 株式会社チェイス・チャイナ 本レポート内の文章や画像、素材イメージ等の無断転載、無断複製を禁止します。 目 次 第 1 部 外貨取引の種類と銀行口座 1.銀行口座の種類と管理 (P.1) 2.外貨口座の開設 (P.4) 3.外貨保有と換金 (P.5) 4.非居住者の口座 (P.6) 第 2 部 輸出入代金決済 1.貨物代金決済の原則 (P. 8) 2.輸出入ユーザンス、輸出代金前受け金、輸入代金前払金制限の制限 (P.12) 3.クレーム代金処理 (P.14) 4.非居住者の中国国内取引関与 (P.16) 第 3 部 非貿易項目(配当、フィー、ロイヤルティ、コミッション) 1.非貿易項目対外送金時の税務許可 (P.17) 2.配当金の対外送金 (P.18) 3.利益の送金(コンサルティング費・ロイヤルティ・コミッション)(P.20) 4.国際間の立替金決済 (P.22) 第 4 部 資本項目(投融資) 1.外資企業の投資関連(資本金払込み・持分譲渡・清算剰余金の送金) (P.24) 2.外資企業の借入可能金額(外債登記が必要な借入と制限金額) (P.26) 3.親会社保証付き借入 (P.30) 第 5 部 クロスボーダー人民元決済 1.経常項目のクロスボーダー人民元決済 2.人民元による対中投資 (P.33) 3.国際間の人民元融資 (P.34) 執筆者略歴 (P.32) (P.37) 本レポート内の文章や画像、素材イメージ等の無断転載、無断複製を禁止します。 第1部 外貨取引の種類と銀行口座 中国の外貨管理の原則は、経常項目は原則自由(提示書類等の形式要件が整えば、外貨管 理局の許可不要で決済可能) 、資本項目は原則制限(規制緩和は徐々に進んでいるが、原則 外貨管理局の許可が必要)というものです。このため、貨物代金決済・配当・役務提供対 価の受け払いの様な経常項目と、投融資・不動産・保証等の資本項目取引では、対外決済 手続についても、換金(外貨⇔人民元)についても管理が異なっています。 では、本来「色がついていない筈の金(かね)」にどの様に色を付けているのでしょうか。 その答えが、銀行口座の管理です。 第 1 部では、銀行口座の管理と外貨と人民元の換金の原則について解説します。 1.銀行口座の種類と管理 ① 銀行口座は用途によって種類が分かれている 外貨口座:経常口座、資本金口座、借入金口座、外債口座など 人民元口座:基本口座、一般口座、納税用口座など ② 外貨口座間の振替は禁止されている ※各種銀行口座の特徴 入金項目 外貨資本金口座 資本金 人民元資本金口座 外貨借入金口座 借入金 人民元借入金口座 支出項目 経営範囲内の支払い 仕入代金 設備代金 人件費 自社オフィス用不動産代 金 その他 経営範囲内の支払い 仕入代金(短期) 設備代金(中長期) 人件費(短期) 自社オフィス用不動産代 金(中長期) その他 備考 国内再投資、委託貸 付、投資用不動産、 財テク商品、金融商 品のための支出は 不可。 国内再投資、委託貸 付、投資用不動産、 財テク商品、金融商 品のための支出は 不可。 外貨経常口座 営業収入 人民元口座 支出全般(法律上、支出が 禁止されるものを除く) 本レポート内の文章や画像、素材イメージ等の無断転載、無断複製を禁止します。 1 銀行口座の種類が複数ある理由は? 中 国の銀行口座の種類は細かく分かれている。資本金を払い込むのは資本金口座 (外貨、人民元共にあり) 、借入資金が振込まれるのは借入金口座(これも外貨、 人民元共にあり)で、借入金を返済する時は借入金返済口座を開いてそこを経由 しないといけない。何のために、この様に口座を分けているかというと、 「金に色を付ける」 ため。 原則自由の経常項目と原則制限の資本項目では、外貨管理の原則が大きく違って いる。そのため、銀行口座の管理においても経常項目の口座と資本項目の口座を 明確に分けており、相互の振替は禁止されている。資本項目口座の外貨を経常項 目外貨口座に振替える事ができたら、管理ができなくなってしまうからね。 この様に、資金の出し入れを明確に区分する事でお金の種類(来源)を明確に分 けているんだよ。因みに、資本項目の口座は資本金口座、借入金口座、外債口座等の様に 資金用途によって分かれている。これらの口座は中の資金を使い切ったら一旦閉鎖して、 新たな取引が生じた時(増資、新規の借り入れなど)に、再度、開設する事になるんだ。 経常項目の口座より資本項目の口座管理が厳格なのはなぜ? 経 常項目は自由というのが原則になっているので、経常項目外貨口座の中の資金は 自由に人民元に換金できるし、外貨のまま保有する事もできる。また、法的に認 められている用途であれば、口座からの支払いもできる。 一方、資本項目口座の場合は管理が厳格になる。資本項目口座の資金は、資本金の払い込 みや借入で調達した資金だけれど、これは企業の経営範囲に合致した用途にしか使用でき ない。だから、資本項目口座の資金を国内投資・国外投資(再投資行為を営業範囲とする 投資性公司の場合は、資本金口座からの払い出しは可能) 、委託貸付(銀行経由の間接貸付) 、 自社使用以外の不動産の購入などに使う事はできない。 資本項目口座内の資金を使用する時は、支払い用途を銀行が確認するので、企業 の経営許可内容と合致しない支払いは認められないし、それ以前に人民元への換 金も認められない。つまり、外貨資金で資本項目資金を調達すると、為替リスク を背負込んでしまう事になるから注意が必要だよ。 本レポート内の文章や画像、素材イメージ等の無断転載、無断複製を禁止します。 2
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