インフルエンザの予防のお話 インフルエンザの流行する時期になりました。インフルエンザに対する積極的な予 防対策は、インフルエンザワクチンの接種です。しかし、インフルエンザワクチン接種 による免疫(インフルエンザウイルスに対する抵抗力)は誘導されるのに2週間かかる ため、流行期に接種しても予防には間に合いません。そこで、インフルエンザ流行期 のインフルエンザ予防対策についてお話しましょう。 インフルエンザウイルスの感染経路には、空気(飛沫核)感染、飛沫感染、接触感染 があります。空気(飛沫核)感染は、患者の咳やくしゃみで飛び散った飛沫(しぶき)が 空気中で乾燥して空気中に浮遊する微粒子(飛沫核)(5 マイクロメートル以下)にな り、それに付着した病原体を吸い込むことで感染する経路です。飛沫核は、乾燥状態 では長時間浮遊し続けるため、感染者や保菌者が遠く(5-10m以上)離れていても 感染する可能性があります。飛沫感染は、患者の咳やくしゃみで飛び散った飛沫(しぶ き)を直接吸い込むことで感染する経路です。飛沫は、飛沫核に比べて大きく重いた め、長時間空気中に浮遊することはできません。感染者や保菌者の 2-3m以内で感 染する可能性が高くなります。接触感染は、皮膚や粘膜の直接的な接触や手、ドアノ ブ、手すり、スイッチ、ボタン、便座等の表面を介して病原体が手等に付着することで 感染する経路です。インフルエンザでは、感染者や保菌者の飛沫や鼻咽頭分泌物に 汚染されたものを手で触れ、そのまま鼻や口周囲を触れることで感染します。 インフルエンザの多くは、接触感染、飛沫感染で感染し、空気(飛沫核)感染は少 ないと考えられています。そこでインフルエンザの予防対策は、接触感染と飛沫感染 を予防することが大切になります。 具体的なインフルエンザの予防策は、以下のようになります。 ① 手洗い インフルエンザの接触感染に対する防御策として最も重要です。感染者や保菌者 に触れたときはもちろん、感染者や保菌者が触ったと思われる物を触った時にも手洗 いが必要です。十分な手洗いとは、流水で 30 秒以上手をもみこすりながら洗うこと です。市販されている手指消毒薬を利用するのも良いと思います。 ② マスク インフルエンザの飛沫感染に対する防御策として最も有効です。空気(飛沫核)感 染も含めてインフルエンザウイルスを完全に防御するには、医療現場で使用される N95 マスクが必要です。N95 マスクは、信頼性のおけるものは1枚720円程と高価 であり、装着すると息苦しくなるため、長時間の使用には向きません。飛沫感染を予 防するには一般に市販されている不織布マスクで十分効果が期待できます。マスクは、 飛沫感染だけでなく、我々が無意識のうちに鼻や口周囲を手で触ってしまうのを防 御できるため、接触感染の予防にも効果的です。なお、マスクはすぐに汚染されるた め、できれば外出ごとや半日ごとに、少なくとも1日ごとに交換する必要があります。 ③ 環境整備 インフルエンザウイルスは、低温・低湿の環境下では不活化しにくく感染力が保た れます。一般的に湿度が低いと呼吸器粘膜の防御機能が低下することがわかってお り、感染を受けるリスクが高くなります。保温(15-20℃以上)と保湿(70-80%)が インフルエンザ予防には必要です。また、締め切った環境では感染のリスクが高くなる ため、定期的な換気も重要です。 感染者や保菌者が触りそうなドアノブ、スイッチ、手すり、ボタン、便座等は、できれ ば1日3回(朝、昼、夕)は拭き掃除をして清潔を保持する必要があります。 ④ 体調管理 上記の予防策をしても、100%インフルエンザを予防することはできないため、日 頃より、バランスの良い食事を心がけ、暴飲暴食を控えて、十分な睡眠をとり体調を 整えておくのも重要です。体調が悪いとインフルエンザに感染した場合に重症化しや すいので注意が必要です。 また、流行期には、人混みは避けるようにすることも必要です。 うがいの予防効果は、インフルエンザに対しては医学的には不明です。鼻洗浄(口 に食塩水を含み、鼻から出す)は、インフルエンザ予防に有効と思われますが、施行 するのに熟練を必要とするのとかなりの痛みを伴うため、一般的にお勧めできませ ん。 以上のことに気を付けてこの冬のインフルエンザをみんなで乗り切って行きましょう。 2014年1月 ハロークリニック 新井 克己
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